ODAとは? ODA改革

ベトナムで活動するNGOとの意見交換

2002年11月20日
国際協力総合研修所(東京市ヶ谷)

 以下は、ODA総合戦略会議でのベトナム国別援助計画改定作業の一環としての、上記会合の議論の概要をまとめたものである(順不同)。

1. 本日は16団体計23名のNGO代表・関係者の出席を得た。河野外務省国別計画策定室長よりの本会議の主旨説明、大野政策研究大学院大学教授及び伊藤JANIC常務理事からの追加説明、各NGOの活動紹介の後、概要以下のような自由討論が行なわれた。

2. まず、以下の4点の指摘があった。

1) ベトナムでの支援は、社会主義国家・共産党一党体制という政治体制の中で行なわれているという認識が必要(NGO活動に対する越政府による干渉があるとの認識)
2) ドイモイ政策の進展の結果として、新しい孤児、貧困といった問題への対処(例えば、親が経済機会を求めて子供を地方に置き去りにし大都市に移住)
3) これまで、現地大使館による支援について状況判断が遅く、また、支援を行うにしても現地・草の根レベルにうまくアピール出来ていないケースがあった(1999年フエ洪水の場合など)
4) 大使館・JICAは、現場に出ているNGOから情報を吸い上げずに効果のない支援を行う傾向がある(看護婦派遣の場合など)


3.
(1) このうち 3)、4)については他のNGOからも、大使館が現地・NGOからの情報を十分収集していない点につき同様の問題指摘があり、大使館にNGO専門担当部署を設けるなどの提言があった。また、外務省として行う「ODA大使館」といった試みもあるが、NGOにODA政策を説明する機会を設けるといっただけの形骸化してものにしてはならないこと、中身の充実のためには大使館側の改善と同時にNGOも積極的に意見を述べる努力が必要との指摘があった。また、「ODA大使館」を実施するにあたり、ハノイなど一部地域だけではなく、全地域のNGOを対象とした仕組みが必要との意見が出された。
(2) 加えて、現地でのNGOリソースセンターの活動、世銀とNGOとの連携、人口・リプロダクティブヘルスなどの個別分野での協調・メーリングリストなどの紹介があった(従って、より包括的な、ベトナムにおけるNGOネットワーク全貌の把握が必要と思われる)。


4. 上記 1)(越政府のNGO活動に対する干渉)については、そのような状況はベトナムだけではなく多くの途上国に共通であるという意見があった。また、出席したNGOの中には、越政府による干渉といった認識はなく、むしろ支援は途上国の行政を巻き込んで途上国の法律の下で行わなければならないとの指摘もあった。JICA等を通じた公的支援と草の根的NGOの支援では、ベトナム政府の対応振りに大きな差があるという不満があった。

5. また、日本政府はチョーライ病院等の大都市優良病院に医療支援を集中させ優先し、省立病院などの地方ニーズに対応していないとの指摘があった。

6. コミュニティ・ラーニング・センター(公民館)を通じたノンフォーマル教育支援の重要性が述べられた。

7. これまでのわが国による十年間の実績を無視せず、過去の実績(投資)を最大活用する援助を続けるべきであり、また、越政府・省庁の五ヵ年計画・十ヵ年戦略、国際機関・他ドナーとの連携の必要性が述べられた。(これに対して、大野教授より、様々なセクターに対する支援要請はあるが、今回の国別援助計画では出来るだけ分野を絞り込み総花化を防ぐという目的があるので、過去からの継続性も重視する一方で、カットする部分も出てくることを了解願いたいと述べた。更に、越に対する支援は各国・国際機関と行うのだから、重要だからすべて日本がやるというわけではなく、なぜ日本のODAでなければならないかといった議論が必要だと指摘した)。

8. 「国益」という言葉を狭くとらず、アジア地域の安定という広い文脈で理解すべきとの意見があった。

9. ODAの要請主義を見直すべきであるとの提案があった。(これに対して大野は、すでに現地関係者は過去の要請主義を越えて、越政府との政策対話を通じた双方向関与を提言する方向で進んでいると報告した。)

10. JBICのインフラ支援に関連して、インフラ建設がもたらす環境へのインパクトや移転住民の長期的影響などを十分考慮する必要があること、わが国は、設備建設は得意でもこうした長期的影響の評価といった点については比較優位があるとは思われないとの指摘があった。これを改善するにはベトナム市民社会の分析を強化せねばならない、住民参加にしても社会主義下での「参加」(動員?)であるから、このような状況下での支援の問題点・リスクを十分把握したうえで実施しなければならないとの意見が出された。また、ベトナム一国単位ではなく、メコンデルタならば中国、中部開発ならばカンボジアといったように、「地域」の視点が必要との指摘があった。

11. 複数のNGOより、オープンネットワーク方式について質問・疑問が出された。コアパーソン(北野・大野)の独占的意見にならないかという懸念に対し、大野教授より、委員会方式では総花化の懸念があり、絞り込むためには原案を作る際に責任をとって取捨選択する人物が必要であり、コアパーソンは、その責任を果たすつもりである、このやり方は自分(大野)の信念から来るものであるとの説明があった。他方、3月頃には中間報告が出るので、案が出た後はいくらでも叩いていただきたい、と述べた。また、第2回ODA総合戦略会議で配布した大野レジュメにある「開発戦略チーム」について質問があり、これに対し、大野教授より、これは現地担当者が入れ替わった後にも能動的ODA政策を継続させるために提案された最終的な仕組みであり、これは中長期目標として、最初の1年間は現行の大野・北野体制でやっていくことが述べられた。

12. 国別援助計画の作成後の取り扱いについて質問があった。河野室長および大野教授より、これは前回のODA総合戦略会議でも質問があった点だが、外務省のプロダクトを政府レベルのものとする必要があり、そのやり方については、ベトナム改定作業が最初であるから、試行錯誤しながら行うというほかはないとの説明があった。

13. 会合の進め方について、今回はショートノーティスすぎて準備ができなかった点について苦情があり、また、ある程度テーマをしぼった方がよいとの意見もあった。これらについては次回から検討・改善することが約束された。また 1)NGOとの意見交換は、伊藤JANIC常務理事が大野教授と連携して行うこと、2)会合の場以外にも電子メールで随時意見を受け付けること、2)近日中に外務省ホームページ内にベトナム国別援助計画改定の専用サブページを設けることが報告された。
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