ODAとは? ODA改革

「ODA総合戦略会議」第16回会合・議事録

1.日時

 平成16年7月22日(木)9:30~11:30

2.場所

 外務省飯倉公館

3 議事進行

(1) 開会
(2) (イ)対インドネシア国別援助計画(浅沼主査による最終案の報告)
(ロ)対パキスタン国別援助計画(平島主査による中間報告)
(ハ)新規対象国の東京タスクフォース編成(案
(3) ODA中期政策
(4) G8シーアイランド・サミット(事務局報告)
(5) 閉会


4.出席者

 ODA総合戦略会議委員(ただし伊藤委員、米山委員は欠席)。外務省(事務局)より古田経済協力局長他が出席。関係府省、JICA(国際協力機構)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加。

5.議論の経過

(議事の概要)

 冒頭、事務局より、外務大臣による「ODA総合戦略会議」委員の委嘱の期間が6月26日をもって終了したことを受け新たに委嘱書を発出したこと、また、委員の一部が変更したことについて説明した。
 国別援助戦略に関しては、対インドネシア国別援助計画の最終案につきODA総合戦略会議としての了承が得られた。対パキスタン国別援助計画の中間報告が行われた。新規対象国6ヵ国の東京タスクフォースの主査候補について戦略会議の了承が得られた。
 ODA中期政策については、事務局より新たな中期政策策定の考え方について説明があった。議論の結果、草野委員を主査とするタスクフォースを編成し、論点整理を行っていくこととなった。
 事務局より、G8シーアイランド・サミットの概要について説明があった。

