ODAとは? ODA改革

対越国別援助計画の見直し
(ショート・ドラフト)

平成15年3月
在越日本大使館
在越JICA事務所
在越JBIC事務所
大野 健一
(本件作業の検討は、在越JETRO事務所の協力も得て行っている。)


 以下は、対越国別援助計画の見直しに関し、たたき台としてショート・ドラフト案を作成したものである。今後、これに対する各方面からの意見を踏まえて、新たな「国別援助計画」自体を起案していく予定である。なお、以下の中には、検討の進捗に応じ、文章化されている部分と、箇条書きの部分があるが、今後、全ての部分を文章化していく。また、詳述した部分とそうでない部分があるが、最終的な分量比を示すものではない。

1.対越援助の国益・戦略性

 我が国の安全保障および経済的繁栄にとって、ASEAN諸国の均衡のとれた経済発展と社会安定、およびそれに基づく我が国との緊密な関係はきわめて重要である。ベトナムはASEAN10の中で第2の人口規模をもち、勤勉で向上心に富む国民性から力強い経済発展の潜在的可能性を持つ国である。さらに中国と国境を接するベトナムは、我が国対中外交との脈絡においても、重要な国である。また後発ASEAN(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)の先行国でもある同国の順調な発展は、他の後発ASEAN諸国にとってのモデルとしても、およびASEAN内の先発・後発国間のバランスある発展にとっても望ましい。また、ベトナムは、我が国にとって、製造拠点、将来性ある輸出市場、エネルギー供給拠点としての意味を持っており、我が国の援助は、ベトナムの投資環境・ビジネス環境の改善を通じて日越間、日・ASEAN間の経済面での好循環につながることが期待される。このように、我が国の援助及びこれによるベトナムの発展は、日越関係、日・ASEAN関係双方にとっての大きな意義がある。
 同時にベトナムは低所得途上国であり、近年高成長を通じ社会指標にかなりの改善をみたとはいえ、絶対的な所得・生活水準はいまだ低く、地方を中心に多くの貧困層が存在している。我が国の援助が、生活・社会面でのベトナムの開発課題に貢献することは、人道的・社会的要請に応えることになり、バランスのとれた我が国のODAの実施の観点からの意義がある。
 ベトナムは世界の開発援助政策において注目されている国であり、援助機関の新戦略が他国に先駆けて導入されることも多い。我が国が開発や援助に関わる我が国の考え方を知的リーダーシップをもってベトナムで実践し、国際社会に向かって発信していくことは、世界の開発援助政策への我が国の貢献との点で有意義である。

2.ベトナムの開発に関わる状況

(1) 目下の課題
ベトナムはこれまで比較的高い成長を遂げてきたが、現在、内外で厳しい課題に直面。特に、国際競争が激化する中で、一段高い経済成長の軌道に乗ることができるか、あるいは踊り場で立ち止まり、結果として国際競争に取り残されるかの岐路。
ベトナムが直面している課題で特に重要なものは次の通り。
- 市場経済化の促進、投資環境改善、インフラ整備を通じて、どこまで成長促進・競争力強化を図ることができるか。
- 成長によって解消されず、また、地域格差、環境問題のように悪化することのある生活・社会面の問題の解決をどうやって図っていけるか。
- 非効率で不透明な行政、未整備な法的制度の改善をどうやって図っていけるか。


