ODAとは? ODA改革

「ODA総合戦略会議」第5回会合・議事録

1.日時

 平成14年11月26日(火)8:00~10:15

2.場所

 外務省飯倉公館

3.出席者

 ODA総合戦略会議委員(ただし、川口外務大臣(議長)、矢野副大臣、新藤政務官、千野委員及び西岡委員は欠席)。外務省(事務局)より古田経済協力局長他が出席。関係府省、JICA(国際協力事業団)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加。

4.議論の経過

(議事の概要)

 スリランカについて、冒頭、吉川経済協力局審議官より、和平・復興支援を巡る最近の動きについて報告が行われたのに続き、絵所秀紀法政大学経済学部教授より、スリランカ国別援助計画の策定作業方針につき報告が行われ、同作業方針が了承された。
 次に、ODA大綱の見直しについて、草野委員よりタスクフォースの報告があった。同タスクフォースは、来年の1月下旬にODA大綱の見直しに関する論点整理をODA総合戦略会議に報告する予定。ODA総合戦略会議は、この論点整理を踏まえて、来年3月末までにODA大綱の見直しに関する方向性をまとめることとなった。
 続いて、国別援助計画の新規策定候補国についての議論が行われた。複数の委員より、選定基準について更なる議論が必要との意見が出され、次回会合で再度議論することとなった。
 次回(第6回)会合は、12月20日(金)に開催予定。

(1)スリランカ

(渡辺議長代理) ただいまから第5回ODA総合戦略会議を開催致します。本日は次の3つのテーマについて報告・議論をお願いしたいと思います。まず、国別援助計画策定の作業方針について、絵所秀紀法政大学経済学部教授からご報告を頂きます。また、スリランカ和平・復興支援を巡る最近の動きについて吉川経済協力審議官より報告があります。この2つのスリランカに関する報告、議論が第1のテーマです。
 第2は、草野委員を中心に作業をして頂いておりますODA大綱の見直しについて、現在までに開催されたタスクフォース会合についてご報告を頂きます。
 第3は、国別援助計画の新規策定候補国について、事務局より提案致します。策定順序や対象国についてご議論頂きたいと思います。
 最初に、吉川経済協力審議官からスリランカの和平・復興支援を巡る最近の動きについて報告を頂きます。


(イ)スリランカ和平・復興支援を巡る最近の動き

(吉川経済協力審議官) 資料3をご覧下さい。スリランカは、1948年にイギリスから独立して以来、多数派民族のシンハラ人と少数民族のタミル人の対立が続いてきています。過激派の「タミール・イーラム解放の虎(LTTE)」がスリランカの北・東部地域はタミル人固有の地域であるとして、その分離・独立を目指して政府と戦闘を繰り広げ、また、テロ行為を行い、双方に多くの犠牲者が出ました。この20年間の政府とタミールの戦いで6万人以上が犠牲になったと言われています。
 今年の2月、ノルウェーの仲介も得て、政府とLTTEの間の停戦が合意されました。それから半年以上経ち、散発的な事件は発生していますが、停戦合意は概ね守られています。20年間近く続いた内戦がなぜ停戦にたどり着いたのでしょうか。最大の原因はおそらく9.11であると思います。9.11後、国連の安全保障理事会がテロ資金を規正する決議を通しました。その結果、LTTEも資金源を断たれたことを受け、分離・独立方針から交渉による自治獲得に方針を転換します。そこでかねてから紛争について両者の仲介を果たしてきたノルウェー政府が活発に活動し、停戦が合意されました。
 9月に入ると和平交渉が本格的に始まり、9月と10月の2回、タイで交渉が行われました。今後の日程は来年3月まで決まっています。私も先週訪問しましたが、20年間の紛争がスリランカの安定と経済発展の障害になってきたため、和平達成への期待は非常に強いという感じがします。スリランカは、そもそも識字率も非常に高く、1960年当時はASEANの多くの国より発展していた国です。紛争で疲弊した北東部緊急人道支援、また、南部と北東部の国全体の開発が大きな課題であると思います。
 日本の対応について1、2申し上げます。スリランカ政府から日本に対し、和平・復興プロセスに本格的に参入して欲しいという依頼がありました。その期待を受け、政府は10月25日閣議の決定を経て、国連の事務次長をされた明石康氏を政府代表に任命しました。明石代表は任命後直ちに現地を訪問され、大統領、首相や関係閣僚、また、北部ではLTTEの指導者と意見交換をされました。その際、ウィクラマシンハ首相から明石代表に対し、11月3日に政府とLTTEで合意をし、合意事項の1つとして北・東部の緊急人道・復旧ニーズに関する小委員会ができたので、明石代表にその小委員会の彼らの言葉で言うプリンシパル・アドバイザー-首席アドバイザー-になって頂きたい、その上で18日の第1回会合に是非出席して頂きたいという要請がありました。明石代表は、自分は日本での日程上、この時期はどうしても参加できないので、代理の者を出席させたいとウィクラマシンハ首相に返事され、私が明石代表の代理として出席しました。
 18日の会議では、今後北・東部地域をどのように開発していくのかという委員会の立ち上げと、11月25日オスロで開かれた緊急人道支援のための支援国会議に対してどのようなメッセージをスリランカ政府とLTTEが共同で出すのかという2点につき協議されました。私はアドバイザーとして出席して、どのようなアピールを出すことが、国際社会から幅広く資金を得、支援を勝ち取る上で一番良いのかということで案文を提示し、それはそのままアピールに入りました。
 11月25日にオスロで開催された支援国会議には、日本からは明石代表に出席頂きました。スリランカ政府はウィクラマシンハ首相をはじめ、閣僚が4人という大代表団を送り込み、LTTEはナンバー2のバーラ・シンガムを団長とした代表団を送りました。アメリカからはアーミテージ国務副長官、イギリスからはショート開発大臣が出席しています。
 今回の支援国会議は、国際社会が和平に対して後押しするという政治的な目的を持って開かれました。従って、支援国会議とはなっていますが、実際に参加している国は単にお金を出す、いわゆるドナーだけではなく、近隣諸国を含め、政治的にスリランカの和平プロセスに影響力、関心を持ってきた国々、具体的にはこれまでの和平会議の場所を提供してきたタイやサウジアラビア、クウェート、韓国というDACのグループに入らない国々の参加もありました。
 インドは、今後のスリランカ和平を考える上で非常に重要な役割を持ちますが、ラジブ・ガンジー首相がタミル人に暗殺されているということもあり、国内法制上インド代表はLTTE代表が出席している会議には参加できません。そこで、開会式には現地の大使館員が出席しましたが、会議には出席しませんでした。会議終了後のノルウェーの発表によると、6000~7000万ドルの新規プレッジが行われました。
 4(1)が、基本的に昨日明石政府代表が日本の考えとして述べたところです。日本は和平プロセスの進展に積極的に貢献していきます。具体的には、現在約80万人の国内避難民が発生しており、この避難民対策として286万ドルの支援を表明しました。さらに、すでにスリランカ政府と合意済みの円借款によるマイクロファイナンス計画について、北・東部についても対象地域に加えることを検討する旨申し上げました。
 3点目は、和平プロセスの進展をさらに後押しするために、日本として来年の適当な時期に東京において復興支援会議を開催することを今回初めて正式に表明しました。スリランカの和平と日本の関与の意義を考えますと、停戦合意後、停戦は行われましたが、一番大きなところではLTTEに対してどれだけの自治権を与えるのかという政治合意については、まだ将来が見えていません。スリランカ政府は、大統領と首相が与党と野党に別れており、最終的にどのような合意をするにしても憲法改正が必要となり、現在の政治状況では与野党が一致しない限り憲法改正もできません。従って、スリランカ政府にとっては、LTTEとの交渉もさることながら、その交渉合意をどのようにして国内的に取り付けていくかという問題点もあり、そのことについてもアピールに書かれています。
 その状況の中で、日本は和平達成を後押しするという観点から、ODAを積極的に活用し、新しい方法で、平和構築、さらにその平和の定着に活用できるのではないか。それをカンボジア、バルカン半島においてこの分野での経験を積んでいらっしゃる明石代表にお願いすることによって、実現したいという狙いを持っています。スリランカ側から、小委員会に明石代表にオブザーバー、アドバイザーとして参加して頂きたいという申し出があったことが示していますように、日本の関与に対して非常に強い期待があります。
 他の主要国を見ても、スリランカとの関係ではそれぞれ様々な問題があります。アメリカはLTTEをテロ団体として指定していますので、昨日もアーミテージ副長官は演説で、スリランカに対する支援はできるが、アメリカはLTTEには支援することはできないと述べています。インドも先程申し上げたような問題があります。イギリスは旧宗主国としてスリランカの中で中立的な役割を果たすことは難しいと見られます。
 従って、日本に対する期待は非常に高いと思います。アフガニスタンからスリランカ、また、スリランカの先にはインドネシアのアチェの問題、フィリピンのミンダナオの問題について、1つの国の中における領土保全を確保しながら、どのようにして内乱を収束させ、和平に持っていくか、その際に、日本だけの問題ではありませんが、ODAをどのようにして早い段階から関与させていくのかが課題です。このように、スリランカに対する対応は外交面、援助問題等、様々な観点から非常に重要な課題ではないかと思っています。以上です。