(渡辺議長代理) おはようございます。猛暑の中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。今日は第16回目のODA総合戦略会議です。ただいまから開始したいと思います。
 いくつか議題があります。大きく分けると三つです。第1が国別援助計画について、第2にODA中期政策について、第3にG8のシーアイランド・サミットについての説明、ディスカッションです。
 第1番目から入りますが、細かく分けると三つあります。1番目は対インドネシア国別援助計画です。今日はできるだけこれを最終案まで持っていきたいのですが、主査の浅沼先生よりそのご報告をいただきます。2番目は平島先生にご苦労いただいているもので、対パキスタン国別援助計画についての中間報告をしていただきます。そして3番目は、これからいろいろ新しい対象国に取り掛かっていかなければならないのですが、そのタスクフォースを編成しなければならない時期になっています。この案について、事務局から説明があります。
 さっそく議論を始めたいのですが、それに入る前に委嘱書及びメンバーの一部変更につきまして、渡邉政策課長から説明があります。
(渡邉政策課長) 前回の5月の会合の際に説明させていただきましたが、今年の6月26日をもちまして、先生方の委嘱の期間が終了することになっていたために、5月の会合以降事務局のほうから先生方に対しまして、再任の件について個別にご相談させていただきました。その結果、脊戸委員、西岡委員、宮原委員の3名の先生方につきましては、ご都合により退任されることになりました。
 その一方で西岡委員、宮原委員のご後任としまして、それぞれ関山日本貿易会経済協力委員会ODA専門委員会委員長、米山日本経団連国際協力委員会政策部会長の2名の方に新たにご参加いただくことになりました。新しいメンバーリストは配布資料1のとおりです。なお外務大臣の委嘱状につきましては、6月27日付で2年間の任期で発出させていただいております。お手元の封筒に同封しておりますので、ご確認ください。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。米山さんはご欠席ですが、関山さんがお出でになっておられます。一言ご発言いただけますでしょうか。
(渡邉政策課長) 私は日本貿易会経済協力委員会ODA専門委員会の委員長、また丸紅株式会社の執行役員ユーティリティ・インフラ部門長を拝命していますが、長い間ODAに携わってきて、東南アジア、特に東アジアの電力案件、鉄道案件、水事業案件等多数携わってきました。個人的にはフィリピンに6年ほど駐在していまして、数々のODA案件にも携わり、いろいろな経験をしてまいりました。
 この機会を与えられましたので、その経験を、何らかのかたちでご意見を述べさせていただいて、お役に立てればと思っています。私は基本的には東南アジアに駐在していまして、やはりこういった援助というのは相手が一番欲するものにプライオリティを置いてやるべきと思っています。しかしながら現地サイドの人材不足とか、法制の不備とか、諸々でうまくいっていないこともあります。こういうことをどうやって克服するかが実りあるODAの成果になるのかなということです。精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。現場での豊富な体験から出た貴重なご意見が得られるのではないかと思いまして、大変心強く思っております。
 それでは議事を進行させていただきたいと思います。まず浅沼先生より対インドネシア国別援助計画についての最終案の報告をお願いします。
(浅沼委員) ちょうど2カ月前に中間報告をさせていただきましたが、それから、ここの場だけではなくてその他の各省庁、NGOとの意見交換会でいただいた意見を参考にして最終案をつくりました。これはジャカルタのタスクフォースと東京タスクフォースの共同作品で、特に事務局のほうに大変ご苦労いただいてつくったものです。
 この最終案の内容ですが、中間報告でさせていただいた報告内容と多少重複するので、そこはご寛恕願いたいと思います。対インドネシアの国別援助計画の策定に際しての東京タスクフォース、ジャカルタタスクフォースの意見としては、全員一致というわけにはいきませんからコンセンサスと名づけていいかと思いますが、基本的に、まず第1に過去の援助の成果に関する認識は、インドネシア政府の過去35年ぐらいの開発政策、それを支える援助コミュニティの援助政策は総じて相当の成果を上げてきたと認識しております。
 どのようにその戦略が機能し、成果を上げてきたかといいますと、スハルト政権が成立したあとの最初の政策目標はまず経済安定で、これを援助コミュニティと一緒にやって、これは成功しました。それから開発としては、当初手掛けたのはグリーンレボリューションを何とかしてインドネシアに根づかせようということで、これもグリーンレボリューションは、米部門だけではなくて肥料部門も含めて成功してきたと思います。
