ODAとは? ODA改革

「ODA総合戦略会議」第9回会合・議事録

1.日時

 平成15年3月31日(月)10:00~12:00

2.場所

 外務省飯倉公館

3.出席者

 ODA総合戦略会議委員(ただし、川口外務大臣(議長)、矢野副大臣、新藤政務官、浅沼委員、脊戸委員及び宮原委員は欠席)。花田麿公前駐モンゴル大使。外務省(事務局)より古田経済協力局長、小田部総合外交政策局審議官他が出席。関係府省、JICA(国際協力事業団)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加。

4.議論の経過

(議事の概要)

 まず、国別援助計画について、花田麿公主査(前駐モンゴル大使)、大野健一委員より、それぞれ対モンゴル国別援助計画策定の作業方針、対ベトナム国別援助計画見直しに関する中間報告ついての報告がなされた。また、渡辺議長代理より、新規国別援助計画策定対象国(モンゴル、パキスタン、インドネシア、インド)に係るタスクフォースの構成につき、説明があった。
 次に、ODA大綱の見直しについて、事務局(横井政策課長、須永調査計画課長)より、「政府開発援助大綱見直しの基本方針」(3月14日、対外経済協力関係閣僚会議決定)及び「ODA大綱に関する関係方面からの意見聴取」に関する説明があった。
 さらに、事務局(須永調査計画課長、小田部総合外交政策局審議官)より、ODA白書2002年版の概要(案)、イラク情勢及びイラク情勢を受けた我が国の人道・周辺国支援につき、報告があった。
 また、危機時におけるODAのあり方について、数名の委員より問題提起がなされ、議論が行われた。
 次回(第11回)会合は、5月12日(月)10時~12時に開催する予定。

(渡辺議長代理) おはようございます。年度終わりのお忙しいところお集まり有り難う存じます。ただいまからODA総合戦略会議の第9回会合を開きます。ご協力お願いします。今日の会合の議題は、大きく分ければ3つあります。一つが国別援助計画、もう一つがかねてより懸案になっておりますODA大綱の見直し、3番目が、事務局よりの報告ということです。最初に流れを言っておきますと、国別援助計画につきましては、既にご案内の通り、対モンゴル国別援助計画策定のタスクフォースの主査である、前駐モンゴル大使花田麿公さんの方から対モンゴル国別援助計画策定の今後の作業方針を始めにご報告頂きます。引き続きまして大野健一委員から、対ベトナム国別援助計画の見直しについての中間報告をお願いします。それから国別援助計画の新規策定国、これはモンゴル、パキスタン、インドネシア、インドですが、この大まかな今後の作業方針を申し上げますのでご討議いただきたいと思います。第2に、ODA大綱の見直しですが、これにつきましては、3月14日に開かれた対外経済協力関係閣僚会議で基本方針が出されています。我々の議論に基づいて基本方針が出されました。その概要等につきましては、事務局の方から報告がありますので、この報告に基づいて自由な討議を行なうというのが2番目のテーマです。最後の事務局からの報告ですが、これは2つありまして、一つはODA白書がいよいよ出るわけですが、その最新版の案をご紹介したいということです。それともう一つ、イラク情勢が大変緊迫していますが、この問題への日本の対応について報告がありますので、これについてディスカッションしたい。大きく分ければこの3つです。早速ですが、花田主査より、先ずご報告頂きたいと思います。花田さんには、色々これから大変なご協力お願いするわけですが、どうかよろしくお願い致します。