(渡辺議長代理) 最新の情報を頂き、ありがとうございました。このような経緯で、スリランカが平和構築及び定着に向けての日本の関与という点でODAの新しいモデルケースになることを期待しています。


(ロ)国別援助計画の策定(絵所秀紀法政大学経済学部教授の報告)

(渡辺議長代理) 次に、絵所教授に簡単な自己紹介をして頂きます。

(絵所秀紀法政大学
 経済学部教授)
法政大学の絵所です。内容に入りますが、資料2は2つのパートからなっており、最初は「作業手順」、2番目が「スリランカ国別援助計画策定にあたっての主要論点」です。
 最初の作業手順については、渡辺議長代理のご指導もあり、凡そ以下のように考えています。まず、作業体制については、東京サイドにタスクフォースを立ち上げ、私の他に専門家2名、ODA総合戦略会議委員から1名の4名で構成致します。タスクフォースの中に事務局をつくり、外務省、JICA、JBICから責任者及び事務担当者を各1名ずつ当てるという体制にしたいと思っています。
 次に、タスクフォースの具体的な作業形態については、東京サイドのタスクフォースのガイダンスを得つつ、事務局でたたき台の案を作成し、タスクフォースの本会合で検討します。
 3番目に、コロンボ・サイドに東京サイドのタスクフォースの補助組織として、コロンボ・チームを立ち上げたいと思います。コロンボ・チームは大使館、JICA、JBICの現地担当者から構成するという作業体制を考えています。
 作業プロセスについては、まだ予定ですが、座長より、なるべく早く作って頂きたいという要請がありましたので、6月末に最終報告ができるように組んでいます。まず、既に大使館で作られた国別援助計画の原案がありますので、東京タスクフォースでそれを元にして今年中にガイドラインを作成致します。作成にあたっては、関係省庁よりヒアリングを行いたいと思っています。
 (2)については、ガイドラインができましたらコロンボでワークショップを開催致します。スリランカ政府、各国際機関、現地NGO、関係企業、JETRO等より幅広く意見を聴取し、それを元にコロンボ・チームでドラフトを作成して頂きます。ドラフトの最終段階で東京のタスクフォースの関係者がスリランカを訪問して協議、調整をした上で、第1次案を2月末を目途に作成致します。
 この第1次案ベースにして、東京でワークショップを開催致します。このワークショップもNGO、国際機関、関係企業、JETRO、コンサル等に幅広く呼びかけて、意見聴取、事情聴取を行いたいと思います。
 このワークショップを踏まえ、コロンボ・チームの関係者及びスリランカ政府等と協議した上で、第2次案を4月末を目途の作成致します。
 (4)については、第2次案を再び関係省庁に説明、意見聴取し、最終案を5月末を目途に作成したいと思っています。
 国民参加型の援助ということで、国民各層からの意見を反映したいと思っています。そこで、ホームページを立ち上げ、随時メールで意見を頂きたいと思います。
 そして、先程申し上げましたように、最終案を6月末を目途に「ODA総合戦略会議」に報告し、検討に付したいと思います。
 ただし、和平交渉がどうなるか、まだ不透明な部分がありますので、それに応じて時間が多少ずれるかもしれません。
 2番目は、国別援助計画策定にあたっての主要論点、留意点です。渡辺座長より、なぜスリランカに援助するのかという根拠をはっきりさせること、特に戦略を絞った援助が必要であるという強い要請がありましたので、その点を熟慮したいと思います。
 理由は複数あると思います。1つは、スリランカは民主国家だということです。南インドと並び議会制民主主義が定着した国であり、途上国の中では珍しい国の方に入るのではないかと思います。従って、積極的にサポートしていきたいし、またサポートしていく義務があるということです。
 2つ目は、日本と親密な関係があるということです。互いに仏教国であるということもありますし、私の感覚では、南インド同様、スリランカ人は日本語が上手になるのが早いと思います。非常早いだけではなく、アクセントも日本人とあまり変わらないアクセントになります。そのようなこともあり、非常に親日的、良好な関係を維持してきたと思います。
 加えて、インドとの関係は非常に重要です。南アジアにはSAARC(南アジア地域協力連合)がありますが、実際には印パの反目があり、あまり動いていません。枠はあるが、動いていないという現状があります。その中でスリランカは南アジアの中でどの国ともそれほど悪い関係を持っていません。特に、インドとの間では、実際に発効したのは2000年ですが、98年にインド・スリランカ自由貿易協定を結び、南アジアへのゲートウェイの役割を果たしています。インドは南アジアの大国ですし、21世紀には非常に大きな力を持つことが予想されます。その際、スリランカは非常に重要な位置を占めると考えています。
 第4の根拠は、スリランカが南アジア諸国の中で圧倒的に経済開放・自由化が進んでいる国だということです。マクロの行動調整プログラムだけを見ると、私の評価ではかなり優等生的な対応した国ではないかと思います。従って、これについても積極的に支援していく必要があると思います。
 第5に(E)は、南アジア世界におけるスリランカの特異性です。南アジアの国はインドを真中に置き、皆インドにへばり付いています。特に主要国であるパキスタン、バングラデシュ、ネパールは全てインドと陸続きであり、どうしても大きく影響されざるを得ません。スリランカは幸い島国になっています。明らかに南アジアの国ですが、スリランカを訪れると最も東南アジアに近いという印象を受けるのではないかと思います。南アジアの中では、東南アジア的な要素を含んでいます。インドと海で隔たっているということが、スリランカの特異性を作っているのではないかと思います。
 文化と宗教については、スリランカは仏教ですので、ミャンマーやタイと合い通じるところがあります。仏教国はやさしく、人柄が柔軟であるという印象を強く持っています。その意味では南アジアの中にあって、あまり南アジア的ではない要素が多いのではないかと思います。
 さらに、スリランカ・モデルとして良く知られている社会指標、例えば平均余命や識字率等をスリランカ・レベルの所得水準と比較すると、非常に高い識字率、非常に長い平均余命を持っています。すなわち、社会指標が抜群によいということです。これについても南アジアの中では例外的な立場を占めており、非常に面白い小さな国です。南アジアと東南アジアの接点を担っていると考えています。
 (F)については、スリランカは小さな国でもありますし、うまくすれば経済発展の成功モデルとなり得る潜在的可能性を秘めていると思っています。他の南アジアの国には、複雑でそれほど簡単には発展しそうにない国があります。それに比べると、スリランカは島国ということもあり、小回りが利くというか、少しの援助で短期間に急速な発展をするのではないかと考えています。
 次に、私が考えた、そのようなスリランカをなぜ援助しなければいけないのかという根拠です。(2)は事務局より報告がありましたように、第1に、和平・復興問題に積極的に関与していく必要があるということです。昨年の9.11の際に偶然コロンボにいましたが、スリランカ人の反応にびっくりしました。皆アメリカに対する同情がまったくありません。おとなしい仏教国でこうなのかと驚きました。なぜだろうと思うと、やはりLTTEの問題があります。LTTEのテロの度にアメリカは、「スリランカ政府はだらしない、しっかりしないからこのような問題が解決しないのだ」と我々をひたすら叱咤するだけで、自分が被害に遭うと、「あいつらテロリストだからやっつけてしまえ」というのは、ダブルスタンダードではないかという反応が普通です。誰に聞いてもそのような反応が出てきます。シンハリ人にとって、「タミル・イーラム解放の虎」は明らかにテロリストであったわけです。この問題を解決することが一番であることは間違いありません。
 2番目は長期的な開発ビジョンを想定する必要があるということです。日本政府は既に積極的に関与していますが、特に、開発の重点地域として、北東部の復興を当面考えておく必要があると思います。資源がない国ですので、スリランカが生きのびる道としては、輸出立国、観光立国を目指すべきではないかと思っています。そのため、経済基盤の整備等に、ODAだけではなく、様々な経済協力を考えていく必要があると思います。民間の主要な工場を回るとわかりますが、スリランカの軽工業品-繊維等-はレベルも高いし、器用です。輸出品として生産していますので、アメリカやイギリス市場への輸出商品として繊維製品があるわけです。他の南アジア諸国の製品レベルとは相当差があります。これは非常に可能性があると思っています。繊維産業に向けた人的資源の開発等も行えば良いのではないかと考えています。
 最後は貧困問題の対処です。福祉国家であるにも関わらず、依然として貧困レベル以下の貧しい層が20~30%います。最大の問題はモダリティの問題であると思っています。どのように解決するか。PRSPを策定中ですから、今後セクターワイド・アプローチ等が出てきます。
 そこで圧倒的トップドナーである日本が主導権を取り、積極的に関与して行っていく必要があると思います。そのための体制の整備、強化が不可欠になってくるのではないかと思います。スリランカ政府とのパートナーシップはかなり良好であると思いますが、スリランカ政府や他のドナーとの関係を日本のリーダーシップでオーガナイズをしていくような貢献が求められているのではないかと考えています。以上です。