 それから社会的な面では、特にオイルショックのあとの石油ガスからの産業をベースに、相当教育、保健への政府支出を大きくし、そのプログラムを実行して相当の成果を上げてきました。あとは開発戦略としては、二つのオイルショックのあとで何とかして脱石油ガスを図らなければということで、マクロ、それから貿易部門とか税制のところとか、いろいろな部門で改革努力に努めてきて、これも成功しています。その結果、貧困削減においても非常に大きな成果を上げてきたと考えております。
 ただ反省点がなかったわけではありません。これはインドネシア政府の開発戦略の反省点と同時に、援助コミュニティというか、インドネシアを支えてきたIGGIのほうの反省点でもあります。インスティテューションビルディングにもう少し注力すべきではなかったか。特に金融改革のときにもう少し注意深くやるべきではなかったか。シビルサービス改革をやるべきではなかったか。全般的なガバナンスストラクチャーについてもう少し注意を払うべきではなかったか。これは反省点として残っていますし、今後のODA活動においても、やはり注意を払わなければいけない点だと考えます。
 現状は、相当の開発の成果を上げてきましたが、アジア危機がありました。それからアジア危機と同時に政治体制の大きな変革がありました。そこから来る不安定要因というのは否めませんし、同時に外部条件、特にインドネシアを取り巻く国際的な環境でも大きな変化があって、特に中国の衝撃というか影響は否めない。それはにわかにはインドネシアの経済開発にとってプラスばかりではないと考えられます。
 これらの状況変化を前にして、一応インドネシア政府は経済安定には成功を果たしたと考えられますが、いまの状況で一番心配なのは、経済成長率がいまだに4%程度にとどまっていて力強い経済成長の回復が見込まれないことです。その状況は、ほとんど投資の危機というふうに相当な危機感を持ってとらえています。今までの社会的な発展、貧困削減の成果が後戻りしてしまうような状況が現に現出しているので、ここに危機感を持ったうえで、日本の対インドネシアODA戦略を考えていかなければいけないだろうというのが基本的な認識です。
 その上でいったい何を重点としてODA戦略を練っていくかというところです。我々は今の考え方を整理するために、いろいろな政策を取った場合にどれぐらいの時間的な遅れを持って成果として表れてくるだろうという時間軸を中心に、短期、中期、長期という問題を考えました。
 短期の問題は財政問題が一番大きいのですが、これは何とか政府によってアンダーコントロールできると考えられます。長期の面で見てみると、当然今までのインドネシアの経済の発展の状況から考えて、特にインスティテューションの改善という意味でのガバナンスを何とかしなければいけない。これはほとんどのドナー国が言っていることですし、同時にインドネシア政府内でもその認識は非常に強くあります。
 それから、今の状況の中で、教育、保健、貧困削減といったところが後戻りする可能性があると言いましたが、まだまだ注力する必要があるだろうと考えられます。
 しかし何よりも一番大切なのは、雇用創出のための経済成長の加速をどうするのかという中期的な問題にもっと力を入れて見ていかなければならないということです。投資環境の改善と整備というところを中心にやっていかなければならないだろうと考えます。
 その中でいろいろな項目が出てきます。例えば経済インフラの問題、中小企業の問題、投資と関連するガバナンスの諸問題、特に法制、汚職問題にしても特に裁判所内での汚職の問題等取り扱われる問題がありますが、これに相当重点的に努力していく必要があるだろうと考えます。
 特に経済インフラの劣化はアジア危機以来相当なものがあり、これを放置することによって、今までのインドネシアの準工業国の地位まで成り上がった産業的な発展が阻害される可能性があります。
 最後にもう一つの重点として、アジア危機とそれに続くレジームチェンジのときに国の治安、統一が脅かされたわけですが、この平和や治安の問題は開発のためには常時満たされなければいけない条件として注視する必要があると考えています。こういう考えをベースにして、重点項目として持続的成長、民主的・公正な社会の構築、平和と安定というものをつくりあげています。
 重点項目はそれでいいとして、援助のやり方としてどういう問題点があるだろうということを考えてみましたが、そこでのキーワードとして二つぐらいの重要な点があります。これは最終報告案の中でも強調した点ですが、連携というキーワードで表されることで、政府との政策対話、それから国際的な援助機関との連携です。それから日本の援助機関間の連携。スキーム間の連携。すべて何とかうまく連携させて重点項目をタックルしていかなければいけないという点が一つです。
 第2の点は、先程インスティテューションビルディングにおいて過去には多少努力に欠落があったかもしれないということを申し上げましたが、それを考えた制度づくり、政策・戦略づくり、人材、キャパシティービルディングまで、一つの分野について非常に広く日本の援助活動が関与していかなければいけないだろうということです。