(花田麿公主査) ただいまご紹介に預かりました花田です。去年の6月までモンゴル現地で大使をやっておりまして、私自身は外務省入省以来、モンゴル関係の専門家としてやって来ました。そのことが、良い場合と悪い場合といろいろ出ますので、皆さんのご批判を仰ぎつつ、モンゴルの国別援助計画を策定する作業を続けて参りたいと思います。それではご説明します。私がこの策定作業の方針を立てるに当たって、ベトナムの例とか、いろいろ参考にさせて頂きましたが、モンゴルの場合はこういう形がよろしいのであろうというようなラインを、非常にラフですが作りまして、今日ご報告するわけです。東京サイドが、先ずタスクフォースを私以外の専門家2名、ODA総合戦略会議の委員の方1名、計4名で組織しまして、事務局は外務省、JICA、JBICから関係者を持って参加して頂くという体制を作りたいと思います。現地におきましては、モンゴル側にチームを作りまして、モンゴルにはJICAの現地事務所はありますが、JBICはありませんので、JICA事務所と大使館の担当者、およびそれのリーダーをもって組織するということです。TTと名付けましたが、東京サイドのタスクフォースのガイダンスを得つつ、事務局で先ず草案を作成します。それをTTの会議で検討するというやり方で、作業を進めてまいりたいと思います。それで作業のプロセスはどういうふうに進めるかということですが、ちょっと他の場合と違うかも知れませんが、今後のODAはどう進めていったら良いかということに関する参考案を、実は簡単ながら作りまして、それをTTで初歩的な検討をした上で、現地大使館に投げたいと思います。何故私がそういうことをしたかと申しますと、やはり主査をお引き受けした以上、私のモンゴルのODAに対する自分の理念というものが、どういうものであるかを先ずお示しして、ご批判を仰いだ上で、そういうふうに最初の草案を大使館で作って頂くことを考えています。それから私は大使館にいた経験からして、大使館サイドで最初から草案を作ると、現地から相当な圧力をいろいろ受けまして相場的になってしまいます。私は責任ある立場にありながらも、私の決裁は最後の本当に2分か3分、今日締切りで本省に迫られているので、来たら直ぐサインしなさい、なんていうような状態で、それはおかしいのではないかということです。今は体制が大分変わりましたけれど、そのような状態で現地では作業がなされましたので、少し基本的に自分がどういう考えを持っているかというのを、最初に示した方がよろしいかなと思います。この点について問題ありましたら、ご批判を受けます。それから、それを大使館に呈して大使館側で最初のガイドラインの原案を作成する。その原案に基づきまして、ここに各省庁の意見を取り入れと書いてありますが、協議をしまして、関係方面で広く協議をしまして、ガイドラインを作成したいと思います。そのガイドラインに基づいて、ワークショップを現地でする。現地のワークショップは色々なことを考えますと、5月の20日から31日くらいが一番可能性の高い時期だろうと思うのです。と申しますのは、6月に入るとモンゴルは大きな国際会議があるので、全部そちらの方へ取られてしまいます。それを過ぎますと、モンゴルのナーダムというお祭があり、その後都会に関係者の方はおられないで、皆地方に休暇に行ってしまう。そういうことでどんどん遅れますので、もうこの時期がギリギリだろうと思います。東京のTTの関係者も一緒に行って、ワークショップをやって、そして同時にドナー関係、国際機関、それからドナー国の意見をお聞きするのがよろしいのではないかと思います。ここに特にロシア、中国と挙げてありますのは、いわゆるOECD関係のドナー国ではないのですが、モンゴルにつきましては、ロシア、中国の圧倒的な影響力の下にありまして、従来から援助のシェアも大きい大国です。それなのにドナー国の意見調整の場には、この両国は入っていません。モンゴルは彼らとは上手にやって、それから国際機関、それからいわゆるドナー諸国とはまた上手にやるという。ダブルスタンダードで、しかも両方へ同じテーマについて支援を要請している場合が多々ありますので、やはり意見調整をする必要があろうかと思います。折角モンゴルを訪問する貴重な時間ですので、TTの関係者の方には、直接、モンゴルにおける援助社会と申しますか、そういうようなものが出来ていますので、そういうコミュニティーとも知合って頂きたいと考えました。こういうものを踏まえまして、現地の事務局において、第一次案は作成して頂き、更にそれに基づいて東京でワークショップを開催したいと思います。モンゴルと東京と両方でワークショップを開催することによって、大分幅広いご意見等をそこへ吸収することが出来るのではないかと考えます。特にここへ具体的に挙げていますのは、むしろ逆に落ちたら困るなと思いながら、忘れないように入れたという点もあります。必ずし烽アこへ挙げているのは、代表的なモンゴル関係のNGOとかNPOではないということです。こういうNGO,NPO、学術関係者、それから個人個人で、モンゴルというのは非常に関係者が少ないものですから、特に現代モンゴルに関心を持って研究されている方というのは、本当に十指に行かない。殆どが皆さんジンギスカン時代の元朝秘史のご研究をしておられて、本当に現代に関心を持っておられる方は少ないのです。もし、そういう方が大勢いれば、私がここにいる必要はないと思うのですが、関係者の方は皆幅狭いので、なるべく全部意見聴けるのではないかというような感じを持っています。それから現地で一つ、モンゴルにおいて日本の大手企業というものは、全部ODA関連で現地にお店を出しておりまして、ご自分で独自の投資というものが無い。こういうことで、関連企業というのは、全部政府関係です。そういうことの特殊な問題もありますので、こういう企業の皆様方のご意見も伺って、ODAというものが本当に日本と国際社会の未来のために役に立つかどうか、企業サイドではなくて、そういうことで企業の意見を聞くと同時に、また、企業に我々の考えを反映出来るのではないかと期待しています。それからODA関連で、コンサルの方が多く関与していますので、そういうコンサル関係の方々の意見も聞く必要があろうかと思います。こういうことで、第二次案を完成して行きたいと。二次案については、再びこういうような二次案を作成したことによって、関係する省庁の方と協議をした上で、最新案を作成してODA総合戦略会議へご報告するという段取りにしたいと思います。それで、その過程でベトナムのように、非常に野心的なメール作戦を展開するような環境に若干モンゴル関係は劣ると思いますので、事務局宛にモンゴルにおいても、東京においても、メールとか、それからメールではなくて、メール持ってない方では書簡で、出来れば書簡でもご意見を頂くということで、最終結果に反映させていったらよろしいのではないかと思っています。それでこの作業手順を、一応事務局の方から10月までの半年くらいを目途に終了して欲しいというようなご内意を頂戴していますので、そこまでの間に終了するように、日程の割付をしたいと思います。次に、この後に参考案というのを、一応私がちょっと荒っぽく書いたのですが、モンゴル支援の意義は何かというのは、ODA一般の意義、ODAをすることによる意義というものは、国際的な税金のようなものと私は理解していますが、意義の中で、特に我が国に関連する、我が国は北東アジアの一画に生きる国という位置付けを、これからすることが、どんどんそういうような位置付けが強まっていく傾向にあるのではないかと、私は感じていますし、将来この地域にEUのようなものが出来るとすれば、そういう方向に向かって収斂されていくのではないかというような予感を持っています。最近この関連国の国境地帯を歩いて来ましても、皆さんそういう期待が非常に大きいです。中国の北東、吉林省の社会科学院というのが、毎年北東アジア(韓国、北朝鮮、中国、ロシア、モンゴル、日本)に関する青書、ブルーブックを発行しているのですが、そこでは国単位で6カ国数えています。中国については東北三省と内蒙古、それからロシアについては極東の4州です。個人的にはロシアについては、サハリンも入れてイルクーツクから東全部は良いと思うのです。EUが成立したのは、やはり各国の生活水準が平準化されていることがあります。平準化された社会というのは、アメリカでも日本でもヨーロッパでもみたら、非常に効率の良い社会、そういうことを考えるとやはり北東アジアの生活水準の平準化に向けて、ODAを使っていって、モンゴルもその中の構成国という位置付けで考えたいと思います。それから、我が国の国際的地位の向上に役立つ支援というのは、モンゴルは外交関係樹立の際にも考慮した点、外務省が検討した点なのですが、国際条理において、必ず日本に一票を入れます。これは社会主義時代からなのです。社会主義という投票枠はないので、アジアという投票枠の中でモンゴルは常に日本を支持して下さって。それから大臣とか、総理の発言順位を替えて頂ける数少ない国です。くじ引きですから。2日の会議をやった時に、2日目になるかも知れない。その最初の日に発言日本がしたいと思う時に、順位を気軽に替えてくれるというような、我が国を非常に支持している国の一つですので、我が国がこれから、例えば国連に20%の我が国が負担をしていまして、アメリカが22、ロシアが多分0.8、中国が1.6だと思いますが、そのような少ない負担率のこの両国に、発言力その他、国際条理で非常に我が国が遠く及ばない。こんな中で、この国がこんなに支持してくれるのは非常に大きな意義があるというようなことで、これから我が国の国際条理における発言力の増強に役立つということです。それからもう一つは、地球環境の、環境保全というのは、韓国、日本、中国で、今丁度黄砂が舞っている時期ですが、この黄砂というものは中国の内蒙古、それからモンゴル、これ内陸部から上がってくるものです。日本だけじゃなくて、アメリカの方までこの黄砂が飛んで行き、これは地球の砂漠化が進んでいることです。この砂漠化を阻止するためには、モンゴルは非常に関心を払っていますが、もう一つ重大なことは、牧地牧畜です。これは遊牧ではないのです。牧地で牧畜する、要するに餌をやるのではなくて、野原で食べさせるものです。それは当てずっぽうに行くのではなくて、夏と冬の行き場所があって、せいぜい春秋更に行くという程度の移動なのですが、その移動の牧地での牧畜をやっていますが、それが非常に天候に左右され易いので、もう止めたら良いというようなアドバイスを超大国から受けていまして、モンゴルの若い指導層は、もう牧畜止めてしまおうという考えを持っています。ところが、これを止めると、モンゴルの広大な、日本の4倍もある領土があるのですが、この大草原が皆砂漠化してしまいます。ですから、こういう牧畜を支援することによって、この牧畜が21世紀の他国における生活のスタンダードを保持する、そのような方策について私は腹案を持っていますが、そういうような形で維持して頂くということが、非常に大事ではないか、それが地球規模の環境保全に非常に役に立つと考えています。それから、国際貢献と貧困削減、これはパーキャピタが370ドルから400ドルとか、いろいろ計算がありますが、そのくらいのところで今社会主義が倒れて、計画経済から市場経済へ移行しつつあるモンゴルでは、特に人口の3分の2が地方に住んでいます。その中の牧民というと、全体の人口の3分の1程度、7万から18万世帯といわれていますが、この人たちの生活状態というものは、非常に現代文明から外れたような貧しい生活をしています。いろいろな点で、貧困を削減して行くということが、先ほどの生活の平準化の方に近づくことですので、貧困削減というのは非常に大事かと思います。地方が貧困なために都市流入が起こるので、都市の社会セクターの問題が非常に鋭く発生しているという状態がありますので、この貧困を絶つということが非常に重要です。ただ、モンゴルは為替の自由化をしてしまいましたし、いろいろなものも自由化して、非常に市場経済の机上の理論といいますか、私の個人的な意見では、10年前のマクロ経済学者の実験場になってしまい、それで墲ノ今苦しい状態にあります。ですから、そういう点を含めて支援していく必要があろうかと思います。それから、モンゴルを支援していく上で、非常に注意すべきことというのを、ちょっと挙げましたが、1998年にモンゴルの大統領が訪日されました。その前にもうその方針が決まっていたのですが、総合的パートナーシップというのが、両国間にあります。これは次の(2)とも関連するのですが、こういう合意がありますので、モンゴル側では全部日本が丸抱えでみていて下さるという誤解を持っている節が、私現場にいて多々感じられました。その点を、そうではないのだと、その時その時、モンゴルの経済およびその時の社会、国際情勢、その他に従って重点的にやるべきで、TPOに沿う支援というものがあるのだということを説明しまして、今やるべきことはエネルギーだと、この次は何だというようなことで、重点を置いてやって行くことは必要かと思います。私は現場にいる時は相手国と協議していました。そういうことで、1、2は非常に密接に関連するのですが、そういうふうにやって行く。但し、モンゴルはこうあるべきだという、頭の中で考えた空論に基づいて勝手に、いろいろな計画を立てられるのですが、モンゴル政府はやりたいと思わないのです。コンピューターは出来ないのに、ここにコンピューターがあっても仕方がないのと同じように、要らないものを援助しても仕方がないので、やはりモンゴル政府の合意というか、して欲しいという要請主義というのは、非常に重要な内容を踏まえていると私は一方で感じていまして、モンゴル政府の要請の無いものをやっても仕様が無いので、これまで合意してきたこと、それからモンゴル政府の、両国で合意してやって来た実績を踏まえた上で、新しい重点的な分野を決めるというのが大事かと思います。それから、必ずしも全貌を掴むのは本当に難しいです。各国から要請があった場合、我々は出来るだけ資料を出しているのですが、それでも日本側の全貌を挙げるというところには行かないことからみても、それは分かるのですが、そういうことで役割分担というのは、一言でいってもなかなか難しい面があって、これをかなり各国ともう少しすり合わせてやっていく。場合によっては、共同で一つの事業をやって、お互いの経費を減らすということも大事かと思います。この裏には、モンゴルが同じテーマについて、ダブって国際機関や各国へ要請している場合が多々あります。例えば、今モンゴルで非常に大気汚染の問題が出ておりますが、それはゲルというテント式の住宅で石炭を燃す、その煙が地上、下は15センチから1メートル何センチくらいで、雲のようになっていますので、飛行機が降りると雲の下だと思うと危ないので、その時は飛行機が帰ってしまうと、そういうような状態があるのですが、オランダと日本へ、両方へ要請しています。両方でいろいろ話している間に、どんどん後に行ってしまうという問題があります。こういうことは注意すべきことだと思います。それでは、重点はどこへ持っていくかというと、モンゴルの経済開発について、3つの問題点があります。一つは人口が250万であって、非常に少ないということ。ですから、外国投資を入れて、もう少し経済を自律して頂きたいと考えても、ある会社が投資しようと思っても、人口250万、ここでは市場が小さいということで、皆決裁が通らないという問題点があります。2番目にモンゴルはロシアと中国に陸封された国であって、港から非常に遠い。天津からも1500キロ以上離れていまして、その様なところへまた投資する人も無いと。それから3番目には、先程申し上げました牧地牧畜です。牧地牧畜は世界的にもどんどん少なくなっていっています。もう殆どモンゴルとどこと、どこというふうに、段々なくなって、皆餌を与えて飼料を与える酪農形式の牧畜に移行しつつあります。こんな中で、牧地牧畜を守るという問題があるので、非常に難しい。この3つの点が非常に難しい問題であります。それではどうしたら良いのかという望ましい将来についてと、これは私が考えたことを8年前にちょっと発表したのですが、モンゴル政府も同じように考えていて、彼等の政策大綱の中に入っています。先ず最初に、素晴らしい自然が地上、地下にありますので、地上の資源を利用して観光促進して日銭を稼いで、そして地下資源を開発すると。これは3年から5年、ひいては10年くらいかかるのもあるというようなことで、地下資源を開発する。そうして蓄積したお金で、この牧畜、畜産産業を復活することが、彼等の出来る力の及ぶ範囲で、出来る範囲の経済開発ではないかと考えています。ただ、これはどこからも援助がないということを前提とした、非常に純粋な考え方ですが、その間に各国国際機関の援助を得つつ、経済自立を早めて行くと。ですから、この3つを同時並行的に進めるということも、援助があれば可能かと思います。そして、何よりも各国の援助がモンゴルの、またこれ以上の援助を増やしたら、モンゴルの政府予算というものが殆ど病気になるのではないかと思うほど、今限界に近づいております。ですから、むしろ、各国からの投資を求める、その投資環境の整備に力を、重点を入れていって、彼等の経済自立を助けると。そのためには、1、2のここの問題なのですが、人口が少ないとか、港から遠いという点では、もし北東アジアの経済圏というものが、経済の面から成立すれば、例えば通信ネットワーク、輸送ネットワークが出来れば、輸送の点で最近国土交通省からお金を頂きまして、私、このモンゴルから日本海経由、日本までの輸送ラインについて調査してきましたが、これは非常に現実の問題として成り立っていく方向で、今動いています。そういうようなことにリンクして、要するに北東アジア経済圏にインテグレートすれば、モンゴルの人口の少ない点、それから海港がないという点が、克服されるのだろうと思います。そうしますと、投資、民間投資を、外資導入が出来るかと思います。こういうようなことで行って、それでは我が国はこの間でどういうことをしたら良いかというものを、これは殆ど参考までに括弧の中へ入れているだけなのですが、先ず、産業振興のために、経済基盤の整備をして、投資環境を整備して行くと。それから次に、牧畜振興、これはもう21世紀の牧畜の、つまり、金融組織があって、市場があって、それからインターナショナルなインフォーメーション・ネットワークにアクセス出来るという状況を牧民に保証するような牧畜を成り立たせるということに向けた支援。それから基礎、更に今まで我が国がずっと続けて来た基礎生活支援、これは教育とか、医療とか、水、食料、環境保全、その他やって来ましたが、食料についてはもう必要ないのではないかと、私個人的な考えからこの中へ、括弧の中へ入れていないのですが、これはまあ例を示しただけです。こういうような方向でやって行きたいということを私は考えておりまして、これは私個人で、大急ぎで作成したもので、必ずしも我々のグループ内で合意を得た案ではないのですが、一応この案で、グループ内でしっかりした案を固めて行きたいということを考えています。以上です。

(渡辺議長代理) 花田さん、どうもありがとうございました。今ご報告頂きましたが、こういうふうな方向で行っていいものかどうか、どなたかご発言ありますでしょうか。それでは大野さんどうぞ。

(大野委員) 非常に面白くお聞きしましたが、2点質問があるのです。牧畜に関しては、ドナーの圧力によって、それを捨てようとしている動きがあるとか仰いました。むしろ花田さんのプランでは、それを支援するように行かなければいけないということなので、その辺をしっかり書き込んで頂きたい。私もモンゴルの牧畜を、どう考えれば良いのかといつも思っていますので。それから2番目に、日本も含めて他のドナーが何をやっているのかお互いに知らないということでしたが、今、援助協調の動きが、ベトナムも含めて、各国でも行われていますが、モンゴルではそういう動きが全くないのでしょうか。ふつうは、それがあるとむしろ援助協調しすぎて、今度は時間が取られるとか、そういう状況になるので、少し不思議に思いましたが。

