(渡辺議長代理) | おはようございます。ただいまから「ODA総合戦略会議」第19回会合を開催いたします。 本日の議題は3つです。 第1に、「ODA中期政策」についてです。各省庁の間の調整も終わりました。現時点での外務省案を兒玉経済協力審議官より報告してもらい、その後議論したいと思います。 第2は、「国別援助計画」です。第1は、対パキスタン国別援助計画についてです。平島主査から最終案の報告がございます。2番目は対フィリピン国別援助計画について、吉田恒昭主査による作業方針に関する報告がございます。3番目は、対ラオス国別援助計画について、原洋之介主査から作業方針の説明がございます。第4に、対ウズベキスタン・カザフスタン、これは2つ一緒ですけれども、この国別援助計画について、石井明主査に作業方針の報告がございます。 最後の3番目は、「国際協力50周年」についての事務局から報告があります。 本日は、逢沢外務副大臣に、お越しいただく予定になっております。お見えになったときに、ご挨拶をいただきたいと思います。 早速、「ODA中期政策」の外務省案から始めたいと思います。 前回、全員の方からコメントがありました。その後、各方面との意見交換を通じてコメントも寄せられておりました。そういったものを最大限取り込む努力をしました。その上で各省間での調整済みの文案が既に皆様のお手元に行っていると思います。前回提出された案の中で、修正された箇所を中心に、兒玉審議官からご説明をいただきたいと思います。 |
(兒玉経済協力局審議官) | ただいま議長代理からご説明をいただきましたとおり、中期政策案の修正版につき説明をさせていただきます。お手元の資料1をご覧いただきながらご説明をお聞きいただければと思います。 この12月3日付けの中期政策案は、前回の総合戦略会議でご議論いただきましたその際のコメントを政府サイドとして真剣に受けとめ検討し、関係府省とも協議をした結果、作成したものです。その際、各委員のコメントをできる限り反映するように努力いたしました。本日は中期政策案の目次に沿って、主な修正点につき説明をさせていただきます。 まず、1.の中期政策の位置付けのところでございますが、前回の会議で、効率的・効果的援助を確保するためにも評価を徹底させるべきであり、評価について言及すべしとのご指摘をいただきました。それを踏まえ、1ページの1.の(4)第2文のところで、評価の充実について言及を追加しました。 それから、2.の「人間の安全保障」の視点のところについては、(1)の(ロ)の2ページ目の冒頭でございます。1つのコメントとして「恐怖」と「欠乏」という言葉について、わかりにくいのではないかというコメントもいただいたわけでございますが、これについては種々検討した結果、日本国憲法の前文に、同じ意味でございますが、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」といった言葉もございますので、これは維持させていただくことにしました。 それから、NGOとの連携促進のために、手続をより柔軟にしてはどうか、そういう言及はできないかというコメントがございました。この点につきまして、外務省をはじめとして関係省庁・機関は従来から努力してきておりまして、進捗がある程度見られております。他方で、中期政策でご提案の趣旨を一般的な形として盛り込むことは、さらに政府内でこれからもう少し突っ込んだ議論が必要だということもございまして、そこは盛り込んでおりません。 それから、やはり2.の(2)の(ホ)文化の多様性を尊重する援助という項目に関しまして、文化の名のもとに人権侵害が行なわれないように配慮すべしとのご指摘をいただきましたが、その旨を追加しております。 それから、「人間の安全保障」の視点を踏まえた具体例の取り扱いでございます。複数の委員から、本文から外して附属といった形で整理すべきではないかというコメントをいただきました。それも踏まえまして、また、具体的事例がいかなる意味で「人間の安全保障」の視点にかなった援助となっているのかをもう少しわかりやすく記述いたしました。 続きまして、3ページの3.重点課題の(1)貧困削減、(ロ)、(a)の第2段で、HIV/エイズ対策について詳しく記述しております。HIV/エイズにつきましては、国際社会の最重要課題の一つでございます。日本は二国間援助だけではなくて、国際機関やNGOを通じて、ここに記述されているような包括的な支援を実施しておりますので、これはすべて実施している事実として本記述を維持したいと考えております。 続きまして、5ページにまいりまして、3.の(2)、これは持続的成長の部分でございますが、複数の委員の方から、発展段階に応じた支援という考え方が重要であるというコメントをいただきましたので、その旨を3.(2)の(イ)、(c)のところに「発展段階に応じた」という言葉を追加しております。 また、6ページの3.の(2)、(ロ)、(a)でございますが、その中で、開発途上国の民営化に対して、ODAを通じた支援を行なう旨明確にしてはどうかというコメントがございました。民営化努力もその一部に含む市場経済化努力という我々の考え方、政策がございますが、この市場経済化努力の重要性については、大綱の援助実施の原則の中で既に言及されておりまして、また、この中期政策案の3.の(2)、(ロ)、(b)政策立案・制度整備の第2パラのところで、「市場経済化支援を行なう」ということを明言しております。他方で民営化そのものにつきましては、各国個別の状況に応じて対処ぶりを慎重に検討する必要があるということから、その言葉自体は盛り込んでいない形にしております。 それから、4.の効率的・効果的な援助の実施に向けた方策ということについてですが、現地の住民からのニーズ把握を書き込むべしというコメントをいただきました。これにつきましては、11ページの4.(2)の(イ)開発ニーズ等の調査・分析と書いてございます。その第2文をご覧いただきたいと思いますけれども、「現地関係者を通じて、現地の経済社会情勢などを十分把握する」という記述を追加いたしました。ここで言う「現地関係者」の中には、当然住民を含んでいるということでございます。 それから、11ページから12ページにかけて、つまり4.の(2)、(ハ)援助対象候補案件の形成・選定の(b)援助手法の連携と見直しへの提言につきましては、援助手法間の連携が必ずしもうまくいっていない部分があるので、具体例を示してはいかがかというコメントをいただきましたが、この部分につきましては、「具体的な連携モデル案件の形成に努める」という文言を既に入れておりまして、私どもとしては、この言葉をもちまして連携に弾みをつけるというふうに考えておりますので、具体例の記述は差し控えた次第でございます。 最後でございますが、12ページのこれも同じ4.効率的・効果的な援助(3)現地機能強化のための体制整備の中の(イ)適切な人員配置と人材育成でございますが、民間企業との連携や民間企業の人材活用について幾つかのコメントがございました。これは重要なポイントであると思っておりますが、その趣旨は私どもは既に盛り込まれていると考えております。いずれにしても、この4.の(3)、(イ)の第1パラのところでございますが、書きぶりをよりわかりやすく趣旨がはっきりするように調整をした次第でございます。 |
(渡辺議長代理) | 修正箇所についてのご説明をいただきました。かなり合理的な修正をしてくださったと理解をしておりますが、さらに若干の時間を持ちたいと思いますので、自由な立場からご発言いただければと思います。 |
(浅沼委員) | もう一度読み直させていただいたのですけれども、内容的にはこれでいいと思うのですが、3点ほどコメントさせていただきます。 まず第1は、「人間の安全保障」の視点のところで、例を2つばかり後で挙げられておりますが、何となく最初の例がコミュニティ・ディベロップメントの例、第2のカンボジアのところがAIDSプロジェクトなのですけれども、それを参加型のパートシパトリー・ディベロップメントの形でやろうとしたことという2つの例なのですけれども、「人間の安全保障」を説明する案件として、むしろ混乱に導くような気がするので、これを削除した方がいいというのが第1です。 それから、第2の修文の提案ですけれども、5ページの持続的成長の考え方の(b)の内容というのが、我が国のことが書いてあって、だから貢献をするんだと書いてあって、また、我が国の安全と反映というのに深く結びついているということが書いてあるのですが、これは大綱にも書いてありますし、中期政策の一番最初のところで書いてあったような気がするので、(b)は切ってしまったらどうかというのが提案です。 |
(渡辺議長代理) | (イ) の(b)ですね。 |
(浅沼委員) | (イ)の(b)です。重複だし、何故ここに出てくるのか、というところがあるので。 それから6ページの(d)の最後の文章に、我が国は経済連携を強化しているという話があって、それから「我が国と相手国との経済連携を強化し」という言葉があり、最後に「ODAを戦略的に活用していく」という言葉があります。趣旨は賛成ですけれども、この文章だけを見ると、どうも我が国の通商政策のためにODAを活用すると聞こえます。それで、ODA大綱で我が国の経済的な利益とのかかわりは、相手国が発展し、成長して反映するというのが我が国の利益であるとなっているわけですから、「我が国」という言葉を主語にして繰り返すこと及び「戦略的」という言葉は誤解される恐れがあると思います。ここで言っているのは、あくまでも政策の一貫性の問題ですから、相手国が経済連携を進めることによって利益を得るのだということ、それに対して、我が国も通商政策の面においても協力していくという話なわけですから、これは書き直して、「我が国」という言葉を除く。受け身で書く。相手国を主語にする。それから、「戦略的」という言葉は多少誤解される恐れがあるので除くというサジェスチョンをしたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。それでは磯田さん。 |
(磯田委員) | 私も、浅沼先生がおっしゃられた例に関して、ちょっと誤解を招く点が多々あるような気がします。最初に書いてある「人間の安全保障」の考え方と若干ずれる部分もありという、むしろいろいろなスキームの連携等も若干強調され、例の意味が誤解されるという気がしますので、取っていただいたほうがいいのではないかと思います。 それから、もう1点、いろいろとご苦労の跡があり、今回の修正に関しては賛同する部分が結構ありますが、その中でも先ほどありました11ページ、「効率的・効果的な援助の実施に向けた方策」という中の住民参加の部分の関係ですけれども、(イ)の中に加えてくださった2行目、「現地関係者」という中に住民も入っているというお言葉でしたけれども、ここはそのように取りにくいものもあります。もし住民参加ということをはっきり明記することが、NGO関係者から見ますと、いろいろなアクターがあるので、住民だけを書くわけにはいかないというご意見があるようですけれども、それに対してNGO関係者からは、一番裨益するのは住民なんだから、ほかのアクターとの位置付けが違って当然ではないかということで、やはり書くべきだという意見がかなり強うございます。前の位置付け等のところにもそういうことがかなり書いてあるので、個人的にも「住民参加」という言葉はぜひ残してほしいという要望は一応もう一度申し上げたいと思います。 ただ、その場合に、「現地関係者」という言葉が援助実施者だけを指すように誤解を受けかねない。特に現地ODAタスクフォースのところの略称です。「現地ODAタスクフォース」を以下「現地」と言うとしてありますが、「現地」とだけ書いてあるときは「現地タスク」を指してあって、「現地関係者」になったときには現地タスクフォース関係者ではなく全部なのだという、言葉の範疇が、同じ「現地」という言葉を使っても変わるように見えます。ですから、「現地タスクフォース」の略語として言うのであれば、「現地タスク」としていただいて、ほかの「現地」と書いてあるときには、現地タスクフォースだけではなく広く指しているということがわかるような区別を、もしこの文章で住民も参加するということでおっしゃるのであれば、「現地タスク」というふうに「タスク」のほうの名前を変えていただきたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございます。 |
(砂川委員) | 浅沼委員がご指摘なさった2番目の点ですが、取ってしまったほうがいいといわれた文章、5ページの持続的成長の(イ)の(b)のところ、即ち「国際貿易の恩恵を享受し、資源・エネルギー、食料などを海外に大きく依存する我が国」というところは、途上国における資源の確保という点が非常に強く出過ぎているということで、懸念を持ちます。 そこで、取ってしまってもいいと思いますが、残すとするならば、国際貿易というより自由貿易の恩恵に依存する我が国としては、ODAを通じて開発途上国の持続的成長ということをむしろ強く謳って、資源の確保というニュアンスを削ったほうがいいのではないかと思います。 もう1点、相手国の立場というものを尊重するという例で申し上げますならば、4ページの一番下の「雇用創出」のところに「労働集約的な中小・零細企業育成を支援する」という言葉がありますが、労働集約的な産業を支援するというのは、我が国のODA政策上の言葉としてはあまり適切ではないのではないかと思います。むしろ適切な産業というものを、雇用を重視した育成というような形で直していただいたほうが、相手国の立場をより尊重したことになるのではないかと思います。 |
(渡辺議長代理) | 兒玉さん、今のご意見について、修文をした立場として何か逆にカウンターコメントがありますでしょうか。 |
