ODAとは? ODA改革

「ODA総合戦略会議」第17回会合・議事録

1.日時

 平成16年9月27日(月)9:30~12:00

2.場所

 外務省南庁舎 893号室

3 出席者

 ODA総合戦略会議委員(小島委員は欠席)。外務省(事務局)より広瀬経済協力局審議官他が出席。関係府省、JICA(国際協力機構)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加。

4.議論の経過

(議事の概要)

(1)中期政策の論点整理に関し、タスク・フォース(草野委員(主査)、荒木委員、磯田委員、小島委員)の報告を受けて、意見交換を行った。
(2)対モンゴル国別援助計画の最終案について、花田 麿公(はなだ・まろひと)主査(前駐モンゴル大使)の報告を受け議論した結果、戦略会議としての了承が得られることとなった。
 対タイ国別援助計画について、末廣 昭(すえひろ・あきら)主査(東京大学教授)より、作業方針の報告があった。
 対ガーナ国別援助計画について、大野 泉(おおの・いずみ)主査(政策大学院大学教授)より、作業方針の報告があった。
 新規対象国の作業の現状と予定について、事務局より説明があった。対フィリピン、対ウズベキスタン・カザフスタンの国別援助計画の主査については、それぞれ吉田 恒昭(よしだ・つねあき)東京大学教授、石井 明(いしい・あきら)東京大学教授に依頼することで了承が得られた。
(3)事務局より、(イ)平成17年度外務省ODA予算概算要求、(ロ)ODA白書2004年版(案)、(ハ)国際協力50周年について報告があった。


(渡辺議長代理) 皆様、おはようございます。ただいまから、「ODA総合戦略会議」第17回会合を開催いたします。
 本日の議題ですが、第1は、ODA中期政策について、草野委員が主査を務めましたタスクフォースによる論点整理の作業が終わりましたので、この作業を踏まえまして本日は議論を行います。
 第2は、国別援助計画でございます。これにつきましては、4つのテーマがございます。
 議題(3)として、かねてよりお願いしております花田主査から報告をいただきます。対モンゴル国別援助計画の最終案について、これを了承していただきたいと考えております。(ロ)は、東京大学教授の末廣昭主査から、対タイ国別援助計画の作業方針についてのご報告を簡単にいただければと思います。(ハ)は、政策大学院大学教授の大野泉主査にお願いしております。大野先生より、対ガーナ国別援助計画の作業方針についての報告をいただきます。(ニ)ですが、対フィリピン、対ウズベキスタン・カザフスタンの国別援助計画の主査をそれぞれ、フィリピンについては吉田恒昭東京大学教授、ウズベキスタン・カザフスタンについては同じく東京大学教授の石井明先生にお願いすることになっています。これらを含めて、新規対象国の作業、今後の予定を事務局から説明していただきます。
 3番目は事務局からの報告です。3点ございまして、まずは平成17年度外務省ODA予算概算要求について、次にODA白書2004年版の案について、最後に、国際協力50周年についてです。
 開催に先立ちまして、もう1点申し上げたいことがございます。前回の会合において、今後、米山委員と関山委員の2名にご参加いただくことになったことについてお知らせしましたが、本日、米山委員が初めてご出席になられましたので、米山委員から自己紹介を賜れればと思います。お願いいたします。
(米山委員) おはようございます。ただいまご紹介いただきました小松製作所の米山と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本会議は初めてでございますので、いろいろと勉強させていただきたいと思っております。加えて、私は民間の立場でございますので、勉強をさせていただいた上で率直な意見を言わせていただければ幸いかと思っておりますので、ひとつよろしくご指導のほどお願いいたします。
(渡辺議長代理) どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは議題に入ってまいりたいと思います。最初の議題は「ODA中期政策の論点整理」でございます。7月に開かれましたこの戦略会議におきまして、草野委員を主査といたしまして、荒木委員、磯田委員、小島委員の4名をメンバーとする論点整理タスクフォースが立ち上げられました。その後、7月末から9月中旬にかけまして、計6回の会合を開いて激論を重ねてきたと聞いております。4委員におかれましては、この中で議論を尽くしていただき、総合戦略会議を代表して改めて御礼を申し上げたいと思います。
 本日の会合では、論点整理に関する意見交換を行います。そして次回の会合では、具体的な案文についての議論を行いたいと思っております。
 草野委員の報告に入る前に、兒玉経済協力審議官から中期政策の策定方針に関する関係省庁との協議についての説明をいただきます。それに続いて草野委員から論点整理の結果を簡単に報告していただきます。その後に意見交換を行いたいと考えております。
 まず、兒玉審議官からご発言をお願いいたします。
(兒玉経済協力局審議官) 今、お手元の資料1-1、資料1-2が、本日の最初の議題であるODA中期政策の策定に関する席上配付資料でございます。私からは、資料1-1についてご説明します。ただいま議長代理からお話がございましたように、7月22日に開催された前回の会合の場でこの中期政策の策定に関する論点案というものをお示ししてタスクフォースが立ち上がったわけでございます。その後、新ODA中期政策の位置づけについて、各省庁ともう少し議論を詰める必要がございまして、種々議論した結果、今お手元にお配りした資料1-1のとおりとすることで一致が得られたということでございます。
 お手元の文章をご覧いただきたいのですけれども、第1点は、中期政策の位置づけでございます。3.をご覧いただきたいと思います。そこで特に (2)に書いておりますけれども、考え方として、「新たな中期政策は、ODA大綱の内容のうち、内外の情勢を踏まえて、考え方や取り組み等を国内及び国際援助コミュニティに対してより具体的に示すことが特に必要とされる事項を中心とした文書とする」ということで、一応一致が得られております。
 第2に、それでは中期政策において取り上げるべき重点事項はどうするのかということでございますが、それはこれまでご議論いただいたことでもございますが、最上位規範であるODA大綱との整合性を確保することは当然でございます。その必要性も踏まえまして、ODA大綱で定められた4つの重点課題をすべて取り上げることが適切であるという結論に達しまして、別添1の論点(案)の3.のところに、 (1)貧困削減、 (2)持続的成長、 (3)地球的規模の問題への取組、 (4)平和の構築という大綱の重点課題とそのまま同じものを列挙しました。
 この点について一言補足しますと、7月22日の第16回会合で外務省からお示ししたものは、成長を通じた貧困削減と平和の構築の2つを、実際には 2.5といいますか、3といいますか、そういう形で絞り込んでご提示したわけですけれども、各省庁との議論の中で、今申しましたようなことで、やはり重点事項については大綱のラインを遵守すべしということで、こういう形にしたわけでございます。
 それから第3点ですけれども、この4つの重点課題に対処するに当たっては、「人間の安全保障」の視点は前回から変わっておりませんけれども、もう一つ、各省庁との議論で提起されたのは、「人間の安全保障」の視点というものは、実は大綱の中の基本方針の一つでございましたが、大綱の基本方針を踏まえるべきことも当然でございますが、今回の新中期政策の中では、「人間の安全保障」の視点を特に取り上げて記述する関係で、基本方針のその他のものについてどう取り扱うかが議論になりまして、その帰結として、別添1の注)のところに、「これら重点課題に関する記述においては、ODA大綱の基本方針である開発途上国の自助努力支援、『人間の安全保障』の視点、公平性の確保、我が国の経験と知見の活用、国際社会における協調と連携を適切に記述する」という形で手当したということでございます。
 以上申し上げましたような方針に基づいて、中期政策をできるだけメリハリがあるものにしたいということで、一応、全省庁との協議の合意が出来上がっております。そうしたことが、前回の総合戦略会議以降そういう動きがございましたので、同時並行の部分が冒頭に若干ございましたけれども、草野委員をはじめとするスタク・フォースの4委員の先生方に、そういう若干の変更をフィードバックさせていただいて、それを受けてタスクフォースとしての6回の会合によって論点整理が行われたということでございます。
 以上でございます。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。
 続いて、草野委員よりタスクフォースの論点整理の結果について報告をいただきます。
(草野委員) 慶応大学の草野でございます。兒玉審議官から既にご説明いただいたことと重複する部分もあるのですけれども、一、二申し上げたいと思います。
 今回は、大綱がかなり詳しい内容になっているので、前回の中期政策とは違って「選択と集中」ということで書きたいという基本的な方針がございました。そこで、前回の中期政策の策定においては、かなり絞り込んだ形で、「成長を通じた貧困削減」と「平和の構築」、それとは別に「人間の安全保障」、ここを重点的に書くということで話を進めましたが、途中の段階で地球規模の問題も重要ではないか、あるいは、経済成長というものは別に書くべきではないかというご指摘や、また「持続的成長」について、やはり別に言及するべきではないかというご指摘があり、我々もいろいろと議論いたしました。もともとの案でも、「貧困削減」だけを強調するのではなくて、「成長を通じた貧困削減」ということで、「持続的成長」も視野に入れて議論していたわけですし、それから、地球的規模の問題、特に環境、これはこれから非常に重要な課題になっていくという点でのご指摘も、そのとおりということで議論いたしました結果、今日お配りしております資料のような形になったわけです。
 「人間の安全保障」に関しては、基本方針のほうで大綱の中で述べられているわけですけれども、「人間の安全保障」は、今までのODAの議論については、前回の大綱を含めてほとんど言及がなかったということで、これは通奏低音的に、あらゆるプロジェクトに、どのようなプロジェクトにおいても「人間の安全保障」的観点が必要だろうということで、別立てで書くことになりました。
 同じように「平和の構築」は、前回の大綱あるいは中期政策の段階では、まだ明示的に議論がなされていない部分でしたので、これを書くこととなりました。
 そして、既に皆さんのお手元にあるようなペーパーになったわけですけれども、一つだけ、構成についての特徴を申し上げておきます。3段階方式になっていて、まず考え方が示され、アプローチ、具体的取組となっております。具体的な取組となりますと、国別援助計画とどういう整合性があるのかということで、これもかなり議論がございましたが、基本的には、考え方とアプローチがこの中期政策の目玉ではないかというコンセンサスができたような気がいたします。
 我々としては、先ほどの各省庁からのご指摘もあったわけですけれども、もう一度お読みいただければおわかりのように、「選択と集中」、メリハリという点で「貧困削減」、「平和の構築」という点について、やはり内外に日本政府としてはその点が重要だというメッセージを発したほうがいいのではないかという書きぶりになっています。
 効率的な援助を進めるという部分については、別途現地タスクフォースに特化して書いてあります。これは、大綱でも効率性ということが強調されている中でいろいろ言及している部分がありますが、現地タスクフォースについて、ODAがこれからますます重要な役割を果たすだろうと。その点について、既にこれまで議論を積み重ねてきたわけですけれども、それを整理する形で、現地タスクフォースについて別項を設けて記しました。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。
(青山委員) 大変周到な議論をしていただき感銘を受けました。この中期政策の位置づけについていろいろと議論されたようですが、達成目標についてはまだ一致を見なかったとの記載があったと思います。中期政策とするからには、大綱の内容の説明にとどまらず、ある程度の目標のようなものを入れたほうがよいのではないかと思います。3年、5年というスパンでどれくらいのことをやりたいということが入ったほうがよいのではないか、その方が政策として明確なのではないかと感じました。MDG(ミレニアム開発目標)に言及すべきことでは一致したと論点整理の中にありましたけれども、MDGは、どちらかというと、本当に貧しい後発開発途上国に向けた内容になっていると思います。したがって、成長を通じての支援をしていくときには、自助努力を強調することのできる少し進んだ国に対しても、日本の援助としての目標を設定していく必要があるのではないかと思います。MDGはもちろん重要ですけれども、そういう目標だけを考えていくと、なかなか日本らしさが出せないかもしれないと思いました。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。
 それでは、牟田委員、大野委員の順にお願いします。
(牟田委員) 大体のところにつきましては非常によくまとめてあると思います。評価に関してですが、効果的及び効率的援助の実施に関して、現地機能の強化ということに触れておりまして、これはそのとおりだと思いますけれども、評価に関しても、援助の実施計画が現地に機能を移すということであれば、評価についてもかなりの部分を現地に移す、現地機能の強化の中に含めるべきだろうと思います。今の評価のあり方は、すべて日本で仕切って、日本から評価団が行くようなやり方をしているわけですけれども、企画や実施が現地にかなり移るということであれば、評価についても、ある部分については当然現地に移ることが適当ではないかと考えて、現地機能の強化の中で、その評価についてもメンションをしていただければいかがかと思います。