(花田主査) ちょっと説明の仕方が悪かったと思いますが、援助協調というのがありまして、毎週あるいは隔週で、UNDPで会議をやっているのですが、その時に全貌を示さないで、自分達がやっている目玉だけを、要するにドナー国に受けそうなところだけを、皆さん強調して仰る。だから、全体像というのは、各大使館に行って、その時は判るのですが、次々いろいろなことをやるので、なかなか全体像を掴みにくい面があるということで。全然相手国が何をやっているか知らないのではなくて、大体のことは判っています。アメリカはこういうことをやっている、意外と口だけは大きいけれど、実際には何もやっていないとか、そういうのが良く判りますが、どこで何を、どのポイントでどういうことをやっているのかというのを、なかなか掴みにくいことがあって、全体的なことをただ聞いていると、突然いろいろな、ゴビなんかでオークションなんかやってみたりして、続くのかなと思うと一回で終わったり。ですからそういうのをもう少し取材して掴むとなると非常に人員が足りないので、しょっちゅうフォローしているわけにはいかないのがありますので、全貌が掴めないところがあるので、そこをもう少し改善していくのが必要かなということを、申し上げました。これについても、もっと具体的にご説明、ペーパーに書きます。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。はい、どうぞ。

(千野委員) 私も、大野委員と同じ質問をしようと思っていたのですが、全体像が判りにくいという中で、他の出席している国々は、そういうことをどう感じていらっしゃるか、もし判れば教えてください。

(花田主査) 一昨年の5月のパリで開かれたドナー会議に、出席した時に、ドイツがアプローチして来まして、ドイツの全員と我が方の全員でその点について徹底議論したのです。アメリカ側から枢軸の復活なんて冷やかされたのですが、その時にいろいろ聞くと、かなりドイツのシステムは我が方のシステムに似ていまして、モンゴル側から例えば水力発電やって欲しいとの要請が、モンゴル側から、両方に持ちかけられて、サイトは何処だと聞くと、同じ所だったり、いろいろな点があります。ただ、援助会議とか、ドナーの連絡会議なんか出ますと、エネルギー支援、電気部門というような程度で、何処のサイト、何処までというところまで、とても時間が無くて行けないという点がありますので、もう少し具体的に援助協調していった方が。うちの中身を全部ぶちまけて、向こう側に資料をやるということがないので、また向こうもくれるということがないので、そういう点が出てくるのは、それは要請国側の問題でもあるのですが、その点について、モンゴル側にも随分きつく言いました。縦割りの組織で、各省庁間の連絡も非常に悪い。途上国はそういうところあると、いろいろ聞いていますが、そういう面もありまして、どうしても避けられない部分、勿論大使館はそういうところに非常に神経尖らせて、情報収集に努めています。ただ、限界があるということを申し上げたわけです。

(渡辺議長代理) それでは、草野さん、小島さん、どうぞ。

(草野委員) 大変興味深く伺わせて頂きました。2点あるのですが、前半のお話で、これまでの日本の対モンゴル援助についての決定および実施に対するコメントというものもあったと思います。それからもう一つ、これも途中でこういう言葉を使われたと思いますが、10年ほど前に、マクロ経済学者の実験場になってしまったというような、批判的なコメントもあったわけですが、何を申し上げたいかというと、これからの話というのは、白いキャンバスにあるべき姿を描くのではなくて、これまでどういうことをやって来て、それに対する評価の上で、この政策、あるべき姿をお描きになるのだろうと思うのですが。今日のお話ですと、これまでの実績を踏まえた支援というところは、この何項目目かにありますが、今仰ったような、これまでの実績に対する評価というのは、何処に出て来るのでしょうか。

(花田主査) 例えば、私はマクロ経済学者ではないですが、1993年に外貨の自由化をしたのです。モンゴルのトゥブルクなんていうのは、これまで世界に知られてないような貨幣ですから、一瞬にして吹っ飛んでしまったという状況です。当時1ドル4トゥブルクだったのですが、今1ドル1139トゥブルクです。つまり1ドル借金して、今丁度10年過ぎて返す時期に来ていますが、270ドル返さなければならない計算になってくるわけです。我が国は、戦後1ドル360円にフィックスしていましたから、1ドル借りたものは1ドル返した訳です。あの頃日本外務省は、モンゴル側に非公式ながら、こういうことはちょっと早まっているのではないかというようなメッセージをやったのですが、当時ジェフリー・サックスさん率いるハーバードスクールが、一つの学校が全部責任もってやっていましたので、それはすっとんでしまって、そういうふうになる。ですから、こうなった以上はどうしたら良いかというと、今為替相場がじりじりと下がりつつあるのですが、それを保持しながら、所得を増やして行ったら良いのだろうと思います。そうすると、相対的にモンゴル政府の負債というものが、対外債務というものが、相対的に縮小されていく。それから、勿論経済規模を大きくしていけば良いわけですが、そういう点について、国際銀行が、モンゴルのマクロ経済に責任持っていますので、銀行のコントロールの下では、やはり現状におけるバランスが重視されますから、そういう将来を見据えた野心的な政策はとりにくいところにモンゴルはあります。我が国が支援する時には、その辺のところは徹底的に議論した上で、モンゴル経済を大きくしていく、それから若干野心的でも大きくしていく。彼らが所得を増やしていくという方向に、今の為替相場を維持しつつやっていくべきだと私は考えますので、今の外貨の自由化について例を取ったのですが、例えば民営化を、滅多やたらにやったわけです。そして、その民営化を受ける受け皿がない非常にプリミティブなモンゴル人に、皆民営化してしまうから、例えば、極端な例をいいますと、私が一昨年の8月に訪問したフグスグルノという県のある村で、去年民営化の圧力がある大国からあって、それで中央政府が民営化した。それは暖房組織です。そしてその暖房組織を民営化しちゃうと、その暖房組織を全部買い取るだけの余力のある人はいませんので、村人が金を集めて、一つ会社作って民営化したわけですが、子供を、今度市場経マを移って、学校が有料になったので、学費を払うという段になると、お金がない。そうすると、私の取り分をよこせと、そうすると暖房組織の菅を出資分に応じて切って、それをダルハンにある製鉄所に売ってしまうわけです。その製鉄所は、日本の某商社の支援で作ったものですが、貴方の国の工場が食っちゃった、という風に僕は言われたのですが、そうすると今度は学校に暖房が無くなって、冬は木を切って、もうもうとした煙の中で授業をする。これは木や森を乱伐するものですから、今度は夏は水枯れ、そこは川の合流点であるにも拘らず両方から水が流れて来ないと、そんな状況が地方で一杯出ています。いろいろ市場経済以降ドナー国がやった政策の中では勿論良い政策がたくさんあるのですが、誤った政策も幾つかあるので、そういうのを是正する方向で、これから次の5年間というのですか、この政策を立ててやっていったら良いのではないかと。そういう意味で、私は知識がありませんので、いろいろなマクロ経済学の専門家の方や、いろいろな途上国の専門家の方にお力を借りてやっていきたいなと考えました。

(渡辺議長代理) それでは、小島さんどうぞ。

(小島委員) 草野先生と大体同じ意見なのですが、ちょっと若干違う角度から。1点目は、今花田大使が仰られたように、日本はモンゴルに対するODAは、最大の供与国です。そしてその結果として、先程仰られたように、国際会議の順番も変えてくれるくらい、非常に良い関係が出来たということで、その意味では日本のモンゴルODAというのは、それなりの成果を上げてきたのだろうと思います。それにも拘らず、このモンゴルに対する、やはりODA、新しいこの方針を出していくという時、やはり一つは、日本のこれまでのモンゴルに対するODAのきちんとした評価というのが、一つ必要になって来るだろうと。二つ目は、その評価を踏まえて是非お願いしたいのは、ある種のアジアのODAの新しさというのか、目新しさというのですか、目玉というのですか、或いはもっと言えば、戦略ですね、それを是非打ち出して頂ければと思います。と言うのは、これからまた議論することになると思いますが、パキスタンやインドといったような、新規規定対象国があるわけですが、これは東南アジアであり、南アジアであるわけで、やはりモンゴルというのは、その周辺をひっくるめた中央アジアという、新規策定対象国ですので、そこでこれまでと違う新しさといいますか、それを是非出して頂ければと思うところです。その点について、花田大使の方から、北東アジア圏とか東アジア共同体とか、こういう一つのキーワードが出されておりますが、正にそういったところから、具体的にモンゴルに対する支援というのが意義付けられていくとことを、是非お願いして頂きたい。その時一つ重要になって来るのはロシアと共に中国ですので、この中国との協力と、それからある意味での競合というところを、どういうふうに考えるのかというのも是非組み込んで頂ければと思います。

(渡辺議長代理) 伊藤さん、青山さん、宜しくお願いします。

(伊藤委員) 花田さんが用意された、このモンゴル国別援助計画策定の方針というのは、将来イメージされている報告書に盛り込まれる基本的な内容と考えて良いですか?

(花田主査) 現地大使館が、これから第一次案の草案を作るために、このタスクフォースの主査が、どんな考えを持ってこの仕事を引き受けたかということを、やはり理念として示すのは適当だろうと、考えまして書きました。ですからこれがそのまま、そのものになっていくとは、保証は全く有りません。

(伊藤委員) そこで質問なのですが、この国別援助計画が策定されたとしまして、大切な事はモンゴル政府が日本のODAを受けた時の実施体制と事業遂行能力です。そういった内容が、この中に含まれてなかったものですから質問しました。こうした内容は、例えばモンゴル支援、留意すべき点の中に含まれるのかなと。そうでなければ、折角良い国別援助計画が出来たとしても、その国益が何なのかというものが、見えて来ないものですから。

(花田委員) 判りました。

(渡辺議長代理) 青山さん、どうですか。

(青山委員) 大変興味深い内容で期待しています。おそらくモンゴルの場合は、まだ社会セクターが非常に重要な援助分野になるのではないかと思います。投資の促進ということはもちろん大切で、投資があってはじめて開発が持続的に進むわけですが、援助体制の分野としてはまだ社会セクターが重要と思います。お示し頂いた案には、保健医療関係として小児科医が挙げてありましたが、ここの患者さんを対象にする臨床医だけではなく、保健医療分野の全体像が見られる公衆衛生関係の方も加えるほうがよいと思います。それから、社会セクターを考えるときにも、マクロ的な経済や政策などとの関わりを考慮しなければならないので、個々の課題と全体的潮流の両方を理解できる方を加えていかれるとよいのではないかと思います。
 また、牧畜支援などが重要とのお話でしたが、おそらく牧畜などにも女性がけっこう関わっていると思います。モンゴルの場合、女性の社会的地位が著しく低いというほどではないかもしれませんので、女性に関する章を改めて作る必要はないとは思いますが、産業支援といったとき女性の関わりが軽視されることがないかと少し懸念しております。ジェンダーの視点に配慮した全体の方針を作っていただけるとよいと思っております。

(花田主査) 分かりました。私は国際開発学会というところで、モンゴルの女性の、ジェンダーについて最近講演したのですが、凄い問題があるのです。実は、要するに今まであった産業が無くなってしまったことによって、まあストリートチルドレンと関係するのですが、女性が男性の暴力の下に今生きています。

(渡辺議長代理) 小島さんのご発言に対しては、特によろしいですね。

(花田主査) 非常に重要なコメントを頂戴しましたので、先生の御発言を踏まえて作成作業を進めて参りたいと思います。伊藤先生にも同じようなお返事を差し上げたいと思います。