(兒玉経済協力局審議官) | 浅沼委員からは、具体的な事例の「人間の安全保障」はむしろ削除すべしというお話を頂きましたが、事務局としては、中期政策において取り上げる重点、一つのポイントが「人間の安全保障」の視点をよく理解してもらうことにあるので、「人間の安全保障」について援助関係者にしっかり共通の認識を得ることが大切であると考えています。その意味で、今までやってきた援助も「人間の安全保障」の視点を踏まえた事例があり、それは具体的にどういうものか整理したつもりでございます。我々の中で議論したいと思いますけれども、具体的な事例については、何とか維持できないかという気がしております。 それから、ODA大綱との重複があるという部分について、砂川委員からもご指摘があったのですが、大綱の1.目的のところに、「国際貿易の恩恵を享受し、資源・エネルギー、食料などを海外に大きく依存する我が国としては、ODAを通じて開発途上国の安定と発展に積極的に貢献する。」というのが入っています。この「安定と発展」のところを中期政策では「持続的成長」に貢献するという形で記述しておりますが、確かに重複ではございます。ご指摘の点を踏まえて、どう対処すべきか、基本的には、もう一度大綱に返って、大綱との整合性ということが大事だと思っておりますので、その点も踏まえて議論すべきなのかなと思っています。 あと、「現地」という言葉、「タスク」という言葉、これはぜひもう一度エディティングの観点からも確かに誤解を招かないような表現は何が適切なのかということは、もう一度改めてよく検討してみたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | 私もかなり克明に読んでまいりましたが、大綱との関連で言うと、書きぶりはともかくとして、大綱で出てきているコンセプトがうまく散らばっているという感をもちました。浅沼先生のおっしゃったように、「我が国」という言葉が多過ぎるということは確かでしょうけれども、この立場は大綱にうたわれていますし、「戦略的」という言葉も使われてはいます。こういう短いセンテンスの中に、その部分が凝縮されていすぎはしまいかという感想なのでしょうね。 |
(浅沼委員) | そうではなくて、ここは途上国の持続的成長の話をしているわけですね。ですから、それを支援するというのは結構なのですけれども、何で支援するのかというところは、もしこれを入れるとしたら、ここではなくて最初に来るのではないですかね。これは我が国の利益とは関係のない話ですね。持続的な成長を支援するという重点分野の問題ですから。 |
(渡辺議長代理) | 言葉使いというよりは論理性というか位置付けの問題だと理解するのでしょうか。 |
(浅沼委員) | そうです。何でこういうサブジェクトがここにあるのか、という意味です。 |
(草野委員) | 元に戻ってしまいますが、「人間の安全保障」の視点に関して具体的な事例2つ挙がっている点について、デリートしたほうがいいというご指摘が2人の方からありましたけれども、私は残したほうがいいような気がします。ただ、誤解を招かないように、この2つの事例に限られるものではないということがわかるような(注)のところの文章にすればよろしいのではないかと思います。 具体的に3ページの冒頭のところに、前回事例がここに入っていたものを後ろのほうに回していただいたわけですね。私も後ろに回していただきたいということと、幾つかの注文をつけてそのようにしていただいた立場から申しましても、ぜひ残していただきたいと思うのですけれども、その場合に、(注)のところに「具体例として、『人間の安全保障』の視点を取り入れた成果を挙げた案件を本文末の附属に示した」というこの文章に何かの文章をつけ加えて、この2例に限るものではないということがわかるような書きぶりにすればいいのではないかなと思います。 |
(渡辺議長代理) | わかりました。今、重要なコメントをいただきましたものですから、これについては、再度事務局にお任せいただきたいと思います。そして最終案に持っていくということで、一度修文の努力をしてみます。 |
(磯田委員) | 発言の途中で誠に申しわけありませんが、下のカンボジアのエイズのプロジェクトは、結局はプロジェクトをやったことの社会影響を、ネガティブにならないように取り除くためにプロジェクトにくっつけたものですよね。だから、我が国が考える「人間の安全保障」がその範囲にとどまっていると言ってはあれですけれども、そういう印象を与えないかという懸念は非常にあります。それはすべてのプロジェクトにおいて、ある部分当然やるべきことであって、これを「人間の安全保障」の視点ですと言うには、「人間の安全保障」でうたっているそこを本当に考えていくというのからしては、あまりにも狭過ぎるといいましょうか、例として、正直言って恥ずかしい気がします。 |
(大野委員) | この件で、私も「人間の安全保障」というのはよくわからないので、説明していただきたい。ここに出ている案件というのは、特に「人間の安全保障」と言わなくても、世銀でも他のドナーでも当然やるというような案件で、これが「人間の安全保障」なのかと言うと、随分小さいような気がするのですけれども、だったら、「人間の安全保障」を出すことによって何がコンセプトとして変わるのかというのが全然わからない。皆さんの前の発言を聞いていても、これは一つの案件について出すのではなくて、横断的な考え方だということを、荒木さんでしたか、そうすると、例えば教育プロジェクトでカリキュラムをつくっても「人間の安全保障」になるのかとか、その辺が非常にあいまいになってくるので、日本の「人間の安全保障」を出したことによる貢献、新しい視点とか、オペレーショナルに効果があるというのがあまり出ていないので、できればそこを説明していただければ非常によくわかる。それに比べて、これだったら、世銀に見せたら、こういうのは当然やっていますよということになると、あまりおもしろくないのではないかと思います。 |
(渡辺議長代理) | 「人間の安全保障」というコンセプト自身がまだあいまいでであることは避けられません。だから、そのコンセプトに合うようなプロジェクトを拾い上げることはなかなか難しい。しかし、それにもかかわらず読者に多少なりとも「人間の安全保障」に近いコンセプトで見てもらうという工夫も必要だろうと思いますね。過去の日本のさまざまなODAプロジェクトのうち、「人間の安全保障」というコンセプトですくい上げると、このようなものが一例としてあるということですよ。「人間の安全保障」そのもののプロジェクトというわけにはいかない。このようなものを積み上げていって、「人間の安全保障」というコンセプトに見合うプロジェクトは、最終的にこうなるだろうと理解していただければいいわけです。 このあたりで、どうでしょうか、後は私と事務局に一任させていただいて、最終案のところでもう一度議論するということでよろしいでしょうか。 それから、もう1点確認させていただきたいのですが、公聴会が16日に大阪、21日に東京と2回あるわけですが、そのときに出席者に紙を配らなければなりません。その場合、今いただいたコメントを組み込んだ修正版を出すというのは、実際問題としては時間的なスケジュールもあって難しい。慎重な考慮を要するところがありますので、公聴会については、この紙をそのまま出させてもらうということでご了承いただけませんでしょうか。 もし今のようなデリケートなところに対する質問があったら、そこについては目下考慮中であるという答え方をさせていただきます。これはご了承いただきたい。それと並行して、今言ったような修文の作業を進めます。 ここで議論を中断させていただきますけれども、逢沢副大臣がお忙しい日程の中お見えになってくださっております。一言ご挨拶をいただければ大変ありがたいと思います。よろしくお願いいたします。 |
(逢沢副大臣) | 先生方、おはようございます。副大臣の逢沢です。 19回目の戦略会議、早朝からお忙しい中ご出席をいただきまして、本当にありがとうございます。9時半にオンタイムに来る予定でございましたけれども、きょうはサミュエル・バーガーと申しまして、クリントン時代の安全保障担当の補佐官が来日しておりまして、話が弾みまして長くなりまして遅参をいたしました。おわびを申し上げたいと思います。 今日はODA中期政策、また国別援助計画についてご討議をいただくということでありますが、どうぞよろしくお願いを申し上げます。また、先生方には、大綱の改定や中期政策の策定、そして今日もご議論いただいておりますが、国別援助計画等々について、大変高い見識を披露いただき、また、それぞれの改定、策定等々に大変なお力添えを賜ってまいりました。改めて御礼を申し上げ、これからも日本外交の最大のツール、ODAを適切に展開していくためにお力添えを賜りますように、心からお願いを申し上げたいと思います。 いよいよ平成17年度の予算の時期を迎えますし、また、補正予算をつくるということは既に決まっております。年明け1月、国会の日程をあまりしゃべると時々怒られてしまうのですが、多分21日に通常国会が招集され、補正予算案と17年度の本予算が同時に国会に出される。そして、先に補正を上げて、それから本予算の審議、多分そういう国会の進め方になるだろうと思います。 一生懸命ODAの予算の適切な確保について、補正についても、また本予算についても努力をいたしているわけでありますが、例の経済財政諮問会議の基本計画、骨太の方針の中に、いわゆるODAの底打ち感と申しますか、それが内外に確認できる表現がこの夏にされたわけでありまして、それを一つのてこにしながら、今、なんと言ってもお金がないとやりたいこともできないということで、頑張らせていただいております。またその見通しが立った段階で先生方にもご報告をさせていただきたいと考えております。 私、今週の日曜日から中東方面に出張いたしますが、緒方貞子先生も行かれるようでありますが、アフガニスタンの大統領の就任式に出させていただきます。その後、内戦、難民問題で国際社会も関心を持っておりますスーダンに参ります。時間がないので、例のダルフール、チャドとの国境の方にまでは行けないかなと思うのですが、ハルトゥームでいろいろ状況を聞き、また幾つかのこちらからの提案や意見を伝えてまいりたいと思います。 その後モロッコに参りまして、中東の未来フォーラム、これはシーアイランドサミットのときにアメリカが持ち出しました例の中東の民主化構想を受けた最初の会合ということで、かなりG8や中東方面から立場のある方が出席されると聞いておりますが、そういった出張に出向かせていただきます。 アフガンの国づくり、また、アフリカに対してこれからどういうODAの展開が最も適切であるか、また、中東の民主化ということを念頭に置いたときのODAのあり方等々の観点からも意見交換をさせていただきたいと思っております。また、次の機会にそのようなことについても報告をさせていただければ大変うれしく思っております。 今年50周年を迎えるODA、対中円借款のあり方が新聞をにぎわしている面もございますけれども、いよいよ来年は国連改革待ったなしということでございます。日本が国際社会の中でより責任ある重い立場に立つ、その用意を内外にアピールをしている中、やはり日本はここのところODAを随分減らしてきたけれども、国連でより仕事をするということは、そうではない方向に再び舵を切ってくれるのだろうなという趣旨の発言を世界の国々の方から聞かされる局面も増えてまいりましたけれども、そういうこともしっかり念頭に置きながら、専門のお立場で活躍をなさっておられます先生方の力もお借りしながら、適切な予算の確保、また政策の展開に努めてまいりたいと思います。 今後ともご指導とご支援を賜りますように心からお願い申し上げ、会議の途中、時間をいただいて恐縮でございましたけれども、若干のご報告を兼ねましたご挨拶といたしたいと思います。ありがとうございました。よろしくお願いします。 |
(渡辺議長代理) | 逢沢副大臣ありがとうございました。 ODAをめぐる国際環境も、ここのところ、ご承知のように急変しております。急変するODAの国際環境に適切に対応するように、日本のODAのやり方、システムを、いろいろと変えていかなければなりません。他方、また旧来の日本型援助とも言うべきもののエッセンスは残していかなければなりません。我々の総合戦略会議にどうかご理解とご支援を今後とも賜ればありがたいと思います。 大変な激務のようでございますので、お体に注意されながらご奮闘されるようお祈り申し上げます。ありがとうございました。 それでは、中期政策についての議論はひとまずここで、きょうは閉めということにしたいのですが、その前に兒玉審議官、何かございますか。 |
(兒玉経済協力局審議官) | 本当に一言だけでございますが、先程議長代理が締めくくっていただいたラインで、私どもとしては12月の東京、大阪での公聴会と、それから、そのものを、パブリック・コメントにかける予定としております。他方、今回いただいたコメントは、またパブリック・コメントも出てまいりますので、その中でさらに改善する余地があるかどうかということを検討して、次回の総合戦略会議にお諮りしたいと思っております。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。今おっしゃったような手続で今後進んでまいりますので、なにとぞご協力をお願いしたいと思います。 それでは、議題2に入ります。パキスタンから始まって4つの国についてのお話を伺います。 まず第1でございますが、「対パキスタン国別援助計画」について、平島先生から最終案が出ております。既に事前に皆様のお手元に届いていることと思いますが、そのエッセンス等をお話しいただければありがたいのですが、よろしくお願いします。 |