 インドネシアサイドは大統領選の最中にありますから、秋になれば新しい政権ができると思います。今の国別援助計画が新しい政権が出てきたことによって多少無効になるというか、変えなければいけないかどうかという考慮もしましたが、私自身の感触では、どの政権になっても、インドネシア経済が抱える問題は何かということは非常に強く認識されています。
 これは選挙活動の中でも、不十分ではありますけれどもマニフェストのかたちでいろいろな陣営が出したものを見ても、たぶん我々が述べたような認識を新しい政権とは共有できるだろうと思います。細かい点で、本当にどういう開発戦略を取るのかとか、そういう点では多少のずれは出てくると思います。それは問題点として個々の国別援助計画案の中に書き込ませていただきましたが、基本的な何を重点としてやらなければいけないかという点については、どの陣営も共通認識を持っていると判断しているので、この案は新しい政権ができてもそれをサーバイブできるのではないかと思います。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。非常にコンパクトなご説明がありましたが、これについての質問、コメントをお願いします。
(大野委員) 読ませていただきましたが、私は非常によいと思いました。たくさんほうり込むのではなく、日本の立場はどこを攻めていくかというのが非常にクリアに書いてあり、願わくはこれができた後に具体的な方策のほうに重点を移していただければということで、そのたたき台に十分なるものだと思います。
 その上で3点だけ申し上げたいことがあります。短期、中期、長期、それから永続してやるという区別ですが、必ずしも、例えば経済インフラとか中小企業が短期、中期でできるとは思いません。それは例ですが、どれが中期でどれが永続でというのは、私にはあまり納得できません。やってみないとわからないし、向こうの対応もありますから、それほど細かく分ける必要があるのかというのが1点です。
 第2点は、投資環境をよくするのは非常に重要なことで、ある意味でネガティブな今の悪い状況を一掃して投資しやすくするということですが、それにプラスして産業全体で、投資環境がよくなるのと同時に、インドネシアがどこに向かっているのか、どういう産業をつくりたいのか、そのときにはどういう政策が打ち出されるのかというビジョンですね。これはベトナムのことを少し念頭に置いています。全体の産業及び個別重点産業についてつくる必要性についてお聞きしたい。
 もしそれは市場とか投資家に任せていいということならば、それでいいでしょうが、ある程度政府がガイドラインで方向性を見せたほうが投資は集まりやすい。あるいは投資家の安心感が出ると思いますが、それが必要なのかどうかが少し疑問というかコメントです。
 3番目は、最初に書いてある要旨を読みますと、要旨というよりもイントロダクションで、結局上の3分の2はいままでの反省というか、ポジティブな面も含めて書かれていますから、要旨は別に書くとして、これはイントロの地の文にしてもいいのではないかということです。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。それでは青山さん、砂川さんの順序でお願いします。
(青山委員) 大変すばらしい、説得力のある国別援助計画の案だと思います。前回の総合戦略会議で格差の縮小とか女性の参加ということを申し上げましたら、それもきちんと取り入れていただいて、大変素晴らしいものになっていると思います。2点だけコメントを申し上げさせていただきたいと思います。
 先程大野先生もおっしゃいましたが、短期、中期、長期の振り分けのところで、人間開発、保健とか教育は中期のものではないかと思います。要するに経済インフラと人材の開発、人間開発を同時進行して初めて貧困削減につながると思います。逆に、特に保健、医療の分野では基礎的なところに集中するということがありましたが、基礎的なものは中期で取り組んで、ある程度経済開発ができたら逆に政府が自分でやるように長期的にはハンドオーバーしていくものだと思うので、短期、中期、長期の振り分けのところをもう一度考えていただきたいと思います。
 それに関連して無償と技協との振り分けということも、やはり技術協力は人間開発の分野には重要なところだと思います。人間開発の分野の技術協力のところには書かれていなかったように思いましたので、その点をもう一度少しお考えいただけるといいと思いました。
 もう1点はコメントというか質問みたいなものですが、どちらかというとアンビシャスな内容だと思ったのは、セクターワイドに取り組んでいこうとか、あるいはガバナンスとかトランスペアレンシーに積極的に取り組んでいこうという強い決意が入った計画だということです。これは本当に大切なことですが、実際の方法論としてどんなふうにやっていくのか、それを評価してモニタリングしていくにはどういう方法があるのか、ということです。