(渡辺議長代理) 絵所教授ありがとうございました。作業手順と主要論点をご報告頂きました。絵所教授を中心に法政大学の下村恭民氏、中村尚司氏がメンバーとなり、「ODA総合戦略会議」からも1名加わって頂き、その4名が中心となり、さらに周辺のメンバーを集めてタスクフォースを作り、この作業プロセスで進みます。
 そして、特に問題が途中で起こらなければ、最終的には2003年6月末にこの会議に報告書を出して下さるということで、我々としてはありがたいと考えています。この作業手順及び主要論点についてご質問等ありましたらお願い致します。

(青山委員) 2点質問がございます。ベトナムについて大野委員がご提案された方法と異なり、スリランカについては、オーソドックスな方法をご提案されていると思います。今後国別援助計画を策定していく際、どちらかをモデルにしていく方向でしょうか。それとも、スリランカについては、とりあえずこの方法で進めるということなのでしょうか。方法の違いをどのように考えていくのかということが、第1点目の質問で、渡辺議長代理に教えて頂きたいと思います。
 また、ベトナムについての議論にもありましたように、良いたたき台を作ることは非常に大切であると思います。国別援助計画には様々なセクタ-を分析する専門家をたたき台作成に加えることが必要であると考えられます。この案だけを見ますと、事務担当者がたたき台を作成するように思われますが、セクターの専門的分析について、どのようにお考えかということが、第2点目の質問です。

(渡辺議長代理) 前者については、ベトナム、スリランカとスタートしたばかりですので、大野プランと絵所プランは対照的と言ってよい程違うと思います。その中間的な方法等様々な方法があり得ると思います。前にも申し上げたように信頼できる主査を指名したら、その主査が比較優位を発揮して、様々な方法を出して頂きたいと思っています。始まったばかりですので、「これがいい」という形で方法を固定せずに、少し包容力を持って進めてみます。2年程経てば、徐々に相互の競合の中で、「よしこれだ」というように決まってくると、私個人としては考えています。2番目のたたき台についてのコメントについては、絵所委員よりレスポンスお願いします。

(絵所教授) 当然セクターの専門家にも勉強会で様々なことを教えて頂くことになると思います。どの国でも同じであると思いますが、コアメンバーが多すぎると、結局何でも入ってきてしまい、逆に絞込みが難しくなります。既に様々な形で援助に携わっている方はたくさんいらっしゃいますが、全体像を見ながら作業されている方はそれほどいません。我々コアメンバーで考えて、他の方の話を伺い、勉強しながら、まとめていきたいと思っています。

(大野委員) 1点目は、なぜスリランカに対する援助なのかということで、目的として国益について述べて頂きました。ベトナムもそうですが、一国ごとに援助を正当化していくことももちろん必要ですが、そもそも何が国益なのか、日本はどのような援助をするのかという原則を先に決める必要があります。一国ごとにアドホックな理由はいくらでも付けることはできます。従って、ある程度のガイドラインがないと、我々の考えだけでは難しいところがあるということを指摘します。
 2点目は事務局について、ベトナム、スリランカまでであれば良いのですが、今後数が増えてくるのであれば、複数国が同時に走っている時の事務局体制を考える必要があります。現存のリソースでやれということになっていますが、事務局体制も来年からは考えて頂きたいと思います。
 最後に感想ですが、スリランカは、絵所委員のお話では東アジア型の工業化戦略でいけるということですが、そうであれば非常に面白いと思います。そのステップが実現するのかしないのかということには非常に興味があります。

(渡辺議長代理) 大野委員から重要な問題が提起されてました。ODA大綱については草野委員に論点整理をして頂いていますので、それが出てから、なぜ各国へ援助するかという議論とすり合わせたいと思います。
 事務局体制については、現段階では、数が少ないので各国別に対応できるとして、今後策定国が多くなった場合について、何かアイディアはありますでしょうか。

(古田経済協力局長) 進捗状況見ながら検討させて頂きたいと思います。現在、経済協力局には国別計画策定室があり、そこで国別援助計画をフォローすることになっていますが、その体制自身も正直いって十二分かどうかということがあります。現在の体制だけでサポートできるのか、もう少しお時間を頂いて考えたいと思います。

(渡辺議長代理) 再編ができるかということも含めて、いずれご報告頂ければと思います。

(草野委員) 2点あります。1点目は大野委員がおっしゃったことと若干関係がありますが、なぜスリランカについて策定するのかということに、メディアがどのように反応するのかということや国民がどのような考えを持つのかということに私は非常に関心があります。
 その点からすると、絵所教授のスリランカ国別援助計画策定にあたっての主要論点として、(A)から(F)まで様々な論点をおっしゃいましたが、やはり開発経済学者の論点ではないかという気が致します。
 吉川審議官が強調されましたが、なぜスリランカなのかということが、明石氏が政府代表に任命されたことに現れているように、カンボジアについでスリランカを日本外交あるいは日本の政治の目玉にしようという視点があると思います。平和定着から平和構築に至るプロセスで、日本が政治的、外交的にどのような役割を果たすのかというところに起点がある話だと思います。従って、2番目にお話になりましたが、そこが最初にくることが必要だと思います。私の2番目の疑問点、質問とも関係がありますが、納税者は国別援助計画の策定対象がベトナムについでなぜスリランカなのかということがよくわからないのではないかと思います。現在の策定スピードでは、スリランカが第1号になる可能性もありますので、2番目の和平・復興問題を全面的に出して頂く必要があると思います。
 2点目は絵所教授というよりも、外務省にお願いをしたい点です。私も行ったことがありますので、スリランカがこのように厳しい状況であったということは知っていますが、ODA総合戦略会議・第1回会合直後のメディアの反応には、なぜスリランカなのか、なぜ中国ではないのかという素朴な質問がありました。今振り返れば理解できる話ですが、当時は外務省の心積もりが伝わってきませんでしたので、我々委員の中にもなぜ中国ではなくてスリランカなのかという素朴な質問があったと思うのです。本日、吉川審議官の話の中で、アチェやミンダナオが潜在的な支援地域として挙がっていましたが、そのような情報を適宜頂ければと思います。

(絵所教授) ありがとうございます。そのとおりまさに復興が前提であると考えています。長期的に考えて(A)を書きましたが、スリランカ人に聞いてみると、一番のニーズは和平・復興に決まっており、83年以来の紛争では、96年のGDPの2倍程度のダメージを受けたという推定が出ています。非常に大きなダメージです。紛争がなければ、直接投資もスムーズに入ってくるということですので、大前提で草野委員がおっしゃったようにメディアを意識して、紛争問題について訴えかけていくのはいい戦略であると思います。

(背戸委員) 12月末を目途にこれからガイドラインを策定すると、短期間に多くの仕事をする必要があると思いますので、仕事をしやすい支援を外務省側にお願いしたいということが1点です。スリランカは平和構築の1つのモデルケースとして、国民から理解を得、支持されるものであると思います。十分にこなされて、いい形で展開されていくことが重要であると思いますので、その点を強調したいと思います。

(渡辺議長代理) おっしゃる通りだと思います。これから相当早いスピードで複数の国を並行に進めていかなければなりません。私からもお願いしているところですが、現在までの体制+αの強力な陣営を組んで頂きたいと思います。どのような体制になるかについては、いずれご報告頂けるようにしたいと思います。

