ODAとは? ODA改革

「ODA総合戦略会議」第20回会合・議事録

1.日時

 平成17年1月24日(月)9:30~11:30

2.場所

 外務省南庁舎8階 国際会議室893号室

3 出席者

 逢沢外務副大臣、ODA総合戦略会議委員が出席(大野委員、小島委員は欠席)。外務省(事務局)より佐藤経済協力局長他が出席。関係府省、JICA(国際協力機構)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加。

4.議事の経過

(1)ODA中期政策について、兒玉(こだま)経済協力局審議官による最終案の説明を受けて、意見交換を行った。議題の結果、委員からのコメントの扱いについては、議長、議長代理、事務局に一任するとの了解の下で、本件最終案について、ODA総合戦略会議としての了承が得られた。
(2)国別援助計画
(イ)対タイ国別援助計画について、末廣昭(すえひろ・あきら)主査(東京大学社会科学研究所教授)より中間報告があった。
(ロ)対エジプト国別援助計画について、山田俊一(やまだ・としかず)主査(日本貿易振興会アジア経済研究所国際経済研究グループ長)より作業方針に関する報告があった。
(3)事務局より、(イ)平成17年度ODA予算案、(ロ)スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害に対する我が国の支援について報告がなされた。

(渡辺議長代理) おはようございます。ただいまからODA総合戦略会議の会合を開催いたします。
 今日の議題は、大きく分けると三つございます。1番目は、ODA中期政策について、2番目は、国別援助計画について、そして3番目が事務局からの報告です。
 まずODA中期政策について、兒玉経済協力審議官より最終案に関する説明を受けた上で意見交換を行うということにします。
 国別援助計画は二つの議題が予定されております。その一つは、対タイ国別援助計画につきまして、末廣昭主査より中間報告をしていただきます。それから対エジプト国別援助計画について、山田俊一主査、日本貿易振興会アジア経済研究所国際経済研究グループ長より作業方針についての報告がございます。
 3番目の事務局からの報告は二つありまして、一つは平成17年度ODA予算、それから二つ目がスマトラ沖大地震及びインド洋津波被害に関する我が国支援、この2点についてです。
 議題に入る前に一つご報告がございます。1月4日付の人事異動によりまして、国別開発協力第二課長に橋本尚文課長が着任いたしました。橋本課長、簡単なご挨拶をお願いできればと思います。
(橋本国別開発協力第二課長) ご紹介にあずかりました橋本でございます。簡単にご挨拶させていただきます。直前まで中東局におりまして、イラクの復興支援ということを主に担当しておりました。今回、国別二課長ということで、恐らく今まであまり留意していなかったようなこと、特に国内でのODAについての議論や、海外でのODA、あるいは経済支援についての新しい手法とか、そういうものから来る要請に応えながら、担当の地域の支援についての取りまとめをしっかり行っていきたいと思っております。そういう意味でも、今回のODAの戦略会議、特にその中での国別援助計画について、私の最重要事項の仕事として認識してしっかりやっていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
(渡辺議長代理) どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議題に入ります。まずODA中期政策について、前回の戦略会議での諸先生方のご意見、さらにパブリック・コメントを踏まえ、修文がなされています。この案が皆様のお手元にいっている、いわば最終案です。(資料1)がそれです。これについては、後で兒玉審議官よりご報告いただきますが、その前に逢沢副大臣からご挨拶をいただきます。よろしくお願いします。
(逢沢副大臣) おはようございます。昨日は雪が降りまして、今朝の交通事情も大変でございましたけれども、早朝から週の始まりでございますのに、こうしてご出席をいただきまして本当にありがとうございます。渡辺先生から、今日の会議の内容についてはお話をいただいたとおりでございます。中期政策も、先生方のご協力をいただいて、いよいよ最終案の段階を迎えました。中期政策の評価に始まり、論点整理、また案文の審議、それぞれの段階で大変なご協力をいただきました。また、それぞれの見識をお示しいただきまして、審議の促進に大変ご尽力を賜りました。心からお礼を申し上げたいと思います。
 最終案では、戦略会議の議論や、パブリック・コメント等を踏まえた修文を行っているわけでございますが、そうこうしているうちに、スマトラ沖の大きな地震と津波、昨年の末のことでございましたけれども、大変な災害が起こりました。緊急に5億ドルの無償の支援を行うということを政府は決定し、既に払い込み等の作業が行われている、こういうことでございますが、我が国の防災協力に関する記述をこういった大きな災害を踏まえて新たに書き加えるという修文等も行わせていただいているようであります。併せてどうぞよろしくお願いをいたします。
 また、若干余談でございますけれども、ODAについて様々な議論や、ある種の批判が国民の皆様方の間にございましたが、例えばモルジブの高波を防ぐ防波堤を非常に長い年月かけて、我が国のODAが展開して作り上げてきました。もしあれがなかったら、モルジブの首都マレは壊滅的な状況であっただろうということが、国内の報道でも多くなされておりますし、国際的にもそのことは話題に取り上げられ、高く評価されているといったようなことを私も耳にいたしております。そういった状況も踏まえながら今後もODA政策を立派に前進させていきたい、そのように考えているところでございます。今日も盛りだくさんの内容でございますが、最後までどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
(渡辺議長代理) 逢沢副大臣、ご挨拶をいただきありがとうございました。
 引き続いて、ODA中期政策に関して、さまざまなパブリック・コメント、意見が出されました。これらにもとづいて、修正すべきところは修正いたしました。兒玉審議官よりご報告をいただき、それに基づいて審議をしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
(兒玉経済協力局審議官) おはようございます。
 それでは、中期政策の案文の最終案ということで、ただいま議長代理からもお話がありましたようなラインでご報告、ご説明をさせていただきます。基本的にはパブリック・コメント、公聴会の概要、それを踏まえて具体的に修文、どういう観点でなされたか、また前回の総合戦略会議における議論も踏まえての私どもの考え方ということを整理してご報告させていただきます。
 お手元の1月24日付、中期政策 (案) でございますが、今申しましたように、前回の総合戦略会議でいただいたコメント、それからパブリック・コメント、あるいは公聴会での意見を受けとめて、それを真剣に検討し、関係省庁と協議の結果、本日、この場で最終案ということでお諮りするものでございます。
 まず、パブリック・コメント、公聴会の概要でございますが、パブリック・コメントに関しましては、昨年12月3日から本年1月7日まで、約1カ月余り、外務省ホームページを通じて意見を募集いたしました。それには中期政策以外の意見も含めて合計75件の意見が寄せられました。東京、大阪の2カ所で外務省が主催した公聴会では延べ 100名以上の方が参加され、渡辺議長代理以下、論点整理タスクフォースのメンバーの先生方にもご出席いただき、会場に出席の方との活発な意見交換が行われました。
 主な意見でございますが、ODAの目的に関連しては、「我が国の安全や繁栄の確保」についてもっと言及すべしという意見がある一方、「我が国の利益」について記述するのは適当でないというような意見もありました。この点については、中期政策は大綱の下に位置づけられる文章ということで、大綱で示された考えや、その引用個所については今回これを特段変更することはしないということと整理しております。また、原案に加えまして、地域別の戦略、環境問題以外にも、防災、保健、エネルギー・資源といった地球規模問題、あるいは指標の設定や、評価の具体的取り組み、開発教育、ジェンダーなどについてもきちんと取り上げるべしという意見がある一方、もっと内容を絞り込むべしといった意見もございました。「人間の安全保障」の視点に関しましては、今回、中期政策において詳しく説明していることについて多くの方から賛同する意見をいただいております。また、重点課題につきましては、社会的弱者への配慮を明記すべしとのコメントが多くございました。効率的、効果的援助の実施につきましては、住民との対話の明記や、外部人材としてNGOやコンサルタントを活用してほしい、迅速な援助を図ってほしいといったコメントもございました。件数として最も多かったのは、対中国ODAについてのご意見です。今回の中期政策では個別の国や地域に関する記述は行っておりませんので、中期政策へのご意見というわけではありませんが、こういった意見が非常に強いということも踏まえて、今後、対中国政策全体の中で政府内でもいろいろ考えていくことになろうと思います。
 なお、寄せられたこうした意見に対しましては、内容ごとに整理した上で可能な限り外務省の考え方をホームページ上で近々公表する予定でございます。
 それでは、以下、案文に即して修文個所を中心に説明させていただきます。お手元の資料1ー1でございますが、まず冒頭、「1.中期政策の位置付け」に関しましては特段の修文はなされておりません。
 次に「2.人間の安全保障の視点について」でございますが、幾つか修正を加えております。
 まず、2ページ目の冒頭の (ロ) の3行目以下ですが、そこには人々がさらされている脅威の具体例を挙げておりますが、「紛争、テロ、難民の発生、感染症の蔓延」などに加えて、パブリック・コメントでのご指摘を踏まえて「犯罪、人権侵害」の2点を追加しております。また、その下の(2) の (イ) 、「人々を中心に据え、人々に確実に届く援助」においては、ODAのさまざまな過程でできる限り住民を含む関係者との対話を行う旨、記述しております。こちらもパブリック・コメントを受けて「ODAの政策立案」という文言を追加しました。また続いて、 (ハ) 「人々の能力強化を重視する援助」のところですが、そこでは能力強化に加えて、人々がその能力を発揮する場を整備する必要があるという指摘がございました。それを受けまして、「人々の能力の発揮に資する制度、政策を整備して」という文言を盛り込みました。これは実は、ちょっと飛びますけれども、5ページの (d)「貧困削減のための制度・政策に関する支援」、ここに人々が自らの能力を発揮できるようにする制度、政策の構築が必要であり、我が国が人権の保障、法による統治、民主化の促進に資する支援を実施するという趣旨の記述がありますが、まさにこの個所との論理構成の明確化を図ったということでございます。
 戻りまして、続いて3ページの冒頭の注書きをごらんいただきたいと思います。この個所では、前回の案では、人間の安全保障の視点を取り入れて成果を上げた案件ということでセネガルとカンボジアの例を記述しておりました。これら案件の位置付けをめぐっては、前回、複数の委員の方から、取り上げられた案件例が人間の安全保障の視点を象徴しているか疑問であるとのご指摘がございました。そのご指摘を受けまして、注書きの記述において、「人間の安全保障」の視点を理解する上で参考となる案件例を附属に示したと記述して、その点の趣旨をより明確化しました。
 続きまして、「3.重点課題について」でございます。
 まず3ページの冒頭の柱書きで、ODA大綱の基本方針の公平性の確保に関連して、「社会的弱者への配慮」という言葉を明記しました。これは貧困削減、持続的成長、平和の構築などの個別の記述において、それぞれのところで、貧困層や女性、子ども、障害者、先住少数民族など、社会的弱者への配慮をそれぞれ盛り込むべしとのパブリック・コメントでの意見も踏まえ、重点課題全体に係る柱書きのところで整理して、その点を明記したということでございます。
 また、昨年末に発生したスマトラ沖大地震及びインド洋津波災害が未曾有の被害、災害をもたらし、日本政府としても、先ほど副大臣からもお話がございましたが、5億ドルの緊急支援に加え、中長期的な復旧、復興についても最大限の支援を行うことを表明しております。こうした事態を踏まえまして、4ページの貧困削減でございますが、これは(iii) 「突然の脅威からの保護」のところ、それから7ページの(3) 「地球的規模の問題への取組」のところで修文を行っております。具体的には18日、政府が神戸での国連防災世界会議の場にて発表した防災協力イニシアティブに基づいて、我が国の経験や技術、人材を活用して、包括的、かつ一貫性のある協力を行っていくとの考え方を明記しております。
