1.日時 平成17年9月26日(月)9:00~11:00 2.場所 外務省南庁舎7階 国際会議室761号室 3 出席者 ODA総合戦略会議委員が出席(磯田、大野、関山委員は欠席)。外務省(事務局)より佐藤経済協力局長他が出席。関係府省、JICA(国際協力機構)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加。 4.議事の経過 (1)国別援助計画
対エジプト国別援助計画、対ウズベキスタン・カザフスタン国別援助計画について、それぞれ、山田 俊一(やまだ・としかず)主査(アジア経済研究所開発研究センター研究主幹)、石井 明(いしい・あきら)主査(東京大学大学院国際社会科学専攻教授)より中間報告が行われた。 (2)ODAの点検と改善に関する作業部会の第1回会合(8月31日)、国連ミレニアム宣言に関する首脳会合、及び平成18年度ODA予算概算要求について、事務局からの報告があった。
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(渡辺議長代理) | おはようございます。8月が終わり9月に入りまして、しばらく連続して戦略会議を続けてまいりますが、何分ご協力をお願いいたします。 本日は、大きく分けて3つの議論がございます。第1が「対エジプト国別援助計画」です。これはかねてよりお願いしてありました、アジア経済研究所開発研究センター研究主幹の山田俊一主査からの中間報告です。山田主査より、中間報告をご説明していただいた上で議論を進めてまいります。 第2は「対ウズベキスタン国別援助計画並びに対カザフスタン国別援助計画」です。これは石井明先生に扱ってもらっているものです。中間報告ができましたので、これをご報告いただいた上で議論したい。 エジプト、ウズベキスタン、カザフスタン、この3国に対するODA計画の中間報告については、今日この総合戦略会議の了承を得たいのですが、その方向で議論がなされればと思います。 第3は、事務局からの報告です。上村政策課長より2点の報告がございます。ODAの点検と改善に関する作業部会の第1回会合が8月31日に開かれましたので、それについての報告が第一です。第2は、平成18年度政府及び外務省平成18年度ODA予算の概要要求について、「国連ミレニアム宣言に関する首脳会合」について、それぞれ報告がございます。 早速、最初のテーマ「対エジプト国別援助計画」に入りたいと思います。資料は既にお手元に参っていると思いますので、これに基づきまして、山田主査からご報告をお願いします。 |
(山田主査) | おはようございます。山田です。よろしくお願いします。 昨年発足してから、東京タスクフォースで5回の会議を行い、それから、この3月に、当初から委員として参加されている牟田先生と一緒にエジプトへ現地調査に行ってきました。お時間があれば、その報告もしたいと思います。 お手元のペーパーは第2次案ですが、中間報告に向けて、これまでつくってきたものを提示いたしました。構成は「作業方針」のところで説明してあるとおり、「最近の政治・経済・社会情勢」。最近は、大統領選挙がありましたけれども、そうしたことを踏まえて、適宜書き直したいと思っております。 「開発上の課題」ですけれども、これはお手元に配りましたので、後で説明いたします。 3の(1)「対エジプト援助の意義」のところも簡潔に説明いたしますが、基本的には、最初の会議で皆様に説明いたしまして、アドバイスしていただいたものを踏まえて作成しております。 それから、3の(2)「我が国のこれまでの援助」、(3)「我が国援助のめざすべき方向」、(4)「重点分野・課題別援助方針」についても簡潔に説明させていただきます。 早速ですけれども、「対エジプト援助の意義」に関しまして、我々はODAの戦略的活用の観点から、対エジプト援助の重視を基本的に認識しました。先ほどのペーパーでは、(イ)、(ロ)、(ハ)の3つに分かれていましたが、会議のために箇条書きにしました。 エジプトは地政学的に重要であり、平和と安定に向けて重要な役割を果たしていること。それから、中東はエネルギー供給地域であり、その意味では国際社会全体の安全と反映に直結する問題であること。それから、エジプトは、我が国の中核的なパートナーであり、とりわけイラク再建、中東和平、リビアの国際社会への復帰、スーダンの平和構築等において、エジプトは役割を果たしているということ。 もう一つは、テロの国際化ということがありまして、これに関しましても中東の改革支援、政治・経済社会の改革支援、これが重要な問題ですけれども、エジプトはこれを積極的に進めていること。 経済のほうに移りまして、エジプトは、最近、天然ガスの輸出を経済開発のエンジンとしておりまして、そうした意味で、一時、エジプトの中東における経済的な地位は下がったという認識はありますが、最近では高まりつつある。それから、地域経済統合を進めて、貿易とか投資、そうした意味でエジプトの重要性が高まりつつあること。 それから、エジプトはGDPが1,622ドルですが、人口の4割を超える国民が1日2ドル以下ということで、まだ貧しい国であるということ。そうした意味では、国際社会からの援助が必要であります。 最後に、近年、国際収支はよくなっているのですけれども、やはり国際経済や地域紛争等に対してまだ脆弱である。そうした意味では資金ニーズは高いし、MDGsに関してもまだ後進地域があり、そうした地域の貧困削減など課題が多い。場合によっては、達成もそれほど確実ではないということが言えると思います。 これが「対エジプト援助の意義」であります。 次に、「エジプトの開発計画と開発上の主要課題」に移ります。20年の長期計画として、2002/03から21/22年までの計画がありまして、ここでは7つ挙げております。第1は天然資源の保存と砂漠地の開発。2番目が人口成長率の引下げ。それから、成長率を年間6~8%に高める。それから、国際収支、貧困削減、人的資本開発、社会サービスの向上、これが大きな目標になっております。そのための戦略に関しては、一応目標だけ掲げさせていただきました。 06/07年までの第5次5か年計画がありますけれども、目標の一つは、年間75万人の雇用創出です。実際には、年間に40~50万人しか雇用が創出できていないのですけれども、このくらい雇用創出していかないと失業問題は解決できない。そのためには、年率で6.2%ぐらいの成長が必要であること。それから、低所得者層に特別に配慮した国民の生活改善及び社会サービスへ予算を割り当てる。あとは、マクロの均衡ということです。個別的には、ミクロの政策とか分野別政策に関しては、本報告書では詳しく書いてあります。 それから、昨年7月からナズィーフ内閣が発足しておりまして、ムバラク大統領から、とにかく高度成長、社会的な公平を高める、そういった大きな目標に向かって発足いたしまして、12月に発表した10大プログラムがありまして、そこはかなり網羅的に国の政策が書いてあります。「投資・雇用」、「補助金・価格・市場の監視」、「国民に必要なサービスの発展」、「経済パフォーマンスの発展」、「教育・科学的研究の発展」、「保健サービスの発展と人口増加の抑制」。これは、一番左を見ていただけるとわかると思いますが、エジプトは今人口成長率が2%あり、人口が7,000万人として、年間140万人増えてしまう。人口の圧力が大きいということで、特に重要な課題だと思います。あとは「行政機構の発展」、「天然資源の保存」、「政治・立法環境の発展」、「知識社会の建設」ということでございます。 開発上の主要課題につきましては、前回の現地調査を踏まえて、エジプトにとってどのような課題があるのかを10項目に分けて整理してみました。エジプトの場合は、人口の圧力がありますので、都市と農村地域の拡大をしなければいけない。空間的な拡張がかなり必要であろうということです。 それから、グローバル化と地域経済の統合ということで、とりわけ今はEUとのパートナーシップ協定等がありますし、アラブ・アフリカ地域との地域経済統合が進んでおりまして、それに対する対応が急務であること。そして、市場経済化と競争力のある産業育成が必要です。 それから、雇用促進。農業の生産性向上と食糧自給率改善。とりわけエジプトは小麦の需要が1,200万トンあるのですが、今は600万トンぐらいしか生産できないということで、低所得者用に安価な小麦を生産するためには900万トン近く小麦を生産しなければいけないという国家的な課題があり、そうしたことが重要であるということ。 次に、経済の牽引力となる観光部門の開発。これに関しましては、2000年の始めごろから、USAIDを通じまして、観光部門がGDPとか雇用に与える影響をもう一回研究し直したと。その場合、GDPで見ると、例えば観光部門が与える影響として、ホテルとかレストラン、そういう項目があるのですが、これだけではGDPの約1.1%しかないし、雇用でも0.9%しかない。ただ、もう一回、直接的な効果とか二次的な波及効果を加えると、その数倍、観光部門は経済的に効果があると認識されていまして、観光部門は開発しなければいけない。 それから、基本的な公共サービスの充実が必要であること。とりわけ社会的な弱者に対する保護が必要であること。 環境保全ですが、中小・零細企業の奨励。エジプトの企業の95%はインフォーマルセクターと言われておりますけれども、これをどのようにフォーマライズしていくのか、つまり、登録をして、場合によっては融資をする。そうしたプロセスが必要ですが、これを行っていかなければならない。 最後に、MDGsの達成ということで主要課題をまとめました。 国別援助計画の目指すべき方向としては、総合的に「競争力がある安定した経済社会への移行」。これを対エジプト経済援助のテーマとしたい。これは3つに分かれまして、一つは「持続的成長と雇用創出の実現」。それから、「貧困削減・生活の質の向上」。最後に「地域安定化の促進」ということで作成いたしました。これに関しては牟田先生からかなりご指導をいただきまして、「選択と集中」ということを踏まえて作成いたしました。 次にお配りした資料ですが、これは、今説明した国別援助計画の目標体系図です。「競争力のある安定した経済社会への移行」、そして3つの柱。重点セクター目標、援助内容をご説明いたしました。 最後は、エジプト国別援助計画(2000年)と比較して、今回の計画がどのようになったのかということで、中間的な第二次案ですが、このように作成いたしました。時間のこともありますので、私の簡単な説明はこれで終わりまして、次に、最初から指導をいただいている牟田先生からコメントをいただきたいと思います。 |
