ODAとは? ODA改革

「ODA総合戦略会議」第8回会合・議事録

1.日時

 平成15年2月26日(水)10:00~12:00

2.場所

 外務省飯倉公館

3.出席者

 ODA総合戦略会議委員(ただし、矢野副大臣、青山委員は欠席)。緒方貞子人間の安全保障委員会共同議長。外務省(事務局)より古田経済協力局長他が出席。関係府省、JICA(国際協力事業団)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加。

4.議論の経過

(議事の概要)

 冒頭、川口外務大臣(ODA総合戦略会議・議長)より挨拶が行われた。次に、緒方貞子人間の安全保障委員会共同議長より「人間の安全保障委員会」最終報告書について報告が行われ、引き続き自由討議が行われた。
 続いて、国別援助計画新規策定対象4カ国(インドネシア、インド、パキスタン、モンゴル)のタスクフォースの具体的構成について渡辺議長代理より提案があり、各タスクフォースの主査候補が合意された。
 最後に、ODA大綱の見直しについて前回会合に引き続き自由討議が行われた。
 次回(第9回)会合は、3月31日(月)10時~12時に開催することとなった。

(渡辺議長代理) 「ODA総合戦略会議」第8回会合を開催致します。本日は、人間の安全保障委員会の共同議長、緒方貞子先生をお招きしております。先生には、極度にご多忙の中を今日はわざわざ我々のために来ていただきまして、心から感謝申し上げます。
 今日の会合ですが、3つの議題で進めたいと思います。まず第一は、緒方先生の方からお話を伺いまして、その話に基づいて若干ディスカッションの時間をとっていただいておりますので、どうかご自由に緒方先生の方からお考えを引き出していただきたいと思います。
 二番目は、前回この会合で合意されました国別援助計画の新規策定国、インドネシア、インド、パキスタン、モンゴルの4カ国をこれからどう扱っていくか、ということを少々具体的に議論させていただこうと思います。
 最後に三番目ですが、これはご案内のように、前回の会合に引き続きまして前々回からすでに始まっておりますが、ODA大綱見直しについての自由討議ということにしたいと思います。
 その前に、今日は国会日程が大変お忙しい中、当会議の議長である川口外務大臣にご出席いただきました。途中、国会日程でご退席せざるを得ないのですが、最初に久方振りと言っては怒られますが、一言ご挨拶をいただければと思います。

(川口外務大臣) 今、渡辺先生に言われてしまいましたけれど、本当に昨年の終わりの頃くらいからずっとご無沙汰申し上げていて、本当に申し訳ないと思っています。いつも日程を見るたびに、気持ちの中では今日はどういう会議だったかなと思っております。ODAについて、国会でもしょっちゅう質問がありますが、外務大臣になって時間が経つにつれ、ますますODAの重要さの意味が日一日とわかってきているというのが私の実感です。そういう意味では、ODAを透明にそして効率的に使っていくということがますます重要だと強く思っております。
 それから、そのODAの使い方について、国民に参加をしていただいて、いろいろな所から声をいただくということが大事だと思います。あとでお話に出るのかも知れませんが、昨日、緒方先生から人間の安全保障という観点からは特に地に足が着いたODAが大事だというお話を伺って、またさらにODAの別の角度からの重要性を認識いたしました。昨日、人間の安全保障についての国際会議がありまして、緒方共同議長、そしてセン共同議長で非常に良い会合があったということでございますが、私も終わりのところだけ伺わせていただいて、まとめのところを伺わせていただきました。その中でODAが非常に重要であり、日本にとっては人間の安全保障を実施していくときのツールとしてODAしかないといっても過言ではないと思います。ですから、そういう意味でもODAについて是非良い議論をしていただいて、そして今度の大綱との関係でもこれが大きな要素、これをどう位置づけるかということは、大きなことだと思っております。
 地に足の着いた援助も外務省としては日頃心がけているつもりでございますが、さらに緒方先生にいろいろとお話を伺って、改善すべきところはもっともっと改善していきたいと思っております。引き続き、良いご議論をよろしくお願いいたします。朝からお忙しいところ、ありがとうございます。

(渡辺議長代理) 外務大臣、ありがとうございました。それでは引き続きまして、緒方先生からお話を賜った後、意見交換をさせていただきます。それでは緒方先生宜しくお願い申し上げます。