 効果的・効率的な援助について評価の充実が大事だということについては、どなたもご反対の方はないと思いますけれども、評価をすれば、自動的にODAが改善されるわけではありませんで、評価をした結果が次の援助に生かされるといった仕組みをもう少し強化する必要があると思います。評価だけでそのODAが改善されるわけではありません。評価した結果が生きるような仕組みをどう考えていくかということが大事で、そういう点についても中期政策の中で触れていただき、評価が役に立つものになるようにお願いしたい。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。
 大野委員、伊藤委員、お願いします。
(大野委員) この文書の目的とか性格がまだ十分にわからないところがあるのですけれども、これは解説文書なのでしょうか。つまり、ODA大綱が全てであるけれども、わかりにくいところを解説すべき文を書こうとしているものなのか、それとも、青山委員がおっしゃったように、何か達成目標を追加的に入れてこの政策を縛る、プラスアルファしてそれ以上のものをつくっていくことが目的なのかということがよくわかりません。もし解説文書だとすれば、それほど目くじらを立てる必要はないけれども、追加的に何かODAの政策を決めていくことであれば、一つ申し上げたいことがあります。
 重点事項4つをもう一度入れ直したということで、それはいいと思います。というか、何をODAの政策にするかというのは、ODA大綱の議論で大きいところが決まっているので、後で敗者復活とかもう一度議論し直すとか、そういうことではないとすれば、当然、いろいろな省庁の方がODA大綱の違う項目なのはおかしいとおっしゃるのは当然のことで、僕もそういう理解でした。
 そうすると、「人間の安全保障」と「平和の構築」がこれまで特に議論されていない新しいテーマだから書くということも、解説文だとすればいいのですけれども、もし、それが詳しく政策を決めていくことになるのでしたら、別に「人間の安全保障」と「平和の構築」だけが新しいことではない。アフリカだって、東アジアだって、あるいは、世界の貧困アプローチだってどんどん変わっていまして、それを今までに大綱に書いてきたとはとても言えないと思いますから、なぜそれを選ぶのかという議論になると思います。
 だから、もし政策でないのであれば、政策ではなく解説文であるということでやっていただきたいし、そうでないのであれば、ODA大綱の議論を蒸し返すことになってちょっとおかしいのではないかと思いました。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。
 伊藤さん、お願いします。
(伊藤委員) 私の質問は、少しテクニカルなことだったものですから、この一連のご質問の流れから外れるかなと思いますので、また後ほど質問させてもらえればと思いますが、それとも、この場では質問だけどんどんしていくということでよろしいですか。
(渡辺議長代理) 論点整理そのものに対する議論は、今日はひとまずにして、後は、外務省で、今日の議論をもとに新しい案文をつくって、それをまたここに開示するという形になりますから、短い時間ではありますが、おっしゃりたいことは言っていただいたほうがよろしいと思います。
(伊藤委員) 7ページのIVの「効果的及び効率的援助の実施に向けた方策について」とありますよね。これの2.ですが、「効果的及び効率的援助の実施に向けた取組みについて」の (2)の中に、現地タスクフォースのことが触れられております。この中に、現地のNGOの参加もうたってありますけれども、やはり国民参加という視点から、日本のNGOもここに参加する体制があってもいいのかなと感じましたので、ご提案したいと思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。その他に意見がございますか。
(砂川委員) 私は、援助の一貫性という観点から申し上げたいと思います。
 ODA大綱と国別の援助計画の間に位置するのが、いわゆる中期政策だと思います。今までを見てみますと、大綱と援助計画の間にギャップがあるように思います。どういう点かということですけれども、人間の安全保障と、例えば4つの重点事項を国によってその扱い、ウエートが変わってくるのではないかと思います。そのウエートを変えて国別援助の中で十分にそしゃくしていくことを、いわゆる中期政策等をガイドライン的に行っていくことが必要ではないかと思います。さらに、国別援助計画では、その後それを実施する段階において、どのように実施していくのだということを、国別計画の中でなるべく書くようにという指示を中期政策でやっていったらどうかと思います。
 それに補足してもう1点申し上げますと、国別援助計画というのは、恐らく、この20ヵ国、あるいは25ヵ国ぐらいだろうと思いますが、もちろんそれ以外の国にも援助しているわけで、その場合に国別援助計画がない国についての援助方針をどのように立てていったらいいのかということを中期政策でカバーできれば、大綱と国別方針の中で座りがいいのではないか、ガイドライン的な役目を果たすのではないかと思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。
 関山委員、浅沼委員の順でお願いします。
(関山委員) 一つ確認しておきたいのですが、政府開発に関する新中期政策策定についての案ですが、まず、ODAの新大綱が中期政策の上位にあることを確認させていただきたいことが一つ。
 これは大野先生から指摘があったと思いますが、私も、中期として5年は長いのかなという感じが若干しています。機動的な見直しを適宜望むことから、見直しに関しても制度的な仕組み、定期的なレビューの実施、委員会の設置等を考えてみてはどうかと思います。
 それから、論点整理のIII「重点課題」の貧困削減に関してですが、現在進められている世銀とADB、JBICによる共同調査がありますね。すなわち、東アジアのインフラ整備ということですが、インフラ整備が貧困の削減に資するかどうかのスタディ結果ということですけれども、そういったスタディ結果も注目に値するので、反映してもいいかと思います。
 それから全体観ですが、これまでの議論で改定ODAに触れられている東アジア重視、経済インフラ、人材育成等の重要性・緊急性、こういうことが十分に触れられていないという印象を受けまして、これは非常に残念だと思っています。
 それから、世界は欧米を中心に経済のブロック化が図られていますけれども、東アジアの経済統合は遅れていて、アジアでは中国、日本によるFTA、経済連携協定の交渉がようやく進められたということです。こういった経済連携を進めるには、後発のASEAN加盟諸国、こういった域内の経済格差の解消・是正が早急に必要だと思います。また、アジアの経済危機を完全に克服していないフィリピンとかインドネシア等の経済インフラの支援、人材育成を中心にハード・ソフトの両面からODAで支援することが緊急の課題でありまして、この点を中期政策で是非触れてほしいと思っています。
(浅沼委員) 私からは、今度これを文書に落とすときの書きぶりに関する要望です。私自身は、この中期政策は、大綱と国別の間に来る一種の納税者に対する提案書であり同時に請求書であると考えています。従って、ここで中期政策として出てくるもので、ODAで一体何をやるのか、だから予算が必要だということを、なるべくわかるように書いていただくとありがたいと思います。その意味で、「考え方」と「アプローチ」、それから「具体的な取組」という3段階で具体的に書いてあるのは大変いいことで、かつ、その中で「人間の安全保障」に関しては具体的な取り組みが無いことも大変いいことだと思います。「人間の安全保障」というのは考え方の問題ですから、一つの政策をプログラムに落として、プログラムをプロジェクトに落としてというプロセスには適さないものですし、単なる考え方で、それはそのように強調していただきたいと思います。
 第2に「重点課題」のところですが、この裏には地域的な重点的な考え方が隠されているわけですよね。明示しないのは結構だと思いますが、それに即した上で、例えば「貧困削減」に関しては、東アジアでは少なくとも持続的な経済成長による貧困削減という戦略が取られ、成功してきたわけですから、その辺に注目して「貧困削減」と言われる具体的な取り組みだけで貧困削減をやろうとしているのではないと。むしろ主軸は「持続的な成長」にあるというところは強調していただきたいと考えております。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。米山委員、どうぞ。
(米山委員) 今日が初めてなので、若干ずれているかもしれませんけれども、この資料を読ませていただいた感想を言わせていただきたいと思います。
 メリハリをつけて絞り込む手法は結構なアプローチだと思います。元々ODAというのは、私の理解では、国の外交ツールだろうと割り切っていますし、そういう形で国益というものを前提にして考えるべきだろうと思います。その中で考えた場合、4つの絞り込みのアプローチの中で、人間とか教育の問題、人材の強化みたいな話、そういう問題が基盤にあるのではないかと思います。「貧困」とか「安全保障」というと抽象度が高いのですが、そういう中に入っていればいいのですが、もう少し横の切り口で、人材の強化、教育の問題に積極的に取り組めると思います。
 かつては日本にも、日清、日ロの戦争が終わった後、東南アジアの留学生等もたくさん来ていたわけですが、今や日本離れが進んでいる。そういうことを考えた場合、お金を援助する形も結構ですけれども、人とか教育という観点で、もう少し強化すべきではないかと考えます。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。
 大体ひと当たりご意見をいただいたようですが、私からもよろしいでしょうか。
 議論の経緯はずっと伺っていたのですが、こうやって文案化されたものを見て、私自身が、座長としてというよりも個人として、どうしてこういう項目が入るのかなと感じたところだけ申し上げておきます。
 2ページ目の「『人間の安全保障』の視点について」の第4項目です。先ほど浅沼さんがおっしゃったことが私の心に響いたのですが、「人間の安全保障」というのは、言ってみれば哲学と申しますか、全体に通じる物の考え方の問題ですね。ですから、「考え方」はそういう意味では重要ですけれども、あえて (4)が入っていることの意味が、いいとか悪いとかではなくて、不明です。つまり、うまく理解できないということを申し上げています。 (1)でも「人間を中心」、 (3)でも「人間中心の視点」と言っているのですが、 (4)になると、そこから以上はちょっと進まないんです。そこら辺を胃の腑に落とすような表現に直していただけると、つまり私の理解を助けてくれるとありがたいということを、私も個人としてコメントします。
(伊藤委員) 実は、私も、今、渡辺議長代理がおっしゃったことを疑問に思いました。この (1)の「人間の安全保障」についての考え方、 (4)は違うのだという指摘ですけれども、この辺はわかりづらいという感じがしましたので、もう少しきちんと説明する必要があるのではないかと思いました。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。
(兒玉経済協力局審議官) 私からは、それぞれの先生方から貴重なコメントをいただきまして、事務方としましても、今ご指摘いただいた点をよく踏まえて、原案作成に入っていきたいと感じた次第でございます。
 1点、大野先生がおっしゃいました、3層構造の中で、この新中期政策でやろうとしている成果物は、解説文なのか、はたまた達成目標を入れたという意味においては何か新しい文書をつくる、そういう性格のものになるのでは話は別だと思うというご指摘があったと思います。政府サイドとしましては、私どもの考え方として、その中間と言うと不正確な物言いかもしれませんが、私どもは、解説文書ではなく、大綱という包括的な一番上位の概念を整理した文書があって、それを読んで、ほかの先生からも若干ご指摘がありましたけれども、国別援助政策に全部をどうやって落とすのかというところにおいて、やはり指針が必要なのではないか。それは、解説だけではなくて、そこで、最上位で整理されたものを、具体的に議論を詰めて政策次元に落とすための議論といいますか、付加価値をつける、そういう作業が必要で、それが恐らく、この新中期政策に期待されていることではないかと思っておりますので、それがこの論点整理の中で取り上げられていると考えている次第でございます。
 「人間の安全保障」の先ほどの渡辺先生のご指摘の腑に落ちないという点については、私どももそこは反省しなければいけないかと思いますが、政府サイドからのことで、これを敢えてここに、私どもとして大事だと思いましたのは、安全保障の視点というのは、我々としては日本の政策的な売りだと思っていて、来年に向けても大いにこれをプロモートしていきたいと。かつ、実践面でもこれを徹底したいと思うにつけ論点の整理が必要だと思うのですが、他方で、国際条理で、国外ですと、カナダとかは、ここに書いてありますように、人道介入という部分での考え方を押し出しているところがあり、それに対して開発途上国の側が、例えばインドなどがそうですが、かなり反発をしているということがあります。つまり、私どもがやろうとしている「人間の安全保障」の考え方、日本の考え方はわかるけれども、しかし、カナダとかほかの国はこう言っているよと。同じ概念がそういう形で使われると、自分たちとしては警戒せざるを得ない部分があるということが、今、相当、私どもの現場でも起こっているということがあるものですから、それをあえてこの場でお出ししておいたほうがいいのかなと。私どもの立場はそういうことでございました。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。
 では、草野さん、お願いします。
