ODAとは? ODA改革

ベトナムで活動するNGOとの意見交換
(第4回)

平成15年年8月27日
於:外務省仮庁舎別館516号室

 以下は、ODA総合戦略会議でのベトナム国別援助計画改訂作業の一環としての、上記会合の議論の概要をまとめたものである(順不同)。

1. 本日は6団体(国際開発救援財団、日本国際ボランティアセンター、日本フォスタープラン、ブリッジ エーシア ジャパン、JAPA VIETNAM、JANIC(順不同))計9名のNGO代表者・関係者等の出席を得た。

2.
(1) 冒頭、野田外務省国別開発協力課首席事務官より、次の通り述べた。
 現在、ODA改革の流れの中で、ODA大綱の取り纏めも大詰めを迎えているが、一方でベトナムを始めとした6カ国について、国別援助計画の策定・見直し作業を進めている。ベトナムについての改訂作業については、これまでNGOの方々とは、3回の意見交換を実施してきており、こうした意見交換の結果については、Web上でも公開してきている。こうした意見交換を通じ、大筋ではご理解頂いていると考えている。今回は、事前に送付した現地案を踏まえた意見交換を行うが、前回に引き続き、現地より北野公使が用務帰国しており、冒頭北野公使より今回の現地案作成の経緯など若干の説明をしたい。

(2) 引き続き、北野公使より、次の通り述べた。
 前回の意見交換を含め、NGOの方々から貴重なご意見を頂いていることに感謝したい。現地においても「ODA大使館」を通じ、現地で活動するNGOの方々との意見交換を継続的に行ってきている。現地案については、前回のショートドラフトで作業段階にあったセクター分析を踏まえ、重点分野・重点事項を書き込んだ。重点分野・重点事項については、1)「支援に重点的に取り組む」、2)「支援を検討する」及び3)「重点的な対象とはしない」とのカテゴリーを設け、ODA資源が限られる中、効果的・効率的な援助を実施すべく重点化を志向している。なお、3)については、援助を全くやらないといった趣旨ではない。また、本計画の適用期間については、現在外務本省においても検討しているところであるが、他の国別援助計画は5年程度を念頭としているものもあるが、ベトナムについては、開発状況の進展の速度が速いこと、ベトナムの5カ年計画との関係といったことを踏まえ、約3年を目途としている。また、NGOの方々からの指摘を踏まえ、環境社会影響への配慮、評価のフィードバックなどについて、加筆を行った。本日の議論も踏まえ、より良い計画としていきたい。

1. 主な意見交換

(1) 重点分野・事項に「成長を支える人材育成」が挙げられていることは大切。日本などに留学した人材が埋没しているのが現状。留学生については、これまで政府高官の子息が多かったが、最近は変化してきている。

(2) ・これまですべての意見交換に参加したが、こうした計画が如何に策定されていくのかという過程を理解することができとても良かった。広範な意見交換の結果を踏まえ、全体としてバランスの取れたものになっている。

前回のショートドラフトと比較し、NGOとして主張してきた、評価のフィードバックの観点が書き込まれ、大きな進展があったと考える。また、越政府との政策対話を重視している意義も非常に大きい。他方、今後、大使館の関係者もローテーションで異動していく中で、本計画をどのようにして実施していくのかが課題と考える。
他方、重点分野・項目については、インフラ、ハード面重視といった印象が強く、成長促進では詳細に書き込まれているが、生活・社会面での改善では羅列的に記述されているといった感が否めず、軽視されている印象を受ける。
目的・理念については、経済的視点のみが記述されている印象がある。
目的・理念の部分にある「我が国が開発や援助に関わる我が国の考え方を知的リーダーシップをもってベトナムで実践し」とあるが、「我が国考え方」や「知的リーダーシップ」とは具体的にどういうことを指しているのか。
これまでNGOより主張してきた地域的観点について、「拡大メコン流域開発の地域的視点」が書き込まれているが、これはどういったことを指すのか。
「草の根レベルの民主主義など統治(ガバナンス)の問題」とあるが、草の根レベルの民主主義を問題として捉えているのか。


(3)
重点分野・項目を明確化され、重点化されたことを高く評価。
目的・理念の部分で、「我が国の安全保障および経済的繁栄…」といった国益が冒頭に記述されているが、まず、ベトナムがどのような国になっていくべきかを記述した上で、ベトナムの発展が日本の繁栄に繋がるといった流れで始める方が良いと考える。
予想以上にハード面重視といった印象がある。
都市と地方、北部、中部及び南部といった格差是正の問題は重要であり、これに対して如何に取り組むかといった記述が必要ではないか。
支援を行うにあたり、ベトナムの様々な社会的な状況を考慮すべきでないか。
「生活・社会面での改善」の「その他」にある「上記セクターへの支援に際し、ジェンダー、少数民族に係る視点を念頭におく。」にある「念頭におく」とは具体的に如何なることを指すのか?
ODA大綱にも係わるが、「顔が見える支援」を日本のODAを通じて如何に実現していくのか。自分たちは、日本の「顔」をどう表現したらよいかいつも悩んでいる。
「生活社会面の状況と課題」の分析においては、就学率は高いとしていながら、重点事項の部分で就学率の向上にかかる援助に取り組むとしているのは整合性がとれていないのではないか。
「生活・社会面での改善」の「その他」に障害者への支援が入っているが、「その他」の扱いでは軽視していると理解されるところ、「保健医療」に入れて欲しい。


