1.日時 平成18年6月22日(木) 9:34~12:14 2.場所 外務省南庁舎8階 国際会議室 893号室 3 議事進行 (1)開会 (2)対ラオス国別援助計画 (原洋之介主査 (タイ・メーファルアン大学特任教授) による最終報告) (3)対ウズベキスタン・カザフスタン国別援助計画 (石井明主査 (東京大学院教授) による最終報告) (4)対ガーナ国別援助計画 (大野泉主査 (政策研究院大学教授)による最終報告) (5)ODA改革 (6)閉会 |
(渡辺議長代理) | 皆さん、おはようございます。ご無沙汰しております。ちょっと遅れている委員がおありのようですけれども、お約束の時間も過ぎておりますので、まずはスタートしたいと思います。 今回のODA総合戦略会議、全く早いものだと思いますが、第26回になりました。この総合戦略会議委員としての委嘱期間はことしの6月26日までということになっております。したがいまして、きょうが委嘱期間内の最後の戦略会議ということでございます。掉尾を飾るにふさわしい会議にしたいと思いますので、よろしくご協力のほどをお願いいたします。 ところで、きょうの議題でございますが、二つです。一つが懸案の国別援助計画についてであります。もう一つが、ご承知のODA改革についてのご説明をいただき、議論するということです。国別の援助計画につきましては三つございます。第1が原洋之介先生にお願いしております対ラオス国別援助計画、それから石井明先生にお願いしております対ウズベキスタンとカザフスタンの国別援助計画、それから三つ目が大野泉先生にお願いしてあります対ガーナの計画、この三つをまずお話しいただき、それから先ほど申し上げたODA改革に入ってまいろうと思います。 きょうは大変幸いなことに金田勝年副大臣にご出席いただいております。ご挨拶をいただきます。金田副大臣はご公務のためにこのご挨拶を終わられた後にご退席ということになっております。 |
(金田副大臣) | おはようございます。ただいまご紹介いただきました外務副大臣の金田勝年です。本来でありますと、麻生大臣も出席を申し上げまして、ご挨拶を申し上げるところでありますけれども、あいにくと、きょうは衆議院のイラク支援特別委員会での閉会中審議というのが今朝から急遽入りました。そこで、私のほうから皆様にご挨拶を申し上げるようにということで仰せつかってまいりました。大臣からは「国会での審議のために出席できませんで、大変申しわけありません。残念であります。委員の皆様の長年のご貢献に対しまして深く感謝を申し上げます。今後も外務省に対しまして、ぜひご指導、ご鞭撻のほどをお願いを申し上げます」というメッセージを仰せつかってまいりました。 そこで、私のほうからでございますが、申し上げるまでもなく、ODAの総合戦略会議におきましては、現在まで26回開催されまして、ODA大綱の見直し、そして新しいODA、中期政策の策定、国別援助計画の策定といった数々の重要な成果を挙げられてこられたわけであります。特に国際社会の平和と発展に貢献をし、これを通じまして、わが国の安全と繁栄の確保に資する、つまり世界の人々のためになりまして、真に日本の国民のためにもなる、効果的で、戦略的なODAというものを実施していくというODA大綱の考え方は、最近におきまして、官邸に設置されました海外経済協力会議における議論、あるいはこの夏に発足いたします外務省の国際協力局における企画立案においても、基本原則であり続けているわけであります。皆様の議論の積み重ねの上に新しい仕組みができる、こういうことになったわけであります。これからの課題は、一層戦略的、効果的なODAを展開していくことであります。そのためにもODAの予算、あるいは実施体制というものをしっかり確保していかなければならない、このように考えている次第であります。 ODAの総合戦略会議が設置された大きな目的というものは、政府とは違う視点で幅広い国民各層の知見を動員することであったわけであります。本年2月に発表されました「海外経済協力に関する検討会」の報告書におきましても、ODA総合戦略会議を評価した上で、まさに国民の声を反映させるという観点から一層の充実が提言されているわけであります。こうした提言などを踏まえて、これから新しい仕組みをどのようにつくっていくのか、じっくり検討をさせてもらいたい、このように思いますので、ご理解のほどをお願いいたす次第であります。 外務副大臣として、これまで4年間にわたる委員の皆様方の献身的な努力、そしてODA総合戦略会議としてまとめていただきました成果に対しまして、改めて深甚なる敬意を表しますとともに、厚くお礼を申し上げる次第であります。心からお礼を申し上げまして、私の挨拶にさせていただきます。どうもありがとうございました。 |
(渡辺議長代理) | 金田副大臣、激励いただきましてありがとうございました。 引き続いてでございますが、伊藤信太郎政務官に出席していただいております。ご挨拶をいただきたいと思いますが、お願いいたします。 |
(伊藤大臣政務官) | 渡辺議長代理、ありがとうございます。伊藤信太郎でございます。 きょうもこれから活発な議論をいただきたいと思うわけですけれども、政府外の方々のご意見、視点を援助に生かすという、このODA総合戦略会議の視点は大変日本にとって重要だと考えているところでございます。ご案内のとおり、ODA改革というものが一段落して、ODAをよりよい形で企画立案を実施する器というものができたわけでございます。この一連の改革の成果はまさにここにご参加の委員の先生方のご努力、またこのODA総合戦略会議の議論の積み重ねというものが大変役に立ったということで、そのことに関しても深く御礼を申し上げたいわけでございます。 ここのところの状態とも考えあわせて御礼、ご報告を申し上げたいんですけれども、今後の課題は、このすばらしい考えをいかに具体的な内容に沿ってといいますか、具体的な内容に落とし込んでいくかということが喫緊の課題であろうかと思います。それから最近、私も参加しているんですけれども、なかなかつらい会議がありまして、いわゆる歳出改革の会議、この議論の中で、参加の諸先生の中からこのODAについても厳しい意見というものが少なくなく出ているわけでございます。この一つの理由に、外務省の戦略性の不足、あるいは説明責任といいますか、説明不足というものもあるかと思いますけれども、いずれにしても、平和的手段による国際貢献のみで国益を実現しているというスタンスを取るわが国にとって、このODAというのは最も重要な外交手段の一つであり、ある意味ではバイタルラインといいますか、大変重要なわけでございますが、決して無駄遣いではないわけでございますけれども、このODAを通じて国際社会の信頼をかち得ることこそ、現在と将来の日本、そしてまた、われわれ日本人が有利な環境で国際社会の中で生き延びていくための必要、必須なことであるという認識のもとに、この日本のこれからの経済的な繁栄の土台をつくっているということだろうと思います。そういうことをこれからも引き続き国民の皆様に多く、また深く理解していただくことが非常に重要だと考えております。 そういう観点からも、この戦略会議の委員として本当に深甚に、深くご活躍された皆様におきましては、ODAの重要性について、それぞれのお立場でいろいろと発信していただくことが非常に重要であるし、ぜひそうお願いしたいと思います。こうして築かれたODAネットワークをぜひ維持していただきたいと思いますし、これからも引き続き、外務省に対して、外務省はいろいろ至らない点もあると思いますので、そういう点も含めてご指導、ご鞭撻、ご指摘を賜れば幸いでございます。 さて、このODA総合戦略会議も、今回で一応の区切りを迎えまして、近い将来、新たな形で再スタートを切るということになると存じます。渡辺議長代理を初め、委員の先生方におかれましては、長年、委員としてご活躍していただきまして、またさまざまな形での外務省に対するご指導、ご鞭撻、ご叱責、本当にありがとうございます。改めて御礼を申し上げて、ご挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。 |
(渡辺議長代理) | 伊藤政務官、どうもありがとうございました。お二方からご丁重な挨拶をいただきました。 それでは、早速、アジェンダに従って議論を進めてまいります。 まず、国別援助計画についての議論でございます。対ラオス国別援助計画について、原洋之介先生のほうから最終報告をしていただきます。資料はすでにお手元に届いていると思いますが、これだけの膨大な、内容の濃い報告書を、10分で報告をお願いするというのもまことに酷な話でございますが、ポイントをまとめていただければありがたいと思います。よろしくお願いします。 |
(原主査) | 原でございます。それでは、いま渡辺議長代理からありましたように、10分でラオスの報告をします。 ラオスというのは、ASEANの中では一番小さい国でして、人口も、去年の戦略会議の中で向こうの副首相にお会いしまして、いろいろ議論をしていたら、人口はよくわからないけれども、 550万ぐらいだろうと言っていましたので、多分 550万ぐらいの国で、国土面積がちょうど日本の本土ぐらいあります。そういう小さい国ですから、10分で何とか終わらせたいというふうに思っています。 かつ、皆さん、もうご存じだと思うんですけれども、きょうの話にもちょっと関係してくるんですが、また乱暴なことを言ってしまうんですが、メコン川の流域、ちょうど中流域に位置する国で、海がない国です。こんなことを言うと、渡辺先生に叱られそうなんですが、渡辺先生のご出身の県がどこか知っていてこういうことを突然言い出すんですが、渡辺先生のご出身の県の隣に長野県という県があるんですが、長野県というのは、大きな川の上流部と中流部にある山がちの地域でして、場所、場所に応じて、たとえばいまの日本でも高原野菜をやっているところとか、いろいろあって、一つの県の中で非常に特徴のある地域が併存している県になっています。ところが、信濃川の下流を見ますと、これが新潟県になりまして、私たち、学生時代に習ったんですが、日本で唯一の、たとえばお米の単作の千町歩地主なんていうのができたのは、実は簡単に言うと、新潟県の蒲原平野とか、あの辺の平野になります。つまり、ちょうど下流部がカンボジアであり、南ベトナムなんですね。メコンの場合は上流は今度、雲南省にいってしまいますので、中流部にある山岳地帯のような国で、かつ、報告書にも書いていますけれども、一番、メコンの流域には、いわゆるラオと言われる水の好きな、水田農耕をやるラオ人がいる。山の傾斜の中腹とか、ほとんど少数民族と言われるグループでして、焼き畑農耕をやる、あるいは繭をやる。そういう形で多様な地域が同時に併存をしている。そんな国の開発をどうするかというのがわれわれのテーマであったわけです。 そういう中で、一番最後のほうを開いていただきますと、2ページ目に絵があります。「対ラオス国別援助計画」、これが1枚のポンチ絵のようなものなんですが、ここに今度の報告書の基本的なスタンスが大体書き込まれているというふうに思っております。 左側に、なぜ日本はラオスを援助しなければいけないかと、援助の意義のようなことが書いてあります。それはいま言いましたように、幾つかの問題があるんですが、インドシナ半島の真ん中にありまして、中国との関係もある、非常に重要な地域である。それから、現在、日本・ASEAN包括的な経済連携とか、いろんな議論が進んでいる中で、やはりラオスというのはちょうどヘソのようなところにありまして、その辺の重要性がある。一方、いま言ったように、さまざまな開発上の困難も抱えているわけです。 それからもう一つ重要なことは、伝統的な友好関係の進化。これもODAをやっていくときには非常に重要な視点だと思います。ここにも幾つか書いていますけれども、もう50周年になりますし、それからラオスにベトナム戦争の真っ最中にダムをつくるという工事を日本がやっていまして、そういったことの影響もありまして、日本に対する期待とか、いろんなものが強い国であるということがあります。 そういう背景なんですが、今度、開発課題というのが下に三つ出てきます。これも本文の中の幾つかのところに書いてありますので、後で見ていただきたいんですが、ここが開発を考えるポイント、一つの大きなバックグラウンドになるんですが、私たちの今度のラオス部会では三つのコンセプトに分けました。レベルがいろいろ違う問題なんですけれども、一つは、そういう意味で少数民族がいっぱいいて、学校教育もままならない。かなりラオ語が通じていますが、実はほとんどある年以上の方はラオ語というよりは、それぞれの言葉、カム語とか、いろんな言葉を使っておりまして、そういう部分。それから保健衛生とか、小学校教育とかといった問題も幾つかありますので、これも本文の中に出てきますが、ノーベル賞を取りましたアモリティア・セン氏が言ったようなコンセプトを少し使いまして、ヒューマン・ディベロプメント、人間開発というような言葉でまとめてみました。通常で言われていれば、ベーシック・ヒューマンニーズとか、あるいは絶対的貧困への対応といったところがこの中に入っているわけです。 二つ目が、やや狭い意味で、GDPを上げていくような民間系の経済活動云々というものをやっていくような経済開発上の課題がある。ここでは幾つかの問題があるわけですけれども、まだ市場経済以降の段階ですから、ベトナムに比べますと、公共企業の比率が低いんですけれども、幾つかの部分で残っている。あるいはラウンド・ロックト・カントリーで、小さい国ですから、実は日系企業が、インフラもありまして、まだほとんど投資が行われていないというような問題があります。そういったことをどういうふうにやるのかというような戦略の問題が2番目。 3番目が、その両方を含めまして、やはり特に政府セクターの開発上の課題、キャパシティビルディングのようなことなんですけれども、そういったことが重要である。それから、まだまだ財政の問題あるし、いろんな問題があるんですが、特に主要経済で伝わる近代的といいますか、近代的というのはちょっと変な言い方ですが、これから開発にとって必要な経済法の整備とかということも、まだ非常に未成熟なことがありますので、こういったこともやらなければいけないだろうということになっています。簡単に言いますと、ないない尽くしのようになってきて、何でもやらなければいけないということにならざるを得ないわけです。 そういう文脈の中で、この三つの援助目標と六つの重点分野というのを中でアイデンティファイしました。三つの目標が、まさにいま左側で言いました人間開発とか、貧困削減、経済開発のところが経済成長というキーワードになっていて、3番目が能力開発というふうになっています。その中で、いま、ないない尽くしのようなので、何でもかんでもやらなければいけないわけですが、何でもできるわけないのでということで、六つの重点分野をここでそれぞれ、貧困削減については3項目、経済成長については2項目、3については1項目というふうに分けて、六つの重点分野を書き上げるということにしました。 