(平島主査) | パキスタンの援助策定の責任を担ってまいりました平島でございます。こういう機会をいただきまして非常に光栄に思っておりますし、何年経ってもわからないというのが実感でございますが、いろいろな方々の協力を得て、ようやく最終案までこぎつけることになりました。今から皆様の知見を得て、また最終的にチェックするということになります。 今日は、既に計画案をお読みいただいているということを前提にしまして、話の論理的なところの筋だけお話しさせていただいて、もし質疑応答があれば、そこで詳しいお話をさせていただきたいと思います。 まず、パキスタンに対する日本のODAの必要性ということは、大きく言って9.11以降の地勢学的な不安定要素、それから、その不安定な要素の根底にあるところの社会経済的な条件ということが問題でございますが、もう少し平たく言いますと、やはり日本の安全にとって中国とインドのバランスというのは非常に重要な点だと思っておりますし、そのインドの立場を不安定にするのは紛れもなくパキスタンの不安定化であり、パキスタンの安定というのはさらにアフガニスタンの安定につながっているというような因果関係がございます。 パキスタンは、1970年以降、中国と特別な関係にございますし、そういう中国カードということも含めますと、パキスタンの重要性というのはいろいろな問題を含めておりますけれども、ここが不幸にして核保有国になったということがございまして、9.11以降、特に外人勢力の流入によってイスラミック・ファンダメンタリストが侵入しておりまして、パキスタンそのものが非常に不安な社会になっております。1億4,800万の国民がテロの温床になる、核を持っている国がテロの温床になるということは、単に対日本の問題だけでなく、世界の問題でもあるということがございます。その対症療法的な問題とともに、まさに根源的な条件を正していくというのが、世界の主権国家としての一つの日本の責務であろうかと思っております。 国際機関、マルチとバイのディマーケーションというのも非常に重要でございますけれども、それを飛ばしまして、我々は貧困削減とかガバナンスの改良というものが非常に重要であるということは十分認識しておりますけれども、バイとしての関係というのは、中長期的な関係でございます。長期的な関係、つまり我々がパキスタンという国が友好的な国であり続けるために、あるいはどういう目的を設定すべきであるかといったときに、「持続的社会の構築と発展」ということを終局的な上位目標にするということを掲げました。 「持続的社会」というのは一体どういうものかといったときに、完全ではありませんが、3つの基礎的な条件を満たさなければならない。第1は、社会的な機会のアクセスに対する実質的な平等と豊かな選択肢の存在。第2番目は、法秩序の維持と政策の整合性、継続性の堅持。第3は、社会的モニタリング能力の強化。つまりこれはレントシーキングな政策決定者、あるいはリーダーに対する社会的な対抗勢力として、すそ野の広いモニタリング能力を持つ必要があるだろうと思います。 この3つは、持続的社会を規定する必要かつ十分な条件ではありませんけれども、この3つの条件を欠いた社会が持続的社会とは呼べないという意味で、基礎的な条件だと思っております。 パキスタンは非常に優秀な人材、人的資源を持ちながら、50年間たっていまだにミリタリーサイクル。10年ごとに起こってくる軍事政権にいまだ始終しているということでありまして、しかしながら、50年間の開発の総括は、言ってみればプラスとマイナスがあります。プラスの面は、ほとんど何もなかった独立国家から、食料穀物の自給を達成し、そして第2次、第3次産業の発達も若干あったということです。 問題としては、やはり社会セクターの等閑視、停滞した産業構造、政策の混乱、法秩序の乱れというものがありまして、それが10年サイクルでやって来る軍事クーデターをもたらしたと思います。 しからば、我々の目標が持続的社会の発展であるならば、その過程で、貧困の削減であろうと、あるいはガバナンスの改善というのは当然必要なものとしてアジェンダに上がってくるわけですけれども、そこで我々は、短期の目的であっても中・長期的な観点というものから短期を位置付けるということが必要なのだろうと思います。今日ご発表の中期目標の中の内容も、我々の内容とほぼ重なっているところが多いと思っております。 日本のODAの中長期的な方向性として、我々は3つに絞りました。それは一番最後のチャートを見ていただければよろしいかと思います。詳しい説明をする時間がございませんが、一番左側のところに援助の目標は、我々は、パキスタンの持続的社会の構築と発展を目指すということです。 それから、一番右手になりますと、クロスカッティングイシューとしまして、ジェンダー、環境、ガバナンスということがございます。これは、一つ一つプロジェクト、あるいは分野の中でメンションするのではなくて、これは既にすべての活動分野に関して意識しなければならないアイテムとしてクロスカッティングイシューとして書いております。したがって、環境を独立した分野に指定したのはどういうことかというコメントもございますが、そういうことは既に折り込み済みでございまして、これはすべからくこういう視点を持ってほしいということであります。 それを前提といたしまして、我々は3つの大きな方向性を考えました。1つは、今、問題になっております「人間の安全保障」というよりは、人間開発というものが中心であります。その次は健全な市場経済の発達、その次はバランスの取れた地域社会・経済の発達ということであります。 この3つの方向性の中で、実は今パキスタンを考える場合に一番重要なことは、最後のバランスの取れた地位社会・経済の発展、つまり地域格差の拡大というもの、これが現在のイスラミック・ファンダメンタリストのテロの温床になっている大きな要因だと思っております。それは、地図をご承知おきの方はおわかりになると思いますが、カラチからハイバル峠のペシャワールまでの地域、そしてインダス川の西側とアフガニスタンの国境のデューランド・ラインの東側、その地域にパシトゥーンという民族とバローチという民族がアフガニスタンとパキスタンに分断されております。 その中に、フェデラル・アドミスタード・トライバル・エリアといいまして、これはパキスタンは認めてはいるのですけれども、ほとんど治外法権的な半王国として存在している。これがブラックエコノミーの温床にもなっておりますし、いろいろな意味で正規な開発から外れた存在でございました。 この地域が、実は9.11以来、そこにトラの尻尾を踏んだと申しますか、パキスタン軍もテロの撲滅に対してアメリカと協力して、その地域をターゲットにいたしました。したがって、その地域全体の今まで等閑視されてきた後発地域というものが、実は外来勢力によるとパキスタンでは言っておりますけれども、イスラミックなファンダメンタリストの温床になっている。オサマ・ビンラーディンもどうやらその辺に生息しているであろうと言われております。少なくとも政府がその地域に対して関心を持っている、目を振り向ける、予算のことも当然ですが、そういうことが非常に重要であると考えております。 その意味で、日本は今までやってきた意味では先見性があったと申します。カラチからペシャワールにかけて、インダス・ハイウェイという裏のハイウェイがございます。その北のほうにコハートトンネルというのがございます。これは、そういった意味でその地域の発展にとって非常に基幹的な役割を果たすものだと思っておりますので、これを中心に、この地域の後発性をいかに克服していくかということが問題だと思います。 そのときに、その3つの中の「人間の開発」というものと「健全な市場の発達」というものがインテグレートされた形でしかバランスのとれた地域開発をしてはいけないというのが大きなメッセージでございます。そのために、後発地域の発展を先導する民間投資、そういう後発性のあるところには民間投資は最も行きたがらないわけですけれども、民間投資を誘発するような外部性を与えるような公的な投資というものが必要だと思いますし、その要にあるペシャワールとカラチという地域の開発センター、経済センターとして発展させるというものも、地域バランスのとれた発展の大きな目玉であると思います。 個別的な人間開発の問題に関しましては、これは既にいろいろなところで起こっております。隣国のインドが社会セクターの発達、人間開発を社会セクターの発達と言いかえますと、社会セクターの開発はドメスティックなイシューであって、外国の援助は要らないと明言しております。そういう状態にまだパキスタンはなっておりません。 2つの問題がありまして、基礎教育、いまだにもって南アジアの中でも落ちこぼれかげんでありますし、教育投資はGDPの1.5%しかないということがございます。特にジェンダー、女性の教育の遅れが激しいと思います。特に女性の中等教育以降の教育過程がほとんどネグられているということがありますので、これに対しては十分なケアが必要であろうと思います。 しかし、同時に隣国のインドと比較しますと、パキスタンの中間層の発達が非常に遅れているということであります。先ほど、何か上部構造のところで問題があると、それを批判するモニタリングの能力が社会に備わっているかどうかというところに疑問を呈しましたが、それが最もチェック機能の発達できるところは中間層だろうと思います。その中間層を支える中等・高等教育が著しく遅れているということでありまして、基礎教育と同時に、パキスタンにとっては高等教育の支援が必要だろうと思います。 それから、「人間の安全保障」の中で、貧困である、あるいは基礎医療にアクセスできないということは、人間の尊厳にかかわるものでありますので、その意味でも、いろいろな種類のジェンダーの格差、あるいは地域の格差、種族の格差、すべての格差が現存しておりますので、これを取り除く努力が必要だろうと思います。これが人間開発の問題であります。 健全な市場の開発は、まだその行間にいろいろなことを言いたいと思いますけれども、最も重要なこと、これは雇用の創設だろうと思います。雇用の創設をどうやったらいいか。パキスタンの経済というのは、綿の生産、製造業の生産、全経済の生産が1対1対1で対比しております。したがって、そういうことから考えますと、雇用創設を中期的に願っていくセクターは農業セクターだろうと思います。ただ、同じ成長率であっても、それが雇用のスピル・オーバー、あるいは農業成長の乗数効果につながるような形で支援していくというものは非常に重要なことだろうと思います。そういうことで支援していくことによって、貧困削減ということも実現するのではなかろうかと思っております。 健全な市場の発達は、もともと民間セクターのものでございますが、その民間セクターの投資、あるいは活動をインデュースするようなエクスターナリティがまだまだ不足しております。そこにインフラの支援も必要であろうと思います。 ただ、パキスタンの経済の中で最も元凶は、これは文面には書いておりませんけれども、我々がランデッド・エリートといいます、在地権力を持った政治指導者層のビヘービアというものが一番元凶であると考えております。そのために、世直し的にミリタリー、軍事のクーデターがあるのだと理解しております。 ところが、これを正すということは、歴史的、社会的な構造的な問題になりまして、一長一短ではいきません。我々はやはり彼らの持っている知力、資力、指導力というものを何とかして開発のエージェントとしてトランスフォームするチャンスがないかどうかということを考えてきました。その一つが市場の活性化だろうと思います。 最後に、今まで50年間の間に3回実質的なクーデターがございました。クーデターと民政を比較してみますと、クーデターの後に必ず経済のV字型の回復が実現しております。ところが、ムシャラフ政権もマイナス2.5%の成長率が今では6%に達しております。すべてのマクロデータは貧困と雇用吸収力を除いては順調に推移しておりますし、外貨も25年ぶりに黒字に転換しました。 しかしながら、V字型成長というのは、過去2回において行なわれたものは短命になっております。短命にしないようにするには何がいいかというと、前2回のクーデターで十分ケアできなかったところ、これは産業の多様化であり、人間開発の支援であろうと。そこを等閑視してきた前2回のクーデター後のV字型回復は短命に終わらざるをなかったということであります。 それを学習効果をいたしまして、現在のムシャラフ政権の向かっている方向性は、各国が認めますように、非常にまともな線を動いておりまして、特にデボリューション、つまり地域分権化というものを中心とした、目線を下げた開発の方向性というのはサポートしなければいけないだろうと思います。 そういった意味で、我々の設定した3つの方向性、それに対するプライオリティの分野というものは、この前のパキスタンの政策協議ではございませんけれども、担当者と議論をしまして、基本的な線としては何ら問題にならない、我々の考えと同じであるという意見をちょうだいいたしましたので、それほど現実離れしたものではないだろうと思います。 |
(渡辺議長代理) | 平島先生どうもありがとうございました。 せっかくの機会でございます。最終案にほとんど近いものでございますが、ご意見、コメント等があれば、若干なりともまだ修文の可能性はございます。 |