(草野委員) 付け加える形になるかもわかりませんけれども、アジアのことが入っていないという話ですが、当然タスクフォースでもその議論を入れたほうがいいのではないかという問題提起をしたのですけれども、結局このODA大綱が上位概念としてあって、「選択と集中」あるいはメリハリをつけたという観点から考えると、敢えて「アジア」と中期政策で改めて言う必要はないのではないかという結論に至りました。
 それから、私が新ODA大綱をつくるプロセスでも、その点を強調して、我々が今までアジアに対して、特に東アジアにおいて行ってきたODAの成果について書き込むべきであるということを主張して、入った経緯があります。そういう点からしますと、敢えて中期政策では、それが重要ではないという意味ではなくて、「選択と集中」という点から繰り返す必要はないだろう、当然のことだろうということで、一応入れなかったということでございます。教育、人材育成に関しても同じでございます。
 実は、「選択と集中」で「貧困削減」が重要になったのかという点についての説明が若干しておりましたので付け加えます。MDG(ミレニアム開発目標)が2000年に出されまして、来年2005年は、5年目にあたります。現在のところ、1日1ドル未満で暮らす人々の割合を半減するとか、幾つかの目標がありましたけれども、そのうち今のところ順調に進んでいるのは、初等教育を完全に普及させることぐらいで、他の目標は、目標はほとんど達成できないだろうと言われている中で、各国とも一生懸命にやらなければいけないという国際的なコンセンサスがあります。他方、DACの対日審査が昨年行われて、その中で、日本はODAを一生懸命にやっていて、いいこともたくさんやっているけれども、貧困削減に関しては不十分ですねと言われています。そういう点から、つまり、国際的に日本の姿勢を示すという外交上のツールとしての文書という位置づけからすると、「貧困削減」を強調することは意味があるのではないかと思っております。まさにそれは国益につながるのではないかということでございます。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。
(伊藤委員) 兒玉審議官に質問させていただきたいのですけれども、「人間の安全保障」は、お立場はわかりますが、国家の安全保障、人間の安全保障は要するに国家が認めない限りは日本のODAはそこには立ち入らないと解釈してよろしいですか。
 今はそうではないのですけれども、結局イラクの場合も国家の枠組みの中で、人間の安全保障上問題があるところに日本のODAを出したいといった場合には、今までは要請主義で、向こうの政府の言いなりになるというか、応えてODAを出していましたけれども、これから日本の政府と向こうの政府が協議をして出すという方法に変わってきたと思います。そうしたときに、国家を主体にして考え、人間の個人的な安全保障は第2であるという考え方で理解してよろしいですか。
(兒玉経済協力局審議官) 私が先ほど申し上げた趣旨は、まず、1.の (4)にこういう記述があるけれども、その背景説明ということで申し上げたつもりでございます。
 それから、「人間の安全保障」の視点をどう確保するかということについて、もちろん、今のイラクとかアフガン、スリランカ、東チモール、いろいろなケースがあって、いわゆるフェイリング・ステートとかフェイルド・ステートというような形で、実際に相手国の主権がそこで機能していない、あるいは、混乱状態にあるときにも、援助をどういう形で行うかという問題意識は当然あるわけでございまして、我々はそういう中で、「人間の安全保障」の考え方をどう整理していくかということを整理していく必要があるということで申し上げたつもりでございます。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。ここのところはデリケートな問題を含むと思います。
(磯田委員) タスクのメンバーでありながら言うべきではないかもしれませんけれども、何人かの方からご指摘があったように、やはり政策目標としてどうなのか、それからその評価あるいはレビューをするにしても、そのメカニズムをどうするかということがほとんど触れられていません。私もその点は非常に気になっているところでして、具体的な達成目標として数値目標を書き込むことが難しいことは理解しますが、この中期政策の政策文書として、それをどう評価できるのか、説明責任をどう果たすのかという部分につながる何らかの仕掛けをうまく盛り込む必要があると思います。今どきつくる政策文書が解説文のように、アドバルーンということ、あるいは、ほかの国にアピールするだけのものではいけないと思うので、それはタスクの中でも何回か申し上げてきたのですが、いい知恵がなかなか出なかったということもありますが、それは是非入れていただきたいと思っています。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。私が伺っていても、実にポイントを突いた貴重なご意見がたくさん出たと思います。今後は今日のご議論を踏まえた上で関係省庁との調整が必要です。その調整を踏まえて外務省案がつくられることになります。この外務省案につきましては、11月初旬に次回の戦略会議が開かれる際に、事務局から提示されますので、それに基づいてさらに議論を深めたいということです。これについてのご意見は遠慮なく事務局のほうに積極的に出ししていただきたいと思います。取り入れるべき重要な意見があれば、考慮させていただきます。
 次に「国別援助計画」に入らせていただきます。まず、対モンゴル国別援助計画の策定についてです。花田麿公前駐モンゴル大使より最終案という形で報告をさせていただきたいと思います。
 皆様お気づきのように、このモンゴルの援助計画につきましては、メンバーの皆様に事前に資料を送付してございますので、お目通しいただいたと思います。既に何人かの先生からは事前にコメントもいただいております。そして、それを本最終案に反映させております。
 そのような経緯を若干申し上げた上で、花田先生、ご報告をお願いします。
(花田主査) モンゴルの国別援助計画の主査をしております花田でございます。本日、最終案を皆様にご報告申し上げて、ぜひご承認願いたいと思います。
 本年2月4日に中間報告を申し上げ、その際、委員の諸先生よりたくさんのコメントを頂戴しました。コメントを踏まえまして、 2月10日前後に、第1次案ワーキング・ドラフトを完成し、中間報告時点で、脊戸先生のご指摘もございましたので、私どもは、より完成度の高いものをという観点から、じっくりと年度を越えての作成に取り組みました。本日、最終報告の運びとなっております。
 東京・ウランバートルにタスクフォースを組織しましたが、外務省が主要戦力となってくれまして、また、モンゴル専門家が参加してくれました。さらに、常時、JICA、JBICがメンバーだったことが大変な戦力となりました。
 我々は長年の研究と昨年の現地調査、それから委員の先生方のご助言を踏まえまして、第1次ドラフトを完成したのですが、同案によって4月初め、砂川先生と私は、東京タスクフォースとともに、日本のモンゴル関係NGO、先ほど浅沼先生からご指摘がありました日本のNGO、各省と熱い協議をしました。その結果を携えて、会計検査直前でてんてこ舞いのモンゴル現地タスクフォースをわずらわせ、4月に再度、大規模な現地検証を実施しました。
 4月の訪問時には、現地タスクフォースとの摺り合わせはもちろん、オラーン財務経済大臣、エレネチョローン外務大臣、関係各省の副大臣全体との協議、財務経済省との摺り合わせ、商工会議所等現地対日関係機関、民間・国営企業各社、NGO、日本関係要人、企業人、日経企業等々の幅広い層の意見聴取と、彼らから情報収集を行いまして、帰国後、第2次案、そしてこの最終案たる第3次案までこぎつけました。
 この間、予想されたことではありますが、本年はたまたま選挙の年に当たり、選挙が6月に実施され、76議席中、与野党が36議席ずつ取り拮抗しているため、いずれが政権を担うかでもめ、挙げ句の果てに与野党の連立政権となりました。前の与党の党首エンフバセルが議会議長となり、野党が首相をとりました。まだ組閣ができておりませんが、エルベグドルジ首相は、川口外務大臣が今月初頭にモンゴルを訪問された際、新政権の対日外交に変化がない旨、また、我々の計画の内容、特に4つの重点分野について、モンゴルの政策と一致している旨の回答を得ているそうです。
 そこで、モンゴルの新政権発足前ですが、今月15日にようやく各省合議を了しましたので、本日、この戦略会議に最終案としてお諮り申し上げる段取りとなりました。
 この間、ODA戦略会議の委員でもおられる砂川先生には、タスクフォースの一員として数々の有益なアドバイスをいただくとともに、モンゴルに関してかなり積極的にかかわっていただきました。この場を借りて感謝申し上げます。
 さて、本文ですが、お読みいただいているとして、主なポイントについて報告いたします。若干長文となっていますが、この計画は従来にない特徴を有しております。まず、大勢の方がモンゴルについて真剣に考え、熱い討論の末にたどり着いた姿がこの報告書でございます。かつて、対モンゴル政策で、これほど各方面の方々が参加し、熱い議論をして一つの文書をまとめ上げたということはございませんでした。それが1番の特徴です。
 次に、この文書の特徴は、世界で進められている経済統合、地域統合を見据えるまでには至りませんでしたけれども、北東アジア地域経済統合を視野に入れています。その意味で「戦略的」と言えます。
次に、モンゴルの開発の現状について分析し、各方面のコンセンサスを得ていることが第3の特徴です。
 これまでのモンゴル政府の政策、各ドナー、我が国の援助を分析して評価しているのが第4の特徴です。
 以上を踏まえまして、向こう5年間の我が国がなすべき重点分野を提案しており、内容がモンゴル側とシェアされているのが第5の特徴です。
 モンゴルの現状分析には異論も多々ございましたが、大方の見方ということで本文書に収れんしました。モンゴル側も、法務内務副大臣から、若干異論が出ました。市場経済移行時におけるモンゴル政府の民営化努力も評価してほしいというのが、その要望でした。そのように議論の過程で意見が種々出ましたが、こうして集約できました。そのため、経済状況に関しまして、項目の立て方にもさらなる工夫を中間報告以後いたしまして、「民営化」「金融部門」を項目として立てました。荒木先生のマイクロファイナンスのご指摘を踏まえてのことでもございます。
 磯田先生をはじめ、大方の先生のご意見と我々の検討とも一致し、都市も牧畜も手当が必要であるとして分析し、対策も提案しております。青山先生の社会開発の視点、都市と地方との関係について、さらに環境問題についても分析を深めました。そこで、開発上の特徴、政治状況、経済状況、生活・社会面の状況に分けて記述いたしました。
 次に、このような現状を踏まえまして、モンゴル政府、ドナー機関、ドナー諸国はどのような開発戦略をとって来たか、その動向を記述しております。小島先生のご指摘を踏まえまして、我が国のこれまでの援助の総括と評価を入れた内容となっております。また、モンゴルについてご経験の深い浅沼先生から、冬季の厳しい気候のリスクをカウントせよとの貴重なコメントを頂戴しましたので、最終案に反映させていただきました。
 そこで、開発上の目下の課題、モンゴル政府の開発計画、我が国のこれまでの対モンゴル援助、他のドナー及びNGOの対モンゴル援助動向、第10回モンゴル支援国会合の模様に分けて記述いたしました。
 我が国はどのような基本方針で対モンゴル援助をすべきかを考察いたしました結果、次の基本方針案を記述しております。やはり経済成長を通じて貧困削減はするということで、このためにモンゴルの自助努力は欠かせず、そのために支援をするのであるとの立場を鮮明にしております。その上で、地方経済の底上げ及び牧畜業の過剰労働力を他のセクターにおける雇用創出により吸収することを目指すべきとしております。
 モンゴルに対する援助の意義、ただいま申しましたような方向性を記述した後、向こう5年間をターゲットにした対モンゴル援助の重点分野といたしまして、(1)市場経済を担う制度整備・人材育成に対する支援、(2)地方開発支援、(3)環境保全と自然資源の適正利用、(4)経済関係促進のためのインフラ整備支援を記述し、そして最後に対モンゴル援助を実施する上での留意点に言及いたしました。
 最後に、多くの先生方から中間報告の時点で水についてのご心配をいただきましたが、水についてはモンゴルでは死活問題ですので、我が国はこれまでにも重点を置いて対策を実施してまいりました。1999年10月、首都の水道システムの抜本的リハビリを完成しておりますし、地方についても、特にゴビ地方を重点的に行ってきております。さらに、首都の水道についても第2フェーズが日程にのぼりつつあり、水については常に関心を払って対処しているところでございます。
 今回、特に新たに項目立てをいたしませんでした。今実施しているこのようなプロジェクトとは別に先方より向こう5年間のうちにさらなる措置があると期待されないためでございます。
 以上簡単ではございますが、最終案として報告させていただきました。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。大変なご尽力を得て、ついに今日の最終報告に至ったわけでございます。若干の時間を用意してございますので、今の時点でコメントをいただければ修文する余裕も若干ございますので、ご意見をいただければありがたいと思います。
 大野さん、どうぞ。
(大野委員) まず読んでみて、現状分析は15ページ分書いてあって、モンゴルの最近の情勢を知らない私にとっては勉強になるのですけれども、その後の5ページで、その中身や援助方針を書いていらっしゃるということで、分量的に言うと、もう少し日本の援助方針を多くしていただきたかったと思います。
 それに関連して、現状分析としていろいろなことを書かれていまして、最近のCGの動きまで書かれていますけれども、これと最後の5ページの援助の基本方針とどうつながるのかということがよく見えない。現状分析は、書けばどこまでも書けますけれども、やはり援助方針につながる取捨選択のことをやっていただいたほうがわかりやすいのではないかというのが分量についての点でございます。