時間の関係で、1カ所だけ見ていただきたいのが17ページのところなんです。すみません。ちょっと行き過ぎましたが、その中でアプローチというのが輪の外にぐるっとお月様のように五つありますが、このアプローチ1、2、3、4、5とあるわけですが、これがそういう六つの重点分野で協力をしていくときに、いわばわが国としてはどういうことを心にとめて、原則とすべきかといったようなことで、第1番目はラオス側のオーナーシップをなるべく強化させるようにするようなことをやるとか、あるいはよりニーズに合致した援助をやるとか、ラオス社会の多様性、先ほど言った内陸国であって、少数民族がいて、まだ国内のマーケットもインフラの問題もあり、金融システムの問題、社会主義ですから商人の経済活動を押さえ込んでいた部分もありまして、商品流通経路、つまり経済学の用語で言うと、商品の市場がまだ国内的に一つの地域にインテグレートされておらずに、かえってメコン川流域だと、タイとも直交している、ベトナムとの国境ではベトナムと直交している。特に北は完全に雲南省と一つのマーケットになってしまっているという、分断された経済の中を国民経済としてどうつないでいくか、そういった問題なんです。それから4は、援助がいっぱいいろんな国から入っていまして、援助協調。ドナー側のコーディネーション。それから全体としては、いまADB等も入りまして、グレーター・メコン・サブリージョン・ディベロプメント・プログラムといったことがありまして、こういうところとの整合性を、原則を、枠組みを見ながらやっていこうということなんです。 その中で、先ほど言いました17ページのところで、こういう形でいわゆる人間開発みたいな部分で、保健医療とか、小学校の問題とか云々プラス、たとえば経済開発のところでは、ある程度、サバナケットとか、ビエンチャン周辺の経済インフラというようなものとか、いろんなことをやらなければいけないということになってきますので、全体の援助の中の整合性の中で、援助自身における時間軸というものをちゃんと意識してやらなければいけないだろうということなんです。つまり非常に端的にといいますか、たとえばあるところにインフラを投ずれば、多分、私たちが考えて、すでにそういう動きが出始めているわけですけれども、タイにいる日系企業が部品工場をつくる。こういった動きが出始めています。しかし、そういうのに協力をすることが必要なんですが、これはわりあいにインフラ整備がそう時間をおかずに、タイムラグをおかずに、ある種の目に見える効果が出てくるかもしれない。一方、貧困開発のようなことで、いわば無限に時間のかかるような問題ですから、そういった一個一個の援助の重点が効果を持ってくる時間軸がありますので、そういったところを考えながら、バランスを取りながらやっていくということではないかということを書いておきました。 これは実は、いろいろ議論がわれわれの中で、東京サイド、それから現地サイドとやるときに、簡単に言うと、経済成長が先なのか、貧困削減が先なのかといったようなディコトミーの議論が少し出てきたわけですけれども、これはラオスの援助を考えるときに、常に話題になり続けている、続けてきた問題でして、そういったことを現在の21世紀頭で、間違いなくラオスも、準備不足とは言え、WTO加盟も申請をしたいと言っていたり、いろんなことを言っておりますので、そういった非常にグローバルな経済統合と、まだ分断された地域、貧困地域を抱えたようなところをにらみながらやっていくためには、こういう時間軸の考慮ということが必要なんじゃないかということを少し書きました。 これで時間切れになりそうなので、基本的にはこれでもうやめますが、一番最後に、下に対ラオス国別援助の基本方針ということで、繰り返しのことが書いてあります。 そういうことでございまして、最後に、この元のドラフトペーパーをもちまして、3月に外務省の方と一緒にラオスを訪ねまして、われわれに協力してくれましたラオス側の何人か、重要人物ともやってきました。当時、細かい人数は言いませんが、メインは2人に会いまして、1人は当時の外務大臣にお会いをしました。これは援助窓口になっております。それからもう一つも、やはり日系企業の投資とかということで、副首相兼外務大臣、それからもう一人も副首相兼計画投資委員会の委員長というお2人に会いまして、骨子を説明し、少し時間をかけて議論をしたところ、基本的なところは非常にありがたいと。ありがたいという言葉を使われたかどうか忘れましたが、そういう議論をしてきたということで、ラオス側にもインフォームしまして議論をしたということだけ最後にフットノートでつけさせていただきます。 ぴったり10分になったと思いますので、やめます。 |
(渡辺議長代理) | 大変コンパクトにわかりやすくまとめていただいて、ポイントがよく理解できました。 さて、委員の先生方、どうでしょうか。ご意見をご自由にお述べくださいますよう。 |
(青山委員) | たいへん興味深いご報告ありがとうございました。細かい分析がなされたうえに、非常に適切な方向性が出された、すばらしい国別援助計画だと思います。少し細かい点のコメントをさせていただきます。17ページに、維持管理費は自助努力でという内容のことが書かれています。本当におっしゃるとおりだと思いますが、LDCの場合、維持管理費を全部自助努力とするのは、正直なところ難しいのではないかと思われます。次のページに、ノンプロの見返り資金を使うというようなことも書かれていますが、フェードアウトの戦略を考えながらも、当面の維持管理費をなんとかしないと、実際には機能しないのではないかと思っております。それから、細かい点で恐縮ですが、5ページの乳児死亡率、妊産婦死亡率などの指標の単位は、人口あたりではなく、出生1,000対、出生10万対が、正しいと思います。 保健医療に関しては、13ページに書かれていて、この方針にまったく異論はございません。最後のMDGsのところで、HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病に母子保健の視点を重視して取り組むとありました。これにはまったく同感なのですが、東南アジアでは、SARSや鳥インフルエンザのような新しい感染症が拡がることもあり得ますので、「感染症対策」という言葉も加えておくとよいのではないかと思います。それから、文章の表現として、「従来からの医療従事者の・・」が少しわかりにくいので、「従来からの」は削除した方がよいと思います。最後に、私の主観かもしれませんが、2ページに、「経験な仏教徒」「温厚な国民性」という表現がありますが、これは価値判断が入ってしまうので、公的文書にはあまり適当ではないのではないかと思いました。以上でございます。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。その他ございましょうか。 |
(浅沼委員) | 最初に原先生がラオスと長野県を比較されたんですけれども、私も、ラオスというのは将来どういうふうな形で経済発展していくんだろうというビジョンを考えるときに、どんな形なんだろうと思って、類似した場所というのを考えましたら、多分、(マレーシアの)サバ州とか、サラワク州のような形が適切なんじゃないかといいますか、一番モデルとして適当なんじゃないかというふうに思いつきました。そういう意味で、ここで非常に強調されている「チャレンジ・フォー・インテグレーション」という言葉が使われていますけれども、近隣経済との、地域経済とのインテグレーションというのは一番大きな核になる。近隣経済に引っ張られた形で、どんどんと発展していかざるを得ないような国であろうというふうに考えています。そのビジョン、それかインテグレーションという点を強調されたことには大賛成です。その関連で二つばかり。 第1は、この中で、インテグレーションを中心にして、インフラも相当強調されているわけです。そして、南北回廊というのがメコン川を中心に存在するわけですから、東西回廊を支援するんだということをもう少し明確に強く出されてはいかがだろうという点が第1。さらに第2に、やはり近隣経済との融合で、まだメコン川というのは利用可能であって、やはりバーツ圏に対する電力供給というのは相当大きな要素になると思いますので、その辺へのサポートも、これはどういう形であるかは、当然、民間が入ってきますから、わからないわけですけれども、もう少し強く打ち出されてはいかがだろうというのが第1点です。 それから第2点が、ラオスに関してはここで政策対話をなさっているわけですよね。政策対話を相当密度濃くやっているということにかんがみて、この中でこれをセクター別にするか、もっと一般的なものにするかは別にして、財政支援の形でのODA供給というのを、少なくとも方向性としてもう少し強く押し出されてはどうだろうと。この際、もうルビコンを渡ってやるんだというふうにここで言ってしまったらどうだろうなというふうに感じます。 その2点です。 |
(渡辺議長代理) | 質問がございましょうか。磯田さん、どうぞ。 |
(磯田委員) | ラオスについては、経済成長という意味で非常に厳しい国だと思います。私もしばらく住んでいる中で、やはり内陸国である悲哀というんでしょうか、要するに何かを出荷しよう、輸出しようとしても、空輸か、ほかの国を通る、そういう状況の中で、利益が結局自分の国に落ちない、そういう悩みがあります。その点で、16ページの「行政能力の向上及び制度構築」を私は基盤となる非常に重要な点だと思っています。しかしラオスが、ほかの国と同じような発展形態をとるとか、市場経済型の競争的な地域経済の中にラオスが優位な地位を得るような方向を模索することは、正直言って非常に難しいと思います。私は、一番守るべきは、彼らの持っている資源、これを高値で売るということなしにはほとんど対抗できないと考えます。自分たちの強みなり、資源を生かすことが肝要。先ほど浅沼先生はサラワクとおっしゃったけれども、ああいうぼろぼろに資源を取られていく形ではなくて、たとえば彩事業という徳島県のがありますよね。たとえばああいう感じの指向性を考えない限り、恐らくラオスは生き残れないという印象を持っています。地域特性を生かしたものをラオス行政官がきちっと取り上げていくと。他の例を見習っていては絶対負けるという印象を私は持ちますので、そういった点を配慮した書きぶりがあればと思いました。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。ずいぶんいろんな意見が出ておりますけれども、原先生ご自身、そういうふうに強くお考えだと思うんですが、メコン流域を通じて、中国の影響力が強く及んできている。北部は雲南省経済に組み込まれたというような話が先ほどありましたけれども、私も大体そんなように見ているんですが、中国の影響力にどうこうするかというふうな問題意識をどこかに書き入れる必要があるんだろうと思いますが。ここはちょっと重要なポイントになりそうな感じがするんです。 ずいぶんたくさんのコメントが出ました。そのすべてに答えていただく時間はないんですけれども、特定の問題に限ってでも結構ですので。 |
(原主査) | 一番最初に渡辺先生の言われた点なんですが、個人的にはいっぱい書きたいことがあるんです。ただ、この中でどう書くかは、われわれとしては内々にいろいろ議論したんですけれども、ちょっと考えさせていただくということで、確かに実態は私たちのこの援助計画の前に5年ほどやりました施策支援の中では本当にしょっちゅう議論していまして、簡単に言えば、北は完全な元経済圏でして、これも議事録はどうなるか知りませんが、われわれが困っていたのは、要するにラオスのある部分が不在地主になっている。つまり中国の方が来て、勝手にというわけではないんですが、プランテーションみたいなものをつくりまして、働いているのはみんな中国人、できたものをみんな雲南省に持っていく。地代がちょっと入ってくるらしいとか、こういうこともあります。したがいまして、その辺をどういうふうに書くのかはちょっとよくわからないんですが、実態としてはそうなっているわけです。ですから、渡辺先生のは後で座長にもご相談してということで、個人的にはあるんですけれども、われわれとしてはその点に踏み込むかどうかは、余り深刻には、実態はみんな認識していたんですが、どういうふうに書くかは余り真剣に議論しなかったということが正直なところです。 残りの点、幾つか。また順不同なんですけれども、一つは、それにちょっと引っ掛かる点なんですが、南北回廊か、東西回廊か、これも実は南北回廊というのは中国の問題なんです。ですから、東西回廊というのもいいんですが、このあたりをどこまで、そこまで強く書けるかなというのも、いろんな議論をして、これはちょっともう一回事務局で考えさせていただきますが、やっぱり南北を余り言いますと、こういうことが実は起こっているんですよ。ラオスには輸出統計がないんです。これはカンボジアもありません。経済統計が大問題なんです。われわれは別の研究で何をやったかというと、タイの輸入統計からラオスから入ってくるものを全部拾い上げたんですよ。それを全部ラオス側に提示しましてやったら、こんなものはラオスではつくっていないと。あたりまえですよ。みんな中国でつくったものが通過していって、タイ、こういうことになっています。したがいまして、そういう文脈の中で東西回廊と南北の問題をどう考えるかというのは、ちょっとここの中では余り書き切れていないことは、正直言いますと、ちょっと判断がむずかしい問題があるということなんです。 それからメコンの水の利用とか、タイの電力の問題というのは、ここにもチラッと、積極的には書いていませんが、ナム・トゥン2のダムの話がちょっと出ているはずですが、これが次の外貨の問題云々とちょっと絡んでいるような問題がどこかに書いてあったと思っているわけです。 それからもう一個。あっちいったりこっちいったりですみません。ラオスの特性を生かした開発というのも、それで私は長野県と言ったんです。なぜかといいますと、この中には一村一品という言葉が出てくるんです。タイは村をウォートップと言いまして、たんぼと言うんですが、ラオスの今度外務大臣になったんですが、トゥンルンという副首相とずっと議論していまして、結局、ラオスの場合は地域が小さいので、ワンアンプー、つまりディスリクだと言いまして、一郡一品運動みたいなことを言っているんですけれども、これは実はカンボジアも言っていまして、そういう非常にグローバリズムでバーッと世界に売れるものができればいいんですけれども、できないときに、そこだけだと、地域格差が開くとか、そういうときに、いろんな地域の個性を生かしたものをどうやってつくって、少しローカルマーケット、及びタイのマーケット、できたらグローバルマーケットを続けるかというときに、タイのタクシン政権が強く言ったことも影響が及んでいまして、ベトナムにも及んでいますが、一村一品型の地域開発なんですね。そういうことをラオスの場合には少しやったらどうかというようなことを議論していましたので、この文章の中に一村一品という形で入っているのは、そういう文脈とご理解いただければと思います。 それから一番最初の維持管理とか、これは17ページで具体的にご指摘があったんですが、これも実は確かに自立はむずかしいんです。ここの文章が英語になった場合にラオス側がどう受けとめるかということもちょっと気になるんですけれども、これはやや強調しておきたいんです。実はラオスの国というのには減価償却という言葉がラオ語にないんです。タイ語にもないんですよ。タイ語はやっとできましたけれども、実はそういう意味で、ベトナムの場合にも減価償却とか、維持費という、つくったものを、国立大学の、いまは国立大学ではなくなりましたが。東大の建物というのは、国の財産というのは一切減価償却に計上していませんよね。同じことが起こっているんです。ですから、たとえば経済統計も、投資率とかというのが過大評価になっている。僕と石川先生でベトナムのときに向こうの書記長とずいぶん大喧嘩したんですけれども、そういう文脈もありまして、維持管理はちゃんと考えろというような文脈の意味もあるんです、ここでは。ですから、もちろん実態問題として援助したものの維持管理費を全部向こうに任すというのは非常にむずかしいでしょうし、それから向こうは、ラオスのような国は、まだいわば市場経済に対する感覚がパーティのリーダーたちにどのくらいあるのか、やや疑問です。したがいまして、そういう文脈もあって、こういうことを強調しておきたかったということです。 これでやめますが、あとは母子保健とか、感染、それから従来からのと、ちょっとご指摘をいただいた小さい点は文章上再考させていただきます。 |