(牟田委員) | ありがとうございます。基本的なことにつきましては、大変立派な計画ができていると思いまして、これでよろしいかと思うのですが、細かな点につきまして意見がございます。 それは11ページの教育の(a)で基礎教育の充実と諸格差の縮小というところでございます。ここの4行のところを読みますと、2行目に「基礎教育へのアクセスを改善するとともに、教育の質の改善を図る」といった言葉がございまして、「基礎教育へのアクセス」ということが非常に大事な問題だということが文章で書かれております。 しかし、下のほうに「よって、重点課題は」となりますと、アクセスのところだけが抜けていまして、それ以降が書いてあります。これは、アクセスは大事だけれども、アクセスについてはやらないといったメッセージかと思いますが、なぜここではアクセスの改善が大事だと書かれていて、重点課題ではアクセスとお書きにならないのか。 例えば下のほうの医療分野を見ますと、これは「アクセスの確保」ということが、文章にも重点分野にも書かれておりまして、これはこれで納得がいくのですが、どうして教育のところは、アクセスの改善が重点分野になっていないのかというのが第1点でございます。 もう一つは、「教育の質的の向上」の括弧書きの中で「学校給食を含む」という言葉がございます。これは、学校給食をやるというふうに読めるのですけれども、ほかに何をするかという重点分野に書かれている行政の機能拡大とか、識字教育の拡充とか、そういったような文言と比べると、学校給食という非常にスペシフィックな文言が、ここだけどうしても気にかかります。これは、これを必ずやりますというメッセージに聞こえるのですけれども、何故ここだけ「学校給食」という非常にスペシフィックなプロジェクトが連想できるような言葉が入れておられるのかということです。 パキスタン教育の問題は、教育の質の向上ということですが、教育の質の向上のためにはいろいろな方法があります。例えば教員訓練や教育環境の改善もあります。それはわかるのですが、学校給食というのはあまりにも特殊な協力内容が書かれていると感じられ、ほかの文言と合わせるということであれば、「学校給食を含む」という文言は削ったほうがいいのではないかと思います。後ろのほうの目標体系図を見ましても、これは入っています。学校給食をすることによって、子供の就学率を上げるということはよくある話でございまして、学校給食そのものに私は反対するものでは決してございませんが、教育の質の向上を上げるのに、それが一番費用対効果のいいやり方かどうかということは、国によってだいぶ違います。 それから、学校給食というのは基本的には食料を配るわけで、管理をしっかりしませんと、食料がどこか途中で消えてしまうということはよくある話です。そうしますと、これはガバナンスの問題とも関係しておりまして、一見、食事を配れば子供が来そうでありますが、実際に運営するとなるとなかなか大変なプロジェクトになります。そういったことをここの国別援助計画の段階で文言として書き込むということの適宜についてどういうふうに判断されたのかということについて、ご意見をお伺いしたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。その他いかがでございましょう。 |
(草野委員) | 大変にみごとな計画書だと思いながら、プレゼンテーションと原稿を読ませていただきました。 ただ、1つコメントがあるのですけれども、それは、先ほどプレゼンの中で何度か強調されました分野横断的イシューとして、ジェンダーと環境、ガバナンス。私は特にガバナンスの点に関心があるのですけれども、プレゼンの中では分野横断的なイシューとしてこれらの3つについては自明の理として、さまざまな具体的なプロジェクトを行なうに当たっては留意するというご説明だったのですけれども、全体として、この計画を読ませていただきますと、分野横断的なイシューについてはもう少し踏み込んで書いていただいたほうがよろしいのではないかと思います。とりわけガバナンス、パキスタンという国の現状を考えてみますと、ガバナンスが非常に気にかかる部分です。政府の開発戦略の中でもガバナンスの改善を1項目立てて、関心を持っているということですから、この点についてもう少し全体的に分量にしても多くしていただいたほうがいいのではないかと思います。どうやって担保するのかというところが気にかかるところです。留意するという表現にとどまっているという点が気にかかります。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 |
(荒木委員) | 大変よくできていると思って読ませていただいた。ただ、日本として何をするのかと問われたとき、例えば重点分野についてもプライオリティをつけて、中期政策が5年以内で改定していくということですから、国別援助計画も5年以内で見る限り、短期的な問題がたくさん含まれてくると思うのです。 したがって、この国別援助計画をブレークダウンして実際の実施計画を立てるときに、実施計画を立てる人たちが見て、これがプライオリティなのか、それでは、この順序で実施計画を立てていこうということなので、できればその辺のところをにらみながら、国別援助計画の重点化というか、プライオリティを示してもらいたかった。 かつ、その中で何でもできるというよりも、バイラテルでやる場合は、日本の潜在的な能力というか、日本の得意とするものしかできないわけです。そうすると、そこも勘案してプライオリティをつけていくということはいかがなものかと感じた次第です。 |
(渡辺議長代理) | 荒木さん、今おっしゃったこと、ご説もっともだと思いますが、この報告書に即して言うと、どのあたりにそういう配慮をしたらよろしいとお考えでしょうか。 |
(荒木委員) | 10ページの我が国の経済の協力の方向性と重点分野というところでございます。今、分野横断的イシュー、あるいは「人間の安全保障」の確保と人間開発というところも含めまして、それから、特に12ページの(ハ)の健全な市場経済の発展というところがあって、個々にいろいろこういう方向でやっていくとなっているのですけれども、健全な市場経済発展のためには、具体的には(a)の分野と(b)の分野と(c)の分野というふうに幾つか分けて、インフラのところまでお書きになっているのですが、全体を通して関連性を持たせてプライオリティをつけていただければ、現場を担当する者は非常にありがたいのではないかなという感じを持ったわけです。 それから、イシューという横断的な、「人間の安全保障」もそうですけれども、物の考え方でありまして、これをよく実施経験者というか、実施する人々は、「人間の安全保障」のプロジェクトとか分野横断的プロジェクトというように直結して考えてしまうものですから、現場では非常に混乱するケースがあります。したがって、もう少し物の考え方としてそれを定義していくということで、それを具体的にプロジェクト化することは大変難しいということもひとつご配慮いただきたい。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 それでは、大野さん、小島さん、浅沼さんという順序でお願いします。 |
(大野委員) | 今の荒木さんの意見に賛成で、パキスタンの問題を指摘した文章としては非常によく書けていると思いますが、非常に困難が大きいということ。それに対して開発の課題は非常に多いということで、非常に難しいというのが伝わってくるのですけれども、そのときに日本に何ができるか、あるいは核保有国ですから、状況によっては援助できなくなる場合とかあるわけですよね。それから、政治の不安定な問題、コラプションのガバナンスの問題という指摘がありました。だから、まず量的な面で実際にどんどん増やせるのか、それとも、ある条件のもとでは撤退することもあり得るということも書き得ると思います。 それから、荒木さんがおっしゃったように、日本ができること、できないこと、それから、他のドナーがあるわけですから、他のドナーの連携のパラグラフはございますけれども、具体的に日本はここをとって、世銀とかほかのところにはADBがこれを任すというぐらいまでは書けるのではないかと思います。 それから、牟田さんもおっしゃいましたけれども、パキスタンへの援助がこれからどれぐらい出るか、まだわかりませんが、この分野すべてに1つずつ予算がつくときにその案件をつくっていくというのはインパクト不足だと思うので、選択と集中というのが必要だと思います。そのときには、牟田委員は、いろいろな項目のレベルが違うということをおっしゃいましたけれども、僕は細かいことまで、そこまで達すれば書けばいいと思うのです。その場合は非常に絞り込まれた形で書くということで、中等教育の振興とかカラチの発展とか、そういうのはまだ絞り込まれていないような感じがします。だから、これ自体、最終案ということですから大幅に変えることはできないですけれども、これが出た後で現地を中心に、絞り込みの作業というのがまだ必要な感じがします。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。小島先生、どうぞ。 |
(小島委員) | 私の意見も、荒木さん、大野さんの意見とかなり重なるのですけれども、1点目は、こういう国別援助計画の場合も、今、大野委員からおっしゃられたように、やはりパキスタンは核を持っているわけです。その点について、ある種ODA対抗のガイドラインみたいなことを確認するというところが一つあってもいいのかなというのが1点目。 2点目は、3つの方向性の中の一つの「人間の安全保障」の確保と人間開発のところですが、これは中期政策のときにも議論されましたけれども、「人間の安全保障」というのは視点なわけで、ある種重点課題ということではないのではないかと感じたのですが、ここでは、基礎教育と中間層の拡大を促進する高等教育、それから保健医療となっているのですが、これが「人間の安全保障」の確保なのか、むしろ今ご説明があったように、人間開発というところだとこれが当てはまっていくのかなと感じまして、「人間の安全保障」というのを方向性として出すのはいいのですが、具体的なそのほかに並べられている健全な市場経済の発達やバランスのとれた社会経済の発達とは違うのかなという印象を持ちました。 そして3つ目は、具体的に「人間の安全保障」のところで、(a)と(b)と(c)が併記されているのですが、(a)というのは、結局教育ですね。初等教育から中等教育、高等教育、全部やりますと書かれているような感じがして、どこを重点にしてやるのかということを書く必要があるのではないかと思います。 そして最後に、全体としてこういった形で健全な市場経済の発達、バランスのとれた発達、あるいは人間開発といったことをやるとすれば、これを当面5年間をかけてやるとすると、これははっきり言うのは難しいのかもしれませんが、ある種目標値みたいなことが書き込まれていると、それこそ中間評価、事後評価をする際に、いろいろな条件は変わるかもしれませんけれども、こういう形で具体的に目標を掲げた、それを検証する際により説得力があるのかなという印象を持ちました。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。浅沼さんお願いします。 |
(浅沼委員) | 5ページに援助の上位目標というのを書いてありますね。ここでは「持続的社会の構築とその発展」と書いてありますが、7ページを見ますと、(c)に、地域社会に関しては「社会・経済」と書いてあるわけです。それで、この全体のトーンとして、これで正しいかどうかという質問なのですけれども、パキスタンの場合には、インドと同じころにコンソーシアムが始まって、みんなが相当の援助資金を使ってきた。その中で、緑の革命その他は成功したのだけれども、一向に昔ながらの、ある意味では封建社会的な社会体制が残っている国である。 そういう認識をした後で将来の発展像を考えたときに、この国は、長い間、人間開発をある意味では軽視してきたために、東アジア的な急速な経済発展は多分ポテンシャルはないだろう、それを今目指すのは無理だ。だから、むしろ焦点としては、社会的な安定に焦点を置いて、かつその社会を発展させるための人間開発というところに焦点を置いて援助政策を進めていきましょうというのがこの趣旨だというふうに、読みました。 もしそうだとしたら、大変結構なことだと思います。その選択というのは。経済サイドについては高い期待を持つのをよしましょうと。パキスタンについては当分の間は、むしろ社会開発に焦点を当てましょうと考えられているのかなと。もしそうだとしたら、もう少しその辺を強調したらいいのかという気がします。 第2点は、体系図ですけれども、「人間の安全保障」と人間開発というのが並列して置かれているというのはどうもおかしい。これは、従前から人間開発としてやってきたことですよね。やはり小島さんがおっしゃったように、「人間の安全保障」というのは横断的な視点の問題なのだから、ジェンダーとか環境とかガバナンスとか一緒くたにして放り込んで、ここはやはり人間開発なんだという点を強調しないと、一番最初に言った戦略的な視点というのが生きてこないだろうという気がいたします。 第3番、これは質問ですけれども、農村のさらなる開発に力点が置かれているわけですが、過去の成果を評価するときに、あそこで一応ファースト・ジェネレーションの緑の革命というのはもう終わったのかどうか、それとも、まだやるべきことが残っているのかどうか、そうではなくて、農村の開発という意味では、第2段階に、すなわち、クロップ・ダイバシフィケーションであるとか、オフファームの何であるとか、そのように進んでいかなければいけない状況にあるのかどうかというところがはっきりわかるといいという気がします。 |
(渡辺議長代理) | ご意見どうもありがとうございました。先程申し上げたように、若干の修文をする時間的余裕はあると考えております。平島先生の方からは何かございますか。 |