(牟田委員) | それでは、簡単ですが、追加でお話をさせていただければと思います。 最後の資料をご覧いただければわかると思いますけれども、前回の2000年の援助計画と今回の案の違いでございます。今、山田先生からもお話がありましたように、エジプトは日本にとって大事な国ですが、かといって日本がトップドナーというわけではありません。そうした国であれば、なおさらのこと「選択と集中」が大事ではないかと思います。「選択と集中」といっても、単に何かを拾ってほかを切り捨てるということではなく、従来の援助、あるいは、これからの援助を少し整理し直して、援助内容をもう少し構造化して、何のために援助をしているのかをわかりやすくしようということで3つに括りました。 もちろん、小さなアイテムを見れば似たようなものが並んでいることにはなっておりますけれども、前のページにあります目標対系図をご覧いただければかなりわかりやすくなっているのかと思います。これは中間報告ですが、この後、具体的に詰めていきたいと思っております。 それから、エジプトに現地調査に参りまして、幾つか感想を持ちました。一つは、観光はエジプトでは一大産業であるということです。雇用吸収力もありますし、もちろん、観光だけで生きていけるわけではないのですが、これは比較優位から言えばすばらしいものですから、こういうところにも援助をしながら、そして、そのほかの産業育成にも寄与できればいいと思いました。 それから、エジプトでは、日本の援助でつくった立派な病院がありますが、そこでイラクからの医師の研修を行っておりまして、このように、既に日本が援助をして財産として残ったものを利用して第三国の協力を進めていくという構造は、大変いいということを感想として持ちました。 |
(渡辺議長代理) | 山田さん、牟田さん、どうもありがとうございました。 では、ここで、対エジプト国別援助計画について、自由なご意見を交わしていただければと思います。 |
(青山委員) | 包括的な方針をありがとうございます。まさに、おっしゃるとおり、この3本柱を重点分野として進めることがエジプトにはふさわしいのではないかと思います。 実は、私もこの夏、エジプトに6年ぶりに行ってまいりました。前回より空港もよくなっていましたし、先ほど牟田先生がおっしゃったイラクの研修なども進んでおりまして、エジプトのポテンシャルを感じました。 少し質問とコメントをさせていただきます。第1点目は、食糧自給のことに関連しての質問です。私が以前世銀でエジプトに関わっていたとき、食糧補助金のことがいつも問題になっていました。たとえば補助金があるため農業生産が上がらないなど、いろいろな問題が挙げられていました。その後、この補助金はどうなったのでしょうか。 2点目は、今回、看護大学が男女共学になっていたのに感心したのですけれども、男性の看護師は湾岸アラブ諸国で非常にニーズが高く人材が輸出できるという話を聞いて、少し疑問をもちました。おそらく、技術協力で社会セクターを支援するとなると、人材養成が重要な要素となると思いますが、養成した人材が流出してしまうおそれがあります。そういうところをどのように捉えて考えていけばよいのでしょうか。 人材は輸出産業と割り切ってしまえばよいかもしれませんが、エジプトの社会セクターを改善するために人材を養成しても、直接効果があがらないことになってしまいます。中東地域では、このように労働力の移動が多いと思いますが、その点にどう対応していくのかということです。 3点目は、社会福祉が重点課題として挙げられていることに関連してのご質問です。エジプトは、けっこうNGOセクターが活発で、世銀もソーシャルファンドでNGOを支援してその能力を活用していると思います。その一方で、エジプトのNGOはまだまだ問題があるということも聞きます。そうしたNGOとの関係を、貧困削減という重点分野では、どのように捉えて考えたらよいでしょうか。日本のODAも、NGOと連携することも考えていくのでしょうか。 それから、最後は、やはり、地域格差の問題です。MDGsを達成しようと思えば、南部あるいはデルタ地域など、貧困者の多い地域を特に重点化しないと、おそらく不可能だろうと思います。ただ、そうした地域格差を改善するために、エジプト側のコミットメントを引き出しながら進めていくのは、たいへん難しいことだと思います。そのあたりは、どのような戦略を考えていったらよいのか、教えていただきたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | 青山さん、どうもありがとうございました。 そのほか、一括して質問してお答え願いたいと思います。 浅沼先生、どうぞ。 |
(浅沼委員) | 純粋な質問ですけれども、今示していただいた表の中に「第5次5カ年計画」というものがあります。そこで示されているのは、雇用創出を目的とした持続的成長が重要であることが示されています。ここで、貯蓄率が16.9%から19.8%に引き上げられなければいけないと。それに比べて投資率が、当初は10.4%、それから17.3%というように、貯蓄率よりも相当低い率で推移するように書いてあります。ということは、いわゆるリソースギャップは、ここでは縮小と書いてありますけれども、存在しないことになりますよね。何か特殊要因があれば別ですけれども。そうすると、なぜ経常収支が赤字なのかというところもよく理解できないので、その辺をどこかで説明しておいていただくとありがたいと思います。 この全体のピクチュアが示すところは、どう考えても、アンダーインベストメントといいますか、これをとるとしますと、明らかに投資環境がよくないことを示している。この重点課題の最初に「投資ビジネス環境の整備」が出てくることは大変適切ではないかと思います。 もう一つ。これも純粋な質問ですけれども、財政圧迫の要因としての軍事費のほうはどうなっているのでしょうか。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 |
(千野委員) | 私は、全般的な点での質問です。 「対エジプト援助の意義」に書いてあることはそのとおりだと思いますが、それに関連して、日本にとってエジプトが大変重要であることもそのとおりで、ですから質問したいのですけれども、最近、エジプトに関して、ややネガティブなイメージがあるのではないかと思います。例えば、先日の選挙に関連して、長期政権なのではないかとか、民主主義はどうなっているのだろうかという問題。そういうエジプトが抱えている問題に対して、ODA大綱との絡みもありますし、その辺はどのように書かれるのかということです。 もう一つ、観光産業が大変重要であるということもそのとおりだと思いますけれども、観光といいますと、どうしても、最近は、観光現場で事件が起きるというイメージがついて離れない。したがって、テロの問題とか治安・安全の問題も観光産業にとっては非常に重要だと思います。その辺もどのような問題を抱え、どのような意識で捉えていらっしゃるのか伺えればと思います。 |
(渡辺議長代理) | 小島さん、草野さん。 |
(小島委員) | 2つの質問があったのですが、1点目は千野委員から質問が出されましたので、よかろうかと思います。やはり国別援助計画の場合は相手があるわけですけれども、相手に対するメッセージという点では、エジプトの長期政権がもたらした弊害、人権、こうした問題についての指摘はどこかであってもいいのではないかと思います。 2点目は、援助計画の目標として「競争力のある安定した経済社会への移行」、これが置かれて3つの項目に分かれて、さらに「重点セクター目標」、「援助の内容」に分かれています。私の質問は、この3つのどこに重点を置くのかということです。重点をどこに置くのかという私の質問は、資金的にどのようなことになるのか。これまでの国別援助計画と比べてどういうことになるのか。そういう意味での、3つの間の関係についてご指摘いただければと思います。 |
(草野委員) | まず1点目は、国民一人当たりのGDPが1,622ドルであるにもかかわらず、人口の4割を超える国民が1日に2ドル以下の生活を余儀なくされているというご指摘があります。この構造的要因は何かという点について、きちんとしたご説明があったほうがいいのではないかと思います。少なくとも、日本側として、こういうところが問題ではないかという指摘が、この国別援助計画の中にあったほうがいいのではないかと思います。 2点目は、2000年の国別援助計画と今回の国別援助計画では5年の時間的違いがあるわけですけれども、大きな違いの一つは、先ほど千野さんもおっしゃっていたテロだと思います。もちろん、日本人観光客を巻き込んだ大きな事件は21世紀になる前だったと思いますが、いずれにしろ、このテロの問題が、エジプトを考えるときに、我々日本人あるいは欧米諸国から考えますと離れないわけです。それからしますと、今回の国別援助計画のプログラムは、いずれも納得できるものですけれども、それは、トータルとしてテロ撲滅、あるいは、テロ問題の軽減・削減につながるという理解でよろしいのでしょうか。何か具体的に、このテロの問題を日本として重視するのであれば、このところについての何かの手当がODAレベルでできるとはお考えにならないのか。その2点でございます。 |
(渡辺議長代理) | 砂川さん、どうぞ。 |
(砂川委員) | 今までのご質問と関連するのですけれども、特に対エジプト援助の意義の観点から、なぜエジプトに援助をするのかについて、考え方をクリアにされる必要があると思います。特に、ここに書いておられる4番目の項目と5番目の項目、すなわち、「中東和平」、「テロの国際化」、その中でエジプトが地域的な平和の中核的な役割を課す、だからそこに援助をするのだと。これを別の観点から見ますと、この国は軍事的なにおいがします。恐らく、他国の援助も軍事援助が多いのだろうと思います。そういう国に対して支援することは、ODAの原則に鑑みて、果たしてどうなのかという点があろうかと思います。それがゆえに、社会的な面に対するアプローチを重視されておられると思いますが、それをより鮮明に出すことが必要と思います。すなわち、軍事大国に対して我々が支援する部分をその理由と共に明確にすることが必要だと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 それでは、お答えをお願いします。 |