(2) 政治、社会、経済全般の概況
(イ) 政治及び社会
共産党による一党支配の社会主義体制。党の果たす役割が大きい国柄。2001年の第9回共産党大会、2002年の総選挙。ドイモイ路線の下、社会主義を維持しつつ、市場経済化を推進する方針を維持。
経済成長の反面、それによって解消されず、また、場合によって悪化することのある社会・生活面の問題の存在。都市部と農村部との格差、少数民族の貧困、インフォーマルセクターの問題、環境悪化、都市インフラの未整備、交通問題、市場経済化や情報通信技術の進展の中での新たな様相の「貧困」。
(ロ) 経済
86年末のドイモイ政策採択後、市場経済の導入と対外開放政策を推進。92年以降、他のASEAN周辺諸国に比し、高い経済成長(年率7%~9%)。一時的落ち込みとその後の回復。
比較的高い成長率、低インフレ率、貿易収支のほぼ均衡、安定的な為替レート、対外債務負担の減少など、一応は、安定したマクロ経済状況。HIPCs卒業の動き。
輸出は、原油、コーヒー等の一次産品の占める割合が大きく、国際市況に影響されやすく、中長期的には輸出額低迷の可能性。原材料、中間財、資本財を輸入に依存。一次産品の国際市況の悪化が貿易収支悪化に結びつきやすい構造。サービス収支も赤字。移転収支(在外ベトナム人からの海外送金)が、経常収支を支えているが、脆弱な構造。
外国直接投資の流入は、期待されるほど伸びていない。
今後も開発資金ニーズ大。国内貯蓄率は改善しつつあるが、中長期資金は不足。金融機能の限界の中、ODAに期待される役割大。


(3) 経済の状況と課題
(イ) 産業構造と国際環境
農業部門は依然として就業人口の多くを占めるが、GDP構成比では、鉱工業、サービス業の比重が増大。
国営企業は不活性であるが、依然として経済に占める割合大で、全体の成長の抑制要因。民間、外資が成長の牽引役。国営、民間、外資のそれぞれの発展による「多部門経済」の実現を企図するも、それぞれ問題点を抱えている。
米越通商協定、AFTA、WTO交渉、中・ASEAN・FTAなど、国際経済への統合が進捗。中国や他のASEAN諸国との競争激化の見通し。この競争に敗れ、労働力・一次産品供給の垂直的な分業構造に組み入れられないよう、他国との間で競争可能な産業育成の必要。
(ロ) 市場経済化と構造改革
(a) 民間企業育成・外資導入(投資・ビジネス環境の整備)・貿易改革
民間企業は、最も成長のスピードの高い部門。一方、資金アクセス困難、設備投資に難、技術レベルの低さなどの問題点。企業家精神の刺激、企業家の育成の必要性。民間企業育成については、企業法施行を機に改革が進捗するも、国営企業との差別的待遇などの課題。中小企業育成も課題。
外資は、ベトナムのこれまでの成長を支えてきた部門。一方、現状では、外国直接投資は、期待されるほど伸びていない。安価・良質な労働力、安定した政治・治安状況、中国の一極集中リスク回避の選択肢という意味で、投資誘致上の優位の指摘もあるも、裾野産業の未発達のため、現地調達率の向上を図ることが難しく、ASEAN諸国との比較において投資誘致競争力は高いとは言えないのが現状。投資環境は、一定の進展はあるが、今後の競争激化の中、飛躍的改善の必要性。
- 高い公共料金、運輸・通信コスト、外資参入規制の残存、複雑で不透明な法令体系・運用、国家経済管理体制の継続、市場原理の軽視
- 経済活動に直接関係する行政機関の非効率、手続き規則の不備、実施面の問題点、行政官育成の必要性。
産業競争力強化の課題
- AFTA統合の中、ASEAN域内で独自の生産拠点としての位置づけ確保の必要性
- 輸出加工・労働集約型産業強化の必要性
- ASEAN域内で競争力を有しうる産業についての重点的施策の必要性
- 中小企業・裾野産業の強化策の必要性 等
着実な貿易自由化
- 輸入数量規制の原則撤廃(関税化)、輸出規制の撤廃・オークション制の導入、関税引き下げ等の貿易改革が進んでいるが、透明性を確保しつつ、着実に実施することが必要。
(b) 国営企業改革・金融・銀行改革
国営企業は、依然として基幹産業で中心的存在。非効率な経営、過剰な人員、設備の老朽化から、その多くが赤字経営。非効率な国営企業が温存。
1989年以降、株式化推進により改革を企図。これにより、12000社あった国営企業は、1990年には6000社に減るが、その後改革は減速。株式化、売却、譲渡、解散、合弁により改革を進める計画であるが、国家介入の問題、経営者に対するインセンティブ付与、失業問題の切り離しなど改革を阻害する背景要因の除去が必要。
四大国有商業銀行の不良債権問題が懸念。硬直的かつ非効率な金融機能の改善の必要性。
(ハ) 経済インフラの状況
主要経済インフラの整備は、この10年で大幅に改善。
一人あたり電力消費量、電話普及率、道路舗装率は、周辺アジア諸国に比べ劣後。インフラの未整備は、依然として、持続的な経済成長を阻害するボトルネック。
インフラの整備とともに効率的運用の必要。制度・政策改善が課題。