(緒方共同議長) 今日は、ODA総合戦略会議にお招きいただきまして、ありがとうございます。日本にとってODAは非常に大事な国際貢献の手段であり、外交の手段であるということは、重々承知しておりまして、私もかつては対外経済協力審議会の委員をさせていただいたこともございましたし、ODAのいくつかのプロジェクトの評価ミッションにも数回伺ったことがございます。昨今、経済状況が非常に悪化してきている中でも、ODAだけは非常に効率的にしかも大事な国際貢献の手段であり、日本の対外政策の手段でもあるというご意識の下に、見直しをしておられると聞いておりまして、大変心強く存じている次第でございます。
 今日、伺いましたのは、人間の安全保障委員会がここ2年、いろいろな形で作業を進めまして、人間の安全保障という観点からもう一度、第一には安全保障そのものの考え方を見直すべきではなかろうかという点、そして第二には、そのインプリケーションは何なのであろうかというようなことから、いろいろ政策のツールとしての人間の安全保障というものが、本当に何か今の現実に非常に必要な部分を補い、かつ提言ができるのではないかという点、こういう認識で作業を進めてきたわけでございます。
 また、こういう考え方は国際的にもかなりいろいろなところで検討されているのですが、日本の場合は人間の安全保障基金というものを設けまして、これを国連に委託して、その基金を基に国連諸機関の提案する色々なプロジェクトを審査して、実際の仕事をやってきました。その人間の安全保障基金の基本概念となるものは、実は基金が出てから基本概念を調べるということになったのでございますが、それを改めて基本概念を考え、それに基づいてさらにその基金を日本からの基金のみならず、国際的にももっと広げていきたい、という考えが背景にありまして、委員会の共同議長を引き受け、運営してきたわけでございます。
 この過程では、各委員ともいろいろな専門知識またはいろいろな地域、異なったものをもってきてくださる優れた方々にご参加いただきまして、議論そのものは相当大変だったのですが、一応一昨日、報告書は採択されまして、これがきちんとした形で出版され、広く使っていただき実施に移していただくというプロセスになっております。現段階でまだ出版されてはいませんが、本日午後に小泉総理へ報告書を提出させていただきまして、この報告書は小泉総理と国連のアナン事務総長にお渡しします。そして、それぞれから実施への取り決めやご配慮をいただくという手だてになっております。
 いくつかの特徴を申し上げますと、大きくいいまして、やはり現在の世界における様々な現象 ―貧困、感染症、政治経済状況の急速な悪化、紛争の蔓延やテロの発生、人の移動、これは自主的な人の移動だけではなくて強制された移動というものが非常に広がっていて、また環境も悪化しているという現象の中で、ある意味では相互依存が深まっています。しかし、その相互依存の深まりに対応していくための国単位の能力は不十分ではなかろうかという基本認識の上に立ちまして、やはりマルチラテラリズムの重要性を再認識し、また今回こうした現象に対応するためには、民主主義とガバナンスの原則の実施が再度中心的に続けられる必要があるということを考えた上で、国家の安全保障だけでは枠組みとしては不十分であるということです。この21世紀におきまして、人間の安全保障という考え方の重要性を訴えると同時に、これがどういう政策的なインプリケーションがある、ということを報告書にまとめたわけでございます。
 これを大きく申しますと、まず第一に紛争と開発の両面に関わる諸原則に対応しなければならないということです。今までどちらかというと、紛争は紛争の専門家、開発は開発の専門家という形でアプローチされてまいりました。これは国際機関においてもそうでございますし、各国政府内におきましても縦割りの行政の中で、縦割りの専門性という形で行われてきたのですが、それでは本当に人間の問題には対応できないのではないかということが一点でございます。
 それでは何を目的に、こういう政策は立てられべきかと申しますと、人間とは誰のことをいうのですかという質問を受けましたから、あなたと私のことですとお答えしたのですが、人間の生存・生活・尊厳をまず確保するのが目的であるということです。人間を保護し、人間の能力強化、エンパワーメントという言葉は最近日本語になってきたと聞いておりますが、保護と能力の強化という二つのアプローチでこの目的は達成できるのではないかということです。そして、どこに焦点を当てるかというと、個々の人間は大事なのですが、個々の人間の個々の問題に対応するというよりは、個々の人間によって構成される市民社会、コミュニティ、このレベルにおいて人作りや人間の安全の確保も考えていきたいということです。ピープルという言葉は非常に日本語に置き換えにくい言葉なのですが、それを社会作りというような形で考えていただければ、一番的確ではないかと思います。従来の国家による安全を補完するものとして、社会による補強、これが「人間の安全保障委員会」の考え方の骨子にあるわけです。ということは、政策的にいろいろなインプリケーションがありますから、そこに焦点を当てて、社会の強化ということを考えてみますと、安全保障の立場からも、開発発展の立場からも、それから開発協力あるいは対外援助の立場からも焦点が変わってくるわけです。どういうようなインプリケーションがあるかということにつきましては、報告書の内容をご報告した上で私としては問題提起の形で皆さんのご議論を伺いたいと思っております。紛争と開発の両面に関わる現象に対する包括的なアプローチ、そして人間社会というものに焦点を当てると、その社会の強化、それも上からの強化、制度的な強化と同時に、下からの実力の強化と考えております。
 そのアプローチとしては、全体的に八章で成り立っている報告書でございますが、お手元に草案の形であったものがすでに伝わっていると聞いております。それを整理した上で、申し上げますと、第二章においては紛争下の人々の保護というのが中心になっております。第一章は、今申し上げたような総論でございます。国家の安全保障のみでは必ずしも現在直面している諸現象に対処しきれないというようなことから、いくつかの具体的な提案が出ておりまして、第一点としては安全保障の枠組みの中での人間の安全保障の強化をどのようにやっていくかということです。例えば、国際社会の平和活動の中で、女性や子供など特に影響を受けやすい人々の保護をどこまで明示的に出せるか、また国際的な文民警察の活動の中に当該地域の警察組織の強化、技術協力等を含めることなどが考えられております。
 それからまた人権法と人道法の尊重、特に人権法というのは非常に包括的な法でございまして、人権と人道、そして人権の尊重と人間の安全保障は非常に補完性の高いものであると考えております。人道法の重要性は、そもそも戦時放棄に基づいていているわけですが、戦時放棄と同時に平時の人道法の適所等も考えられるわけで、この人権と人道の尊重を確保する必要があり、そしてこれらの法を強化徹底するための諸機関、例えば国連人権高等弁務官の活動がもっと活発に強化される必要があるということです。この間においての犯罪の防止、武装の解除、そして市民権の確立、実はシチズンシップの研究はだいぶ広く致しましたが、シチズンシップというものは日本で考えるとナショナリティの問題、国籍の問題になるのです。国によっては、国籍ではなくて、市民権と別になっている場合もあるのです。こういう市民権、シチズンシップの問題がどうして必要かといいますと、シチズンシップがない、あるいはシチズンシップが弱いということから来る様々な危険そして被害があるということであり、場合によってはシチズンシップがあることによって就労の機会が非常に拡大するということもあるわけです。それからさらには紛争予防という視点からも教育・貧困削減等の紛争下の人々の保護の中で考えていこうということが第一義の紛争下の人々の保護の問題でまとめられている諸要点でございます。
 次の章としては、移動する人々の保護とエンパワーメントということを挙げております。移動する人々、これは強制的に移動される人々が非常に多いということからも考えているのですが、ただ就労者の場合、自発的に動いている人がいるものですから、移動させられるというだけではなくて、もっと広く移動する人々の保護ということを訴えております。人々が非常に激しく、そして広範に移動するというのは現在の21世紀の特徴でございます。昔からあったという説もあるのですが、範囲とスピードにおいては、現在のこのグローバリゼーションの一つの現象としては、人々の移動は大事な点であろうということです。しかもそれに対して必ずしも制度がきちんと対応していないという現実があるわけでございます。特に難民の場合は、難民条約またはその議定書なども進んでおります。そしていろいろな実践上の問題があるのです。例えば難民の中に戦闘員が混じっているとか、文民に対する保護が十分ではないとか、いろいろな問題があって、それ自体は研究と協議の対象になっておりますが、国内避難民、これは非常に大きな問題だったのですが、国内紛争は1990年代に非常に多く起こりましたが、国内紛争が多いということは全部国境を越えて国際的な保護下に入る難民とは別に国内にあっても難民のような状態でいる人たちが非常に多いということになります。その問題の大きさについては国際的な注目が非常に高くなりまして、行動指針という形ではこれは採択されたのですが、これを実施するのはなかなか大変なことなのです。今一番制度的に欠落しておりますのが移動労働者の問題です。
 これは人の移動という問題、開発の問題、そしてまた同じ移動労働者も政治的に強権政治があって経済的な将来が少ないというような所から出てくる人が非常に多かったということです。イラクであり、イランであり、アフガニスタンであり、そしてまた東欧諸国においてもそういう現象があったわけです。この人たちに対する適切な対応というものは、今国連の中でも事務総長が非常に関心を大きく持っておりまして、どう対応していけば良いかという研究会もあったのですが、いずれにしましても適切な形での市民権の付与、国内法および国際協力による強大な犯罪防止措置の必要性、それから頭脳流失に対する頭脳確保の問題等いろいろな問題が多くあるのですが、せめて法的な枠組みの検討ぐらいは国際的に始めてもらいたいというような形での提案を出しております。いずれにしましても、非常に包括的な問題なのですが、グローバル化の中で一番制度的な枠組みが遅れているのは、人の移動に関する問題だと思っておりまして、そこに注目しているわけでございます。
 第四章においては、紛争から平和への移行における人々の保護、エンパワーメントという問題が定義されております。これは、紛争から平和へというのが非常に国際的な戦争の場合、和平条約があって明らかに紛争から平和という時期区分ができるわけですが、昨今特に90年代の紛争は主に国内紛争であったと、そして比較的平和な状況が起こってきて、うまくいくとそこで必要なアグリーメントができる、あるいは国連による暫定統治ができるというようなことがあったのですが、なんと言いましても比較的紛争が平和へ向きだした時点からどうやってこれを平和にもっていくかということは、非常に大きな紛争と開発の相互の問題としてあったわけです。
 私個人としては、この辺で一番苦労したのですが、個別の状況からみてうまく行った場合、うまく行かない場合等々がありまして、一貫して人間の安全保障フレームワークをこういう状況に当てはめまして、そして各国際機関、各国の二国間援助、そしてまたNGOの活動等々についてもっとはっきりした協力と指針を出していかなければならないのではないかと思います。そういうフレームワークは今個々にできつつあるのですが、治安の維持、人道支援、復興開発援助、コミュニティ間の内、およびコミュニティ間における和解共存のいろいろなプログラム、統治能力の強化と、5つの柱を包括的に組み込んだ人間の安全保障フレームワークというものを策定していこうと、そして各柱で責任を持つ国際機関と対応して、また当該国および周辺国とも協議しながらこういうものを作り、強化していきたいと考えております。その中で特にいつも中心に考えていかなければならないのは、人々の安全と治安の位置でございます。この辺は、アフガニスタンの復興援助をモデルとした研究などもいたしまして、あのように国も滅び、行政も滅び、政府もようやく立ち上がりつつあり、しかも国民一般はインフラも壊れ、そして難民・国内避難民が多いという状況からどうやって国づくりをやっていくかというようなことを考えた時に、人間の安全保障フレームワークに基づく国づくりというのも、なかなかいろいろな示唆が与えられるのではないかと、ケーススタディとしてもアフガニスタンを取り上げて、試みてみました。
 その間にもちろん政府の統治能力も高めるのですが、市民社会の統治能力、自治能力と申しますが、そういうものを並行して強化していかなければならない。女性の社会参加も非常に大事であります。この場合に何が一つの大きな欠点になっているかというと、そういう移行期間に紛争から平和への移行のトランジション・ピリオドに入ってくるお金の出所が非常に多様であり、また不足しているのです。アフガニスタンの場合は、日本政府もいろいろ地域開発等も考えられまして、難民・避難民の帰還というものに多少の開発の出発点になるようなプログラムを付けて、国際機関に第一段階としてこれを委託しているわけです。つまり、シェルター、住居、水、学校・病院等様々な問題があり、たくさんの国のたくさんの市民からもいろいろなご寄付はあったのですが、これがバラバラであれば本当の社会作りに効果が出てこない。従ってもっと社会的な基盤になるような地域を考えて、地域的な取り決めも広がりをもたしていきたい。その間に開発援助機関、これは国際的な銀行、世銀やアジ銀行等々は、計画としては早くから入ってこられるのですが、実施にはなかなか時間がかかるということがあります。それは一つにはコンセッショナル・ローンのような場合もあったりして、アフガニスタンの場合ローンは受けられないというようなことがあり、これも遅れたわけですが、何とかしてそういう移行期間にもっと直接役に立つような基金が必要であるということは比較的広く認識されております。これを実際にどうやって実施するかということは一つの問題になっております。
 第五の章としては、経済安全保障、様々な選択肢の中から選ぶ力という副題を付けておりますが、この人間の安全保障を考えました時に予測できない急速な状況の悪化、サドン・ダウンターンと言っておりますが、これはアジアにおける経済危機が起こった時に当時の日本の小渕総理も非常に苦労されて、もっと社会保障を達成するような雇用の確保や社会的な様々な保障制度を考えていくべきではないだろうかと、ソーシャル・プロテクションというような問題の重要性を指摘されて、それが一つの人間の安全保障に対する関心の基礎になったと私は承知しております。貧困をなくすための成長、これは成長の主要素、これはマーケットや市場、そして経済的な発展の問題、それと同時に経済的に不利な状況にある人たちの保障をどうやっていくか、それをバランスして考えていかなければならないということから、社会保護制度というものも見直さなければならない。従って市場経済を基盤としながら、ソーシャル・セーフティ・ネット、最低生活保障制度を確立する必要があり、それをどうやって作っていったらよいのか、何が必要なのかを考えなければならない。得てして、分配の公平というものを重要視する専門家と、マーケットを重要視して発展を重視する人の間のコミュニケーション、政策の共通の認識、そしてその認識の実施等々が今までの状況の中では不足しているというようなことがあるものですから、そういう点についてもっとしっかり考えていかなければならない。それは委員の中でも、いろいろな議論になりまして、どういう順序でやっていくのか、どういうものにプライオリティを置くのか、というようなことがかなり激しく議論されたわけです。
 それからサドン・ダウンターン、生活の状況の急速な悪化の中には経済的な要因から起こる場合と国が非常に大きく変化したことから起こる場合とがあります。例えば、制度の変化、社会主義政権から自由主義経済政権に移った旧ソ連邦の諸国等においては、これは国が滅びたといってよいのでしょうか、私どもが中央アジア5カ国に参りまして、各国の政府、NGO、それから研究機関の方々に集まっていただいて、お話を聞いたのですが、やはり国が滅びると非常に象徴的なことは、何語を使うかという問題から始まるわけですが、それまではロシア語が共通語だったのだけれどそこから独立した国はそれぞれの言葉を使いたい、それぞれ違った言葉のコンビネーション、そこからアイデンティティの問題が起こり、それは社会的・精神的に非常に強いわけです。今、言葉という比較的わかりやすいことで申し上げたのですが、経済制度が違う、社会制度が違う、新たなものを作ることによって独立したい、しかも状況は悪化しているという中でどうやって経済安全の保障を確保していくか、これは人間の安全にとって非常に大事なものであるということです。これは非常に大きな問題だったと思いますし、やはりケーススタディ等によって、報告書の中でざっと書いております。後付はいくつかのケーススタディの研究は出版したいと考えておりますが、そういう中に反映されているわけです。
 六章が保健と人間の安全保障です。この点は比較的HIVエイズを含む感染症など貧困を主たる要因とする保健問題、紛争下の暴力、自然災害などの緊急事態、そしてその後遺症、こういう問題にもっと積極的に取り組んでいかなければならないということは、これはほとんど異議なしで皆認識しています。そのような問題に対して、どういう形で保健の保障制度の見直しをやっていったら良いか。感染症の問題、貧困を主たる要因とする保健問題、それから暴力、自然災害などの緊急の事態、それぞれが保健等について今までの制度では不十分であるということです。国際社会としては、保健サービスは公共財と考えて、全ての保健問題は相互に関連している点に留意して、もっと保護と人々の自らの力によるエンパワーメントというものを強化していかなければなりません。やはり自分自身がどのようにして自分の保健問題に対応するかというのは、次に出てまいります。教育の問題と非常に関連しているわけです。ですから根本的な問題として、教育と保健というものはエンパワーメントの中の基本にあるのですが、そこでもコミュニティ単位の保健システムの構築ということの重要性を指摘すると同時に、これはそれぞれの国や社会によってどう作るかというのは違うのだろうと思うのですが、そういうコミュニティ・ベースでコミュニティに最も適用した保健システムの構築ということを強く訴えました。
 そしてもう一つ、知的所有権の問題について、これは大変な議論が生じたのですが、先進国においていろいろな薬品の開発をするとその研究費もあって、その薬剤の許認可をめぐる問題が途上国で多くの人々にとっては死活的な問題になるということに、どう対応すれば良いかということがございまして、これはWTOと多くのNGOや薬剤の製造業等々の間でも激しい議論が続いているのですが、一応何らかの形で合意が出来つつあるということも聞いております。そういう問題については広く、薬剤等の研究に必要なことは良くわかっているのですが、やはり一般の人々の保健について必要な問題に対してはなるべく広くこれを開放してほしいというような方向で私どもの考え方はまとめられました。
 最後の点としましては、教育そして知識、技能等についての問題なのですが、この基礎教育の重要性、そして基礎教育に対するアクセスの必要性、これは誰も疑うことのできない原則なのです。しかし、実際にはかなりの国および地域で基礎教育に対するアクセスが十分できてないし、また女性や女児に対する教育が非常に遅れています。これはミレニアム・デクラレーションの中でも大きな問題として出ているのですが、これに対する支援、どうしたら良い教育へのアクセスができるかということは、ミレニアム開発目標を再度確認し支持するとともに、特に女児への教育を通じた初等教育の完全普及ということを国際社会に対して勧告するということです。それからさらに、今度は教育環境ということに目を向けまして、特に女子生徒に対する性的暴力やジェンダー差別等にも留意する。それから難民・避難民という紛争下にある人々、そういう人たちの教育環境にも改善の余地があるのではないだろうかということで、全ての子供達が安全な教育環境の中で勉強できるようにということを勧告の中に入れております。
 そして教育のもう一つの大事な機能としては、人間、または人間社会というのは多様性に富んだものであるのだといった多様性の尊重ということを一つの教育のカリキュラムの中の重要な柱に入れて欲しい。多様なアイデンティティを持った人間の集団が世界の現実であり、求められていることである。多様性を尊重する教育課程と内容、そしてそれに対応できる教授法の開発ということを強く主張しております。それと同時に、子供だけではなくて、全ての市民、そして全ての地方政府・国家・国際社会の全てのアクターに対して、多様性を尊重し、そして自らの権利を行使して責任を果たすことによって社会に積極的に参加するという態度をもっと広く強化助長していきたい。
 そういうことで、人間の安全保障全ての安全に向けてという八項目の提案を出しておりまして、これは今申し上げたことの繰り返しになるのですが、第一項目としては紛争の危険から人々を保護すること。第二としては、この移動する人々の安全を推進すること。第三は、戦争から平和への移行期のための基金を設立し、移行を積極的に進めること。第四は、市場や貿易を拡大する一方、最低限の生活水準を確保すること。第五としては、基礎保健サービスの完全普及、第六は特許権についての効率的かつ公平なシステムを早急に確立すること。第七は、基礎教育の完全実施と人々の能力の向上のための国際的・国内的措置を強化すること。第八は多様性を尊重するような教育の方法を速やかに導入すること。そして何よりも大事なことは、これらを実現するために国際社会の様々な主体が知識と経験を共有し、資源を結集すべきであると。つまりこういう目的のためのグローバル・コアリションというものを作っていこうと。そういうことでこういうグローバル・コアリションを作り、それを推進していくためには、日本に対しても非常に強い期待を私どもは持っております。それは日本が最初に人間の安全保障基金をお作りになったし、そういう発想を国家としても政策の中に取り入れていこうという態度で私どもの先を見守っていただいたということ、そしてまたいろいろな形で支援していただいたということ、さらに昨日大臣からもご発表があったのですが、草の根人間の安全保障無償というものを、この非常にODAが厳しい状況になりながら採択されたわけです。そういう状況にあるということは、非常に私どもとしては、心強く感じております。
 そういうことで、今ざっと対応を申し上げたのですが、私がいくつかODA総合戦略会議の記録など少し拝見させていただいた上で、どういうふうに考えられるのかなという点だけ、2、3疑問の形あるいは質問の形で出させていただきます。それは、ODA大綱の見直しについては、目的・原則等々がおありになって、アジア重視という線は確認されたと承知しているのですが、アジアをどういう範囲で定義されているのかはっきりわからなかったし、それからエリアカバレージの問題、そしてさらに国別援助計画等もいろいろ立てておられると承知しておりますが、国別援助の基にある様々な共通のベーシック・コンディションはどのように規定されておられるのだろうか。貧困削減、平和構築等々伺っております。全体としての戦略的基盤にある実行はどう考えておられるのか。それに対しては人間の安全保障委員会の提言がすでに取り入れられているものがあるのだろうとは思うのですが、何らかの形で私どもの方からもこういうことを考えていただきたいと、申し上げる余地があるものかどうか。
 それからもう一つは、今回も再確認されたように記録にはございましたが、要請主義というものは一体どういう形で運営されていかれるおつもりなのでしょうか、ということです。それは国別というと、国家の安全保障であり、国内の安定でもあり、国民の繁栄の下に国家があるというのは事実なのですが、国家だけではやれないことが非常に多いというのも現実なわけですね。そういう中において、この要請主義というものをどういう形で実践していかれるとお考えなのか。また援助対象になる部分は、この人間の安全保障から申しますと、国家よりかなり広いレベルになっているわけです。そういうものを援助の対象として、目線をそこまで広げてすでにおられるのか、広げようとしておられるのか、そこには向いておられないのか、その辺が私たちは非常に興味があるわけです。興味があるというより、関心があるわけです。それから平和構築というものを今度は打ち上げられておられるのです。つまり、これは治安の維持であるとか、文民警察であるとか、早期の復興援助、早期の復興援助というのは、治安の悪い状況、危険度の高い所、そういうものから復興援助を始めなければ全部が収まってから復興などできるわけではありませんから、そういう中で一体今まで、非常に慎重でおられた危険に晒さないという立場をどのように考えておられるのか。そして今後これだけの大きなODA国として、こういうような新しい問題や現状に対応するための専門家の範囲と規模についてはどうか、というその辺も私としては少し伺わせていただけると大変ありがたいと考えております。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。今、大綱の見直しや国別援助計画を策定するという努力をやっている最中ですが、このいずれにおいても考慮すべきいくつかのテーマが今日指摘されたのではないかと思います。最後に緒方先生の方から挙げられた問題に対して、どのような考え方を持っているのか、緒方先生から出された問題へのリプライも含めながら質問を出していただけたらと思います。大野さん、どうぞ。