(渡辺議長代理) 今日は花田さんから、主査としてのご意見を伺ったわけですが、先程も申し上げましたように、この主査のお考え方をベースにして、TT、MT、モンゴルの援助コミュニティー、勿論現地国政府を含めて、何度もフィードバックをして中間報告書まで持っていくということになります。これだけの大量の仕事を6ヵ月後にこちらに出して下さるということで、大変なご苦労をおかけします。国土面積が日本の4倍とはいえ、人口は僅か250万のGDPが350から400ドルですから、日本のGDPの4000分の1くらいで、どこか日本の田舎町と同じ位の経済規模しか持っていないような、小さなところです。その分だけ、日本のODAのインパクトというのは非常に大きいわけで、日本のODAと受け取り国の発展というテーマを設定した時には非常に相性が良い国がモンゴルだともいえるわけですよね。そういう意味で小島先生が仰ったようなモデルたり得るし、しかも大国に囲まれた小国というポジションを踏まえ、どのように日本が協力を結んでいくかは、日本の外交政策にとっても一つのモデルたり得るという感じがします。小さいとはいえ、というよりも小さいが故に重要性を持っているようにも思えます。花田さん、今までのモンゴルでのお仕事をベースに、何とか良い仕事をしてわれわれの国別計画の報告書のモデルになるようなものをまた作って頂ければありがたい。どうも今日は長い時間ご協力頂きまして、本当に有難うございました。よろしくお願い致します。

(花田主査) 有難うございました。

(渡辺議長代理) 早速、次のテーマに移らせて頂きます。今度は、対ベトナム国別援助計画の見直しについてであります。大野委員を主査にしてお願いしているわけですが、今日お手元に中間報告を出して頂きました。この報告に基づき、自由な議論をして頂きたい。大野さん、よろしくお願いします。

(大野委員) 本日は、とても時間がないと思いますが、これを元にあと6ヶ月作業しますので、どうぞインプットをお願いしたいと思います。これがお約束した、現地チームが中心になってつくった中間物です。ドラフティングは現地が中心でした。私もいろいろコメントその他行いました。これを全部読んで頂ければ良いのですが、ご覧のように書き方が未だ一様でない、文章になっているところ、箇条書きになっているところ、そういう文体として乱れていることがありますし、まだ長く書いているところが重要であって短いところが重要でないということもないわけで、これからいろいろコメントを受けながら文章としても完成されたものにしたいと思います。今は主なポイントだけ申します。一つに、最初のページに国益・戦略性について、かなり完成された文章で述べました。ポイントが3つあって、ASEANとの関係、中国との関係においてベトナムが非常に重要である。これは安全保障および経済両方について重要であるというのが、まず第一であります。2番目に、人道的、社会的要請の面から今モンゴルが所得4百ドル以下と言われましたが、ベトナムも4百ドルです。ただ人口は8千万ですけれども。とてもまだ社会面で無視できる状態ではないし、環境・所得格差など発展するが故に発生する或いは全く改善しない問題もあります。3番目に、世界の開発援助政策における含意。これはベトナムがCDF、PRSP、援助協調の最先端を東アジアでは走っているわけでして、ベトナムでトップドナーである日本がこれに積極的に関与すると共に日本も変わって行くということです。ベトナムの開発に係わる状況で一番大事なことは今ベトナムは岐路に立っているということで、ASEANの高く飛ぶ雁になって工業化が進んで行くか、それともそれ程進まないで停滞するかという危機感を我々は持っています。これは全てのドナーが持っているとはいえないのですが、特に投資環境が改善しているとはいえない。ベトナムに入っている投資というのは、クリティカルマスというか、臨界値に達していないので工業化が自立的に進んで行くところまで達していない。それに満足してはいけないということで、かなりベトナム政府もこういう問題提起に対して関心を持っている。社会問題については既に申し上げました。開発戦略の動向についてのポイントは、我々日本がやって来た援助というのは、当然プラスに評価もするのですが、悪かった所も列挙してあります。それから、対ベトナムz援助の基本方針として、第1は、その最初の国益戦略と対応するところであります。成長の観点と、社会の観点、両方から支援する。2番目に、その重点分野の絞り方なのですが、これは未だ原案となるものが成っていません。ここに書いてある、成長促進、社会生活面の支援、制度整備に使うということですが、ある意味でこれは全ての援助をカバーしていますが、意図としてはこの3つのいずれかを満たすものを、サブセクターのレベルで絞り込むということであって、サブセクター教育なら教育で、環境なら環境で、どういうふうに絞るかというのは、今作業をしているところですので最終的な案はお見せ出来ない。資料の中ではボックスの中に入っている、ここの部分だけ完成度が低いということが示してあります。それからもう一つ重要なこととして、援助規模についてこれまでは重要な国だということで、非常に大きな援助を10年間やって来たということですが、これからの援助というのは、ベトナムの対応にも依存するということを、数字ではなくて文章で書くということ。その案も書いてあります。それで何を以って向こうが努力しているかというと、一つは投資環境がちゃんと良くなっているか。もう一つは援助受け入れ能力が他の国と比べて非常に執行が遅い。その二つの点において努力しているかを見て、それが全く改善が見られない、或いはその努力が見られないようだと、その数量的な援助の方向も検討せざるを得ないというような形で書いています。世銀が言うように、政策がよい場合は8百ミリオンとか、駄目な場合は3百ミリオンとか、そういうような書き方はしないということで、これはもう一杯議論しました。4番目に、各セクターの援助戦略を検討すること。これはさっき申しましたが、これがなければそのサブセクターに絞込みは出来ないということで、今やっているところです。それから、向こうの政府との政策対話を通じて、要請主義を超えた対話型の案件形成・採択を指向、その他各ドナーとの対話、それから日本側の連携も取るということで、これはODA大綱の議論にも出ていると思いますが、はっきり書き込みました。NGOとの連携の強化、環境配慮の徹底、これはNGOの方々と議論した時に必ず出てくる問題であって、確かにこれは未だ十分でない。それに、ここに書いている書き込み方も未だ十分でないと思いますから、これも重要事項として書いていこうと思います。それから評価の強化、評価結果の反映も、これも一行ナ書いているだけですが、重要でないということではありません。最後に援助協調というのは、さっき少し申しましたが、ベトナムでは非常に活発になっています。これについて、原則として先ず日本がトップドナーとして、或いは東アジアでODA、直接投資の経験ある国として、積極的に関与していくという面と、確かに日本のやり方というのは、他国のドナーや国際機関のやり方と合わない、むしろ日本が不合理な部分もありますから、それについては直していくという、その二つの政策を取るべきだということです。具体的な書き方については、そ案を見て頂ければと思います。来月から、これについてまた積極的に色んなNGO、省庁、その他、専門家の方々と議論を重ねていく所存です。以上です。

(渡辺議長代理) 大野さん、どうも有難うございました。本年9月までに最終案を提出して頂くということで、いよいよ大野チームも大変な時期に入って参りました。現段階で今ご報告のようなショート・ドラフトが提示されました。これについてご質問、コメント含めて、如何でしょうか。砂川さん、どうぞ。

(砂川委員) 見させて頂いたのですが セクターを更に詰めなくてはいけないということなのですが、私はここの部分がこれからの作業の中でコアを担うんだと思うんです。一言で申しますと、いわゆるベトナムにおいてこれから戦略産業になっていくのは何であるかと、どういう産業が戦略産業になるのだというところを、いわゆるマクロ経済の分析から或いは、いわゆる開発戦略の観点から決めていかなくてはいけないだろうと思います。これは勿論、政策対話を通じて向こうとも話をしながら決めていくことだろうと思うのですが、そこで、戦略産業の育成ということになると、投資というものが非常に大切である、海外からの投資が非常に重要となってくる。今までの投資が一体どういうところに向いてきて、それが一体どういうインパクトをベトナム経済の産業面に与えているのかという調査、そういった面から、民間の活力即ち民活というものを生かして戦略産業を育てることを考える援助戦略というものを立てていく必要があるのだろうと思います。従って、2点申し上げますならば、戦略産業というものをどういう具合に見るのだということと、民間企業の力をどのように利用していくのが良いのだという、その2点が必要だと思います。

(渡辺議長代理) 大野先生にお答えいただく前に、その他のコメント、質問等ございますか。

(牟田委員) 先程ご説明がありましたように、評価の強化と評価結果の反映といったことは、未だ十分書いていないということです。そこでお願いですが、国別援助計画5年の計画ということで、それが終わって当然評価をして次の計画ということはお考えだと思うのですが、それ以外にももう少し短期的な政策のモニタリングのようなことで、1年とか2年とかで、何か狙ったことが5年の期間の内に上手くいってるかどうかというような、モニタリングをするような仕組みをお考え頂いて、その5年経って評価をするのではなくて、途中途中でその政策に、日本が意図したような援助の方向に上手く動いているかどうかということで、微調整をかけながら5年経ったら非常に上手くできたというのが一番良いわけで、5年経って駄目だったからこの次考えます、というよりは、やはり上手く行くような仕組みが大事なのだろうと思います。そういった、何か政策のモニタリングのような仕組みも、合わせて考えて頂ければ有難いなと思います。

(渡辺議長代理) 荒木さん、どうぞ。

(荒木委員) ベトナムに関しては、政策支援で、石川先生グループがやっていたわけですね。これがどういう風になっているかという、それとの関係をもう少し解説して貰いたいと、そう思います。

(渡辺議長代理) 千野さん、どうぞ。

(千野委員) 自分の中でも明確ではないので、どうしようかという感じで発言を迷っていたのですが、大野委員が、ベトナムが岐路に立っていると仰ったことに関連して、それは経済的なことだけでなくて、ASEAN10の中で、ベトナム自体が岐路に立っている部分もあるのではないかという気がするのです。それは、文化的、社会的な部分でも岐路に立っているという感じもするわけです。今、社会主義ということでやって来ていますが、中国ほどではないにしても、それが実態を失いつつある。しかし制度としては残っている。また、そもそもベトナムを見て感ずることは、中国の影響の大きさと同時に、かつてのフランスの影響というふうに、ベトナムが抱えている諸々の迷いもあるような気がするのです。この援助計画の中に、そういうことが具体的にどう盛り込めるのかどうかは、ちょっと私も分からないのですが、そういうベトナムの置かれている状況を意識した日本の援助ということ、つまりそういう日本の問題意識がもうちょっと盛り込んで頂けると良いような気がします。

(渡辺議長代理) 磯田さん、どうぞ。

(磯田委員) 大きな柱として3本建てになっていて、その中で社会生活面というのでしょうか、いわゆる経済成長からは落ちこぼれがある、或いは場合によって、それによって逆に悪化するかも知れない環境や、生活面への事柄に関しても、一つの大きな柱として位置付けるということは、大変歓迎するものです。その辺のサブセクターとして何を想定しているのか、その絞り込みはどういう方々としていくのか、ご説明願いたい。それから単に経済成長の方とそれが別立てで2本で走るのではなくて、経済成長によって、逆に悪化するかもしれないという懸念も表明されているわけですから、いわゆる経済開発の方の部分と、どういう風にそこの配慮を徹底していくのかという事柄についても、ご配慮頂けたらと思っています。その点で、最後の方にある横断的な取り組みという中に、効果的な援助のための実施上の配慮というところに、環境配慮の徹底という文言はありますが、併せて社会配慮の徹底も入れて頂けたいと考えます。以上です。