(山田主査) | ご質問、コメントをいただきありがとうございます。重なるものもありますので、テーマに沿ってお答えできるものからお答えしたいと思います。 いわゆる計算に属する部分があります。IS(投資と貯蓄の)ギャップと輸出入ギャップ。エジプトの場合、どうしても輸入が多く、輸出が伸びないことがすべてのマクロのところに出てきている状況です。エジプトの場合は、輸出文化の欠如といいますか、輸入文化であった。つまり、草野先生のご質問と関係があるのですが、輸出をしないで、スエズ運河とか観光収入、石油など、レントのような収入があり、それを国民に配分している社会です。そうした意味で、生産性がなくて、とにかく輸入している。それがISギャップに出ている。一つは、成長し貯蓄率を上げるためには、モービライゼーションが必要であるということと、投資を奨励しなければいけない。これがISギャップのところで、これは、輸出が伸びれば、均衡的にISギャップが解決されるということでしょうけれども、とにかく投資を増やすがそれ以上に、国内貯蓄を増やす。それで輸出を増やして輸入を節約する。これが内外の均衡が図れるというのが、この第5次計画のマクロの数字です。 それから、ほとんどの先生からコメントをいただいたのですが、軍事と治安には非常に難しいものがありまして、エジプトの場合は、81年にサダト大統領が暗殺されて、それ以降、イスラムの過激派というか、イクスリーミストと言っていますけれども、それの粛正が問題になっています。また、常に問題になっているのは、非常事態法というものがあって、この法律で、いわゆる法的な裁判所の承諾なしに人を拘束できるということで、いわゆる野党の人たちはこれを廃止しろと言っています。ところが、治安がよくなったかなと思うと、またすぐにテロが起きるとか、常にそうした問題があって、そうした基本的な問題が解決されない限りは、民主化とか人権が簡単には、口で言うほどにはうまくいかないという問題があります。 そのためにはどういったことが必要かということで、テロと貧困とは関係がある、関係ないという議論がありますが、基本的には、テロと貧困は関係ないけれども、そうしたものを醸成する要素になっている。そうした意味では、貧困を削減して、社会的な安定を図ることが重要であろうと。 砂川先生からの軍事費に関しては、統計を見ますと、対GDP比で3%で、それほど悪い数字ではないと思いますが、エジプト国内で言われているのは、軍事費等の数字に関しては、リライブルであるかといったら、そうでもないなということが結構言われています。これはどこの国でもそうではないかと思います。 他面、軍事費が、兵隊の雇用とか、そういったものにも役立っている部分もありますし、先ほど出ましたテロとかいうこともありますので、この辺はなかなか難しい問題であると。これは、昔からIMFと世銀等が、歳出削減、軍事費削減ということを言ってきたのですが、中東の軍事情勢を考えると、ここはエジプト政府としてはなかなか譲れないということです。多くの途上国でこういうことがあると思いますが、エジプトも、とりわけテロの問題も大きいのでセンシティブな問題かなと思っています。 それから青山先生のご指摘の貧困に関しても、補助金に関しては、今の政府は、ネオクラシカルといいますか、補助金をなくしていこうとしています。民間部門重視の政策で、補助金は何とかしなければいけないということがありまして、補助金のターゲティングの問題を今やっています。補助金が、実は、ノンプアーのところまで行ってしまっている。つまり、プアーな人だけに投入されれば、補助金予算はかなり削減される予定ですが、システム上、貧困ではない人たちも配給カードを持って買ってしまえるわけです。それから、さっき出ましたパンなども、本当は貧しい人しか買えないのですが、実際は中産階級の人までみんな買っているわけです。これはすべて国の財政悪化の要因になっている。 これは削りたいのですが、先ほど言われましたように、現地調査に行きまして、今、タブーに挑戦しているのだと。つまり、インカインドの補助金ではなく、これをキャッシュに変えたいと。つまり、価格メカニズムを生かしたような補助金システム、社会的弱者に対する補助をしたいということですが、現実には、今年の予算も、実は、2004年からまた新たに補助金品目を入れました。つまり、2003年に為替をフロート化して、そのときに、フロート化した瞬間にオーバーシュートが起きて、為替がずうっと下がってしまったわけです。そのときに輸入価格がどんどん上がって、基礎食料品で10~30%上がったものがあって、国内の情勢が悪くなった。そうしたことがあって、2004年に内閣が変わったというぐらい、価格の問題が重要であるということがあります。 それから、ムバラク大統領が選挙に勝って最初にしたことは、キャンペーンでやった、物価と賃金をうまく均衡させたことです。最初にしましたのは、公務員の給料をいかに上げていくか。こういった問題でもあります。つまり、草野先生から先ほどご質問がありましたけれども、1,600ドルあるとはいっても、実は、貧困ラインのところで生活している人たち多いわけですから、この辺の補助金とか公務員の賃金とか、年金とかそれは重要な政治・経済的な要素です。 それから、人材育成と頭脳流出、これが一番重要だと思ったのですが、エジプトの場合、失業率が高く、これも統計はコントラバーシャルなことがあるのですが、今やっているのは、いかに人を育てて、その雇用先を見つけるかということで、できれば民間部門から吸収してもらえればいいのですが、それはなかなか難しいので、今、力を入れているのは、海外に人を出すということです。例えば、EUと特別の国、例えばギリシャなどと協定を結び、移民させてもらう。そうした外交政策をとっています。 看護師の話がありましたが、今、ソーシャルファンドなども、いろいろと養成をやっていますが、看護師は重点項目なので人を養成していく。これは国内の人間の安全保障という問題もあるでしょうし、場合によっては、近隣の国へのトレーナーとして出せるのではないかということも踏まえて、つまり、過剰な労働力をいかに国内外の需要と供給にマッチさせるかということが課題になっています。 それから、NGOに関しては、今、エジプトは、分権化ということで、例えば、ミスルプロジェクトというものがあって、これに関しては、HDI指数が低い地域を選び、そこを重点的に援助していく。つまり、エジプトは170か国以上ある中の120位で、エジプト政府が言うには、我々はこの計算は透明的にやっていると。上の国も気になるけれども、追いつかれる国のことも非常に気にしているということで、HDI指数に関しては、かなり向上させたいと思っている。そうした意味で、女性の文盲教育、成人教育、貧困地域の開発ということで、毎年50地域ぐらい選び、そこの社会開発をやろうとしています。 貧困地域、上エジプトの農村が多いのですが、その社会開発を行う主体はだれかというと、地方政府と裨益を受ける人たちやNGOに主体となってもらう。つまり、貧困に対して直接的に援助が行くためには、裨益者がプログラムに参加しなければいけない。そうした意味で、分権化とパーティシペーション、とりわけ、社会的弱者が参加するのだという戦略を今進めております。 それから、千野先生が問題とされた民主化の問題ですけれども、これはいろいろな側面があり、民主化が進んでいるのか、進んでいないのかという議論がありまして、エジプト政府としては、かなりやっているのだということを主張したい。 例えば、最近ですと、EUとエジプトの国際協力大臣との会談があったのですが、EUの近隣政策を見ていると、データが古くて今の状態をあらわしていない。今の民主化のスピードは非常に速い、だから2004年から2005年にかけての民主化のスピードをもっと入れて近隣政策を決めてもらわないと困ると主張しております。例えば、選挙制度の、これが改悪か改善かというのは難しい問題だと思いますが、一つは、大統領になれる資格の人は誰かといったときに、これまでの経緯とか、国会議員の推薦がない人が大統領になれるのかとか、実際にそうした問題がエジプトだけではなくて、欧米の議会でも、そうした資格要件はあるということで、過大にネガティブなところが言われているのではないかと思います。 ただ、エジプトとしては、これは歴史的な宣言なのだと。それまでは、信任投票であったものを複数の候補者にし、しかも、候補者はすべてメディアを通じて自分が言いたいことを言える。キャンペーンを張れるわけです。そうした意味で、これは本当に歴史的なのだということを皆さんは理解されていないのではないか、つまり、ネガティブな側面ばかりを言っているのではないかという気がします。 基本的には、民主化の圧力は国内外からあります。ただ、最近変わっていると言われるのは、批判が自由になったことと、政府与党が「市民権」ということを強く言いだしている。それから、「法の支配」とか、全くアメリカとかEUが言っているようなターミノロジーを使って、エジプトはこれからどんどん民主化を進めていくのだと。それから、政党法とか、政治に関する法律とか、家族法というか、例えば女性がその子どもに対して国籍を与えることができるとか、女性の離婚の問題とか、かなり進められているということは言えると思います。 これに関しては強弱があると思いますので、これに関しては適切に書きたいと思います。反対勢力の言い分だけを書いていると、エジプト側の努力が無視されてしまうのではないかということを感じています。 それから、小島先生のご指摘の人権というのは非常に難しいものがありまして、先ほど非常事態法の話をしたのですが、それまでは拘束した過程で亡くなる方がいるとかいうことがあったのですが、近年は、それに関係した人たちもみんな証言させる、つまり実態を明らかにしている。かつては、闇から闇に行っていたものが、今はかなり明らかになりつつある。ですから、人権のNGOも、今はかなり自由に行動できているということが言えると思います。かつては、人権のNGOはなかなか行動しづらくて、例えば、環境とか貧困削減のNGOは多かったのですが、最近は人権問題に関してもNGOが言えるようになってきているので、そういった意味では、社会が透明化されてきていると言えると思います。 それから、資金の配分は数量的にどうなるのかという小島先生のご質問は、これは重要な問題であるとともに、我々の援助方針が、実は、1と2とどちらなのかという議論も内部で厳しくやっております。これは微妙な問題ですが、基本的には、世銀とかEU等も言っていますように、貧困を削減するためには雇用と成長が必要であり、所得を生み出すような持続的な環境をつくっていくことが必要である。ただし、それから外れた人たちの問題がある。社会的弱者の問題があるので、そのためには、ソーシャルファンド、それから今エジプトが力を入れているのは、社会保険、健康保険制度、これを完全にして、開発から阻害された人たちをいかに救っていくか。セーフティネットをいかに充実していくのか。そのためには、テンポラリーな政府雇用も必要ですし、民間の雇用も必要であると。ただ、民間の雇用には限りがあるので、わざわざマニュアルな、レイバーインテンシブな公共事業をやって、それで貧しい人を雇用していくとか、いろいろ工夫をしながら、成長とセーフティネットをつくっているという状況であると思います。 まとめてお答えしたので、すべてのご質問に十分に答えていない点もあるかと思います。その点はご容赦いただければと思います。 |