(大野委員) 最後に出された問題にも関係するのですが、紛争から開発につなげるのは非常に難しいとおっしゃいました。僕は開発の方からアプローチしていますがそれは良くわかります。一つそこで、私はお聞きしていて思ったことは、紛争から開発、あるいはアフガニスタンのような状況から開発に行くというのはほとんど不可能であって、この政権がどれだけ安定しているのかわからずに、長期開発議論はできないという感じがしています。緒方さんがおっしゃったことで、一つ気になることがあります。国家という単位だけでなくて、もちろんしかし、いろいろなプレイヤーがいるのだということはここでも議論されているのでわかっております。やはり紛争から開発へ行く間に一つステップがあるのではないかと私は思います。それはやはり国家というものは、開発にとって絶対に必要なのです。市民社会とか、分権された地方がグローバリゼーションの力にそのまま保護も何もなしに向き合うということは不可能であって、それでは経済基盤を破壊されるし、環境も破壊されるし、文化も破壊されるかも知れない。ですから僕は、紛争と開発の間に、国家というものが、必ずしも我々の見方からすると民主主義の成熟した形ではなくても、ある程度国内紛争を力で押さえながら、開発を遂行できるそれからグラスルーツの力を吸い上げられる政権を作る必要があるのではないかと思います。ですから僕はもう少し国という単位をトランジションにおいて重要視したいのです。例えば日本だったら明治維新のあと、憲法が出来るまで23年かかりました。戦後は占領が7年ありました。あの間、すぐに民主主義をフルにやって、本当に資源動員、制度構築できたのだろうかという疑問があります。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。1対1のコメントに答えていただいておりますと、時間がなくなってしまうということもありまして、ご意見のある方ひと渡りしていただいて、最後に緒方先生の方から答えていただくことにしていきたいと思います。小島さん、磯田さん、浅沼さんの順序でお願いいたします。どうぞ。

(小島委員) 今の緒方先生のご説明の「人間の安全保障委員会」の報告の骨子とそれから緒方先生がご提起された問題に連動して、一言コメントさせていただきたいと思います。その問題というのは、今最後のところで、緒方先生から、この会議はアジアをどう定義づけているのかという質問がありましたが、私は、この「人間の安全保障委員会」で人間の安全保障の問題に関わる時にアジアの国々、アジアの地域というのをどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、それを少しお伺いしたいと思います。と申しますのは、東アジア地域というのは一方で、ここで具体的に申し上げるべきかどうかわかりませんが、朝鮮半島を中心としてまさに今後の人間安全保障の対象になる地域であろうと思うのですが、それと同時に日本をひっくるめて、韓国、中国、そして東南アジア、まさにこれは人間の安全保障にかなり積極的に関与していくべき国であり地域であろうと思うのです。但し、これはヨーロッパやアメリカとはかなり違う意識を持っているわけですから、例えば民主にせよ、ガバナンスにせよ、かなり異なる認識を持っていると思いますので、そのあたりをどうお考えなのか。そのあたりを、そのまま今度は戦略会議におけるアジア地域、ODAの対象として重点を置く地域としてアジアが取り上げられていますが、このアジアをどう定義付けるのかは、そのまま今申し上げた質問と関わってくるわけです。一方でアジア地域というのは援助の対象国であると同時に、これから日本が東アジアを中心としてある種の地域協力枠組み作りを本格的に進めていこうとするならば、日本1国だけではなく、この地域の主だった国々との協力の中で進めていかなければいけないわけで、その意味で、ここでいうアジア地域をどう定義づけるのかというのは、対象国あるいは協力国その両面からアジア地域を定義づけていく必要があるのだろうと、私自身は感じております。

(磯田委員) 私は、日本国際ボランティア・センターのソマリア事務所に、紛争が始まる前の比較的平穏な時から前政権崩壊直前までソマリアにおりました。その後も現在にいたるまでずっと注目してきております。その中で、やはり今緒方さんがおっしゃられたような、市民社会の中での平和構築というのでしょうか、国家ではなくコミュニティの強化。そこでのリーダーシップの育成が大事だというお話、身に染みる思いで聞かせていただきました。
 途上国の多く、特にアフリカ諸国は、国ができる以前に植民地支配により国境が決められたところ多いです。民族が分断されたまま、あるいは非常に不自然な形で統合されたりということで、常にやはり紛争の種はあると感じています。国という制度は重要なことだという事に賛同するものの、一方では、例えばかつてのソマリアのように長老政治が生きていた社会というものがあって、長老による交渉など地域社会の中に平和構築、あるいは紛争解決する力、仕組みがあると思っています。こういった国の制度ではない部分をきちんと強化するという視点を持たずして、平和構築は語れないということを私自身ソマリアの経験から強く感じています。
 おそらくアフガンにしろ、多くの国で同じような問題があると思います。人間の安全保障委員会の報告を真摯に受け止めて、日本のODAを考えていかねばならないと感じております。

(浅沼委員) 最初に、この安全保障委員会の報告書に対して、二つ質問があります。先ず、第一は、幾つか方向性を示唆されている中で、多分一番難しいのがこの第三章の、移動する人々の保護と能力付与に関する国際的な、制度的な枠組みを作るということだと思います。今の段階では、一応その目標としては、例えばWTO的なものは無理だとしても、GATTくらいのところのものを考えていらっしゃるのでしょうか。その制度を作ることによって、それはそのルールの集積でもあると同時に、実際に政策をインプリメントしたりする事務局的な組織もなければいけないので、それでGATT的なものを考えていらっしゃるのでしょうかというのが第一問です。それから第二の問題は、この「人間の安全保障委員会」報告書の中で、「国際的な武器取引」という言葉が一つも出て来ないのですね。

