ODAとは? ODA改革

ベトナムで活動するNGOとの意見交換
(第2回)

平成15年2月13日 
於:中小企業センター(東京千代田区)

 以下は、ODA総合戦略会議でのベトナム国別援助計画改定作業の一環としての、上記会合の議論の概要をまとめたものである(順不同)。

1. 本日は7団体((財)家族計画国際協力財団、(財)国際開発救援財団、JAPA VIETNAM、(社)セーブ・ザ・チルドレンジャパン、(特活)日本国際ボランティアセンター、ベトナム「子供の家」を支える会、(特活)ブリッジ エーシア・ジャパン)計10名のNGO代表者・関係者及びJANIC伊藤常務理事(ODA総合戦略会議委員)の出席を得た。

2.
(1) 冒頭、河野外務省国別計画策定室長より、前回の会合でNGOの方々からご要望のあった、時間的余裕をもった会議日程の設定及び意見交換において議論していただきたいことの明確化について、JANICのご協力も得て、本日の会合に取り組んだ旨述べた。また、本改定の趣旨について、今般、効果的・効率的なODAの活用が求められている中、木目の細かい援助を実現すべく国別のアプローチを強化するために国別計画を策定している旨を説明しつつ、また、こうした趣旨を踏まえ、本日の意見交換を通じ、(配付資料「議論していただきたい項目」に基づき)わが国として「何のため」にベトナムに対する援助を行うのかといった問題意識を中心に議論したい旨述べた。以下、JANICの伊藤常務理事のご厚意による司会で、配布資料に基づき((1)対ベトナム援助の目的・国益、(2)「ベトナムの開発にかかわる状況」を分析するにあたっての知見・提言)及び(3)パートナーシップの中での日本の役割に分けて)自由討論を行った。

(2) 自由討論に先立ち、前回のNGOとの意見交換、学識者との意見交換が行われているが、こうした意見は如何に国別援助計画構成案に反映させるのかといった質問があったところ、大野教授より、原案ができた段階でNGOからの意見のうち取り入れるべきものがはいっているか、関心をもってみていきたい旨、また、現地の大使館を中心とした作業グループと現地NGOとの連携が必要な旨述べた。

3. 対ベトナム協力の目的・国益

(1) NGOよりの主な意見

NGOによる支援は、同じ「地球市民」として行うものであり、見返りを期待して援助しているわけではない。
ODAの大きな柱は国益であるが、誰のための国益かいう点について、両国国民のための国益といった視点に立った上での改定作業を期待。その意味で両国民の信頼関係の醸成が重要。
(ODAの国益といった場合)最終的には、日本の安全保障、強いては東南アジアの発展と繁栄こととなる。また、その上で、経済発展のみならず、国民生活の安定の確保といった視点が必要。
貧困対策を重視するNGOとインフラ整備の必要性を強調するODAの異なった視点があることは(その性格上)やむを得ない。なお、これまでのODAは、現地住民や環境への配慮が足りなかったこともあり、NGOとしてはこうした点に関心を持っている。
ODAは、ODAが必要でなくなる状況を作り出すことが最終目的。その意味で、ODAは、憲法前文の精神に則り先進国の責任を果たすためのもの。また、市民の意見が反映されるかは日本の市民社会の成熟度を示す。


(2)
(a) こうした議論に対し、大野教授より、NGOが市民的観点で支援するのは当然だが、税金を用いるODAはすべての国民が納得するやり方を模索せねばならない。個人的には、グローバルな課題への対応と日本の利益の両方の追求を並列させる「ODA二分論」が一つの答えではないかと思っている。また、ODAについても、英、北欧諸国を中心とした貧困対策、政策支援、人材育成といった分野を重視する傾向があり、こうした中、日本としては、経済インフラ整備も視野に入れた経済成長を通じた貧困削減といった視点を主張している旨述べた。更に、ODA総合戦略会議でも「国益」 という言葉を用いるべきかどうか、地球市民として援助をすべきか、また、日本のためになることを強調すべきかで議論が分かれていると述べた。

(b) 河野室長からは、「地球市民」として、あるいは、人道的な観点から援助を実施するというのは自然な発想であるが、国別援助計画策定の観点からは、そのような普遍的な要因に加えて、何故、日本としてベトナムに援助するのか、何のために援助するのかといった視点が必要となってきていることを理解していただきたい旨述べた。