(こうした議論を踏まえ、北野公使、大野教授から以下の点をコメントした。
(北野公使)
「成長を支える人材育成」の重要性につき共有して頂き感謝。具体的な支援のあり方など更にコメントがあれば伺っていきたい。
インフラ・ハード面の取り扱いについては、分野でとらえるのか、援助投入の手段でとらえるのかとの点がある。例えば、社会セクターである教育、保健・医療分野においても援助の投入としては施設の整備・機材の供与といった形態をとることがある。我々としては、成長促進か生活・社会での支援かといった択一的なものではなく、両方が重要と考えており、経済成長が生活・社会面での改善にも資するといったことを考慮すべき。また、援助投入の手段については、個別の状況を踏まえ、日本として効果的な投入ができる最善の手段を考えていくのだと思う。
この国別援助計画の今後の実施については、JICA及びJBICの国別事業実施計画によって、それぞれの機関の実施の方針として更に具体化されていく流れがある。また、この国別援助計画をしっかりと実施・運用することが重要であるが、毎年、この計画に関連する進展をとりまとめることも検討されると思う。
「開発や援助に関わる我が国の考え方」については、前回も議論させて頂いたが、本計画に書き込まれているものではなく、例えば、「持続的な貧困削減のためには経済成長が重要」といった考え方や、「長期専門家を派遣し、先方機関との長期的な関わり合いの中で技術移転を進めていくことが有効」といった考え方など、政策レベルから援助の実施のやり方までについて、これまで議論されている日本の考え方をまとめて言っているものということができる。「知的リーダーシップ」とは、こうした我々の考え方を発信し、ドナーコミュニティーと意見交換をしていく作業を指している。
「理念・目的」の書き方については、なぜベトナムに対して援助をするのかについて国民に対する説明責任を果たすためには、日本にとってのベトナムの意味、何故ベトナムを我が国が支援する必要があるのかといった視点が重要。目的・理念の部分は、経済面のみならず、日ベトナム関係、日・ASEAN関係といった、外交・政治を含む広い文脈から記述している。
地域的な観点については、前回の意見交換でもNGOの方々からベトナム一国のことを考えるのではなく、地域的視点が必要といった指摘を踏まえ記述したもの。拡大メコン流域開発との考え方の下で種々のプロジェクトが議論されているが、個別のプロジェクトがその国にとっての利益をもたらすのみならず、国境を越えた、地域的な利益をもたらすものがあるので、こういったプロジェクトを地域的観点を踏まえ検討していくということである。
「草の根民主主義」という記述については、こうした取り組みがあるが、ガバナンスの面での課題があるという趣旨。
地域間格差の是正にどのようにして対応するのかについては、それぞれ個別の課題についての処方箋をこうした計画に盛り込むことは難しいと考える。
援助を実施するに際し社会的状況を援助実施するにあたり考慮するといった点については、制度・政策環境を考える際に視野に入ってくるものと考える。
ジェンダー等の視点を「念頭に置く」とは、個別具体的な支援を行うにあたり、こういった諸点を考慮しつつ、支援を実施していくということである。
「顔の見える支援」についての指摘があったが、日本の援助スキームの中には日本の関係者の参加によって行うものから、アンタイドの援助まで様々なものがある。日本のNGOの活動については、日本の「顔の見える援助」として積極的に支援していきたい。
障害者福祉については、「その他」として書いているからといって軽視している分けではなく、保健・医療に留まらない問題であるから、このような位置づけとしている。)


(大野教授)
本件見直しのプロセスでの成果は、現地の活性化がされたことである。こうした活性化は、当初の最終目標としていたことであり、これが初めから実現できたことを歓迎している。実際の最終案作成作業は、現地ODAタスクフォースが練り上げ、自分(大野教授)はこれに対しコメントするといった形となった。このような作業ができる現地チームは、世界の中で、そう多くはない。
他方、本計画に関しては、原則的な議論を十分行ったかというと、必ずしもそうではなかった。開発に係る状況については、学識者がもっと関与すれば、何故こうした援助の形態が適切かといった根本論をもっと行ったのではないかと考える。こうした原則的な議論を行う場を設けていくことが今後の課題である。
もう一つの課題は、継続性ということである。大使館員等は一定期間で異動になることもあり、こうした継続性を如何に確保するかが課題である。
一方、現地チームがオーナーシップを持って作っていったことは今回のプロセスのよい側面である。
また、本計画は、ODAの方針を決める文書であり、ここに書き込まれていないから重要ではないということではない。本計画における重点事項は、ベトナムの開発にとって重要か、ドナー全体の観点として取り組むべき優先順位が高いと言えるか、日本のリソースを使って投入することが適当かとの視点から検討がなされるべきものであって、重要な問題であってもこれらの要件を満たさないものもあり得る。)