 それに関して、例えば環境について都市環境の悪化はわかりますが、地方の悪化について、19ページに干ばつや雪害、砂漠化その他が起こっているのでと。これを読むと気象環境モニタリング情報整備をやるということなのか、それ以上に地方環境に対して何かプロジェクトをするのか、その辺がよくわかりません。もし環境を重点に置くならば、その中身までもう少し具体的に書いていただいたらいいのではないかと思います。
 3番目に、言葉で「北東アジアの統合の視点が入っている」とおっしゃいましたけれども、これは具体的にはどういうことでしょうか。僕がモンゴルについて関心を持っているのは、牧畜業というトラディショナルな生活のなりわいの立て方というものが、これからは一体どう位置づけるのかということです。高齢化して、中国なり北東アジアと統合していって、そういうような中でいずれは消えてしまうようなものと考えるでしょうか。それとも、もっと積極的に、こういう生き方がモンゴルの生き方であるのでしょうか。このことと、国際統合、輸出振興、輸入を積極的に進めるということとは整合的なのでしょうか。その辺の議論はあったのでしょうか。もしあれば教えていただきたいと思います。
(渡辺議長代理) 青山さん、どうぞ。
(青山委員) 大変詳細な分析のなされたペーパーを作成していただき、ありがとうございます。
 私も大野委員のご意見と少し似ていまして、いつもなら分析が足りないなどと言っていますが、今回の場合は、分析の部分が長くて数字が少し多すぎるのではないかと感じました。スリランカかどこかの国別計画では、たしか数字に関しては別表にまとめておられたと思います。こういう細かい数字を本文中に長く書かれるよりは、別表としてまとめられたほうが、より焦点が絞られるのではないかと思いました。最後のほうでガバナンスのことが述べてありましたけれども、モンゴルはたしか、ガバナンスやアカウンタビリティというところに、ちょっと問題があったところではなかったかと思います。ですから、このガバナンス・アカウンタビリティ・トランスペアレンシーということに、日本のODAとしてどのように取り組むのかということについて、もう一言ぐらい欲しいように感じました。
 最後は感想ですけれども、保健・医療の分野に関しましても詳細な数字をいただいて、正直なところ驚いた部分がありました。たとえば医者の数がこんなにも多いのにそれだけの成果があがっていません。移行経済の国は結構こういうところが多いと思いますが、公的医療サービスが肥大してパフォーマンスの悪い状況が続いているのではないかと思います。現在セクター全体を見直して戦略を策定しているという記載があったので、今後はもっと予防医学や公衆衛生を重視した支援をしていくとよいのではないかと、感想として思いました。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。千野さん、どうぞ。
(千野委員) 今のお二方のお話の延長線上にあることと、私は以前にもコメントで申し上げたことがあるかと思いますが、今日の花田先生の冒頭のお話、この援助計画についての特色、こういうお話をされると、この援助計画の活気性というものが頭にスッと入ります。ですから、それをどこかに生かせないのかなという感想を持ちました。やはり冒頭から各論に入るといいますか、それも大変緻密で、数字が多いものですから、どうしてもモンゴルについてそれほど知識がない人間には、そこで足を取られてしまうという感じで、モンゴルの援助計画を初めて画期的に行った意味がもう少し伝わってくる方法があってもいいのではないかと思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。荒木さん、どうぞ。
(荒木委員) 私は、よくできていると思います。基本的に市場経済化支援ということは、前からモンゴルについても市場経済移行の国についていろいろ言われていたのですけれども、これほど明快に市場経済化支援に照準を合わせていることは非常にいいと思いますし、それについての民間の人材育成についてもはっきりと、プライオリティの高いところで維持していることはそれなりによく理解できます。
 ただしよくあることで、民間の人材育成についてもそうですけれども、政府の民間資本なり、民間の活動を受け入れる諸制度というか、その政策というか、それが非常に不透明なところが市場経済化支援を対象とする国に多いものですから、その辺に対するきちんとした支援をもっと書き込んでみてはどうかということと、インフラの問題につきましても非常に重要で、インフラもやるべきだと書いているわけですが、経済活動推進の何を重点として経済活動を推進しているかという前後で、どういう分野のインフラを重点的にとりあえずやっていくというか、プライオリティまでつけるのは大変としても、少しその辺の段取りを書き込んだら、より一層具体的になるのではないかと考えました。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。関山さん、どうぞ。
(関山委員) 先ほど荒木さんの意見にも通じるところがあるのですが、17ページの「市場経済を担う制度整備・人材育成に対する支援」は、もちろん市場経済になりましたので、国を挙げて、確かに、初等教育とともに、市場経済化を担う専門的な知識を持った人材の育成は重要だと思いますが、JICAの日本センターがありますね、その活用も重要だと思います。実は、私は日本センター戦略会議の委員もしていまして、そういう形で、ベースがそこにありますので、JICAの日本センターの活用ということも述べていただければと思います。
 それから、先ほどの荒木さんの話にも通じるのですが、民間企業の対モンゴル直接投資の支援がここには書かれていないと思います。日本のプレゼンスは非常に低いと思います。というのは、過去ずっと最大のドナー国でありましたが、直接投資は1%程度だと思います。したがって、行政能力とか公的な整備も必要でしょうが、カシミア産業とか、銅・モリブデンと資源もたくさんある国ですし、そういった民間企業の対モンゴル直接投資の支援という観点からも多少述べていただければと思っています。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。
 花田先生、今のいろいろな議論をそのように受け取っていただければよろしいと思いますが、主として、書きぶりといいますか、文章の再編成のコメントが多かったように思います。これはテクニカルにできるところではないかと思います。そのほかにも2~3ございましたが、大体この基本的な線、花田主査のもとで書かれたこの報告書は、その趣旨については、大方の了承が得られた。ところが、一方、書きぶり、若干の問題点等が出されました。
 これはここで本格的に議論をし直す時間もございませんし、それほどのことではないと思います。そこで、今のような修文といいますか、再編成が必要かとも思いますが、その点については、議長代理と事務局に一任していただくということでよろしゅうございましょうか。
(砂川委員) 今の質問の答えをいただきたかったのですが、あえて私が代弁させていただきたいと思います。
 各委員からのご質問は、非常によくわかってのことだと思いますが、いわゆるモンゴルの実態というものを見た場合に、やや差があるのではないかという気がいたします。と申しますのは、90年初頭にモンゴルが、いわば解放されたわけですけれども、その当時のモンゴルは、ソ連邦の中にも入れないような、いわゆる最貧国だったわけです。それは、ほかの中央アジア諸国といわば同じですけれども、そのレベルが圧倒的に低かったのだと思います。したがって、ソビエトの援助に依存する度合いがものすごく高かった。それが一切ストップしてなくなってしまった。だから、全くの空白ができてしまった。そこに、西側からの支援ということで、やっと十数年たったわけですけど、90年初頭に、すぐに全面的にビッグバンをやって解放しますということを宣言したわけです。だから、社会主義から民主主義体制に全面的に、政治的及び経済的に移行するということで、そういう意味では優等生であった。そういう意味では、市場経済化に対する政府の意向は明らかにされたし、それに対する支援は非常に多くなされております。
 そこで、大野委員からのご質問に答えますならば、いわゆるそういう状態で、やっと今、90年初頭の経済レベルに戻った状態にあります。したがって、これからどうしていくのかというときに、絶対的な援助がもっと必要です。だから、それを重点的にやっていくという段階にはまだ至っていない状況があるのではないかと思います。したがって、貧困に対する後追いの支援もあるし、重点項目を、こういう成長路線をとっていく必要があるねという点もあるし、両方がなければいけないという点があります。
 特に、牧畜のご指摘がありましたが、牧畜はモンゴルにとって重要な産業であって、これなくしては成り立たない。牧畜そのものの一次産業的な意味ではなくて、牛なり羊なりの第2次加工、皮とかカシミア、そういうものが現地の製造業の基礎になっているわけですから、牧畜を排除することはおよそ無理である。
 それから、雇用を吸収するという観点からは、牧畜を残しては雇用を吸収できない。今、都市に行って戻されて、潜在的に過剰に人が牧畜に入っているわけですけれども、それでも何とか生きているというのが今の状況だろうと思います。したがって、今、牧畜をやめて次ものをということはほとんどあり得ない。少なくとも、5年、10年ぐらいはそれにきっちりと乗っかっていかなければいけないという感じがいたします。
 それから、北東アジアの地域的な視点というのは、将来を見据えて、資源というものがあそこにはあるので、それを開発してもらう。あるいは、観光というものがある。これをやるには、いわゆる周辺の国、国際的な社会の中に、地域的な視点が入っていかなければ、そういったところに投資をしてもらえないという観点があろうかと思います。
 話を戻しますと、したがって、やっと90年の状態になって、これからは成長を目指した政策がやっととれるような状態になったということであろうと思います。したがって現状分析に相当力を入れたのですが、向こうのデータがほとんど取れない、やっとここまで取れたという状態で、この現状分析は、そういう意味で意味がある。やっとここまで来たんです、ここなんですよということを説明している資料です。
 したがって、今後の方針が5ページ分しかないというのは、どうしても全面的な支援がまだ必要だねと。ところが、援助の資金がなくなっているから、もう少し援助の選択と集中をしていかなければいけない。だけど、そこに非常に悩みがある。そういう状態だと思います。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。
(委員) 先ほど千野委員が言われたことをサポートして、ぜひ、これは改めて調べたり分析したりする必要がないところですから、冒頭に花田さんが言われた5点の意義。せっかく国別援助計画をつくったのですから、読んでもらわなければいけないですし、読まれる、読みやすいという点では、例えばモンゴル側とシェアできたというお話がありましたけれども、この5点については、ぜひ冒頭のところでお書きいただいたほうがいいのではないかと思います。
 他の国別援助計画についても全く同じことが言えるのではないかということで、ここで申し上げておきたいと思います。
(渡辺議長代理) 大変失礼しました。今日はたくさんの議題がありますので、先ほどは急ぎすぎまして申し訳ありません。先ほどの時点で花田主査のご発言を求めなければいけなかったと思います。花田さん、よろしくお願いします。
(花田主査) それでは、私から一言。
 大野先生からのご質問を身にこたえて受けとめました。実は、私の関心は、モンゴルの牧畜をどうするのか。これはモンゴルの文明そのもので、もし牧畜がなくなるとモンゴル語がなくなるくらいの意味合いを持っている内容です。ふだんの言葉も全部牧畜の用語で、例えばお手洗いに行くことも「馬を見に行く」ということがお手洗いに行くということで、その馬がいなくなったらお手洗いにも行けなくなるような、そういう文明構成で、牧畜は絶対に残さなければいけない。そのためにはどうしたらいいかということで、大野先生からは前にも同じようなご指摘を受けたので、ここの中で新たに、内部でものすごい激論を交わしまして、地方開発にするのか、牧畜支援にするのか、言葉の用語についても激論しまして、やっとこういう体裁になったものです。よく読んでいただければ、牧畜支援のことが明快に書いてあると思います。
 我々の頭にあったのは、今、砂川先生からありましたけれども、実は、この計画は向こう5年間に我々が何ができるのかということに絞ろうではないかと。ただ、向こう5年間がたった後で、モンゴルについて、今、先生がおっしゃったように、モンゴルの現状分析をすることはなかなか大変なことで、専門家の数も少ないし、これだけ外部の方がモンゴルの専門家以外の方が真剣に取り組んでいただくというチャンスがないので。
 また、モンゴル側との関係でも、日本に全部を援助していただきたいということも向こうは思っていますので、モンゴルはこういう状況にあるということを日本が理解していないことに対してモンゴル側が満足しないという面もありまして、分析は全体的なものになりました。それを踏まえて、では、向こう5年はどのくらいのことをやったら当面はいいのかということが、最後の4点に絞られていたわけですけれども、それを絞る過程もこの中に書いたつもりではおります。
 それで、次の国別援助計画を作成するための、これは最初の土台ですので、若干、分析のところに重点が置かれました。何故かと申しますと、今、砂川先生がおっしゃったように、モンゴルの関係は外部にはほとんど知られていないので、モンゴルの現状を納税者の皆様とともにシェアして、その上に立ってこれからの議論のベースを広く提供する気概が我々の中にはありましたので、若干長くなりました。