(浅沼委員) 今になってみると、和平の話が出てきましたので、スリランカを第2号に選んだのはタイミングが良かったと思います。先程草野委員がおっしゃいましたけれども、和平を前面に出して国別援助計画を策定するということにすると、まだ交渉中なので、1987年の際のようにうまくいかなかった場合、日本のODAは退いてしまうのかという問題にもなってきます。
 そうであれば、この国別援助計画を従前の国別援助方針と明らかに区別し、計画としてしっかりしたものにするためには、第1にODAの量的な枠組みを設定する必要があると思います。
 第2に、量的な枠組みを実施するにあたり、例えば和平が進展していれば積み増しする可能性はあるけれども、そうでなければその戦後復興計画に対するODA支援はなくなるというような一種のカントリー・コンディショナリティが必要になります。
 第3に、先程分野別の専門家の意見を聞くという話が出ましたが、ある程度分野別のプログラミングまで行わなければ、本当に良い計画だとは言えない気が致します。その意味でカバレッジについても、ある程度「ODA総合戦略会議」としてのガイドラインが必要だと思います。渡辺議長代理がおっしゃるように、一国ずつ主査を選び、その主査の思い通りに行い、数ヵ国策定すればプロセスはできてくるというトライ&エラーによる方式には賛成です。しかし、最初は、計画が何をカバーするか程度のガイドラインがないと、以前と同じように、援助方針のようなものになってしまい、題目は並ぶけれども、本当に有効なODA実施のための枠組みにはならないのではないかという危惧を持っています。

(渡辺議長代理) 本日最後に新規の国別策定候補国の議論を行いますので、その際もう1度その議論ができるかどうか時間の制約もあって約束できませんが、できなければ次回に行いたいと思います。

(荒木委員) 私も2点あります。1つは、国別援助計画はどの程度の期間を想定しているのでしょうか。

(古田経済協力局長) 5年程度を念頭に置いています。

(荒木委員) 2点目は、「第2次ODA改革懇談会」で国別援助計画の策定に関しての提言を行いましたが、重点分野をはっきりして頂きたいと思います。何でもありというのが従来の方法であったので、重点を絞り、向こう5年間でどことどこを援助するということをある程度明確にしながら、資金配分についてもできれば概数で推定できれば非常に面白いという感じが致します。実施機関側はそのような感じを持っていると思います。従って、外務省と当局との関係があると思いますが、形態別の重点化を決める場合でも、予算的な量の測定がある程度あれば、スリランカに対する援助の全体的な流れが具体的に掴めるのではないかという感じを持っています。

(渡辺議長代理) 和平復興や平和構築というテーマは、様々な要素が入らざるを得ないテーマだと思います。荒木委員は和平復興や平和構築が重点化の項目になるとお考えになりますか。これは慎重な考慮を要するテーマだとは思います。

(荒木委員) なると思います。しかし、そのプロセスでは、外交的な振る舞いではなく、具体的にその地域の小型インフラ等様々なことを行っていかなければなりません。何年間で何を先に行い、地域の人達の繁栄を図るかということには、ある程度段取りがあると思います。そうすれば、例えば、灌漑についてこの地域ではどうかという目処が立つのではないかと思います。

(絵所教授) 浅沼委員のコンディショナリティのお話ですが、スリランカの場合は、和平交渉がうまくいかなければODAを止めてしまおうということにはならないと思います。
 荒木委員の重点化の話について、私の考えでは、重点化は、我々の理解の枠組みであると思います。実際には形態別にインフラをどうするという作業になるとは思いますけれども、個別のプロジェクトを積み重ねれば重点化になるという訳ではなく、どのような理解の枠組みで持っているかということが重点化の戦略性であると考えています。

(磯田委員) 4点ほどあります。まず、作業手順の中で、「ODA総合戦略会議」へご報告を頂くのは6月であるとも読めますが、例えばガイドラインの段階等、途中で簡単に議論する機会はないのでしょうか。

(渡辺議長代理) メンバーが1人途中で入りますからいいのではないでしょうか。

(磯田委員) それが他の委員の共通理解であれば、それでよいのかもしれません。

(渡辺議長代理) 次々と国別援助計画の策定をスタートしていきますので、途中で議論するとなるとかなり煩雑になるのではないでしょうか。

(磯田委員) この会議の役割について、様々なことが動き始めた段階で整理する必要があると思っています。

(渡辺議長代理) 国別の委員会のヘッドと我々も出席した会議を何ヶ月かに1回行うということでしょうか。

(磯田委員) 節目節目だけでいいと思います。私はガイドラインの段階でいいのではないかと思っています。

(渡辺議長代理) 政策レベルの話が出た時だけ開催するのもよいですね。

(磯田委員) はい。

(渡辺議長代理) 事務局はメモして頂けますか。そのようなこともあったほうがいいという気も致します。貴重なご提案ありがとうございました。

(磯田委員) 2点目は、スリランカに関しては、JICAやJBICが既に援助方針を作っています。それとどのように摺り合わせていくか。実施機関の方針であるということは伺っていますが、研究者等を集めて作ったものですので、その方針を国別援助計画の中でどのように位置づけていくかということもお聞かせ頂きたいと思います。
 3点目は、復興プロセスへの関与の中で、カンボジアの経験等もありますが、現在進行中の東ティモールやアフガニスタン等の中で、援助側が先走る等様々な問題が指摘され、必ずしもうまくいっていない事例もあります。スリランカの状況は、東ティモールやカンボジア、アフガニスタンの状況とはかなり違う点があるということは理解しているつもりですが、復興プロセスでの援助の入り方に関して、今までの他国での経験をヒアリングし、活かして頂きたいと思います。
 4点目は、先程浅沼先生がおっしゃったのと近いことですが、国別援助計画に数値目標まで盛り込むのかといったことや、大野委員と同じ意見ですが、国別援助計画共通のガイドラインの策定について、「ODA総合戦略会議」で議論するべきではないかと考えています。

(砂川委員) 今のことに関してですが、先に浅沼委員がおっしゃったように国別援助方針と国別援助計画は非常に異なるものです。援助方針は政策段階に立てられるもので、この戦略会議で作成されるべき性質のものですが、援助計画はセクター毎の援助計画、場合によっては更に下流の実施予定のプロジェクトにまで言及されるようなものとのイメージを持っています。
 この戦略会議では国益の観点から論じるわけで、策定される国別援助計画は方針に近いものであってJICAやJBICの実施上の詳細な国別援助計画とは異なるものであろうと思います。実施機関の計画は世銀やアジア銀行の援助計画も参考にしながら、援助方針に則り、セクター毎の具体的動向、集中すべき重点分野、実施上の問題点とその改善方法について国別援助計画に言及されるべきではないかと思います。方針と計画の区別をはっきり認識した上で、国別援助計画の作成に際しこの戦略会議でやるべき範囲、方法についてのガイドラインをこの会議できちんと決める必要があるのではないかと思います。

(渡辺議長代理) きちんと決まるかどうかわかりませんが、議論はしないといけないと思います。

(伊藤委員) NGOの視点から質問したいのですが、スリランカにはご存じのようにサルボダヤという大きな団体があり、同国の農村の3分の2をカバーしながら活動しています。他にも非常に大きな影響力を持つNGOの連合体であるナショナル・カウンシルもあります。我々は両方の団体と連携しながら活動を進めていますが、絵所教授のスリランカNGOとの関係、国別援助計画策定における現地NGOの活動についてのお考えを伺いたいと思います。

(絵所教授) 磯田委員のお話については、下村先生と中村先生も実際にJBICやJICA、スリランカで活動されていらっしゃり、また、紛争問題の研究もされていらっしゃいますので、一番のリソース・パーソンだと思っていますので、摺り合わせは問題なくできると思います。外務省レベルでの指針や方針、戦略をはっきりさせることが最初の仕事ではないかと思っています。
 伊藤委員のご質問については、スリランカのNGOは非常に強いです。実際、NGO的な人々の相互の協力精神がかなり良くできていると思います。昨年の南部の干ばつの際も、大学等にて組織し、ボランティアで救助に行くということが盛んに行われており、非常に感心しました。スリランカのNGOは国際的経験もありますし、様々な形でご協力頂けるのではないかと思いますので、積極的にお願いしたいと思っています。
 日程は非常に詰まっており、特に12月にタスクフォースを立ち上げて、12月にガイドラインを出すというのは、外務省から相当サポートして頂かないと厳しいと思っており、強力なサポートを頂きたいと思います。

(渡辺議長代理) 日程は少々厳しいと思っています。その分、できる限り強力なサポートをするようにと私からも外務省にお願いします。事務局もそのように考えていますので、よろしくお願い致します。
 先程も申し上げましたが、大野委員会の場合には大野委員ご自身がこの会議の委員ですので問題はないと思いますが、絵所委員会の場合、現在名前がリストされているのはこの会議の委員ではありませんので、我々の会議メンバーの1人どなたか入るということになります。そういったやり方を今後も原則としていきたいと思います。後程個別に相談頂き、決定させて頂きます。相談の上決定された委員にはご協力よろしくお願い致します。スリランカの国別援助計画策定については、大枠が決まったとして、これをスタートすることにしたいと思います。