(渡辺議長代理) | 浅沼先生のほうから、財政支援を思い切ってやったらというご意見があったと思うんですが。 |
(原主査) | 重要問題なんです。これはまだ僕個人も時期が早いかなと。ODAのメンバーでは砂川さんや、草野先生がいらっしゃるんですが、ちょっと時期尚早じゃないかというのが私の感覚でございます。というのは、端的に言いますが、財政赤字が大問題になっておりまして、非常にむずかしいかなと。 |
(砂川委員) | いまの点と関連しているのですが、ラオスはご説明があったような非常に特色のある、ユニークな国だと思います。今回、私どもは援助計画を立てているわけですが、どういう援助形態で支援しているのというところを考えてみたいと思います。というのは、ラオスには円借款がほとんど出ていないということです。これはラオスの債務状態が大きな障害になっているわけですけれども、現実にはこの債務国ラオスで電力輸出という観点でプロジェクトファイナンスが多く起こっているわけですね。この分野に世銀とか、ADBなんかは、プロジェクトファイナンスへの政府出資分に対する融資を行っているが日本の円借款は参加できないでいる。ラオスの民間セクター、いわゆる輸出セクターを促進するために、こういう財政資金の負担すべき分野には円借款の弾力的な運営が図られる必要とあると思います。 |
(渡辺議長代理) | ちょっと大きなテーマなんですけれども、浅沼先生、反論ありますか。特にいいですか。余り述べてもらっても時間が足りなくて困るんですが。 |
(浅沼委員) | いまの話ですか。 |
(渡辺議長代理) | 財政支援についてですね。 |
(浅沼委員) | 私はOOFなんかも十分に利用して、いま砂川さんがおっしゃったような問題には対処していくし、どこかに少しずつ完全にプライベートセクターができないところが出てくるわけですよね。そういうところにも多少お金を出すようにというふうにまず考えます。 それで、財政支援なんですけれども、なぜ財政支援かというと、まず第一に日本は主要ドナーとしてマクロを見ているわけですよね。その上にこの国の形を見てみると、山岳民族にあるポバティのポケットなんかもありますけれども、小さい国で、かつそういうふうに政府の財政出動によってテイクケアしなければいけない課題が多くある。それをセクター別にしてもいいし、一般的にしてもいいんですけれども、やはり小規模のプロジェクト型ではなくて、やはり財政支援という形で、その辺の手当をしていく必要があるだろうと、そういうふうに考えるわけです。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 |
(原主査) | 最後の一点だけ。 |
(渡辺議長代理) | どうぞ。 |
(原主査) | 浅沼先生がいい提案を。ちょっとこれは個人的で、この委員会というよりあれなんですけれども、実はもう一個問題がありまして、ラオスも被供与国のくせにと言ったら怒られるんですが、大蔵大臣と話したから僕はそう言ってやったんですが、中央財政の県への移譲をやっているんです。中央の国の財政が、県ごとの財政との間で非常に妙な問題が起こっていまして、簡単に言うと大蔵省が困っているんです。そのあたりの財政の地方分権化の行方と、各地域の財政がどうなるかというようなことを見ておかないと、中央政府にポンと財政支援しても、何が起こるかというのがちょっとわかりにくい構造になっているというようなこともあるので、ちょっと私が変なことを言ったので、すみません。これだけです。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。まだまだ議論がおありに違いありませんけれども、いかがでございましょうか。最終回でもございますので、きょうの原洋之介先生の対ラオス国別援助計画、これを総合戦略会議としてお認めいただきたいということでございます。 もちろん、修文等いろいろしていただくわけですが、これをさらにこの会議にかけるという時間的余裕はございませんので、この点は、議長代理、事務局等にお任せいただくという留保つきで、この案を我々の最終案としてお認めいただくということでよろしゅうございましょうかね。 ご異論がなければ、そのようにさせていただきたいと思います。 原洋之介先生、長い時間、苦労を随分おかけしました。見事な報告書ができました。本当に長い間ご尽力ありがとうございました。 きょうはさらにウズベキスタンとか、カザフスタン、ガーナ、次々と議論をこなしていかなきゃなりませんので、先に進ませていただきます。 それでは、石井先生のほうから、ウズベキスタンとカザフスタン、これは2つを一つのプロジェクトとしてお願いしてあるわけです。10分で話すというのはいよいよ大変なことでありますけれども、ポイントを絞ってお話しいただければありがたいと思います。 |
(石井主査) | 石井でございます。我々タスクフォースはこの2カ国の援助計画作成の課題を与えられたわけですけれども、その意味は中央アジアを地域として捉える、その上でこの両国に対する援助計画を策定せよという、そういう御趣言があったかと思います。 それで、お手元にウズベク・カザフ両国の援助計画の最終案が行っていると思うのですが、それぞれ冒頭に、「中央アジアに対する基本認識」という部分が載っております。これは全く同文でございます。この地域に対する基本認識をここで示しているわけです。これは中間報告のときも申し上げて繰り返しになるのですが、この地域の平和と安定が我が国をはじめユーラシア大陸全体、ひいては国際社会の安定と繁栄にとって極めて重要であるという認識を示しております。そのうえで、この地域では様々な課題を抱えているとして、テロとか麻薬とか列挙して、個別の取組みでは解決困難な地域共通の課題を抱えているにもかかわらず、地域協力が限定的なものにとどまっているという現状を指摘し、一昨年の川口前大臣の中央アジア訪問、「中央アジア+日本」対話の立ち上げを記して、この部分を終わっているわけです。 実はこの、両国に対する最終案は、今年の1月にタスクフォースでつくり上げまして、2月に各省庁のご意向を伺って、両国の日本大使館のご意向も伺って3月のこの会議にかけていただくことを考えていたのですが、今日となりました。その結果として6月5日、ごく最近の「中央アジア+日本」対話の第2回がもう終わってしまっているという状況です。6月1日には、麻生大臣が日本記者クラブで「中央アジアを平和と安定の回廊にせよ」というすばらしいスピーチをなさっておりますし、さらに5日の「中央アジア+日本」対話第2回という事柄が続いておりますので、このままではこの案を外に出せないという感じがしております。その点、どうしたらよろしいか委員の先生方のお知恵を拝借したいと思っております。 個人的には、この後も何度も繰り返し川口大臣の中央アジア訪問のことは言及しておりまして、ちょっと文章を変えなければいけないかなという印象を持っております。 その後、2カ国それぞれに対する援助計画に入るのですが、この会議で委員の先生方から、両国の違い、国情の違いに十分留意して計画を作成するようにという助言をいただいております。タスクフォースとしましても、その点に留意して作業を進めてまいりました。両国を比べますと、人口はウズベクのほうがはるかに多いのですが、農業中心の産業構造でして、石油で経済発展を遂げているカザフに比べると経済力は劣る。さらに地方での貧困の問題が深刻で、特に人口密度の高いフェルガナ盆地や国境地域の貧困度は非常に高いわけです。 我々タスクフォースが作業を進めておりました昨年5月、ちょうど1年前、ウズベクのアンディジャン市で大規模な騒擾事件が起きました。皆さんもこの事件の記憶は新しいとは思うのですが、未だに真相がよくわからない。タスクフォースとしても、この事件をどのように捉えて、それと援助計画の策定をどのように結びつければよいのか、かなり時間をかけて議論をしました。結論としては、援助計画策定と実際の援助実施は別である。だから、アンディジャン事件の真相がわからなくても、作業は続けるということでつくってきたわけです。 それで、この事件に対するタスクフォースの評価は、ウズベクの最終案の3枚目、2ページの「政治情勢」のところに次のように書き込んであります。「2005年に発生したアンディジャン市の騒擾事件の背景にもイスラム組織の影があると言われているが、一方で、生活難に対する市民の不満も遠因となっているとの指摘もある」。イスラム組織の影というのは現政権の主張で、後半のほうは西側の見方で、その後のパラグラフで、イスラム勢力や過激派に対する取り締まりの過程において人権侵害が見られるとして、国際社会より批判が向けられている、と記しています。これもアンディジャン事件を念頭に置いて書き込んでいるわけです。ですからタスクフォースとしては、日本側がアンディジャン事件に関して現政権を直接非難するという表現は避けながらも、アンディジャン事件の経緯について強い関心を持っていて、人権抑圧、人権侵害に目を向けているのだということを間接的にわかっていただけるような文言、オブラートに包んではあるのですが、批判というように受け止められる表現を使っているわけです。これもタスクフォースでは大変苦心したところでございます。 ウズベクに対する日本の援助の重点分野につきましては、後半のほうで書いてあるとおりです。13ページ以下のところです。我が国援助の重点分野について、14ページから具体的に記してあります。市場経済発展と、経済・産業振興のための人材育成・制度構築支援、それからその次の15ページで、社会セクターの再構築支援、経済インフラの更新・整備といったところに重点を置くということを具体的に書き込んだつもりです。 もうあまり時間がないのですが、カザフについて簡単に申し上げます。カザフのほうは、石油で潤っておりまして、経済成長率9%以上という、もうそろそろODAも卒業に近いようなお国柄です。ウズベクのほうは絶対的な貧困が課題なのですが、カザフでは、経済成長は遂げているのですが、貧富の格差が広がっている。産業間の格差、それから石油で潤っている地域、石油産出地域と伝統的な農牧業を営んでいるような地域の格差が開いている、そういうところが問題です。カザフは人口はウズベクに比べればかなり少ないのですが、しかし国土面積はかなり広い、大国であります。国土全体でバランスのとれた発展を実現するのが課題になっておりまして、それはカザフ政府も十分知っているところでございます。 日本の対カザフ援助の重点分野については、13ページ、14ページあたりで書いておきました。持続的経済成長のための政策策定、制度整備、人材育成、それから運営・管理体制も含めた経済・社会インフラの整備、そして環境保全及び地方部の格差是正のための農村開発及び保健医療支援、こういったところに重点を注ぐべきであるという案になっております。 もう時間がないのですが、もう一点だけ特につけ加えたいと思っております。それは、冒頭でもちょっと言及しました中央アジアという地域内の協力の問題、これに日本がどうかかわり、どう取り組むかということです。ウズベクのほうは、この案の15ページに地域内協力の促進という文章が載っていると思います。カザフのほうも、同じ15ページに地域内協力の促進という文章が載っておりまして、ウズベクのほうは2パラグラフ、カザフのほうは1パラグラフになっております。最初のパラグラフは、同じ文章なのですが、ウズベクのほうはワンパラグラフつけ加えております。ウズベキスタンが地域内協力の枠組み、対話に大変熱心であるというセンテンスを特に加えたわけです。カザフのほうは経済発展も進んで、日本の支援、ODAもそろそろ卒業という感じなのですが、ウズベクのほうは、まだまだ日本に強い期待を持っているということもありまして、この一節をつけ加えたわけです。 それで、どんな協力が考えられるかについては、ここでアフガニスタン復興協力とか、麻薬、テロ、環境、エネルギー、水、輸送、貿易・投資等、列挙してはいるのですが、この中でどこに重点的に取り組めばいいのかということは書きませんでした。タスクフォースでは、どんな問題で協力が可能か議論はしました。水の問題などもあの辺は大変深刻で、塩害、塩が吹き出ているようなところもいっぱいありますし、他にも緊急を要する問題はあるのですが、この地域の国々が協力して自発的に枠組みをつくって、日本に協力を求めてくるというようなことが本当に可能かどうか議論した結果、そう簡単には具体的なプロジェクトをイメージできないだろうという判断に傾いて、特定の課題は名前を挙げなかったわけです。ところが6月5日の「中央アジア+日本」対話では、アクションプログラム共同計画が作成されて、そこでは地域内協力の具体的なプロジェクトがいくつも列挙されております。私たちは恥ずかしい思いを若干しているのですけれども、タスクフォースとしてはこういう文言でまとめたものですから、今日はそのとおり皆様に申し上げるしかない。 それで、冒頭に申し上げましたように、6月1日の大臣の講演、そして6月5日の「中央アジア+日本」対話の成果を取り組んだ形で最終案を修正させていただくということにさせていただきたいと思っております。 時間を大分超過して申しわけありませんでした。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。早速、議論に入っていきたいと思います。 |