(平島主査) | まず、最初にこの計画は、現地のタスクフォース、東京タスクフォースも含めて、ありとあらゆる人々の意見を吸収してできたものと思っております。従って、これが現場の人を混乱に追い込むという批判は当たらないと思います。 それから、学校給食のことは、我々の年代の偏見があるのかもしれません。学校給食のところで言うのは、就学率の増加だとか栄養のバランスということだけ強調されておりますが、私は学校給食の一番のポイントは差別だと思います。学校給食の導入されたことによって、日本の社会も、子供の頭の中から差別意識がなくなったという点は、ちょっと皆さん勉強不足なのではないかと思います。 ですから、これは削れと言われれば削るのにやぶさかではないのですが、実際はあまり削りたくはありません。これは教育環境のところにかかっておりますので、学校の質というのは、プライベートスクールがパブリックスクールをクラウドアウトするような勢いがあります。日本の近代的な発達過程を見ますと、うんと教育投資をしました。学校の教員の給料も非常に高い給料で遇しました。GDP1.5%の教育投資、今のパキスタンの段階では問題にならない。したがって、優秀な官僚が教員になるぐらいの教員の質的な改善を図るというのが私の意見でございますが、これはそこまで書きませんので、そういう誤解になったのだと思います。 それから、分断的なイシューは、以前草野先生からも、「人間の安全保障」というのは全文にかかわるのではないかという意見をいただきました。確かにそのとおりだと思いますし、これもガバナンスと同じように、定義が非常に不明瞭な点がございます。不明瞭な点といいますのは、全てにかかわっているという意味で不明瞭な点だと思いますので、これは改良の余地はなくはないのだろうと思います。 ただ、私はガバナンスとか「人間の安全保障」を言うときに、なぜそれが守られないのかというルート構図が重要だということを強調したいわけです。ただガバナンスを正せばよろしいとか、あるいは「人間の安全保障」を確保すればいいという字面で言うのは楽なのですけれども、どうしてそれが今までずっとやられてきて、世界銀行にしても、貧困、サクセン、トリクルダウンと言いながら、なぜこうならないのかということに焦点を当てるべき。そうでないと根本的な解決はできないということであります。 それから、プライオリティをつけるという意味は、実はパキスタンの開発ニードに対して日本が行なわれる開発のコントリビューションはわずか2%以下ですよね。したがってプライオリティが必要だということですが、我々が考えたのは、世界銀行よりもずっとコンプリヘンシブではないと思っております。むしろこれでもかなり絞ったつもりでおりますが、あえて言えとおっしゃいますと、イスラミック・ファンダメンタリスト、つまりテロの温床になりつつあるような、あるいはなる危険性があるような核保有国に対してケアすべきことは、やはり今まで等閑視されてきたデュアランド・ライン東側、インダス側の西側、カラチからペシャワールに至る地域の開発だろうと思います。しかし、そこまで書いていいものかどうか。外交文書ですので、私はそこは判断はつきません。 援助に関しては、大野先生の意見ももっともだと思います。トップドナーであるべきだという理由は全くありませんし、ODAをやらなければならないという必然性もないと思いますが、しかし、パキスタンがこのまま突き進んで、ムシャラフが3回暗殺を試みられて、今度首相になったショーカット・アジズも1回暗殺の憂き目にあっております。回避しましたけれども、今必死になって、日本と同じぐらいの人口を持っている国が戦っているときに、援助しないでいいという基本的な考え方は持っておりませんので、できることはやるべきだろうと思います。 日本でやれることというのは限られております。我々はこれをつくりましたのは、こうするということではなくて、政策協議をするときに要請主義をとっておりますので、要請主義がきたときに、お互いに政策協議をきちんと議論できる素材、たたき台をつくりたい。そのときに長期なフレンドリーな友好国を目指す日本としては、パキスタンはこういう形が我々は望ましいと思っているのだけれどもどうだろうかという意味で筋道をつくったわけですね。その筋道に関しては、幸いにしてパキスタン側からも全面的に同意を得ているわけです。そういった意味で、こちらが先走ったわけでもないし、これを全部やろうと言っているわけでもありません。要請主義に基づいて、日本のキャパシティの制約、あるいは人材の制約、そういうものからできることをやっていけばいいのではないかなと思います。 それから、最後の浅沼さんのご意見でしょうか。ちょっと読み過ぎだと思います。経済が停滞して社会が安定するということは、ちょっと信じがたいと思います。しかしながら、パキスタンの人々は非常にすぐれた能力を持っておりまして、モメンタムがなかった。そのモメンタムがなかったというのは、在地権力を頂点とする政治経済構造であったと思います。その政治経済構造を正すような社会的な対抗勢力が育たなかったということだと思います。したがって、そういうことに対して日本ができるだけ援助をするということにして、結果的にはあの国がモメンタムを得て、経済発展、あるいは持続的な社会を達成するという可能性は私は十二分にあると思います。今の状態がむしろ異常だと思いますし、その異常なものが外的な要因によってまたガタガタになっているわけです。 そういった意味で、可能性がないから援助しないということではなくて、できるところがあればできる。これはこういう分野だよということですので、日本の計画の中でもそこまで書き込んで、どことどこをどうするということを政策文書として書くのがいいのかどうかということは、政策協議の幅を狭めるということもありますので、これはあくまでもアウトラインで、そのアウトラインは、国際機関が言うコンプリヘンシブなアプローチよりもはるかに絞り込まれた考え方だと私は思っています。それでも広いということはそのとおりです。でも、それは全部やるということではなくて、これはあくまで議論の要請主義が出てきたとのたたき台で、お互いが納得したところで援助が開始されるという考え方に立っております。 いろいろな貴重なご意見が出てきました。それは一つ一つ最も議論でございますけれども、あの国が核保有国であるがゆえに、テロの温床になってほしくないという私の願い、それから、優秀な国民を前提にすると、今の状態が異常であって、モメンタムさえあれば必ずあの国は発展すると考えております。それはラジカルな方法はないかもしれませんけれども、ステップ・バイ・ステップでやっていく以外にないのかと思います。50年かかってこの状態ですから、あと50年かかるかもしれません。したがって、5年間でメリハリがつくような結果が出るとは思いませんが しかし、15年、20年たったら必ず結果が出るというようなロードマップをつくるというのが我々の立場だったと理解しております。 |
(渡辺議長代理) | 平島先生どうもありがとうございました。大変熱心なコメントをいただき感謝します。 青山さん、大野さん、お願いします。 |
(青山委員) | 私は、このタスクに参加させていただいた立場から、一言だけ申し上げたいと思います。先程平島先生からもご説明がありましたように、現地タスクフォースが大変に積極的でした。現地の方は、何かプロジェクトを想定しながら、どのような項目をいれるべきかという意見をだしておられたようにも思います。ですから、この計画を実際のプロジェクトへと具体化していくことが難しいとは、あまり思いませんでした。 それから、「人間の安全保障」に関してですが、本当におっしゃるとおり、横断的な問題だと思います。ただ、私が特定の項目としてここに入れた方がよいと思いましたのは、この計画では、社会セクターの分野に格差があることに、特に目を向けているからです。例えば、人間開発が光の部分を見ているとしますと、「人間の安全保障」は、影の方を見て、落ちこぼれた人に対しても支援をしていこうという考え方ではないかと思います。格差のある部分、例えば女性とか、地方とかに、光を当てていこうという意味で、ここに入れておくことは悪くないのではないかと思っております。 最後に1つ外務省にお願いです。この計画は英文になると思いますが、政策協議の基盤となる大変すばらしいペーパーができたと思いますので、ぜひしっかりした表紙をつけて多少なりとも見栄えのするものにして、相手国関係者や、国際機関・他国の援助関係者などにも配っていただきたいと思っております。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 |
(大野委員) | 平島先生の熱意が非常に伝わったのですけれども、やはり国別援助計画の性格としてちょっとわからなかった点は、先程先生がここまで書き込んでいいかとか、具体的なものまで外交文書だからとおっしゃいましたけれども、国別援助計画はそれが目的だったと理解しています。だから、今発言された方でも、内容についてすごく反対があるということは全くないと思いますが、熱意と信念を書き込むのは前半であって、後半に絞り込みのやり方、指針を示すというのが、僕が理解したこの文書の性格です。もしそこまで達しないというのだったら、今からパキスタンと議論していくという形になったということだったら理解できるのですが、原則として中身まで書き込まないということではないと思います。ただ、パキスタンの場合は非常に難しいので、そこまで達しなかった。これからやるということで、文章自体は僕も非常によくできたし、立派な表紙をつけて議論していただければいいと思うのですけれども、ここでとまるのが当然だというのはちょっと違和感がありました。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。心すべき点かもしれません。 まだご意見があり得ると思いますけれども、このあたりで対パキスタンの計画については議論をひとまず打ち切らせていただきたいと思います。 今日のさまざまなご意見に対して、平島先生のほうから、私にはかなり合理的と思われる反論もありました。それにもかかわらず、さらに修すべき点があれば、修文していただきます。その修文の結果については、私と事務局にお任せしていただきたい。これを、会議としての最終案にして、政府の計画とします。そのために、然るべき手続を進めていきます。そういうことで、承認していただきたいのでございますが、よろしいでしょうか。 平島先生並びに平島先生のタスクフォース、私は国別援助計画の一つのモデルになるような報告書になったという印象を持っていますが、そこまで仕上げてくださった先生のご尽力に改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。 |
(広瀬経済協力局審議官) | 事務局としまして、まず皆様にお礼を申し上げたいと思います。特に平島主査、東京タスクフォース、現地でも対応した人間がたくさんいるわけですけれども、そういった関係者の方々にお礼を申し上げたいと思います。 また、今日ここで議論いただきましたように、いろいろな見方、あるいは今後政府間協議でさらに議論したほうがいいところ、確かに残っているようなところがあります。議長代理から最後まとめいただきましたように、大筋これでご了承いただき、必要な部分がさらにありましたら修文ということで対応させていただき、政府のほうとしましては、政府の計画とするために、対外経済協力関係閣僚会議に諮りまして文章化する必要がございます。そういった手続を進めさせていただこうと思います。改めてお礼申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。 |
(渡辺議長代理) | 続きまして「対フィリピン国別援助計画」について、吉田恒昭主査から今後の作業方針について報告いただきたいと思います。資料が既にお手元にいっておりますので、それに基づいたご報告をお願いします。 |