(渡辺議長代理) | 多様な意見に対して、大変丁寧なご説明をいただき、ありがとうございました。 前回の末廣昭さんが主査をした、対タイ国別ODA計画を御記憶のことと思います。あそこでは、タイは日本のODAのレスピエントとしての地位を超えて、むしろパートナーとなったという報告でした。日本とタイが協力して第三国の開発に当たっていこうという連携型援助とでも言うべきものを末広さんは提起しています。タイの1人当たりGDPは二千数百ドルで、エジプトよりも高いとはいえ、発展の段階で既にそういう方向を見出している。「選択と集中」にスポットライトを浴びせてタイのODA計画をつくった非常に画期的な報告でした。 山田先生の報告にも「地域安定化の促進」、さらにセクター目標に行くと「アラブ諸国の人材育成」、「サブサハラ諸国の人材育成」云々というチャートが書いてあります。それぞれの地域内で、いわば先進的なポジションを占めている国を、日本のODAの中核国として設定して、ここを通じて連携型援助をやり、周辺諸国の発展を促す。つまり、日本をサポーターとする南南協力とでもいうか、そういう方向があちこちの地域でつくられることが必要だと、かねてより考えておりました。それが「選択と集中」というキーワードに見合い、また、より効率的なODAを展開するための条件もありましょう。それから、日本のODAの人材が不足している中で、元気な開発途上国の人材をより積極的に使っていかなければならない。こういう要請もありましょう。あるいは、新しくドナーとして生まれてくる国を、より立派なドナーに育てるという効果もあるでしょう。そうしたあらゆる面を含めて日本の新しいODAのフロンティアがその辺りにあるのではないかと考えています。 ご案を見てみると、まさに、この地域の中核的な国としてエジプトを設定している。ここを通じて日本がなにがしかのことをするという筋書きが重要だと思われます。そういう物語性があるODA計画の提示によって国民の支持を得やすくなります。そうすることによって、エジプトはもとより欧米先進諸国へのインパクトがある報告書になるかもしれないという印象を持ちながら伺いっていました。 |
(山田主査) | エジプトの援助受入れ、あるいは、我々が援助をしてあげるのだというところだと思いますが、実は、エジプトは、1985年ぐらいから、オイルグラットで累積債務問題が起き、500億ドル以上の累積債務を持っていまして、湾岸戦争等の参加があって、欧米諸国は50%の実質の債務削減を行っている。つまり、債務削減プラス経済改革ということをやっていまして、それまでは、日本は、資金協力という面も非常に強かったと思いますが、私が今回行って感じたことは、国際収支が非常によくなっていることと、外貨準備が今は200億ドルぐらいたまったと。91年ごろは十何億ドルしかなくて、ほとんど外貨準備がないところで200億ドルまでためてきている。 そうした意味では、資金的にプレッシャーはないと思いますが、エジプト側が言うには、これからは、資金を借りても、前の対外借入れによる高度成長はもうやめたと。つまり、対外債務を増やさないような形で資金を受け入れていきたいと。その資金を、外貨の獲得や、雇用を創出できるようなところへ援助をお願いしたいと。 それから、資金援助に関しても、お金が欲しいのではないと。我々は、技術とか知識、そうしたものが欲しいのだと。そういった意味で、援助供与国に対してのエジプトの考え方が変わってきていることも認識されていただきたいと思っています。 |
(渡辺議長代理) | これからまだしばらく仕事が続きますけれども、よろしくお願いします。 本日はかなり密度の濃いディスカッションをやったわけですが、きょうのご意見等も、合理的なものと考えられるものについては考慮していただいた上で、またしばらく作業をして、最終報告に向けてご尽力、ご努力をお願いできればと思います。 |
(浅沼委員) | ちょっと追加コメントをさせていただいてよろしいでしょうか。 これは、草野委員が提起された問題点とも関連するのですけれども、やはり第1に、エジプト自体の開発戦略がもう少し明確に書かれているといいなと感じました。ほとんどの貧困問題がたぶん地域格差によるものですよね。それは、地域格差といっても、ほとんどが農村部と都市部との格差によるわけですよね。それを何とかしようというときに、農村部での生産性上昇には限界があるから、そこに投資するよりも、経済加速によって、むしろ農村部の人口を吸収しようという戦略をとっているのか、そうではなくて、もっと地域開発によって格差を解消しようとしているのか、その辺がはっきりしていると大変ありがたいと思います。 それが、実は、最初に示したマクロの質問に関連しているわけです。このマクロの質問でしたところでは、明らかに、この書き方ではリソースギャップは存在しないわけですよね。投資率のほうが貯蓄率よりも低いわけですから、リソースギャップは存在しない。そうすると、考えられるのは、テクニカルなことで申し訳ないのですが、それがなぜ経常収支の赤字になるかというと、たぶん、そのファクターペイメントが相当あるのだと。それはたぶん、石油産業などがありますからそうなのでしょうけれども、そのほかに、国が負っている債務に対する利払いが相当多額に上るのだろうと。そうすると、さっきおっしゃった債務状況が問題になってきますよね。その債務状況が、今度は、日本の国別援助計画に関連してきて、もしここで、投資ビジネス環境の整備というところを第1の重点に置くとしますと、これはいろいろな形でのインフラですから、プログラミングまではここからは読み取れないのですけれども、たぶんJBICの出番になるわけです。JBICの出番になったときに、エジプトの現在の債務状況が非常に大きな要素になってきます。 そういう意味で、一連のところで、もう少し明確に書いていただくと、これはいい計画になるのかという気がします。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。それは最終報告に向けてよろしくお願いします。 |
(山田主査) | 渡辺先生、最後に一言。実は大変申し訳なかったのですが、浅沼先生のご指摘のリソースギャップに関しましては、貯蓄率と投資率の数値が逆で、申し訳ありませんでした。基本的には浅沼先生ご指摘の幸三をエジプトは持っています。 それと、草野先生のご質問で、お答えが不備で申し訳ありませんでしたが、我々も、農村開発、とりわけ農業が雇用の3割ですので、農業部門を拡大していくことが重要であると。それから、農村社会を発展させることが重要であると考えております。 これから再度現地との協議を行い、皆様のコメントを踏まえ、最終報告に向けていく予定ですので、よろしくお願いいたします。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 今日は、対エジプトに対する国別ODA計画の中間報告の議論をいたしました。きょうの議論に基づき、さらに優れた最終報告を出していただくよう、期間も限られていてなかなか大変なことだと思いますが、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。 次に、石井明さんから、対ウズベキスタン国別援助計画、対カザフスタン国別援助計画の中間報告を承りたいと思います。お手元の資料に従って、ご報告、その後議論をしていきたいと思います。 |