(4) 生活・社会面の状況と課題
(イ) 貧困の状況
貧困率は、1993年の58%から2000年の32%に減少。この貧困削減は、経済成長及び農業自由化による所得向上に起因。この貧困削減は、全国的に見られたものであるが、貧困の削減の状況、分布状況には、地域差あり。
(ロ) 教育
初等教育の就学率高いが、完全普及及びドロップアウト率の引き下げが課題(僻地、貧困地域、少数民族)。識字率は高い。ジェンダー・民族によるギャップの是正。教育レベルの向上(カリキュラム、教員、教員行政能力、施設の質の低さ。施設の不足による2部制、3部制の残存、全日制への転換)。
(ハ) 保健・医療
平均寿命は、比較的高く、乳幼児死亡率は低い。マラリア・結核・HIV/AIDS等の感染症の問題。5歳以下の栄養失調率高い。妊産婦・乳幼児ケア、母子栄養改善、感染症対策、環境衛生、子供の発達段階に合わせたケアなどが課題。
(ニ) 環境
森林の減少、上下水道の未整備、廃棄物、大気汚染・水質汚染、都市の住宅・交通問題。
(ホ) 地方開発 
地方における飲料水、電気、通信等の基礎インフラへのアクセス、農業水利・農業技術等。
(へ) その他の側面
ジェンダーに関わる問題、女性の能力向上(エンパワーメント)、草の根レベルの民主主義などガバナンスの問題、少数民族に関わる問題。


(5) 経済・社会の基盤 ・非効率的な行政手続き、汚職の問題、公的部門の能力不足、制度・政策の不透明性、法体系の未整備、司法の能力不足。


3.開発戦略の動向

(1) 開発ニーズに対する対応(越政府の取り組みとこれへの評価)
「2001年~2010年社会経済開発戦略」:2020年までに工業国への転換を遂げるとのビジョン。
「包括的貧困削減成長戦略文書(CPRGS)」:経済成長と貧困削減の達成を目的。
開発課題:ベトナム側は、次の三項目を今後の開発課題としている。(2002年12月のCG会合の際のブー・コワン副首相演説)。
(イ) 速度が速く、持続可能な成長のために、経済の質、効率、競争力を向上。
(ロ) 包括的な人造りの進展。解決を迫られている社会問題への対応。社会・自然環境を改善。
(ハ) クリーンで強く効率的な行政を構築。汚職、無駄、官僚主義と戦う。国家機構と社会の規律を強化しつつ民主主義と透明性を進展。
上記の三項目は、上記2.で分析された課題とも合致。


(2) これまでの我が国の対越援助の分析と評価
(イ) 特徴
1992年より、対越援助を再開。95年以降、トップドナー。
対越国別援助計画(2000年)で重点分野:1)人造り・制度造り(特に市場経済化支援)、2)電力・運輸等のインフラ整備、3)農業・農村開発、4)教育、保健医療、5)環境。
(ロ) 評価
我が国のこれまでの対越援助は、インフラ整備と社会セクターへの支援とのバランスをとるとともに、市場経済化に資する政策研究、人材育成、制度構築への支援を積極的に行ったことが特徴。
これらは、ベトナムの経済成長、貧困削減を含む生活・社会面での改善に大きく貢献してきたものと考えられるが、よりよい援助を目指す立場から課題を挙げると次の通り。
(a) 総論
ベトナム側の改革努力との結びつきに課題。
援助協調を効果的・効率的援助を行う手段として活用する面で改善の余地あり。
(b) 案件採択・案件実施上の課題
各セクターへの援助の方向性についての中期的なビジョンが不明確。
重点分野は示されるも、更にサブセクター毎の絞り込みを図る余地あり。また、それぞれのサブセクター毎に援助方針を明確化していく必要。
案件選定に関する越側との政策対話の不足、要請主義・各スキーム毎の案件検討・採択の限界(中期的なビジョンをもって日本側の政策的な意図を伝達、協議することに課題。スキーム毎の分担・連携に改善の余地)。
他ドナーとの調整・連携に改善の余地。
NGOとの連携が可能な分野やプロジェクトにおいて、連携を改善する余地。
援助スキーム上の問題(無償におけるコストの問題、信託基金(トラストファンド)への対応)。