(吉田主査) | ありがとうございます。まず、このような役割を与えられまして、大変光栄に思っております。若いときからODAに従事した者として、こういう作業ができること、精一杯やりますので、よろしくお願いいたします。 お手元に配布したフレームワーク(案)は、実際に私がたまたま9月にマニラに行ったときに、非公式的に現地の大使館関係者とざっくばらんに話をした結果も踏まえてつくったものですので、ご了解ください。 今、パキスタンのお話を聞いていて、その前の中期計画もそうですけれども、私にとって非常に物すごいインプットというか、インパクトがございまして、中期計画はまさにこれから決まる段階ですから、それをどういうふうにフィリピンに反映させるかという一つの課題が明瞭になりましたし、パキスタンの平島先生のご発表の中で、それから、皆さんのフロアからのコメントも、すべてインプットとして早速使わせていただくという心構えになりました。まずその点をお伝えします。 今回の報告は、いわゆる方法論的なことになっております。これはどうしてそういうことになったかといいますと、現地大使館に行って皆さんとお話ししたときに、失礼な言い方になるかもしれないのですが、みんな同じ方向を見て、みんな毎日ODAの仕事をしているのかなと思いました。要するに、共通のビジョンとか共通のフレームとか、あるいはメソッドというものがあったほうが、おそらく実際のオペレーションになったときに現場で力を発揮できるという印象を持ったものですから、この援助計画をつくるプロセスにおいて、失礼な言い方かもわからないのですけれども、キャパシティをつくる機会になりうるという気持ちを持ちました。これは現地の人達にざっくばらんにそういうことを申し上げました。そうしたら、それのほうがありがたい、汗を流すからにはそれがきちっと汗として残る作業をしたいと、現地の皆さんが大変協力してくれるという体制になりました。 これは国によっても違いますし、たまたまフィリピンの場合には援助関係の方が多いし、専門家が100人近くおられるというリソースがそこにあるから、そのリソースを最大限使って、いいものをつくりたいということが念頭にありました。 まず、今日は最初のページにありますように、これはタスクフォース自身の目的としてきちんと定義をしましょうということ。これはみんなが共通の定義を持っていないと後で集約がしにくいということで、その確認です。 それから作業体制について。これもチームワークになるからには、東京タスクフォースも現地タスクフォースも、自分がどこにいるかというオリエンテーションをきちんとわきまえてやってもらいたいという意図がございまして、まして関係者の間で非常に大きく複雑な関係がありますので、そこでしっかり自分のポジションを確認するという作業のためにつくってみました。 計画作りの基本姿勢。これは私自身、今までの国別援助計画における資料等をいろいろ見させて頂いて、戦略会議の委員の方、特に私のすぐ近くにおられた大野先生とか浅沼先生にも個人的にはいろいろご意見を伺って、経験を参考にさせていただきました。ここで改めてお礼を申し上げます。 まず国別援助計画の定義がありまして、ここで中期計画が今回最終版にきているということで、恐らくそれが最も重要なガイドラインというように了解したいと思います。 それから、3ページ目の作業体制ということで、これもいろいろな意見があると思うのですが、現地及び先週行なわれた東京タスクフォースでもこの点が議論になりまして、これらを含めた今のスタート時点では、このようなストラクチャー、体制で望みたいと思っております。戦略会議の委員の皆様は、今までの経験から、何か抜けていること、あるいはコメントがありましたらいただきたいところです。 それから、4ページ目、計画作りの基本体制として、「姿勢」という形と「方針」という形で幾つか挙げてございます。基本姿勢の中には、先程申しました、もちろんいわゆる援助計画づくりのシステム、ODA戦略会議のガイダンス及び中期あるいはODA大綱というものを踏まえていくということと、2番目のマニラタスクフォースというここを十分に生かしたい。これは皆さんもちろんやっておられることだと思いますけれども、そのために方法論について整理しておかなければいけないなということで、あえて以下に続くような方法論が入ったと理解していただきたいと思います。 それから、情報公開に努めたいと思います。これはできる限り作業のプロセスというもの、特にODA関係で、教育の分野でも、どうやって援助をやって決めているのかという疑問が学生からも多く寄せられます。だから、支障のない限り、そういうことも含めて公開したいと思います。 基本方針の中で幾つか挙げていますが、やはり結果重視ということは避けられないということで、残念なのですけれども、今回の計画策定に当たって、国別の援助評価がフィリピンの場合、タイミングが合わなかったということがございます。幾つかのセクター、あるいはプロジェクトベースでは既にやっております。従って、リザルト・オリエンテッドというか、リザルト・ベースド・プランニングということは、実は現地タスクフォースのセクターワーキングプランをつくるときの非常に重要なインプットになるということで進めたいと思います。 それから、戦略性を持たせることということで、これは大変難しいのですけれども、私自身の理解では、援助計画というのは、もちろん共通の方向性を受ける側も出す側も踏まえると同時に、それがオペレーショナルに有効でなくてはいけないという気持ちがございますので、そこは強調してあります。 それから、もちろんメッセージ性を持たせるということで、先ほどパキスタンの場合にも文書として公開してほしい。フィリピンもいろいろな形でITなどを使って現地大使館から発信できるようなドキュメントにでき上がったらと思っています。 主要援助機関との協調。これは最近の援助の大きな課題のひとつですので、それも入っております。 それから、市民団体や民間団体の連携。これは先程の体制のチャート図にありましたけれども、東京及び現地のタスクフォースも、NGOとの対話、意見交換、民間団体、産業団体、JETRO、あるいは商工会議所でも進めたい。これはもともと本文の中に、例えば中期計画の案の中にも、NGOとの連携を図る、あるいは民間との連携を図るということは強調されていましたので、それを反映していると思います。 計画という名前がついたからには、計画の論理というものを考えてみたということで、マクロとミクロの間の計画性をいかに整合性を保てるか。それ自身がプロジェクトの絞り込み、あるいはやってはいけないプロジェクトは、こういう分野だというのは自ずとわかってくるというスタイルになると思っております。 あとは簡単に、5ページ以降は、方法論を述べております。特に東京あるいはマニラのタスクフォースはこのような構造の中でやるということで、具体的に言いますと、マニラのタスクフォースでは、2つに、マクロの担当のスタッフとセクター・ミクロ、プロジェクト担当のスタッフが大きなチームを2つつくって、そこで球を投げ合うということです。 具体的に言いますと、財政危機のフィリピンの中でマクロの非常に大きな制約の中で、そこのシグナルをもうひとつのチームであるセクター、プロジェクト担当に流すというスタイルです。そういう制約条件の中で、ミクロのプロジェクト、専門家や実際に担当している方たちがどういうプロジェクトを提案できるかというキャッチボールのスタイルでおそらく骨子案が作られると思っております。 6ページ目は、幾つかの関連分野を理解するという意味で、事後評価、国別援助計画、他の援助機関、フィリピンの計画の関連性をマルチレベルで把えたものです。指示的なオペレーションのガイダンスをタスクフォースに与えるということです。 7ページは、今回の課題のひとつで、現行案件のリストラということがあるいは避けられないのかなという気がしておりましたものですから、その考え方をこんなふうに考えましょうということで、簡単に整理したということでございます。 これまでの説明は基本的な方法論をみんなで共有しようという意図で、ある意味では現地タスクフォースの勉強会の資料をつくったということでございます。これから具体的に優先課題の絞り込みや整理するという作業がいよいよ始まるわけですから、私のほうからそれを先に出すということをしないで、あえて作業の過程から浮かび上がってくることを期待しております。 今の時点での個別課題としては、これは中期計画の案にありましたように、NGOと具体的にどういう連携が可能なのか、その辺は探りたいと思います。ほかの援助国でやっているようなマッチング方式というのがたしかあったと思います。現地のNGOと日本のNGOがタイアップしたプロジェクトに、彼らのリソースコントリビューションに応じてODAがうまく使えるような仕組みがもう既にあるのかわかりませんけれども、そんな可能性も検討したいし、あるいはフィリピンの場合は、FTAが発表されまして、合意に達したということで、その領域で、公と民がうまく連携する仕組みがあるのかなと思います。 もう一つは、ミンダナオの平和構築をどういうふうに考えるのか、その3つぐらいの課題が今私の頭には浮かんでおります。 以上、今日は非常に雑駁な説明で恐縮ですけれども、このような作業で進めさせていただいて、もとより国が違うし、発展段階も違うから、おそらく国別援助計画というのは、今の段階ではいろいろなやり方があっていいと私は思っております。そして、それがだんだんと議論を経て集約されている、あるいは何かモデルとかそういう形でできるのかなと思いますので、試みとして理解していただければありがたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | 吉田先生どうもありがとうございました。 今、作業方針についてのご説明をいただきました。ご質問、コメントをいただければと思います。 |
(草野委員) | 吉田先生、本当にインパクトのある計画をご紹介いただきまして、大変参考になりました。 1つコメントがあります。それは、7ページの現行案件のリストラの考え方と基準のところですけれども、これは言ってみれば、タッチーな部分かなとも思うのですが、私はばかの一つ覚えのように、国別援助計画の策定の議論のときに、常にこれまでの日本が当該国に対して行なってきた援助案件についてどう評価するかというところから出発するのではないかということを言ってきたので、きょうのご説明というのは素晴らしいと思うのですが、ただ、問題は、各省庁の利害関係がさまざまに絡み合っている中で、果たしてこれがどの程度機能するのか。これはもちろんやってみなければわかりませんけれども、そういうさまざまな障害を乗り越えてやるお覚悟があるのかどうかというそこをちょっとお聞きしたいと思います。だけど、もし実際にこれが実行されたならば、大変に画期的だと思います。これはぜひやっていただきたい。 ただ、一体その評価をだれがやるのか。タスクフォースのメンバーの方々がおやりになるのか、そこら辺の客観性をどう担保するかとか、いろいろな問題がまたさらに出る。何を申し上げたいかというと、こういうきれいな青写真をつくっても、これが機能しなければ、失礼ながらあまり意味はないのではないかという他方の感想があるのです。 |
(砂川委員) | 今の草野さんのコメントと関連するのですけれども、私はもう少し根本的に、吉田先生がフィリピンの経済開発という観点についてどういう印象を持っておられるのか、どういう具合に位置付けられておられるのかというところをまず鮮明に出していただきたいと思います。と申しますのは、ASEANが始まったときに、おそらく5か国の中でフィリピンというのは最も進んだ国だったと思います。ところが、今5か国プラス幾つかの国がありますけれども、5か国に比べるとかなり低いポジションにある。 今ご指摘があったように、フィリピンに対しては大変な援助が日本のみならずいろいろなところからあった。それにもかかわらず、今その成果があまり出ていない。それどころか、いわゆる効率とか効果という面においていろいろ欠陥が見えてきている国と思います。その点をきちんと見ていただきたい。その認識をベースにこれからの計画というものを立てていただきたいと思います。 |
(浅沼委員) | フィリピンの経済自体についてそれほどよく知っているわけではないのですけれども、印象として、フィリピンは、計画をつくったり、法制をつくったり、政策をつくったり、紙をつくるのは非常に上手ですよね。私も随分学ばせていただいております。 一方、それを今度実施しようとしたときに必ず、あらゆる局面で、あらゆる場所で、政治家の干渉があってぐちゃぐちゃになってしまうというのが通常なわけですね。それが第1点。 もう一つは、ひとたび紙に書いてしまった後のフローアップが全然されない国ですよね。例えば道路をつくらなければいけないのだけれども、交通量のデータがどこにあるかといったら、JICAがこれはやらなきゃといってつくらせたものしかないという状況です。 その2つのことから出てくるのは、ここで吉田さんがずっとセクターの開発、政策までおりてつくられるわけですけれども、あまりにもフィリピンの文書におんぶしてしまうと、きれいなものが出てき過ぎるのではないかという危惧が一つあるというコメントです。 第2は、そうした中でフィリピンの人から時々聞くコメントというのは、もうどうしようもないからODAのドナーの圧力でもって何とか合理的な政策が貫徹するようにできないだろうかということを考えている。考えているのは、さっき平島先生がおっしゃった対抗勢力の人たちだけではなくて、むしろ政府内部の人までがそういうふうに考えている。そこから出てくるのは、だから上手にODAを使えば、多分もうちょっとましな政策運営ができるのではないか。あの国ではODAというのは非常にてことして使えるのではないかという気がします。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。千野さん、どうぞ。 |
(千野委員) | 今、砂川委員と浅沼委員のおっしゃっていたこととも重なるかと思うのですけれども、フィリピンと言ったときに、多くの人が戸惑いといいますか、かなり日本からの援助を行なってきたと思うのですが、それに対してどういう効果というか、目に見える形であるのがフィリピンの現状を考えるときに、根本的な疑問を私などは感じるわけですね。 しかしながら一方で、フィリピン政府が考えていること、あるいはフィリピンの大衆が考えていること、あるいは一部エリートが考えていること、そして、フィリピンはNGOの活動も盛んに行われており、NGOが考えていること、この辺がそれぞればらばらといいますか、そういう社会であるのかなという気もいたしまして、国別援助計画をつくるときに、非常に漠然とした言い方なのですけれども、これまでのフィリピン援助計画がどうであったかという議論から根本的にやっていただいてつくっていただくと、大変参考になると期待しております。 確かにASEANの中でフィリピンは今遅れているわけですけれども、数字の上ではそうかもしれないけれども、フィリピン社会のあり方とかフィリピンという国の方向を考えたときに、だめだと言いきれるかどうか、私は必ずしもそうとは思わない。その辺のところも考えていただければと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 4点ほどのご意見が出ました。これから吉田先生のほうで作業を進めていただくに際して、何か参考にしていただければいいということで、何かごく簡単にリプライありましたらお願いしたいと思います。 |