 続きまして、5ページ目の(2) 「持続的成長」のところでございますが、その(イ) の(b) でございます。前回の総合戦略会議の場で、我が国の安全と繁栄の確保や、国民の利益の増進云々の記述を削除すべきではないかとのご指摘をいただきました。私どもとしましては、基本的に大綱の記述に沿って、日本として途上国の持続的成長のために積極的に支援するとの考え方を明らかにするもので、原案を維持したいと考えております。
 その後の(d) のところでございますけれども、経済連携に関する記述が設けられておりますが、これについては、前回の会合で日本の通商政策のためODAを活用すると聞こえるという趣旨のご指摘をいただきましたので、そこの点、表現振りを整理いたしました。具体的には「我が国」という言葉を削除して、その辺を整理したということでございます。
 それから10ページに参りまして、平和構築の(f) の「社会的弱者への配慮」の個所ですが、パブリック・コメントを踏まえまして、紛争後も長年にわたり発生する「地雷被害者を含む」という文言を追加いたしました。
 最後に「4.効率的・効果的な援助の実施に向けた方策について」でございます。ここでは前回の戦略会議、また公聴会の場で、「現地ODAタスクフォース」という言葉を「現地」と省略するというふうにしていたわけですが、そうすると、現地関係者には住民が含まれることが不明確になるとの意見がございまして、こうした指摘も受けて、よりわかりやすくするということで、現地ODAタスクフォースという言葉については、10ページ以下、たくさん出てきますが、「現地TF」ということで統一することで、そうした懸念に対応したということでございます。
 以上でございますが、アフリカではMDGsの関係でいろんな議論が行われているわけですが、NEPADの関係者、あるいはアフリカ各国の援助関係者、さらにはドナー側としての英国、世銀、ADB等の関係者と実はいろいろ議論してきておりますが、今回、ODA新中期政策(案)に盛り込まれている内容は、特に「人間の安全保障」の視点とか、貧困削減、持続的成長との関係、こういったものを既にいろんな場で提起させていただいておりますけれども、共鳴し合う部分が多いという手応えを強く感じているところがございます。いずれにしても、この中期政策の採択を受けて、更に実践の場に生かしていきたい、そのように思っております。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。今ご説明がございましたような修文がございました。特に防災イニシアティブについての文言がスペースの面でもかなり多く入り込んだことが前回との大きな違いであろうと思います。いずれにしましても、大体20分くらいを目途に、これからこの中期政策についてご意見がありますれば、ご発言いただきたいと思います。
(草野委員) 私は大阪で行われた公聴会に出させていただきましたし、今回の修文をお聞きして、事務局方の皆さんのご努力は改めて大変だったのではないかなと推察をいたしました。ただ、公聴会で私が申し上げたことがどのように取り扱われたのかということを、ちょっとご説明をいただければなと思います。それは11ページ目のところにある、いわゆる中央と現地との関係です。これは公聴会でも何人かの方から現地の住民を含めた声がどの程度、中央政府のほうで本当に担保されるのかということについて懸念が出ましたので、私は11ページ目の一番下のところ、「東京は、案件を選定する際に、こうした現地TFの提言を尊重する」という文言に「最大限」というのを入れるように提案しました。いろいろ事情があったと思いますが、どうして「最大限」が採用されなかったかということについてご説明をいただければと思います。何でそういうことを申し上げるかと言いますと、私は思いつきで申し上げたのではなくて、国鉄の分割、民営化の研究をしたことがあるのですが、あのときに第二次臨調で初めて政府の答申を尊重するという文言に加えて「最大限」というのを入れたのが非常に画期的だったということです。それによって、政府が答申により拘束され、その後の経緯をよく知っているものですから、「最大限」というものを入れたほうがいいのではないかなと思いました。ただ、「最大限」というものを入れると、逆に常に現地のほうが正しいということで、かえって具合が悪いのかなという気もしないでもございませんので、一応、その点についてご説明をいただければと思います。
(渡辺議長代理) 兒玉さん、何かお答えすべきことがございますか。
(兒玉経済協力局審議官) 草野先生のご指摘の点でございますが、実はその部分も別にして、11ページをごらんいただきますと、例えば上から2行目に「現地TFの提言を尊重する」、それからその2行下に「東京もこれを尊重する」、それから (ロ)の(b) 、11ページの真ん中辺ですが、「東京は現地TFの提言を尊重する」、それから今先生から指摘いただいた「現地TFの提言を尊重する」と、「尊重する」というところが沢山入っているということがございまして、それに対して、すべて「最大限」という言葉を入れるのかどうかということで、私どもの中で各省も入れて相当議論いたしましたが、結論的には「最大限」という言葉が、いま言われた、そのときの臨調の解釈を私は承知しておりませんけれども、尊重すると書くことが一番大切なことであって、かえって「最大限」と書くということは逆にとる方も、つまり解釈として、最大限だから、できる限りをやってみればいいので、尊重できないものもあるだろうという見方もできるということで、ここはすっきりと「提言を尊重する」ということを書くことで収めさせて頂きたいと考えております。
(草野委員) 私も固執するつもりはございませんけれども、そういうことでございますかと。なかなか難しいのでしょう。
(渡辺議長代理) そういうご不満もあるいは残るかもしれませんが、今までのODAに関する政府のドキュメントの中で、現地機能強化をここまで踏み込んだ文献はないと思いますので、今の兒玉さんのご案で納めていただくということにさせていただきたいと思います。
(関山委員) 全体的によくまとまっているし、コメントも反映されていると思います。ただ、先般も言ったと思うのですが、持続的成長の5ページの(c) です。もちろん持続的成長の阻害要因ということで、阻害要因を国ごとに分析するということですが、阻害要因は、例えば地域連帯の持続的成長の阻害要因も私は検討すべきだと思います。例えばメコン地域なんかは、今後、地域連携といいますか、ボーダレス化が進むと思います。例えば、農産物の輸出のための通関システムの整備とか、道路の未整備等があると思います。したがって、国別でリファーすればいいことだと思うのですが、やはり中期政策でございまして、地域全体の持続的成長をもたらすにはどうしたらいいかということが非常に重要です。その辺の各国の阻害要因を国ごとに分析するということは重要ですが、同時に地域全体の持続的成長をもたらすには、やはり地域全体の持続的成長の阻害要因も検討すべきだ、というように加えていただければ、表現的にいいのかと思っています。もちろん、阻害要因は国別ごとにやるのは重要ですが、要は地域全体の持続的成長の阻害要因というもの分析する必要があるのではないかと思います。
(渡辺議長代理) (c)と(d)との関連はどうでしょうか。
(関山委員) (d)は、言ってみれば、日本のFTAの関連です。経済連携で、例えば東アジア間の地域連携が進んで、ボーダレス化が進みますが、そういった地域の持続的成長の阻害要因ということを私は説明しているわけです。
(渡辺議長代理) (d)の最後の2行に。
(関山委員) これはあくまで日本と各国という書き方です。私が述べたいのは、(c) は経済成長の阻害要因、これを各国別ではなくて、地域全体でそういった分析をすることもやはり必要なのかなということを述べているわけです。
(渡辺議長代理) その必要性は、地域全体をにらんだODAが必要だということにつながるわけですよね。(c) と(d) のリンケージをつけるためにそういう文言を入れたほうがいいというふうに解釈したらいいでしょうか。
(兒玉経済協力局審議官) 関山委員からのご指摘の件でございますけれども、私どもも地域協力に対するODAの役割というのは、一つの論点として議論されてきたということは十分承知しております。他方、阻害要因は、それぞれの国の中の原因に還元され得るというのが私どもの基本的な考え方でございます。成長の阻害要因というものは、今いろいろ統合が進んでいるにしても、基本的には主権国家体制という枠組みの下に、それぞれの国が存在しており、それぞれの国の中における規制をどうやって克服していくかということではないかと考えます。そうした有害要因を克服していくということは、国境措置を含めて、各国の法制の整合性を図っていくということであり、それがそれぞれの国を束ねていくということで、経済連携というのが、その次の6ページの1行目にあるように、人、モノ、カネ、情報の国境を越えた流れを円滑化し、成長に資するということでございます。
(関山委員) 日本のODAは、もちろん国別でそのような視点で見ていくわけですが、やはり新しい見方として、そういう各国のだけではなくて、地域を見て、さらにそういったことに対して援助していこうという幅広い視点から訴えられるというので、非常にアピール効果もあるし、入れたほうがいいと思います。
(兒玉経済協力局審議官) 関山委員ご指摘の二つのパラでございますが、「インフラ整備が幅広い地域や国境を跨いで裨益をもたらす場合もあることから、支援を行うに当たっては、地域全体の発展という観点を考慮する」、そういう具体的な言及もここに入っているということでございます。
(渡辺議長代理) それは書き込まれてはおりませんでしょうね。 (c) 、国ごとという表現が気になるわけですね。
(関山委員) 私は、阻害要因として、そういうリージョンワイドに見る何が阻害要因かと。例えば各国のいろいろな問題、阻害要因にしても、やはりリージョンワイドに共通したこういう阻害要因があるとか、そういうことをピンポイントとして指摘することも非常に重要なのかなと思います。確かに総体的には今おっしゃったように述べられているとも言えます。ただ阻害要因ということに関してピンポイントしてはどうかということなのです。
(渡辺議長代理) わかりました。この点を預からせていただきましょう。
(磯田委員) 関連して、今のことを申し上げますと、リージョンだけではなく、本当にグローバル化の中で、多国籍企業、たとえばインドシナ地域であってもアメリカとか、要するにそのリージョンを越えた阻害要因は沢山あるわけです。NGOの視点から言いますと、そういう問題があり、そこをきちんと取り組むべきではないかという意見も多分あるかと思います。逆に、それでは、何のためにODAをするか、あるいは阻害要因を分析して支援計画を立てるかというと、リージョンというのは実態があるような、ないようなわけです。むしろそれぞれの国に裨益するということが重要であって、そういう意味では、兒玉審議官がおっしゃられた国ごとに分析する中にそれも入れているということで私は理解して、むしろ国にとって何が問題かということをきちんと分析する中で地域が出てくれば出てくる。私は基本的には何がそこで重要かということについてはいろいろと意見も持ってはおりますが、一応、政策の中の7ページの(d) のところに明らかに「連携強化」ということは書かれてあるわけですから、施策としてこういったものを入れますということが書いてあるので、そういうことをおっしゃられると別な意見も出てきますということを申し上げたいと思います。
(浅沼委員) この案文に関しましては、以前にコメントさせていただきましたから、ここに提案されている中期政策の案については結構だと思います。ただ、この政策を実施するに際して1点だけ発言させていただきます。この中期政策にはいろいろ新しい考え方や、それから今までよりももっと強調すべきような点がたくさん含まれております。その中で特に10ページ以降の援助の実施体制についてのところで、二つばかり新しい点があって、第1は、援助の内容について、政策の策定や、制度の構築を強調するという点が一つあり、第2に援助を行うに際して現地での活動を強調するという点がもう一つ新しい点として出てきている。私自身それは大変いいことだと思います。ただ、この政策を実施するに当たって、それができるような、特に援助実施機関における、予算措置も含めた体制づくりをお願いしておかなければいけないと思いまして、その点に注意を喚起させていただきたい。今までの援助から見て、特に日本の援助はどう考えても、資金の投入と人的な投入との比率が非常に資金のほうに偏り過ぎていて、その結果、例えば顔が見えない援助というのは、多分、本当はそれに起因するようなことだと思います。今ここの政策で述べられたような点を強調していくとすれば、その比率を大幅に改める必要があると思います。ですから、ただ、ここに政策として書くだけでは、多分いまの援助実施機関の体制ではこれはできないと思います。本当にやるとすれば、その辺を十分に考慮していただきたいと思います。