(渡辺議長代理) それでは、大野さんの方からお答え頂くということでよろしいですね。

(大野委員) 私だけで答えないで、現地と共にリスポンスをきちんとさせて頂きたいと思いますが、お聞きした重要な点は全部今日中に現地に伝えるし、我々も考えて行きたいと思います。砂川さんが仰った成長の面でもうちょっと具体的に戦力産業は何かとか、民活のやり方は何かという点。これはいろいろ議論したのですが、この中に書き込むべきか。私が担当しているJICAのプロジェクト、向こうの大学とやっているのは正にそれなのですが、それをここに書き込むかどうか。それについてはまた別途幾らでもお話出来るのですが、長さの面もありますし、ここに書き込むべきではないだろうということになっているのです。ただ、私のプロジェクトもありますし、今度大使が中心になって来月から立ち上げようとしている日越共同イニシアティブもありますし、それからワーキンググループという、民間と政府で政策環境を良くしていく枠組もありますし、貿易・投資については他にもいろいろ走っているのです。それをまとめて、全体として見て頂ければ、十分我々の考え方というのはベトナム政府にも他のドナーにも伝えられるようにして行こうとしています。国別援助計画に全てを書き込むと大変な分量になるし、むしろ、我々はどういう援助をするかに集中した方が良いということなので、おそらく書き込まないと思います。議論することは幾らでもさせて頂きたい。牟田委員が仰った5年ではなくて、1年後、2年後でモニターすべしというのは、もうどこかに書いていると思いますが、現地の方ではもう1年毎に改定するつもりです。改定という言葉が正しいかどうかは判らないですが、微調整していくという言葉は、確かどこかに入っていたと思います。モニターというよりも政策対話を常に行なっていって、その中で当然1年に1遍だけやるのではなくて、常に問題がある毎に、イシューをこちらからも挙げて持っていくというようなことをすれば、かなり改善されるのではないかと思うし、実際にここにも書き込みたいと思います。石川プロジェクトとの関係ということですが、石川プロジェクトの後に繋がったプロジェクトには、私が今やっているJICAのプロジェクト、あと農業とか財政金融とか、そういうチームがあるわけですが、それは続いています。その発展として産業面で見ているものを私が続きをやっているわけです。一つ問題は、石川プロジェクトというのは、かけた時間、お金、人員にかけて、やっぱりインパクトは少なかったなということは非常ノ反省材料になっています。今私がやっているプロジェクトではそれを改善すべく、やり方はどんどん変えて、少ない人員、時間、お金で、出来るだけ大きな政策インパクトを出すというのが大きな目的で、ある程度は達成出来たと思うのですが、そういうような方向でやっています。それから、私のプロジェクトだけではなくて、今言ったように、色んな成長イニシアティブをバラバラではなくて、一つに糾合してやろうということを考えています。ベトナムは、社会主義とか、中国、フランスからの影響をどういうふうに脱却するのか、しないかという意味での岐路に立っているという、それはそうだと思うのですが、これはおそらくこれに書き込めないか、書くとすれば、短い形で第一章か、第2部かに書くのだと思います。おそらくこの文書の性格として、それを長々と書くよりも、やはり実務的な文章にした方が僕は良いと思うのですが、これも現地と相談して行きます。磯田さんの仰ったことも、これから社会配慮の徹底ということは、環境配慮は未だ1行だけなのですが、社会配慮を半分くらい書いていると思います。誰と意見交換をしていくかというのは、今までと同じメンバー、各省庁、それからNGO、専門家の方々、それからメールによる受付、それから勿論ここでの議論というものをやっていって、それ以上に議論していく必要があれば別途考えます。非常にフレキシブルに考えておりますので、他のグループと議論しても構わないと思っています。以上です。

(渡辺議長代理) 有り難うございました。大野さんにいろいろご意見を伝えるのは、この機会、この場ばかりではありませんから、折に触れていろいろコメントを差し上げて貰えれば有り難いと思います。時間の都合もあって、次に進めさせて頂きます。今日花田さんの方からモンゴルの話がありました。モンゴルを含めて、新規策定対象国であるインドネシア、インド、パキスタンについて、今どういうふうになっているかを、確認のために私の方から申し上げておきます。モンゴルは花田さんを主査にお願いします。ODA総合総合戦略会議からは、砂川委員に出て頂きます。他の委員については、花田主査、砂川委員と共に、目下検討しているところでして、具体的な名前が浮上しつつある段階です。早速4月から計画策定作業に着手して頂いて、先程申し上げましたように、6ヵ月後に報告書完成の予定です。完成という意味は、このODA総合戦略会議への最終的な報告をして頂くということです。勿論その後、対外経済協力関係閣僚会議でのオーソライズ等が必要ですから、最終の最終になるまでは、もうちょっと時間がかかるかと思いますが、基本的には6ヵ月後です。これがモンゴルです。インドネシアについては、今日はご欠席ですが、浅沼信爾さんが主査であります。ODA総合戦略会議の委員としては、牟田委員に入って頂くことになっています。他の委員については目下検討中で、これも名前等が浮かび上がっていますが、未だ最終的な段階にまでいっていないということです。浅沼さんのスケジュールの都合もあって、本格的な作業はもうちょっと先になるわけですが、ただタスクフォース自体は、4月に立ち上げるということになっています。スタートがちょっと遅れると言いましたが、これは勘案すべきインドネシアの国内事情等があります。今スケジュールを決めてしまうのは、ちょっとフライイングではないかという気分も浅沼さんにはあるようです。そんなことで完成時期も未だ確定してはいませんが、そうは言っても来年度にまで滑り込むというようなことは、出来るだけしないようにしようと思っています。これがインドネシアですね。それからインド、既に申し上げておりますように、絵所秀紀法政大学経済学部教授ですね。絵所さんは同時にスリランカの国別計画策定の主査をも勤めて下さっております。インドは絵所さんです。ちょっと困っていますのは、なかなかODA総合戦略会議のインドが決まらないということがあります。是非お手を挙げていただきスい。或いは推薦をしていただきたい。ODA総合戦略会議以外の委員につきましてはかなり多くの人の名前も浮上して来ていまして、もうそろそろ決まるところです。絵所さんには、先ほどいいましたようにスリランカの計画策定作業をやってくださっています。それが6月に完成の見込みでありますから、この作業が終了後インドに着手することになっています。おそらくは年度中、それを少し越えたあたりで最終報告を出してもらうということになりましょう。絵所さんに大変な苦労をお掛けいたしているわけです。これがインドです。それからパキスタンですが、これは前回申し上げましたように、平島先生です。明治学院大学国際開発学部の教授でいらっしゃいます。パキスタンにつきましてもODA総合戦略会議の委員が未定です。是非、委員の先生方、お申し出いただきたいと思います。ODA総合戦略会議委員以外の委員についてはかなり有力な委員の名前が上がっていますが、最終的な承諾を得ておりませんので、今は申し上げられません。今後の予定ですが、平島さんが、JICAでパキスタンの国別援助研究会をやっておられます。この作業が5月まで継続するそうですから、これが終わって6月以降着手ということです。このJICAの仕事と我々の仕事は、勿論オーバーラップはしませんけれども、かなり関連があるということで我々にも良い効果が及ぶのではないかと思います。これも来年度、もしくはそれを越えたあたりで完成を予定しております。これがパキスタンです。そのような次第でモンゴル、インドネシア、インド、パキスタンについて、未定のところがやや残っていますが、まもなく埋まりまして正式に出発していただくことになります。今申し上げましたことで、未定部分については次回に全て決定という形にしたい。次回会合ではパキスタン国別援助計画の作業方針について、主査の平島教授にやっていただくということになっています。それから進んでおりますスリランカの計画につきまして主査の絵所さんの方から中間報告を次回やっていただきます。

(伊藤委員) 前回の会合で、インドネシアの国別援助計画で一応もしお役に立てばと思い手を挙げたのですが、インドネシア国別援助計画のODA総合戦略会議の委員としては、浅沼委員と、それから牟田委員がいらっしゃるので、非公式な形でも何かお役に立てばと思うのですが。

(渡辺議長代理) 有難うございます。

(伊藤委員) 私自身インドネシアで広くNGOのネットワークを持っているものですから、そういったところからあがってくる提案というのを、ご紹介できないかと考えています。インドネシアのNGO出身者の中には、現在、経済調整担当大臣になっていらっしゃる方もいて、今なお交流関係を持っています。

(渡辺議長代理) ありがとうございます。伊藤さん、別に非公式というよりは公式に加わっていただいてはどうでしょうか。重要国、非重要国という分け方はおかしいですけれども、インドネシアのような深い関係、規模も大きい協力をしてきた国はやはり重要度が高いわけで、ODA総合戦略会議の委員が一人でなければならないということはありません。国別援助計画については以上です。次の、2番目のODA大綱の見直しについての議題に入りたいと思います。3月14日に対外経済協力関係閣僚会議、ここで政府開発援助大綱見直しについての基本方針、これが出ているわけですが、これについて横井政策課長から説明していただいて、さらにODA大綱に関する関係者との意見交換のタイムテーブルを須永調査計画課長から引き続いて説明していただき、その二人のお話が終わってから議論に入りたい。それでは横井さん、須永さん、お願いいたします。

(横井政策課長) ご報告申し上げます。3月14日の夕刻、官邸大会議場におきまして、第12回の対外経済協力関係閣僚会議が開催されました。本会議には小泉総理大臣ご臨席のもと官房長官以下12省庁よりほぼ関係閣僚全員がご出席され、ODA大綱の見直しの基本方針につき了承が得られたところです。この閣僚会議はご承知のとおり昨年12月に外務大臣の方から大綱の見直しをするということをご報告させていただいておりまして、この大綱の見直しという非常に重要な作業、これがまた関係省庁にまたがるものですから先ず閣僚会議を開いたうえで全関係閣僚の了知のもと作業をスタートさせると、そういう意味を持っておりました。その際、ODA大綱を見直すに際しての基本的な見直しの方針、これについても確認しておこうということで、この見直しの基本方針が策定された次第であります。お手元にお配りしております資料4の2ページ目のところに、政府関係援助大綱見直しについてという一枚紙がありますが、2.のところに今後の作業方針が書いてあります。これから基本方針を踏まえて関係省庁において原案を作成しますが、その際、ODA総合戦略会議における議論を踏まえ、実施期間、NGO、経済界等からのヒヤリング、パブリックコメント等幅広い国民的議論を充分に尽くしつつ、検討を行ったうえで平成15年中頃を目途に最終的な結論を得るというふうになっています。基本的な見直しの基本方針は別紙以下ですが、これをまとめたものが資料4の表紙にありますポンチ絵です。この議論についてはまさにここで議論が深められた結果が書いてありますので、みなさまには極めて親しんだ議論かとは思われますが、簡単に説明申し上げます。この基本方針は今の大綱がどうなっているか、そしてその大綱をどういう方針にそって見直して行くかということが書いてあります。左側の現行の大綱については、先ず基本理念については相互依存関係とか環境の保全という不変的な価値が書いてあるわけでありますが、これに加えてわが国にとっての安全と繁栄、すなわち国益という議論を踏まえて理念を明確化すべきとしています。それから2.につきましては、まず相手国の要請というのが最初に出てくるわけでありますが、これについても本日の国別援助計画の議論にもありましたが、その単なる要請至上主義、要請第一主義に留まらず、政策協議の強化を通じて相手国の相互的な援助需要に応えるというふうに、要請主義の有り方についての見直しを加えるというふうに考えトいます。それからその次に、いわゆる4原則でありますけれどもこれについては非常に議論が集中するところであろうでいうことで、現行原則の役割と機能を踏まえつつ原則の有り方を検討というふうに書いてあります。それから重点事項、地域と分野についてですが、アジア地域は引き続き重点地域ということは、これは間違いないにせよ、しかし例えば中国等を念頭におけば、アジア地域内の発展状況とか、あるいは援助需要の変化とか、また経済連携の強化とかこういったようなことを考慮する必要があろうと、また分野につきましては既存の地球的規模、あるいはBHNに加えて、今重点分野として浮上しています平和構築の分野、あるいは人間の安全保障また国連のミレニアム開発目標等についても取り組んでいく必要があるということです。「4.効果的実施のための方策」、「5.内外の理解と支持を得る方策」、「6.実施体制等」については、本会議においても非常に多くの議論ありましたが、現行の大綱では極めて簡単に触れられているだけでありますので、この部分についてはここでの議論、また昨年来進められておりました自民党の中での議論等を踏まえて明確化していく必要があるというふうに整理してあります。大変簡単ですが、説明は以上です。