(吉田主査) | 私はフィリピンに16年住んでいましたから、おそらく皆さんのだれよりも長くいたと思います。その経験は十分に生かしたいと思いますし、とりわけ援助効果という、実は現地の人たちに、セクター・ポリシー、あるいはセクター・ワーキング・ペーパーをつくっていただきたいと言ったら、まさにエバリュエーション、リストラを含めて、過去の失敗、成功、そういう例をきちっと整理してほしいということから始まろうという意思統一でした。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 続きまして「対ラオス国別援助計画」に関してでありますが、原洋之介先生から同じく作業方針の説明をいただきたいと思います。お手元にこれも紙が既に回っております。ご参照になりながら話を伺ってください。 |
(原主査) | 東京大学の原でございます。 今のお話を聞いていて、私個人のラオスとのかかわり、これが後での作業計画に重要なので、そこだけちょっとだけ最初にご説明いたします。 実は過去5年間、ちょうどここで佐渡島さんと久しぶりにお会いしたのですが、大野君とか、ベトナムを約10年前に石川先生と始めまして、その後暇になったから、おまえ、小さい国のラオスをやれというので、ラオスのほうにシフトしまして、5年間、ラオスの経済政策支援というのをやってきました。 これは石川先生と、ベトナムのときと同じやり方でして、日本のほうに4部会つくりまし、実は人口がよくわからない国なのですが、福祉省に聞いてもよくわかりません。大体550万ぐらいだろうと言われている国で、ベトナムは約7,000万以上ですから、それぐらいだろうということで、JICAのほうから、ベトナムのときに比べますと、日本のチームの人数は圧倒的に少ないのですが、それでも4チームつくりまして、今度はCPCといいまして、向こうの計画協力省、ここの大臣がラオス人民革命党のナンバー9の副首相なのですけれども、彼をラオス側の委員長、日本側の委員長を私という形で、過去ほぼ5年、今やっている最中です。 この中でいろいろな議論をしました。ただし、私たちの経済政策支援というのは、日本のODAをどうするかということは一切表面上の課題ではありません。あくまでラオスが現在どういう問題を抱えているかということを、いろいろなテーマを決めるプロセスに至ってはちょっとあったのですが、我々のほうから議論をし、向こうのほうの合意を得て、そしてそういうグループをつくって、報告書はベトナムのときと全く同じスタイルをとりまして、日本側のペーパーとラオス側のペーパーを一緒に書いて、その各パートのサマリーパートをつくる。そういう形で進めていきました。 実は形の上では、来年の3月、あと2か月、3か月ぐらい、3月末にフェーズ2のファイナルな会議をやります。これに向けてはフェーズ1のときと同じように、サマリーのサマリーというのをつくろうということになりまして、フェーズ1のときにはちょっと遅れたのですが、ラオス側委員長である副首相と日本側委員長の私とで短いペーパーをつくりまして、これをラオス語に直す。ラオスの中に配るということをやっております。フェーズ2もそれをやろうかと今考えている次第です。 そういう中でラオスがどういう問題を抱えているかということは、私なりに、ラオスは最初に行ったのが今から十何年前なのですが、行ってもマキシマム3週間ぐらいしか滞在しませんので、滞在日数は短いのですが、かなりの頻度でここのところ出かけておりまして、何となく印象がある。 では、ラオスというのはどんな問題を持っているか、ここがポイントなのですが、これは紙に書いたことですけれども、やや日本人の方が錯覚されていることが二、三あるので、それだけ指摘しておきたいと思います。 ラオスというのは、ラウンドロックドカントリーで、僕はラオスの副首相に酒を飲みながらよく言っているのですが、おまえの国は幸せか不幸かわからん。俺はネパールに昔よく行っていた。ネパールへ行くと、いつもおまえの国は大変だと。中国とインドとジャイアンツにサンドイッチされて、幸せではないなという話をよくネパールでしていたのですが、ラオスに行きますと、隣にベトナムがあります。タイがあります。最近、非常な勢いで中国が出てきている。こういう3つの大国にある意味では囲まれているということで、実はラウンドロックドなのですが、実態は非常にオープンな国なのです。つまり、人、物、金の移動を見ますと、タイとの間はこの3つが移動しています。ところが、金も北のほうはよくわからないのですが、人の移動ということになりますと、実はベトナム、中国と事実上の自由移動になっています。したがいまして、ここが非常に大きな問題でして、問題というのは困っている。 日系企業がほとんど行っていないのです。なぜかと我々もいろいろ調べましたが、答えはいろいろな答えがあるのですけれども、実はラウンドロックドカントリーで、550万で、面積は日本の本土ぐらいあります。日本と同じぐらいの比率で、日本よりちょっと高いのですが、山が8割強、平野部にヴィエンチャン、ルアンパバン、南のほうのパクセとかいろいろありますけれども、こういう中で人口が少なくて、日本本土ぐらいありますので、ラオス人だけのレーバー・サプライは決して多くはありません。 具体的に言いますと、ヴィエンチャンで私は過去5年間よく見ましたが、道路工事、JICAがやられました日本センターの建設現場、こういう所へ行っても、ラオス人が働いているのをほとんど見たことがないのです。実はベトナム人が働いています。 したがいまして、こういう中で非常にラウンドロックドで、一国単位で開発の問題を考えていくと、実態はオープンで動いている。 それから、ご存じのように、ラオスは550万ですが、実はラオスとタイの関係は非常にややこしくて、いわゆるラオ人というのは、タイのほうに約二千数百万いるわけです。したがいまして、ラオ人というエスニックな感覚から言いますと、東部タイがラオなんです。こういうややこしい関係になっております。 それから、例えばFTA、アフター、いろいろなときにいろいろな問題を抱えて、細かいことはきょう言いませんが、関税問題とかいろいろあるのですが、もちろん表面上いろいろな問題があるのですけれども、ある偉い大臣曰く、FTAになっても、税金はちょっと減るかもわからないけれども、実態は何も変わらない。すべて今自由貿易であるということを平気で大臣が言うという国でございまして、それ以上言ったら、雑談で終わってはいけないのでやめますが、そういう中で今度3月の最終週にフェーズ2をやります。内々に先週、草野さん、砂川さんもメンバーで、我々もちょっとお話をしたのですが、できたら、このときあたりに一回東京タスクフォースのメンバーと現地、現地といいますのは、JBICもありませんし、JETROもありませんし、あるのは大使館とJICA事務所だけです。やや乱暴に言いますと、日常的なお仕事にお忙しいので、非常に難しいかなという気があるのですが、現地タスクフォースにかなりパティシペートしてもらわないとできませんので、その辺の打ち合わせを内々に私は既に1回やっているのですが、向こうに行きまして、3月にもう一回詰めてみたい。ですから、どういう作業手順でどうするかというのは、その辺でやろうと思っております。 あと、いろいろなことを書いていますけれども、ODAの評価というのも先ほどから出ていたのですが、もちろんあるのですが、日本のODAは、ある意味では非常に評価されています。例えば一番典型例がナムグムダムというのが、ベトナム戦争の真最中に日本がかなり行ったものです。実は現在、ラオスの貿易統計のときにいろいろによるのですけれども、今コーヒーが増えたり、コーヒーの値段が下がってひっくり返ったりするのですが、コーヒー、木材、電力がまだ最大の輸出品になっています。ということは、ODAの成果だということで、そういう意味で非常に高い評価をもらっています。 ただ一方で、ODAの評価は高いのですが、ODAの効果ということになりますと、非常に難しい問題もあります。やや乱暴ですが、ラオス国立大学の文系に日本がかなり協力しました。ある学生数が出ています。これはいいことだと思うのですが、実は日系企業が行っていない。民間企業はほとんどない。そうすると、人材が短期的、中期的にオーバーサプライになりますね。 私はそのことがわかっていましたので、草野先生、砂川先生に言ったのですけれども、ラオスというの正確な国家公務員試験がないのです。大学卒業生がどうにもならない。みんなコネで取っている。やや乱暴に言いますけれども。ですから、たまに副首相にお会いしたり、首相にお会いしたりするチャンスがありますので、長期的にはぜひ国家公務員試験をやられたらどうですかということをさりげなく伝えているのですけれども、ですから、例えば大学の人材育成の評価をどうするかというときに、日本のODAと向こうのシステムが絡んできますので、このあたりの評価についても、この1年ぐらいの間で考えなければいけないのかなと今ちょっと考えている次第です。 具体的には、最後に、再来年の3月に、一番前のページに書いてあります。2006年の3月に第8回人民党の党大会が開かれます。5年に一遍党大会が開かれておりまして、ここで5か年計画が決まります。現在、2001年3月のところで20か年の計画もつくっています。これは我々は一応全部読んでチェックしているのですけれども、プラス、同時に決まった2001年から2005年までの5か年計画で現在動いているわけです。1年半ぐらい先に、この計画が出てきます。この計画は、内々どんな構造になるのか、大体わかりつつあるのですが、そういうことを少し念頭に置きながら、それへのコメントも含めて、つまり先ほどから国別は5か年ぐらいの有効なODAの戦略を考える。もちろん5年だけではないのですけれども、ということを念頭に置きますと、ラオスの党大会で採択されるであろう計画の構造を見ながら、日本ができること、5か年の中に効果がなくても有効であると思われること、こういったことを幾つか重点的にセレクトするという作業を、今から1年少しの時間かけてやって、報告書をつくってみようかなという計画を今考えているということです。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。ラオスは小さい内陸国であります。人種の分布、国民の国境を超えた分布状況などを考えると、一つの国民経済体系として、この国をどのように考えるか、そもそもそのあたりからして援助計画は非常に難しいわけであります。今までやった国に比べると、ちょっと異質の計画にならざるを得ないのかもしれません。これから作業が始まりますので、今の時点で何か要望したりしておくようなことはございましょうか。 |
(大野委員) | 今、ベトナムでも5か年計画をやっていて、今の日本大使館のベトナム政策で、その5か年計画を変えることを今月とか先月やっているのですけれども、ラオスの5か年計画というものは今どういうものか存じ上げませんが、ベトナムはまだ計画経済のままで、何トンつくるとか、バスを何台つくるとか、そういう世界なので、それを変えようと今日本大使館がやっております。私もやっております。ラオスと似たような問題があるのだったら、結構、ラオスの人はベトナムの真似をしますから、ちょっと連携したいと思います。 |
(渡辺議長代理) | 結構ですね。磯田さん。 |
(磯田委員) | 私は経済開発というよりは、どちらかというと社会開発面のことなのですけれども、多民族国家ですね。相当な数。60という言い方もありますけれども、100以上と言っている人もいますね。そして、ラオ系の人たちは人口の半分ぐらいしかいなくて、あとは山に、しかもアクセスがほとんどない、船でしか行かれない所に、山の向こうに歩いて3時間、5時間という所に集落がある。だから人口もわからないわけですね。まだまだ自力でそこをいろいろな社会サービスとかなかなかできない国だと思うので、私は日本の役割として、そういった社会開発、あるいは「人間の安全保障」という視点に立った、逆にそういう社会ですので、コミュニティの力というのはある程度残されている。ただ、民族差別や、言語もかなり違うので、いろいろな市場経済のアクセスにしろ、教育や行政へのアクセスも非常に厳しい人たちもたくさんいるというような中で、そこの部分の何らかの支援といったものも私は一つの重要な柱としてぜひ位置付けていただきたいと思っています。 また、山国ですので、自然資源もかなりまだ残っているという中で、結局それしか頼れないから、木材をどんどん切って外貨収入にしているという現実の中で、しかも内陸国ですから、それを輸出するのに周辺の国に全部通行料を取られるという不利益を被らざるを得ないという非常に悲哀の国ですね。ですから、付加価値をつける、木材を安い値段で売らないための方策とか、あるいは貴重資源も幾つかあると思うのですね。そういったものをノンティンバープロダクツみたいなものだとかを、既に幾つかやっているとは思うのですけれども、そういった地域の中で彼らが利益を得られるようなものというのを、大きいものではなくて、何か積み上げていくというのが一つの方策なのかなという印象を持っています。 中央の政府にお金が入るということも重要だとは思うのですが、それが地域になかなか届かないという現実の中で、地域の中でできることというものも一つのプライオリティをぜひ置いていただきたいと思っています。 |
(渡辺議長代理) | 原さん、お願いします。 |