(緒方共同議長) 細かいところでは出てきております。

(浅沼委員) これについては、やはり今の国際的な政治事情では大変無理なのでしょうか、というのが第二の質問です。それから第三に、ODA大綱についてたくさんのコメントを頂きましたが、その中で一番難しい問題は、国家と、それからそこにいるピープルというのを、どういうふうに捉えるかということだと思うのですが、私自身は、今の現存する社会経済体制の中で、ナショナル・エコノミーというのが多分存在するであろうと、それからナショナル・マーケットや、ナショナル・インスティトゥーションズ、そしてナショナルなソサエティーやコミュニティーというのも存在するだろうという気がするんですね。多分ODAで煮詰めなければいけないのは、国家という、そのピープルとは切り離された、そこに存在する権力構造ではなくて、それ全体をそのナショナル・エコノミー、ナショナルなソサエティーという形で捉えて、それを煮詰めていくことだという気がします。そうしますと、もう一つの質問である要請主義というところに繋がってきて、一体誰が要請するのだという話になるんですが、その意味で要請主義ではなく、私はそのナショナル・エコノミーなり、ナショナルなソサエティーの需要、デマンドを我々がアイデンティファイして、それに対応していくということが大切だという気がします。どうやってその需要を見極めるか、需要をすくい上げるかというところになるのですが、それは多分そのナショナル・エコノミーなり何かのプレイヤーたち、その中では国家が大きくなってきますけれども、それとの多分政策対話という形を取って、それを通じて見極めていくという、ある程度今までの要請主義の形式的な点を改めていくところにあるのじゃないかという気がします。最後にアジアの定義についてなんですが、私自身はアジアと定義する必要はなかろうと思います。しかしODAの役割として二つの役割があって、一つは国際的な制度なりシステム自体なりが円滑に運営され、且つ発展されていくことに対する支援という、システムに対する支援というのが一つあって、もう一つはそのシステムの中に存在する個々の日本との関係があるバイラテラル又はリージョナルな、いろんな関係があると。それに対する支援という二つの意味があるような気がします。その後者を取ってみた場合に、そうしますとやはり関係の密度と言いますか、質量の違いというのがあると思うのですね。それを経済的、或いは社会的な日本との距離と表現してもいいと思うですが、それの強いところ、重いところに日本の支援が行くのは、多分当然のことであろうという気がしまして、それが強いところがアジアなので、これはショートカットとしてアジアという表現をとってもいいのではないかというふうに私自身は考えました。

(草野委員) 先生、どうも有難うございました。短く感想を述べさせて頂きたいと思います。最後の先生のご質問、ご指摘というのは、多分ODA総合戦略会議がこの国別援助計画を既に幾つか計画をしているけれども、その一体前提となるベーシック・コンディション、これが議論されていないのではないかという、こういう疑問がお有りだというふうに承知致しました。実はそれに対しては、これは渡辺議長代理がご説明するべき点だとは思いますが、実は国別援助計画を立てつつ、このベーシック・コンディションも議論しているというのが実態でして、その意味で今日の、人間の安全保障という観点からの先生のご説明、お話というのは、大変に示唆的だったというふうに思っております。私、ワーキングチームの方でこのODA大綱見直しの論点整理をやったわけですが、その中でご指摘のありました要請主義については、これは今までのやり方の要請主義をそのまま残すという意味ではなくて、今日のお話の、いわゆる国家だけでなくて、個人、そして個人が構成するところのソサエティーといいますか、その社会からの要請というものも十分に考えるということで、実際に国別援助計画の中でも、これは私僭越ですが、間違っていたら訂正して頂きたいと思いますが、国別援助計画の策定の過程でも、単に先方の政府だけからではなくて、NGOも或いはそのソサエティーからの要請というものも十分汲み取るということを基本にしていると思うのです。それから最後に質問を二つ差し上げたいのですが、一つはこういう8項目の、大変体系的なご提言ですけども、これをどういうふうに具体化するのかということについてお聞きしたいと、フォローアップですね。それからもう一つは、つい先日、女性の国会議員に呼ばれまして、これはいわゆるWIDに大変関心のある政治家の方々に呼ばれましてお話をした時に、お一人こういうことを言われたのです、つまり日本は大変財政的に厳しい状況であるので、ミニマム・リクワイアメントとしての人道支援を除いては、アフリカなどについては余りやらなくても良いのではないかと、まあ、欧州に任せるべきだと、こういう議論がありましたが、先生の、人間の安全保障の観点からしますと、こういう政治家の感想についてどう思われるかということをお聞きして、私の感想とさせて頂きたいと思います。

(伊藤委員) 短く二点。一つは読ませて頂いた印象なのですが、慢性化した飢餓状態とか、むしろその恒常的な人間の安全保障問題ですね、水の問題とか家問題、そういった部分の記述がちょっと弱いかなという感じがしているのですね。第五章も読んでみたのですが、それが一点。第二点目は、ちょっと答えにくい質問かも知れませんが、イラク攻撃に関する点なのですが、国家の安全保障と人間の安全保障が相対立するというのはおかしいのですが、非常に矛盾するような今場面に接していると思うのですね。結局そのイラクの民衆が、人間の安全保障という観点からは脅かされつつある状態が今生まれているという中で、緒方先生達のお立場から、これをどうお考えになるのか、そのお考えをお聞かせ願いたいと思います。

(緒方共同議長) お手元に渡ったものは、今回の会合に出す原案の省略だったので、それ自体がもう報告書という形でご理解頂くと、ちょっと困ります。おそらく、内々渡ったのだと思いますが、ご参考までということで。考え方において、ものすごい違いがあるというのではないのですが、原案だったのです。

(荒木委員) 私は、まあ個人的な考え方ですが、緒方先生の、人間の安全保障のこの問題を、この我が国の国際貢献にどう取組むかと、取り込んでいくかということについて、ちょっと発言したいと思います。先ず、この現場、カンボジアに行ってもそうですが、アフリカでもそうですが、一番の人間の直接的な安全保障を脅かすものが、小型武器なり、或いは地雷なりあるわけですよね。そういうものの除去をしていかなければならない。これはもう途方も無い壮大な資金もかかるわけですが、何れにしてもそのメカニズムというものとODAがその後入って開発を支援していくと、或いは農村開発を支援すると。農村開発を支援しながら地雷除去をする、つまりこれは非常に複合的に全部重なり合っているわけですね。重なり合っているけれども、非常に組織的には、実行する時横断的にやっていかなければならない。ところが、先生がご指摘のように日本の場合も縦割りになっていて横断的ではない。PKOというのは内閣府にある、ODAというのを実施するのはJICAで、JICAはその自然災害だけの緊急援助であって、難民救済についてはやらないと。こういうバラバラの日本の体制というものでは、先生の仰る人間の安全保障というのは、なかなか日本の国際貢献の中に取り込めることは出来ないのではないかと。従って、もっと政府は総合的な対策を練って、新しい日本の国際貢献として旗を揚げるということを是非政治家の皆さんにもお願いしたいと。これは私の見解ですけれども。

(砂川委員) コメントをさせて頂きたいのですが。人間の安全保障の問題に対して日本にとってODAはいわば唯一のツールであるというご指摘があった、まさにその通りだと思いますが、ODAはご承知の通り有償の部分と無償の部分があります。有償というのは、これはファイナンスであるわけですね、金融であるわけです。従いまして先程ちょっと世銀なんかが時間を取るねというお話がありましたが、ファイナンスの対象をどういうようにして決めていくかというのは非常に難しい問題だろうと思います。その点、無償はイン・カインドでありまして、結局物でもって、或いは人の知恵でもって支援をしていくということですから、おそらく無償の方が先に出て行って有償が後に行くのだろうと思うのですが、その辺がなかなか今までのODAの議論の中で熟していなかったと思います。この点がこの人間の安全保障という新く、そして大変重要な問題に取り組む際、支援を時間軸で組合わせていくときに改めて問われる問題じゃないかと思います。

(千野委員) 緒方先生、どうも有難うございました。特に人間の安全保障基金を日本がいち早く立ち上げて、日本への期待が大きいということを仰いましたが、私も全くそれに同感するものです。一つ簡単に質問なのですが、草野委員がどういうふうに具体化していくのかというふうなことを仰いましたが、合わせて、私23日と24日の会議を傍聴しておりませんのでこういう質問になるわけなのですが、これが最終報告で、この後この「人間の安全保障委員会」というのは、どのように活動されて行くのかということを、もしお時間があったら触れて頂きたいと思います。