(須永調査計画課長) 続きまして関係方面からの意見聴取ということで資料5をご覧いただきたいと思います。この資料をご覧頂くだけで大体わかると思いますので説明は簡単に致しますけれども、今度のODA大綱の見直しにあたりましては先ほど閣僚会議の決定にも書いてありましたとおり、実施機関、NGO、経済界と幅広い国民的議論を充分に尽くすということになっておりまして、既に1月以来、私どもいろいろな機会を利用いたしましてODA大綱の見直しについての意見交換を行っています。資料にはいろいろな各界と申しますか、方々の分野が書いてありますけれども、それぞれの分野で特にODA大綱の見直しについての意見交換の会合もありますし、そのほかODA全体についての意見交換という会合の中でもODA大綱の見直しについて話しています。NGOについては1月21日にJANICの主催で最初の会合を開催していただき、今後東京だけではなくて、地方にも外務省から出向いて行っていろいろな方々と会合を持ちたいと思っています。4月以降に東京、関西、札幌、福岡と書いてありますが、このような方々とも会合を持ちたいと思っています。それから、経済界では日本経済団体連合会の他に、色々な業界やコンサルタントの方々とか、あるいは情報通信の方々とか、あるいは貿易界とか、色々な方々と会合を持ちたいと思っています。ここには特に書いてありませんが、学会の方々とも会合を持ちたいと思っておりまして、今私どもの方から接触をしています。以上簡単ですが報告にかえさせていただきます。

(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。ただ今、ODA大綱の見直しについての閣僚会議での決定事項、それから各界との意見交換との開催状況、今後の予定を含めて話しがありました。この点についてコメント、質問等出していただければと思います。どうぞ、草野さん。

(草野委員) 今、須永さんからのご報告で、最後の点で若干安心したのですが、もちろんNGOの方とも重なりあっている先生方も多いのですが、国際開発学会を中心として大学の先生方、研究者の中でかなりこのODAの大綱の見直しに関心を持っている方がいて、そういう人達も議論に参加をしたいと、声無き声という形で聞こえてきていますので、是非これは積極的に1回とはいわずに実施していただけたらと思います。

(渡辺議長代理) その点は私からも須永さんの方にお願いしてあります。どうぞ、伊藤さん。

(伊藤委員) 政府開発援助大綱の見直しでも結構ですか。現行の政府開発援助大綱それから見直しの基本方針のところで、3の重点事項の中に地域があって、アジア地域が引き続き重点地域となっています。これまでの会合でも再三申し上げたのですが、やはり日本の政府開発援助というのは、国力からみてもアジア地域だけが引き続き重点地域では少し物足りないのではないか。グローバル・プレーヤーとしてアフリカのような他地域にも国力にふさわしい協力を行うという文言が必要だと思うのです。

(渡辺議長代理) そのほか、要望、コメントがあればどうぞ。それでは磯田さん。

(磯田委員) 1点目は、今の原則のところです。タスク・フォースでの議論あるいはこの戦略会議の議論では、基本的には現行の四原則を踏襲するという話だったと私は了解しています。今の課長のお話を伺っていると議論のあるところであり検討するという話でしたが、ご説明いただきたい。
 地域に関しては今の伊藤委員の意見に賛成です。それから重点分野に関して、確かにこういう議論があったと思うのですが、非常に総花的で、どういう基本方針なのか見えなくなってしまった。改めてこの会議でも議論した方が良いと考えたほうが良いのではないかと感じています。
 それから効果的な実施のための方策、見直しの基本方針、別紙の項目4ですが、1)立案・実施体制の項に、大綱のモニタリングや評価の体制ということに関して触れられていません。ODA大綱、例えば原則が一貫して適用されているかどうか白書に公開するなら、どこが担うのかということが明確化する必要があると思います。この点は非常に重要なことだと私は考えています。大綱の策定は調査計画課になるのでしょうが、その後のフォローはどこがするのか、別の機構を作るのか、明確にしないとフォローが出来ないのではないかと懸念します。
 それからもう1点ですが、先程の分野に関係することになってくるかもしれませんが、実はJICAにありますWIDの研究会の方から申し入れが経済協力局の方に出ているようでして、私の方にもそのお話がありました。配慮すべき点という、先程の項目4の中で(3)の中に配慮事項としてジェンダーが入っていますが、このジェンダーに関して単なる配慮ではなくて、分野に入れたほうがいいのではないかという意見が出ていることを私もサポートする者ですので、ここで一言追加させていただきます。
 並びに、この配慮という事柄の位置づけが非常に軽いということを言われました。私の認識する配慮とちょっと違うのか。つまり配慮というのは、なんとなく気にかけていれば良いというようなことなのか、実施機関の方でちゃんとガイドラインを設けておられますが、そのガイドラインに沿ってやるということが配慮したということなのであれば、余裕があればちょっと考慮しますというようなものではなく、きちんとガイドラインを踏まえることを明記した文言が必要なのではないかと考えています。

(渡辺議長代理) 我々のODA総合戦略会議の意見をかなり忠実に採用してくださっていて、大変心強くも思っていますが、ただ何と言うかキーワードを散りばめられただけで、今磯田さんがご懸念のようにその内容が何を言っているのかもう少しパラフレーズしないとわかりにくいというところはあると思います。そういった意見を色々勘案して5月中旬までにまとめるということですので、意見は、この場以外でも結構ですが、できるだけ多く出しておいてもらうのが私は得策だろうと思っています。

(草野委員) 磯田さんがおっしゃった要請主義の点については、逆に今日お配りいただいた見直しの基本方針を読むと、単に相手国の要請を自動的に受入れるのではなくて、我が方といいますか、具体的に言えば日本側の国別援助計画といったものを踏まえて、政策協議を強化するという書き方になっていますので、これは却って良いのではないかなと思うのですが。

(磯田委員) どこを言及されているのかわからなかったのですが、、四原則そのものの再検討の話というように聞こえたので、その確認です。

(渡辺議長代理) その他、どうぞ。

(荒木委員) この重点事項の重点2)重点分野のイ)ですね。この中に地球的規模の問題への取り組み、それから、人造り及び研究協力等技術の向上・普及をもたらす協力、インフラストラクチャー整備というのがあって、構造調整となっているのですが、政策支援的なものは構造調整ということで代弁しているのでしょうか。改めて、やはり構造調整というワードよりも政策支援という方が良いのではないかという気がします。どこかで被せてもらうということができないかということを一つ申し上げたいと思います。

(渡辺議長代理) その他いかがでしょうか。どうぞ、青山さん。

(青山委員) ODA大綱の中にあらたな平和構築分野を取り入れ、人間の安全保障を考えていくということになりますが、正直なところ非常に難しい分野だと思います。紛争予防にODAをどう考えていくのか、あるいは紛争後復興にODAを使う場合にはどう考えるのか、例えばよその国が攻撃して壊したものを何故日本が直さなければならないのか、という議論も出てくる可能性があります。そういったことについて、どのようにして国民のコンセンサスを得ていくのか、大綱に書き込むべきことかどうかはわかりませんが、併せて議論していくべきだと思います。これは、ある一地域のことだけが対象となるのではなく、世界的に紛争が多いわけですから、一地域にコンセンサスを得る過程についてどう考えるのかということについて議論を進めるとよいのではないかと思います。

(渡辺議長代理) 大野さん、どうぞ。

(大野委員) 今、おっしゃった我々の作業というのは大体ODAは平和時の中でどうやっていくのかとうことが多いのです。今起こっているような状態になった時に別枠というか、政府は機動的に対処しなければならないのですが、機動的に対処したといって国民のコンセンサスがなくても良いということではない。その辺について、もし安全保障それから平和構築を大きく書くならば、事後的に難民とか戦争が起こったあとでどのように入るかだけではなくて、ODAをそういうことが起こらないように使うにはどうすれば良いか、あるいは非常に緊急事態で国民に対してゆっくり説明しているのでは時間のない時にどういう形で透明性なりコンセンサスなりを確保するか、ということも書き込んでも良いような気がするのです。
 それから重点事項については、事務局が書いた通り、前のものを残すか、それとも書き直すかというのはこれから議論すれば良いと思うし、私としては前のものは必ずしも文章としてというか、内容としてもあまり良いとも思わないところがありますので、その辺はこれから議論するということで、今こういうふうに書かなければいけないという段階ではないと思うのですが。

(渡辺議長代理) それでは横井さんお答えいただける範囲でお願いします。

(横井政策課長) この基本方針の文書の性格とういのは先程渡辺議長代理から言っていただいたように、これから具体的な成文化をするにあたって関係者の頭の中にある最大公約数をとりまとめたものとご理解いただければ良いかと思います。その点で申し上げますと、磯田委員がおっしゃったように、まさにタスクフォースの議論の中で、それから戦略会議の議論の中で四原則についての基本的な考え方というのは我々の間では一部シェアされているのはその通りだと思いますけれど、他方でこれは相当議論を尽くした上である程度到達した議論かと思います。まったく白地のところで、四原則について今見直す必要はないということをこの場でこの紙に書いて閣僚会議の原則を得るというやり方があったかどうかということについて、我々の方からすればそういったようなやり方。また大野委員がおっしゃったように、これからまさに議論を深めていってその上で成文化をするということで、この基本文書の性格をご理解いただければと思います。
 今後、外務省中心に関係省庁の中で成文化を進めていきますが、須永課長から申し上げた通りあちらこちらで色々な方に色々な議論を伺ってできる限りの吸収に務め、それが反映されるような、そうした大綱にしたいと思っています。