(原主査) | 大野君が言われたとおりで、実はラオスの場合もまだ社会主義的な計画の数字とあれになっています。ただ、ベトナム以上に困っていますのは、実はラオスに統計がないのです。だからというので、今私が一番苦労していますのは、この前、草野先生と言っていたのですけれども、統計をどうつくるかということをやらなければいけないと思っていまして、向こうの数字は、実はラオスの数字を見たら、IMFがつくった数字が出てくるのですね。ですから、そういう意味では、まだベトナムの前かなという感じがします。 ただ、同時に、大野君が言ってくれたように、マップという、私が今までやってきたことを通じて、事実上、少し経済計画づくりにややインフォーマルとフォーマルの間ぐらいでインボルブされておりまして、ですから、その辺は大使館云々ということでもありながらも、私たちのマップという経済政策支援で出てきたアイデアを何とか反映させようという努力は実はやっているのです。これがどうなるかはわかりません。 2番目の社会的コミュニティという話ですけれども、おっしゃることは全部賛成でして、これをではどうするかというのが今私たち内々に考えていることでして、おっしゃるように、ラオスはサステーナブル・ディベロップメントというのが一番いいのですね。周りの国が全部木を切っているのです。タイにしろ、ベトナムにしろ、中国にしろ。ラオスだけ残っているのです。こういう資源をどう有効的に使うのかということを向こうの連中と考えなければいけないということで、実は私たちのマップの中で、これはNGOの方というわけにいかなくて非常に弱りまして、ラオス国立大学の農学部の若い先生と学生をかなりインボルブさせまして、幾つかの重要な、全部とてもできませんので、重要な県レベルで、どんな天然資源が残っていて、人々が何を食っていて、どうなっているんだ。そこから、ややローカルなマーケットでも売れるものがあるのかどうか、これは括弧付きですが、タイが「1村1品」という言葉を使っているのですが、これはいいことかどうか別問題なのですけれども、今その調査をやっております。これがほとんど第1次のアウトプットが上がってきておりまして、これを我々の3月の経済政策支援では、こんなデータがありますということを提示するだけですけれども、どうポリシーに結びつけるかは3月後考えようということを今やっている最中です。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 大変困難な課題を抱えたこの国への援助計画について、1年くらいの間に最終案を出していただくためには大変な努力をしていただかなければならないのですが、どうか原先生、よろしくご協力をお願いいたします。 「対ウズベキスタン・カザフスタン国別援助計画」、これは前から申し上げているように、2つが一緒のチームで調査してもらうということになっておりますが、 その主査に石井明先生になっていただいております。作業方針を紙に基づいてご報告いただきます。 |
(石井主査) | ウズベキスタン、カザフスタン、ともに中央アジアの国でございます。中央アジアというとシルクロードを連想して、多くの日本人にとってロマンチシズムの対象になる。多くの日本の風俗習慣がこのあたりから来ているわけですね。今、我々は椅子に座って会議をやっていますけれども、昔はあぐらをかいていた。あぐらという習慣は、この辺から中国大陸を通って日本に伝わってきております。あの辺に行きますと、本当に日本人に顔かたちが似ている。DNAを調べても、あの辺にいる人たちと日本人のDNAはよく似ているという研究もあります。私は日本人のルーツというのは、中央アジアからバイカル湖、あの辺に住んでいる人たちにあると思い込んでおります。 日本には結構中央アジアに特別の思い入れを持つマニアックな人がおります。我々のタスクフォースは、そういうややマニアックな人に加えて、ここにおられる砂川委員と小島委員に大所高所から策定にかかわっていただいて、案をつくるということにしております。 作業方針の案でございますけれども、この地域、中央アジアに対する基本認識のところですけれども、この地域の国々がソ連邦から離脱して独立したのは91年です。それから、もう14~15年になるわけですが、依然として不安定な状況が続いている。アメリカで9.11事件が起きる前から、ここ一帯は国際テロ勢力の策動の場になっておりまして、非常に残念なことですけれども、治安が非常によくない。今は米軍が駐留し、一定の秩序は保たれているわけですけれども、安定からはほど遠い状況にあるわけです。 この作業方針案にも書いてございますように、この地域の平和と安定、これは日本をはじめとしてユーラシア大陸全体、国際社会全体の安定と反映にとって重要であるという認識を持っております。 それに加えてもう一つ問題を複雑化しているのは、資源、エネルギーの供給地として、この一帯、特にカザフスタンあたりが重要な位置を占めているということです。独立後、さまざまな困難に直面しながら、政治経済面で改革を進めてきてはいるのですけれども、まだまだ問題が多い。一国だけでの取り組みというのは十分でないことから、地域的な協力を促進していく重要性が高まってきておりまして、ロシアや中国はこの地域で地域協力機構として、SCO(上海協力機構)を立ち上げて、特に反テロ協力の面で実際の協力体制を築きつつある。 そういう中で、今年の8月、川口前外相が中央アジアを訪問されて、中央アジアプラス日本という対話の枠組みを立ち上げました。この試みは日本の新しい中央アジア政策を表明したものとして各国から注目されている。中国大陸のメディアからは、日本の膨張していく姿勢が見られるというような批判も出てきているわけですけれども、とにかく日本が中央アジアを一つの地域として見て、それと積極的にかかわっていく姿勢を明らかにしたことの意味は非常に大きいと思っております。 中央アジアには5つの国があるわけですけれども、その中で我々のタスクフォースは、ウズベキスタンとカザフスタン、この2国に対する国別援助計画を同時につくらなければいけないという任務を与えられているわけです。この2か国は中央アジアの国々の中で主要国と言っていいわけですけれども、ウズベキスタン・カザフスタンと並べたのは、五十音順です。ウズベキスタンのほうがカザフスタンよりも重要であるという意味ではありません。あくまで平等、五十音順で並べたので、英語のバージョンをつくるときは困ります。 それはどうでもいいのですけれども、その2か国を比べますと、人口の面では、ウズベキスタンのほうがはるかに多い。でも、国土面積からすれば、カザフはものすごく広い。日本の7~8倍くらいはある、そういう非対称的な国ではあるのですが、とにかくこの2か国を押さえれば、中央アジア全体に対する目配りができるだろうと考えております。 しかも、この2か国に関しては、作業方針案の2枚目に書いてございますように、過去5年間のODA供与平均額で、ウズベキスタンが21位、カザフスタン22位とほぼ拮抗している状況にあるわけです。 それで、この両国に対してどういう援助計画をつくるかですけれども、これに関しましては、ほかの国の援助計画とそう大差あるものは出てこないと思うのですが、この前、東京タスクフォースで議論いたしまして、総花的なものはやめよう、できるものとできないもの、これをはっきり区別して、いろいろな要求が上がってくることは予想されるのですが、援助できることと、これはやめたほうがいいというところをはっきり分けようという了解をつくりました。実際、そうできるかどうかは、これからの各省庁ヒアリングとかいろいろありますのでわかりませんけれども、そういう姿勢で臨んでいきたいと思っております。 作業体制、作業の予定は、紙に書いてあるとおりですけれども、第1回の会議は先般開きまして、今、両国の現地タスクフォースからの素案の到着を待っているところです。それを我々は検討して打ち返す、そういうキャッチボールを続けて、来年の春、しかるべきときに現地に参りまして、現地で協議を行なう、そういう作業予定を組んでおります。1年間で最終案を作成できるように頑張るつもりですので、よろしくご指導いただければと思います。ありがとうございました。 |
(渡辺議長代理) | 石井先生どうもありがとうございました。 主査に対する要望等があればご発言いただきたいのですが、いかがでございましょうか。 |
(千野委員) | 今、石井先生が笑いながらおっしゃいましたよね。ウズベキスタンとカザフスタンはあいうえお順ですとおっしゃって、私、それは冗談でおっしゃったけれども、本質的なことじゃないかなと思うのですね。つまり、これまで援助計画というのは一国一国をやってきたわけですけれども、これは2つ一緒にやるということが結果的にいい形になってほしい。といいますのは、私は一度しか行ったことがないのですけれども、ウズベキスタンとカザフスタンへ行って思うことは、この両国が非常にライバル関係を持ってやっているということですね。したがって、言うまでもないことだと思うのですが、日本がせっかくこういう形でやったことが、お互いの間に、日本の意図とは逆な結果になってしまうことがあっては台なしだと思います。ですから、2つの国というのは、国別援助計画としては異例だと思いますが、それがいいモデルという形に是非なってほしいという意味で期待をしております。 |
(渡辺議長代理) | 石井さん、何かあればお願いします。 |
(石井主査) | 今、千野先生から貴重なコメントをいただきました。今日はあえてお話ししなかったのですけれども、カザフとウズベクでは、日本の援助に対する姿勢、温度差がありまして、ウズベクのほうがはるかに期待している。カザフの期待度はそれに比べると低いです。おっしゃるとおり、両国がライバル関係にあるということはタスクフォースの中でも承知しておりますけれども、そういうことを踏まえて案の作成に取り組んでいきたいと思いますので、またご指導いただければと思います。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。 上村経済協力政策課長から「国際協力50周年」についてのご報告がございます。資料6を参照されながらお聞きいただきたいと思います。 |
(上村政策課長) | それでは、資料6に、過去11月の末まで3か月間にわたって行ないました国際協力50周年記念事業についての簡単な取りまとめをさせていただきました。 詳細には及びませんが、この総合戦略会議の委員の皆様方にも大変ご協力をいただきまして、結果的に、2.にありますように、さまざまなイベント、動員数ということで、所期の効果は発揮できたものと思っております。本当にありがとうございました。 これで終わったわけではございません。3点ほど申し上げたいのですが、1つは、公共事業と並んでODAを削減すべきだという国民の皆様の基本的な考え方は全く今の状況でも変わっておりませんので、来年、再来年に向けても、国際協力50周年記念事業で得た教訓を対国民広報という格好で生かしていきたいと思っています。 そのためには、2つ目ですけれども、我々外務省員として、あるいはODAを担当する各省の皆様を含めまして、政府ODAとして、説明責任はちゃんと果たしていくということです。より透明性を高める、ウェブサイトでいろいろなものを国民に問うていく作業を進めていきたいと思います。 3つ目でありますけれども、私は間接話法といいますか、政府がそのまましゃべる、広報するという発想だけではなくて、まさにこういう総合戦略会議の委員の皆様、あるいはJOCVのOBですとか、あるいは民間評価モニターに出た方々の声を総合的に使って、草の根まで届けていきたいと思います。 それを申し上げるのは、来年度の予算編成が今大詰めを迎えておりますけれども、例えば広報予算については大幅な削減を示唆されておりまして、趣旨は、政府がやる政策をなぜ政府がお金を使って広報する必要があるのだという論争まで至っておりますけれども、厳しい行財政改革の中で、我々も削減すべきところは削減する、そして工夫するところはするということでやっていきます。これから国別計画や中期政策とあわせまして、国民の皆さんに対する周知徹底、あるいは理解を得る作業につきましても、委員の皆様方のご協力とご理解をいただきたいと思います。ありがとうございます。 |
(渡辺議長代理) | 上村さん、ありがとうございました。 |
(磯田委員) | 今との関連で、例えば評価の予算、つまり、私は国民の支持がなかなか得にくいのは、単なる広報というよりは、きちっとした評価をして、みんなが評価結果を目にできるという、それがきちっとした仕組みとしてあったほうが、単純な広報よりも信頼は得られると思います。その評価についての外務省としての体制とか、あるいは予算、こういったところはどういうふうに対処される予定でしょうか。 |
(上村政策課長) | 来年度予算の仕上がりがまだ金額としては全然見えてきていません。基本的に、事務費とかそういう経費については大変厳しい査定をされる見込であります。ただ、それは金額として出てきておりませんけれども、今のご指摘につきましては、私が先ほど触れましたとおりです。政府としてやっていることを、確かに評価ですとか、そういうことをちゃんとお金をつけてやって、そして国民に広報するということにつきまして全く異論はないし、そういうことを是非やっていきたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。最後に2点申し上げます。 1つは、きょうの議題にはございませんでしたけれども、花田主査にお世話になった対モンゴル国別援助計画、浅沼主査にご尽力いただきました対インドネシア国別援助計画につきましては、11月15日に対外経済協力関係閣僚会議が持ち回りで開催されまして、政府の計画として既に決定されております。 もう一つは、次回の会合でございます。年が明けて中旬を予定しております。忙しい時期だろうと思いますが、何とかこのあたりで中期計画を最終案にまで持っていきたいのであります。予定では1月中旬でございます。事務局で調整をしてもらいます。 今日は大変長時間ありがとうございました。それから、作業方針を報告された先生、平島先生の最終報告、本当にありがとうございました。 以上で閉会とします。 |