(渡辺議長代理) 緒方先生に全てにコメントやら疑問にお答え頂く時間はなさそうですが、特に先生の強い印象を受けたもので結構ですのでお願いします。

(緒方共同議長) 幾つか大きい問題があったと思うのです。アジアをどう見るかという問題、国家をどう見るかという問題、それからどういう形で具体化、具体的なフォローアップをするかという問題、それから日本に何ができるかというその辺についてお話致しますが、よろしゅうございますか。
 国家をどう見るかという問題なのですが、国家というのは行政体としての国家があるわけですね。それは地方にも地方自治体があるわけです。それを合わせてみますと、かなり先ほど最初私の説明の仕方が不十分だったと思うのですが、中央政府が何でもしなければならないということではなくて、かなり地方自治体のレベルに落として開発援助、或いは市民の援助等は出来るのだろうと思うのです。それは日本のように、日本のようにというのは止めておきましょう、日本も本当は地方自治体がもっと強いはずだったのだろうと思いますから。いろんな国を見ますと連邦国家もありますし、地方自治体の方がずっと人間の生活に繋がった部分の行政をやれる国もあるし、それじゃないと国家が強くなっていかないというところがいくらもあるわけです。私も殆ど紛争国家などで随分働いていましたが、その中央国家が、中央政府が強くなるまで待っていたら折角出来た平和はおそらく育ち損なうという場合はいくらもあるのです。そうなってくると、どこを対象にするかというと、勿論アフガニスタンの場合は随分社会の諸集団というところまで下ろして草の根をやり出しておりますが、地方行政の自治体との交流をしなければ、おそらく地域の開発は出来ないのです。ただ、アフガニスタンで特に問題なのは、アフガニスタンの中央政府が一番弱い存在ですから、地方自治体はしかも軍閥等と結託している場合も多いものですから、中央だけいってしまうとますます中央政府が弱いと、そういう問題がありますが、中央政府としては、中央政府を通して相談はしたいと、彼らの権威は見てもらいたいと。しかし、実施体としては地方の行政主体に持っていくことが現実であることは間違いないのです。そういうことで、勿論私は人道機関の責任をとってやっていましたから、余計援助機関の遅さが非常な大きな苛立ちとなった経験がいくらもあるわけです。例えば、アフガニスタンだけじゃなくても、中央政府を漸く作ります、そうすると中央政府の官僚、公務員に対する月給も払えないわけです。それはどうやったら良いかと、そういう問題から始まるのですね。そうやって行政府を作っていかなければならない場合もあるのですね。じゃあ、誰が払うかと。さっき有償と無償の話があるのですけれど、有償でそんなもの出て行かないのですね。それで、今アフガニスタンの場合も無償で、珍しいことですが、日本も確か500万ドル出されたと思いますが、そういうものをプールして、そうして無償で、先ず行政府の給料から作っていくと、そういう事態があるわけですね。ですから、紛争から開発に至る過程で一番議論しますのは、開発援助は大体、紛争というものは無視して開発が行われるという考え方が、今までは少なくとも強かったと。ところが一番開発の遅れている国のボトムを10カ国くらいみると、殆ど紛争まがいなわけです。では、それを無視するのかと。いろんな考え方あると思うのですね、今のアメリカのAIDの考え方も、効果的な援助ということを考えられるから、非常にコラプションが無くて、ガバナンスが出来て、お金を上げれば伸びるというところに焦点を当てた援助をしようと。ところが、気が付いてみると、今度はフォゴットゥン・ステートというか、政府が機能していない国ですね、そういうところこそテロの温床になるわけです。ですから、そういう国がどうやったら良いかという問題が出てくるわけです。それに対応する援助は何があるかと。放っといたら、またアフガニスタンになるわけですから。そういう場合に考えた時に、やはり国家が出来るまで待つのじゃなくて援助によって国家を作っていくということになりますから、もっともっと工夫が必要なんじゃないかというのが私の考え方です。そのために何が必要かというと、もっともっと現場に近いところで仕事をする。援助をされる方達がいないと、いつもニューヨークに行っては、ニューヨークからでは分かりませんよということを言って歩いたことがあるのです、それは国連を対象にしていろんな話をしました時に。ニューヨークと現場との距離は遠いのです。おそらく東京と現場との距離も遠いのだろうと思うのですね、私存じませんけれど。ですから、そういう形で工夫が必要だろうと思うのです。そして、せめて地方自治体くらいのところまでは対象を考えないと国家が出来てから開発が始まるのでは多くの開発途上国、しかも紛争それから社会の不安定のあるところでは、いつまでたっても開発が進まないだろうと。これが私の感じで、お考えの違う方も当然あると思いますが、余りにも援助の、特に開発援助ですね、開発援助は特に私共がみている場合は、バイのものと、それから銀行ですね、世銀、アジ銀等々ですね、その出足の遅さは本当に凄いのです。それから、先ず紛争が大体解決に回ってから1、2年は経つのですよね。その間何があるかというと、調査、調査、調査と何回も調査に来られるのです。そして、計画のこんな分厚いものが出来て、非常にまた偏見をもって分厚い報告書が来るのですが、その報告書を実施に移すのに長い時間がかかると、そういうことです。それからアジアの定義なのですが、これは今伺っている限り、アジアの地域という定義はないのでしょうか。これはこの議論、委員会で議論していた中でアジアにおける人間安全保障の地域組織を作るようにという提案を出そうかという話は実はあったのです。というのは、世界中で地域的なオーガニゼーションがないのが顕著にアジアなのですね。アジアにおいて地域組織がないということは、アジア全体の安定とかそういうことを考えた時にアジアにおいて手掛かりがなかなかつかめないのですね。そういうものがない時にはアジア全体において、例えば人間の安全保障の強化を図ったら良いかという時に、どこへ持って行くかというのはないわけです。特に東アジアにはありません。それで、先程日本の援助が自ずからそういうところとの関係が深いというお話があったのですが、アフガニスタンの援助を考えた時に、アフガニスタン周辺諸国、では、イランを除いては全部日本が援助の第一国だったわけですね。イランはドイツの方が多かったのです。それではそこが日本の重点地域なのでしょうか。戦略的に考えた時に、そういうふうに考えたらよろしいのでしょうか、私も分からないのですけれど。それからもう一つは、先程朝鮮半島のお話等もありましたが、やはり第二次大戦からのツケがいろいろ残っているかも知れないと。だけどそれを乗り越えて、やはり東アジアにおける協力、そして発展、紛争解決等を頭に置いた組織作りにもう少し乗り出されても良いのじゃないかなという印象を正直言って私は持っています。それから後はどうやってフォローするかということなのですが、日本の、今一つ既にあるものが人間の安全保障基金ですね、これは国連に委託してありまして170億ドルで始まっております。その半分以上はもう使われておりますが、これは今回も3億ドルか、40億円が予算に計上されています。草の根無償が150億円ですから、それを合わせると日本としてはそれなりに資金的な手当てを考えて頂いているわけですね。そしてその場合に、それではどういうものが優先されるかというようなことについては、これから日本の中で大いにいろいろご研究になって頂くと思いますが、国連の場合に委託してある基金では、これは受益者が国連機関ということになっているのですね。それは勿論、国連機関とリンクしたNGO等も入っているわけですが、そういう中で私共の提案としては先程縦割りの話、荒木さんされたのですが、縦割りの結果、進むべきことが進んでないことは国内にもおありになると思いますし国連機関等の間でもあるわけです。ですから人間の生活というのは、ここが私の開発部分で、ここが医療で、ここが教育で、というふうになっているわけではないわけですから、総合的な政策が非常に必要なのですね。総合的な政策を提案してきたこのプロジェクトに優先的な配慮をしてはどうかというようなことを、この資金の運営については提案しております。従って、縦割りを少しでも壊すことによって、ヒューマン・セキュリティー・イニシアティブとでもいわれるような、集合、協力体を造っていく、そしてそういうことで推進していったらどうかなと。これが今の、先程ご質問の、どういうふうにして実施するかということにも繋がるのですけれど、とりあえずは基金があります。この国連に委託してある基金というのは、日本が今出しておられるのですが、そういうところにもっといろいろな国からも広めて行ったらどうだろうかと。そして広く人間の安全保障を中心とした、この総合的な紛争・開発等の援助に対応して行ったら、今の幾つか出した項目について実施していったらどうかと。それからもう一つはどうやって実施するかというのは、この問題によって、かなり振り分けが違うと思います。教育の部分もありますし、いろんなことで振り分けが違うものですから。ただ先程の、紛争から平和への移行基金ですね、これはまさに大きなギャップになっているわけです。一つは人道援助機関への無償等、それから開発援助期間の無償、或いは非常にコンセッショナル・ローン等も含めた開発援助との間のギャップをどこかで補わないと折角の平和が来るのが遅れる、ないし来損なってしまってはいけないと。そういうところから、例えばノルウェー等はこの移行基金を既に作ったのですね。現在、アフガニスタンにおいては日本は運用によって適用しておられるのです。
 あとはイラク攻撃についての質問ですね。軍事行動が全て駄目だとは私は思いません。けれども、軍事的な人道的介入、これは数年前はかなり華々しく議論されたものですが、人道的介入というものは、これは外科的手術のようなもので、本当にそれが必要であるかということの確認が非常に大事だろうと思うのです。現在のイラクにつきましては少なくとも査察という制度があって、それで今その査察が動いている。その動いている査察の行方というものを、あらゆることをしながら軍事力の行使という脅威を後に使って外交するというのも一つのやり方だと思いますが、それが進んでいます。それと同時に軍事力の行使というのは非常に大きなものですから破壊の可能性も非常に大きいわけですね。その計算も必要だろうと私は思っております。1991年に私は北イラクで、175万の難民の急速な流出にあって、非常に苦労しました。数日前でしたが、その時のレッスンというものを書いたものが、ヘラルド・トリビューンに掲載されました。そういう配慮がどのくらい上手く行っているのかということについては、やはり人間の安全保障という観念からは疑問もありますし、より大きな配慮が必要だろうと思っています。何れにしましても軍事力が非常に必要だという結論に立つと、その結論の主体として安保理が非常に大事な役割を果たしていると思います。そういう結論に立って、そうして行使された場合にも後に来るのは社会作りなのですね。もっと今のような、非常に大きな部分を軍事力や武器に割いた国ではなくて、イラクの国民というのは非常に優秀な国民であって能力のある国民として知られた人たちですから、彼らが民主的な生活が出来るような国に作り直して行かなくてはならないと。人間の安全保障というのは、外科的手術が来なくても済むようなプリベンティブ・メジャーを考えている考え方だろうと思います。ただ、外科的手術が行なわれた場合には、その後の治療はやはり人間の安全保障的な視点から、国づくり、社会づくりはやっていけるのじゃないかなとそういうふうに考えております。
 それからもう一つ、WID(ウィメン・イン・デヴェロッピメント)に関心のある国会議員の中から、アフリカは欧州に任せようという意見が出たとのことでしたが、そういうのは余りに古臭い考えだと思います。アフリカ、アジアにおける開発、援助、経済成長に日本が大きな役割を果たしたということはもう周知の事実なのですが、アジアをどこまで広げられるのですかと伺ってるのは、もう今アフガニスタンというのは大きな問題になったわけですけど、あの周辺地域等ということも考えておられるのか。それから、アフリカでも、日本に対する期待がどれだけ大きいかということは、私は知って頂きたいと思います。それはこの植民地支配というものは恨まれている負の部分もありますが、文化とか人間の関係であるとかいろんなことで近いものもあるのですね。アフリカの国々においては、やはり植民地保有国だった旧国に対する親近感というものもあるのです。ただ、そういうものを越えて日本に対する期待というのがどんなに大きいか、それは日本の、日本人というものもあるのですが、日本が作った技術、物、そういうものに対して非常に大きな期待があるのですね。そこに日本人も、もっと顔を見せたら良いのじゃないかと思いますし、実際アフリカに対する支援というのは、かなり広がっております。アフリカを放っておいて世界が成り立つとは思えませんし、特にアフリカの女性はものすごく優秀なのです。しっかりしている人たちがいるのに、どうしてODAを止めたら良いと考えているのか私にはとても想像つきません。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。殆どの問題に、懇切に先生のお考えを伺うことが出来ました、有難うございました。先程草野委員から発言がありましたが、私共はODA大綱の見直しやら、国別援助計画やら、その他同時に進行させているような状態で、頭を整理することが非常に難しい段階に入ってきているわけですが、今日の先生の論点はその何れにも大変大きなインパクトを与えてくれたのでなないかと考えます。例えば国別援助計画、これを裏付けるベーシック・コンセプトはどうなっているのかという質問がありましたが、この二つを何とか整合的に繋げるような努力をやっていかなければいけないのだと思い知らされましたし、更にまた国別援助計画と言っていますが、国家とコミュニティーの関係をどう考えたら良いのかというのも、非常にインパクトのあるコメントであったと思います。更に言えば、国家なり、コミュニティーのデマンドというのをどう我々が認識するか、その上でいわゆる日本のODAの伝統的な原則であった要請主義というものが成り立つのか成り立たないのかと、これも一つの大きな問題提起として出されたような感じがします。更には、開発援助と人道援助の関係をどうするかとかですね。それから最後には、アジアの定義をどう考えているのかと。この辺になるとギクリともうさせられますがアプリオリにアジア重視というふうに言った方が良いのかどうか、或いはもっとアジア重視とは言うもののアジアの内容をはっきり定義せず、これを融通無碍に取り扱うような考え方にした方が良いのかどうか、このようなことも再考しなければならないテーマとして与えられたような気がします。その他、まだ議論をしたいという気分が皆様のお顔に書いてありますが、ともかくお忙しい緒方先生をこの辺りで解放しなければいけないのですが、よろしいでしょうか。どうも緒方先生、長い時間ありがとうございました。