(3) 各ドナー・NGOの対越援助の動向
(イ) 各ドナー・NGOの援助動向
金額面で見て、日本、世銀、ADBが上位ドナー。世銀、ADBも、我が国と同様に、経済インフラ整備、社会セクターへの支援に取り組むとともに、市場経済化、人材育成、制度構築にも力を入れている。世銀は、ベトナム政府の貧困削減戦略(下記(ロ)参照)における政策・制度面の改革に対しプログラムローンで支援を行うことに重点を置くなど、我が国の対越援助とアプローチは同じではないが、双方の取り組みは、それぞれ補完的であり得る。欧州諸国は、援助規模は限られているものの、基礎教育、森林、自然災害対策、地方運輸などの社会セクターへの支援と統治(ガバナンス)の向上を重視。
越で活動するNGOは現在約400団体を超えており、ストリートチルドレンなどの都市の貧困問題・障害者支援・栄養改善などの人道的観点からの援助、農村開発事業、貧困アセスメントなどの調査活動、貧困削減に関わる政策提言などその活動も多岐にわたってきている。最前線で活動し、現場の情報、多種多様な経験を有するNGOはODAのパートナーとして重要性を増している。
(ロ) 近年の動き
1999年に世銀によって、「包括的開発枠組み」が提唱され、ベトナムがそのパイロット国とされ、各セクターについてベトナム政府とドナーとの対話(「パートナーシップ」)のための作業グループが形成され、活動を開始した。また、ベトナム政府は、1999年以降、貧困削減戦略文書(Poverty Reduction Strategy Paper: PRSP)の策定作業を本格化させ、2002年5月に、アジアで初めてのprspとして、「包括的貧困削減成長戦略」(Comprehensive Poverty Reduction and Growth Strategy:CPRGS )が策定された。このCPRGSは、「成長」が標題に加えられ、経済成長の重要性についての記述もなされたが、大規模インフラなどの成長促進措置が経済成長を通じて貧困削減に貢献するとの役割が示されていないものであり、我が国のイニシアティブにより、この点を改善する方向となっている。また、国際的に、援助効率向上の観点から、援助手続きの調和化の議論が盛んになされているが、ベトナムは、多国間開発銀行のパイロット国となり、現に、我が国の国際協力銀行(JBIC)、世銀、ADBの間で、手続き調和化の努力が進められている。


4.対越援助の基本方針

(1) 基本認識・目標
(イ) 基本的な援助方針
我が国は、外交上の観点や経済的な相互依存関係の観点とともに、人道的・社会的関心から、ベトナムの発展を支援する立場。外交上の観点、経済的な相互依存関係の観点から、経済の力強い成長促進を支援していく。具体的には、市場経済化の促進、投資環境整備、インフラ整備を通じて成長促進・競争力強化を図る。これは、経済・社会状況の全体的な底上げに結びつくことから、人道的・社会的要請にも応えることとなる。人道的・社会的関心から、貧困削減を含む生活・社会面での改善を支援していく。これは、将来の成長促進のための基礎的な条件を形づくるものであり、また、成長によって解消されず、また、場合によって悪化することのある問題の軽減を図るもの。さらに、成長促進、生活社会面の改善のいずれもの基礎をなす制度整備を支援していく。
我が国は、ベトナム政府の主体性を尊重するとともに、その開発ビジョンの方向性を評価し、経済成長、貧困削減を含む生活社会面の改善、制度整備を支援する方針をとる。
(ロ) 援助実施の方法
対越援助の規模については、制度・政策環境の状況を含む諸項目の状況、達成度を評価し、越政府と協議の上、規模の定性的な方向性を検討する仕組みとする。
各セクターへの援助の方向性について、中期的なビジョンを討議する政策対話をベトナム政府と行うことにより、「要請主義」を超えた「対話型」の案件形成・採択を指向していく。
各ドナー、NGO、地方公共団体など幅広い関係者との協調・連携によって、一層効果的な援助を目指していく。