(渡辺議長代理) 閣僚会議の決定事項ということで、かなりの重みのあるものであるとはいえ、まだ我々戦略会議の意見として然るべきものは取り上げて貰える可能性は大いにあるわけです。今日もたくさんの意見をいただきましたが、個別にでも結構ですので、さらにコメント頂ければと思います。2番目の議題は以上で終わらせていただきます。
 それでは最後の議題になりますが、冒頭申し上げましたように2002年版ODA白書の案の説明をこれも須永調査計画課長からご説明いただきたい。それに引き続いて、イラク状勢とイラク状勢を巡る日本の対応について小田部総合外交政策局審議官からご説明いただくことにします。この二つは続けてやっていただいて、あとオープン・ディスカッションにしたいと思います。宜しくお願いします。

(須永調査計画課長) それでは簡単にご説明いたします。資料の7をご覧いただきたいと思いますが、資料を二つ用意しておりまして、一つは2002年版ODA白書概要の1枚の紙とそれからもう少し詳しい10枚程度の紙がありますが、1枚の紙に基づいて説明します。今後の日程としましては、4月8日に閣議に報告した後に公表という形になっています。
 今回のODA白書では、キーワードが二つありまして、一つは戦略、もう一つはODAの改革で、戦略と改革に重点を置いて過去約1年間に起こりましたODAに関する重要なことを記述しています。最初の部分では、開発問題に対する国際的関心が高まって欧米諸国がODAを増額しているということ、それに関連して色々な国際会議が開催されたということが書いてあります。国際会議につきましては、特にその中で主な論点についてどういう議論があったのかということを整理して書いてあります。資金の確保、ODA の援助の手続き調和化、グッドガバナンス、あるいは選択的実施、こういうものを記述して日本がどういう対応をしたかということが書いてあります。
 第二章では、戦略を持ったODAの展開ということで、一つはアジアを中心に展開しているということ、それから分野別に申し上げると平和の定着あるいは人間の安全保障あるいはミレニアム開発目標、こういったものに重点を置いて、過去1年間の我々の活動について報告しています。それから最近特に力をいれている国際連携の推進についても南南協力とか他のドナーとの協力あるいは国際機関との協力、こういうものについて書いてあります。
 それから三番目は、ODA改革の推進ということで過去1年間に行なったODA改革を総合的にまとめてあります。主に三つの点から書いてありまして、一つは政策・立案機能の強化、一つは国民参加型援助の推進、それからODA事業の透明性・効率性の向上といったことです。最後の章では、ODA大綱の見直しにも関連して今後のODAの方向性について簡単に説明しています。

(小田部総合外交政策局審議官) イラク情勢について簡単にご報告させていただきます。資料としましては、お手元にイラク開戦後の動きという紙とイラク情勢を受けた我が国の人道周辺国支援の現状という二つの紙がありますので、ご参照いただきたいと思います。時間の関係もありますので簡潔に報告させて頂きます。イラク情勢の動きですが、ご案内のように91年4月に湾岸戦争が終結し約12年経つわけですが、その間国際社会一致してイラクに大量破壊兵器の処理を求めてきているわけです。そういう中で1昨年の9月11日の米国同時多発テロ発生を機会としまして、大量破壊兵器が万が一にもテロリストの手に渡ったら大変なことになるという問題意識が国際的にも非常に高まり、そうした状況の中で昨年11月には新たに安保理で1441という決議が採択されまして、その決議に基づき査察活動が再開されたわけです。しかしながら、その査察再開後の動きをみましてもイラク側における査察に対する完全な協力が得られないという状況のままで事態が推移しまして、そういう中で20日にバクダットに対する限定空爆により戦火が切って落とされたわけです。
 軍事情勢につきましては、連日新聞やテレビ等々で報道されていますので割愛させていただきますが、一言で言いますと、米英の主力陸上部隊は南部の方から進撃を開始して今朝の時点におきましてはバグダッドから100キロ離れているカルバラという所まで到達し、そこでの戦闘が行われているわけです。また、北部・西部では、アメリカやイギリスの特殊部隊が活動中で、さらに北部には空挺部隊というのが投入されています。そうした状況の中でバクダットの攻防戦がいつになるかという話がポイントだろうと思いますが、この点につきましてはアメリカあるいはイギリスが言っていますように、まだ時間はかかるということだろうと思います。
 特にバグダッド近くになりますと、イラク軍による化学兵器使用の懸念というのがありますので、ここは慎重に動くということなのだろうと思います。そうした中での我が国の対応ですが、ご案内のように20日ブッシュ大統領から小泉総理に対しまして、戦闘を開始するとの事前通告があり、その後政府部内での協議を経まして総理の方から今回のアメリカによる軍事行動の支持を表明されたわけです。かつ、その支持を表明した際に政府対処方針を発表しまして、その対処方針の中におきましては支援関係で言えば緊急人道支援の話、あるいは周辺国支援の話、あるいは戦後イラクの復旧・復興支援というものを盛り込んでいるわけです。その点につきましてはまた後ほど紙で簡単に説明させていただきます。
 こういう状況の中で我々が最も懸念していますのは邦人保護という観点で、ご案内のようにイラクには人間の楯を希望している方が10名いまして、ここが今外務省としては一番心配しているところで、あらゆる手を尽くして何とか無事を確保したいと思っていますが、連絡も十分届かないという状況になっているというところです。
 そこで次のイラク情勢を受けた我が国の人道周辺国支援を打ち出して、そこで難民を巡る動きについても触れさせていただきたいと思っています。人道難民支援です。既に行っている話からご紹介いたしますと、シリアに対して専門家5名、JICA医療技術協力チームを派遣しました。その理由としてはここの病院において難民キャンプにおける重傷者を輸送し治療するということでしたので派遣したわけですが、実はシリアのあたりにおきましても安全上の問題が生じつつあります。従いまして、今派遣していますが、おそらくこのチームについては引き上げを余儀なくせざるを得ないだろうと思っています。NGOを通じた支援については、ジャパン・プラットフォーム参加のNGOがイラク北部およびヨルダンで活躍しています。その活動に対して約4億円をすでに拠出したところで、さらに状況をみた上で今後どうするか検討することにしています。
 国際機関関連の支援につきましては、2月の段階ですでに事前準備のために一定額必要だというアピールがありまして、それをも受けた形で既に20日に三つの国際機関、HCR, UNICEF, WFPに対しまして、約503 万ドルの拠出を行なうことを決定しています。さらに29日には国連から統一アピールというものが出ています。この統一アピールによると、4月から9月までの6ヶ月間の支援として総額約22億ドル必要だとアピールが出ているわけです。これの対応については、今後実際の人道的な被害の状況あるいはニーズ等々を見極めた上で対応を決定していくということになろうと思っています。
 次は国際平和協力法に基づく人道救援活動です。すでにテレビ等でも放映されていますが、一つは政府専用機を使って、物資供与・輸送を行ないつつあります。難民用テント1,600人分を政府専用機にてヨルダンに運ぶということにしており、ローマ経由で今日にもヨルダンに着くという予定になっています。さらには医療チームをイラク周辺国の難民キャンプに派遣することを検討中です。他方、一時期この点につきましてもシリアを考えていたのですが、シリアそのあたりの地域における安全上の状況変化ということもありましたので事前調査団をシリアに送ったわけですが、早急に帰国予定ということにしています。
 次の周辺国支援ですが、ヨルダンとパレスチナ に対する支援についてはすでに決定しています。ヨルダンにつきましては、原油輸入100パーセントをイラクに負っている、あるいはその他イラクとの経済的な関係が極めて深く、最も被害を受けるということで23日の段階において1億ドル、約120億円の無償資金協力を実施する旨表明しています。内訳については、ノンプロ60億、それから残りの60億については一般プロジェクト無償ということを考えています。パレスチナにつきましても同じく23日に我が国支援ということで、国連パレスチナ難民救済事業機関を通じて5億円の食糧援助を実施するということを表明しています。
 これらがとりあえずやったことですが、今後の動きとしては、一つは当面国連の緊急統一アピールにどう対応するかという話があるかと思います。それからまだ若干先の話かと思いますが、当然のことながら戦後イラクの復旧・復興をどのように行なっていくかという話があるかと思います。後者の点については、とりあえずの対応ということで28日に国連においてイラク国軍への緊急人道援助計画のため、オイル・フォー・フード(Oil for Food)という計画がイラクにあるわけですが、この計画の修正を可能にする決議が全会一致で採択されており、採択された決議によると45日間はとりあえずオイル・フォー・フード計画は動いていくということになります。
 他方、戦後の復興・復旧については、これは総論的な話というのは、例えば先般の米英首脳会議でも議論されていますが、まだ本格的な議論は必ずしも国際場裏で始まっていないという段階です。昨日、川口外務大臣がテレビの番組に出席され、そこで話した点がいくつかあります。これは政治的統治とも関係する話ですが、戦後イラクを考えた場合、領土的一体性は保持されるべきであり、かつ主権は尊重されるべきであるということが1点です。2点目は、戦後イラクにおける良い統治が必要であるということ。そして3番目の点としまして、国連関与が大事であってイラクに対する戦後復旧・復興にあたっては国際協調が必要だという点、それから日本としてはまさにシームレスな支援を日本の得意分野でやっていく必要があるということを言われました。よく報道等においては新法がどうのこうのとかいう議論が出ていますが、新法がなくても日本ができることは相当あるわけです。従って総理大臣等々が国会で言っていますことは、まず現行法でできることをやってみようということで新法については総理が言われているように、まずできることをやってみて、それでもし現在の法体系の下、できないことがあり、またそれが必要ということであれば、検討するというのが現在の日本政府の考えている立場です。

(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。ただ今、2002年版ODA白書案並びにイラクの情勢、イラクへの支援のあり方等についての外務省の考え方をお伺いしました。それでは、草野さん、大野さんの順序でお願いします。

(草野委員) ありがとうございました。ODA総合戦略会議の討議事項ではありませんが、確認をしたいのです。いわゆる国際平和協力法に基づく人道支援、私はこれまさに今おっしゃったように新法を作らずして、現行法を活用するという点では一番効果的ではないかなと思っているわけですが、実際に考えてみますと医療チームの派遣というものは閣議決定それから実施計画の国会承認ということで非常に時間がかかります。目に見える貢献という点では非常に効果的で、ODAの復興支援の前にやるべきだと私は思うのですが、これを検討しているとお話で若干言葉を濁されたのですが、どういうふうな進捗状況なのかということをお聞きしたいのです。
 もう一つ、具体的にお医者さんは、自衛隊のお医者さんなのか、いわゆる登録している民間のお医者さんなのか、その辺もお聞きしたいと思います。それから2番目はまさにODAなのですが、予算が8,500億円まで減ってしまった中で、イラクは大変大きな国で、アフガンと比較するというのは適当ではないくらい大国なわけですが、ここにどのようにODAの予算をつぎ込んでいくのかという点をどうお考えなのか、お聞きしたいと思います。

(大野委員) イラクの件については、磯田委員と伊藤委員と一緒に連名で事務局に問題提起として、今言ったような議論を始めなければいけないということを出したのですが、まだ配られていないようなのですが、まず扱いがどうなったのかということをお聞きしたいです。そこで言ったことは、今は現状として色々なことが始まっているわけですが、それと同時に我々がODA戦略をいろいろと議論している中で、先程も申し上げましたが、戦争とか紛争がどんどん起きるのではいくら平和構築とか人間の安全保障と言ってもダメなわけですから、我々のODAの議論と日本の戦争や紛争に対する外交は勿論関わっているわけです。それに対してある程度議論をしていかないと、一方で戦争とか紛争がどんどん出てくる世界になった上で我々が後でどうやって入っていくかでは、とても整合性がとれませんので、ぜひイラクのことは今進行中ですから事後的、あるいは進行中でもいいから議論していっていただきたいということを申し上げました。