(石井主査) | その前に、我々のタスクフォースには、砂川委員と小島委員が入っております。お二人から補足、あるいは間違いを正していただければと思います。 |
(渡辺議長代理) | どうぞどなたからでも。 じゃ、小島委員お願いします。 |
(小島委員) | 私もタスクフォースのメンバーの一員でありました。補足というよりも、今、石井先生のほうからお話があったように、6月1日、6月15日、これを受けて、やはり若干の修正・追加というのが必要になってくるのではないかと思うんです。特に冒頭のところで、ウズベク、タジク、共通して中央アジアに対する基本認識というのがまとめられておりますけれども、この一連の日本側の「中央アジア+日本」対話スキーム、そしてそこから出てくる提案というのは、背後にどう考えても上海協力機構に象徴されるような一連のこの地域を中心とした多国間協力、特に中国のイニシヤチブに基づく他国協力の動きというのがあるわけでして、その意味では、一つには、この動きというのをどういう書き方をするかは別にして、やはり確認をしておく必要が一つあるだろう。 それから2つ目には、そういった動きに対応する形で各地、外務大臣、当時の「中央アジア+日本」対話というのがあるわけですけれども、果たしてこれだけでよろしいのかどうなのかといったようなところも、若干どこかで触れた形で全体の国別援助のウズベク、タジク、特に恐らくウズベクだろうと思いますが、そのあたりについての若干の見直しが必要になるのかというふうに思っております。 以上です。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。千野委員どうぞ。 |
(千野委員) | 今、石井先生と小島先生のお話を伺って私は事前にいただいて、読んだときの疑問が多少といいますか、ああ、そういうことであったのかというふうなことで了解した部分がございます。 まず、「中央アジアに対する基本認識」について、これは今出すものなのかなという違和感といいますか、これは1年前の話じゃないかというふうな読後感を持ったわけです。小島先生がおっしゃった日本の6月15日の会合もさることながら、同じように最近開かれた上海協力機構の大きな存在感といいますか、そういったことをどう捉えるのかという、書く書かないはともあれ、現状認識がないことはいかにもおかしいなという感じを持ちながら読んだわけです。それは今のご説明でわかりましたし、ぜひとも、そこのところをほかの委員の方々の意見もお聞きしながら加えていくべきではないかなというふうに思います。 今、世界でいろいろなことが起きているわけですけれども、この中央アジアで起きていることは、先ほどの副大臣や政務官がおっしゃったODAを戦略的・効果的にするという点からも大変重要な地域であると思います。ですから、これも小島委員がおっしゃった「中央アジア+日本」対話というのは、いかにもお行儀がよく解説しているなという感じを否めないという気がいたします。 日本は、ソ連邦の崩壊後中央アジアに早く注目したということは言えると思います。しかしながら、歩みが着実であるということはいい面かもしれませんけれども、その後、中央アジアに生まれつつあるダイナミックな動きに、果たして対話のフォーラム、あるいはここに表現としてありましたウズベクの15ページのところで、「そのようなアプローチがなされるのであれば、我が国はこれを支持・支援をするとした。」というふうな書き方、あるいはアプローチの仕方で果たしていいのだろうかという感じもいたします。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 |
(浅沼委員) | ・・・・・・共同市場という言葉が使われているわけです。私はどうも中央アジアという地域を見たときに、共同市場は、これが将来的なものであるとしても、幻影ではないかという気がしてしょうがないんですね。このウズベクとそれからカザフスタンという2カ国を比べてみても、移行のための改革のスピードも完全に違うわけですし、それに対するオリエンテーションも違う。それから各国の経済構造、中央アジアの経済構造も随分違って、その間のコンプリメンタリティも存在しない。ですから、域内貿易なんか非常に少ないわけです。カザフスタンなんかは、むしろ彼らが経済統合を望んでいるのは、ロシア、ウクライナ、ベラルスの方向を見ているわけだし、それはカザフスタンとしては、多分正しい解決策だと思うんですね。ウズベクはそうではない。 そういう中で共同市場であるとか、経済統合であるとかいうのは、多分、将来はどうか知りませんけれども、相当無理な話であろうと。一方、ここに列記されているテロ、麻薬、輸送、水・エネルギーというようなところに関しては、多分、近隣諸国であるということで、いろいろ協力も可能なのだろうと思うんです。一種のインフラ・コミュニティみたいなものはつくれるだろうと。この域内協力については、そういうふうに多少濃淡を分けて書かないと、この地域を一つにあたかも東アジアやASEANのようにくくってしまって、それでもって、さあ、それを支援しますと言っても無理なんじゃないかという気がいたします。 |
(青山委員) | 難しい国を担当され、石井先生の大変なご苦労に敬服する次第でございます。 多分、相手国の同意も必要となる文書でしょうから、あまり突っ込んで書けない事情もあるのだろうとは思いますが、どちらの国も、非常に長期の政権で、民主化やガバナンスの問題が指摘されています。このあとご報告のあるガーナの計画では、日本がどういう援助をするかというメッセージ性が必要だという記述がございまして、なるほどと思いました。ウズベク、カザフに対しても、日本は、こういう方向で援助をしていくのだという、メッセージ性が、もう少しあってもよいのではないかという印象を受けました。 それから、先ほどのご説明で少し理解しましたが、両方とも、分析の部分が長くて、実際の戦略のところが、全体のバランスからみて、少し短いように思いました。もう少し、日本は何をするのかということについて、書き込んでもよいのではないかと感じました。 保健医療に関して、細かい点で恐縮ですが、少しコメントさせていただきます。ウズベクに関しましては、15ページに、医療の質、技術支援、システム改善と書かれており、まさにその通りだと思いました。中央アジアの国々は、保健医療サービスが社会主義のもとで拡大しすぎており、このような形の支援が一番ふさわしいと思っております。 ウズベクの7ページに、「医療機材の老朽化、陳腐化」とありましたが、表現として少しおかしいのではないかと思いました。無料医療制度のことが指摘されておりますが、これも問題点の1つで、今後どう改善していくかが課題となると思います。 また、8ページの乳児死亡率の単位ですが、1,000人当たりではなく、出生1,000単位の数字と思います。 カザフに関しましても、6ページにある保健指標は、出生1,000単位、出生10万単位だと思いますし、5歳以下ではなく5歳未満だと思います。同じページに、人口1万人当りの医師数が書かれています。日本において、人口10万人当りの医師数は200人程度です。カザフでは、地方において人口1万人あたり20人とのことですが、これは先進国なみの数字であり、都市部の人口1万人あたり73人というのは、過剰なことが問題なわけです。つまり量的なことより質的なことが問題となると考えられ、都市部と地方の格差の例として、この数字をだすのは適当ではないと思います。 また、29行目ぐらいに、基礎医療の重視と書かれていますが、おそらく、治療的な医療が中心となり予防が不足しているのではないかと考えられ、肥満なども問題となっている地域であり、予防という点についてもどこかに加えられるとよいかと思います。 14ページには、農村部の医療サービス向上とあります。カザフの農村部について、よく知らないのでなんともいえませんが、本当に医療サービスの向上が必要なのか、あるいは、予防的活動や質的な問題、医療経済的側面の構造的問題などがあるのではないかと思われます。おそらく、カザフの場合は、日本が援助する分野として、医療はそれほど優先度が高くないのではないかと感じられます。 |
(渡辺議長代理) | 砂川委員。 |
(砂川委員) | メンバーとして現地に参りましたので、ちょっと今までの議論の補足、感想を述べさせていただきたいと思います。まず、両国は、日本にとって非常に重要な地域にあって、重要な国なんですが、カザフスタンは、あまり日本からの直接の援助を求めているという感じは基本的にはない。一方、ウズベキスタンは何でもほしいという状態ではあるんですけれども、これは日本側として制度的にいろんな意味でやりにくいというスタンス。カザフスタンはもう退学したいとはっきり言っているわけです。卒業じゃないんですね。退学したい、どこかほかのほうへ転校したいという感じなわけです。それでも日本は、じゃ、どういうふうに追いかけてやっていくかと画策している状態だと思います。 先ほどの共同市場とか、域内統合というような観点でいきますと、一番ポジティブなのは、ECとか世銀とかいう国際的なところで地域としてまとめて何かやっていこうという活発な動きがあるということです。それは地域の環境の問題とか、インフラの問題とかに特化していくことによって域内の発展をねらっていこうというものです。だから、ヘッドコーターを例えばカザフスタンに置いて、なるべく5カ国から人を呼んで共通のプロジェクトをやっていくというような動きになっている。 もう一つの動きは、WTOにウズベキスタンなんかも入りたいと言っているから、こういう動きこそ、日本はサポートしていこうというスタンス。これがいわゆる域内統合というか、そういった形に進む一つの我々の希望する方向なのではないかと思う。 それから今までの議論の中で、成長をサポートするのか、いわゆる貧困削減をサポートするのかという議論についてですが、カザフでは貧富の格差が非常に大きくなっている報告書に書いてありますけれども、これは貧のほうというよりも、富のほうが高くなったんですね、石油収入でもって。そこに分配が限られたところにいってしまって、貧しい人はそのまま置いてきぼりにされているという意味での貧困の格差なんですね。 ところが、カザフと違ってウズベキスタンのほうは、もともとあった富のレベルからどんどん全体として下がっていくといる状態にある。貧困問題としてはカザフスタンよりももっともっと深刻である。そういうところを我々としては見ていかなくてはいけない。それをどういうぐあいにやっていくか、1つは成長を通じた貧困削減の方法もあるが、それにしては市場が開放されていない。自由化、民主化されていないという制約がある。そこで解決の糸口をどこに求め、どう対応していくかを考えていかなければいけないと思います。 |
(渡辺議長代理) | 石井先生、これを全部お答えになるわけにはもちろん、その時間・・・・・・。 |
(荒木委員) | 渡辺先生、ちょっと。 |
(渡辺議長代理) | はい、どうぞ荒木委員。 |
(荒木委員) | 私は大胆なことを言うと、カリモフ大統領というのは、いずれそう長くない。こういう崩壊に近い政権を正面からサポートするということは政権強化につながらないかということが一つあるし、したがって、ガバナンスが一番悪いと言われているし、私は彼の一族郎党的な支配体制というのは、北朝鮮的なところもないわけでもない。そこで、これはカザフスタンもそうですけれども、日本のインフレンスを強めていくとなれば、もっと長期的な構えで、日本の知とか人材、経験などを含む人材育成、そういうところをむしろこのペーパーにはあまり書かれていないんですが、もっと強化して、留学生政策も含めて抜本的にそっちへ特化してやるぐらいのつもりがあっていいんじゃないかということをつけ加えたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | 石井先生、これだけのコメントにすべて答えることはできませんので、先生の頭の中で像を結んでいるものだけでもお答えいただければと思います。 |
(石井主査) | 時間はどれぐらい使ってよろしいですか。 |
(渡辺議長代理) | あまり差し上げるわけにもいきませんが。 |
(石井主査) | わかりました。急いで申し上げます。 まず、中央アジアの長期政権に対する対応の問題ですけれども、対ウズベク援助計画の原案ではかなりプラスの評価もしていたのですが、最終案では政権について日本との友好を主張していたというようなところは削っておきました。それから、何人かの委員の方から、上海協力機構(SCO)が存在感を増している中で、日本の援助、支援の顔が見えないといった趣旨のコメントがあったかと思います。私はきょうのプレゼンテーションではあえてSCOについては一言も申し上げませんでした。中国から見れば、裏庭に日本が入り込もうとしている、ロシアから見れば、柔らかい脇腹にまた日本が土足で踏み込もうとしているような誤解を持っております。私個人の意見としては、SCOに対抗するという形ではなくて、日本は、俗っぽい表現を使えば、ピュアな純粋な支援者、ドナーとして、この地域にかかわる、それを長期に亘って続けていけば、日本のプレゼンスが増していくのではないかと考えていたわけです。最終案のほうにSCOに対抗するとか、そのように受け取れる文言は、私は避けたいと思いました。 言い換えれば、支援の目線を現政権ではなくて民衆の側に向ける、人間の安全保障の視点、観点に従って支援していくという形で、日本の援助をこの地域の方々が積極的に評価してくださるようになっていけばよいのだろうということです。 千野委員からは行儀がよすぎるのではないかといったご批判をいただいたわけですけれども、日本が内心どう思っているかは別にして、振る舞いとしては、ピュアなドナーという形で存在するのがよいと私は思っております。 それから共同市場については、冒頭の中央アジアに対する基本認識のところで括弧をつけていると思います。この地域の共同市場については、いろんなプランがあるのですけれども、SCOの枠内では中央アジア共同市場構想というのが前から言われております。首脳会談のときに必ず議題にはなるのですが、SCOの枠内で、中央アジア共同市場をつくるという案は未だスローガンの段階で実質的なところまではいっていない。最近、6月15日のSCOの首脳会談では、地域の経済協力をもっと活発にしようという具体的なプログラムができたようです。確かにおっしゃいますとおり、この地域で経済統合を図っていくことはこれからの課題です。 それから、青山委員からいただいたメッセージ性がもっとはっきり出るような言い方をすべきである、というコメントは最終案に手を入れる中で考えていきたいと思います。 いろいろと貴重なご意見ありがとうございました。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。もういくつかこういう形で修正するという方向性を今日見せていただきました。それで、このカザフとウズベクについても、最終案としてお認めいただきたい。修文等については、先ほどと同じように、議長代理、事務局のほうにご一任いただくということでぜひお願いしたいんですが、よろしゅうございましょうか。 ありがとうございます。最終案が出た段階では皆様にその文章をお送りすることはもちろんのことでございます。ありがとうございました。 それでは、もう一つガーナという重要国が残っております。これにつきまして、大野泉主査のほうから、ご報告をお願いします。 |