(渡辺議長代理) 浅沼先生、以前より一貫してご発言なさっているところであり、お考え方はとてもよくわかります。10ページ以下のところで、例えばどのような指摘があり得ますか。
(浅沼委員) 修文に関してはございません。
(渡辺議長代理) 留意すべき点だというふうに理解させていただきます。それでは、青山委員、どうぞ。
(青山委員) 私も、今回の案は、前のものと比べてわかりやすく具体的になっており、これ以上直すことは余り必要ないと思いますが、2点だけコメントさせていただきたいと思います。
 現地を重視するということが強調されており、それには賛成です。ただ、現地にいらっしゃる方は、日々カウンターパートと接しているわけで、長期的な視野を持つのが難しいこともあるのではないかということを懸念しております。継続性があるか、あるいは、何年か経った後にどんな結果がでるか、よい結果ならよいですがそうではない場合もあり得るので、そういう時の責任をどうするのかといったことを考えると、やはり東京側の専門的な支援体制をきっちり整えることが必要であると思います。そのことについては、十分書き込まれていると思いますので、特に追加する必要はありませんが、この点を是非ともご留意いただきたいと思います。
 それから2点目は、10ページに社会的弱者への配慮として、地雷被害者についてふれていることについてです。実は、先日、カンボジアにまいりまして、障害者の状況などについても調べてまいりました。内戦が終わってもう10年以上経っており、地雷よりも交通事故の方が増えている、また地雷より不発弾の被害が多いというようなことを聞きました。地雷を含むという表現ですので、どうしても直さなければならないわけではありませんが、余り地雷に限定せずに、精神的なトラウマも含めて、心身に障害を持つ、といったように少し対象を広げた方がよいのではないかと思います。
(荒木委員) 12ページ、これはその前の「援助手法の連携と見直しへの提言」というところですが、私も修文云々という問題よりも、ここに書いてある「各種援助手法の有機的連携が重要である」という、そのもとで、「現地TFは、特に、無償資金協力、円借款、技術協力それぞれの援助手法の適切な役割分担を明確にしつつ」云々と書いてあるんですけれども、非常に重要なところですが、こういうものをもっとブレイクダウンして書くとすれば、中期政策には不適切と、こういうことでしょうか。例えば、やはりENを結ぶときの初期の段階ではパッケージでやっていかなければならないということが現場としてはあるわけです。そういうものの技術協力協定、あるいは経済協力協定の結び方まで言及していかないと、こういう連携作業というのはうまくいかないと思いますが、その辺はこれからやっていくということなのか、ということをお聞きしたい。
(渡辺議長代理) 兒玉さん、お答えいただけますか。
(兒玉経済協力局審議官) 荒木委員、あるいは各委員から、この中期政策策定プロセスの中でも、本当に政府はやる気があるのか、あるいはこう書いていて、これをどう担保して、スキーム間連携を意味のある形でやるのかというのは、ずっとご指摘を受けていまして、私どもの問題意識として大変強いものがございます。具体的にどうかということは、そのページの3行目の後段ですけれども、「これら3手法が相当程度実施されている被援助国について」、これは当然、日本の援助の最重点国を対象にすることになると思いますけれども、「具体的な連携モデル案件の形成に努める。」というところに私どもの思いが込められておりまして、まさに今、その方向で動いております。それをまたこういう場でもご披露しながら、具体的に前に進むということがお示しできるのではないかと考えております。
(渡辺議長代理) 私も中期政策の案としてはこの文言でいいと思います。青山先生、何か代案はありますか。
(青山委員) 地雷に限定せずに、心身に障害を持つぐらいに、少し広げた方がよいのではないかと思います。
(砂川委員) 浅沼さんと荒木さんがおっしゃった点ですが、12ページの上の2行目のところで「援助手法の適切な役割分担を明確化しつつ」だけでは、やや物足りないという感じがしました。即ち、その次の行で「具体的な連携モデル案件の形成に努める」ということであるならば、いわゆる援助手法のもう少し弾力的な運営というようなことを考えていかなければいけないと思います。だから、例えば円借款と無償を1国で使うことに加え同じ案件に使うことができるのかどうか。恐らく今までやられたことはないと私は承知しています。その点で、その意味では文言をもう少しフレキシブルにしてはどうかと思います。そして、その実施機関は、円借はJBIC、技術支援はJICA、それから無償は外務省と分かれていて、外務省が統括されていますけれども、三者間の協調のやり方についてもっと戦略的に話し合ってほしい。
 さらにもう一点は、途上国での特にインフラで、民営化の流れが国際的に非常に強まっています。この民営化の流れに対してどう対応していくのかが、やはり不透明と思います。この2点について具体的にどのように盛り込んでいくのか。中期政策は実施のためのガイドラインと位置づけられるわけですから、もう少しそこに弾力的なアプローチをしていくという方向が示されたほうがいいのではないかと思います。
(渡辺議長代理) 後段については、そこまで中期政策に書き込めるかどうか、ちょっと疑問に思います。前段について、3行目、これは荒木さんも問題にされましたが、「それぞれの援助手法の適切な役割分担を明確化しつつ」、「具体的な連携モデル案件の形成に努める」、ここですね。何か代案がありますか。荒木先生、これではちょっと不満感が残るわけですね。
(荒木委員) まあ、そうですけれども、連携は難しいというより、連携をしなければならないという前提に立たなければならないことは事実で、したがって、そのことではやはり具体的な連携モデル案件の形成が必要であり、これをブレイクダウンすると、国別援助計画に盛り込んでいくことだろうと思います。そのように考えていくと、その盛り込むプロセスで、具体的にどの案件とこのスキームをくっつけるということになるのではないかと思いますけれど。
(砂川委員) 無償の供与は、その国のパーキャピタインカムが一つの基準になっています。より高い国には円借款が供与される、即ち国によって分けられている。従って、同じプロジェクトに無償と円借款が同時には供与されていない。そこで、そういうことができるのかどうか。できるという前提で連携を進めるならば、形態間の連携が必要かどうか、必要ならばどうしたら連携できるかについて、最初のプロジェクトの選択の段階で、実施機関そしてその国と話し合うことが重要でしょう。即ち連携の具体化への踏み込みがほしいですね。
(渡辺議長代理) わかりました。ご意見として伺っておきます。
(草野委員) 今までの議論を聞いておりますと、どんどん中期政策の中身が立派になっていると思います。先ほど浅沼さんのご指摘がございましたけれども、その懸念、全く私は同じ思いです。逢沢副大臣がいらっしゃいますので、あえてこの場でぜひ副大臣にもよく考えていただきたいなと思います。釈迦に説法の部分がありますが、例えば貧困削減でも、アフリカに一生懸命やる。アフリカに53カ国ありますけれども、たしか十幾つしか日本は大使館がありません。ドナーミーティング等々でも、こういうような中期政策の中身を実際に担保するためには、積極的に参加して、いろいろ議論しなければいけないけれども、そういう人材が本当に足りているのかというと、多分、全然足りていないと思います。それを大臣や副大臣はよくご存じだろうけれども、支える与党の議員さん、あるいは財務省のODA担当の方はどこまで知っているんだろうかということが非常に懸念されるわけですね。是非、その点を、この中期政策そのものにはいま関係ございませんけれども、頭に置いていただけたらなということでございます。
(渡辺議長代理) 大変貴重な意見だと思います。ありがとうございました。千野さん、どうぞ。
(千野委員) ちょっと前に戻して恐縮ですけれども、10ページの青山委員が指摘されたことに関連してなんですが、地雷被害者より交通被害というような、大変リアリティのあるお話ですが、そこで代案というか、心身のトラウマというようなことを言われましたが、それを入れると、私が思うには、今度はそこにまた関心がいってしまうというようなことで、どうなのでしょうか。ここは前段の文脈は紛争による直接の被害という時間的に短い部分を言っていて、強いて言うと、紛争の後遺症的な、そういう問題にも特段の配慮を図るということで、あえて心身のトラウマというふうに特化しないほうがいいのではないかという感じがします。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。それでは米山委員、どうぞ。
(米山委員) 時間もありませんので短く申し上げます。全体としまして、非常によくできた文案だと思います。各委員の先生方から細部にわたるいろいろなご指摘があったので、私は、マクロな言い方をしたいと思いますけれども、やはり元々ODAの主たる狙いというのは、貧困削減というのが一番大きなウエイトを占めていると今でも認識しています。従いまして、いろいろと指摘がございますけれども、やはり各国の持続的な成長を踏まえた経済発展こそ一番のベースになるはずです。したがって、オペレーションをする際に、これは総花的にいろいろおっしゃっていますけれども、どこにウエイトを置いて行うのかという基本的スタンスを事務局はどう考えているのかが、まず一つ目です。
 それから、浅沼委員がおっしゃったように、やはり金だけ出せばいいというものではないわけですから、人的な支援をしっかりやっていくためにはどういうことを考えているのかという部分についてお伺いしたいと思います。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。全体の書き振りに関するご意見だと受けとめておいてよろしいでしょうか。
(米山委員) いろいろ書いてありますけれども、どういうところにウエイトを置いてオペレーションをやっていくのか。ODAの予算はどんどん小さくなってきている中でもって、どういうところにウエイトを置いていくのかという話はオペレーション上大事だと思います。その議論というのがなされていない。これは抜けている、こうすべきだという議論はいろいろあったにしても、それについて、要するに本省としては、この事務局としてはどういうふうにお考えかということについてお伺いしたい。全部ばらまきするわけにいかないでしょう。
(渡辺議長代理) そこは何か特にご意見ございますか。
(兒玉経済協力局審議官) 大変根本的なご指摘でございますが、私どもが考えておりますのは、この中期政策の冒頭からも強調させていただいたと思いますが、成長を通じた貧困削減が究極の目的であり、今の国際社会がMDGsに取り組もうとしているときに、それに対して日本としてどのように対応していくのかというのが恐らく直近の課題だと思っています。その際、直接的な貧困削減目標のためには、いわゆるソーシャルサービスといわれるところの医療、保健、あるいは教育といった対応が必要であるということを、特にこの視点の中で強調されているのではないかと思います。他方、大綱で示されているように、日本のODAの中心はアジアでいくということであれば、アジアにおいて成長が相当持続的なものになっている中で、どのような対応をするのかといえば、やはりインフラの整備というのが実は根源的に大事であるというふうに考えます。それからアフリカを含めて、成長を下支えするものとしての農業セクターの開発が大事だというようなことで、恐らくインフラ、農業、そしてソーシャル・セクターであるところの保健、医療、教育ということ、もちろん感染症を含めて、そういった分野について地域ごとに、さらに国別に戦略を立てて対応していく。そのための基本的な考え方、アプローチ、具体的な施策というものが相当程度明確にお示しすることが出来た、そういうふうに考えております。
(米山委員) 定性的にはよくわかりますが、定量的な方向性はどうなのかとお聞きしました。増やしていくのか、それとも医療とか、そちらの方面にウエイトをかけていくのか、定量的にどっちの方向に持っていくのかというところが一番聞きたいところです。