(緒方共同議長) こちらこそ有難うございました。

(渡辺議長代理) 2番目の議題に移りたいと思います。前回会合では、新規に国別援助計画を策定していく新規国、これが四つ決まったわけですね。思い出して頂きたいのですが、インドネシア、インド、パキスタン、モンゴルでした。これら四カ国の国別援助計画策定のためのタスクフォースの構成をもう決めなければならないのですが、今日、私の方からそれを提案させて頂きますので、それで良いかどうかご議論頂きたいと思います。このタスクフォースの構成につきましては、数名の委員から勿論ご推薦を頂いて、こちらでいろいろ考えた結果であります。推薦された数名の先生方を、事務局や私の方で考えたということです。これは各国の主査候補、それから我々のODA総合戦略会議から少なくとも一人その中に入ってもらわなければいけないのですが、その候補です。各主査候補のごく簡単な略歴もその中に入っておりますから、お目を通して下さい。お目を通しながら話を聞いて欲しいのですが、先ずインドネシアですが、浅沼信爾(あさぬましんじ)委員に主査をお願いしたらどうかと考えています。浅沼委員はODA総合戦略会議のメンバーでもありますが、インドネシアは非常に重要なODA対象国でもありますし、更にODA総合戦略会議のメンバーにもう一人参加してもらいたい。牟田委員に、この担当委員としてご参加頂きたいというのがインドネシアについての私どもの案です。それからインドですが、絵所秀紀法政大学経済学部教授にお願いしたいと思っています。絵所さんはご承知のようにスリランカで主査を引き受けて下さいまして、今、極めて積極的に活動をして下さっているところです。どちらかというと、彼は元々インドが主たる研究対象地域ですが、お願いすれば何とか引き受けて貰えそうな感じがしております。我々の会議から担当委員に誰か入って貰おうかと思って、自選他薦を今お願いしている最中ですが、未だ手が挙がっていないような状況です。どうしても最低一人は入って貰いたいと思いますので、やってみようと思う方、或いはどなたが良いのじゃないかというご発案があれば、後でお願い致します。パキスタンですが、これは平島成望(ひらしましげもち)明治学院大学国際学部教授であります。現代パキスタンにおいて、経済開発が中心でありますが、最も権威ある研究をやっている人ではないかと私は認識しております。平島成望さんに主査をお願いしたいというわけです。ただ、これについても未だODA総合戦略会議からの担当委ノ誰を出すかということは、決まっておりません。最後、四番目のモンゴルですが、花田麿公(はまだまろひと)さん、花田さんは以前駐モンゴル大使をやられた方でして日本におけるモンゴルの研究やらモンゴルとの関係において最も相応しい方だと思います。関係者に意見を聞けば花田さんの名前が必ず出てくるほどの人であります。お願い出来そうであります。ODA総合戦略会議の担当委員としては砂川委員にご参加頂きたいということです。以上が、いろいろ推薦頂き、事務局と私とで考えた案ですが、これについて何かコメントがありますでしょうか。それから、インド、パキスタンの担当委員に関して意見があればなお有難いのですが。

(荒木委員) インドネシアは非常に現在困難な状態にあります。国も大きい。それで、我が方の委員会の方からは牟田先生が出られるのですが、やはりインドネシアと日本との経済関係を考えると、やはり経済界の関係の方が参加されたら、更に一層内容が現実的になるのではないかと思います。宮原さんはお忙しいと思いますが、宮原さんから専門家をご推薦頂けないかということが一つ。もう一点は、やはりインドの関係ですが、日本とインドとの経済関係というのが非常に進んでおりますし、これはどちらかというと三菱系が非常に強いと思っていますので、これは私の全く個人的見解ですが西岡さんの方からどなたかご推薦頂けるとより現実的な問題に対応出来るのではないかと思いますのでご提案申し上げたいと思います。

(渡辺議長代理) 大変有難うございました。誠にタイミングの良いご発言であったと思うのですが、こういうタスクフォースは研究者中心になりがちで、プロフェッショナルというのはそういうところに多いわけですから、ある程度勿論致し方のないことですが、出来るだけ民間企業の方に加わって頂くという荒木案は、大変私には心強いものがあります。今、かなり具体的な名前も挙がりましたが、宮原さん、西岡さんと多忙を極めておられるわけで、タスクフォースにご推薦頂くということもお考え頂ければ良いかなと、勝手に考えています。事務局を通じてご推薦頂ければ有難いと思います。タスクフォースのメンバーというのは、固定されているわけではありませんので主査の了解さえ得られればかなり自由だと。

(伊藤委員) タスクフォースは年間どの程度の頻度で会合が開かれるでしょうか。大体毎月行なわれているようなものでしょうか。

(渡辺議長代理) これは大野さんのケース、それから絵所さんのケースと、つまりタスクフォースがどういう形で提案をしてくるか、その提案のスタイルによっても随分変わってくると思うのですね。大野委員のやり方だと、月に何回というように平均すればということは出来るかと思いますが、なかなかそういう様には言いにくいチーム構成になっていますよね。どうなのでしょうか。

(大野委員) 年中やってますから、もう毎日のようにメールが来て私はやっています。いわゆるタスクフォースが存在しませんから。意見の聴取は何べんもやりましたが。

(渡辺議長代理) そのような形ですよね、オープンネットワーク方式といってますけれど。そういう意味からいくと開催回数というのは言いにくいですね。

(伊藤委員) 浅沼先生、インドネシアの場合はどの位の頻度でお考えですか。

(浅沼委員) まだ考えていませんが、一つ私の場合にはオープンネットワークではなくて一つグループを作成して頂きたいなと。いろんな専門家を交えた、それだけは考えておりますが、もしそうだとすると現地での聞き取り調査、その他は別にしまして、やはり月に一回位は集まって作業をしないと、というふうに考えられます。 

(伊藤委員) そういった場合、インドネシアの、まあ私は30、40回くらいインドネシアに出入りしていまして、インドネシア全体の付き合いがあるものですから、まあ自薦でインドネシアのタスクフォースに入ると、それが提案の一つ。それからインドの場合、大学の先生なのですが、やはり非常にインドに詳しい人がいて、我々の仲間ですけれども、経済界関係の方々との発想も大事ですが、草の根的な発想も大事だと思っていまして、この間インドへ二週間くらい行って来たのですが、やはりインドの状態というのは凄まじいというか、貧富の格差が大変凄まじいところで、NGOというのはかなり力を持っているので私たちの仲間で大橋正明さんという教授(恵泉女学園大学教授)がいるのですが、その彼を推薦したいなと思っております。彼に別に了解を得ているわけではないのですが、非常に広いネットを持っていますので。

(渡辺議長代理) 分かりました。経歴等分かるような文書があればなお有難いのですが、事務局を通じて提出して頂けますでしょうか。

(伊藤委員) 出します。

(磯田委員) 伊藤委員の意見に賛同します。経済界の方で、この委員会以外の方でもタスクにということでしたら、いろんな方からの意見を入れてたたき台を作ると言う意味で、NGOからも1人入ることを提案します。現地のNGOとの連絡の強い方を。インドネシアにしろ、開発援助の歪んだ入り方により紛争他いろいろな問題が出ていますので、そういった点も踏まえてODAをどうすべきか考えていく必要があると思っています。

(渡辺議長代理) 大変結構な意見だと思います。ただ、一つ問題は、主査が未だ確定しておりませんが、この主査が決定した場合には、こちらも推薦はしますが、主査が最もやり易いチーム編成にしたいと思います。タスクフォースが一番スムーズにワークするためにそういうふうにかねてより考えておりますから。そういう点が一つの、エンカレッジする要因であるかも知れません。そういうことが一つあるということだけは、お心得おいて頂いきたいと思います。その他、自薦、他薦を含めてございますでしょうか。今、もし今直ぐは言えないけれど、間もなく出てきそうだと考えれば、事務局を通じていろいろご案を頂けますでしょうか。私の方で取りまとめさせて頂いて、主査と相談すると、こういうことになります。ちょっと議論が逆になりましたね。主査、このお四方を設定したいのですが、私は大変良いラインアップだと思っているのですが、如何でしょうか。

(大野委員) 絵所先生は本当に2つの国を同時に担当出来るのですか。その辺は本人の確認があってということでしょうか。

(渡辺議長代理) 勿論、今日終らないと確認の取りようがありませんが。率直に言って、やってくれそう。勿論大変ではあるわけですが、しかしスリランカでモメンタムがついているから、かえって一挙に走ってくれそうだという感じも無くはありません。ともかくそれは最終的に確認して申し上げます。それではこの件は宜しいでしょうか。それでは早速主査にコンタクトし、タスクフォースのチーム編成を行うという手筈にします。この点、次回辺りまでに報告出来そうですかね。しなくてはいけませんね。そのつもりで頑張ってみます。以上で、第二議題を終ったことに致します。失礼しました。一つ言い落としたことがあって、申し訳ありません。モンゴルですが、今お認め頂いたわけですが、花田さんは、この会議でイエスということになれば、早速でもスタートしたいという強い意欲を持っていらっしゃいます。そんなことで、次回の会合で主査の花田さんから、対モンゴル国別援助計画策定の今後の作業方針を先ずはご報告頂きたいと思っております。先程申し上げましたように、四つを含めて作業日程を主査の方々と相談して、もうちょっと全体での細目を申し上げるつもりでおりますが、次回はモンゴルについてそのような報告をして頂くということでありますので、よろしくお願い致しました。最後に三つ目の議題、これはODA大綱の見直しについての自由討議です。三つ資料がいっておりますでしょうか。資料3としてお出ししてありますのが、前回会合で出された意見を事務局がまとめたペーパーです。資料4というのは、これは二度目になりますが、草野委員からこの前の会議でご説明があった、つまりワーキングチームの論点整理です。これは前回のままのものです。それから5番目は現行のODA大綱です。今日僅かの時間ですが、更に議論を踏まえまして、出来れば3月31日が次回会合になっていますが、これは後でもう一回コンファームしますが、ODA総合戦略会議としての考え方の基本を、或いは論点整理をファイナライズしたいと考えております。そんなことで、この3つの資料をベースに今日残された時間、若干のオーバーをお許し頂きたいのですが、どんな観点からでも結構ですので、ご発言出して頂ければと思います。磯田さん、大野さん、どうぞ。

(大野委員) 私の意見の大事なところはすでに前回申し上げました。もしODA大綱見直しワーキングチームの方で、こういう点について特に追加、聞きたいというのがあれば、むしろそれをやるというのも手だと思うのですが。

(渡辺議長代理) 大変良い提案だと思いますね。更にこの辺を突っ込んで、まあ前回もそのワーキングチームをベースにした、その上に前回議論されたわけですが、ちょっと総論的というか、総花的な議論になり過ぎた感じがあります。今の提案は大変有難い提案で、ワーキングチームとしてイン・デプスにこの辺を議論して欲しいというふうな問題提起を、草野さんにやって頂けるとなお有り難い。

(砂川委員) 緒方さんから、アジアってどこですか、どのように思っておられるのですかという問題提起があったこともあり、一応、ある程度議論をした方が良いのじゃないでしょうか。

(草野委員) 今、砂川さんが仰ったこととも関係がありますが、幾つかのポイントが重点的に、もう少し話は出るべきだと思います。それはちょっと横に置いといて、一つだけ私が最初にあげましたのは、今週の月曜日に、先程緒方先生のところでも若干触れたのですが、月曜日でしょうか、開発と女性議員連盟というのがありまして、その研究会に呼ばれまして、私は個人の資格で話をしてまいりました。ODA大綱の見直しの議論についてということでした。その場でご要望が先方からありまして、是非このODA総合戦略会議で伝えて欲しいことがあると。これは児玉参事官の方に既に議員連盟の方から要請書が配られているということですが、簡単に言えば、ODA大綱にWIDといいますか、ジェンダー、女性の権利、この点についてもう少し、論点整理では若干不足しているので目に見える形で反映をして頂けないかというようなご要望がありました。確かに私も、論点整理のワーキングチームのリーダーとして議論に参加をしましたが、この構成の中で行けば、基本理念、それから原則、それから重点事項、そして配慮事項等々、こういう順番で考えますと、この女性という言葉が、配慮、実施上の配慮点というところで初めて具体的に出てくると。それで、我々の理解では、例えば人道的な観点、基本理念の冒頭のところで強調しておりますし、それまでにこの女性、或いは子供の権利を十分に配慮しているという前提で、この女性という具体的な言葉が出てくるのは、その配慮点のところで初めてだということでしたが、やはりそれでは遅いのではないかというようなご指摘が強くあり、今日緒方先生のお話等も聞きますと、やはりミレニアム目標との関係もありますが、この女性の権利だとか、或いは児童の権利、子供の権利というものも、もう少し基本理念のところでも一言二言入れたほうが良いのではないかなと、私自身は思っております。以上です。

(渡辺議長代理) 有難うございました。伊藤さん、磯田さん。

(伊藤委員) 簡単に、あの5ページ目に、8番目の項目にある、内外の理解と指示を得る方法とありますね。

(渡辺議長代理) 5ページというのは、何の5ページですか?