 これができれば、日本の援助の素晴らしいモデルケースになると思いますので、具体的にどんな方向で、どういうふうに評価をしていくという考えがあれば聞かせていただきたいし、もしこれからということなら、ぜひとも日本の援助のモデルケースのようなかたちにしていただけるといいと思いました。
(渡辺議長代理) それでは砂川さん、それから草野さん、磯田さんという順序でお願いいたします。
(砂川委員) 非常に難しい国の計画を立派に立てていただいて、感謝しております。私の質問は、いわゆる政策の実行可能性という観点についてご意見をお聞きしたいということです。2点ご指摘がありました。一つは連携をもっと進めていかなくてはいけないということで、もう一つはインスティテューショナルビルディングのところに力を入れていかなければいけないという話があったと思います。
 今までの援助の実績から見ると、インスティテューショナルビルディングのところが欠けていたというのはそうだったと思います。これからやっていかなくてはいけないというときに「過去ではできなかったけど将来はできる。やらなくてはいけない」というのは、やらなくてはいけないことはよくわかりますが、できる可能性があるのかというところです。国際的な環境とか、インドネシアの政権が変わったとか、いろいろな要件が変わっていると思いますが、そこをどう感じているのかをお聞きしたい。
 大綱でも非常に連携ということを重視されていますが、ある意味では努力目標であるという点もあると思います。その点で、どの程度まで実現できるのか、先程短期、中期、長期とあって、この2~3年で集中してやらなくてはいけないと思う項目であることには同感ですが、本当にできるのかという疑問もあります。
 例えば援助形態の連携は援助の制度上の問題だと思いますが、制度上の問題を本当に、そのような具合に連携していけるように運営できるのかというところも問題があると思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。草野さん、どうぞ。
(草野委員) 大変包括的に、しかしながら選択と集中というかたちでまとめていただきまして、大変読みやすくなったと思います。ただ2点あります。2点目のほうは青山さん、砂川さんのご指摘とかぶる部分がありますが、1点目は前回申し上げたこととも関係があるかもしれません。これまでのインドネシアに対するわが国、あるいは援助コミュニティの成果について、今日浅沼さんに最初に説明いただきましたが、浅沼先生が今日説明されたかたちで書いたほうがいいのかなと思いました。実は読んでみても浅沼さんの説明のようには書かれていない。浅沼先生の今日のご指摘は非常にわかりやすく頭に入ってきます。それがあって現状はどうなっているのかとなると、読み手にとってさらに読みやすくなるのではないかと思いましたので、ぜひご検討いただきたいと思います。
 第2点目は実現可能性です。この間インドネシアに行ってみたのですが、例えばジャカルタ港をはじめとして円借款のニーズは非常に高いと思います。浅沼先生がおっしゃったように投資環境を整備するという点からも、ここに書いてあるように電力、道路、港湾、空港、鉄道等は喫緊の整備の課題だと思いますが、他方、援助の手法のところで述べているようにNGO、市民社会との連携を強調されています。特にインドネシアにおいてはピープルズパワーの台頭で、ありとあらゆる分野で一般市民の政治的な影響力が大きくなっていますが、これと援助の各個別プロジェクトを考えてみると、なかなかうまく調整するのが難しいという現状があります。ジャカルタ港にしても、洪水制御の問題に関しても、いわゆるピープルズパワーの干渉という言葉は適当ではないかもしれませんが、利害関係が必ずしも政府とは一致せずに、プロジェクトの案件形成そのものが前に進まないという状況があります。
 そういうことが念頭にあるものですから、ちょっと綺麗に書きすぎているのではないかなと思いました。先程言われたように、まず実施の可能性についてどのように検討されたか、是非お聞きしたいと思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。磯田さん、どうぞ。
(磯田委員) 私が申し上げたいのはチャートの部分と他との繋がりです。チャートは一応わかりやすくできているとは思いますが、特に上段の短期的、中期的、長期的というのは、説明にあるように効果の発現する時間軸ということです。これは取り組む時間軸の優先度ということではないと理解できますが、そこが非常に誤解を招きやすい。つまり、まず経済インフラや金融セクター等をやり、その後貧困削減やガバナンスに取り組むというようにも誤解を招きやすいのですが、中期的に効果を発するものは、逆に最初からかなりしっかり取り組まなければいけないと思います。本文を見るとそう書かれているようにも見えますが、明言されていないので、あたかも後ろの方の優先度が低いかのようなことは是非訂正いただきたいというか、おそらく活動としては軸をもう1本入れるか、あるいは本文中にきちんとそういうことを明言いただきたい。それが1点目です。