(佐藤経済協力局長) 先程全体として定性的には今兒玉審議官からご説明を申し上げたとおりでございます。他方、定量的にはというご質問がありましたが、実際にはこの分野に幾ら、この分野に幾らということではなかなか難しいだろうと思います。もちろん予算の制約ということもございます。それから、その中で円借款、無償資金協力、技術協力と、いろいろスキームもあるということです。その一方で、恐らく、それぞれに具体的な方向性や、米山委員がおっしゃったような定量的な部分ということを考えていく必要があると思います。実際に私どもの局の中でも、これまで昨年も予算の要求の段階でも、全体としてこういうものが必要であるということを作ってきているわけでございますが、予算要求でございますので、これだけのものをやりたいと言っても、実際にはなかなかそれが全部実現しているわけではございません。そうした中で、今度は与えられた予算の中でこれをどうやって配分していくかということについて、私どもの局の中でも、いまの分野別の話と、それから当然、地域別の話ということがありますので、この縦軸と横軸で、この点については全体の大粗な配分計画というようなものは具体的にこれからつくっていこうと思っていますが、その際の芯になるのはこの中期政策の中で重点事項、あるいは重点地域として書かれている分野ということになろうと思います。この中期政策をベースに、今回の予算をベースに今年の計画というものを作っていきたいと思いますし、さらに中期的にはもう少し広げた意味ではまた全体として考えていかなければいけないということを思っております。定量的な部分というのを考えていく必要があるということは、米山委員からのご指摘どおりだと思っております。
(渡辺議長代理) なかなか難しい問いを発せられているわけですけれども、この中期政策が人間の安全保障の考え方をフィロソフィーに置くということが大前提であるとすれば、やはり貧困へのダイレクトアプローチといいますか、個々の人間ならびにコミュニティへの助力という概念を中心に置くわけですから、それに相性のいいプロジェクトに重点を置くということになると思います。つまり従来我々が持ってきた日本型の援助の有効性を同時に頭に置いておかなければなりません。これはまさに成長を通じての貧困削減ということですが、そのことについては東アジアの経験に照らして、ここでもよく書き込まれているだろうと思います。話をもう一度下に戻しますと、貧困へのダイレクトアプローチとは言いながら、しかし個々の人間やコミュニティにより自立的なオーナーシップを促すような助力も必要だということで、日本型ODAの考え方はダイレクトアプローチのほうにも入っているというふうに私は今回の中期政策を理解しています。そのようなわけで、これからの日本のODAの重心がどちらかというとダイレクトアプローチのほうに向かっていく、そういう日本の政府の意思の表明であるというふうに私は当初からとらえておりますけれども、多くの委員の考え方はそういう考え方に立っているのではないかと思いますが、どうでしょうか。
(米山委員) それは議論されていないと思います。イメージとしては、人間の安全保障とかありますが、いわゆる貧困、ODAの本来は何だということについて言えば、いろんな見方によって、一言で貧困と言っても、一番貧困は何なのかと。それに加えて、オプション的な人間の安全保障というのが書かれていますけれども、それについての議論は明確については議論されていないはずです。イメージで議論されているだけであってですね。そこが大事ではないですか。トレンドとしてどうやって持っていくのかということは議論されていないでしょう。
(荒木委員) 持続的成長とか、成長を通じた貧困削減ということで、はっきりした路線が出ていて、これはどちらかというと、欧米は成長を通じたというよりも、ダイレクトに、例えば保健、医療とか、教育とか、それを重点的にやることに対して、我が国は対ベトナム援助の場合でも、向こうの政府がそう言ったわけですが、その国の経済発展を促す要因をかなり重点的にやりながら、それでやっていく。国際的にはそういう流れにきたわけですね。日本の主張がむしろ世界の主張をつくりつつあると言ってもいいのではないかと思っています。だから、今回の中期政策で、大綱からずっと流れているのは、米を与えよう、薬品を与えよう、教科書を与えようということも大切だが、根本的には構造改革をやって、その国の経済成長を促すような経済協力をODAはやっていこうという路線の議論だと私は理解しています。
(米山委員) おっしゃるとおりで、同感ですけれども、トレンドとしてどうするんだという話は皆さん議論されていないと思います。
(荒木委員) 大綱の段階からずっと、大議論をやってきたところでもあります。結局、人間の安全保障という大きなコンセプトと合体しているわけなのであって、大きな流れは、やはり経済を通じた貧困削減というのは、これはやはり独自の大きな流れだというふうに解釈しています。
(米山委員) 佐藤局長もおっしゃったように、やっぱり限られたパイなので、小さくなっていくわけですから、その中でもってトレンドとしてどういう方向に持っていくのかということは非常に大事だと思います。ご指摘については別に反対しませんけれども、それは任せてください、大体、方向性はこうですよというので終始しているというのは、ちょっとさびしいと思います。
(渡辺議長代理) ODA改革懇談会があり、その提案によりODA総合戦略会議がつくられ、そこで国別ODA計画を立てながら大綱、中期政策についての長い議論があったわけです。今、米山委員がおっしゃったことは、その長い過程において明示的にはあらわれていないけれども、一つの前提とされながら長い時間をかけて積み上げられてここまできたわけです。是非その点はご理解いただきたい。中期政策を今日どうしてもまとめなければいけない、最後の段階でそういう議論になってしまうと、ちょっと先に進みません。
(米山委員) 要望としては、何かの機会で、トレンドとしてはこういう方向で持っていくのかという話は説明があって然るべきだと思います。全体に反対しているわけではありません。さっき言ったように、これはいいと思いますけれども、オペレーションレベルの話というのは大事だと思います。何となくイメージで決まっているようなことで進むというのはおかしいのではないでしょうか。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。議論は続けなければいけませんが、今日出された論点の中で、まだここで確定というわけにはいかないものが幾つか含まれております。最終的な修文については、これを閣議報告にまで持っていくのにもう時間的余裕がございませんので、あとは、議長、議長代理、事務局にご一任いただくということでご了承いただけますでしょうか。
  (「異議なし」の声あり)
(渡辺議長代理) ありがとうございました。それでは、佐藤経済協力局長からご挨拶をいただきたいと思います。
(佐藤経済協力局長) ありがとうございます。本件につきまして、基本的なご了解をいただいたということでございます。この中期政策につきましては、まさに最初の論点整理の段階から始まり、この会議におきまして、非常に中身の濃い、建設的なご議論をいただきました。また、会議の合間にも、この文をベースに各委員から非常に詳細なコメントをいただきました。そういったものをいろいろ取り入れさせていただいて、今回の案文ができたということでございます。実際のところ、各委員から非常に熱心なご意見、コメントをいただいて、逆に言うと、本当にいろいろな方向からいろいろなご意見をいただいたので、それぞれがまさにもっともな、建設的なご議論であったので、それを取り入れるのもなかなか大変だったという面があったのは事実でございますが、そういう点から言いますと、各委員におかれましては、それぞれのご意見について、まだまだ不十分といいますか、物足りないという部分をお持ちの方もあるかと思いますけれども、ある程度、公約数を取らせていただいたということと、それからこういった文章でございますので、どうしても文章の量の制約ということもございますので、本当に詳しく、きちっとした形で、あるいは各委員のご意見を取り入れさせていただけなかった部分もあるかもしれませんが、その点はご了解をいただきたいと思います。
 先程来、依然として、また各委員からご議論をいただいておりますけれども、私どもの認識としては、99年の中期政策、それから5年を経ているわけでございますが、この5年間の変化とか、ニーズの変化というものに対応した新しい中期政策をつくるという意味では、その目的を達するようないい案文ができたのではないかと考えておりまして、先生方には、ご議論、そして作成に当たってご尽力いただいたことに改めて御礼を申し上げる次第でございます。これからなお、政府の中での手続、プロセスというものが残っておりますけれども、できるだけ速やかに、対外経済協力関係閣僚会議の了承を得ました上で、閣議に報告したいと考えております。
 今回の中期政策の中では、特に先程来の議論に出ておりますけれども、人間の安全保障であるとか、あるいは平和の構築、そういった点を非常に新たに重視をする方向性を打ち出すということでございますので、そういった施策の方向性については、当然、国内での、我が国のODA政策の議論という中で、この新たな中期政策というものを軸にして政府として説明を行っていきたいと思いますし、また、国際的にも、特に今年は、いろいろ開発問題をめぐる議論が盛んになるということでございます。そうした中で日本のODAのあり方、日本のODA政策ということについては、国際的にもいろいろ注目がされており、また欧米とは若干その考え方を異にする、哲学を異にする面もあるということでございますが、そうした議論の中でも、我が国のODA政策というのはこういうものであるということで、この新しい中期政策というものをバックボーンとしてきちんと説明を行っていきたいと考えております。また、そうしたこの政策をベースに、先ほど来、各委員からいろいろご指摘をいただいておりますが、まさにこれをどうやって実施をしていくか、オペレーションの部分というのは当然非常に重要な部分であるわけで、先程申し上げたように、全体として量の制約もございますので、それではこういった政策をどうやって具体的にしていくか、先程の援助スキームの間の連携とか、その各スキームをどうやって柔軟に運用するか、あるいは援助の実施体制の問題、今の人員でどれだけやっていくのか、これからどうやってその体制を補強、強化していくのかといったような問題、いずれも非常に重要な問題でございますので、こういった点についても、この中期政策で実際に意図されたものが実現をされるように私どもとしてもできるだけ努力をしていきたいと思いますし、また、そうしたオペレーションの部分についても、随時、この会議においてご報告をさせていただきたいと考えております。改めて、この中期政策の策定に当たりまして、この会議で大変にいい議論をしていただき、ご審議をいただいたことに御礼を申し上げます。ありがとうございました。
(渡辺議長代理) 佐藤局長、ありがとうございました。
 それでは、第2の議題、国別援助計画について入ります。まず対タイ国別援助計画についての中間報告をよろしくお願いいたします。
(末廣主査) 対タイ協力計画委員会の主査をやっております末廣です。できるだけ簡潔にご報告させていただきます。
 昨年の9月27日にこの総合戦略会議で対タイ協力計画委員か立ち上げの基本方針を述べましたが、その後、3回にわたって、東京でタスクフォースの会合を開きました。それからテレビ会議等を通じて、現地と緊密な連絡を取り、12月には6日から6日間ほど、タイに参りまして、大体14カ所ぐらい回って、50人ぐらいの人たちと意見交換し、現地タスクフォースともかなりつっ込んで意見交換いたしました。その上で一応の骨子が固まってきておりますので、中間報告をさせていただきます。
 お手元にあります資料の2ー1~3があると思います。恐れ入りますが、資料2ー3の「概念図」と書かれた横並びの図を見ていただき、同時に図2ー1の中に入っております我が国の対タイODA実績の91年から2003年度までの表、これを並べて置いていただければと思います。
 それでは資料2ー3に即して、われわれ委員会の考え方を簡単にご紹介したいと思います。
 考え方は五つの柱からなっておりまして、第1は現在のタイに対する現状をどのように認識するかです。第2は、この上に立ちまして、これまで行われた援助計画というものが妥当であるかどうか。基本的方針として、その見直しがいま必要であるということを強調したいと思います。第3にこの計画の見直しに関しまして、タイとの協力関係は今後どういう方向であるべきか。第4に、その方向性に照らして、具体的な協力分野はどこにあるのか、第5に、全体を通して新しい協力を進めるためにどのような問題点、見直し点、あるいは新たな取り組みが必要かということを議論する、そういう構成になっております。
