ODAとは? ODA改革

ベトナムに関する研究者・専門家との意見交換

2002年12月25日
於:外務省



 以下は、ODA総合戦略会議での議論を踏まえ外務省が行っているベトナム国別援助計画改定作業の一環として開催した上記会合の議論の概要をまとめたものである(順不同)。

1. 本日は18名のベトナム研究者・専門家の参加を得た。冒頭、河野外務省国別計画策定室長よりの本会議の趣旨を説明した後、大野政策研究大学院大学教授より追加的に説明を行い、本計画改訂にあたり参加研究者・専門家の方々より以下のようなポイントが指摘された。

2. ポイント

(1) 我が国援助における越の位置づけ

納税者に対するaccountability を重視した位置づけを検討すべき。
東アジア経済外交の一環として越を位置づけ、その産業競争力強化を図ることが重要。(その意味で、経済産業省とより連携を図るべき)
中国とASEANとの間に位置する地政学上の意義、米との通商協定の締結といったことを踏まえ、AFTAの動向、中国との経済連携といった観点を考慮すべき。
USBTA及び中国一極集中といった懸念から、日本・台湾・タイ・越といった枠組みのあり方も考慮すべき。


(2) 本計画策定における越政府との関係

従来の一般勧告型を越えて、具体的政策・実務レベルで協議すべき。
日越で今後10年間の長期的ヴィジョンを政策文書で合意・明示すべき。
越はタイ等の先行ASEANと比し、日本型の産業研究・支援といったアプローチが受け入れられやすい。
従来の東アジア成長モデル・pro-poor growth といったアプローチが適切か改めて検討すべき。
ドイモイ政策下の成長源は制度改善と投資の増加であるが、今般のバイク、自動車問題は外資・投資に悪影響を与え、その意味を越政府に理解させるべき。
経済原理のみならず、ODAが持ちうる政治的インパクトについても留意すべき。


(3) 越の抱える開発課題

民営企業育成が重要。そのための法整備、行政環境(土地証書の民間企業への発行等)の整備が必要。
産業育成、産業政策が重要。
民間・産業育成重視といった価値判断を踏まえ優先分野を絞り込むことができる。
民間企業の銀行融資担保に関し、「土地証書問題」がどうなっているか不透明であり、また、予算も執行機関は多すぎ不透明であり、これで産業支援が可能か疑問。
7,8割の国民が農村地域に居住していることを踏まえ、不安定な農産物価格、土地無し農民への転落、農村開発金融の未整備といったことを踏まえ、明年2月に、従来の貧困者、中小企業、緊急災害対策といった目的の各銀行を統合し、social policy bank を設立予定。こうした越のオーナーシップに対する知的支援を含めた支援が重要。


(4) 地域的枠組みとの関係

インフラ(及びその経済効果)、環境などの分野では、二国間の枠組みだけではなく、GMS、CLMV・タイ・中国といった広域的枠組みのデメリット・デメリットを考慮すべき(メコン河上流開発の下流国への影響、東西回廊による人・モノの流れの円滑化等)


(5) 国内問題との関係

援助を実施するにあたり、国内少数民族(中部高原、北部山岳部等)への配慮に留意。
(他方)全体としては(他の途上国との比較では)、こうした少数民族への配慮する必要性は低い。
こうした民族問題は、貧困という切り口で考え、学識者としては、1)越の成長メカニズム、2)越の貧困発生メカニズム、3)その両者の関係を研究すべき。
成長戦略・インフラ整備といった案件であっても、国内の貧困・地域対策になってしまうこともあり留意すべき。


(6) その他

こうしたオープンネットワーク方式での意見交換に賛成。フィールド・ワークを行っている現地の学識者との意見交換の場を設けて欲しい。
開発経済学者と地域研究者が協力するといった石川プロジェクト以来の伝統を継続して欲しい。
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