(石井主査) | それでは、「対ウズベキスタン・カザフスタン国別援助計画」の中間報告をさせていただきます。 お手元に、本文5枚、概念図を1枚、中央アジアの地図が添付されていると思います。今、主査から言われましたように、我々のタスクフォースは、ほかのタスクフォースとは違って、2ヶ国を対象として国別援助計画を作成する仕事を割り当てられていますが、2ヶ国に限らず、中央アジアという地域を念頭に置いて作成する、そういう前提でこれまで作業を進めてまいりました。 中間報告案の冒頭、「中央アジアに対する基本認識」から始めていきたいと思います。1の(1)の中央アジアは地政学的に重要であること、(2)の、石油・天然ガスの問題は先ほどのエジプトの国別援助計画のご説明と全く同じ順序で書かれていまして、地政学的に重要でないところはないわけですけれども、特に中央アジアは、ロシア、中国という大国に囲まれていて、両国ともこの辺を自国の裏庭と考えており、しかも、石油・天然ガスの産出国でもある重要なところです。 (3)のところでは、中央アジアはソ連邦に属していたわけですが、独立を達成して14年たちました。しかし、この地域が抱える問題は非常に深刻で、テロ、麻薬、輸送、水、エネルギー資源の有効利用、貿易、環境保全等、いろいろと共通の問題を抱えています。 もう1年前になりますけれども、昨年8月に、川口前外務大臣が中央アジアを訪問され、この紙に書いてあるように、「中央アジア+日本」という対話を立ち上げて、日本の新しい中央アジア政策を打ち出した。特に、地域の協力を推進する必要があるというメッセージを送ったわけでございます。 以上を基本認識として、ウズベクとカザフ両国に対する国別援助計画を作成する仕事を始めたわけですけれども、我々のタスクフォース立ち上げのとき、この戦略会議で、千野委員から、ウズベクとカザフは国情が違う、そういう国の違いに十分留意して国別援助計画を作成するようにという助言をいただきまして、それに沿って作成してまいりました。 資料の2枚目に、両国が抱える開発課題を並べて書いてあります。ウズベクとカザフは対照的な国で、下のほうに、人口とGNIの比較グラフを載せておきましたけれども、ウズベクは人口が2,600万人、カザフが1,500万人。面積では、ウズベクは日本と同じぐらい、カザフは日本の7倍という非常に広い国です。両国をあわせると、人口では中央アジアの70%ぐらいをこの両国が占めているという状況にあります。 この両国ですが、経済的な水準はかなり違っておりまして、GNIの表を見ていただくとおわかりのように、ウズベクは約500USドル、カザフは、後からご説明申し上げますけれども、石油・天然ガスがかなり出るところで、1,800ドルぐらいのところまで行っているということで、経済水準が違っています。ウズベクは農業中心の産業構造で、カザフは、石油資源の有効利用もあって、経済力はウズベクに比べればかなり上に位置しています。ウズベクは、言ってみれば、貧困の問題が非常に深刻で、あの国は農村から都市への移動が事実上不可能になっている、制限されているところで、農村人口の移動があまり見られず、貧困が農村で固定化していて、「絶対的貧困」という用語を使ってもいいような状況にあります。 資料の3枚目に行きます。ここでは貧困の要因について指摘しておりますけれども、人口上の問題、低所得、教育レベル等々があり、こういう問題に対処する上では、やはりウズベクでは、経済成長による底上げがどうしても必要であると言っておきました。他方、カザフにももちろん貧困の問題はありますけれども、貧富の格差のほうが問題で、業種間の格差、産業間の格差、地域間格差、それが拡大している状況にあります。 そういうところから、我が国が援助すべき重点分野として、3枚目の中ほどからいろいろ書いてあります。ウズベクの方は、絶対的な貧困に対処するために、市場経済発展、経済産業振興のための人材育成、制度構築支援等々を列記し、カザフのほうは、持続的経済成長のための政策策定以下いろいろと書いてあります。 ウズベクの方から簡単にご説明します。確かに、改革を進めようとしていないわけではないのですけれども、だらだらとした改革を進めていかれては困るので、改革の期限を設定した上で思い切って改革を進めていく、そういう市場経済化に向けた取組みを支援していく必要があることを書いておきました。特に、経済構造改革の面では、WTO加盟に向けての様々なサポートが必要であること。ウズベクは、1994年にGATTに加盟申請をしまして、以来、鋭意作業を進めてきているわけですけれども、それは、国内法の整備等々を含めてサポートしていきたいということです。それから、貧困層の保護・支援に関しては、BHNを中心とする社会セクターの再構築の支援、こういうところを重点目標にしたいということです。 カザフの方は、確かに、今は石油・天然ガスの産出国ということで、経済的には発展の過程にありますが、課題としては、そういう石油・天然ガスに依存する体質から脱却する、産業構造を多角化することが必要であろうと。さらに、産業間の格差、地域間の格差の是正、こういう面でもサポートしていく必要がある。特に、地方産業、中小企業、こういうところを念頭に置いて、制度整備や人材育成を支援することを分野の中に入れておきました。 ただ、一番下に「地域内協力の促進」ということを書いてあるのですけれども、川口外相の中央アジア訪問の際も、地域内協力の促進を日本としてもサポートしたい、もちろん中央アジアの側から地域内協力を進めたいというアプローチがなされるのであれば支援するということを言われたわけで、我々のタスクフォースも、地域内協力を促進するようなところに支援したいという議論はしました。ただ、実際のところ、どういうところに焦点を絞って地域内協力を進めていけばいいかの具体論となると、これがなかなか難しい。川口外相は、アフガニスタンの復興協力、麻薬、テロ、地雷、環境、エネルギー、水、輸送、貿易、投資等々の列挙をされたわけですが、この地域がまとまってそういう課題のために具体的な協力を進めるという動きもないわけではないのですが、日本がどの分野でサポートしていくことが適切かというと、そういうプロジェクトを探すのは簡単ではないという状況にあります。 水の問題とか環境の問題とかいろいろあるのですけれども、水をめぐる争い等々もあってなかなか難しい。しかし、ここは一つの目玉にしたいと思っておりまして、書き方を工夫していきたいと思います。 それから、資料の5枚目に、異例なこととは思ったのですが、参考として「ウズベキスタンにおけるアンディジャン騒擾事件」というものをつけさせていただきました。アンディジャン事件は、今年の5月13日から14日にかけて起きた事件で、皆さんのご記憶もまだ鮮明かと思います。アンディジャンという場所は、最後のページに添付した中央アジアの地図の、ウズベキスタンとキルギスの間、ウズベキスタンがキルギスに入り込んでいる部分にあるフェルガナ盆地という、ここも非常に貧しいところですが、キルギスの国境からやや離れたところに位置しているところです。そこで、言ってみれば、虐殺事件と言うと問題かもしれませんけれども、多数が殺害されるという事件が起きました。現カリモフ大統領はイスラム過激派による反乱を抑えるために軍隊を出動させたという説明をしたわけです。政府発表で死者が187名ということですけれども、中には、ウズベクの天安門事件で、750人ぐらいは死んでいるという話もあって、死傷者の数もはっきりはわかっていません。 問題は、この事件の性格をどう捉えるかです。現大統領が言うように、反テロ、テロリストを抑えるためのやむを得ざる行動であったのか、それとも、別のメディアが言うように、もともとは地元の実業家がイスラム過激主義とのかかわりをとがめられて、それで逮捕されて裁判にかけられ、それで住民がそれに怒って抗議行動をした、そこを軍隊による発砲で多数が死んだという人権に対する重大な侵害なのか、その辺の真相がはっきりしません。 中国の天安門事件のような事件であれば、援助すること自体が問われるわけです。ただ、そうはいっても、グルジアのバラ革命とか、ウクライナのオレンジ革命、キルギスのチューリップ革命の流れの一環として、こういう貧困層が多いフェルガナ盆地で、民主化要求運動のようなものが起きて、それを権力が押さえ込んだという説明ももう一つ納得できないところもあって、また、現大統領の説明も首肯しかねるところもある。この事件の性格を我々としては十分に認識できていない状況にあるわけです。 そういう中で、ウズベクに対する国別援助計画の作成をどのように進めていくべきかですが、目を現大統領の側に向けるのではなくて、民衆というか、住んでいる住民の側に目を向けて、それでODA大綱の援助実施の原則に従って、民主化促進、基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払いつつ対処していく。事態の事実究明がなされることが必要であって、ウズベキスタン政府に対してはそういう姿勢を維持していくべきであることをまず確認した上で、「参考」の(2)に書いてあるように、ウズベクにおける民主化・自由化、基本的人権の尊重、市場経済化の促進、こういう観点も加えながら作成作業を進めていくことをタスクフォースとしては確認したわけでございます。 (3)のところは、「当該国別援助計画は、原則、ウズベキスタン及びカザフスタン両国について策定する方向で進める」と書いてありまして、何のことかわかりにくいかと思います。これは、内部で議論いたしまして、ウズベクとカザフに対する援助計画を切り離して作成するようなことはしない、同時に策定していく。ただ、そういう援助計画策定と、実際に援助をすることは別であろうと。実際に援助するかどうかは政治の問題で、タスクフォースとしては、援助計画そのものは住民に目線を合わせてつくっていくという作業方針を確認したわけでございます。この点等は、この場の先生方にもいろいろな意見がおありだと思うので、お出しいただければ、タスクフォースとしても、先生方の考えに留意して進めていきたいと思っております。 それから、我々タスクフォースには、この会議から砂川先生と小島先生に入っていただいておりますので、私の説明に不十分な点があれば補っていただければと思います。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。 砂川さん、小島さん、つけ加えることはありませんか。 |
(砂川委員) | ご説明にありましたように、カザフスタンとウズベキスタンは非常に違うということに加えて、アンディジャン事件が起って、ほかのドナーは援助を、控えめにしているという状況にあります。そこで、私共の計画作成自体を止めるのかということが、今ご説明にありましたように大きな問題になってくるわけです。援助をするか、しないかということは、高度に政治的な問題で、これと援助計画をつくることは別問題です。援助を止めるということも、あるいは援助計画の一つだろうと思います。 そういう意味で、援助計画を作成することを継続していくことが今の状態においても正しいことであろうと、タスクフォースでは結論が出ました。この一点をつけ加えさせていただきたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 どうぞ、ご意見をいただければと思います。 |