 保健の問題とかもよく承知しております。保健の問題も、1項目立てるかどうかを議論した上で、向こう5年間でどうするかということでここに収斂させていただきました。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。では、改めまして、これは修文・再編等をする必要があれば、こちらにご一任していただきたいと思います。今日は、花田先生を中心にご尽力いただいた対モンゴル国別援助計画については、この総合戦略会議で承認していただいたという形にさせていただきたいと思います。
 花田先生、本当に長いことご苦労さまでございました。
(花田主査) ありがとうございました。
(渡辺議長代理) ここで、和田国別開発協力第一課長からご発言がございますか。
(和田国別開発協力第一課長) 今後の手続き等について若干ご説明をさせていただきます。
 その前に、せっかくの機会ですので、花田主査をはじめとする東京タスクフォースの皆様に、本計画の策定に当たりご尽力いただいたことにつきまして、外務省として、事務局としてもお礼を申し上げたいと思います。もう少し作業はあると思いますが、引き続きよろしくお願いいたします。
 それから、総合戦略会議の先生方に対しましてもご了承をいただいたことにつきまして、お礼を申し上げます。
 花田主査からもご説明がありましたが、モンゴルの新政権が8月末の新首相、国会議員の選出以降、組閣が遅れている状況にございます。9月に川口大臣がモンゴルを訪問した際に、エルベグドルジ新首相に対して本計画の話をし、先方から理解と支持をいただいているところでございます。今後、新政権の成立を待った上で、この計画案を政府の計画とすべく、対外経済協力関係閣僚会議での決定を得るための手続きを外務省が中心となって進めていく考えでございますが、引き続きよろしくお願いいたします。
(渡辺議長代理) 和田課長、どうもありがとうございました。
 それでは、次のテーマに入ります。新たに対タイ国別援助計画が始まるわけですが、これについては、先ほども申し上げました末廣昭先生に主査をお願いしております。今日は、短い時間ではございますが、この計画策定作業方針をざっくりと、短い時間でございますがご説明をいただきたいと思います。末廣先生、よろしくお願いします。
(末廣主査) タイ国別援助計画の主査を務めております末廣です。よろしくお願いいたします。簡単に、私どもの委員会の作業方針の趣旨を説明させていただきます。
 我々のほうで今回準備したものは、3つの大きな枠がありまして、まず、アジアの現状をどう認識するのか、2番目は、タイの現状をどう認識するのか、3番目が、これからのタイとの協力関係をどういう方針で臨むのかということであります。
 まず第1番目の「アジアに対する現状認識」ですけれども、これは皆様もよくご存じのように、この10年間で、アジア域内の貿易投資、人的交流は相互依存が急速に高まっております。しかし、同時に、通貨危機来SARS、鳥インフルエンザに象徴されるように、不確実性、不安定性が高まっている。その一方で、アジアにおいては、地域内での協力体制という枠組みが次第に整備されておりまして、私どもとしましては、アジアの不確実性、不安定性を地域的に取り組んでいくことが、今後のODAについては極めて重要であろうという認識を持っております。
 次に、「タイに対する現状認識」です。まず、現状のタイを我々がどう見ているか。そして、2001年から登場したタクシン政権の政策方針をどう見るかという2つに分けました。
 まず、タイに対する我々の基本認識は3点あります。一番大事な点は、私どもはタイを開発途上国もしくは発展途上国とはもう見ない。むしろ、中進国化しつつある国ととらえたほうがいいのではないか。これは具体的に所得から見ても、既に低位中所得に入っておりますし、産業構造から見ても、重工業が軽工業を上回る形で準工業国化している。それから、人口構成とか様々な面を見ても、タイはむしろ中進国化しつつあると思います。そして、国内には確かに貧困の問題とか地域格差の問題を抱えているけれども、もしも日本がタイと協力するならば、今後、タイが直面するであろう新しい社会問題に対して、もっと前向きに協力していくという視点。例えば最も典型的なものが少子・高齢化、国民健康保健、そして、都市部における交通インフラの整備といったものにもっと注目すべきだろうと思います。
 2番目に、タイに対しては、キャパシティ・ビルディングとかエンパワーメントという表現は使わないほうがいいと思います。この30年間のタイの経済開発あるいは経済社会開発の過程で、タイは十分にそのキャパシティを内部で蓄積してきたと思いますので、その点をもっと評価し、それとの協力を考えたほうがいいと思います。
 3番目は、タイは日本と長期にわたって良好かつ安定的な関係を結んでおりまして、今後、その関係を結んできておりまして、今後、その関係を維持・強化することは、地域の安定と発展にとって重要です。ややショッキングですけれども、今日配られております2004年度のODA白書の中に、ASEANにおける2002年の調査結果が載っております。これを見ますと、ODAに対する評価はタイは高いのですけれども、友好国としての日本の信頼が、驚くべきことにASEANの中では最も低いというデータも出ておりまして、私は今、タイで起こっている日本のプレゼンスの低下に対して、もっと真剣に取り組むべきではないかと思います。
 次に、タクシン政権の政策方針ですけれども、まず、現在の政権は、国の競争力を強化するということと、国内における貧困の軽減、とりわけ地方における雇用創出と内需創出という「デュアル・トラック政策」をとっております。その意味で、国家競争力強化と地方における雇用創出という2つの抱き合わせである。
 2番目に、これがより重要なのですけれども、タクシン政権は、経済技術協力が不必要と全面的に否定しているわけではありませんが、明確に、タイは援助受入国から援助供与国になると。それで、世界銀行、アジア開発銀行、その他ドナー国に対しても、タイとの関係を、「援助」ではなく「パートナーシップ」という言葉を使うように要求しております。
 3番目に、現在のタイは、ASEANとかASEAN+3といった枠組みを利用しつつも、同時に、その目は、東ではなくてどんどん西に向かっている。例えば南アジア、最近ではアフリカとの協力を考えております。そういうことから言いますと、改めて地域協力の概念そのものが日本とタイの間ではズレてきている可能性があります。
 そこで、最後に、タイに対する援助方針として5点取り上げておきたいと思います。
 まず第1に、これはぜひこの委員会の基本方針として強調しておきたいのですが、もはやタイとの関係を従来の援助・被援助ではとらえられない。むしろ、相互利益と合意形成に基づく新たな協力関係ととらえたい。
 2番目に、タイとの関係では、二国間協力も大事ですが、より地域的な協力も視野におさめる必要がある。その中にはインドシナもあるでしょうし、アフリカとの協力なども入ります。
 3番目には、二国間、地域、双方において、何が社会開発課題で、何が経済開発課題なのかをより明確に分けていく必要がある。
 4番目に、そうした開発課題への取り組みに対して、従来のように、タイ側のニーズに合わせるのではなくて、その開発課題に対して日本はどのような利益を受け、あるいは、日本はどのようなポジショニングによって貢献できるのかをもっと明確にする必要がある。その場合は、ODAに限らず、非ODAとの積極的な連携が重要だろうと思います。
 5番目に、これはやや深刻ですが、タイは既に開発計画をやっておりません。すべて国家戦略計画に基づいてフレキシブルに今後の方針を決めております。そうした中で、相手国とどのように合意形成を行うか政策協議をするのかという大変深刻な問題であり、我々としては、新しい枠組みで向こう側と、特に、アジア、タイ、日本をそれぞれがどう見ているのかというパーセプションの交換をするような場を形成することが大事だろうと思います。
 作業日程としては、できるだけ早い時期にこういうものは策定したいと考えているのですけれども、先ほどのモンゴルと同じで、実は、1月から2月初めにタイでは選挙があります。現在の窓口機関である援助機関は10月1日をもって解体されて全く新しいものに変わると聞いておりますし、選挙期間中は、恐らく、協議をするような雰囲気ではないと思いますので、そういう状況もにらみ合わせながらスケジュールを決めていきたいと思います。
(渡辺議長代理) 末廣先生、どうもありがとうございました。
 ただいまのご提言に対してご意見をいただければと思います。今日は、計画書をつくるに際しての基本方針あるいはチームとしての哲学に至るまでお伺いしたわけですが、非常にユニークな観点からの切り込みという感じがいたします。
(大野委員) すべての途上国がこうなるといいと思いますが、結局、ODAがだんだん当てはまらなくなってくるということだと思います。できれば、それならばODA卒業ということを正面から書くのはどうかと思います。今すぐ、今年ということではなくて、パイプラインのものがありますから、すぐには終わらないけれども、それを売りにしていくことはおもしろいことではないかと思うので、もう少しはっきり書くことができるのではないかと思います。それが一つ。
 もう一つは、それにもかかわらず、今、タイは、援助ではなくてパートナーシップでやってほしいと言いながら、例えば韓国、台湾などと比べたときに、まだまだ工業国としての実力がないと思います。タイがどれだけ技術とか人材を自前で確保しているかを考えると、日本の援助が要らないという段階ではまだないと思います。それを、協力パートナーの形にして、ODAではない形、あるいは、ODAでもいいのですが、やはりまだ工業国としての道は長いと思いますから、それを、向こうのプライドを傷つけないような形で支援していく、対等な立場で支援していく立場があってもいいと思うので、これは卒業することとは必ずしも矛盾しないと思います。
(委員) 私も、大野さんがおっしゃったことと同じで、このケースを使って、日本のODA政策みたいなものを模索していってはどうだろうと思います。特に、卒業に至るときのトランジションをどのようにODA政策としてマネージしていくのかという点が重要なので、その辺に重点を置いて、この計画を書いていただくと、他の国の場合にも当てはまるような一つのモデルになるのではないかと考えております。
(渡辺議長代理) 荒木さん、どうぞ。
(荒木委員) 私は、アフリカとかインドシナ半島に対してタイが非常に協力を持っている、地域協力ですね。それで、日本も、政策を地域に対する経済連携ということを深めていこうということで、クロス・ボーダー・インフラ等々、インドシナ半島に対するいろいろな協力を進めようとしているので、極力、タイと良いパートナーシップというか、そういう意味で良いパートナーシップを組んでいくという提案をしたり、アフリカに対する協力についても、日本だけではなくて、ASEANと協力してやっていこうというのがTICADの流れでもあるし、そういう点をもう少し、新しい観点を書き込んではいかがかと感じております。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。磯田さん、どうぞ。
(磯田委員) おもしろく聞かせていただきました。私も、印象としては、ODAの時代ではないのかなという印象を持ってはいるのですけれども、タイが抱えている、最初の「アジアの現状に対する認識」とお書きになっている、不確実性、不安定性、ここの部分はすごくあって、例えばAIDSの問題にしろ、こういったSARS等々、あるいは、周辺国の不安定な国との関係など、いろいろな問題を抱えている国でもある中で、タイ独自の経済発展というよりも、あるいは、もうちょっと地球規模での課題に対してタイの中で取り組むなり、何かそういうものが必要なのではないかという印象を感じております。今回のご説明の中では、そこのところを余り詳しくおっしゃっていただかなかったのですが、何かそういうものがあるのではないかという印象を持ちました。
(渡辺議長代理) 今、磯田さんがおっしゃったことをもう少し具体的に言えば、例えばどんなことでしょうか。
(磯田委員) 環境とかAIDSとかいったことに関して、タイを中核にして、もう少し周辺国も含めて取り組むということ。既にやってきていると思いますが、その辺、なかなかうまく機能していないのかなという印象がありますので。私も詳しくはわからないのですが、そういう印象を持ちました。
(渡辺議長代理) わかりました。それでは、青山さん、どうぞ。
(青山委員) 大変おもしろい計画をお示しいただきありがとうございます。本当におっしゃるとおりで、タイはいよいよ卒業していくところなのだろうと思います。社会セクターにおいても、タイは保健医療にも一生懸命に取り組んできており、他の途上国の先駆け的な存在と思います。
 そうなりますと、今度は、日本の支援として新しい目標設定が必要になってくると思います。先ほどもありましたが、MDGのような目標はもうタイには当てはまらないと思いますので、社会セクターについて協力する場合には、タイに対してはどのような目標を設定するべきか検討する必要があると思います。たとえば保険制度に関する協力といった可能性があると思いますが、今後、少し進んだ国の社会セクターに協力するときのモデル設定のようなものができるとよいのではないかと思います。
 その一方で、まだ地域格差がありますので、後発地域に対するソーシャル・セーフティ・ネットを確保していくことに対して、いかに日本が助言していくかについても検討するべきかと思います。おそらくタイ側でできることが多いと思いますけれども、外からの助言もまだ必要だと思いますので、そういったところに留意してお書きいただけるとよいのではないかと思っています。
(草野委員) 2点、ぜひ要望させていただきたいのですが、第1点は、援助供与国になりつつあるタイの現状について、詳しく触れていただければ幸いです。