(渡辺議長代理) 大野さんから出ているペーパーをこれから配らせていただきます。どうぞ発言してください。

(大野委員) そこの紙に書いてある我々の意識というのは、まず日本政府は今回のことに関して外交的決定をしたわけですが、つまりイギリスやアメリカに対して支援するという形を明確に打ち出したのですが、この外交政策について人間の安全保障それから平和構築等との総合的な関係について議論して良いと思うのです。これは透明性とかコンセンサスを作るということなのです。ぜひそういうことを議論していただいた上でベトナムの重点分野とかモンゴルの牧畜もやりたいわけで、それをまったく切り離してしまうと我々の議論が目的と切り離された形になってしまうので、是非やっていただきたいということを申し上げたわけです。もっとはっきり申し上げますと、今の日本政府が行なっている危機の外交は必ずしも我々が目指したい目的に貢献しないのではないかという議論が当然あって良いわけで、そういうことをここで議論していただきたいと思います。つまりODAの一部分の政策だけをここで議論して、大きいところでは政府が決定した外交に沿ってやれというのでは、とても私はここでやっていけないという気持ちがしております。

(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。青山さん、磯田さん、どうぞ。

(青山委員) 大野先生のご発言にもありましたし、先程も申し上げましたように、紛争予防や紛争後地域復興にODAを使う時のコンセンサスを得る過程などをきちんと議論していくべきだと思います。今回の人道援助について、今リストとして挙げていただきましたが、人道援助というものは、例えば湾岸戦争など、以前にも色々な場合に行ってきたと思います。その中には、効果のあったもの、期待されたほど効果がなかったものがあったと思いますが、そうした以前の人道援助の評価を踏まえて今回の援助を実施したのか、またこれまで人道援助をどのように効率的、効果的にするよう取り組んできたのか、そういったことについても議論を深めていくべきだと思います。例えば医療チームの派遣についても、ODAによる医療チーム派遣よりもNGOや国際機関に対する支援の方が有効なのではないかという疑問もあり、どのような方法が一番効果的か、他にやることもあるのではないかという議論が必要と思います。
 パレスチナに対しては食糧支援をしていますが、和平プロセスが始まって以来、日本のODAが大量にパレスチナに入ったのに、今回また紛争再燃によりうまくいっていない点があるかと思います。一国一地域に限るわけではなく、紛争後地域のODAに関して幅広く評価検討していくべきと思います。そして今後は、例えばアフリカの地域紛争などの場合に、紛争を予防するためにODAを使えないだろうかと思っています。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。磯田さんどうぞ。

(磯田委員) 私も大野委員がこういった危機事態におけるODAのあり方をやはりきちんと議論するべきではないかという提案がありまして、賛同して連名させていただいたものです。特にODA大綱の中で、これからは平和構築を盛り込もうとしているわけです。なおのこと概念あるいはどう運用するのかということに関してはかなりコンセンサスが必要だと私は思っています。非常に難しい分野だと思うのです。国際平和協力懇談会の報告書なども読ませていただきましたが、正直言って内容的に非常に危険というか、むしろ本当に平和構築を考えるのであれば、今青山委員がお話になったように予防の部分からきちんと取り組むという姿勢がまず必要ですし、それから平和の定着に関し、むしろ民族融和や平和教育に振り向けるべきであって、単に警察力の強化とか制度だけを作るということでは非常に難しいということが、各国の戦乱後の状況が物語っていると思います。そういう意味で平和構築という分野においてどういうアプローチをするのか、そこが討論されないまま進んでいることに関して非常に懸念いたします。ということで、私の考えを慌てて作ったものですから、非常に不十分だと思いますが、ペーパーを出させていただきました。
 それともう1点。イラクに関して、これをどう位置づけるかということは非常に外交上難しい問題だと思うのですが、正直言ってテロではない別の形の戦争という中で復興に関して日本政府がコミットするということに関し、国民に対するきちんとした説明責任が必要なのではないか、ということを非常に強く感じております。

(渡辺議長代理) このODA総合戦略会議ではこれまで援助計画を持っていた国の計画の見直しをすることが一つです。それから重要国で国別援助計画が策定されていない国を策定するということが2番目の目的です。それからもう一つがODA の時々の問題の情報を交換し意見を出し合うということになっています。その三つ目の目的に即して、問題を議論するのは大いにやって欲しいと思います。ただ、どういう形でやるかというのはなかなか難しい。事態が極めて流動的でありますし、一面非常に迅速性を要する問題でもあります。それにしても、もう少し議論の蓄積が欲しい。パレスチナ難民支援の問題とかアフガンの問題とか、その他今まで日本がやって来た緊急型援助の何が問題であったのかという評価に基づいた議論の蓄積がまだ何もないわけです。議論を蓄積した上で、生まれてくる重点分野に対して我々が何をすべきかをプロポーズするということにすべきではないかと思うのです。ODA総合戦略会議で、この問題について議論することは大いに歓迎すべきですが、ただちに何かのプロポーズができるかどうか、それほど我々が議論の蓄積を持っているかどうかになると、そうは言えない。そういう両面性があると思うのです。私は少々分裂的なことをいっているようですが、いかがでしょうか。なにか対案はありますか。

(荒木委員) これは非常に重要な問題なのです。一つはPKO法というものがありまして、JICAがやっている緊急援助の法律があるわけです。それでその中で難民支援ということでPKO が入っている。我々の議論というのは、このODA総合戦略会議のフレームワークをちゃんと設定しておかないと非常に問題が全部ぶれてくる。つまり、我々は政治問題まで全部介入して外交問題まで議論するのか、それとも今我々が与えられているマンデートというのは、開発戦略というものであり、それの中で平和構築は当然出てくる。平和構築の枠組みはどうするのかというようなことと、今問題になっている例えば新法の問題や明石さんがやっている国際平和協力の方向と全部二股というか、現在日本は分裂状態になっているのです。その中で我々がどこに的を絞ってやるかということになると非常に難しいので、一回その辺を整理して我々のODA 戦略会議はどの範囲で議論していくのかという基本的なことをある程度決めないと錯綜するのではないかという気がします。

(渡辺議長代理) そうですね。大野さん、どうぞ。

(大野委員) 今、議長代理が話された、ここの会議でプロポーザルを出せる段階にはないというのは、それは何も議論していないわけですから勿論です。それにマンデートも全ての外交を議論して良いというわけではないのですが、まず大きな議論をブレインストーミング的に時間をとってやっていただきたいと思うのです。そのあとに我々がさらに追加して議論できることは何かということを比較的早く絞っていく。やはりそういった大きな議論も一度くらいはやっていただきたいと思うのですが。

(渡辺議長代理) そうですね。時事折々のカレントなODAイシューについて議論するのは、我々のこの会議当初からの目的です。本来ならば、ここに議長の外務大臣が座っていて、我々の意見等を吸収しながら政策に活かしていただけるということにも本来はなっていのですが、ご承知のような忙しいなかでなかなかそれもできないようです。今日は、時間がなくなってしまいましたが、頂いた議論は私よく理解したつもりであります。今日の議論は、何らかの形で今後この会議の議論の中で活かしていくつもりです。

(古田経済協力局長) 渡辺議長代理にご発言頂いたラインで是非お願いしたいと思いますが、今日は私どももこのODA 政策と現に起こっていることをこの場でどういうふうに議論していただけばよいのかということがありまして、現に総合外交政策局の小田部審議官にざっと起こっていることをトータルに説明してもらったのも、そういう主旨ですので、必要に応じてカレントな動きについてはどんどんこの他にもインプットしたいと思いますし、今日出ましたご意見については大臣にもきちんとお伝えしたいと思います。それからもう一つは現に今ODA大綱の議論をしているわけですから、その大綱の平和構築というところに大綱の考え方をどのように織り込めば良いかということがまさにこの場の仕事です。それと今起こっていることを念頭に置きながら、ODA大綱論議を深めていくというやり方もあろうかと思っています。そういう意味で宜しくお願いしたいと思います。  それから一点だけ、草野先生がこういう緊急事態の中で限られたODA予算をどう使っていくのかというご質問がありましたので簡単にご説明したいと思います。無償資金協力であれ、有償資金協力であれ、すでにコミットメントがある部分は、これはこれとしてやっていかなければならないわけですが、他方で、例えば緊急支援無償でありますとか、人間の草の根・安全保障無償でありますとか、いろいろな事態に柔軟に対応できるように最初から予算上考えている部分もありますし、その辺を組み合わせながら、やれることは機動的にやっていくのかなということを考えています。人道難民支援、周辺国支援ですと、勿論規模とかいろいろなこれからの出来事によりますが、今ある予算の中で工夫をしながらやっていくというイメージで今はいます。ただ、さっきありましたように22億ドルのアピールが出ていましたから、その22億ドルの中でわが国がどういうふうに考えていくかということになりますと、別に決められたシェアとか何とかあるわけではないのですが、あるオーダーを超えますとこれは明らかに対応できないわけですし、そうするとどうしたらいいのかという話もありますし、それから、まだ先ほど小田部審議官が話ありましたように、具体的な中身はこれからなのですが、復興ということになりますとボリュームといいタイミングといい、既に出来上がっている予算の中で対応できるものかどうかということも生じてくると思いますし、その辺も含めて良く考えていかなくてはいけないと思っています。

(草野委員) 平和協力法のいわゆる人道支援の部分、閣議決定それから国会の承認というのが必要で非常に時間がかかります。検討中というお話でしたけれども。

(小田部総合外交政策局審議官) 先ほど私が報告いたしましたのは、国際平和協力法に基づく正に物資供与以外の医療チーム派遣のところですけれども、この点につきましては、UNHCRと話をしてシリアということを候補として我々は考えまして、その観点から事前調査団というのを現地に送ったわけですが、その後の状況の進展、例えばつい数日前にはイラク国内からシリアに向かう幹線にある橋が破壊されたという話があります。更にはシリア・イラク国境の辺りに武装勢力が集まっているという話が入ってきています。そういった状況の中で当初予定通りのチームを派遣するのは安全上問題があるということで、とりあえず見合わせるということにしたわけですが、では次どうするかという話ですけれども、まさに難民が具体的にどういう状況で発生してくるのか、どういうニーズがあるのか、つまり必要ないところに人を送ってもしょうがないわけです。従いまして難民発生状況、具体的ニーズというのをみて、決めるということを考えています。具体的にはまだ実は難民につきましても、当初目まれていた程は出てきておりません、幸いなことに。勿論油断しているわけではありませんが、その辺りの状況をみた上で検討するということを考えています。

(草野委員) 今まで国際平和協力法の人道支援というのは殆ど実績がなかったということがありますので、その辺はよろしくお願いしたいと思っています。

(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。次回会合についてだけ一点申しあげておきますが、5月12日、月曜日10時から12時、場所はこの同じ場所です。どうかお集まりいただきますよう、お願いします。以上を持ちまして本日の会合は終了致します。ご協力ありがとうございました。

このページのトップへ戻る
目次へ戻る