(大野主査) | 大野でございます。ガーナの国別援助計画の最終案の報告をさせていただきます。 荒木委員にもアドバイザーを務めていただきまして、今まで取り組んでまいりました。ガーナの場合はサブ・サハラ・アフリカの国で、日本の援助環境がここ数年非常に大きく変わり、援助協調も非常に活発であるという特色があります。そういったことも踏まえまして、特に私は地域の専門家でもございませんので、現地の声を生かす、現地が持っている問題意識をいかに政策に反映できるようにするか、といったことを念頭におきまして取り組んできたつもりでございます。先ほど青山委員がおっしゃられましたようなメッセージ性の強化ということも、重要な取り組みのひとつであります。 資料は本文と別添から成りますが、実は別添の一番最後の3番目の資料が一部抜け落ちていたところ、それを今改めて配っていただいております。それも含めた形でご覧いただければと思います。 まず、本文の1ページ目、一つめくっていただきまして、対ガーナ国別援助計画、目次の部分をご覧ください。実質的にはこのペーパー自身は、各省協議を終えた最終案が2月、3月に作成済みでした。5月に小泉総理がガーナに行かれたときに、ご同行されました佐藤経協局長に財務大臣と個別面談をしていただきまして、その時点の最終案の英文のドラフトを1セットお渡しして基本的な方向性をご説明いただき、日本が目指している方向については賛同いただいているといった経緯があります。本当は本日も、佐藤局長にも補足説明いただければありがたかったのですが、ご退席されて残念でございます。 ちょうど1年前の6月に中間報告させていただいたときに、この目次の中で特にガーナの支援の理念と目的、それから2のガーナの開発に関する状況、それからガーナの開発戦略及び援助の動向、それからガーナの日本の援助の分析評価、そしてそれを踏まえて、日本の方針は何であるべきかといったことについて、骨子を説明させていただいたとおりです。 そのときの骨子を簡単にもう一回繰り返えさせていただきますと、ガーナ自身がサブ・サハラ・アフリカの中で比較的、政治経済的に安定している国である。そういった意味で西アフリカやアフリカにおける安定と開発のモデル国となり得る。ガーナの実情に即した形での成長支援を日本として取り組んでいく意義はあり、ガーナはアフリカにおける日本の重点支援国になるのではないか、という点を大きな問題意識として申し上げました。 ガーナの成功を通じて、アフリカの一つのいい例としてデモンストレーション効果も図っていきたいというようなことが、われわれのアフリカ支援におけるガーナの位置づけでございます。同時に、この国の開発課題として、やはり一次産品に過度に依存している経済構造、しかも国内の格差も非常に大きく、特に北部地域では貧困層が集中している点があげられます。また製造業が未発達で、農業が非常に重要だという事実も踏まえた形での日本としての比較優位ある支援をしていこうということが根幹にあります。 さらに、日本の対ガーナ支援の援助環境が2001年以降大きく変わりました。拡大HIPCイニシアティブに申請したことによりまして、日本の円借款は中断している。日本のドナーとしての金額面の大きさは非常に少なくなりまして、当時はバイラテラルで1位でしたけれども、いまは6位、そういった状況にある。そういう中でいかに「選択と集中」をするかについてかなり議論し、われわれとしては「課題達成型」というアプローチを提案することにしました。このアプローチは、分野を羅列するのではなくて、ガーナの政府が掲げる貧困削減戦略の目標、それから、そこの主要な柱の中で日本ができるものについて選びまして、その中でいろいろな投入を組み合わせてやっていこうとするものです。それによって、日本としても政策対応を強化しながら、今まで蓄積してきた現場重視の支援をやっていきたいということでございます。 より具体的な話ですが、別添の別紙1にそういった目的に基づきました重点開発課題に基づくわが国の戦略プログラムということで、より具体的に書かせていただいております。少しめくっていただきまして、別紙2に「対ガーナ国別援助計画協力図」というのがございます。こちらをご覧になっていただけると、よりわかりやすいかと思います。この図にわれわれとしての支援方針を整理したつもりでございます。ガーナの貧困削減戦略は、ガーナ政府による改訂作業が昨年11月に終わりまして、第二次貧困削減戦略(GPRS II)を指します。”Growth and Poverty Reduction Strategy (GPRS)”と名前をつけているとおり、「成長を通じた貧困削減」を目標として掲げています。HIPCSの完了地点(Completion Point) に到達し債務削減をうけた後、ガーナとしても持続的な成長を遂げながら、将来的には中進国になっていきたいと、非常に野心的ではありますが、成長志向の目標を掲げており、私たちもそれに対して支援していきたいと考えています。 ガーナ政府の貧困削減戦略には三つの柱がございまして、それらは人材開発と基礎サービスの改善、民間セクターの競争力の強化、それからガバナンスの強化です。それらに対して私たちができることは何なんだろうか、という議論を重ね、最終的に二つの重点課題を選びました。一つが、地方と農村部の活性化ということ。もう一つが産業、これは地場産業、中小企業を中心に育成していくということです。それぞれの課題に関連する部分でいままでやってきた活動の中で、あるいは現場でのドナーの活動も踏まえて、日本がやはり今後も強化していくべきところは何なのかといったことを考えました。これらをSO(Strategic Objectives)と書いてある4つの戦略プログラムに整理しました。ストラテジック・オブジェクティブと、英語になっていて非常に恐縮ですが、第一の重点課題については(1)農業振興、(2)貧困地域に対する保健とか、医療といった基礎的なサービスの拡充によります生活環境の改善、それからもう一つの重点課題である産業育成に関しましては、(3)中小企業育成とか、地場産業の振興を中心とした民間セクターの開発、そして、(4)理数科教育、これは過去からやってきて非常に実績があるものですけれども、それから技術教育を通じた産業人材の育成を支援することで、産業育成にも貢献していきたいという方向性を打ち出しています。そして、それぞれのプログラムの連関を考えながら、日本の支援を「選択と集中」させていきたいと、考えております。 それで、先ほどの別紙1、重点開発課題に基づくわが国の戦略プログラムについてですが、ここに書かせていただいているように、私たちとしてはガーナのGPRSが目ざす柱に沿って日本ができることを選択して、支援していく方向性を打ち出しています。それからガバナンスにつきましては、これも非常に重要ですけれども、一般的なガバナンス支援といった形で幅広く取り組むよりは、われわれの投入は非常に限られているといった認識のもとで、重点開発課題の二つの柱に係わる分野でガバナンスを支援していくことにをめざします。ですから、この二つの分野に係わるところで、たとえば保健であれば、地域医療行政の強化とか、教育であれば、セクター政策のアドバイスとか、あるいは産業のほうであれば、中小企業支援のための制度構築や政策アドバイスをしていくとか、そういった形で、ガバナンス支援についても、なるべく重点開発課題に関係するところで具体的にやっていこうというのが私たちのスタンスでございます。 それから、こういった「戦略プログラム」というものをつくらせていただいたのですが、プログラムごとに、3段階方式で日本としてどこまで関与していくのかといったことも検討しております。特に重点的に支援していく活動、それから支援を検討していく活動、それからやはりこれは日本の比較優位ではないので、支援するのをよそうといった3段階で検討いたしました。 それからもう一つは、地域的な配慮ということも考えております。これは、多分二つ意味があると思うのですけれども、地方・農村部の活性化の課題に関しては、人間の安全保障という観点からなるべく貧困層が集中する地域を重視していきます。それは主に北部地域なのですけれども、そこに基礎的な医療サービス、教育分野の支援をしていく。加えて、所得向上は大事ですから、そこに補完する形で農業振興も考えていく。それから産業育成の課題につきましては、ある程度ポテンシャルがある地域でなければいけませんので、今まさに産業ポテンシャルがある地域を見極め中です。そういった形で支援していきながら、たとえばインフラの支援なども組み合わせた形で、複数の投入を重ねて重層的に支援していきたいというふうに考えております。ですから、地域的な配慮をしつつも、一つの地域にすべての投入を1点集中するのではなくて、中央レベルに対しても支援しますし、ある程度分散した形で、幾つか核がある形で地域的な支援もやっていこうとしております。 それから、別添の一番最後、先ほどお配りいたしました協力マトリクスをご覧ください。これは何かと言いますと、マトリクスの一番左の欄がガーナのGPRSが掲げた重点的な柱です。たとえば柱の1というのは民間セクターの競争力強化、もう一つは、次のページにあります人間開発、基礎サービス改善。それから最後のページにありますけれども、ガバナンスの話と。先ほど申し上げましたように、私たちはそれに対して自分たちがどういった形で、地方・農村部の活性化というくくりの中で、たとえば農業振興とか、貧困地域における基礎生活環境の改善をしていくのかといったことも含めて、対応関係を考えながら支援していこうとしております。同時に、いまアフリカでは特に援助協調は活発で、ドナー合同で目指すべき成果も考えていきながら協調していきましょうといった議論がかなり活発に進んでおりまして、ガーナの貧困削減戦略自体で総体として期待される成果は何なのか、モニタリングする指標は何なのかという議論もございます。したがって、ガーナの貧困削減戦略の中で使われているモニタリング指標に対して、なるべくわれわれの投入を関係づけるように意識しながら、そこに書かれている指標の成果になるべく貢献できるような形で支援をしていきたいと考えております。ですから、一番右側の欄というのは、われわれの国別援助計画で設定した具体的なプログラム、および各プログラムが想定している活動を示し、中でも二重マルは優先的に支援していくもの、それから一重マルは支援する方向で検討していくもの、書いていないものは他のドナー等に任せるものといった形で位置づけておりますけれども、そういうふうにわれわれの活動を整理し示しております。 実は現地でも、政府と現地で活動しているドナー共同で似たようなマトリクスがつくられております。私たちとしては、なるべくそういった現地で既に使われているマトリクスを活用しながら、日本の援助が全体の協力の中のどこに位置づけられるのかについてガーナ政府に示し、政策対話を行っていくことが重要と考えています。そしてローリングプランをつくりながら、年次でも具体的な活動計画を議論していくことにも使いたいと考えています。 あと、本文の最後のほうに書いてあります、実施上の留意点につきましても少しご説明したいと思います。13ページ以降でございます。われわれとしては、こういったペーパーを紙だけで終わらせたくないという気持ちを非常に強くもっておりまして、いかに実効性を確保していくかについてもいろいろ議論・工夫してきました。それが先ほど申し上げた、協力マトリクスを使った形で、ガーナ政府とわれわれが目指している援助の方向は何なのかということを示しながら、日本の支援の予測性を向上していくといったことであり、それを使いながら政策対応を強化し、なるべく評価とのリンクも考えていこうという取り組みでもあります。もちろん開発の担い手、必要条件に対するいろいろな社会環境・ジェンダー配慮もしていくように案件の形成、実施などもしていこうということ。それから実施手法につきましては、いままでの援助のやり方は特に円借款があった時期のものです。円借款再開の可能性はあるかもしれませんが、当面はやはり無償資金協力と技術協力を30~40億円の規模でやっている点を認識し、それぞれの協力を水平的に拡大するのではなくて、垂直的に、現場から政策までつなげていく形で組み合わせていきたいという方向を打ち出しています。いままでやってきた、いい個別プログラムの事業についてはできれば面的に拡大したいですし、それを可能にするために無償資金協力、たとえばノンプロ無償の見返り資金等を使うとか、あるいはこのペーパーの中でも触れているように財政支援型の援助を動員することにより、中身に貢献できるような体制を整え、新しい援助モダリティの活用を必要であれば検討していく方向性を打ち出させていただいております。 それからJOCVとか、草の根無償も含んだ形でプログラム化をしていこうといったことも考えております。 重要なプログラム、すなわち4つの「戦略プログラム」においては、できるだけ政策支援を行うアドバイザーを入れることにし、それによって現場の実際のいろいろなプログラム、プロジェクトとの連携を強化していきたいと考えています。 大体以上が、今回改定作業を行った援助計画の概要です。幾つか具体的な例として、こういった大方針に基づいて、いまこういうような活動が始まりつつあるといったことをご紹介させていただければと思います。一つは、地方・農村部の活性化に関連し、民生向上のために貧困地域における医療、基礎生活環境の改善を支援するために、北部で一番貧しいと言われておりますアッパーウエスト州において、地域レベルの医療を強化していこうという取り組みです。地域の郡、それから地域の保健行政機関、それからヘルスポストという末端の診療施設に至るまでの人材育成、能力強化を技術協力で行い、無償資金でヘルスポストとか、病院に資機材を投入する。それからJOCV(青年海外協力隊)の派遣も、そういった地域に保健関係はなるべく集中させて、地域医療ということでトータルでいろんなスキームを活用していく方向で、いま支援を始めております。また、保健セクターはコモンファンドといった動きとか、一般財政支援を通じた保健セクターの支援が非常に活発に行われており、援助協調を担う政策アドバイザーも派遣しながら、全体の動きを把握しつつ、なるべく日本が強みをもつ現場でも具体的な成果を出せるようなポジティブなリンクを作りたいということで活動しています。 それから、民間セクターの開発、産業育成に関しては、やはりガーナは、ベトナムのようにFDIを誘致して投資・貿易を通じた成長をすぐに実現できるところではないというのが現実でございます。したがって、地域の特性に合った地場産業を開発していくのが妥当ではないかと思われます。