 2点目は、今から3年ほど前に、タイとインドネシアの日本からの専門家の派遣、研修員の受入れについて、ここにいらっしゃる荒木さんと私、それから静岡県立大学の小浜さんと3人で、現地ヒアリングを含めて、詳細な調査をいたしました。ぜひそれもご一読いただいて、この卒業政策と関係があると思うのですけれども、なかなかその技術協力の分野でも、卒業していい分野があるだけれども、既得権益が邪魔をしてなかなか卒業できないということがあり得るのかなという若干の懸念がございますので、そこら辺もぜひ調べていただければと思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。
 伊藤さん、千野さんの順にどうぞ。
(伊藤委員) タイ国別援助計画に対する作業方針を読ませていただきまして、先ほど、今回の会合の最初の議題のODA中期政策の策定、論点整理と比べながら読んでいたのですけれども、この中期政策とどう重なってくるのかなという疑問を持ちました。多くの委員から、もうタイはODAを卒業しているのだというコメントがある傍ら、磯田委員のように、AIDSの問題があると。それから、私の認識では、まだ貧困の問題が残っていると思います。スラムの問題とか地域格差がひどいし環境の問題もあるといった観点から、もし、日本のODAをタイに今なお出そうとするならば、ここは、ある意味で、この4点をODA中期政策で指摘していますけれども、「重点課題」、「貧困削減」、「持続的成長」、「地球規模の問題の取組」、「平和の構築」という中で、AIDSとか環境とか、そういった問題は地球規模での問題の取り組みとして当てはめられるのかなと考えた次第です。
 それから、貧困の問題については、私たちNGOの関係者の間では、まだまだ援助が必要だと思います。ただ、それは、いろいろな面において、個人所得においてもタイは全体的に、マクロの面から上がっていると思いますが、格差があることを認識して、タイの国別援助計画をつくられる必要があるのではないかと感じました。
(千野委員) まず、大変野心的な報告書ができるのではないかという期待を持ってお話を伺いました。私は、ODA白書の2004年版を見ていないので、先ほどのアンケートのことに関連して申し上げるのですが、やはり我々から見て、何人かの方がおっしゃっていますように、卒業政策とかそういうことから、日本人にとってタイがどういう位置づけにあるのかということがちょっとあいまいになってきている。つまり、もう援助する国ではないけれども、日本と同じようなといいますか、援助する側に完全に回っているのかというとそうでもないと。日本人がタイに対してのイメージを持ちにくいことになってきていることが、先ほどのアンケート結果にもつながっているのかなという印象を抱きました。
 今後の日本とのかかわり方という点で言えば、卒業してサヨウナラということではなくて、新たに日本とタイがアジアの中で緊密な関係をつくり、かつ、援助の側に回ることができるような、そういう展望が開けるような意味でも、作業の中でそういうディスカッションもどんどんしていただきたいという要望を持ちました。
 それから、もう一つ。アジアの認識ということで、不安定性、不確実性が高まっているということは全く同感ですが、そういうことを言うときに、私などがまずイメージするのは、もちろん、ここにある通貨危機、SARSといったこともそうですが、一方で、政治的な側面、そういうところの東南アジアの不安定性、不確実性を感じます。援助計画に具体的に盛り込むかどうかは別にして、そういうことも分析されてほしいと思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。それでは、砂川さん、牟田さん、どうぞ。
(砂川委員) 1点触れていただきたいのですけれども、都市部の交通インフラ整備等が必要であることのご指摘をいただいておりますが、恐らく、官民連携という観点が重要になってくると思います。すなわち、PPPというアプローチ。それに対するタイ側の意見をぜひ吸収していただきたいと思います。
(牟田委員) 既にほかの委員の方から言われていたことで、別の言い方になると思いますが、これまで日本はタイに対して非常に多くのODAを供与して、それが施設の形、あるいは、移転された技術の形で残っていると思います。タイが中進国になったので、もうODAは要らないということもあるかもしれませんが、これまで日本が蓄積してきたODAの成果を活用して、ほかの近隣諸国に対して、例えば南南協力といったような形でそれを利用することも可能だと思います。
 もちろん、そういうことは当然お考えだとは思いますが、これまで日本がタイに対して行ってきたODAの成果というものが、それは向こうの役に立ったのだからそれで結構ですけど、できれば、そういったようなものがもう少し活用できて、近隣の地域にさらにそれが再活用できるようなことがあれば大変ありがたいのかなということで、そういう点につきましても、ぜひお考えいただければと思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。関山さん、どうぞ。それから磯田さんも。
(関山委員) 皆さんの意見と似通っているのですが、私も、産業界でアジアにしょっちゅう出張に行くのですが、特にタイなどはかなり見ています。確かに、タイは被援助国としては卒業に近いのですが、タイと一緒に日本はどういうことができるかということが今は焦点になっています。近隣国のカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムといった地域、特にカンボジア、ラオスが主流ですが、タイの会社とともに、こういった国の資源開発、石炭とか水資源、特にメコン開発、こういったものがビジネスとして主流になってきています。そういった観点で、例えばクロス・ボーダーの送電線とか道路、橋、水資源開発、こういったものをタイと一緒にどのように開発していくかということ、またそれに対して日本がどういった作戦で下支えで援助していけるのかということをハイライトしていただくと、非常に盛り上がるのではないかと思います。
(磯田委員) こういった経済開発の光と影の部分をもうお書きになられている末廣先生は重々ご存じだと思いますが、先ほどの中期政策との絡みで、「人間の安全保障」という視点を、配慮事項なり何なりの中に入れ込んでいただきたいという印象を少し持ちます。
 例えば、今のお話にありましたけれども、タイ企業がカンボジアでどういうひどいことをしているというとあれですが、要するに、労働条件とか、環境破壊とかが相当すごいわけです。
 そういったような現実もある中で、もう一つは、人口の国際的な異動ということで、タイから外へ、あるいは、逆に、周辺国からタイへと、周辺国のほうが安いということでたくさんの不法労働者がタイの中に来ていて、そこがまたAIDSの問題とかいろいろなことの温床になっている現実があるわけです。もちろん、タイに経済力がある程度出てきたので、自分たちでできる部分はあるにしても、もう一つそこの部分に対する、何からのODAを通してのある種の持続的な発展というか、あるいは、環境と調査した開発に向けてのモデルをタイとともに日本がつくっていくという、そういう姿勢みたいなものを出すような何かができないかと思います。非常に抽象的で恐縮ですけれども。農村部はほとんど社会崩壊しているような実情もあります。そういう意味で、その辺のことを何かうまく盛り込んでいただけたらなというお願いです。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。たくさんの注文が出されましたけれども、それぞれは非常にエンカレッジングなコメントだったような気がします。
 末廣先生から、若干の時間で、今の時点でのリプライをお願いできますか。
(末廣主査) いろいろなご意見をどうもありがとうございました。
 第1点目の、タイを中進国に対するODAの一つのケーススタディにして、今後どうするかというのは、実は私どもも考えております。ただし、無償援助はもうやめておりますので、ODAの卒業という形で、5年、10年先にはODAを中止するという方向で書くのか、そうではなくて、ODAも金額はどんどん減っていくと思いますが、中身は、制度設計とか民間と組んだり、大学と組んで、お金は余り使わないけれども、人材育成とかをやっていくものは今後ますます増えるだろうというときに、それはやはり新しい協力関係としか言いようがない。ということから言いますと、こちらとしては、ODAは、金額は減らすけれども協力関係を高めるものを、「卒業」という言葉でやると「お金を出すのをやめる」ということに比重が移ってしまうので、そこをうまく表現できればなと思います。ただ、ケーススタディとしてはよくわかります。
 2番目に、「人間の安全保障」は、実は私も盛り込みたいのですが、まず現地タスクフォースの方々や日本の側と、私個人とタイ側の人たちと、やはり「人間の安全保障」についていろいろなイメージがありまして、逆に、今日お配りされた論点整理などに、より忠実に従おうとすると、タイではなかなか身動きがとれないので、この問題は「社会開発課題」として今回はぼやけさせていますけれども、「社会開発課題」と「人間の安全保障」については当然考えなければいけないと思います。
 それとの関連で言えば、先ほど出た問題で、地球規模の問題とか課題はたくさんあると思います。これは、タイと日本が地域ベースで取り組まなければいけないAIDSとか環境ですが、できれば、考えたいのは、貧困問題だからやる、環境だから取り上げるという視点は、タイとの協力関係では余り意味がなくて、環境とか貧困のうちのどの側面を日本は積極的に協力するのか、どこに日本は比較優位を持っているのかを考えないと、今までのように、貧困だったら何でもウェルカムですとか、環境だったら積極的に協力するという段階ではもうないと思います。それはやはり、中進国化しつつあるタイとの協力関係では必要であると思います。
 4番目に、先ほど米山さんが言われた人材育成のことで、人材育成は、恐らく、工業国化するタイの場合は、ODAではなくて、一番重要なのは、民間企業と大学の中で蓄積される。それに対して、減っていくODAをどううまくリンクさせるかという視点が重要で、多分、最初に戻りますが、「卒業」ということを前面に出すこともわかりますけれども、中進国であり個性を持った国との付き合いかたをどうするのかというところが大事かなという気がしております。
(渡辺議長代理) もう一つ出された、日・タイが連携して第三国に協力する連携型援助と言ったり、南南協力と言ったりしているようなものについては、できれば個別のプロジェクトでこんなものがあり売るというところまで踏み込んでもらうと、今までの議論の流れからして非常に有益ではないかと、これは座長としてではなくて、個人的な希望として持っております。
(末廣主査) その問題で、タイミングは微妙ですが、10月1日付で現在の援助受入機関が解体して、今度は援助供与機関に再編されて、大がかりな組織再編が行われますので、そこの中で今度はタイ政府側がいろいろと言ってくると、協議とか、今までのチャネルも含めて、タイ側が今後はどうしたいのか、インドシナに対してどういうことを考えているのかという、とりあえずはまずそのパーセプションの交換が重要になってくると思います。ですから、一方では、かなり短い期間でやろうとしているのですが、他方では、パーセプション交換を選挙を挟んでどのようにやるか、ちょっと難しいところです。
(渡辺議長代理) 大変なチャレンジングといいますか、エンカレンジングといいますか、いかにも末廣さんらしい枠組みの提示であったと思います。ぜひご成功をお祈り申し上げます。
 若干時間が押してきておりますが、今日は、さらに大野泉先生を主査とする対ガーナ国別援助計画の策定の作業方針についてのご説明をいただかなければなりません。早速ですが、大野先生、よろしくお願いいたします。
(大野主査) 本件を担当させていただきます大野と申します。よろしくお願いいたします。
 私がこのお役目を仰せつかったのは、ガーナの専門家というよりは、むしろ、国際開発援助の最先端の考え、潮流が凝縮した形で展開しているアフリカ、その中でも、世界銀行や欧州の主要ドナーが注目しているガーナにおいて、日本としてどういう方針を持って援助政策をつくっていき、そのための体制をどうしていけばいいかといったことを真剣にもう一度考えなければいけないのではないかという問題意識が、現地からも非常に強く出てきてまいりまして、そういったことを私も共有し、そういったことで一緒に考えていきたいと思い立ったことが契機となっております。
 したがいまして、昨年度から、こういった形で、現地ODAタスクフォースが正式に発足する以前から、現場のほうでは、非常に強いイニシアチブで、非常に大きな変化があります援助環境の中で、国別援助計画をどのように作っていくか、見直していけばいいのかというような議論が出され始めておりました。ですから、基本認識の第1点としては、そういった現地主導によるイニシアチブを尊重した形で今回の作業に取り組みたいと思っております。
 ガーナ自身は、アフリカの中で構造調整をいち早く実施しましたし、それなりの成果を挙げ、鍵括弧付きですが、数少ない成功例と言われている国ですけれども、非常に限られた貿易構造、輸出構造であること、一次産品に依存していることを含めまして、非常に脆弱な経済構造ですし、貧困削減についても進展はありますけれども、非常に格差が大きいということで、まさに60年代は、タイよりもパーキャピター、GNPが高かったころもありましたけれども、まだまだ貧困問題、成長についての課題が大きい国でございます。
 そういったこともありまして、特にサブ・サハラ・アフリカの開発にどう取り組むかというパンフレットケースとして、国際的にも非常に注目を浴びた、いろいろな手法で開発援助アプローチが試みられています。そういったことが、現行の国別援助計画、これは2000年6月に策定されていますが、それ以降に特に顕著になったということがあります。
 具体的に申し上げますと、拡大HIPCイニシアチブの適用と、それに基づきまして一定の成果を上げたということもあり、今年の7月に完了時点に到達しております。ですから、対ガーナ債権放棄は円借款を含めて決定されております。