(2)ODA大綱の見直し(タスクフォースの報告)

(渡辺議長代理) 次に、ODA大綱の見通しについて、草野委員を中心にタスクフォースが作られ、議論している最中ですが、そのことについてのご報告をお願い致します。

(草野委員) 11月19日の朝8時から1時間半ほど第1回ODA大綱見直しワーキングチームの会合を開催致しました。私が座長を務めましたが、荒木委員、小島委員、磯田委員と外務省経済協力局から何名かの方にご出席頂きました。
 まず、ODA大綱見直しワーキングチームの目的、作業日程に関してご報告を申し上げます。本ワーキングチームの目的は「ODA総合戦略会議」につなげるための論点を整理するということで意見の一致をみました。別の言い方をしますと、1つの意見、1つの方向性を出すということではなく、論点の整理をするということで意見の一致をみました。
 2点目は、全体の作業日程としては、1月下旬に論点整理を「ODA総合戦略会議」に提出し、3月頃までに広く一般の人々の声も募った上で、「ODA総合戦略会議」としての結論を出す方向となりました。
 3点目は、ワーキングチームは、今後3回程度開催致します。予定では12月2日、13日及び年明けに1、2回ということです。
 若干議論があったのは、ワーキングチームの議論の過程において、一般の人々の意見をどのように反映させるかという点です。磯田委員からは、ワーキングチームとして広く意見を聴取する機会を設けるべきだというご意見があり、それに対して小島委員から時間的、日程的制約から、ワーキングチームでは論点整理に集中すべきであり、意見がある人は既に開設されているホームページ上で意見を提出できると述べ、荒木委員も大体同主旨の意見を述べられました。
 ワーキングチーム及び「ODA総合戦略会議」、さらにその後のタイムスケジュールについてご紹介しますと、ワーキングチームは1月末までにこの「ODA総合戦略会議」に論点整理したものを報告することになっています。「ODA総合戦略会議」ではそれをもとに議論して頂きますが、そのプロセスでは先程申し上げましたように、広く一般の人々の声も募ることになっています。さらに、「ODA総合戦略会議」が外務大臣に会議の結果を報告した後、政府案が作成されますが、そのプロセスでは内容が固まった段階で、正式なパブリックコメントを求めることになります。
 ワーキングチームとしては場を設定して一般の人々の意見を広く聴取することはせずに、意見がある方々はホームページ上で意見を提出することができるということで凡そ合意ができたと理解をしています。
 2番目の議論概要の主な意見ですが、主要な見直しのポイントとしては基本理念、原則、地域分野等、また、ODAの決定・実施・評価の政策サイクルの4つが挙げられました。見直しと言いましても、最後のODAの決定・実施・評価の政策サイクルについては、現在の大綱には書かれていません。この10年間の国民参加を含めた政策過程の透明性を反映して、是非入れたいという新たな論点です。
 第2に、対象範囲について議論がありました。広くは、先程来議論されていますように、平和構築を中心に捉えた考え方です。国際協力の観点からの議論もありましたし、従来の開発経済を中心とした協力の視点からの議論もありました。時間が限られていますので、「ODA総合戦略会議」のマンデートに照らし合わせても、当面は、国際金融機関、国際平和協力等に言及するとしてもODAとの関連で行うのが適切であるという意見で概ね一致しました。
 第3に、大綱においては、日本の進むべき姿の中で、ODAのあり方や戦略を国内、特に納税者に対して示すべきであるとの意見が出されました。他方、日本のODA哲学を海外にきちんと発信するという視点も重要であるという意見も多く出ました。
 第4に、基本理念はシンプルにして、メッセージ性を重視すべきであるということです。現在の大綱の基本理念は、良いことは多く書いてありますが、必ずしもメッセージが明確に伝わってきません。国益に関する多角的議論が必要であると各委員から指摘がありました。また、アジアにおける日本のODAの成功経験と並んで、格差や環境破壊の問題もあるという指摘がありました。繰り返しますが、アジアにおける日本のODA経験や成功を踏まえ、理念を明確にする必要があるとの指摘がありました。
 第5に、2番目に入りますが、原則についても、修正の要否、修正する場合にはその内容や運用のあり方を検討する必要があるという指摘がありました。主として、基本理念をどのように議論するかという議論の範囲について第1回会合は議論して、若干原則に入ったところで時間となりました。次回の予定は、それぞれの委員に宿題を課していますが、基本理念についての論点に関し議論したいと考えています。

(渡辺議長代理) 草野委員ありがとうございました。こちらも日程は厳しいかもしれませんが、1月下旬に論点整理をこの会議に出して頂き、3月頃に「ODA総合戦略会議」としての結論を出すという方向になっています。
 ODA大綱見直しの議論は多くの場で出ていまして、草野委員と私は、3、4日前に自民党にも行き、議論もしてきました。いくつかの組織で競合して議論していますので、早い方がインパクトは大きいと思います。従って、「ODA総合戦略会議」としての結論を3月あたりに出したいと思っています。

(磯田委員) ワーキングチームのメンバーでありながら前回確認しませんでしたが、論点を抽出してこの会議に提出するのがタスクフォースの役割ということで合意はしました。その後はこの会議で議論し、最後には作文が必要になるかと思いますが、それはどこでやるのかという話は次回議論するということでよろしいでしょうか。

(渡辺議長代理) ワーキングチームのメンバーが成分化するということになっているはずですけれども。

(草野委員) 1月末で解散するつもりですが、また3月にタスクフォースが復活するのでしょうか。

(渡辺議長代理) 議論した人が解散し、議論をしていない人が書くという理屈が成立するとは思いませんので、そのようにご了解頂けませんか。

(草野委員) 作文というのは、会議としてのODAのまとめという意味ですね。

(渡辺議長代理) はい。

(草野委員) 大綱そのものの原案については、私どもの方で論点整理はしますが、この会議の様々な議論も載せるということでよろしいのでしょうか。

(渡辺議長代理) はい。論点整理は1月に出ます。その整理に基づき成分化するところまでは草野委員会でやって頂くということでお願いできますか。

(草野委員) この前の理解では古田局長がおっしゃったのは、要するに外務省の事務方としては事務方として、原案を作りますので、それとは別に当会議として当会議バージョンのODA大綱のアイディアを具体化したものを3月末に出すということでよろしいですね。

(渡辺議長代理) そのように思っています。そうであれば、両者で擦り合わせが必要だということでしょうか。

(古田経済協力局長) 大綱そのものの原案は政府が書くということです。その大綱にどのようなことを織り込むべきということやどのような角度から大綱を位置づけるべきか等、様々な論点があると思いますけれども、そのことについての戦略会議の意見のまとめを3月に頂くと理解していました。

(渡辺議長代理) そうであれば、草野委員会の報告書が大綱の原案より先に出る方が望ましいですね。

(草野委員) 私の理解では、時系列的に言うと、この報告が出たのを受けて、外務省の事務当局がODA大綱の原案を作るので、その見直しのポイントをまとめるという理解、つまり、大綱自身を書くということではないということでよろしいですね。イメージとしては、現在、官邸の国際平和協力懇談会に参加していますが、そこで最後に報告書で、このような論点があり、ここはこのようにするべきであるという提案をしています。それと同じようなことでよろしいのではないかと思っています。

(渡辺議長代理) おっしゃっていることは、1月下旬の論点整理で終わりでもいいのではないかということでしょうか。

(草野委員) 3月末の時点で、当委員会として、この論点に関してはこのようにした方が良いのではないかと外務大臣に報告するということでしょうか。

(渡辺議長代理) そうです。非常に大事なテーマですので、ご尽力頂きたいと思います。



(3)国別援助計画新規策定候補国(案)

(渡辺議長代理) 国別援助計画新規策定報告案について、ロードマップというか、このような順序で進めていくということについての了解を得なければならない時期に来ています。この点について、事務局からご報告頂きます。