(4) 現地案は、これまでの議論を取り入れたものとなっており満足している。一方、「対話型」や「国民参加型」といった考え方が示されているが、大きなプロジェクトでは住民との衝突が社会問題となっていることにも鑑み、「住民との対話」といった視点も必要。「対話型」、「国民参加型」「住民との対話」のそれぞれの相互関係如何。

(これに対し、北野公使のコメントは以下の通り。
「対話型」、「国民参加型」及び「住民との対話」については、それぞれ異なった意味がある。「住民との対話」については、「効果的な援助のための実施上の留意点(P.9)」として環境社会面での配慮の観点から書き込んでいる。これは、前回の意見交換の際、NGOの方からの指摘を踏まえてのものである。)


(5) これまでの意見交換を通じて出された意見が網羅されているとの印象を持った。
ベトナムは実際高い経済成長を達成しているが、NGOとして関係している農村の生活改善に繋がっているとは思われない。これは社会的な仕組みの問題があるのではないか。


(これに対し、北野公使、大野教授のコメントは以下の通り。
(北野公使)
実施に多くの統計ではベトナムの貧困率は改善されており、こうした改善が経済成長によってもたらされたことも事実であると思うが、経済成長だけでは解決されない多くの課題もあることも認識している。こうした課題に対してもODAとして取り組むこととしている。ご指摘の「農村の生活改善につながっていない」という問題が、何に起因するのかは、個別に考える必要があろうと思うが、経済成長は、ベトナムの社会全体の底上げに繋がっていると考える。
なお、初等教育については、前にも指摘があったが、その後の人生の機会に関わる問題であるので、重点分野として取り組みたいと考えている。ベトナムは、初等教育の就学率は非常に高く、95%程度といわれている。一方、これは、就学当初のものであり、その後のドロップ・アウトが少なくないこと、山間地域、僻地では他の地域に比して就学率が低いといった問題がある。このようなことから、就学率を高めていくこともも、重要な課題と考えている。


(大野教授)
統計の精度を上げる必要はあるが、ベトナムは貧困削減の観点から優等生といえる。また、成長するが故にドロップアウトする児童が増えるといった現象もある。)


(6)
「成長を支える人材育成」、「農村金融促進」、「地場産業推進」といった市場経済化に繋がるものを重点事項として考えていることを評価したい。
「保健医療」については、「第一次・二次・三次機関」と分けられ、リファラル体制について書かれているが、NGOは第一次機関(コミューンレベル)をカウンターパートとしているが、第一・第二次機関の連携が全くできておらず、解決が難しい問題などもあり、こうした点に対する支援を期待したい。
地方基幹インフラについては、維持管理が課題であり、こうした問題に取り組むことが必要。


(これに対する、北野公使、大野教授のコメントは以下の通り。
(北野公使)
保健・医療に関しては、政府ベースの援助においてもNGOの援助においても「リファラル体制」に着目する視点があることは興味深い。政府ベースの援助においては、中核病院への援助に力を入れてやってきているが、効果が中央(点)に留まることなく、地方(面)にも広まっていくような支援をしていきたいと考えている。
インフラの維持管理については、地方のみならず、一般的にその重要性が指摘されており、投入した資金を有効活用する意味においても重要である。


(大野教授)
地方インフラの維持についても、最終的にはベトナム人自身による維持管理が重要であり、NGOの方々が catalystとしてgood practice を共有するシステム・ネットワークを作ることが重要と考える。)


(7) 「NGOの活動の円滑化へのベトナム政府への働きかけ」とあるが、これは何を意味するのか。

(これに対して、北野公使のコメントは以下の通り。
 これは、現地及び東京での意見交換を踏まえて記述したものであるが、ベトナムが一党体制であるが故に、ベトナムでのNGOの活動が決して行いやすい環境ではないといったご指摘もあり、政府とNGOがODAのパートナーであるといった視点も踏まえ、ベトナム政府との関係で働きかけなどを行うべきことがあるということである。どういった場合に働きかけを行うかということについては、ケース・バイ・ケースで検討していく必要がある。)

(8) 今後、NGOの側からODAを活用する場合、窓口や手続き如何。

(これに対し、北野公使より、本省NGO支援室や現地大使館のNGO担当官に相談頂きたい。スキーム毎に対応が異なるため、各プロジェクトにあった支援が必要となると思われるところ、こうした窓口等を通じ、引き続き情報提供をしていきたい旨応答した。)      
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