 それから、貧困削減戦略。これはガーナ版PRSPが2003年3月に策定されておりまして、それを中心にいたしまして、政策面を中心とした援助協調が活発に行われているということ。それから、資金面でも、プロジェクト型からプログラム型への援助の移行が強く行われておりまして、資金をプール化することも含めまして、一般財政支援やセクター・ワイド・アプローチに代表される新しい取り組みが展開しているということで、個別プロジェクトをどのように位置づけていくかも非常に大きな課題になっております。
 そういった中で、特に日本のODA予算も削減される中、日本が対ガーナの援助において動員可能なリソース、援助の実施体制、アプローチ、それから重点課題をどのように絞り込んでいくかというところに非常に大きな影響を受けており、そういったことを踏まえた形で今回の改定作業に取り組んでいかなければいけないと思います。
 特に、HIPCイニシアチブ適用の結果といたしましては、有償資金協力は当面は供与困難になっております。ただ、日本が対ガーナに用いる債権放棄額が 1,000億円に近く、これは同イニシアチブ適用国の中で最大であるということもありますし、今後とも、外務省、JICAプラスJBICという形で、オールジャパン体制のもとで支援の仕方を考えていかなければいけないと思っております。
 ガーナの国別援助計画で網羅すべき内容については、他国ともほぼ共通の項目になると思いますが、このようなサブ・サハラ・アフリカに特有な課題、直面している援助アプローチも含めて。ということを考えますと、やはり日本の対アフリカの援助戦略をどうしていくか、その中でガーナをどう位置づけていくか、そういった視点を明確にしていくことがまず必要ではないかと考えております。
 作業体制につきましては、もう既に活発しております現地の浅井和子大使の指揮の下に、実務作業チームで、現地とりまとめ担当の書記官と東京タスクフォースのほうで連携しながらやっていきたいと思っておりますが、タスクのメンバーには荒木委員にもご参加いただいておりますし、ガーナの専門家にも参加いただいております。
 それから、ガーナに関する人材が必ずしも日本の中に多いわけではないということで、専門家あるいは企画調査員等の形で、現場でつい最近まで活動していた人材にアドバイザーとして入っていただく形で進めたいと思っております。
 それから、JICAのほうでもタイミングよくセクター調査を並行して進めていただけるということなので、それを、特にアップストリームのところで共有していく形で進めていきたいと思っております。
 そういったタスクフォース、現地・東京内での密接な情報交換に加えまして、外務省あるいは私ども政策研究大学院大学のほうでもホームページ等を開設いたしまして、一般からのアクセス、ガーナに対する基礎情報、取り組みについてのいろいろな意見をいただきたいと思っておりまして、そういったことも含めて、広くアフリカに対する支援の仕方、ガーナをどう考えるかといったことにつきまして、ご意見をいただきたいと思っております。
 作業につきましては、今から約1年というスケジュールで考えております。第1回の東京タスク会合は、先週、9月22日に開催いたしました。後でその概要を簡単にご説明させていただきますが、今日、皆様からいろいろご意見をいただけると思いますが、そういったことを踏まえまして、それから、既に現地のほうで、基本的な認識についてとりまとめたペーパーが上がってきております。ですから、そういったことを踏まえまして、今から論点整理をしたいと思っております。
 現地での協議を11月ごろに考えておりますが、その後、やはり大統領選挙が12月にあるものですから、大きな政策的変更はないという見通しがありまして、具体的にショートドラフト等をつくり、現地政府と詰めた形で協議をするのは来年以降と考えております。
 現地から上がってきている問題意識について簡単にご紹介いたします。先ほど申し上げたような大きな開発援助環境に呼応した形で、日本の援助の政策あるいは供与する金額、援助額も含めて、予測性、メッセージを強化する必要があるのではないかという問題意識が強く出されております。そういった意味で、従来は、重点分野方式という形で、5分野につきまして重点分野を定めて援助を供与していく形で国別援助計画が出されておりましたが、それを、「目標達成型」と「開発課題達成型」と暫定的に呼んでおります。何のために相手国の貧困削減戦略の中心的な柱に対して、日本はその部分のどういったところに対して重点的に支援をしていくのか。そういうような形で、課題別に柱を組み直すことを考えたいと思っております。
 大きな柱といたしましては、貧困削減を伴った成長ということが、今の段階での案として出されております。ガーナの貧困削減戦略自体、副題が「An Agenda for Growth and Prosperity 」ということで、同じ成長といっても、アジアのような直接投資主導のダイナミックの成長を短期的に実現することは難しいかもしれませんが、農業を基礎とした形での産業振興、地方開発といったことを中心に考えていくといったことが強く出されております。
 ですから、そういった貧困削減を伴った成長を第2目標としつつ、地方・農村部の活性化、ポテンシャルを生かした産業育成、横断的な課題として行政能力の向上といった項目で立ててはどうかという形で、今、上がってきております。
 それから、いろいろなリソースを有効に使う形から、地域的な集中的にインプットをするほうがいいのではないか。あるいは、地域格差、特に北部ではサバンナ地域は非常に貧困地域であるということもありますので、そういった地域格差是正の視点からの地域的な配慮のあり方も考えてはどうかということもあります。
 それから、先ほど申し上げましたような援助アプローチに対する対応ということで、一般財政支援とかコモンファンド等に対する対応についても一定の明確なスタンスをとることを考えております。その中で、日本としての弱点、あるいは強みは何かを検討しながら、比較優位がある形での支援アプローチをつくっていきたいということが、現地からの大きな基本認識でございます。
 先週のタスク会合で、こういった視点を踏まえて議論させていただきました。まず、限られたリソース、援助額の中で、目標達成型にシフトしていくことについては、会議でも賛成されました。そのときに、ガーナ政府が持つ貧困削減戦略との整合性がある形でやっていくといったことについても合意されております。
 そのときに、そのほかに出された意見として、例えば債権放棄といったことをどう考えるか。過去の日本の援助を踏まえて振り返ることも含めて克服すべきことは克服しつつ、それを踏まえて日本として貢献できることは何かということも明確にしつつ考えていくべきではないかという話。それから、農業や農村開発は、アフリカにおきましては重要だと言われておりますけれども、ほかのドナーはどうも社会セクターが中心の援助になっている。それを具体的にどのように取り組んでいくかがまだまだ議論されていないというのが現場であるということで、それは非常に重要だけれども、容易ではない。それに対して、もし一つの柱としてやっていくのであれば相当な覚悟が必要ではないかという話。それから、一般財政支援やコモンファンドについてどういう対応をとるかを明確にする際にも、それは有用なツールたり得るけれども、単に資金を流すだけではなくて、もし取り組むのであれば、それは政策、制度、個別の事業、そういったことが一体となった形で体制を組んで取り組んでいかなければいけない。そこまでの覚悟が要るだろうといった話等々がございました。
 ですから、そういうことを総合すると、債権放棄ということも含めて、それを克服する形で日本がガーナを支援していくのであれば、アフリカに対する支援、ガーナをどう位置づけていくかといったことがやはり不可欠で、その中で集中的なリソース配分の可能性も含めて検討しなければいけないのではないかという議論がなされました。
 今後の作業において留意すべき点について、例示として書かせていただきましたが、今申し上げたことと重複しますので全部は申し上げませんけれども、やはり大統領選挙が12月にあることついては、そういった政治的カレンダーも視野に置かなければいけない。それから、貧困削減戦略につきましては、来年中に改定されるだろうという動きも聞いておりますので、その動向も踏まえて考えいくべきだろうということ、それから、プログラム化ということが潮流となっている中で、それを円滑に進めるために、日本として、マクロのプログラム、セクターのプログラム、現場をつなぐためのきめ細かな視点といったことでプロジェクトをどのように位置づけてやっていくかということを、日本の一つの比較優位を考える可能性として考えていければと思っております。
 以上、簡単ですが、終わります。
(渡辺議長代理) それでは、今のご報告、ガーナの国別援助計画の作業方針について、コメントをどうぞ。
(米山委員) 別にガーナにこだわらないのですが、国別計画を立てて、実行して、チェックして、評価して、また戻していくということをやっているわけですね。だから、例えばガーナでもどこでもいいのですが、事務局のほうで、短時間で意思決定をするのであれば、ODAは連続してやっているわけですから、何が問題だったのだろう、どこを変えるのかということを、もうちょっと要領よくまとめてもらったほうがいいのではないかと思います。個別に過去の話はどうだったのか、どんな問題があったかということです。例えば、1,000億円をいろいろな事情で日本としては債権放棄をしたとかいう話がありますね。そういうことでは過去の反省があると思うんですよ。そういうものもここで少しはっきりと、事務局で事前に吟味してもらって明確にしてもらわないと、こういう会議の仕方をしていると、いくら時間があっても足りないと思います。
 これはガーナに限りませんが、そういう感想です。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。その他にいかがでしょうか。
(浅沼委員) 私は、ガーナというのは、独立以来、開発戦略や開発政策、開発実績の失望の連続だったような気がします。あんなに経済発展のポテンシャルがあるところでこれだけ発展しなかったのも大変珍しい国だという気がします。そのいろいろな戦略や政策の失敗は、ほとんど全域に万延していますから、今、国際援助コミュニティが、大野さんがおっしゃったような、全体の政策分野に、特にマクロサイド、各セクターについてセクター・ワイド・アプローチをとろうとか、全体のPRSPをもう一度見直そうとか集中していくのはよく理解できます。それに対して日本はどういう態度をとるかを決めていかなければいけないと思いますけれども、同時に、生産セクターの問題を、大野さんもおっしゃいましたけれども、援助コミュニティが余りにも注意を払っていないのではないかという気がしてしようがありません。ぜひ、この援助計画として、どのように生産部門の開発・発展に対処していくのか。政府として何を考えていて、日本として何ができるのかというところを見極めていただきたいと思います。
 やはりまだまだココアセクターが重要なわけですよね。だけど、ココアセクターというのは、今まで、世界的な規模で見る限りにおいてはルーザーであり続けたわけです。いくらココアボードを改革しても、実績がそれほど上がらない。それから、ステープルフードの問題がありますよね。森林資源の利用の問題もありますよね。あれほどの鉱産物国家でありながら、アシャンティ・ゴールドフィールドは民営化されてちゃんとやっているのかもしれませんけれども、そのほかの鉱物資源に関しても、ちゃんとした生産体制がとられて、それがうまく動いているかどうか、ちょっと確信が持てません。
 援助の一番最初に、モデルとしてつくられて失敗したボルタ・エレクトリシティにしても、一体ちゃんとした経営をやっているのかどうかわからない。その辺のところを一つ見極めていただきたいと思います。トール・オーダーといいますか、大変難しい設問ですが。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。その他にいかがでしょうか。青山さん、どうぞ。
(青山委員) 援助協調に踏み込んだ大変おもしろい計画に期待しております。1点だけコメントです。西アフリカの国であり、しかも選挙があるということなので、政情がどう動くのか少々心配です。ガーナは安定しているのかもしれませんが、周辺には紛争国も多いので少々危惧を感じております。
 そこで、国別援助計画の中に、そういった政情の変化などに対しての、何かリスクマネジメントの仕組みを入れるようなことはできないだろうかと思っています。こういったことを計画に組み込むのが必ずしも適切かどうかはわかりませんけれども、おそらく、アフリカの国で何かをやるときには、政治状況の変化をはじめ、いろいろなリスクに対して準備しておいたほうがよいように思いますので、考慮していただけるとありがたいです。
(渡辺議長代理) もしよろしければ、大変合理的といいますか、積極的なコメントが出ている感じがしますが、大野さんから、今の段階での反応があればお願いします。
(大野主査) 貴重なご意見をどうもありがとうございました。まさに、過去の援助を踏まえてといったことは、私たちもそういったことを考えた上で行っていきたいと思っております。
 今のガーナを取り巻く、特に債権放棄というご指摘もございましたが、それ自体に対しては、国際コミュニティ自身は、それは日本だけにかかわらず、ほかのドナー、国際機関もそういった債権放棄ということで協調しているイニシアチブですし、それを踏まえて、より良い開発援助アプローチということで今の政府のオーナーシップ、政策面とか資金の流し方も共有していこうということ、あるいは、貧困対策の重視といったことでのアプローチが打ち出されたわけです。世界銀行を中心とする国際機関としては、それを前に出す形で、ポジティブな形でそれを乗り越えるような方針を出しています。
 日本もそれに対して、そういった国際的なイニシアチブに合意しているということはあると思います。ただ、それを、いかに実際にワークするものにしていくかといったところについて、今まで以上に、日本としても、より丁寧な形でかかわることができたらということはあると思います。