(古田経済協力局長) 資料4について、私どもとしましては「1.」にありますように、スリランカに次いで平成15年はインド、インドネシア、モンゴル、平成16年はパキスタン、ラオス、カザフスタンと各年度3ヶ国ずつ策定してはどうかという提案です。
 「3.その他」の「(1)策定済み計画のレビュー」の「(参考)」に、不十分かもしれませんが、「ODA総合戦略会議」発足前にすでに15ヶ国について計画があり、それを参照しながら現在ODAの実際の作業が進んでいますので、一方でその運用状況を逐次レビューし、この会議に報告しながら、新規の国を加えていきます。現在ある15ヶ国にスリランカを入れますと16ヶ国になります。
 次に、2000年の実績で二国間援助供与額上位10ヶ国のうち、この16ヶ国の中からはずれているのがインドネシア、インドとパキスタンの3ヶ国ですので、この3ヶ国について平成15年と16年で策定したいということです。平成15年がインドとインドネシア、平成16年がパキスタンです。他に大所では、14位のラオス、16位のモンゴルといったところが抜けていますので、この辺が出来ればと思います。また、地域的バランスから、22位ですが、中央アジアのカザフスタンを含めました。
 考え方は、「2.」にありますように、アジアを中心に地域的バランスを考えていくことと援助量の大きな国について早く策定していきたいということです。この6ヶ国を加えますと合計22ヶ国になり、我が国の援助総額の6割の国をカバーできることになります。その他に抜けている大所では11位のブラジルがありますが、既に中進国ですし、政権交代等様々な政策変更がありますので、もう少し様子を見てみたいと思います。また、円借款の進捗状況は非常に悪く、新規円借款供与は非常に困難となっています。13位のトルコについても、無償を卒業し、本年度から中進国になり、かつ政権転換がありましたので、もう少し様子を見ようと思います。15位のヨルダンについても、既に無償を卒業しており、また、新規円借款供与は困難な状態ですので、新規策定をあえて急ぐことはないのではないかということです。上位のうち策定が急がれる国はこれでカバーできると思います。強いて言えば、モロッコやウズベキスタンが残りますが、これについては平成17年以降にと思っています。
 一方、例えばベトナムについて大野委員に見直しを願いしていることもありますし、既存の15ヶ国についてもう少し議論をしたいという動きがあるかもしれません。特に、中国について、様々な所で議論が出ていますが、私どもとしては、ベトナムと同様に作り直そうというご意見があれば頂きたいと思います。策定国をある程度増やしていくことを含めて考えますと、既存の国別援助計画については、この会議で見直しをする中で議論を深めていくのも一案と思っています。
 国別援助計画の横断的なガイドラインというご議論がありましたが、総論が先か、各論が先か、並行して行うかについては悩ましいところです。この会議ではベトナムとスリランカが動き出したところですし、他方で大綱の議論もあります。横断的な議論については、大綱の議論を行いながら、他方で2ヶ国の作業を始めて頂いていますので、その中からある程度滲み出てくるものがあるのではないかと思います。平成15年、16年の新規策定国の枠組みをタスクフォースでご検討頂く際に、再度フィードバックする等の工夫があるのではないかという感じが致します。

(渡辺議長代理) 局長がおっしゃった最後の点はなかなか難しいと思います。事前に評価の枠を決めておくか、個別の国別援助計画の新規策定や見直しを行う過程で評価の最適な方法が次第に浮かび上がってくるか、おそらく両面であろうと思います。ただし、抽象的に議論してもなかなか答えは出ない問題ですので、ともかく前に進みたいと考えます。

(大野委員) 最後の点は、草野委員の作業の中で行っていくということで、やり方としてはいいと思います。具体的なものから表現していきますが、全体として国益が入るのか入らないのか。ベトナムに勝手に入れるのは問題提起にはなりますが、それをベトナムのコンテクストとして全体の議論をするということも含めた上でODA大綱の議論をしていけばよいと思います。
 第1に申し上げたいことは、既存の国別援助計画の見直しについて、私は今まで既存の計画は計画でないに等しいと理解していますので、計画たるのはこれから策定するものであると考えれば、既存の計画があるからといってすべてカバーしたと私は安心できません。ベトナムの場合も毎年状況が変わっていますし、質の問題もありますので、既存のものがあるので、新しいものとあわせて全部カバーできたという発想を私は取っていません。
 そうであれば、新規だけでみると、どのような理由である国を選ぶかを議論せずに、平成15年と16年の6ヶ国にスリランカとベトナムを併せて策定するというように、始めに国と年度があって、スピードや策定順序も決まっていることになります。
 新しい国を選定することは、我々の重視する重点分野と重点国を示すことになり、非常にメッセージ性が高い。策定予定の8ヶ国は、広い意味でアジアだけという印象です。東アジアはないけれども、アジア周辺国だけであり、アフリカも中南米も中東もまったく含まれていません。これは非常にメッセージ性が強いと思いますので、アフリカで様々なことを行ってきたと日本が言ったとしても、アフリカの方が見たらどのように思うでしょうか。
 また、スリランカの時にも言いましたが、モンゴルやラオス、カザフスタンは多少違いますが、アジアだけであれば同じようなパターンの投資を呼び込んで工業化するという戦略があり得ます。しかし、途上国のバラエティは多くありますので、どの選択方法が重要であるかというような基準をまず議論すべきであると思います。
 私の考えている国選択基準をもう少し具体的に言いますと、当然供与額は大切です。国民の税金を多く投与している国は早く作らなければなりません。第2に、戦略的重要性です。戦略にも、和平構築に関する重要性や日本の投資貿易に関する重要性、世銀のテストケースになっているような途上国に日本がどのように関与するかといった多様な戦略性があり、それらのうち最低限1つは満たすことが必要であると思います。第3に、日本側の準備として、人と情報の準備ができているかということです。これら3つのうち、3つとも揃えばよいのですが、最低2つは満たした国の中から選定していくという方法をしなければならないと思います。
 私はベトナムの件で、様々なNGOや省庁の方から意見を聞いていますが、その中で、この会議の候補国の選定基準が曖昧、不透明である、我々も国選択に参加・インプットできるのかというような声がありました。従って、新規策定国がなぜこの6ヶ国+2なのかということを説明できるように議論をしなければならないと思います。

(渡辺議長代理) 戦略、援助の量については、外務省から出された資料にも書かれています。

(古田経済協力局長) 私どももそのようなラインに沿って選定していくのがよいのではないかと思います。1つ大きな議論は、既にある15ヶ国の国別援助計画をないものと見なすかどうかというところです。私ども行政サイドとしては、各省庁とも相談して、政府として決めた計画であり、対外的に相手国との関係や政府部内、国会との関係でも、不十分かもしれませんが、1つの座標軸にしています。現在のままではまったく不十分なので見直していきたいというこの会議の心意気は大変ありがたいので、そのような意味でお力添えを頂きたいと思います。
 あるものをないものと見なすというところから出発するのは、行政としてはつらい話だということが正直なところです。ただし、先程申し上げましたように、今ある15ヶ国のうち、ベトナム同様既存の国別援助計画をこのような理由で根本から書き直した方がよいのではないかというご提案があれば、この場でご議論頂き、決定して頂ければよいのではないかと思います。

(大野委員) 行政レベルでは既存の国別援助計画をないものとは見なさないとしても、我々の行っている議論は、少なくともある国に対して外交的に国別援助計画を持っているかどうかということではありませんので、質の面で不十分であるということは十分認識して頂かなければならないと思います。従って、外交的には計画がありますが、その中身はどの国も同じであるという指摘がありますので、私の言った分析的な意味では、やはり計画はないものとしてやり直さなければならないと思います。既に策定されているタンザニアでもエジプトでも、本当にこれで良いのかということを考えると、単なる見直しでは済まないという意味で、ないものに等しいと申し上げました。

(渡辺議長代理) メッセージ性が強すぎるのではないかという発言がありましたけれども、候補国についてご提案はありますでしょうか。

(大野委員) 我が国のODAの6割がアジアに対してですので、日本がアジア重視なのは十分わかりますけれども、排他的にアジアというのはメッセージ性としては余りにも強すぎるのではないかということです。従って、私は、広い意味で非アジアの国も入れ、日本との貿易関係、戦略性を考慮し、さらに、グローバルな問題が起こっているといったことやその国で世銀や他ドナーによる新しい援助の試みが行われているといった国を選ぶことも必要であると思います。東アジアや内陸国だけで策定するというのではなく、バランス感覚も必要であると思います。

(小島委員) 大野委員がおっしゃったことについて、私はその通りだろうと思います。しかし、既に策定されている国別援助計画について、再度新しく策定し直すことは、できれば一番良いのでしょうが、10年程度かけるのであればできるだろうと思いますけれども、事実上できないと思います。その意味では、見直しの中で大野委員がおっしゃったように、全てだめだという計画が出てくれば、その際新しく策定し直せばよいと思います。中国についても、見直しを通じて問題点があるということであれば、新規の計画を作りましょうということが1点目です。
 2点目は、6ヶ国がアジアであり、非常にメッセージ性が強いということについて、私はメッセージ性が強いのは非常に良いことであると思っています。その6ヶ国の中に非アジアが1つくらい入るのはよいと思います。しかし、アジアが3ヶ国、非アジアが3ヶ国程度ということになると、逆のメッセージ性が出てくると思います。すなわち、どの国を選ぶかということは、この場での議論だけで済むことではないと思います。非常にメッセージ性が強いとするならば、もう少しきちんと時間を取って、地域・国について選定しなければならないのではないかと思います。