 2点目はそれとも関係することです。この分析の部分は今の浅沼先生のお話である程度理解できるのは、投資環境の整備には単なるインフラというよりももっと他のもの、ガバナンスの問題とか法的なもの等々、あるいはインスティテューショナルビルディング、キャパシティービルディングの方がむしろ大きな要因だと認識しています。
 インドネシア政府の開発計画とかアジア開発銀行の政策を見ても、民主化支援、まさしくガバナンス改革とかチャートで後ろのほうに書かれている部分とセットでないと、インフラを整備してもほとんど投資は呼べないという事態だと理解しました。
 そういう意味でこの重点項目の書き振りですが、単なる経済成長というより、そこに公正な経済成長という文言等を少し入れていただかないと、今まで日本が経済成長のためにインフラ整備をしてきたのとの違いがわかりづらいと思います。本文を詳しく読めばわかりますが、キーワードとして出てくるところにその違いを織り込められた方がいいのではないかと思います。
 そういう意味で、特にNGOとしての立場ということもありますが、重点項目の1と2は逆で、むしろ2番目の民主的で公正な社会の構築というのが先にあって、その上での民間主導の持続的な成長という構造の方がいいのではないかとも思っております。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。それでは関山さん、お願いします。
(関山委員) 私は現役で、現場で陣頭指揮を取ってやっていますが、その観点から、先生のレポートについて現在のインドネシアが日本にとっていかなる存在であるかという認識を高く評価したいと思います。また政経両面でパートナー、天然資源の供給源、市場、製造拠点と、具体的に突っ込んだ表現になっているので非常に明確だと思っています。ただ数点コメントしたいと思います。
 一つは特に過去3年間、インドネシアには大型の製造業の対外投資がまったくない。実はこれが大きな問題だと思っています。もちろん投資環境整備が緊急課題の問題だと認識していますが、投資環境整備には電力の民営化、民活案件の促進が最重要だと認識しています。地方電化については、基本的には地方が計画を立てて実行するという電力法の改正が行われましたが、行政能力といいますか、ガバナンスの問題といいますか、そのままでは行政能力の点から地方電化が促進されるか否かは非常に心配で大きなクエスチョンマークだと認識しています。
 中央の電力計画、政府機関の統制能力向上が非常に必要だと思います。ご指摘にあるように、この計画案に先方の政府と緊密に対話をすることが重要とお書きになっていますが、政策対話にとどまらず、国全体の電力計画の立案、プロジェクト遂行に関しての日本の知見・経験を生かして、経験のある方を先方の政治顧問というか政府顧問というかたちでハイレベルの日本人の人材を派遣して支援するべきではないかと考えています。
 ここに書かれていますように、全世界での円借款債務11.2兆円のうち2.2兆円をインドネシアが占めているので、日本としてこのぐらいのコミットの姿勢は必要だと思いますし、そうすることによって援助の実効、援助効率が格段に向上することが確実ではないかと思います。
 もう一つは地方にフォーカスするのであれば、ジャワ、バリの電力系統と書いてありますが、例えばスマトラ島とか、そういうところも援助の視野に入れるべきじゃないかと思います。
 最後に選択と集中と標榜されていますが、セクターの絞り込みをある程度行うべきではないかと思います。例えば電力、運輸、交通、農業、貧困層が一番多いのは農業ですが、やはり総花的な支援では効果が見えてこない。もちろんすべての分野にわたる支援が現実的に可能かどうかという疑問もありますが、世銀とかADB、国連等の機関との分野を明確にするのも一つの案だと思います。
(渡辺議長代理) ひとわたり議論が終わったと思いますが、浅沼先生、今の時点で答えられることがあれば、お願いします。
(浅沼委員) 幾つか問題点が指摘されましたが、まずは、我々の時間軸という考え方です。これは実は表現の手法として使っていて、何を表現しようとしているかというと、こういう考え方です。
 インドネシア政府にしても、それを支援するドナーサイドにしても、ある政策を取って、それが短期的にいい効果も悪い効果も出てくるような政策についてはみんながインドネシアを見ていますから、インドネシア政府のほうも注力しやすいわけです。例えば一つは財政政策です。これは1年予算の作成に失敗して大きな赤字が出たとしたら、インフレに繋がるか債務の不履行に繋がるような、そういう問題があります。これは危機の最中にも、IMFや世銀、その他のドナーを中心に十分注力されてきたところがあります。