(荒木委員) | 私は、2003年にウズベクとカザフに行ってきました。特に市場経済化の支援ということで、両国にどのくらい起業家精神というか、企業家がいて、どういう問題を抱えているかということを調べたことがあります。先ほどお話がありましたように、市場経済化と実際は言われているけれども、行ってみて、市場経済化を促進すべき法整備がほとんどなされていない。したがって、例えば企業法についても、近代企業法の導入とか、民法、産業法、そのほかいろいろな問題がありますけれども、ほとんどソ連時代の流れの中でやっているという感じでした。これは、一般で言う日本の知的支援をかなり集中的に投入していかないと、市場経済化はなかなか進まないと思います。 例えば、農村においても、コルホーズ、ソフホーズの問題がソ連時代にありましたけれども、農業協同組合といっても、コルホーズがあったよというようなもので、農業協同組合についても、近代的農業組合法とソ連時代の農業組合とが同居していて、同じような視点で見ているということで、ここのところには相当日本の力が入っていいのではないかという感じを受けました。 それから、カザフスタンについては、しきりに、マレーシアのルック・イースト・ポリシーではないけど、マレーシアはムスリムですから、マレーシアこそ我々のモデル国家であるということをしきりに言っていましたので、マレーシアのどこに魅力があるのか、私も時間がなくてあまり深く討論できませんでしたけれども、その辺についてもぜひひとつ、カザフスタンに行ったときに聞いていただきたいと思います。現実には、技術協力の研修生の受入れ等では、日本経由クアラルンプールで帰るとか、クアラルンプールから日本に来て帰るとか、そういう連携もやっているようで、かなり向こうはマレーシアに傾倒している。せっかく日本が、マレーシアあるいはインドネシア等イスラム国家を支援して、ある程度成長したわけですから、そういう流れの中で中央アジアを支援することも一つの面白い手立てかなと感じています。 これはコメントというよりも、お願いというか、ぜひ市場経済化支援のための法整備に英知を絞ってみてはどうかということを提案したいと考えております。 |
(浅沼委員) | ウズベキスタンとカザフスタンの国別援助計画については、同一のタスクフォースに扱っていただくという決定は、随分最初からなされたことは知っていますけれども、それは同時に1本の計画として書くのでしょうか。それとも、同一のタスクフォースを2本書くということでしょうか。 そのときに、もし、2本一緒にして、コンビネーションの国別援助計画の書類をつくるとすると、外交上、カザフスタン、ウズベキスタンはどのように反応するのでしょうか。1本にしたほうがいいのか、2本別々にタスクフォースとして出されたほうがいいのか、その辺はどのようにお考えでしょうか。 |
(渡辺議長代理) | 受取り国側の対応ということ、両面から考えなければならないのですが、この点、どう考えたらいいのか、省としてはどのようにお考えでしょうか。 |
(橋本国別開発協力第二課長) | 国別二課長の橋本と申します。 1本つくるか、2本につくるかに対しての対応は、2本分けてつくります。恐らく、先方の国から見て、2つの国を一緒にして1本につくられたということだと、どういう扱いなのかということが一つと、あと、恐らく、中央アジアに対して援助計画をつくるときに、特徴的な国、それにプラス、どれだけの援助量をやっているかということも検討の素材にされたのだと思います。その中で2つを選んで、まさに違いを際立たせながら、どういうアプローチをしていくかということだと思います。2本のほうが、向こうの反応も望ましいと思われます。 |
(渡辺議長代理) | 青山さん、牟田さん。 |
(牟田委員) | 先ほど、計画と実施とは区別しつつというようなお話がありまして、それはよくわかるのですが、そうはいっても、オール・オア・ナッシングではないと思います。計画の中身がまだ十分に理解できていないので何とも申し上げられないのですが、例えばこういう状況であれば、経済インフラは無理だけど、社会セクターは何とかいけるとか、そういう援助の中身によって、どういう状況であれば実施する、実施しないということになるのではないかと思います。そのあたりのお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。 ウズベキスタン、カザフスタンは2本つくるというお話で、それはそうだろうと思うのですが、そうはいいましても、ウズベキスタンとカザフスタンを一緒にして一つのタスクで援助計画をつくろうということの背景には、地域的に近い国であるということもあったと思いますが、同時に、地域内協力が、漠然としても、2つの国でお互いにとか、あるいは、この2つを核にして中央アジアの地域内協力をというような、先ほどのエジプトとかタイと同じような考えがあったかと思います。そこらあたりの地域内協力に関しては、もう少し具体的に、どういったような援助計画をお考えか聞かせていただければありがたいと思います。 |
(青山委員) | 重点分野に、保健医療を含む社会セクターの再構築支援、格差是正のための保健医療支援が、挙げられていましたので、一言コメントさせていただきます。 中央アジアあるいは旧ソビエト連邦諸国のような国々では、質も効率も悪い保健医療サービスが拡大していて、人口当たりのベッド数も医師数も、他の地域に比べて多すぎる傾向があります。この方針には、再構築とか、格差是正という言葉がありますので、この方向性に沿って進めていただけるとよいと思います。もちろん、このような社会セクターのリストラクチュアは、日本のODAで全部できるような問題ではありません。けれども、日本がODAで保健分野を支援するときに、質的な向上あるいはシステム形成の支援などをするようにして、リストラクチュアの妨げとならないよう、量的な拡大を避けた方がよいと思います。 特にウズベクの場合、政治的事情で援助が難しくなると、ベーシック・ヒューマン・ニーズの分野である医療などに集中してしまう可能性があります。そういうときに、量的な拡大になってしまうと、国全体の方向性の妨げとなり、ほかのドナーとのバランスからも問題になる可能性があります。保健医療分野については、再構築、格差是正という方針で進めるようよろしくお願いいたします。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 千野さん、どうぞ。 |
(千野委員) | 私も、実は浅沼委員と同じような疑問を持っていたのですけれども、それは別々につくられるということのお返事を得ました。一方で、さらに、牟田委員が言われたことと関係することで、そもそもこの2か国を一緒につくったということ、渡辺議長代理の言葉をお借りすれば、ちょっと乱暴にやったと冒頭におっしゃったかと思いますが、やはり一緒にやった意義もあるわけで、出すものは一国一国別かもしれませんけれども、どうしてこの2か国を一緒につくってきたかということは、とりもなおさず、日本が中央アジアにいかにかかわるかということの基本認識なり、あるいは、基本戦略ともかかわってくることではないかと思います。したがって、具体的には、そういう地域内協力が大事であると考えるとか、そういう日本側の意識を盛り込む必要もあるのではないかという気がします。 その場合に、冒頭の中央アジアに対する基本認識が書かれていることの中に、そういったことはまだあまり触れられていないような感じがします。したがって、ほかの国もあるわけですが、なぜこの2か国を真っ先に取り上げるのか、一緒に援助計画をつくってきたのかという意識が反映されていけばいいのではないかという感想です。 |
(渡辺議長代理) | 石井明先生のような傑出したこの地域の研究家がいらっしゃるわけですけれども、それは極めて例外的な存在であります。この2つの国別計画を策定するほどの日本人をラインアップすることが非常に難しい、そういう面での人的資源制約があったということが一つあります。同時に、策定が急がれていることもありまして、比較的同様の地域でもあるので、仕事は一緒にして、計画書は別々に出してもらうということです。 川口外相が、中央アジアにおける地域の協力ということを一つのキーワードとして出しておりました。この2国の計画を同時に出そうという発想になったのは、当時としては、致し方なかったわけです。 ただ、今、話を伺ってみると、地域間協力といっても、そう容易なことではないことがだんだんわかってきました。ソ連を中心にしてカスケード型のハブ・スポークの分業体系が作られていて、横の分業のための仕組みができていない。例えばインフラが非常に貧弱だということもそういうことですね。縦のインフラは比較的しっかりできているけど、横をつなぐインフラができていないという問題があります。 そういった事実をどう変化させるか。日本政府の方針としては、それをやるということでいくことも一つの筋だと思います。ただ、そこまで踏み切れるかどうかは、資金的な制約もあって、容易ではないという判断もあります。だから、ここのところは非常に難しい。今までの国別ODA計画を議論してきた中でも、やけに難しいところに入り込んだなという印象を受けながらきょうの議論を聞いているのですが。出口をどこに求めたらいいか。 石井先生も、きょうの議論を聞いていてますますつらいお立場にあるのかもしれませんけれども、今の時点でちょっとリプライしていただけますでしょうか。 |