(草野委員) 大野委員に甘いと言われるかもしれませんが、私も小島委員がおっしゃったように、不満足ではあるかも知れませんが、いくつかの国々については不満な点について見直すことがあってもよいと思います。また、2番目のアジアを強調することはメッセージ性が強いか弱いかという議論について、強すぎるというのが大野委員のご指摘ですが、実は先程タスクフォースの議論をご紹介しましたように、多くの委員から、問題点もなかったわけではありませんけれども、日本の限られた資源を有効に活用するという意味では、基本理念でアジアを強調した方が良いだろうという議論が出てきています。この計画のレビューの中では、タスクフォースや「ODA総合戦略会議」の大綱の議論に間に合うように、アジア強調の良かったところ、悪かったところもご報告を頂ければ大変ありがたいと思っています。

(砂川委員) 選ばれたスリランカとベトナムでの2つの国において、日本の国益は何であるかということを議論した上で、それが全ての援助支援国に共通する国益か、それともその国に対してのみ当てはまる特殊なものということか、議論が必要ではないかと思います。
 2番目に申し上げたいのは、アジア以外の国についてですが、メッセージ性から確かにアジアに特化するのは対外的にわかり易いことだと思いますが、全部アジアに特化するのはおかしいのではないかと思います。従って、私は中南米やアフリカといったところから1ヶ国ずつ程度は取り上げて議論の上、対象国を選んだ方が良いと思います。国益や戦略を議論する場合に、非アジアにおける日本の国益がアジアにおける国益とどのように変わるかということが、議論によって明確になってくるのではないかと思います。

(伊藤委員) 砂川委員と同じ意見です。日本はグローバルなプレーヤーだと思っています。日本がODA第2の規模の大国であるという位置づけにおいて、世界の貧困撲滅に積極的に取り組む必要があると思います。その観点からも、絶対的貧困国が多いアフリカ、そして出来れば中南米を含め、それぞれの地域から1ヶ国ずつ取り上げた方が良いと思います。

(渡辺議長代理) わかりました。大変多くの意見が出て、本日は候補国案を確定するわけにはいかないように思います。ただし、マスコミも「戦略会議は、当初は次々と新規策定していくと言っていたのに、なかなか国の名前が出てこないじゃないか」という懸念も持っています。従って、平成15年度に策定するとされているインド、インドネシアとモンゴルについては、何れにせよ策定しなければならない国であると思います。インドとインドネシアの規模、また、特に中国との関係等におけるモンゴルの選択的重要性を鑑み、平成15年度はこれらの候補国について策定し、平成16年度の候補国に本日の意見を反映させる案を再度提供するという提案は如何でしょうか。

(大野委員) 平成15年度はすぐ決めなければなりませんが、それではやはり不透明だと言われます。私は、どの新聞、どのマスコミが策定が遅いと非難しているか知りませんが、数よりも質、質よりも過程だと思っています。従って、とりあえず3つの候補国は早く出す必要があるので決めるという不透明な方法は、不信を招きます。なぜベトナム、次はスリランカなのか。ベトナム、スリランカについては、ある程度正当化できたとしても、他の候補国について、我々でさえもインプットできないというのはおかしい。まず、アジアのみか、あるいは他の地域も入れるかということも含め、どのような基準がよいかという議論をした上で、外務省から候補国の提示をして頂き、それに対し、我々や他の方々の意見もインプットするというオープンな過程で行わなければならないと思います。後で説明はいくらでもできますけれども、事務局が出したものをそのまま採用というのは良くないと思います。

(荒木委員) 順序については、例えば、援助資金量の多い途上国上位10ヶ国、あるいは上位20ヶ国に分けて、上から貼り付けていったということでしょうか。

(古田経済協力局長) 必ずしも機械的ではありませんけれども、先程申し上げましたように、不十分かもしれませんが、スリランカも入れて現在ある16ヶ国の国別援助計画を見ながら、それ以外の国で戦略上の重要性や援助量を考えて選ばせて頂きました。

(荒木委員) 数を多く策定するかどうかという問題については、例えば、国別援助計画のモデルを作るためじっくり時間をかけて数ヶ国策定するということでいくのかということを考える必要があると思います。また、「ODA総合戦略会議」が、毎年予算がついている現実のODA執行を間違いなく、間違いがあればある程度早めに正していかなければならないということも考える必要があると思います。
 従って、大野委員のベトナムについては見直しということで、モデルケースとしてある程度時間をかけてもよいと思いますけれども、現実には執行機関、外務省等を含め、毎年予算を執行しなければなりません。現在の国別援助計画には問題があるのに、その問題を放置して現在計画に基づきODA予算を執行しています。従って、そこをどのように判断をするかの問題になります。我々の位置づけが問題なのです。「ODA総合戦略会議」が実際に、国別援助計画によって、実務の一歩上のODA対処方針についてまでどのようにアドバイスしていけるかということです。あるいは、モデルだけを作成し、後はそのモデルに従い、ある程度外務省や政府のメンバーで策定するということで投げるのかということだと思います。

(牟田委員) 今の議論では、国別援助計画策定候補国の選定基準がはっきりしないということが最大の問題であると思います。荒木委員もおっしゃったように、ODA予算の執行を考えれば、援助量の多い順から策定していき、その中で直近に策定された国についてははずしていくということが1つの非常に分りやすい基準であると思います。
 また、被援助国から見て、日本の援助がどの程度の大きさかということも、1つの大きな基準になるのではないかと思います。すなわち、国別援助計画を策定して援助したということになれば、日本の援助の結果についての評価が必ず返ってこなければなりません。その際、先程の絵所教授がおっしゃったようにスリランカは日本の援助の割合が非常に高いということであれば、日本の援助のやり方により、援助効果がマクロ指標等に比較的短期間に現れてくることが期待できます。
 しかし、金額は大きくても、インドのように日本の援助の占める割合は少ないということであれば、日本がいくら努力しても、評価として、どの程度マクロレベルで効果があったかということを実証することは非常に難しいということもあると思います。そうであれば、金額は小さいけれども、被援助国にとって日本の比重が大きい国ついては、政策的にもODAのインパクトが非常に大きな国であると思います。
 そのような、日本からのインプットは少ないかもしれないが、インパクトが大きな国をできるだけ早めに選び、計画を策定し、日本のODAの効果をマクロレベルで示していくことも考え方としては重要ではないかと思います。

(磯田委員) 援助金額が多い国について、これだけ投入しているのだから戦略がないのはまずいので策定したいという実務上の理由は理解致しますが、そもそも金額の多い少ないは、戦略があって決まるべきものだと思います。例えばなぜインドネシアに多額なのかという、もう1つ上の戦略の話が議論されずに、その国にはこのような援助計画ですということだけでは説得性に欠けるあると思います。国民の疑問はそういったもっと根本、上流部分での戦略の問い直しを求めていると思います。その意味で、グローバルな視点でのニーズや貧困問題、環境問題という視点から、再度、国の選定自体を見直す議論をした方が良いと私は思います。そのことにより、既存の金額の見直しが行われることは、当然本来はあるべきであると私は思います。

(大野委員) 来年からの策定候補国を選定につき、受入国のインパクトが大きいこと、つまり、現在の援助量は多いわけでないが戦略性を持つという基準を3つ出しましたけど、他にもあるかもしれません。

(渡辺議長代理) おっしゃるように他にもあるかもしれません。本日出た様々なご議論を斟酌した上で、次回に出したいと思います。

(草野委員) 定量的なものだけではなく、定性的なコメントも是非入れて頂きたい。

(渡辺議長代理) 勿論そのように致します。ただし、絶対に負けない理論武装は、このようなものにはあり得ませんので、どこかで折り合いをつけなければなりません。不満も残りますでしょうけれど、次回に決定したいと思います。

(大野委員) 事務局が持ち帰り、我々からのインプットを考慮して国リストを作るべきで、最初から国ありきではないと思います。
 また、スピードも速いのが良いか、ゆっくり策定していくのが良いか、ツートラックでいくかというような議論を1度行う必要があると思います。どの個別国が悪いというわけではありませんけれども、アジアを強調したい人もいるし、グローバルを強調したい人もいますので、候補国リストだけ出されて、受け入れるかどうか決定するのは難しいと思います。インドネシアやインドが悪いという国のレベルではなく、日本にとって戦略的に重要な国はどこか、それをどのような順番で選ぶのかという選定基準を議論していません。

(渡辺議長代理) 大野委員と私とだけで議論しても仕方ありません。他の委員のご意見も伺いたいと思います。

(浅沼委員) 大野委員の議論は、ここでの議論を新規策定候補国に限らず、見直しも含めてもう一度考え直そうという議論ですね。従って、策定済み計画のレビューという項目を入れた上で、大野委員のおっしゃった議論をするのが良いのではないかと思います。