 まず第1に現状認識でありますが、三つの柱が立っております。第1は、タイはすでに経済、社会面で中進国化しつつあるという認識をわれわれは持っております。この計画が実行に移される5年間の最終年には、タイの一人当たりGNP、もしくはGNIは 3,500から 3,600ドルということで、世界銀行が分類する中所得国になります。また、タイ政府自身も、この4年間の間に「デュアルトラック」、つまり「車の両輪」と呼ばれる政策の下で国際競争力の強化と、貧困削減という二つの政策を柱にして、精力的に対策を進め、かつ、FTA、EPA (経済連携協定) 等についても、タイはASEANの中では非常に積極的に取り組んでおります。
 2番目の社会面でも、今後、10年、20年の間に急速に少子化と高齢化が進み、タイ政府自身もそれを強く認識して、福祉国家戦略を行っています。教育機会のほうは高等教育が大変なスピードで上がっています。私の計算では、昨年の段階で高等教育、つまり大学以上の在籍者数はすでに学齢人口の35%近くまできており、積極的に教育の高等化を進めている。そういう自国の中進国化の進展を踏まえて、タイ政府自身が従来の援助受入国ではなくて、援助供与国を目指すということで、ドナー(援助国)と、レシピエント(援助受入国)の関係はとりやめ、すべての国際機関並びに援助国に対して対等のパートナーシップを強く要求しているのが現状であります。
 それから3番目にインドシナ地域に対しては、タイ政府は、ASEANの一員だけではなくて、独自にミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナムに対して、新たな協力関係の提案をしている。それだけではなくて、南アジア、さらにはアフリカに対しても積極的な協力を提言しております。
 このような現状認識に対して、従来の援助計画という発想ではもう無理ではないのか。ぜひここは強調しておきたいのですが、タイについては、援助を行うために開発課題を日本と相談するという段階ではなくて、すでにタイ自身が自主的に開発課題を自分で設定し、これに取り組んで解決する能力も高くなっている、その事実をまず私たちは前提にすべきである。同時に、きょうも議論されました新ODA大綱、とりわけ今回の中期政策を踏まえて、今後のタイとの協力関係を見ていく必要があるだろうと思います。それから先程言いましたタイ側が援助、被援助の関係を現在は変えようとしております。従いまして、これに対応した新たな関係をタイと結ぶ必要があります。それから今回の広域津波災害もそうですが、アジア地域、あるいはインドシナ地域というのは今不安定性、不確実性に直面しておりまして、グローバル化は同時に不確実性、不安定性と並行して進んでいるわけです。これに対して、日本だけではなくて、アジア諸国は手を組んで、地域の安定、繁栄に協力すべきであろうというのが見直しの背景であります。
 その中でタイとの協力をどのようにするのかということで、9月の総合戦略会議で、われわれは、中進国に向かっているタイでどういう協力のあり方があるか検討を試みるという提案をしました。そこでも援助はもう卒業していいという議論もあったし、反対に、援助を続けるべきであると、そのような両方の意見があったと思います。ところで、先程言いました表を見ていただきますと、実はタイ向け援助の金額は、すでにピーク時の3分の1以下になっております。しかも、円借款が現在のところ新空港以外に案件が成り立っておりませんので、円借款がなくなると、これに伴って、円借款絡みの技術協力や案件形成のためのさまざまなフィジビリティスタディもなくなってくる。そうなりますと、傾向として援助を引き下げていくとか、ODAを減らすという方針が仮になくても、もうトレンドとしてこれからは金額は確実に減っていくと思われます。そういう中で、ODAはもうやめればいいのか、いやそうじゃないという議論からいいますと、私どもはタイとの新たな関係を結ぶために、やはりODAを活用すべきであると考えています。ただし、それは金額を増やす、減らすという議論ではなくて、もっと必要に応じて、あるいは方針とか課題に応じて、金額が柔軟に上がったり、下がったりするような、「のこぎり型」のものを考えたほうがいいのではないか。例えば一つのケースで言いますと、今回のスマトラ沖の地震・津波被害にどう対応していくかというときに、金額を減らす方向の中でどうこうするという議論ではなくて、その課題に応じた形で、柔軟かつ迅速に対応する必要があろうかと思います。
 次に、タイとの協力の方向性としましては、五つの柱が立っております。第1は、基本姿勢として、二国間協力については、合意形成と相互利益を前提にする。つまりタイ側の利益だけではなくて、日本における利益も考えて議論を重ねる。それから第2は、そして今回の大きな柱でもありますが、二国間協力から、より広域協力へ、そして、第3国への日本とタイとの共同支援という枠組みをもっと進めようというのが特徴になっております。第3は、中進国向けの協力形態として、先ほど言いましたように、金額を減らすとか増やすとかの議論ではなくて、テーマ、あるいは分野、スキームに応じて柔軟に対応すべきであると考えます。また協力分野につきましては、重点分野を貧困とか環境というように問題別に立てるのではなくて、むしろスキームごとに方針を明確化すべきであると考えます。第4は、今後のタイとの協力関係では、先行している民間、大学、NGO、NPOと緊密な連携を図るべきである。さらには技術協力、無償資金協力、あるいは円借款との緊密な連携を図る、そういう連携強化が4番目になります。そして、最後に従来のODAの協力の枠組みを越えた形の新たな共同協力の形式を模索する必要があります。この5つが今後の協力の方向性であります。
 それに基づいて、協力分野として当初は重点分野の選定を考えましたが、自主的に問題を解決する能力が高まっているタイとの関係で言えば、余り望ましくない。むしろスキームごとに考えたほうがいい。そういうことで、大きく二国間協力とタイとの共同協力に分けまして、二国間協力は技術協力、円借款、草の根・人間の安全保障無償資金協力の三つについて、それぞれ考えていく。一方、共同協力につきましては、メコン地域開発、アジア・アフリカ協力、紛争復興国支援、具体的には東チモールとかアフガニスタンの復興に対して、日本とタイが共同して支援していく、こういう二つの枠組みで考える。技術協力につきましては、大きな柱は(1)持続可能な競争力強化と、(2)社会の成熟化に伴う問題というように立てております。他方、人間の安全保障については、技術協力ではなくて、むしろ草の根・人間の安全保障無償資金協力等を活用して、より拡充していく。円借款については、向こうからの要請が特になされた場合、特定の条件に照らし合わせて慎重に考えながら出すべきである、という判断に立ちました。
 これら全体の流れの中で、今後どのような協力を考えたらよいか、その留意点ですが、すでに中期政策で議論されております現地機関の機能の強化や、意思決定の迅速化等について計画案に盛り込みました。それからタイの場合、とりわけ重要になってきますのは、先程の現状認識の中で述べましたように、タイがインドシナの中で地政学的に見て重要な地位を占め、かつ積極的な行動に出ていることにかんがみて、バンコクにおける現地機関の地域レベルでの調整機能等をもっと考えるべきであると提唱しております。それからラオス、カンボジア、ミャンマーと協力しながら、広域案件をどのようにして検討したらよいか、そういう枠組みも考えるべきである。それから4番目、これはまだ具体的な像を結んでいませんが、日本とタイがこれまで協力してきた「南南協力」というのは、例えばタイと日本が協力して、ラオスからの研修生を受け入れ、バンコクで研修を実施するというような、第三国に対する研修の支援というものがありました。こうした「南南協力」の枠組みを越えた、例えば、南アジア、アフリカ、特にアフリカに対してタイはいま熱心ですので、日本とタイが協力して、アフリカへの協力に取り組むという、そういう枠組みを今後は考えるべきであろうというのは、われわれの考え方です。
 それから最後に、今回のタイでのヒアリングでも私は痛感しましたが、仮に人間の安全保障について、草の根無償資金協力をやろうとした場合に、当然、審査とか、モニタリングが非常に重要になってきます。その場合に、人間の安全保障に実効力があるようにするためには、単純にODAの金額そのものを増やすのではなくて、プロジェクトをサポートしたり、モニタリングをするためのスタッフというものが、現地にも、外務省の中にも、あるいは東京に、あるいは大阪でもいいですが、日本側にいないといけない。そういう人間の層が厚くならないと、実は人間の安全保障に対する支援は有効なものにできない草の根・人間安全保障に関する無償資金協力を拡充していく、ODAを使うにしても、NPO、NGOをもっと活用していくべきであると言いましたが、現地サイドでも草の根支援を支える人的な資源と枠組みをぜひ考慮してほしいというのがありまして、これも提言に盛り込みました。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。大変コンパクトでありながら、非常にコンシステンシーのある国別計画の提示であったろうと思いますが、ご意見をいろいろ賜りたいと思います。
(砂川委員) ありがとうございます。今のタイの現状というのが大変よくわかりました。一つ質問させていただきます。
 最後に述べられた草の根、人間の安全保障・無償資金協力の支援とモニタリングの強化、ここの点に関連すると思いますが、タイには古くから多くのODAの実績がありますが、ODAでつくられた施設、あるいはプロジェクトの建設後の維持管理が軽視されているというように見受けられます。無償供与された研究施設等で、先生の派遣、機材の供給等が途絶えると施設自体が使われなくなっているものがみられる。そこへ韓国がやってきて、韓国のプロジェクトみたいになってしまっているという例もみられるそうです。タイのようにODA実績が覆い国には既存のプロジェクトの持続性を重視していった方が良いと思いますが、いかがでしょうか。
(荒木委員) 今の説明を受けまして、非常に感銘を受けました。全くそのとおりだと思います。最後の、予算の関係で人的資源というか、日本の協力する側のJICA、JBICも含めて、予算が減っていく方向にある。それでは、どうすればいいかというと、我々、現場の人達と議論しますけれども、人間の安全保障はきめ細かくなればなるほど手数がかかる。手数がかかるのに今度は人がいない。それは悪循環です。そうすると、一つは、日本のスタッフというのは、どちらかというと、人件費が高い。従って、現場のタイには、タイも高くなっていますけれども、日本に比べてはるかにまだ安いので、しかも日本でいろいろ協力した研修生、あるいは留学生を含めて、たくさんの日本通がいるわけですね。そういう現地のタイの人たちをいかに訓練して、日本のプロジェクトに入れていくのか。このことは、例えば日本人1人でもって3人分以上の人材が現地調達できるし、そういう時代にもう来たと思います。現場の人たちはそれでないと動けない。現場に行くと、現地化、現地化といって、JICAにしてもどんどん現場に行っていますけれども、問題は現場に行けば行くほど、現場に権限がついていきます。権限がいけばいくほど、きめ細かくやらなければならない、いろんな決め事がいっぱいある。それは日本のスタッフだけでは無理な状態にきているわけです。ですから、どうしても現地の人が恐らく将来的にはもう60%ぐらい占めないとだめじゃないかという気がしてならないので、ぜひその辺は人間の安全保障を実現するためにもやってもらいたいということがございます。
 それから最後ですけれども、南南協力のあれで、日本とタイと一緒になってアフリカへ。これは日本の対アフリカ援助で何度も何度も、日本の経済がちょっとおかしくなる前までは日本の大の得意分野だったわけですね。これはぜひタイに先鞭をつけていただいて、例えばインドと日本とやるとか、そういう幾つかのケースが出てくると思います。ぜひタイを先鞭的に、場合によっては、それこそアフリカをやるときに韓国も一緒になってやるとか、そういうことがあってもしかるべき時代になったと思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。では、青山委員、どうぞ。
(青山委員) 大変わかりやすい方針のご説明をありがとうございました。ただ、非常に素直に考えると、どうしてタイへのODAが必要なのだろう、向こうも卒業したがっているのであれば、もう民間レベルの交流でよいのではないかという疑問が生じるのではないかと思います。民間投資、あるいは大学やNGOなどの交流で十分なのではないかという疑問に対して、なぜODAが必要なのかという論拠が少し弱いように思います。もし今しばらくODAが必要なら、5年間の計画の中にその後のビジョンをお示しいただけると、国民には理解しやすいのではないかと思います。