(石井主査) | 両国に対する国別援助計画の書き方ですが、先ほど、橋本課長から説明がありましたように、現段階でのタスクフォースは、一応、カザフスタン国別援助計画とウズベキスタン国別援助計画を別々につくる。ただ、冒頭の、中央アジアに対する基本認識のあたりはあまり違わない表現になるだろうと思います。 私、最初の見積りは、目玉として、地域協力推進のところを、両国の冒頭の中央アジアに対する基本認識とあわせて書き込み、それを売りにしたかったのですが、なかなかいいプロジェクトが現実の問題として出てこないところがありまして、その辺はもう少し深く検討してみることにしたいと思っております。 ただいま様々なご提言、ご助言、ご批判をいただいたわけですけれども、まず、荒木先生からご指摘された、市場経済化に向けての法整備、いわゆる知的支援、ここのところを集中的に行う必要があるというご助言をいただきまして、それは全くそのとおりだと思います。農業分野も、この辺はコルホーズとかソ連時代のものがあったわけで、それを解体して、一見、日本の農協に似たような組織もつくられてきてはいるのですが、運営がなかなか難しいような状況がありまして、法整備のところでもう少し具体的に、どういうところに集中して支援するか、考えてみたいと思っております。 それから、マレーシア、特に東南アジアのムスリム国家とのつながりについては、私は今まで全然注意していませんで、早速調べて、どういうところで連携が進んでいるのか、予測では石油などでは連携がありそうな気もするのですが、調べてみたいと思っております。 それから、青山先生から出た保健セクターのところですが、ここは結構、今の国家財政では重荷になっていまして、ウズベクは今でもたしか無料医療制度かな。旧ソ連というのは、保健とかパンとか牛乳はただみたいな値段で供給できるところがあったわけで、保健についても、今でもたしか無料で治療がなされている。でも、これはすぐに行き詰まりが来ることは明らかなわけで、保健・医療制度に手をつけざるを得なくなる。そういうところで、日本がどういうところでサポートが可能なのか。確かに、この分野にあまり手を伸ばすのはよくないかもしれませんが、どういうところでサポートができれば住民に対する貢献になるのか、もう少し検討してみたいと思っております。 それから、牟田先生からご指摘された、アンディジャン騒擾事件に関連して、援助計画策定と実際の援助実施を分けるのはいいけれども、どういう条件が満たされればどういう分野で援助することが可能になのか、その辺の詰めをせよという趣旨に受け取りました。非常に難しい作業ではあるのですが、ほかのドナー国の対応等も見ながら考えてみたいと思っております。 これは繰り返しになりますが、牟田先生もおっしゃった、地域内協力としてどの分野が可能なのか、現実性があるのか、これはもう一度タスクフォースに持ち帰ってより突っ込んだ議論をしたいと思っております。 |
(砂川委員) | 先ほど牟田さんから、オール・オア・ナッシングという話がありました。そういうオール・オア・ナッシングということは考えていなくて、場合によっては一時ストップすることもあるのかなという話です。タスクフォースの中で議論となったのは、ほかのドナーがどんどん引いていっている状況があるとして、日本だけが唯一、黙って継続することは、ほかから非難されるのではないかということです。したがって、どういう形ならば、ほかのドナーも、いいことだと納得され、ウズベキスタンのためになることをやっていけるかを考えることが重要だと思います。 二国を同時に扱うとき、一番難しい問題は、私どもが両国に対して両国間の国別援助計画を同時に作成していることを、既に両国に言明していることです。したがって、こちらはやめて、こちらはやりますということはおよそあり得ない話だろうと思います。ウズベキスタンに対しては、やるべきことをやって下さい、さもなければ一時ストップすることもありますということを言わざるを得ないのではないでしょうか。 それから、どういうモダリティが良いか、どういう援助をやっていくかというところですけれども、重要なことは、両国の格差が、この2~3年でさらに拡大していることです。その結果、カザフスタンは、援助は、特に借款は要らないということをはっきり言っています。一方、ウズベキスタンの方は、所得水準からいって、円借款の対象国でもないにも拘わらず量的に大きいもの、即ち円借款も無償、技術協力に加えて要求してくる。このように、大きな違いがあるこの2つの国に対してどうアプローチしていくかというところは非常に難しい。各論に入っていくとそういう悩みがあります。 地域協力の話ですけれども、率直に言って、両国とも地域協力に対しては、消極的であります。要するに、カザフスタンは、リーダーシップをとって地域協力をやりましょうということはさらさらないし、ウズベキスタンは国内で精一杯で、両者の対立は先鋭化していると言えると思います。だから、我々の、地域協力をやりましょうという善意のアプローチに、向こうとしては、今のところ受け入れられにくい状況にあると思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。同じ地域に属する対照的な国に対するODA計画を、同一チームが描くことは却っていいことではないかともいえます。見るべきところがよく見えるというアドバンテージがあるような気がします。 石井先生には大変な負担をかけることになるのですけれども、何分よろしくお願いいたします。 |
(石井主査) | 渡辺先生に確認していただきたいのですが、我々のタスクフォースのこれからの作業で、両国の国別援助計画を両国ともつくることはお認めいただいて、ただ、アンティジャン騒擾事件以来、我々としては、それを向こうの政府と協議するわけにはいきません。今、我々が考えている案をウズベクに持っていって、先方政府と協議すれば、日本が引き続き援助をするメッセージとして当然受け取ると思います。だから、現地政府と協議しないまま案をつくってしまう状況に、今はならざるを得ない。もう少し時間的な推移があれば、また何か別の見方ができるようになるかもしれませんけれども、現状では、現地政府との協議はできない状況にあります。でも、作業は進めると。 |
(佐藤経済協力局長) | 相手国政府との接触振りに関しては、本件騒擾事件の推移を見つつ適宜相談していきたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | それはもう、その地域のことを一番知っている主査の判断によるしかないと思います。もしチャンスがあれば、何らかの形で接触することもあり得るし、そんなことをしたらえらいことになるというご判断であれば、そこはストップするということもありましょう。それは石井主査のご意向にお任せすることにせざるを得ないと思います。 |
(石井主査) | わかりました。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。 議題にはありませんが、先ほども言及された対タイ国別援助計画につきましては、前回の戦略会議でご了承いただいています。そして、そのときに出された皆様方のご意見を踏まえまして、必要な修文を行いました。それが資料5としてお手元に配ってあります。これは私も全部チェックさせていただきました。これでファイナルにしてくださるようお願い申し上げます。この案文をもって、今後、可能な限り速やかに対外経済協力関係閣僚会議の了承を得た上で公表したいと考えております。どうぞご了承いただきたいと思います。 それでは、本日の最後のテーマですが、「ODAの点検と改善に関する作業部会の第1回会合」が8月31日に催されましたので、この点についての報告をお願いいたします。 |
(上村政策課長) | 今、お手元にお配りしておりますが、資料6として、8月31日の「第1回ODAの点検と改善に関するワーキンググループ」の議事次第をお配りしております。その中身につきましては、今まだいろいろコメントもいただいております。それから、議論が流動的なところもありますので、今日書き物でお配りすることは間に合いませんでしたけれども、できるだけわかりやすくご説明申し上げたいと思います。 このワーキンググループは、荒木委員、磯田委員、草野委員、関山委員、牟田委員でワーキンググループをつくっていただきまして、ODAの点検と改善についての忌憚なのないご意見を伺うという会合を意図しております。第1回の8月31日の会合では、我々事務局側から、11月を目途で発表しますODAの点検と改善に関する何らかの文書の内容を3つの柱で提案をさせていただきました。それがこの議事次第の中にありますが、3.の(2)から(4)、すなわち、1点目の塊が「国別アプローチの強化」という話であります。2点目が「コストの縮減などを通じた事業の効率化」という塊。3点目が「チェック体制・不正防止」、こういう体制の拡充。この3つの大きな塊で、11月に向けて、ODAの点検と改善を進めていきたいということをご提案申し上げました。 基本的には、この3つの柱でよかろうというのがワーキンググループの先生方の大体の総意であったと思います。ちなみに、各項目の事務局側からのとりあえずの考え方について簡単に申し上げますと、例えば「国別アプローチの強化」のところで、今、19か国ありますけれども、これを、受取り手からして援助量の7割程度をカバーできる、国数で言いますと約30か国をめどに、その援助計画をつくる行程表をこれから明らかにしたい。当面の策定改訂予定表、行程表を11月には明らかにしたい。 同時に、この国別援助計画は大変重たい、援助の日本の総意と知恵を集めた文書で、最終的には閣議に準ずる対外経済協力関係閣僚会議の報告事項となっております。手続き的には大変重い文書でありまして、その意味では非常に重要ですけれども、この策定改訂プロセスについて、何らかの改善、あるいは、非常に重たいプロセスですので、もう少し何とか合理化できるところがないだろうかということを検討したいということ。 それから、現在は国別援助計画と、現地での日々の援助の実際との間には、恐らく、JICA、JBICのつくる実施要領という計画があると思いますけれども、国別援助計画と現地の日々の援助をつなぐ何らかの中間的な考え方・ものをつくってはどうかと。国別援助計画と日々の援助をつなぐ指針といいますか、そういうものをつくってはどうかという提案も申し上げました。 この国別援助計画についての3点目は、特に現地タスクフォースがレビューをしっかり行う仕組みをぜひ導入したい。Plan Do Check Actionというサイクルの中のPlanの導入部分は、ある程度、国別援助計画なりで整備させていただくわけですから、その後のCheckをどうやってサイクルとして戻していくかについて、特に現地タスクフォースを重視していきたいという提案を申し上げました。 それから、2つ目の大きな塊、「コストの縮減」であります。これはスキーム別に様々な取組みがあることをご説明いたしました。JICAでは、独立行政法人の整理・合理化の中期計画に基づいて粛々とコスト縮減をしているという状況をご説明申し上げ、この取組みを続けていきたいということ。円借款につきましては、既に途上国自身の事業として、途上国が借りたお金を自分で一番有効に使うというそもそもの仕組み上から、コスト縮減にはなかなかなじまないところもあります。というか、何か新しいものを導入することについては難しいものがありますけれども、円借款につきましては、例えば、より一般競争入札、現地調達ポーション、世銀やADBなどの国際金融機関との協調融資などを最近は特に進めておりますけれども、手続きの統一化、特に途上国から見てコスト削減につながるような問題について取組みを進めていきたいというご説明を申し上げました。 