そういったところで日本は貢献していきたいということで、開発調査等で幾つか違う環境にあります地域(郡)に四つほど選び、たとえばパームオイルとか、キャッサバとか、あるいはシアバターとか、幾つかの産品を考えながら、パイロットプログラムの実施を通じて具体的な地場産業振興策を中央レベルと、郡のレベルで検討し、策定していく取り組みも始まっております。 たとえば北部のシアバターについては、少し前に日経新聞でも取り上げられていましたが、これはシアの実から生産されるもので、石鹸とか、クリームに製品化することができ、品質がよければ海外市場でも需要があります。そもそも日本のJICA支援により現地NGOが、コミュニティのシアバター生産を振興した経験があり、最近になり、コミュニティが開発していたものをJETROベースの協力に発展し、企業化可能性をJETROの研究者を派遣して調べました。それがきっかけになって、日本の企業の参加のもと、どうすれば採算が合う形で市場化できるかについて、いままさに取り組みが進んでいるところでございます。小さい例ではございますけれども、そういった地道なこともやっていければというふうに思っています。 それから人材育成等につきましては、ガーナでは理数科教育について日本がここまでやってきた協力は非常に評価されております。理数科教育における現職教員の研修とか、そういった協力で得られた経験を実際の教員トレーニングの教材や指導要領などに活用される形で政策にあげていく取り組み、また、ガーナでは基礎教育に対するドナーの関心は非常に大きいのですが、技術的な教育や職業訓練については、なかなか関心がない。そういう状況の中で、日本は非常に早く技術教育のマスタープランをつくって、ガーナ政府にも政策として受け入れられたという実績をもっており、民間セクターを巻き込んで、そういった政策をどういった形で具体化していくかについての取り組みも進みつつあります。 これらは幾つかの参考例ですが、われわれとしては、本当に援助する側としての日本の量的な存在感はそんなに大きくありませんが、ある程度集中した投入をすることによって、また具体的で着実な支援をすることによって、「キラリと光る」協力をしたいと願っています。同時に、現場のよい取り組みを政策に結びつけていくような仕組みも考え、作っていくことが重要だと思っております。ありがとうございました。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。大変コンセステントな協力のフレームワークをつくっていただき、その中に日本の対ガーナ援助をどう位置づけるかというスタイルで一貫しておりまして、大変説得的な国別計画ができたように思います。どうぞご発言ください。 |
(草野委員) | この後、すぐ退室するので短く、一つだけお聞きしたいんですけれども、昨年、やはり私もガーナにお邪魔させていただいたんですけれども、そのときに感じたのはやはり非常に活発に議論されていたのは援助手法で一般財政支援とコモンファンドでしたよね。大野さん、先ほどその点について言及されておられましたし、またこのペーパーでも10ページで日本側の対応が不十分であると、そういうことは問題意識として書かれているんだけれども、じゃ、果してそこにどういうふうに日本がコミットしていったらいいのかということについては、ちょっと私が見た限りでは十分書いていないような気がするんですけれども、ここに関してはどんなふうに日本がコミットしていったらいいというふうにお考えなんでしょうか。 |
(渡辺議長代理) | 一当たり全部質問を承ってしまいましょう。青山委員、どうぞ。 |
(青山委員) | 大変包括的な計画のご説明ありがとうございます。特に、メッセージ性が必要とのことに、大変感銘を受けました。10ページに、政策対話、メッセージ性、政策に反映する、といったことが書かれていますが、これは、本当に重要なことと思います。今まで、日本がいくらよい援助をしても、なかなかプレゼンスが示せないことがありましたが、これは、やはり、メッセージ性が弱かったり、政策に入っていかなかったりしたことが大きかったのではないかと思います。とくに、財政支援やコモンファンドが課題となっている国では、非常に重要な点ではないかと思われます。 細かい点で恐縮ですが、5ページにある保健指標は、出生1,000単位だと思います。 また、地域にターゲットして進めるということは、大変よい考え方と思います。ただ、マトリクスをみますと、マラリア、HIV/エイズなど、疾病ごとに分けられています。地域ごとの優先課題を支援するべきですので、特定の疾病対策に限った形の資金とならないような配慮が必要と思います。 それから、人材育成が大変重要とあり、まさにそのとおりと思います。ガーナでは海外からの仕送りが多いという記述があったと思いますが、育成した人材が国外に流出してしまうことは、ガーナではあまりないのでしょうか。もし、そのような頭脳流出が起こりそうなら、どう対応するかを考えて人材育成しないと、せっかく育成してもみな国外に出て行ってしまうのではないかというおそれがあると思います。 |
(渡辺議長代理) | 浅沼委員、引き続き、お願いします。 |
(浅沼委員) | 私は最後に書かれた援助戦略は良いと思います。もう少し書き込んでいただけるのであれば、多少次の点について具体性を与えていただきたいと思うんです。 まず第1にはガーナの経済成長のパフォーマンスというのは1980年半ばから、アフリカの他諸国に比較して多少よかったわけですよね。それは多分、1983年ぐらいから始まった構造改革がある程度実を結んでいるんだと。そのときの改革でもって、たとえばガーナの持っていた製造業、国営企業の改革なんか、全部済んでしまったのか。たとえば鉱物資源、金の生産なんかについてはほとんど改革は成功して済んでいるわけですよね。それをワンセンテンスで結構ですから、どこかにそれが効果があったということを入れていただきたいということ。 それから第2は、読ませていただいて、農業の育成についてのイメージがどうしても出てこないんですね。まず第1にココアの地域があり、それからサブシスタンス・アグリカルチャーについても、もともとあそこはプランティンみたいなものしかないわけですよね。それ以外、農業発展は結構なんですけれども、どうしても具体的なイメージがわかない。したがって、アフリカ全体に共通する問題であるグリーンレボリューションがアフリカではできないんだという問題を本当にクリアできるのかどうかというところがちょっとよくわからない。 それから第2に、産業育成のところなんですけれども、製造業の比率というのはずいぶん落ちていますよね。そこで、地場産業だと。これはほとんど零細ですよね。しかも、農工リンケージを非常に強調されている。しかし、これは非常にきついといいますか、制約されたもので、量的に、ここで経済成長を一つの柱にして産業育成を図るんだとしたら、これではとうていやっていけないですよね。むしろ地場産業の育成というのは、さっきおっしゃったように貧困削減と地方の活性化というふうなものを政策目的にするところで、もっと成長のための製造業の育成というのはないですよね。農工間のリンケージというのはみんな言うんだけれども、またこれイメージとしてわかないんです。農工間のリンケージというのは本当はもうあきらめてしまったほうがいいんじゃないんですかね。というのは、農工間で考えられるのは、ココアと、フードプロセッシングと、あとは林業の多少のフロセッシングぐらいしか可能性はないと思うんですよね。本当にこれでいいんだろうかという疑問が私は多少あります。 |
(渡辺議長代理) | 大野さん、リプライをお願いします。 |
(大野主査) | 的確なコメントを頂戴し、どうもありがとうございました。わかる範囲で答えさせていただきます。まず一般財政支援、コモンファンドにつきましては、本文の10ページ、ほかにも別紙にも書かせていただいておりますが、私たちとしては一般財政支援、あるいはセクター財政支援、あるいはプールファンドに参加したほうが、たとえばいまやっている事業の成果が適切にスケール、面的に拡大される状況が整えば入っていきたいと考えています。したがって、一般論としては、日本政府にはぜひ一般財政支援を含めた財政支援型のスキームをつくってほしいですし、コモンファンドも可能にしてほしいです。私たちとしては、それを使いたい状況になったときには使いたいわけですね。ただし、財政支援型の援助モダリティに参画するからには、中身を持って入りたいというのが大前提にございます。ガーナの場合は一般財政支援に入らないからといって、ドナーが仲間に入れてくれないといった参加料的な色彩はそう強くなく、ノンメンバーであったとしても情報共有や議論への参画は可能な状況にあります。こういう点は、排他的な状況が起こっている幾つかの国とは違うかもしれません。そういったことをかんがみて、私たちとしては、将来的には財政支援型のスキームに参加する可能性を考えつつ、いま取り組んでいるプログラム・協力活動を強化し、現場と政策をつないでいくような形でまとめていくことに当面は傾注することが重要だと考えています。この国別援助計画のニュアンスは、そういったスタンスを書いたものです。 それから青山委員からのご指摘ですが、感染症等につきましては、たとえば野口研を通じて、ガーナ国内の特定地域だけではなくて、より広域な協力を行ってもいる場合のもあります。また、ギニアワームという寄生虫も非常に大変なので、そこは先ほど申しました地域的な医療整備とは分けて、ニーズがあるところに対応するという方針でいま協力を行っています。 それから頭脳流出については、カウンターパート人材の流出といったレベルの話よりよく聞くのは、ガーナ人の優秀な看護婦さんとか、お医者さんがイギリスに行ってしまう、ということです。これはイギリスとガーナの間の給与の格差の問題、あるいはそういった人材需要が先進国にあるといったことが原因としてあり、現実としてブレインドレインは問題になっています。ただ、それをこの問題は日本の援助計画だけで解決するには余りにも大きな課題でございます。したがって、日本がガーナ支援に取り組む際には、できる範囲で個別の人材育成を丁寧にやりながら、なるべく成果を一緒に共有しながら、インセンティブをつくりながらやっていこうというのが現実的かと思います。そのときに必要であれば、たとえばノンプロ無償の見返り資金とか、コモンファンド等を使って、普通のプロジェクトではすぐ出せないような、たとえば教員宿舎などの経常予算を出していくとか、工夫をしていくことかと。実際に、そういった支援を通じて非常にインセンティブが高まった例も教育セクターであるので、できる範囲の中で工夫をしていきたいと思っております。 それから浅沼先生からご指摘がありましたガーナの国営企業等につきましては、80年代初めからの構造調整の書きぶりのところで少し詳しくつけ加えるということで対応させていただければと思っております。 農業については、やはりおっしゃられるとおり、食糧作物をつくる農業と、換金作物として、しかも輸出できるもの、国内用だけの作物と、幾つか種類があって、それに対してどのような取り組みをしていけばいいのかについて、よく検討する必要があります。ガーナ政府も食糧政策ポリシーをもっていますが、その内容は具体性が欠けています。もちろんサブシステンスな食糧のキャッサバとか、ヤムとか、トウモロコシなどの生産をどうするかと問題もありますが、それらはいまのところ、少なくともここ何年かの生産は比較的安定しています。天水に依存しているので、非常に限界はありますが、農業セクターは安定的に移行している。近年、一番成長しているのは農業セクターであるとも言われています。それから、ココア以外にも、パイナップルとか、マンゴーとか、そういったものに対する需要がEU市場にすごくあります。これらの生産・輸出への投資も入ってきており、一つにはプランテーション型でやっていく活動があります。また、ガーナはかなり小規模農民が多いので、小規模農民が有機栽培をしてパイナップルを生産し、付加価値をつけて輸出していくといった試みも始まっております。ですから、これが決め手というのがないし、むずかしいのですけれども、そこは現実として受けとめたうえで具体的、着実に地道に支援をしていくといったことなのかなと思います。 あとは、ガーナ政府は農業では米に対して日本にすごく期待をもっています。日本と言えば米が専門じゃないかと。実は、ガーナで輸入米が非常に増えており、輸入が1億ドル強にのぼっています。国内で消費されているお米の半分以上が輸入米だそうです。そこでガーナ政府は米作を振興したいと言っているのですが、どのような振興策をとればいいのか、あるいは輸入米との競争力を考えると国産振興はむずかしいのか、などについて、生産から流通、市場に至るまでのプロセスを踏まえた上で事実関係をちゃんと把握したうえで、米の生産振興に対する取り組み方についてアドバイスしようということで、調査を行っています。ですから、いわゆる東アジア型の貿易・投資を通じたダイナミックな成長モデルはできないと思いますが、非常に広い意味での成長を通じた貧困削減をガーナの実情にあった形で支援していこうと考えています。特に、ガーナ政府自身がそういった形で成長を促進していきたいと強く考えています。そういった方針はGPRS、すなわちガーナのPRSP自体に明確に示されています。最初のPRSPはHIPC申請の条件、債務削減に直接結びついていたこともあり、社会セクター中心だったが、今度(GPRS-II、改訂版)では、自分たちは完了時点(CP)に到達したのだから、持続的な成長に向かう次のステップを考えていきたいと。ちょっとアンビシャスではありますが、そういった目標を本当に掲げているのです。ですから、われわれとしてもガーナのそういった目標達成に向けて支援していきたいという気持ちを表明しつつ、実際には農村部での農業振興とか、地場の産業振興といった、かなり地道な支援をしていければと思っている次第でございます。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。大変なご尽力ありがとうございました。修文があるやもしれませんけれども、先ほどと同じく、その場合には議長代理と事務局のほうにお任せいただくということで、これを最終案としたいと思いますが、ご異論ございませんでしょうか。 |
(「異議なし」の声あり) | |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。きょうは三つの国別ODA計画が報告されました。先ほど申し上げたような手順で最終案に持っていきたいと思います。最終案ができれば、これを政府の計画とするように、しかるべき手続を事務局にはとってもらうことにしたいと思います。もちろん先ほど申し上げましたように、最終案はいずれできた後にお手元にお送りいたします。 さて、ここで、まだ若干仕事が残っております。ここで、高橋経済協力参事官のほうからご発言いただけますでしょうか。 |