4. ベトナムの開発にかかわる状況を分析するにあたっての知見・提言

(1) NGOからの主な意見

日本の高度経済成長や東アジアの奇跡の経験を伝える、というのであれば、その後の環境悪化、公害、過疎化、アジア通貨危機も併せて考えるべき。
経済と社会セクターが分かれているが、両者は相互に連関のあるものであり、経済成長の社会セクターへの影響も検討すべき。
(経済成長と相俟って)都市部と農村とギャップが拡大しつつあり、また、少数民族居住地域の貧困が問題、また、ある調査では、インフォーマル・セクターがベトナム経済の20%を占めるともいわれている。その担い手は女性、子供であり、こうした状況への対応も検討すべき。
  (こうした議論に対し、大野教授より、貧困に直接裨益する援助だけを評価する(教育や医療を整備すれば経済成長が達成される)という傾向が欧州ドナーなどにはあるが、日本は成長支援と社会支援の両方のバランスを重視している旨述べた。その意味で、医療、教育の充実は必要であるが、雇用創出のための施策も必要であり、例えば、べトナムでは、国道5号線の整備により雇用創出に繋がったといわれる旨述べたのに対し)
貧困にフォーカスした支援だけではなく、インフラ整備の必要も否定しないが、そのインフラは大型経済インフラと言うよりは社会インフラが中心となるべきである。その意味ではベトナム独自の経済発展を支えるといった視点が必要。他方、貧困を無くすことが経済成長の基礎条件となる。
NGOの現場で多いニーズは、教育・医療といった分野であり、道路については小規模な砂利補修を行うが、直ぐ劣化してしまうため、維持管理のシステムが必要。
(更に、こうした議論を踏まえ、大野教授より、インフラ整備についても水、農村道路といった農村部のインフラのみを有効と考える見解、ODAで道路・港湾・電力など大規模インフラも実施すべきという見解があると思うが、日本としては後者の考えと思う旨述べたのに対し)
農村と都市を結ぶインフラ整備により、農村から都市部への若者の流出が加速され、農村部が廃れていくといった問題にも留意する必要があり、雇用を農村部で生み出すための農工業の振興、農村での職業訓練等が重要。
これまでのODAは都市部を中心としたものであり、ベトナム人口の70%が農村地域住民であることを考慮すべき。その意味で、総合的な観点から日本として特色のある援助が可能。
都市部及び農村部の視点を踏まえるべく、ODAにおいてNGOとの案件共同形成といった取り組みを提案したい。また、小回りが利き、木目の細かい援助といった視点からODAの何割かをNGO支援に振り分けるといった具体的数値目標を検討して欲しい。
従来の日本のODAは、効率性を重視しすぎていた(バランスを欠いていた)、あるいは経済成長が地方や貧困層に十分波及してこなかった。
ベトナム政府自身が大規模インフラを重視しており、ベトナム政府の意思を尊重する必要はあると思うが、こうしたインフラ建設にあたり、しっかりとした環境・所得格差といった問題に与える影響への配慮等も同時に行われなければならない。その場合、ベトナム固有の条件(市民社会、法制度)の分析が重要(配布資料「ベトナムに対する国別援助計画」見直しに対する意見、を参照)。日本にはそうしたソフト面での比較優位がないと思われるので、支援国会合等で他ドナーと違う点(インフラ重視)ばかり強調せずに、英、北欧諸国の貧困削減重視に至った経緯・考え方も考慮し、協調して支援していくことも検討すべき。また、ベトナムとの十分な政策対話を踏まえた援助の実施も必要。


5. パートナーシップの中での日本の役割

(1) 主なNGOの意見

配付資料の「対越国別援助計画の見直し内容構成(案)」にある重点分野に「経済インフラ整備(経済成長のベース)とあるが、如何なる根拠に基づいて記述されているのか?
日本の優位性として産業関連のインフラ整備、政策支援、人材育成を挙げていたことに対してその根拠は何か?
昨年12月の対ベトナム支援国会合では、日本として他ドナーとの差別化を図り大規模インフラの重要性を主張したが、日本の特色を出すために大型インフラに偏重しているのではないか。NGOとしてインフラ整備自体の重要性を否定するものではないものの、環境・社会面での配慮といった面を日本としては強化すべきである。また、環境・社会インパクトの人材育成を支援すべきである。
教育セクターでは、現地でNGOを含めたドナー会合が3ヶ月に1度程度行われており、こうした各関係者が同じ立場での協議のあり方が必要。
(こうした議論に対し、大野教授より、重点分野としての「経済インフラ整備」については、他ドナーが行わないという消極的理由と共に、これまでの実績も踏まえ日本としてやるべきといった面がある旨、また、これまでの実績を踏まえた上での計画策定といった点については、同教授が参加した石川プロジェクトでの経験を踏まえ、(政策支援については)効率性が悪い、先方政府に働きかけるに努力が足りなかったといった反省すべき点がある旨述べた。また、教育セクターに係る協力について、大野教授より、教育セクターについては、JICAによるマスタープランが作成されているが、わが国として、比較優位を有する分野か、わが国の重点分野を選定する場合、こうした比較優位が選択基準となる旨、また、外務省より、一つの例示として、ODAの選択と集中、効果的・効率的活用といわれる中、ベトナムでの教育セクターについてNGOの方々の支援に委ねるといったことも考え得るのでは無いかという旨述べたのに対し)
例えば、ODAによる小学校建設はコストが割高であり、むしろNGOによる支援が適している分野と考える。また、NGOのノウハウをODA実施に活かすような関係作りも重要である
小学校建設という施設整備に加えて、施設活用に資するソフト面での協力をNGOは積極的に行っている。
教育セクターを含め、企画・調査段階から現場を熟知した国際NGOを含むNGOと協議することは有益であり、ODAとNGOの連携のあり方を再検討すべき。
その意味で、要請主義ではコンサル・施工業者が事前に仕込んだ案件をODAで行うといったこともあるため、配付資料の「対越国別援助計画の見直し内容構成(案)」に書かれている「要請主義をこえて対話型の案件採択を指向」を支持したい。
ベトナム人を日本に招聘するにあたり、JICAではベトナム政府が選んだ良家の子女ばかりが選抜される傾向があり、また、AOTSは産業関係者だけが招聘されているのではないか。より広範な分野の人材育成が重要であり、NGOのカウンターパート等についてもODAで招聘できるようにできないか。
NGOとODAは対等な関係であるべきで、NGOに対して社会セクターの質問に集中しているのはおかしい。全体の話しをすべきだし、ベトナムで活動する日本以外のNGOの意見も聞くべき
このページのトップへ戻る
目次へ戻る