それから、無償資金協力については、コストとアウトプット、成果物の関係については、何が何でも安いものをつくったらいいというわけではなくて、確かに日本の援助の質を確保すべき分野もある。それから、コスト削減を導入できる分野もあるということをご説明した上で、平成18年度の予算要求としまして、現在、コスト縮減を念頭に置いた、すなわち現地での調達ポーションを増やすという、無償資金協力の新しいスキームとしてコミュニティ支援無償というものを導入しようと思っておりますけれども、そういう取組みなどについてもご説明申し上げました。 3点目の大きな柱、「チェック体制の拡充」であります。これについては、事務局側からは、無償資金協力のプロジェクトごとの事後評価について、平成17年度から実効ベースで取組みを始めます。それから、平成18年度では、予算要求を行った上で外部評価も含めてOECDの規準に則ったような無償の事後評価を行っていきたいということ。それから、先ほどちょっと触れましたPDCAというサイクルの中の、特に本省でチェック・評価結果をどのように、次のプロジェクト、次の援助計画、次の援助政策に反映させていくのか、東京サイドでどうするのかという制度づくりを検討してみたい。最後の「不正行為」に関しましては、特に不正行為を防止するための新たなガイドライン、マニュアル、こうしたものも導入していきたいというご説明を申し上げました。 これに対しまして、各ワーキンググループの委員の先生方から、メール文書も含めまして様々な意見が寄せられております。このワーキンググループは、性格上、基本的には非公開といいますか、だれが何を言ったかをご紹介しないというルールで、むしろ自由な意見交換をお願いしておりますので、内容だけ、かいつまんで主要なところをご紹介いたします。 まず、「国別アプローチの強化」は、これはいいのではないかというご意見が多かったのですが、中には、コメントとしては、例えばこのPDCAのサイクルは、国民にはなかなか時間の概念が見えない、新しい制度を導入したけれども、成果が出るのはいつなのか、そして、それが次の計画にどう反映されるのか、こういう時間の概念をぜひ国民には説明すべきだということ。 それから、国別計画に関しましては、ある国別援助計画の必要最小限有すべき項目を考えるような、標準化といった作業も必要ではないかという議論もありました。 また、国別援助計画と現地の日々の援助計画を結ぶ中間の何らかの指針のようなもの、これはやはり現地タスクフォースもミニ霞が関化しているところもあって、実際上、そういう計画をつくるは非常に手間がかかる、あるいは、現地の負担が非常に重くならないかというご意見もあり、工夫をすべきだろうと。 あとは、JICA、JBICの事業計画との関係について整理すべきだろうと。無償も含めて何らかの援助指針のようなものをつくるなら意味があるというご指摘もございました。 それから、民間投資案件というものも、その国の経済発展にとっては非常に重要だと。したがって、政府だけが援助計画なり援助の指針のようなものをつくるだけでは足りなくて、その国に対する民間の投資案件のようなものも広く意見聴取して、3つの援助手法と民間プロジェクトとの連携モデルなどをつくってはどうかというご意見もございました。 それから、国別計画の中には、現地タスクフォースによるレビューのメカニズムをぜひ入れたいということをご提案しておりますけれども、これについては、事後評価だけではなくて、チェックするならば途中のモニタリング、その事業を途中で修正できるような、むしろ、事後評価のみならず、途中のモニタリングや事中の評価、こういったものを重視してはどうかというご意見もございました。 2つ目の柱の「コスト縮減」につきましても、様々なご意見がございました。例えば、コスト削減だけではだめで、今、ODA予算を増やそうと政府は努力しているわけだから、その減らされたものがどのように生かされていくのか、国民に対して説明すべきだろうというお話がありました。 それから、援助の質を保ちながらコストを下げるためには、最終的には、すべてアンタイド化して、資機材のみならず専門家についても世界中のリソースから有効活用するしかないのではないかというご意見もございました。 あるいは、関係があると思われる全体的なご意見として、今の技術協力、無償資金協力、円借款という3つのスキームを並行して政府は実施しているわけですけれども、本当のコストの概念を入れようとしたら、この3つのスキームをいかに融合して、一体として援助するようなことも今後は考えていくべきではないかというご意見もございました。 それから、コストにつきましては、何が何でも縮減というだけでは、日本のコンサルタント、民間の活力をそぐ可能性がある。したがって、コスト削減は一体何のためにすべきかもよく考えて、市場主義の考え方だけでコスト縮減の課題に取り組んではいけないのではないかというご意見もございました。 最後の塊の「チェック体制の拡充」につきましてもいろいろなご意見がございました。例えば、関係機関合同の反省会を開いて、実際の次の政策、次のプランに結びつくようなものを考えるべきであるとか、失敗の一般化といいますか、過去の教訓から抽出した何らかの、どういう案件をするにしても、こういうことに注意したらいいという将来への教訓を抽出するという作業、すなわち、各案件のチェックだけではなくて、教訓の一般化ということもあるのではないかというご意見もございました。 それから、チェックの場合でも、やはりスキーム間、3つを別々にやる体制ではなくて、例えば、ある国の同じセクターに同じような援助を3つのスキームでやっているとしたら、それは一体として評価をする。スキームごとのチェックでは、むしろ手間もかかれば、効果も少ない。そのようなご意見もございました。 すべてをご紹介できませんでしたけれども、基本的には、この3つの課題について、今、事務局で、次のアイデアを練っているところであります。 今後の具体的な日程ですが、まず、はじめの「国別アプローチの強化」は大変重たい課題ですので、もう少しお時間をいただいて、先に「コストの縮減」と「チェック体制」について、10月3日に次回の第2回ワーキンググループでの検討をお願いしております。ここで議論を詰めていただいた上で、11月下旬を目途に発表します案文についてのお諮りを、11月のできるだけ早いタイミングで始めたいと思っております。 それから、「国別アプローチの強化」につきましては1か月のご猶予をいただきまして、できましたら10月下旬ないし11月上旬のワーキンググループで発表文の草稿をご議論いただいた上で、詰めの作業に入らせていただきたいと思います。 このODA総合戦略会議との関係ですが、点検と改善の文章については、できれば11月のODA総合戦略会議の前にドラフトとして提示させていただいて、11月のODA総合戦略会議の席上で、最終的にはご了承いただければと考えております。 時間的に非常に迫っておりますので、我々事務局としても、ターゲットを絞って、この3つの課題は大変大きな課題で、将来的な課題もありますけれども、とりあえず、年内に手がつけられるものに絞って案文を練って、またご相談させていただきたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。 事務局からの報告が2点残っております。お願いします。 |
(上村政策課長) | まず、資料3は予算の概算要求ですので、これは資料をご覧いただければと思います。一生懸命に取ってきますので、よろしくご支援のほどをお願い申し上げます。 |
(渡辺議長代理) | 「国連ミレニアム宣言に関する首脳会合」について、簡単にご説明いただければと思います。 |
(小野開発計画課企画官) | 9月14日から16日まで、「国連ミレニアム宣言に関する首脳会合」が開催されまして、お手元にお配りしましたのは、そこで採択された成果文書の主要ポイントでございます。これは、2000年に行われた「国連ミレニアムサミット」の5年後のレビューですので包括的な文書になっておりますけれども、特に開発につきましては50パラ以上を費やしておりまして、約3分の1を占めていることが大きな特徴となっております。 中身的には、ご覧いただければと思いますが、特に驚くような内容はありませんで、比較的バランスのとれた内容になったかと思います。 別途、開発問題につきましては、14日に「開発資金に関する特別会合」が開催されております。日本からは町村外務大臣が出席されまして、我が国のMDGに関する取組み等々を、過去に発表されたイニシアチブ等をご説明されました。 先進国も概ね、その会合では自国の取組みを紹介して、途上国も、従来からの主張ではありますけれども、0.7%目標の確実な実現や、債務削減に関するG8の合意を歓迎し、今後のさらなる取組みへの期待、更にドーハラウンドの実質交渉の成功に対する期待などがかなり多く表明されたことが注目されます。 なお、MDGsには「ゴール8」というものがありまして、これは主にMDGsに向けた先進国の取組みについて定めたものです。日本はこの会合で「ゴール8」に関してどのような取組みをしてきたかというものを報告書にしてまとめました。中身としては、90年代から今日に至る我が国のこれまでの取組みを、ODAのみならず、OOFや債務救済の3つに分けて説明しております。 その他、今回の会合ではサイドイベントというものがあり、これは各国の国際機関がやっておりますが、日本も、CGIRという農業の研究機関とG77とともに農業関係についてのサイドイベントを一つ、及び、IFADという農業系の開発金融機関がありますけれども、そちらと農村のジェンダーといった問題についてのサイドイベントを一つと、計2つのサイドイベントを開催いたしまして、我が国の取組みを説明しました。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。 概算要求のほうは、この表を見ておいていただくことにしたいと思います。 次回の会合については、もう一度皆様方の日程を調整してご連絡申し上げます。 本日は長時間のご協力、ありがとうございました。 |