(高橋参事官) | ありがとうございます。経済協力の参事官をしております高橋でございます。 初めに、佐藤経済協力局長が途中で退席をいたしまして、本人も最後まで聞きたかったと思うんですけれども、申しわけございません。冒頭、金田副大臣も申し上げましたけれども、イラク支援特別委員会の閉会中審査というのがまことに突然入りまして、よんどころない事情で佐藤が退席せざるを得なかったことをお詫びいたします。 原主査、石井主査、大野主査、それから東京及び現地のタスクフォースの皆様に対して、まず大変よくまとまった国別援助計画の策定に当たってご尽力をいただいたことについてお礼を申し上げたいと思います。また、委員の皆様に対しましては、本日のこの総合戦略会議の場でご了承いただけましたことについてもお礼を申し上げたいと思います。 なお、後から多分、いささかご説明させていただく時間があると思いますODA改革の関連等々で、前回のこの会議と今回で大分間があきまして、その結果として、物事は動いているものですから、タイミング等々、計画をおまとめになる過程でひょっとしたらご迷惑をかけた場面があったかもしれません。あわせてお詫びいたしたいと思います。本日、この場でご了承いただきました国別援助計画につきましては、従来は対外経済協力関係閣僚会議という場で了承をいただくということだったんですけれども、まさにODA改革の流れの中で、対外経済協力関係閣僚会議が4月28日付で廃止されておりますので、今後は基本的には政府開発援助関係省庁連絡協議会、局長レベルの協議会でございますけれども、その場で関係省庁の了承を取り付けるという形でやらせていただきたいと思っております。あわせてご報告したいと思います。 再度お礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。 それでは、引き続いて、高橋経済協力局参事官のほうから、ODA改革、これはすでに皆様ご存じのことと思いますが、確認の意味を含めましてご発言をお続けいただきたいと思います。 |
(高橋参事官) | ありがとうございます。むしろ皆さんからのご意見をいただくのが眼目かと思いますので、ごく簡単に確認だけさせていただきたいと思います。 ご案内のとおり、まさに前回のこの総合戦略会議、昨年の11月だったわけですけれども、その後の数カ月で大変大きな変化が日本のODA、あるいは実施体制のあり方についてあったと。それは大きく言えば、3層構造とわれわれは呼んでおりますけれども、三つの次元において新しい組織、あるいは仕事のやり方というのが変わった。 まずご案内のとおり、官房長官のもとに海外経済協力に関する検討会という有識者検討会があったわけですけれども、その報告書の提言を受けまして、官邸のレベルで、まず総理、官房長官、外務大臣、財務大臣、経済産業大臣という5閣僚をメンバーといたします海外経済協力会議というものが4月に閣議で決定ということで設置をされました。すでに2回会合を行っております。官邸のレベルという最も高いレベルで日本のODAの大きな戦略を議論していただくという会議でございます。すでに2回会議が行われまして、ご記憶にも新しいかと思いますけれども、特に2回目、ごく最近の会議では、対中円借款、この再開を、大まかな数字も含めまして、官邸の会議で決めていただくというような手続を取っております。これ自体が非常に新しい動きだと思っております。したがいまして、今後ともこの官邸の会議で日本のODAに関する大きな戦略部分についての議論が行われ、指針が下されるということになろうかと思います。 2番目に、外務省のレベルでは、いまの官邸の会議を受けまして、外務大臣のもとに海外協力企画立案本部というのを作りまして、ここでは私がおります経済協力局のみならず、総合外交政策局、あるいは各局と一体となりまして、先ほどお話の中に日本の援助の予測性という話もありましたけれども、あるいはメッセージ性というお話もありましたけれども、官邸の戦略を受けて、外務大臣の指揮のもとに、全省的にODAの方向性というものを議論し、決めていくというような仕組みをつくろうとしているところでございます。 なお、これにあわせまして、外務省の中でも機構改革をいま計画中でございまして、総務省のご査定が要るんですけれども、計画どおりにいけば、8月1日ごろをめどにいたしまして、いまの経済協力局と国際社会協力部の主としてマルチのODAを所管している部分を統合いたしまして、国際協力局という新しい局を作るという方向でいま検討をしております。これによりまして、予算的には、要するにODA予算というのを統合して一つの局で見るようになるということ。それからマルチとバイの連携をさらに進めるというようなことが、ここでできるようになればというふうに期待しております。 最後に三つ目の構造といたしましては、これも報道等々でご案内のとおり、いままではJBIC、国際協力銀行で所管しておりました円借款をJICA、国際協力機構に統合いたしまして、新しいJICAを作るということが決まっております。これは外務省が所管しておりますJICA法、国際協力機構法の改正ということでやらせていただくことがすでに決まっておりまして、近く法律の改正について、早ければ秋の臨時国会の場にでも提出しようとしております。お手元にこの関連で紙を配らせていただきました。新時代のODA実施体制づくり、新JICAの制度設計のポイントという題名でございまして、外務省、JICA、JBICの連名になっております。これは実はJICA法の改正に向けまして、この4月から3者間で議論していたことを当面まとめた紙でございます。時間がございませんので、細かいことは申し上げませんけれども、私ども、今回の新しい機構をつくるに当たりまして、いわゆる企業の吸収合併みたいなイメージで見られるのが一番嫌なというか、そうあってはならないと思っているところでございまして、せっかく新しい機会が与えられて、円借款、無償、技協という、日本が持っている三つの援助手法を一つの実施機関でやれるようになる。その統合効果というのをいかにして最大限出すかというところを最大の眼目にして組織づくりをしていこうと思っております。もちろんカルチャーの違う組織が一つになるわけですから、いろんな問題を解決していかなければいけませんけれども、繰り返しになりますが、最大の目標はまさにこの三つの援助手法の相乗効果というのをどう出すか。そのためにベストの組織をどう作るかということで種々議論しております。このペーパーはその最初のプロダクトということでございまして、ここまでに至るまでにもいろんな議論がありましたけれども、お時間のあるときにお読みをいただければと思います。 最後にもう一つだけ。改革とは直接関係ないかもしれませんけれども、冒頭、金田副大臣もちょっと言及いたしましたけれども、いま自民党の歳出改革プロジェクトチームで大きな議論が行われております。非常に日本の厳しい財政事情を受けまして、例外なく、聖域なく、大胆な歳出カットをやろうということでございますので、そういう意味でODAというものも対象とならざるを得ないということは現実なんだろうと思いますし、われわれもいまのODAを真剣に見直して、一層の効率化、合理化に努めるというところでは異論はございません。しかし他方で、ここにお集まりの先生方もご案内のとおり、ODAにつきましては、すでに過去9年間に35%減っているという現実がございます。実はきのう、在京のアフリカ外交団の外交団長でありますチュニジアの大使が金田副大臣のところに非常に異例の申し入れをして来られたんですけれども、私も同席させていただきましたが、そこで大使が言われたのは、われわれから見ていると、せっかく去年、小泉総理が100億ドルの増、あるいは3年間、アフリカ倍増、こういうメッセージを出されたのに、どうも報道を見ていると、それと全く逆のメッセージ、つまりこれから5年間にわたって日本はODAをどんどん減らしていくんだというメッセージを出している。これはわれわれは一体どうやって受けとめていいのか、よくわからないと。われわれは聞いていて、非常に耳の痛い話でございます。それから円借款を増やすと言うけれども、先ほど大野先生からもご指摘がありましたけれども、ほとんどのアフリカの国にとっては、やはり無償、技協、ここが減っていくということは、直接ヒットされるということなんだ、ぜひその辺を考えてほしい。それから3番目に、まさにアフリカがいま新しい戦略的な価値、特にエネルギー資源の供給源として新しい戦略的な価値をいろんな国が注目して、いままでドナーではなかった新しいドナーがそういう観点からアフリカに対して大きな関心を抱いているときに、日本がアフリカから撤退していくようなODA削減というメッセージというのはどういうことなんだろうかと。非常に率直、かつ厳しいご指摘をいただきました。私ども、そういう声を自民党のPTのほうにもお伝えをしながら、もちろん財政再建の枠内でがんばらなければいけないところはがんばらなければいけませんけれども、ODAに関する一層の理解を皆さんに求めていきたいというふうに思っております。 時間を取って恐縮でございます。以上でございます。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。今後のODAのわれわれの総合戦略会議の持って行き方についても、この時間帯にご一緒に報告していただけないでしょうか。 |
(高橋参事官) | 機会をいただいてありがとうございます。ODA総合戦略会議につきましては、本当に長い間、委員の方々のご尽力ありがとうございました。私ども、6月26日をもちまして、現在の委員の皆様の委嘱期間が終了するというふうに理解をしております。総合戦略会議の重要性につきましては、先ほどちょっと言及しました「海外経済協力に関する検討会」の報告書におきまして、国民の意見をODAに反映させるということから、さらなる充実に努めるという提言がすでに出ております。今後、どういう形でこれをやっていくか。委嘱期間がいま申し上げました期日で終了することに伴いまして、現委員の皆様方には一旦ご退任をしていただくということになるかと思いますけれども、できるだけ早い時期により機能を充実させた、新たな会議としてスタートしたいというふうに思っております。新しい会議の立ち上げのタイミングは早ければ早いほどいいと思いますけれども、いまちらっとご説明しましたようなODA改革の大きな流れの中でいろんな要素が出てきております。そういう改革の方向性も踏まえながら、関係省庁の参加のあり方等々、新しい会議のあるべき姿については、私どもはもう少し時間をいただきまして、じっくり検討した上で、皆様に対してこういう形でやりたいというアイデアを披露したいというふうに思っております。委員の皆様方、これまでの長い間、いろんな形で係わってきていただきました。さまざまなご意見があろうかと思いますので、新たな会議のあり方につきましても、忌憚のないご意見を私ども経済協力局のほうにお寄せいただければ幸いかと思います。どうもありがとうございました。 |
(渡辺議長代理) | いま高橋さんのほうから三つのお話がございましたが、一つは国別ODA計画、これはわれわれの総合戦略会議のメインの仕事でしたが、われわれが26日をもって退任するとした場合、残っている国別計画を今後どうするかという問題があるわけです。これについては今後はしばらく政府開発援助関係省庁連絡協議会、そちらのほうにやっていただくということになりましょう。ご記憶でありましたでしょうか、われわれのところで提起された国別ODA計画がまだ三つ残っております。それぞれについて、プレリミナリーな報告はすでに出されています。一つがフィリピンでございます。これは吉田恒明先生に主査になってやってもらっております。これが目下進行中でございまして、年内完成という予定で進んでおります。これが一つ。もう一つは神戸大学の高橋基樹さんにお願いしてございますエチオピアがありますね。これももう作業は進行中でございます。第二四半期内の完成を目指し作成中ということでので、若干、フィリピンより早くなる可能性があります。それから三つ目、エジプト、これはアジア経済研究所の山田俊一さんに主査になってやっていただいております。これは最も早く進んでいるようでございまして、8月ごろの完成をめざしているということです。もちろん最終案が固まったところで、諸委員にお送りいたしますけれども、先ほど申し上げましたように、各省庁の連絡協議会のほうで了承してもらうという筋書きになりますことをご承知おきいただきたいと思います。 それから2番目については、もう既に今おっしゃってくださったODA改革についてであります。それから最後が、このODA総合戦略会議の今後についての外務省の方針が提起されました。あまり時間はございませんが、一つ二つコメントがあればお受けしたいと思います。 |
(磯田委員) | この会議がそういう形で解消というんでしょうか、一区切りということは、私は全く異論はございません。より適当な形に改組されたほうがよろしい。ですけれども、4年間やってきたもののある種の総括が必要と思います。通常、諮問委員会なりの報告書が出たりあるわけですね。ですが、この委員会は、たとえばODA大綱であるとか、国別援助計画を策定して、それを出すことが一つの目的ではあったものの、国民参加という名のもとの会議を初めてつくったという意図があったわけですので、そういう意味での総括があるべきです。何もないまま、これで終わりますということに関して、あまりにも節操がないという印象があります。2年目の1回目の1期が終わった段階でも、総括の報告をすべきだと私は申し上げたんですが、議長代理はまだ時期尚早というふうにおっしゃっられたんですけれども、結局そのままお疲れさまでしたとのでは、私としてはちょっと釈然としないんですね。どうしたらよろしいか。各委員からそれぞれコメントでも集めていただいて、総括の何かをつくられるか。私は何かすべきだというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。千野委員どうぞ。 |