 それから共同協力ということについてですが、基本的に問題ないし、よいお考えだと思います。お互いに人もお金も出すというような共同協力ならよいと思いますが、もし例えば日本がお金を出してタイが人を出すというような形になってしまうと、日本のODAとしての意義が薄くなってお金を出すだけの存在になってしまうのではないかと、少し懸念しております。先進国同士の共同協力とは少し形が異なるのでしょうが、タイとの共同協力はどのような形になるのでしょうか。
 最後に紛争後復興支援に関連してですが、例えば周辺国はいろいろな繋がりがあるだけに、タイに対して微妙な感覚を持っている場合もあると思います。紛争後復興支援の場合、果たして共同でやることがよいのか、もし共同でやるなら当事国の人と共同すればよいのであって、何故タイを入れなければならないのか、タイとの共同が必ずしもよい効果を招かないこともあるのではないかということを懸念しております。
 基本的には、非常に明確な方針で問題はありませんので、これらの点について説明を加えていただければよいのではないかと思っております。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。それでは、牟田委員、浅沼委員、草野委員の順序でお願いします。
(牟田委員) 既に出ているご意見の繰り返しになるかもしれませんけれども、タイに関して、これまで非常にたくさんのODAを供与してきたわけで、それによって、ODAの供与によって出てきたアウトカムがたくさんあると思います。先程の例をもう少しわかりやすく言えば、例えばタイに日本が無償でつくりました職業訓練所がございます。技術協力もいたしました。しかし、だんだんとタイが産業発展をしてきて、そこで当初予定していたようなレベルの職業訓練はもう必要がなくなった。でも、そういうところでラオスの人を呼んで、南南協力をしているといったような事例もございます。そういうODAでつくりましたたくさんの資産、人権も含めて、それをタイで活用して、それをインドシナのほかの国に役立てるといったようなロジックは当然ありうると思います。そういったような考え方で、南南協力を強化していくことは非常にいいことだろうと思います。ただ、一方で、青山委員がご指摘になりましたように、タイにはタイの考え方がある。そういうところで、日本の意図どおりに協力ができるかといえば、それは政治的なことですから、なかなかむずかしいこともあるだろうなと思うところもあります。ですから、日本が残しましたODAの資産の活用ということと、それから主権国家としてのタイとの係わりをどう調整していくかということが、これからは非常にむずかしい課題かなと思いますので、そこのところをよろしく書き込んでいただければと思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。それでは、浅沼委員、お願いします。
(浅沼委員) タイの現状から考えまして、今ここで考えられていることを強く支持したいと思います。この方針というのは、タイの現状から個別的にタイ国に対してだけではなく、私自身は、一つのほとんど理想型に近い卒業のモデルとしてこれをとらえていったらどうかと思います。以前にも大野委員等から卒業政策について少し一般的な議論をしたらどうかという提案が皆さんについてあったと思いますが、私自身は卒業というのをある時期で卒業証書を渡して終わりというのではなくて、こういうふうに実際のプログラミング面の展開からODAニーズが変わってきて、少なくなっていく、そういうフェーズアウトの過程をとって、ある日、気がついてみたら、ODAレシピエントではなくなっていたと、そういうプロセスが非常に望ましいと思いますので、これを卒業政策、それから卒業のプスセスで一つの理想的な卒業の事例としてとらえたらどうかと思います。ここで私、中間報告と書かれたものを見ていますと、対タイ協力計画と書いてあって、国別援助計画とは書いていない、その辺も大変強く支持したいと思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。では、草野委員、どうぞ。
(草野委員) 各委員からご指摘がありましたように、この内容に関しては特段コメントすることはありませんが、この最終案をこれからお作りになる際に、もう一度、計画見直しの必要性というか、これまでのODAについて、とりわけ9月のときにもお話ししたかもしれないんですけれども、技術協力のことについては何が行われてきたのかということをもう一度オーバービューしていただきたい。それは荒木さんと私、それからもう一人、その3人で技術協力、個別専門家、あるいは研修事業を中心にして精査した経緯がありますが、そのときにわかりましたのは、現状は大分変わりつつあるとは言え、例えば個別専門家の派遣では、タイというのは、インドネシアと並んで、最も人気がある。何故かというと、食事もおいしいし、気候も温暖だし、言ってみれば、日本の国内で大変ご苦労されたお仕事をされた方の慰労の地としては、とても適当な地だというようなことで送られる、あるいは派遣されたりという方が結構おられたという実態もわかりました。それからもう一つ、赤裸々に申し上げれば、実はその個別専門家のニーズがすでに終わっているにもかかわらず、引き続き、こちら側、送り出す側もさることながら、現地のほうの各省庁も引き続き、日本のコンタクトポイントとして、その専門家をさらに後任に送ってほしい、こういうような実態も明らかになりました。ずいぶん妙な話だとは思いますけれども、そういうようなことも実態をぜひ確認をされた上で、最後の立派な案をつくっていただければなと思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。磯田委員、どうぞ。
(磯田委員) 私も基本的な方針に関しては賛同するものでありますけれども、青山委員のおっしゃられたのと同じ点を私も懸念をしております。私もラオスにしばらく係わり、いろんな人との協力、あるいはカンボジアなども知っておりますけれども、必ずしも南南協力、特に周辺国の専門家が来ることに関しての受け入れ側が賛同しているわけではない部分もあります。本当にそこの技術のレベルですとか、あるいは援助に関する方針といいますか、考え方、こういったことがどのくらいちゃんと、それなりの方が出るのかというあたりが非常に疑問な点も多いので、そういう意味では、これを大きな柱に上げるかどうかという自体も含めてご検討いただいたほうがいいのかなと思っております。
 それから2点目は、草の根・人間の安全保障無償資金協力のあたりのことで、本文のほうにも、2ページ目のところのCということでいろいろ書かれてありまして、先程のお話の中にもタイにはそういったリソース、もちろん先ほどの高等教育への進学率などの話もありましたが、非常にすぐれた人材はたくさんありますけれども、その方々がタイ政府と必ずしもいい関係でないという例が非常に多いです。また、現在、海外のNGOに対してもタイ政府が非常に締めつけて、例えばビザの発給とか、以前よりも非常に厳しくなってきているというような現実もあり、ただ、一方では、ここのCのところに書かれているような、少数民族、あるいは山岳民族、あるいは周辺の地域でのいろいろな農民グループの運動に対する、たとえば軍部などからの締めつけ、場合によっては暗殺的なものですとか、かなり激しいものがいろいろ渦巻いており、いわゆる経済発展に伴うある種の格差とか、支援が届かないグループ、あるいは住民の声が必ずしも反映されない部分というのが非常に出てきています。もちろんそれはタイ政府自らが解決する問題であろうとは思いますが、ここに挙げられたような日本が持っています草の根・人間の安全保障無償資金協力のようなものをもう少し活用し、そこがうまく、先程も幾つか人の問題をどうするかということで課題があるというお話がありましたが、是非その点の強化というのは大きな柱の一つとして、いま掲げられた方針に賛同するものでありますので、ぜひやっていただきたいということです。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。概ね、この筋書きについては賛同が得られているように思いますが、細かい点では幾つかのコメントがありました。お答えいただければと思います。
(末廣主査) いろいろご意見どうもありがとうございました。参考にして持ち帰り検討していきたいと思います。最初の砂川さんのご意見ですけれども、この点は現地との話し合いでも大変問題になりました。一つの方法は、特に草の根無償の場合には、定期的に報告会を開いて、その報告会にタイの人にも入ってもらう。そういう報告会の開催と、報告書をつくるということが、モニタリングになるし、次のときの審査の基礎にもなる。その場合、私はタイ語で報告をやっていただいてもよいと思います。日本語とか、英語にこだわらないで、現地の言葉でやりとりしながら、必要に応じて日本語、英語でも議論する。その上で報告書を提出するということが一つのモニタリングになる。それから最近、世界銀行が強調していますけれども、モニタリング機能とは別に、広報活動ですね。パブリックヒアリングを含めて。そういう活動も世銀は無償協力の中にはっきり位置づけています。日本のODAというのはやっぱりそういう点が弱いので、もう少しモニタリングと広報活動を組織的に行う体制を考えたほうがよいという印象を持っております。
 それから第三国支援の問題ですけれども、ちょっと誤解があるようです。先ほどのご意見で、例えばタイがミャンマー、ラオス、あるいはベトナムを相手に援助を行おうとする場合に、問題がいろいろ発生するというのは私も重々承知していますし、ラオス側やミャンマー側と話をすれば、そう簡単にタイと協力する気もない。ですから、今回の提案は、従来型の「南南協力」を越えないとだめだという判断に立っています。タイ側もそれは承知していまして、タイ、あるいは日本が押しつけるような形の「南南協力」はもうあり得ない。レジュメの図に書きました「JARCOM」(JICA・ASEAN地域協力推進会議)のように、日本とASEAN加盟国が組んだ地域協力の枠組みの中で、相手国側がタイ、マレーシアを援助の供与国として選んでくる方法もある。決して日本とタイが組んで、ラオスとか、ミャンマーに一方的に押しつけるのではない。そういう方法はむしろ、もう越えなければいけないという前提に立って新しい共同協力を考えようという感じであります。
 それからオーナーシップの問題ですが、日本がいつも資金を出して、タイが人を出すということにならないのかという懸念ですね。例えば今回の津波の後、タイ政府は直ちに特別予算を組んで支出しました。日本大使館には金は一銭も要らない。むしろ、タイが必要とする人材を出してほしいというので、技術的な知識を持った専門家の派遣を要求してきたわけです。日本はこれまで人による協力こそが必要だと言ってきているわけですが、本当に相手側が必要とするノウハウを持っている人が日本のどこにどれだけいるか、実は確認をしているわけではありません。私はこれまでタイを研究してきて、今必要なのはお金じゃなくて人だと思っています。その場合、どういう分野でどういう人が日本にいて、どういう形で協力できるかということを、もっと真剣に考えるべき時期に来ていると思います。その体制というのは、やはりタイだけの問題じゃなくて、もっと広域で考えるべきであり、これについては、タイが突破口になるのではないかと期待しています。
 おっしゃるとおり、タイについてはODAをもうストップしてもいいのではないかという考え方もあります。今日は説明不足でしたが、逆に日本の側から見れば、ODAをメインに使うというのではなくて、NGOとか、あるいは民間、あるいは大学と連携しながら、タイと協力関係を結んでいくことが大切です。そして、民間や、NGOでは覆い切れない分野、あるいはリスクの高いところに限ってODAを活用しつつ協力関係をつくっていく。先程浅沼さんにおっしゃっていただいてありがたかったのですが、我々は最初から「援助計画」の作成という方向にこの委員会を位置付けていません。主たる目的はタイとの協力計画の作成であり、協力の一部としてODAを位置づけるようにすることを目指している。ただ、そのときにODAの金額をゼロにすることを目的にすると、これから二国間の関係が非常にぎくしゃくしますので、むしろ金額の問題は柔軟に対応するという方向に持っていきたいというのが基本的な姿勢でございます。