 それから、浅沼委員からご指摘があった、生産セクターの問題につきましては、まさに、これを考えていくドナーが非常に少ないことは事実でございます。そういったこともありまして、現場のほうからも、農産物の加工、地域的な支援、例えば資源等も使った形で、それをいかにうまく加工していけないかとか、そういったこと。あるいは、人材、経営上の体制の問題、そういったことについても考えていかなければいけないということで、そういう生産セクターといったことを意識した形で考えていこうと、今、私どもでも議論が始まっております。簡単な課題ではありませんけれども、そういった視点を入れた形で、この計画をつくれていければと思っております。
 それから、政治的なリスクにつきましては、ちょうどこれから12月にかけて大統領選挙がありますが、それを通じまして、いろいろ密接な形で対応を図りながらと。ただ、ガーナ自身は、今の形で、90年代の初めも、今の政権は非常に民主的な形で政権移行したということで、西アフリカの中でも政治的にも安定している国ですし、今、対立する政党はありますけれども、政策的な中身については大きな違いはないということで、そういう対話を密接にしていくことで、私どもはリスクを抑えられるのではないかと考えております。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。大野主査にはこれから1年間ご厄介をおかけするのですが、遠い国でもあり、また、日本との関係もそれほど深くなかったがゆえでしょうけれども、専門家もそれほど日本国内には育っていないような状況で、いろいろと困難もおありだろうと思いますが、ぜひ、すぐれたペーパーを最終報告として出してくださいますよう、1年間、ご尽力、ご協力、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 それでは、対タイ国別援助計画、対ガーナ国別援助計画、お2人のご報告と議論は以上で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
 次に、新規対象国の主査ですが、これまで何人かの候補者といろいろお話ししてきて、どうにか決まりました。一つがフィリピン、もう一つがウズベキスタン・カザフスタンがございます。その他資料としては、今までのもの等が付いておりますが、河野国別開発協力第二課長から、資料に基づいてご説明をいただくことといたします。よろしくお願いします。
(河野国別開発協力第二課長) お手元の資料5をご覧いただきたいと思います。こちらを使いまして、2点につきまして私から簡単に触れさせていただきます。
 一つは、先ほどありましたフィリピン及びウズベキスタン・カザフスタンの国別援助計画の東京タスクフォースの主査に関してでございます。この資料5の最後のページに、「今後の国別援助計画策定/改定国にかかる主査候補」という紙を付けさせていただいております。前回のこの戦略会議におきまして、新規の策定・改定国に関する主査につきましてご了解いただきましたが、その際に、フィリピンとウズベク・カザフにつきましては、引き続き検討とさせていただいておりました。
 その後、渡辺議長代理をはじめとしますいろいろな関係者の方々ともご相談させていただきまして、ここにございますとおり、フィリピンについては吉田恒昭東京大学教授、ウズベキスタン・カザフスタン両国を一つのチームとすることを想定しておりますが、石井明東京大学大学院教授に主査をお願いしてはどうかという結論に至っております。
 吉田教授は、簡単な略歴をここに掲げさせていただいておりますけれども、ADBでのご在勤経験が長く、そのADB在勤中には、南アジアではありますけれども、国別援助計画の策定などにも関与されたと伺っております。最近では、JICAの幾つかの委員、例えば環境社会配慮ガイドラインであるとか、インフラ研究会などについての委員も務めていただいて、ODAの政策策定についても関与いただいているご実績がある方でいらっしゃいます。フィリピンでの在勤経験、あるいは、ADBという開発援助機関でのご経験などを踏まえて吉田教授にお願いしてはいかがかと、事務局として提案させていただきたいと思っております。
 それから、ウズベキスタン・カザフスタンにつきましては、石井明教授でございますが、もともと中国政治がご専門ではいらっしゃいますけれども、最近、中央アジア方面についての研究を進めていらっしゃいまして、特に最近では、中央アジアについて包括的な書物などもまとめておられます。ご本人ともご相談させていただいて、強い意欲も示していただいておりますので、ぜひ石井先生にお願いしてはということで、事務局としてご提案させていただきたいと思います。
 新規対象国主査選定のほうは以上のお二方でございますが、資料5全体に戻りますと、前回の戦略会議でご承認いただきました主査が決まりましたところを含め、作業を順次開始しているところで、これは現状をとりまとめたものでございます。
 1ページ目は、スリランカから4つ目のインドネシアまで、今日最初に出しましたモンゴルを含め、作業が大方終了あるいは大詰めを迎えているところで、今後につきましては、既に従来から作業を進めているパキスタン及びインドにつきまして作業を継続しております。パキスタンにつきましては、11月の戦略会議を目途として最終案の策定・報告ができるように、今、作業を進めているところでございます。
 それから、新規に策定を改定する国につきましては、2ページ目と3ページ目に書かせていただいております。現在、こちらでご承認いただきました主査とご相談しつつ、東京タスクフォースのチーム構成を進めているところでございまして、できたところから作業に着手しております。本日、作業方針のご説明をいただきましタイとガーナが比較的進んでいるところではございますけれども、それ以外につきましても、順次チーム構成をしておりまして、準備ができたところから、こちらの戦略会議に対して、作業方針などについての説明を本日と同様にやらせていただくことを予定しております。
 それぞれのメンバーにつきましては、主査とご相談をしながら選定しておりまして、一つずつについてのご説明はいたしませんが、前回の戦略会議でもちょっと触れましたが、それぞれのタスクフォースについて、こちらの戦略会議の委員の方々にも入っていただきたいと思っております。前回以降、事務局に対して委員の方々から直接ご希望の表明があったもの、あるいは、主査とのご相談の過程で、この戦略会議の委員の方に入っていただいてはどうだろうというようなご希望があった方などを中心に、個別にご相談させていただきまして、それぞれの国、タスクフォースにつきまして、網かけで書きました委員の方々に入っていただくことについてご了解をいただいております。
 この戦略会議の委員の参加がまだ決まっていないところもありますので、引き続き、ぜひ戦略会議からもご参加いただきたいと思っておりますので、ご希望がある場合は事務局のほうへでもお知らせいただければと存じます。
(渡辺議長代理) 今、2つの報告がございました。まず、フィリピン、ウズベキスタン・カザフスタン、それぞれの主査につきまして、フィリピンは吉田恒昭さん、ウズベキスタン・カザフスタンについては石井明さんという案がここに上がっているわけですが、これは、事務局と私でいろいろ考えて決めさせていただき、かつ、本人の了承も得ております。いずれも、それぞれの分野で立派な行政を上げてきた方でございまして、ぜひここで認めいただければありがたいと思います。
 それから、それ以外については今お話があったところですが、一つ気になりますのは、この総合戦略会議のメンバーが、最低1名、各計画の策定に入っていただきたいということですが、ご覧のように、集中している国とそうではない国があります。これを正していくことはなかなか容易ではありませんけれども、その面での協力をできるだけお願いしたいということを最後に申し上げます。
 伊藤さん、どうぞ。
(伊藤委員) できれば、私はフィリピンのタスクフォースに参加したいと思っております。お願いします。
(渡辺議長代理) ありがとうございます。大変うれしいお申し出でございます。
 その他、ここでご発言がなければ、後で事務局なり私に言っていただければ、できるだけご意向に添うように努めたいと思っております。
 ここで予定の時間になってしまいましたが、皆様のお手元に資料6として、「対インドネシア国別援助計画(案)」が行っていると思います。これは、ご承知のように、前回の戦略会議で既に了承されているものです。ただし、そのときに出たいろいろなご意見を勘案して、若干の修文等を試みたものを改めて念のために皆様のお手元に置いてあるものでございますので、これについての議論はしません。適宜お読みいただくということで結構でございます。主査を務めていただいた浅沼先生、ありがとうございました。
 残る議題として、資料7、資料8、資料9に関する事務局からの報告があります。これは、コンパクトにして報告いただければありがたいと思います。
 上村経済協力局政策課長より、平成17年度外務省ODA予算要求についての報告でございます。資料7をお開きください。
(上村政策課長) お手元の資料7に、グラフと、その後に説明資料がございます。簡単に申し上げますと、今回の概算要求については2点申し上げたいことがございます。一つは、量のことであります。ご承知のとおり、ODA一般会計予算は近年減少傾向にありますけれども、来年度につきましては今年6月の骨太の方針2004と7月30日の概算要求基準の閣議決定を踏まえまして、量的には15.3%増、この棒グラフの一番下2行に数字がございますけれども、ODA予算としては15.3%増で要求を提出させていただいております。行財政事業はなかなか厳しい折で、査定当局との交渉も非常に厳しい交渉が始まっておりますが、どうぞ、各方面におかれましてもよろしくご支援をいただければと思います。
 2点目に申し上げたいことは、ODA大綱や中期政策のご議論でも今日出てまいりましたけれども、重点政策との関係とです。特に増えております無償資金協力部分、JICAの政策増の部分につきましては、我々は、重点政策、ODA大綱に触れられているところ、例えばアジアでの安定確保、平和の構築、定着、人間の安全保障、実施体制といったものに焦点を当てて査定当局との交渉を進めさせていただいております。
 ご参考までにですが、政府全体といたしましては、この資料7の後ろのほうに、外務省以外のところも含めまして、政府全体のODA予算要求の状況について申し上げますと、一般会計ODA予算では、対前年度12.6%増の要求。ODAのネットの事業予算としては 9.7%増の要求になっております。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。時間の関係もありますから、事務局側からの報告を続けてお話ししてしまっていただいて、何か質疑があれば若干の時間を使うことにしたいと思います。
 岡庭経済協力局開発計画課長にODA白書2004年版についてのご説明をお願いします。
(岡庭開発計画課長) 開発計画課長の岡庭でございます。簡単にポイントだけ、資料8についてご説明をいたします。
 このODA白書は、従来は10月に発表していましたけれども、4年ほど前から、いろいろな事情で発表の時期が遅れていまして、今年2003年版の白書は今年3月に閣議報告しております。ただ、今年はODA50周年に当たる年なので、10月6日の国際協力の日に間に合わせるよう、私どもとしては、10月1日に白書を閣議報告する方向で作業しています。
 2004年版のODA白書は2つの部で構成しておりまして、第1部では「ODA50周年特集」ということで、日本の50年間のODAの成果と歩みを紹介して、例えば東アジアの経済発展に日本が果たしてきた役割や、あるいは、人づくりの面での日本の貢献を、具体的な途上国の声や具体的な数字を交えつつ日本の実績を説明しております。
 第2部では、2003年度のODA実績ということで、従来どおりの中身を盛り込んでおります。ODA改革の動き、あるいは、「人間の安全保障」の視点、イラク復興支援などについても説明しております。
 この白書は、閣議報告の後、1カ月程度をめどに書店で入手可能になる予定で、発売時期は遅れますけれども、外務省といたしましては、このODA白書を活用して、ODA50周年において、日本のODAの成果や重要性などをアピールしていきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。引き続いて、再び上村課長、国際協力50周年についてのご報告をお願いします。
(上村政策課長) お手元の資料9をご覧下さい。
 この国際協力50周年記念事業の目的は、50年間の回顧と今後の展望の2つであります。昨今の厳しい行財政状況の中で、ODAも等しく例外とは言えずに削減となっておりますけれども、一連の記念事業を通じて、ODAに対する国民の皆様の一層のご理解を得られるよう努めていきたいと考えております。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。今、3点について、誠に短い時間で恐縮でしたけれども、立て続けに報告させていただきました。この点について、何かコメント、質問等はございませんか。
(伊藤委員) 一般会計予算概算要求概要で、「草の根・人間の安全保障無償」というのが 6.7%のマイナスですね。これはどういう理由ですか。
(上村政策課長) ご説明いたします。 150億円という予算規模で今までお願いしてやってまいりました。実態としては 110億円強の執行になっております。その大きな理由は、大変手間がかかることや、フォローアップに会計検査との関係でも非常に大変だということです。これは実施体制の強化ともかかわりますけれども、金額を増やすよりは、一旦ここで若干減らして、その分、実施体制のほうに予算を回させていただいているということでございます。
(渡辺議長代理) 次回会合につきましては、11月の初旬を予定しております。具体的な日取りについては、別途調整の上、追ってご連絡差し上げますので、よろしくお願いいたします。
 本日は、長い時間、協力をありがとうございました。
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