(千野委員) | ありがとうございます。私は12時少し前に退席させていただくので、先に発言させていただきます。 私はODAに関して別に専門家でもなく、メディアという立場から参加させていただいて、たしか第二次ODA改革懇談会のときからかかわらせていただいたんですが、この総合戦略会議というのも、改革懇の提言の中から生れたものであったと思います。正直言いまして、この4年間のコメントということで言わせていただければ、渡辺座長がメインのお仕事というふうにおっしゃられたように、国別援助計画をないところからつくるということでは大変いい仕事をした、いろいろな先生方のご協力を得て、これは大変意味があったというふうに思います。 他方、これはでき上がった当初からの私の戸惑いでもありましたけれども、そもそも総合戦略会議という名前を付けた意味は何であったのかということを考えたときに、必ずしも、総合戦略に値することをしたのだろうかという、それを試みたけれども、結果的にはどうだったのかなというふうな感じは当初から一貫してあったというのが正直なところです。それは先ほど高橋参事官のほうからご説明があったように、文字どおり戦略的に内閣府の下で今後やっていくという形になって、それはそのほうがよろしいのではないかというのが私の感想であります。 最後に、チュニジアの大使の申し入れということに関連して、これも常々感ずるところなんですけれども、正直、新聞社の論説担当者たちの間でも、歳出・歳入一体改革、財政再建は大変大事なのであるという議論と、他方、しかしまず財政再建ありきでいろんなことがカットされていくことは相対的に日本の国益から見てどうなのかという、これはなかなか結論が、論説の場においても出ないところで論争になっております。 ひとつ思うのは、やはり日本はODAというものを文字どおり有力なツールとしてやってきた中で、世界がもう一度ODAを見直している中で、仮にもそういう印象を与えるということは、やはり私は個人的にマイナスであろうと思います。 問題の一つは、日本がODAで世界の流れをつくるというところに、どこまでイニシアチブを発揮しているかということにもかかわってくるのだろうと思います。そして、自民党内のことはわかりませんけれども、財政再建が絶対であるという中で、ともすれば、国際社会の流れとは別に、国内優先であり過ぎていないか、そういう疑問も提起していくことが大事なのではないかなと思います。 以上です。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。先ほど高橋参事官のほうからもお話がございましたし、それから、実は草野さんが今先にお帰りになっていたんですけれども、私のところにメモを置いていきました。そのメモでも政府・与党では2011年度のプライマリー・バランスの黒字化を目指して、今後5年間の一般会計予算の歳出カットを議論しており、ODA供与額が既に相当減ってきている上に、これからこのような比率で減っていった場合、我が国の外交力がとんでもなく薄いものになってしまうという危惧があるので、そのことをぜひ草野さんの意見として皆さんに伝えていってほしいというメモをいただきました。私も全く同感であります。 この点について、我々の総合戦略会議で何が不足かを申し上げたいのですけれども、そういう場がこれからはなくなるわけですね。各委員、それぞれマスコミ、メディアに報道する機会がおありでしょうから、そういう場を使ってでも積極的に声を発信していただきたいと思います。 磯田委員のほうからは、どういう形でまとめるかはともかく、総括の必要性があるというご意見がございました。この点、どう考えたらよろしいでしょうかね。私の気持ちとしては、やはり国別計画が、これだけ軌道に乗って、まだ全部終わってはいませんが、軌道に乗ったということは、非常にこの会議の一つの大きなポイントであったろうと思うんです。 その他、大綱やそれに基づく中期計画、それから改善と点検等についてタスクフォースをつくり、それらの基となるコンセプトがここから発信できたということも大変自負していいと思うんです。 ただ、2つの点が残っています。分野別、あるいはイシュー別の議論をここでほとんどやる時間がなかったということ。それからもう一つ、千野委員が最後におっしゃったように、総合戦略について議論する時間がなかったのは、看板に偽りありと言われても致し方のないことだったかもしれません。しかし、この会議ができ上がる直接的なきっかけになったのは、総合戦略というより、むしろ国民参加のほうだったんですね。これは第二次ODA改革懇談会の座長を私させていただいて、その場でそのような方向が固まって、外務省でこの委員会を立ち上げるということになった次第です。 国民各層のいろんな組織からの参加を得てこの場でいろんな議論ができたと思います。そして政策にもかなり少なくない影響力を持ったということは自負していいんじゃないかと思うんです。この4年間の歩みを総括という形ではなくて、こういうことをやってきたということを粛々とファイリングした一つの記録として整理しておくというのはいかがでしょうか。総括というか、そこに評価を加えねばなりません。そうなると、やはりいろいろな問題が出てくる可能性があります。そのために、また委員会を開かなければならないというふうになっても困る。 |
(荒木委員) | 私は、今まで4年間いろいろやってきたことについて、各委員、いろんな立場から発言をしてきたわけですけれども、4年間を振り返って、それぞれの人たちが得た教訓等も含めて、提言というか、いろいろ意見があれば、それぞれ提案をして、次の委員会に対するメッセージみたいなものがあれば、それをそれぞれ出していくという点ではどうかなと思います。 |
(渡辺議長代理) | まとめて出したらよろしいというふうに考えるんですか、個人としてでしょうか。 |
(荒木委員) | 全く委員として、それに参加した経験をたどりながら、次のこういう会議というか、この会議はどういうものであればいいかとか、例えば国別援助計画についても、もう少しこうした方がいいんじゃないかとか、いろんなそれぞれ思いがあると思いまして、それを全部つづって出して、それを統括することはないでしょう。それは当局というか、誰に出すかというと外務大臣に出すわけでしょう。外務大臣がそれを読んで参考になるのったら、大いに次に反映していくということの提案書みたいなものだったらいいんじゃないかと思います。 |
(渡辺議長代理) | わかりました。要するに、今度終わる会議と次の設定される会議との連続性の問題、こちらで蓄積された資産の引き継ぎ、逆に反省点があれば、それも述べていくということですね。これは今度委員がどのくらい入れかわるのかにもよりますけれども、委員の若干が連続的であれば、そのリスクは避けられるでしょう。もし全面的にかわるということになるのであれば、インフォーマルな形でも、総合戦略会議の何人かと、新しいメンバーのキーパーソンとが一回くらいインフォーマルにでも会って話をする。そのときには1枚ぐらいのメモはつくっていた方がいいとは思いますが、この点どうでしょう。事務局と私のほうで相談させてもらって、引き継ぎに分断ができないように努めたいと思いますが。 |
(磯田委員) | この会議も議事録はそのまま公開しているということもあり、ある種国民参加とは言っても、限られた委員だけが話ししているという、それをできるだけ開かれたものにしようというのは当初からあったと思うんです。ですから、今、荒木委員からおっしゃってくださったことは私も同感ですので、一人ずつが書いたものを、そのまま掲載されるということを前提でお書きいただいて、ホームページでも最後の総合戦略会議の委員からの反省と提言というんでしょうか、成果と提言ですね。そういったものとして総括しましたという、要するにバラバラで構わないと思いますので、そういったものを最後ホームページに掲載していただくというような形でお開きにしてはいかがでしょうか。もちろん、その後残る方もいらっしゃるでしょうし、ですが、そうじゃない方もいらっしゃるわけですから、そういった形で国民にきちっとそれを示すという形にしていただきたいと私は思います。 |
(渡辺議長代理) | どうですか、その辺のご提案について。 つまり、会議として何か固有の意見、提言をするというよりは、個々人、このような反省点や、あるいは建設的な意見を出してもらい、これを議長代理がまとめるということもありえましょうね。 |
(荒木委員) | ですから、それぞれ出したものを議長が、その意味で総括されて、それで一括して個々のやつをみんな情報開示してバラバラ出すというよりも、その中でいくつかまとめて、それで情報開示するということではどうでしょうかね。 それからもう一つは、もっと厳しいことをいろいろ言いたいこともいろいろあるけれども、あんまり全部をさらけ出すというわけにはいかないんじゃないかと僕は思います。少しその辺は渡辺さんが責任を持ってまとめていただければ、それで僕はいいと思います。 |
(渡辺議長代理) | 要するに、ポイントは今の会議と次の会議の間に溝があっては困るということですね。この辺はさらに伸ばしてほしい。この辺は反省してほしいということがうまく伝わることがポイントですよね。個々の人の意見を私がまとめるなりしても結構ですが。それを情報として公開するかどうかは別途考えてみましょう。 |
(磯田委員) | まことに僣越なことを申し上げるんですが、つまり、どなたがお残りになるかがわかっているから、そういう発言なのか、わかっていないですよね。 |
(渡辺議長代理) | はい、もちろん。 |
(磯田委員) | ですから、それがどう引き継がれるのかが、引き継がれるでしょうという願望に過ぎないように聞こえてしまうんです。おっしゃられたとおり、本当に委員として参加していたわけですから、そこでの責任というのは当然あるわけですので、全く人ごとのように批判する人は当然いないと思いますし、建設的な意見で書いていくだろうと私は思っています。 それとあと、もし字数とかが問題があれば、字数制限をされるとか、そういう形で対応はできると思いますので、ぜひご検討をいただきたいと思いますけれども。 |
(渡辺議長代理) | その他、ご意見、砂川さんご意見どうですか、その点に関しては。 |
(砂川委員) | 引き継ぎありきなのか、総括ありきなのか。どちらかというと、どういうことをやった、これだけの意味があった、こういうことができなかったというところをまとめておいた方がいいと思います。そのあとどうされるのかはお任せしたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | わかりました。あまり長く議論するわけにもまいりません。皆さん、強制ではございませんが、それぞれメモに書いて事務局のほうに提出してください。それを私がもって比較的短いものにまとめ上げてみましょう。私の考え方も入れつつですね。それを次のチームに引き継いでもらう、参考資料にしてもらう。ネットで公開したほうがよろしいと判断した場合には、それを公開することにしましょう。 それで、牟田先生のほうでおやりになっている評価ですね。ここでも既に報告をいただいておるのですけれども、お手元に五、六枚紙が回っていると思います。お約束の時間が10分を既に過ぎてしまっておりまして、少々簡単にご発言ください。 |
(牟田委員) | 恐れ入ります。3分ぐらいでやらせていただきます。外務省では政策レベル、プログラムレベルの評価をすることになっておりますが、それはODA評価有識者会議が引き受けることになっております。昨年度やりましたのが、お手元にございます8件でございまして、国別評価としては4件、分野課題別として2件、スキーム別として2件でございます。これらは3月に報告書ができ上がっておりまして、すべてホームページで閲覧できますので、細かなところはそれを見ていただければと思っております。 それぞれの、特に国別評価に関しましては、本日、国別援助計画が3件ほど紹介されましたけれども、それを4年、5年計画を実施いたしますと、その評価をする必要があるということになります。この国別評価は、そういう意味でございまして、この評価の結果をもとにして、新たな次の計画につなげていくというものでございます。そういう意味で、PDCAの中の「P」というところを戦略会議が主に担っているかと思いますが、PDCAの「C」というところを、この評価が担っているというふうにお考えいただければ、計画と評価とが表裏一体として、ODAが連続的に改善されるような仕組みになっていると思います。 このすべての評価報告書には、最後の方に提言というのが書かれております。このお手元の資料は、提言をまとめたものでございます。この提言に関しましては、経済協力局長のほうから対処方針というものを出していただきます。それぞれの提言について、これは実行するとか、いつ実行できるとか、しばらく時間がかかるとか、これは無理だとか、そういうことを言っていただいて、さらに1年後に進捗状況の報告をODA評価有識者会議の方に報告をしていただくということになっておりまして、提言のしっぱなし、言いぱなしにならないような、フィードバックのシステムが現在では作られております。 それぞれの報告書の中の提言というものは、国や分野は違いましても似たようなものもございましたので、今年度はいくつかのカテゴリーに分けられないか工夫をいたしました。お手元の資料の左の方にタスクフォースの強化活用とか、被援助国、他ドナーとの協調といったようなことが書いてございますが、こういう形で提言を大きく括ってまとめてみました。 提言への対処というのは、個々の国とか、あるいは分野への対処だけに限らず、もっと一般化ができる対処というのもあるわけでございまして、本年度はここに書きました大きく括りましたものについて、たとえば、タスクフォースの強化・活用に関して具体的にどういうふうにするか、といったような感じで対処方針を考えていただくということで、現在作業中というように聞いております。 このように、ごらんいただきますとわかりますように、このODA総合戦略会議の場でもいろいろとご議論いただきましたようなことが、やはりここで提言の大きな括りとして出ております。こういうことに対して、外務省として具体策を考えていただき、さらにそれの進捗状況を報告していただくという形で、ODAの改善をさらに進めていただいているというところでございます。 本日例えば一般財政支援ということに関しましても、いろいろご意見が出ましたが、タンザニア、ベトナムの一般財政支援に関して詳しい報告書が出ておりますので、ぜひホームページでごらんいただければと思います。 時間がございませんので、細かい中身については省略をさせていただきます。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。大変重要なテーマですのに、時間をほんのわずかしか差し上げることができず、恐縮でした。 すっかり予定の時間が過ぎておりますので、以上をもって終わりにしたいと思います。今回で現在の形でのODA総合戦略会議は、これが最後になります。 振り返りますと、この4年間フォーマルな戦略会議、あるいはインフォーマルな打ち合わせ、タスクフォースなどで随分といろんなODAに関するテーマを議論してきたなと、今振り返って思います。その過程で何より国別のODA計画、きょうもお三方の説明があったわけですけれども、これが軌道に乗ったということは、何といってもこの会議の最大の成果であったろうと思います。 それからODA大綱、それに基づく中期政策、改善と点検等々についても、その草案がここから発信できたということも自負していいことではないかと思います。もちろん足らざるところがいろいろあったことも承知しておりますが、いずれにしましても、委員の諸先生方には長期間、大変お忙しい時間を割いてご出席いただき、ご苦労いただいたということに議長代理としても深く感謝したいと思います。 なおまた、今後ともよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。 |