(伊藤委員) これは政府開発援助大綱の見直しの論点整理の5ページ目ですが、8番目に内外の理解と指示を得る方法と、その中に(2)で特に開発教育について内容を詳細に書く必要のないものの、狭義の開発教育に留めずという、狭義の開発教育というのはどういう意味なのか、ちょっと確認をしておきたいのですが。

(渡辺議長代理) これは草野さんの方からお願いします。

(草野委員) この狭義の開発教育についてはどなたが仰ったのでしょう。荒木さんですね。

(荒木委員) 私が言い出しっぺなものですから。これは別に余り深い意味はないのですが、開発教育というものは、どちらかというと実際現場で教えている先生たちとか、NGOグループ等々の皆さんのご意見を聞くと、やはり地球環境教育みたいな地球的な規模での教育という形であって、どちらかというと、子供達の国際対応能力をつけていくというか国際感覚を豊かにしていくという教育であって、ODAへのための教育でないというようなことを反映したものであるということなのです。ですからそれは別に書かなくても良いし、普通はそういうふうになっているわけですね。

(渡辺議長代理) 分かりました。それでは磯田さんお願いします。

(磯田委員) 今の草野委員の先程仰られた点も含めて2点、修正の提案です。1つは理念部分。人道的な観点、相互依存の観点、我が国の安全と平和と繁栄ということで挙げていますが、これに対して前回の議論で、これらは観点であって、ODAの目的や達成目標が書かれていないというご意見があったと思います。確かにそういう印象もあります。これら目的に当たる表現を付記して盛り込むという提案です。「人道的な観点、例えば格差是正と権利の保障、そのための実現のために」といった文言をきっちり盛り込むようにしたいと考えます。2点目は、重点分野に関して、現行にあるBHNを貧困削減と言う表現の中にくくったために、緊急救援が入らなくなっているとの指摘がありました。災害時の紛争直後の緊急支援もどこかに入れたほうがよいと思います。また、人権の問題も重要です。貧困削減というだけではなく、格差是正や人権の確保も表現した方がよいと考えます。

(渡辺議長代理) それは今どこの場所ですか?

(磯田委員) 重点分野です、重点分野の(ロ)については、別立てのほうがよろしいかも知れません。それと一番最後のインフラストラクチャー、重点分野の三点目ですが、これについてもご意見があって、私自身もワーキングチームで話している時に、これはある種の活動というのでしょうか、分野ではないという印象を非常に強く持っておりました。貧困削減の一つとして、例えばインフラということもあるでしょうし。ですから、いっそこれは項目としては立てないというのでもよろしいのではないかというふうに思っています。以上です。

(渡辺議長代理) 有難うございました。それでは浅沼さんお願いします。

(浅沼委員) 以前にワーキングチームから出して頂きました論点整理については、前回コメントしましたので繰り返しません。ただ、今度会議で出された意見をサマライズして頂いたところがあるのですが、その中で、多分私の舌足らずなところで出てきたところがあると思いますので、これについてちょっと言わせて頂きます。まず第一に、これは言ったかどうか分からないのですが、二番目の、日本的な援助哲学というところがあるのですが、私自身は日本的という言葉は使わない方が良いのではないかという気がします。これは日本から出てくれば全て日本的になるかというとそうではなくて、日本的という形容詞を使うことによって、その主張自体が相当限定的な意味を持つような気が第一にします。それから第二に、過去に何国的といって使われたものに、相当眉唾もの的なものがあるわけですね。例えば、ビルマ的社会主義、それからスカルノ時代のインドネシア的なというな、内容がない時にこういう言葉を主として使うような気がしますので。ここで自助努力に基づく持続的な経済社会発展といったものを一番上に近いところ、一番上の上位目標とするということは別に日本的でも何でもなく一つの主張であるわけですね。それに対比されるのは、今流行の例えば貧困削減であるというふうなものを一番上位目標に置くかとどうかというのは意見の相違であって、何国的ということでは多分ないという気がします。第二に先程磯田さんがメンションされた重点項目の中のインフラ整備という言葉がありますが、私はインフラ整備という言葉が持つ非常に限定的な意味を考えると、これはやはり社会経済インフラの整備ではなくて「構築」という表現を使うことによって、インフラ概念を非常に社会経済システム運営のための必要な基礎として広く捉えるということが出来るという気がします。そのインフラ整備という言葉を狭く使った時に直ぐ頭に出てくるのは、例えば電力というような話になりますが、それ自体もただ単に発電のための設備を作るということではなくてエネルギーセクター全体をみて、それの方向性、それからその将来のエネルギーセクターに対する政策から始まって、そしてそれがプロジェクトなり何なり発電というプロジェクトに行き着けばそれはそれで良いし、そうでなければ行き着かなくても良い。非常に広い意味での社会経済インフラの構築というふうに捉えるわけで、それ自体を例えば貧困削減の中で捉えなくても良い、さっき言いワしたもっと上位的な目標である持続的な社会経済発展の一つの位置付けに取れば良いと。それは結局、結果としては貧困削減に結びつくかも知れないけれども、狭く捉える必要はないのではないかという気がします。それから第三に、これは単なる言葉なのですが、基本理念のところで相互関係について、相互依存関係っていうのは何だろうというところで二つに分けて論じているところがありますが、これはシステムの問題とその後現実の社会的、経済的、文化的関係という、この関係というのは実は複数でありますのでバイラテラルな或いは地域的なという形容詞を入れた方がよりその論点がはっきりするのではなかろうかと。それが先程の議論に出てきましたアジアの問題に繋がっていくのではないかという気がします。

(渡辺議長代理) 有難うございました。草野さん、どうぞ。

(草野委員) 先程の、砂川さんがご提案されたアジアの問題、つまりこれを理念で書くべきだというふうな意見が我々の中では大勢をしめましたが、これを原則の方で書けば良いのじゃないかという議論もあったわけです。これをもう少し皆さんの議論を聞いた方が良いのではないかということと、もう一つ、要請主義の書き方について、もう少し皆さんの議論をお聞きした方が良いのではないかというふうに思っております。

(渡辺議長代理) はい。千野さんどうぞ。

(千野委員) 先程の、5ページの、狭義の開発教育のところでお話があったために、私もここに注目してしまったのですが、後段で、地球市民として途上国問題を考える教育にも言及すべきであることで意見が一致したということですが、途上国問題を考える教育にも言及すべきであるということでは、私も全く同感なのですが、その前に地球市民としてという誰々としてという表現が若干気になるわけです。ちょっと意地悪婆さん的な言い方にもなりますが、地球市民という言葉は確かによく使われますし、耳触りが良いともいえますが、果たしてこの言葉は国民的コンセンサスを得て定着しているだろうかという感じも一方で致します。従って、いわゆる公的文書にこういう言葉を使うのは、もうちょっと議論が必要なのではないかと。さらっとこう書いてしまって、何となく地球市民という言葉が一人歩きしていくのはよろしくないのではと思います。地球に生きる市民というのは、考えてみれば当り前なわけで地球以外に住んではいないわけですから。ここは途上国問題を考える教育と言っても何ら問題はないわけす。

(渡辺議長代理) 有難うございました。大野さん、伊藤さん、どうぞ。

(大野委員) 私のメインの意見は、もう前回全部言ったので、ある意味でそれが入るかどうかというのが私の関心です。細かいことは別として大きいところは全部申しました。それからWIDを入れろとか、あとこれをこっちにいれて理念にしろとか、そういう議論はありますが、それはやっぱり全体のバランスの問題です。WIDが突然大きくなって他が小さくなっても困るわけで、やはりこれは叩き台の文章を見ないとこれ以上私はもう言えないという感じがしております。それから、アジアについても、要請主義についても、どういうワーディングで書くかということが大事です。私の理解では3月の終わりに我々の結論を出すということだったのですが、今は、その叩き台がないと、次回叩き台が出たのでは3月で作業が終らない。しかも立派な言葉にして、渡辺議長代理も手伝って出すというのだったら、出来れば今回と次回の間に出していただかなくてはいけない。これはバランスを欠いて一つだけが大きくなったり、というのが困るという、中身でなくてプロシージャーについての要望です。

(渡辺議長代理) 有難うございました。それでは伊藤さん、どうぞ。

(伊藤委員) 今の千野委員のコメントをフォローしたいのですが、これはおそらくタスクフォースで表現されたことですから修正すべきではないかも知れませんが、確かに地球市民というのは未だ練れてない言葉だと思うのですね。従って平易な言葉で、例えば狭義の開発教育に留めず、世界に生きる一個人として、或いは世界に生きる人間(地球市民)として、まあ何れも一個人(地球市民)、人間(地球市民)としてという形で、例えば補えば分かり易いのかなというふうに考えましたけど。

(渡辺議長代理) 有難うございました。どうぞ、牟田先生。

(牟田委員) 先程の浅沼先生のコメントと同じ場所ですが、インフラストラクチャーという言葉の響きがちょっと悪いということで、先程の磯田委員のようなご意見が出て来るのではないかと思います。これはカタカナを使わないで基盤整備にしてしまえばそれで済むだけの話かなと考えます。やはりその経済社会開発のための基盤整備というのは非常に重要でして、貧困削減とかグローバルイシューというご意見は重視するとしても、やはり我が国がこれまで行なってきた基盤整備、これは需要も多いわけです。サステイナブル・デべロプメントに対してもやはり重要なものですので、これはやはり落とさないできちんと書いておくべきだろうというふうに思っております。