(2) 対越援助の規模について
(イ) 検討のメカニズム
政策協議などを活用し、過去一年間の下記(ロ)の諸項目の状況、達成度を評価し、これをベトナム側と共有、ベトナム側より将来とるべき措置についてコミットメントを得つつ、規模の定性的な方向性を検討する仕組みとする。
(ロ) 考慮すべき事項
国益・戦略性:重要性を増している(中国の急速な経済発展。ASEANのバランスある発展の必要性。日本企業の東アジア展開)。
開発ニーズ:依然として大きい。
「制度・政策環境」の状況:総論としては、改革努力は良い方向。個別ケース(二輪車部品輸入問題、四輪車部品輸入問題など)で逆行の兆候。政策提言反映にも課題が残る。これらについては、引き続き要注視。
越の援助吸収能力:用地収用、ベトナム政府手続きの遅れにより、執行率については課題あり。他方、債務負担能力についての懸念は減少。
ODA大綱との関係: トレンドとして悪化等の特段の変化なし。ただし、人権・少数民族問題等の進展には引き続き注視。
(ハ) 規模についての考え方
開発ニーズは依然として大きく、これまでの対越援助のレベルは概ね妥当と考えられるが、今後のレベルを考える際、「制度・政策環境」の状況と、援助吸収能力には留意が必要。(毎年の具体的な対応については、政策協議などの場を通じてベトナム側と協議し、検討を行う。)


(3) 対越援助の重点分野
(イ) 成長促進
(ロ) 生活・社会面での改善
(ハ) 制度整備

 以下は、上記の(イ)から(ハ)までのそれぞれの分野において、今後検討の対象としようとする事項を暫定的に示したものである。今後、各セクターについて、我が国として援助する意義、我が国の対応能力、他ドナーの動向などを踏まえ、各セクター毎の援助戦略(サブセクターレベルでの支援の方向性、援助スキーム間の連携・分担の考え方を含む。)を検討する作業を進めて行くこととしており、最終的に記述されるべき重点分野は、その作業の結果を反映したものとするが、今後の作業を待つ必要があるため、現時点では、暫定的なものを示すもの。従って、今後の作業により増減があり得るものである。

【今後の検討対象事項(暫定版)】
(イ) 成長促進
投資環境整備、民間企業育成、国営企業改革、貿易改革、成長を支える人材育成(留学生、職業訓練、経営者・技術者の人材育成)等(注)。運輸交通、電力、情報通信等の経済インフラ整備。
(注)進出日本企業の視点をも勘案
(ロ) 生活・社会面での改善
初等教育の質の向上・就学率の向上。保健医療レベルの底上げ・感染症対策・社会的弱者への対応(母子保健、障害者対策)。円滑な都市交通の確保、交通事故対策、衛生環境の向上(上下水道・廃棄物)。森林保全・植林・自然災害対策・公害対策。地方の生活インフラ改善・農業生産性向上・地方の雇用機会拡大。
(ハ) 制度整備
法制度整備、財政制度改革、公共政策立案改善・行政実務能力の向上。