 それから先程の草野委員のご意見ですけれども、これは9月の総合戦略会議でも言われたことです。その報告書と同時に、JICAに対しては、これまでの技術協力の総ざらいをやってくださいとお願いして、昨年の12月にその結果を出してもらいました。かなり徹底して内部で検討していただいたために、JICA自身もその整理に基づいて、今後どうしたらいいかという方向づけを、バンコクの事務所サイドで掲示していただきました。この作業は今回の委員会の一つのサブ・プロダクトになっていますので、そこでの提案もできるだけ反映させていきたいと思います。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。先程浅沼委員のほうから、今度の末廣プロジェクトはODAの卒業モデルとしてとらえてもいいような、つまりモデル的な考え方を示しているものだと御指摘があったわけですけれども、大変おもしろい解釈ですね。私もかねてよりそんなようなイメージを持っていました。ぜひこれがそういう意味で成功してほしいと思います。私は韓国に長く係わってきましたが、韓国は日本のODAの受取国から一番早く卒業して、それっきり日韓のODAのつき合いはありません。やはり日韓が協力して第三国にODAを展開するという発送が欲しいですね。そういうほうに道づけをしていく日本の努力もなかったわけですね。日本とタイの新しい協力のあり方を是非探ってほしい。
 もう一つ、これは余談ですが、アフガニスタンの在日大使でアミンさんと話をしていましたら、アフガニスタンは麻薬の生産が大変な量で、それが軍閥に渡って、これがテロ資金源になっている。これをとめてしまわないと、あそこの紛争は永久に終わることがないとのことでした。タイでのロイヤルプロジェクトで、麻薬に代替するキャッシュクロップをつくるというプロジェクトがあるそうです。これはかなり成功していると聞いていますが、アフガニスタンとタイと日本が、こういう共同プロジェクトをやったらどうかと彼は提言していました。容易なことではないだろうとは思いながらも、ともかく日本のODAのフロンティアを開いていく一つの道になるかもしれないという実にフレッシュなアイデアだと感じます。
 さて、山田俊一主査のほうから作業方針についてのご報告、お手元にすでに紙が回っておりますけれども、これに基づいてのご発言をお願いいたします。よろしくお願いします。
(山田主査) よろしくお願いいたします。
 エジプト援助計画に関する基本認識としましては3点挙げています。第一に、エジプトは地政学上重要な国であり、中東・アフリカ地域に影響力を持っており、その地域の平和と安定に重要な役割を果しています。それから我が国とエジプトは非常に友好関係を築いています。それから後段は、この改訂に当たったいきさつについて書いてあります。
 2番目は中東という地域についてですが、エネルギー供給源でもある中東地域の平和と安定を確保することは国際社会の安全と平和、それから我が国の安全と繁栄に資しるということです。それから中東地域では、今のイラク人道・復興支援、それからイスラエル・パレスチナ問題、この解決に対してエジプトは建設的な役割を果たしています。その意味で、我が国としては、ODAの戦略的な活用を図るという観点からもエジプトに対する援助を行う意義があります。
 それから3番目には、エジプトは人間開発指数で言いますと、 0.653ということで、 177カ国中120番目という非常に低い国でして、社会経済開発ニーズは非常に高いことです。その意味では貧困削減とか、制度構築といった地道な援助が求められています。他方で、エジプトと過去の経緯もありまして、日本に対しては非常に期待している部分もありまして、モニュメント的なものも期待しているということもあります。そういったこともありますので、今後は相互理解を深めていくことが重要だと思います。それから、エジプトは国際収支が非常に脆弱ですので、資金ニーズが非常に高い。そういったことで援助が要求されているという側面もあると思います。
 国別作業計画で網羅すべき内容としましては、他の国別援助計画の策定を参考にしまして、援助の目的、戦略性、開発の現状と課題、我が国の対エジプト援助政策について、きちんと整理していくことにしております。
 作業体制については、東京タスクフォースと現地タスクフォースが立ち上がっています。ODA総合戦略会議からは牟田先生が参加していただきましてご指導いただいております。東京TFには、伊能、佐藤、長沢、畑中という委員に入っていただきました。それぞれ政治、援助、エジプトの社会経済、エネルギー問題、それぞれの専門家、あるいは学識経験者でございます。現地TFとしましては、エジプト大使館の経済参事官を主査にいたしまして、書記官、あるいは専門家の方々が参加しております。それからJICA、JBIC、JETROのそれぞれの事務所長の方々が参加しています。
 作業日程ですが、昨年11月に東京TFの第1回会合を開きました。現地TFからは情報、資料提出していただいて、これを協議いたしました。それから今後ですが、2月の初旬には第2回の会合を開きまして、一次案作成に向けた議論、それから3月には第1回の現地協議を予定しております。8月、9月に第二次原案作成、意見聴取、ODA戦略会議における中間報告、10月、11月に最終案作成、各省合議、第2回現地協議を考えております。10月、11月はエジプトにおきまして、人民議会の選挙とか、大統領選挙がございますので、こういった政治的な日程を踏まえまして、最終案を作成し、来年1月には最終案を戦略会議に提出するとの予定でおります。それから留意事項といたしましては、選択と集中、それで重点分野、課題を絞り込む。それから目標体系図を作成いたします。2番目としては、エジプト側と基本的な考え方に関してすり合わせを行う。3番目には現行の国別援助計画の内容を検証します。最後に、昨年の6月のG8サミットで立ち上がった拡大中東北アフリカ構想など、地域全体の取り組みとの連携、整合性を図る、こういったことにも留意して作業を進めていきたいと思っております。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。こういう作業方針のもとで1年間やっていただけるということです。11月、12月に東京タスクフォース第1回会合を開催し、12月に現地タスクフォース会合への作業依頼も行っているということで、すでに動き出しているわけです。エジプト国別援助計画に何かご意見をいただきたいと思います。
(青山委員) 大変興味深い計画をご説明いただきありがとうございました。先生が1ページ目の3番に書かれた、エジプト側がモニュメントを求めてくる傾向があるということに、本当になるほどというか、私と同じ問題意識と感じております。私は保健分野でエジプトに何回か関わったことがありますが、地方では子どもたちが下痢で死んでいるにもかかわらず、エジプト側は高度なICUだとか内視鏡だとか、そういったものを求めてくるということがあります。ですから、この計画の社会開発・人間開発の分野のところでは、日本は、貧困削減につながることや地方へ裨益することをやるんだという方針を、是非ともはっきりさせていただきたいと思います。エジプト側がいろいろな要望を出してきた場合も、この計画に基づいて一線を引いているということが言えるような形にしていただきたいと思っています。世銀におりました時にエジプトにかかわっていて、他のいろいろなドナーは、戦略的に重要な国であるエジプトの言いなりになっているという印象を受けることがありました。日本の援助の立場を明確にして、日本はこういった方針できちんと援助するのだということをはっきり示していただけるとよいのではないかと思います。重要で難しい国ですから、先生の計画に大いに期待しております。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。砂川委員、お願いします。
(砂川委員) ご説明ありがとうございました。私は余りエジプトのことは存じ上げませんけれども、こういうことを是非調べてほしいということでお願いがあります。一つは、日本はエジプトにおいて多分トップドナーではないと思いますが、先程青山委員がおっしゃったように、他の国がどういうことを目的にしてエジプトに対して援助をしているのか、そういうところで日本はどういう目的で、具体的にやっているのか、やっていこうとしているのかを明らかにしていただきたい。
 もう1点は、恐らくエジプトにはODAという形ではなく、軍事支援とか、政治的色彩の強い、いろいろな形での支援があると思いますが、そういった支援の中で、ODA、即ち開発援助というものがどういう具合に位置付けられているのかという問題。開発の視点からのエジプトに対する援助というものの実態を見ていただきたい。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。その他、いかがでございましょうか。関山委員、どうぞお願いします。
(関山委員) 確かにエジプトは世界の13番目のエネルギーの輸出国にもなりましたけれども、基本的にはエジプトというのは、私の認識では、マグレブ、エジプトというんですか、EUにとって、新しい製造拠点として見直しが開始されているということは言えると思います。例えば日産がエジプトで自動車の工場を建設するということを決定する、しないと。ほとんど決定したという話もありますが、また、いわゆる隣のリビアからエジプトに送電線の計画も浮上しているわけです。マグレブとエジプトの経済連携といいますか、これが深まると、やはりそういった地域に日本の製造業も徐々に進出できるのではないかということも言えると思います。これもちょっと調べてほしい事項ということになると思いますが、例えばマグレブとの経済連携、これについて調査していただきたいなと思います。それに対して日本がどういった援助ができるのかということも含めて調査していただきたいと思っています。
(渡辺議長代理) ありがとうございます。荒木委員、どうぞ。
(荒木委員) エジプトは、ここに書いてありますように、イスラエルとの関係で非常に重要な役割を果たしているということでございますけれども、アフリカ全体がそういう傾向だということをこの前政府が発表していたものを読みますと、紛争予防というものにすごく力を入れていこうとしています。経済とか、技術について、日本は強いかもしれないけれども、地域の情勢の人脈とか、分析とかというのはやはりエジプトの人にはかなわないと思います。そういう点ではやはりエジプトの人と場合によっては共同で紛争予防をやっていく、その辺をぜひ新しい視点として取り上げていただきたいと思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。よろしければ、以上にさせていただいて、山田主査のほうから、今の時点で答えられる範囲でお答えいただきたいと思います。
(山田主査) エジプトは、非常に豊かな部分もありますが、例えば1日2ドル以下という人が人口の4割ぐらいいるわけです。つまり多くの人は貧しく、非常に不衛生で、安全な水へのアクセスも十分ではない、そういったところで生活しているわけです。ですから、まさに貧困の削減と持続的な成長、この両輪をどうやって図っていくのかというのがエジプトの最大の眼目であります。
 それからエジプトは、2%ぐらいの人口成長がありまして、ますます進むと1億人の突破も近く、砂漠地の開発を大々的に行っております。これがエジプトの財政赤字の一つの原因になっているわけです。つまり、ナイル川に沿っているところだけではなくて、エジプトの南部、それからシナイ半島、この開発が人口の吸収、あるいは雇用の創出で重要であるということで開発を進めております。その意味で非常に資金ニーズが高いということです。
 人間の安全保障に関しては痛感されることで、例えば交通事故の話が先程ありましたけれども、医療や保健に加えて、交通事故、カイロに行かれると、すぐわかると思いますが、交通事故が多く、交通渋滞が非常に激しい。そういった意味で、日本はカイロの交通網を何とかしようということでも協力しようとしております。
 それから日本はアジアと違いましてトップドナーではありませんが、これはアメリカが断然です。先程ご指摘がありましたように、中東和平の問題がありアメリカは13億ドルの軍事援助をしている。それから8億ドルの経済援助をしています。4、5年前に、アメリカは多少方針を変えまして、援助よりは貿易と投資という方向ということで、経済協力額に関しては半減するということで進んでおります。どちらかというと、制度構築、とりわけFTAに向けた制度の調和に重心を移しております。
 マグレブとの協力に関しましては、アガーディール協定というのがありまして、これは昨年、エジプトが同意しまして、最近ではモロッコが批准すると、これで発効するということになっております。これに関しましては、実は研究会を実行しておりまして、来年には印刷の方向で進めたいと思っております。マグレブとの関係では、これはEUとの関係ですが、EUとFTAを結んだアラブ諸国が地域統合して、つまりサウス・サウスの関係でもって、地域発展や平和を図るということを進めております。ハブ・アンド・スポークと言いますけれども、エジプトがハブになっていこうという考え方は非常に強いということです。