(渡辺議長代理) それではここでひとまず良いでしょうか。それでは古田局長、お願いします。

(古田局長) 一つは、今日緒方先生にお出で頂いて、人間の安全保障の話をして頂いたのですが、私共としては、これは非常に新しい概念といいますか、我が国として出来るだけ集中的かつコンプリヘンシブに取組むべきアジェンダだということでこの場でご議論頂いたわけですし、具体化の議論が随分出ましたが、既にある人間の安全保障基金に加えて15年度予算で無償資金を相当大幅に増額していますので、これをどのように使っていくかというところで、緒方先生ともご相談をしながら具体化の道に進んで行きたいと思っていますし、当然そういう事柄を来たるべき大綱の中にきちっと位置付けて頂くということは必要ではないかと思っております。これが第一点です。それから、若干ワーディングの議論が幾つか出ているわけですが、私共としては草野先生の、或いはワーキングチームのご尽力で論点整理を頂いたわけですし、前回そして今日ご議論頂いたわけですので、ここでのご議論は各省の事務的ないろんな議論に逐一フィードバックをしておりますので、各省間でまさにODA大綱をどうしていくかという中で、今日の議論も含めてフィードバックしたいと思っております。そういう中で、官邸、或いは国会筋も含めまして、出来るだけ早い機会に政府としてのこのODA大綱見直しの基本的な考え方といいますか、スタンスといいますか、そういったことについて政府としてきちっと意思統一をしたいと思います。勿論最終的な大綱の文そのものは今年の夏に向けて作業していくわけですが、その基本的なところを一回きちっと意思統一した方が良いのではないかということでもありますし、それから国会筋の方からも、その辺の骨格のところの議論をしたいということもあります。従いまして、私共としてはこの会議で頂いた論点整理なり或いはそれに対する更なるご意見を私共なりの行政の言葉で最大限それを尊重して整理をさせて頂いて、そして早い機会に官邸その他各省とご相談しますが、整理をしたものを出したいと考えております。そのものについて、渡辺先生とご相談をして皆様方にも予め見て頂いてご相談したいというふうに思っております。それが一つの政府全体としての意思統一かと。おそらくそれは今日ご議論して頂いているほどのものでもなくて、もうちょっと粗々なものといいますか、こういう大綱をやる以上は大きな骨格のところを一回やっておくべきではないかというご議論ですので、個々のワーディングに余りセンシティブになるようネ性格のものではありませんが、一回そういうことをさせて、そのベースとしてはこの論点整理、或いはここでのご議論を一つの骨格、背景として整理させて頂きたいと思っております。3月の末に次回会合がありますが、おそらくそこでは最終的な案をお示し出来ると思いますし、事前の段階でも何らかの形で渡辺先生とご相談して皆様方にもお見せして、ご意見あれば頂くということをやりたいと思っております。どのタイミングで政府として意見を整理するかは、これまた官邸その他とご相談をしますが3月中の何れかのタイミングでやることになるのではないかと。そういったことも念頭に置いて頂いて、まだまだ掘り下げるべき論点は多々あるわけですので、先程から幾つか出ておりますが、そういったことも更にこの会で深めて頂いきながら具体的な大綱の文案の作業に3月下旬辺りから具体的な作業に入って行くのかなというのが私の基本的な考え方です。

(渡辺議長代理) 有難うございました。大野委員のご懸念は、私の懸念でもあります。もうちょっと成文化した形でないとコメントしにくいのではないかというご議論があったわけですが、そのために私自身としては成文化したほうが良いという意見を申し上げたのですが、成文化するということになると、どうしても全体の整合性を考えますから、一方に偏した議論になって採るか採らないかというリスクを背負わなければならない。それで、それはやはりまずいということになって、私もそれはそうかなともその時思い始めました。それで結局論点整理ということになったわけですね。草野委員会の方も認識としてはもう解散だということであり、結局はこの場でその論点整理について議論をせざるを得なかった。それが前回の成果であり、それに乗っかって今日もあったということです。そこでどうするかということが今の問題なのですが、やはり古田局長が整理して下さった方向しか僕はないのではないかと思うのですね。余り細かいワーディング等に拘らずに、骨格の部分といいますか、大綱の部分、骨格の部分で我々としてはこう考えると。或いはこう考えるという考え方が打ち出せなければ、ここはどっちに考えるにせよ論ずべきポイントであるという、つまり、ここは論点ですよというシグナルを出すとかですね、そういうことはどうしてもやらなければならないということだろうと思うのです。3月31日がデッドラインというわけでもなかろうと思いますが、そこに出すものを今日から少し詰めて行きたいと思っております。31日でおそらく結論が出ないということであれば、もうちょっと先を考えるかなという、そうならざるを得ないと思うのですが。

(草野委員) 今の局長のご説明ですと、私が理解したのは各省とも或いは国会、官邸ともご相談しつつ、粗々なものだけれども成文化したものを3月の中旬或いは後半にかけて我々にお示しを頂けるという理解でよろしいですよね。先程仰ったのは、そういうふうに聞こえたのですが。

(古田局長) 出来るだけ高いレベルで政府と全体する意思統一をしたいというふうに考えておりまして、行政としての意思統一をしたいと考えておりまして。

(草野委員) それのプロセスにおいては、我々の今までの議論を十分忖度して頂けると、こういう話ですね。それに対して我々が注文を付けるという、こういう形になるのでしょうか、3月31日は。

(古田局長) 3月31日までには、既に出ていると思います。政府としての意思統一は出ていると思います。従って、私共としては、それを政府として出す前に、何らかの形でご相談をしたいと思ってはおりますが、私共の判断のベースは、この会議での論点整理ですが、当然、他省庁とか、いろんなところの意見も入りますから、全く同文というわけには行きませんし、それから先程申し上げましたように、余り細かい言葉にかかずらうような類の性質の紙ではなくて、本当に粗々なところで、一度政府全体として意思統一をしておきたいということです。

(渡辺議長代理) 政府全体として意思統一された成文化された文章が出るということになると、局長、この前のステップより少し早すぎませんか。この前は、例えば5月なり、連休明けくらいまでは時間があるという感じで受け止めましたけれど。

(古田局長) 大綱案そのものを、そのタイミングで出したいということを申し上げたのです。案をですね。要するに、そもそもこの大綱見直しとは何ぞやということについて政府全体として高いレベルで意思統一をすべきではないかということで、それは各省であり、また官邸を含めてそれはやっておきたいということを申し上げたのです。ですから、大綱案が出てくるわけではないのです。大綱見直しの基本的な考え方というものを、つまりその政府全体としても、ある日突然高いレベルでいきなり案が出てきて、そこでお終いというわけにはいかないだろうと。やはり十年に一回の大きな話なので、きちんと基本的なところは意思統一はしておくべきではないかと。その意思統一のベースとして、この論点整理を最大限活用して頂いて、勿論いろんな議論の分かれるところとか、これから詰めなければいけないところは決め打ちにしないで、注意深くむしろこれからの皆様の議論を更に大綱案の中に入れられるように勿論したいと思いますが、そういう基本的なところをお出ししたいということです。

(渡辺議長代理) 分かりました。大変良く理解できました。それでは磯田さん、どうぞ。

(磯田委員) 前回も申し上げましたが、そのプロセスの中で市民団体等から公聴会を是非開いて欲しいと思います。それは成文化したものに対するコメントを求めるタイプの公聴会は、勿論後日必要になるとは思いますが、それ以前に論点整理の部分でも意見を言いたいという意見がかなり強くあります。是非その辺、もしそうやって政府全体としての意思統一ということをされるのであれば、その前か、もしくは前後する形で是非開いて頂けたらというふうに思っております。関西の方から特に強い要望があるので、関西、関東で一回づつ、是非前向きにご検討頂けたらと思います。

(古田局長) タイミングの問題もありますので、工夫したいと思います。

(磯田委員) 是非よろしくお願い致します。

(渡辺議長代理) 大野さん、どうぞ。

(大野委員) 今の理解だと、行政の方が作ったものがこれから基になって議論していくということで、この会議はもう特に成文化したり、これ以上の文章化はしなくていいという理解でよろしいのですか。

(古田局長) そういうことを申し上げているわけではなくて、ここでご議論頂いた論点整理をベースに行政としての基本的なスタンスの整理をしたいということを申し上げているわけで、それは基本的なスタンスですから、粗々の骨格みたいなもので、今後の、これからの皆様のご議論を予め何か固定するとかそういうものではなくて、大まかな見直しの流れについての政府としての確認となります。そのベースはこの論点整理ですから、これを更に今後ここで深めて頂くことが、今度は次の大綱の原案そのものを書く時に大いに参考になるというか、できるだけ取り入れさせて頂くと、こういう流れになると思いますので、二重ではありませんね。大綱というのは政府の文章ですし、その大綱をどう作るかを整理するのも政府の仕事ですから。

(大野委員) 行政で作られるというのは、前の話からすると、僕の理解は違うのですが。一応ここで形になったものが出来てから行政が引き取るという理解だったけれど、今のお話だと、行政の方で別途にやって我々は我々の意見があって両方見ながらこれから作業しようという、このような理解でよろしいのですか。

(古田局長) さっきから申し上げているのは、この論点整理を土台にして行政としての基本的なスタンスの整理をしたいということです。

(大野委員) ちょっと良く分からないのですけれども。

(古田局長) この論点整理が土台になるわけです。

(大野委員) どちらを今からメインに議論していくのかという、その二つの関係が、僕はよく分からないのですが。出来れば、すでに行政のものがあればそちらを議論した方が僕は効率が良いと思うのですけどね。別途作らないで。

(古田局長) そこのところは、今後、例えば大綱案を先に行政が出して、それをここで議論して頂くというやり方もありますし、その前提として先程のアジアの定義であるとか、いくつかの点についてもう少し練った上で行政が考えた方が良いということがあれば、それはやって頂いたら良いと思いますし、そこはいろんなやり方があろうかと思いますが、私が今申し上げているのは、この論点整理を頂いたところで、それを土台に政府全体としての先ず一定の意思統一は必要かということで、これは政府全体の共通意見です。

(大野委員) それは分かるのですが。だからやはり二重に一応行政のものは行政として、我々は我々で別に考えていく、相互の連携を取りながらという理解でよろしいのですよね。

(古田局長) 大野さんと私の理解とは少し違うのですけれども、このODA総合戦略会議としては、この前の一応の結論だと私は理解してるのですが、総合戦略会議バージョンの大綱原案というのは作らないと、つまり論点整理ですね。しかし論点整理というのは、かなり深い部分に係わるような詳細に書き込んだ論点整理で終わりで、それを参考にさせて頂いて、それは時間軸で考えれば重複する部分があると、つまり行政側の作業とダブる部分があるのは当然だと思いますね。つまりODA総合戦略会議の最終的な詳細な論点整理が終ってから、行政がそれを受け取って、また行政バージョンの案を作るというのでは時間的に間に合わないということですから、そこは私は重なっても一向に構わないというふうに理解しているのですが。

(渡辺議長代理) 現実問題としては、これだけ集まって論点を整理する場というのは、時間的にはひとまず終ったということになります。個人として事務局側にコメント下さることは大いに歓迎致しますが、この予定ですと3月31日に一定の形で文案化されてくるわけですね。

(草野委員) ですからもう明解だと思うのですよね。論点整理はまあ我々がやったと、それで政府、行政の論点整理というか、我々の論点整理を横目でみながら、政府は政府で、行政は行政で論点整理をして、それで抱き合わせたものを先ずとにかく中間的に出してくる。それを我々の論点整理と、行政の論点整理をここの場でもう一遍突合せしながらということで。

(渡辺議長代理) それが3月31日ですね。

(荒木委員) それで良いのではないでしょうかね。最初政府の論点整理ですから、あとは成文化のプロセスでいろいろアドバイスを得たいというわけですから、それで話は通ると思いますが。

(渡辺議長代理) 叶うことであれば、そうして頂けると思いますが、それを3月31日の事前に配布しておいて頂いて、31日の会議に臨むということでよろしいでしょうか。

(古田局長) 政府として意思統一をする前にお配りしたいと思います。そのタイミングは、いろんな日程ございますが、おそらく3月31日より前になると思います。

(渡辺議長代理) それでは31日より前にということで、よろしくお願い致します。そんな次第で今日はもう閉じますが、次回の第9回会合ですが、3月31日(月)、午前10時から12時、場所はここで開催するということにしますので、よろしくお願い致します。非常に大事な会議になると思います。それではどうも長い時間ありがとうございました。本日の会合は以上を以って終了致します。

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