(4) 重点分野への総合的な取り組み、分野横断的な取り組み
(イ) 重点分野にかかるセクター援助戦略の確立
 ベトナム政府の戦略・計画・目標、各ドナー・NGOの対応を踏まえて、各セクター毎の援助戦略を確立する。このため、次のことを行う。
国別援助計画の実施・運用の一環として、各セクターへの援助の方向性について、中期的なビジョンを討議する政策対話をベトナム政府と行う。これにより、「要請主義」を超えた「対話型」の案件形成・採択を指向。
各ドナー・NGOとの対話、協調を強化(効率的な援助との観点)。
我が方の各スキーム間の連携・役割分担の明確化。
我が方の援助スキームを時代のニーズに合ったものとすべく、その活用の改善の検討、提言。
援助協調による信託基金(トラストファンド)等の新たな援助スキームにも、パイロット的に参加を検討。
JICA、JBICの業務実施計画・方針をこの国別援助計画及び上記のセクター援助戦略に沿ったものとし、オールジャパンでの総合的な取り組み。
(ロ) 個別案件の実施に際する効果の向上
「政策支援型援助」の政策インパクトを強めるように運用。
経済インフラ整備において、制度・政策改善に積極的関与、民間資金活用とのリンクを考慮。
NGOとの連携の強化(案件形成段階、案件実施段階。情報共有の場であるODA大使館の一層の充実、NGOの活動の円滑化への支援)、地方自治体の参加などによる「国民参加型」ODAの推進。
(ハ) 効果的な援助のための実施上の配慮
環境配慮の徹底。
評価の強化と、評価結果の反映(国別援助計画の実施・改訂のサイクルに評価を組み込む。)
(ニ) 実施体制の整備
各ドナー、NGOとの対話、協調を図るための実施体制の整備。


(5) 援助協調への対応
(イ) 基本姿勢
ベトナム政府の主体性の下、各ドナー、NGOなどの開発関係者と協調し、共有の開発戦略をもって開発援助に当たることは、我が国の援助がマクロレベルでの開発効果を導く上で重要であり、これを積極的に推進する。国際的な援助の議論で注目を浴びるベトナムにおいて、援助協調を積極的に活用した効果的・効率的な援助のあり方を示すことは、世界の援助潮流の中で我が国が知的リーダーシップを発揮し、我が国の開発や援助にかかる考え方を国際社会に向かって発信していく上で重要。
「国際社会に向かっての発信・関与」と「より一層効果的・効率的援助を目指しての援助のやり方の改善」の双方に取り組んでいく必要。
特に、我が国としては、開発における経済成長の役割に関わる議論をリードしていく。経済インフラの整備、投資環境の整備、工業化戦略と貿易政策の整合的な組み合わせなどは、経済成長を進める上で重要なものであり、これらの分野で積極的にイニシアティブをとっていく。
(ロ) 個別の課題への対応
(a) 貧困削減戦略文書(PRSP)対応:ベトナムのPRSPであるCPRGSに引き続き積極的に関与。CPRGSが大規模インフラをはじめとする成長促進措置をその重要な柱と位置づけるよう、また、資源配分メカニズムとのリンクが適切となるよう取り組む。
(b) 手続き調和化、セクター対応:ベトナムでは、手続き調和化の問題において、各ドナー間において、オーナーシップの重視、国別アプローチ、調和化のあり方の多様性の尊重について意見の一致あり。ODAの効果的・効率的活用に資するよう前向きに対応。借款分野では、JBIC、世銀、ADBの調和化努力を継続。贈与分野では、能力構築(キャパシティビルディング)のあり方を意識しつつ、調和化・簡素化に取り組む。セクター対応では、上記(4)(イ)に従い、ベトナム政府、各ドナー、NGOとの政策対話・協調を強化し、セクター計画策定への関与、援助を策定された計画へ振り向けていく取り組みを強化。更に、援助スキームの活用の改善、新たな援助スキームの活用にも取り組む。その際、援助協調への対応においては、特に、教育、保健医療などの分野に重点を置く。
(c) パートナーシップ:ベトナム政府・ドナー間の対話の場として貴重。今後特に重視していくべきものとして、貧困タスクフォース、運輸交通、中小企業振興、教育、保健医療、法整備支援、財政管理改革。
(d) ミレニアム開発目標:ベトナム政府は、ベトナムにおける現状、各セクター計画で設定した目標をも踏まえ、ミレニアム開発目標を国内化。我が国は、重点分野の(ロ)「社会・生活面での改善」を通じて、ベトナム政府の目標達成を支援する援助を行っていく。また、重点分野の(イ)「成長促進」の支援を行うことは、これらの社会・生活面での改善に関わる目標を達成するための、経済的な基盤を作っていくことにつながるもの。
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