 それから製造業に関しましては、エジプトは財政と金融の改革を実行していまして、自主的な関税率引き下げも行っています。その意味では、従来の輸入代替工業化といいますか、そういった保護貿易主義をやめて、市場メカニズムに依存したような、あるいはもっとそれより踏み込んだ輸出促進という政策を実行しようとしています。これは関税収入が減るとか、いろいろな問題はありますが、エジプトとしては、グローバルに競争的な社会をつくる、それから国民が公平に裨益を受ける、そういった社会をつくるということで進んでおります。この分野では日本の貢献は重要だと思います。昨年の内閣の世代交代、それから与党、NDPの世代交代、それから政治の民主化、経済改革、これらがいま強力に進められているところで、そういったこともありまして、エジプトは非常に変わっておりますので、援助計画の策定では非常にいいタイミングかなと思っております。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。それでは、山田先生、大変でございますが、これからしばらく策定の作業を進めていただきたいと思います。今日の議論がそのために少しでもお役に立つことができたのであればと祈っております。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 さて、皆さんのお手元の袋の中に「対パキスタン国別援助計画」の文書が入っていると思います。これは前回の戦略会議でご了承をすでにいただいたものです。委員の皆様方のご意見を踏まえて、必要な修文を行ったもの、つまりファイナルバージョンでございまして、これを念のためにお手元にお配りしたということでございます。この文案をもって、今後、対外経済協力関係閣僚会議の了承を得た上で公表されるということになります。
 それでは上村経済協力局政策課長から、平成17年度のODA予算案についての報告を受けたいと思います。
(上村経済協力局政策課長) それでは、お手元の配付資料5というのをベースにご紹介いたします。時間もございません。簡単に3点ほど申し上げます。
 まず量の話でありますが、1ページ目の一番上にございますが、政府全体として17年度の政府原案としては対前年マイナス 3.8%の 7,860億円ということで要求をしております。ODAの底打ち感ということで予算要求過程をずっとやってきておりますけれども、一般会計の当初予算ベースで言いますと、昨年度がマイナス 4.8ですので、やや下げ幅が縮まっている。
 量に関しまして、一つ申し上げたいのは、星印で注書きがございますけれども、補正予算、それから今回の津波の予備費に注目願います。平成15年度の補正ではイラクの大きな補正が組まれまして、16年度の補正として 155億円、ここにございますように補正を組んでありまして、津波の5億ドルにつきましても、基本的には予備費の手当をしているということで、当初予算だけですと、マイナス 3.8という数字が目立ちますけれども、補正や、あるいは今年の予備費投入ということも考えますと、その時々に応じまして、世界の情勢に応じて、政府開発援助予算についてはこれからも手当をしていきたいと考えております。
 量について、二つ目を申し上げますと、事業費と一般会計の区別であります。確かに一般会計ではこのように 3.8%の減となっておりますけれども、2ページをめくっていただいて、横長の紙で、17年度ODA予算政府案、これは一般会計、先ほど申し上げました一番右下の数字で 3.8%の減ということになっておりますけれども、もう1枚めくっていただいた4ページ目、17年度予算の事業予算ということで申し上げますと、1兆 4,658億円、右下のほうに数字がございますが、事業予算を確保して、その意味ではマイナス 1.1という、事業予算については基本的には余り下げ幅が大きくないことで仕上がっております。当然ながら、この事業費といいますのは、国際協力銀行の貸付ですとか、農水省さん所管の海外漁業財団の貸付とかというものがございまして、この回収金を入れますと、一番右下になりますけれども、 5.0というマイナスの数字になりますけれども、一応、外に出すお金としまして、事業費としては、マイナス 1.1%とご理解いただければと思います。
 それから3点目として申し上げますのは、人的な問題であります。1ページ目に戻っていただきまして、4. 「人間の安全保障」の推進とMDGs達成への貢献ということで、一つ目に草の根・人間安全保障無償に係わる調査員謝金ということで10億円計上しております。先ほど中期政策のご議論の中でもODAを展開するための体制はどうなっているかということでございますけれども、なかなか普通の要員の増員というのは今の情勢では難しい。その中で10億円というのは、現地での自主体制を強化するための、例えば1年契約で現地の人を雇う、あるいは日本からそういう専門の方を派遣する、こういう経費でありまして、そういう意味では画期的な予算であるかと思います。先程米山委員から、中期政策の議論の中でも、トレンドはどうかというご指摘がございました。今ご説明しましたように、量として縮減しておりますけれども、例えば人間の安全保障に係わるようなものについてはこういう工夫をしておりますし、それから持続的成長という意味では、JICAの技術協力などが中心になっていきますが、JICAにつきましては、1枚目の表の4段目ぐらいでしょうか、 0.7%と下げ幅は極力小さくしておりますし、それから事業予算で申し上げますと、4ページ目でございますが、借款につきましても、国際協力銀行の事業予算、マイナス1.4ということで、できるだけ下げ幅を少なくしているということで、先程ご議論いただきましたような持続的成長ですとか、人間の安全保障にどのように予算を分配していくのかということは、全体が少なくなっている中ですけれども、こういうふうな考え方で分配しているということをご説明申し上げます。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。この点、何かご質問等ございますか。もしよろしければ次に進ませていただきたいと思います。再び、上村経済協力局政策課長及び岡庭開発計画課長より、スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害に対する我が国支援に対するご報告がございます。お願いいたします。
(上村経済協力局政策課長) お手元の資料6ということで、まとまった資料がございます。被害状況は、現在のところ、22万人以上に上るという報道も出ておりまして、大変未曾有の災害ということで、2ページ目にありますが、国際社会の対応といたしましても、今後6カ月の国連の緊急アピールということで、約10億ドルのアピールが1月6日に出ております。我が国は昨年末、5億ドルということを決めました。そのうちの半分を、国際機関を通じた協力、半分を二国間の協力と割り振っております。我が国の対応につきましては、中段以降、5億ドルの無償による支援の内訳がございますので、ご参照になっていただければと思います。
 それから末廣先生からもご指摘がありましたが、人的なものはどうかということでありますが、緊急援助隊を当初から派遣をいたしました。それから自衛隊の活動ということで、本日、アチェの沿岸のところに艦艇を含む3つの、陸、海、空の自衛隊が展開をほぼ終えているというふうに聞いております。確かに緊急援助隊といいますのは、我々の今までの苦い経験をもとにつくられたシステムで、今回は非常にうまく、足早く機能したと思いますけれども、制度的に2週間、あるいは3週間という短い期間で、現職の方に行っていただくというプール制度であります。したがいまして、末廣先生からご指摘のような幅広い、各界の人材をどのように集めていくのかということにつきましては、私たちもこれから課題だと思っておりますので、一段落しましたら、今回のオペレーションを再検討したいと思います。一つ、方法として、ジャパンプラットホームというNGOと政府、経済界の一つのプラットホームが緊急援助においてありますけれども、今回はそのプラットホームも利用いたしまして、これはNGOの大変広いノウハウと、現場の食い込みを利用させていただいて、現在までに政府基金で約3億2,000万円のプロジェクトを展開しつつあります。これも一つのお答えになるかと思います。
(岡庭開発計画課長) お手元に資料、一つはパンフレットと、それからスマトラ沖大地震・インド洋津波被害の資料6のページ5以降、18日に神戸の国連防災世界会議で小泉総理のステートメントで発表された防災協力イニシアティブがコピーとして配付をされています。その主要点については、資料6の3ページと4ページに概要が書いてありますけれども、今回、防災協力イニシアティブというものを発表したわけです。日本は従来から防災分野というのは重視をしていまして、最大規模の協力を行っているドナーです。それで、2003年度には 332億円の無償資金協力と有償資金協力を行い、それ以外にも技術協力を行っているということで、やはりその要因としては日本が自然災害のデパートみたいな国だと言われるように、非常にいろいろな経験と人材、技術を持っているということで、この比較優位を生かして、たとえば有償資金協力で言えば、過去170件実施していますし、あと技術協力では90年から14年間の間に65人の専門家を途上国に派遣をして、開発途上国の人材育成に貢献をしてきたということです。あるいは2003年度に事後評価を行った円借款の三つのプロジェクト、これはインドネシアの多目的ダムの事業と洪水防御事業、インドネシアにおける火山防災事業というプロジェクトが三つありますが、これでインドネシアの 490万人を洪水や土砂崩れの災害の危険性から救ったということが言われていますし、さらにパプアニューギニアでは98年に地震、津波が起きて、 2,600人が犠牲になりましたけれども、その後、日本の協力を得て、津波防災パンフレットを作成したり、海岸地域の住民に対して避難の準備や、政府の体制を整備したということで、その2年後の2000年にマグニチュード8の地震が起きたときには、家屋は数千軒倒壊したものの、津波による死者の発生は防ぐことができたという例がございます。
 今回、発表した防災協力イニシアティブでは、やはり単に災害が起きた後の緊急人道支援だけではなくて、防災に強い社会づくりのために、中長期的な視点を持って人づくり、あるいはインフラ整備、あるいは政策立案というものを行う、支援していくべきだという、日本の持っている経験を踏まえた政策を打ち出していまして、これを通じて、今後、より一層効果的に防災分野の各協力を行っていきたいと思っております。従って、今回、防災協力イニシアティブを発表したのは日本では初めてですし、他の先進国もこういうイニシアティブを防災分野で発表した例というのは聞いたことがありません。従って、その意味で他の国の関係者からも会議の場では高く評価を受けたと聞いております。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。
 この戦略会議では引き続き国別援助計画に関する議論を続けていきたいと考えております。しかし、大綱が昨年公表され、それから中期政策に関する審議が今日終了したということで、今後は国別援助計画に関する議論と並行して、新しいテーマも手掛けていきたいと思います。そう考えている方も多かろうと思います。例えば今まで国別計画だけやっていたけれども、当初の計画である分野別の援助計画については何も議論していないのではないかとお考えの委員もおられると思います。あるいは対中ODAについて、今日も議論がありました卒業政策、それからMDGS、対アフリカ支援、平和構築、その他、いろいろあると思いますが、ご関心を持っているテーマはたくさんあろうと思います。今後、戦略会議においてどのようなテーマを取り扱っていったらいいかということを少し自由な立場から議論する場をつくりたいと思っております。どのような議論をするか、少しこちらで整理をした上で問題提起をしてみようと考えております。
 次回会合の具体的な日程については、事務局から別途調整の上、追ってご案内申し上げるということにします。
(磯田委員) 今の提案に関連してですが、中期政策ができましたので、できましたら、中期政策の評価方針をどうしていくのかというようなこと、それも普通プロジェクトを開始するときには、あるいはプログラムをどういうふうな評価をするのかというのは、始まるときに大体決めるものでありますので、そういう意味でもある程度の議論が、ある時点で、ぎりぎりになってからではなくて、必要ではないかなと思っております。
(渡辺議長代理) それは中期政策のみにかかわらず、国別についてもそういう問題があろうと思いますが、そういう点も含めて、次回、問題提起をしてもらうということにしたらどうでしょうか。
 以上をもちまして本日の会合を終了いたします。ご協力ありがとうございました。
このページのトップへ戻る
前のページへ戻る次のページへ進む目次へ戻る