(渡辺議長代理) 大野委員の議論では、新規策定国も見直し国も同列ということですが、その他意見ありませんか。

(荒木委員) 結局大野委員がおっしゃったように、何が国益なのかという大きなガイドラインがあり、それを下敷きとして考えていくのが基本であると思います。大綱の見直しで論点整理をしていますが、その中の議論をもう少し詰めてブレークダウンしていくと、結局ここにぶつかってくるだろうと思います。
 そうであれば、大綱見直しタスクフォースでは、草野委員が上を向いていますけれども、なかなか扱いにくくなりますので、大野委員ではありませんけれども、少し別の視点の会議を集中的にアドホックに作って頂くということは如何でしょうか。従って、合同でODA大綱見直しの論点整理を行い、また国益論について様々な意見が委員の中でもあると思います。それを論点整理して頂き突き合わせていくという作業を行わなければなりません。候補国をどのように選定するかというのは、例えばアジア地域全体の経済構想においてアジア重点を考えた場合は、その中のどこが重点国かということになってきます。

(渡辺議長代理) 草野委員のタスクフォースをもう少し拡大委員会にして頂き、今の議論と結びつけて議論して頂くことになれば、一貫性は保たれることにはなります。

(草野委員) 荒木委員がおっしゃったアドホックの委員会ではなく、恒常的に大綱見直しのタスクフォースを拡大するのでしょうか。

(渡辺議長代理) 恒常的ではなくても良いのではないでしょうか。メンバーを少し付加した方が良いかもしれませんが、今回の草野委員の仕事に付加的に行って頂くことも1つの提案であろうと思います。

(草野委員) 比較的速やかに議論をしても、30分や1時間程度では不十分ではないでしょうか。

(渡辺議長代理) それだけでは終わるとは思えません。

(大野委員) そのやり方はまあいいし、何か滲み出るものはあるかもしれませんが、どのような論点があるのか、アジアを重視するのか、グローバルなものに対してどのくらいの比重を置くのかという議論をしないで国選んでいくというのはどうでしょうか。

(宮原委員) 現在ODAは行政として、国として1つの方針の元に何年間も粛々と実施されています。まず、現在のODA哲学はこのようなこと、このような予算配分ということ等を事務局より具体的に我々に提示して頂き、それについてどこが問題かという議論した方が、実際的である気が致します。そうでなければ、様々なご意見がありますので、草野委員がおっしゃるように30分や1時間ではまとまらないという私の感想です。

(大野委員) この議論を正面からしなければ、この会議は何のために存在するのか良く分りません。

(宮原委員) そのようなことないと思います。行政当局から現在行っていることを具体的に提示して頂き、それについてどのような問題があるかということをもっと現実的に議論したら良いと思います。

(大野委員) 行政の行っていることにコメント程度で良いのでしょうか。

(伊藤委員) 確かにアジア重視は大きな流れであると私は思っていますし、あえて反対するわけではありませんが、先程申し上げましたように日本のODAの規模は世界第2位であり、日本はグローバルなプレーヤーであるということを確認しておく必要があると思います。そのような視点が欠き、アジアからのみ6ヶ国選ぶということはアジア偏重のメッセージ性が強すぎると思います。従って、私は大野委員の意見に賛成ですが、そのあたりをもう一度確認しても、それほど時間はかからないと私も思います。

(古田経済協力局長) 貴重なご意見頂き、再確認作業をすれば良いと思っています。ただし、現在提出させて頂いている候補国がアジアに特化しているということについては、既に策定されている16ヶ国を見ると、アジア8ヶ国、非アジア8ヶ国です。私どもは、既存の国別援助計画は行政的には存在していますが、見直しが必要な場合は根本からこの場でご議論して頂ければと思います。とにかく存在しているものは8対8ですが、存在してないところを眺めた時に、このように重点的に選ばせて頂き、結果的にアジアが多く出てきたということです。

(草野委員) 局長、あるいは宮原委員のご意見をサポートするわけではありませんが、地球規模、貧困、あるいはアジアと各委員がどこに力点を置くかということはそれぞれお考えがあると思いますが、どのような指標を設けたとしても、インド、インドネシアやモンゴルはおそらく皆入るのではないかと思います。
 従って、妥協策として、先行的に例えばインドネシアについて、アチェの問題もあるので始める、あるいはインドから始めるというように3つのうち1つから走り出し、理念については、タスクフォースで1月末に論点整理した結果を出しますので、それを踏まえて2月、3月とこの場でご議論頂きます。
 タスクフォースと重なる形でアドホックな委員会を作りますと、またその他の論点との関係が出てきますので、皆さん色々なお考えがあると思いますが、タスクフォースはタスクフォースで集中して議論させて頂き、皆さんとご一緒に議論するのは1月に論点を出してからにしたいと思います。

(渡辺議長代理) ありがとううございます。草野委員がおっしゃったように、草野委員会では国別援助計画の新規策定国、あるいは見直し国にもつながるような原理原則を作って頂き、それまで空にしては困るのでから、例えば、インドネシアやインドを立ち上げることになります。

(草野委員) どんな資料を得たとしてもインドネシアは入ってきます。

(青山委員) 先程から15ヶ国については既に国別援助計画があるということですが、この15ヶ国は、どのような順番で、なぜ、どのような基準で選ばれたかということがわかりません。今回提示された候補3ヶ国についての説明は良く理解しましたけれども、それまでの15ヶ国の選定理由がわからないのでご説明頂きたいと思います。
 なお、私は、対象国の選定には、大野委員、伊藤委員、牟田委員がおっしゃったように、グローバルな視点や、援助量以外の他の視点も取り上げた方が良いと思っています。

(渡辺議長代理) その説明は本日ではなく、次回にして頂くことにしましょう。その議論は来月でしょうか。草野委員会が新規と見直しの原則になるようなものを出す1月末まで待ちましょうか。
 次に、大野委員の対ベトナム国別援助計画の見直しについての作業過程をお話し頂き、さらに、第2回ODA評価東京ワークショップの概要について局長よりお話し頂く予定でしたが、時間的に不可能ですので次回に回させて頂きます。
 草野委員、次回12月20日にそれを出して貰うことは不可能ですね。

(草野委員) それまでにタスクフォースが2回ありますので、磯田委員や荒木委員がよろしければ、その方向で行いたいと思います。

(大野委員) 草野委員が行っている作業をインプットとして、我々がある意味でブレーンストーミングのようなことを次回行っては如何でしょうか。

(渡辺議長代理) 新規策定国と見直し国についての原則は、できれば次回12月20日に出して頂き、それについて議論をしたいと思います。その日に国の名前が出なければ、1月になっても仕方ないと思います。


(4)その他

(伊藤委員) 今臨時国会にJICAの独立行政法人化に関わる国際協力機構法案が提出されていますが、条文の中にNGO関係者にとって気になる部分があります。その1つは、第18条3項ですが、JICAが「国民等の協力活動を志望するものに委託して行う事業として適当なものを認める場合には、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない」とあります。これには、NGOによる1000万円未満の草の根技術協力事業への参加が含まれます。
 実際NGOは、自発的に提案する事業に対してJICAより委託の形で支援を受けるのですが、こうした小規模な事業まで、外務省以外の他省庁の協議を必要とするプロセスは如何なものかと思います。現在、ODAは効率性と効果性を求めています。それなのに、このように関係省庁がいちいち協議をするということは、それだけ時間がかかり、審査する担当官も必要となり、効率が下がりますし、また、長い時間をかけるのなら、NGOの機動性とか柔軟性を失わせる結果にもなりません。さらに、NGO活動が国家管理体制の中にがっちり組み込まれていくことも意味します。このような問題意識を持ちましたので、委員の皆さんと共有したいと思った次第です。

(古田経済協力局長) 今の点については、国会でも同じような議論があります。JICAとはどのような組織かということを前提とし、かつ、JICAに100%国のお金を出していることを踏まえつつ、従来のシステムから今度のシステムへの変更にあたって、私どもとしてはよりJICAの自由度を増すようにしていきたいと思います。法律の条文は、規制強化ではなく、むしろ現在の運用をある意味で緩める方向で書いたつもりです。ただし、運用のやり方如何によって、ご心配あることは承知していますので、運用面ではむしろこれを緩めようという精神に則って対応していきたいと思っていますので、是非ご理解を頂きたいと思っています。

(渡辺議長代理) 大変重要なテーマであると思います。予定された議題が全てクリアできませんでしたけれども、本日はひとまずここで終わりにしましょう。

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