 今度はインドネシアの回復とか成長、貧困削減と、もう少し長い目でものを見たときにどう考えるかというと、やはりインドネシアの基本的な問題はガバナンス問題です。たとえばルール・オブ・ローがなっていない。ジュリシアリー・セクターをちゃんとしなければ何も進まない。こういう判断で、そちらのほうに援助活動が集中していく。
 その事情は、実はここの5ページ「開発問題を追求するに関しての問題点」の「ロ」のところで書いています。その結果何が落ちてくるかというと、まさにそれが中落ち現象で、現実に劣化しているインフラの問題であるとか、今起こっている投資危機に対して十分注意が払われてこない。そういう結果になったら今度は成長の減速、雇用創出の不足が社会問題に繋がっていくという一種の危機感を持った上で、この中落ち現象に注目してもらうためにこういう書き方をしているというところが一つあります。
 多少わかりにくいとは思いますが、長期的に努力を続けなければ成果が上がらないようなガバナンス問題を無視しているのではないというところを、ある意味ではダイナミックに表現するために使った手法です。それが第1です。
 第2は産業政策のビジョンですが、インドネシアは歴史的に一種の産業政策を取ろうとして失敗してきた経緯があります。スカルノ時代は言うまでもないし、スハルト政権になってからも、当初石油危機が起こったあとでペルタミナを中心に大々的な工業化を進めようとしてきて、これに失敗しました。これは一種の産業政策と考えられると思います。
 その後技術を扱っているハビビ大臣を中心に一種の産業政策を取ってきましたが、これも失敗しました。それから1980年の末から90年にかけての、特に大統領のファミリーを中心とする動きを産業政策と取っていいかどうかわかりませんが、これも失敗しました。
 結局、政府のビジョンを中心にする産業政策は失敗してきたのではないかという認識が我々にあります。それよりはむしろ開放体系をベースにして、かつインドネシアという広い市場をベースにして、スポンテーニアスというか自発的・自立的に出てきた産業形態のほうがよかったのではないかという認識があります。それが第1点です。
 第2点は、今のところビジョンはインドネシア政府側にあるかというと、そうでもありません。今度は中小企業を中心に工業化を進めていこうという人達がいます。そうではなくてインドネシアの豊富な資源をベースにやるべきだ、マイニングインダストリーを中心にやっていくべきだという人もいます。第3に当然のことながら、今までの工業化をより深化(ディープニング)させるべきだ、それで中国に負けないようにどんどん技術レベルを上げていこうという人たちもいます。
 それはここにも書いてありますが、必ずしもコンセンサスが存在しません。そういう状況ですから、今のところ無理をして産業発展のビジョンを描かない方がいいのではないかと思います。インドネシアサイドで何か出てくるのを待つ方がいいのではないかという気がします。
 その次に出てきた問題は政策の実行可能性とも関係しますが、連携、セクターワイドというか、どういうかたちでODA活動を進めていくか、インスティテューションビルディングをどうしていくかというところです。連携のほうは援助の実施機関、大使館ベースで連携の努力をしていただいて、相当成果を上げているような気がします。
 例えばもともと日本はインドネシアのコンサルタティブグループで、非常に主要な役割を果たしてきましたが、危機後はますます役割が大きくなっています。それ以外にも、たとえば財務大臣のところに世界銀行の社長と日本の大使とアメリカの大使の3人が小さなメモを持って、3人で出掛けていって話をしたり、それを大統領にしたりというかたちで、援助コミュニティで連携したうえでの政策対話みたいなものもやっています。
 それから大使館ベースで一種のODAに関するアドバイザリーグループみたいなものを形成していただいて、これは有名なエミル・サリムさんから女優のハキムさんまで含めたグループで、いろいろな懇談会も行われています。国際的な援助コミュニティ及びインドネシア政府との連携という意味では、相当進んでいるような気がします。
 10年とか20年前に比べれば、インドネシア政府との対話のチャネルも、たとえば経済政策支援グループを通じてというように相当多数になり、深くなっている気もしますので、これを続けていけば、相当成果が上がるという気がいたします。
 それからインスティテューションのほうは、インスティテューションビルディングは確かに長期的な課題です。長期的にしか成果の上がらないような課題なので簡単にできるとは思いませんが、それでも例えば、これがセクターワイドの話と通じますが、日本のODA活動がプロジェクトレベルで出てきたところで、それを融資するというかたちで行われるのではなく、現地にいって制度、組織、政策というところに関与していくというかたちでやっていくべきだと思います。その努力はある程度されていますが、今後もっと進められていくべきだという気がします。
 日本のODAの比重が相当高くなっていますから、金額ベースだけでもできると思いますし、一つの例として、今世界銀行とアジア開発銀行とJBICの三者でアジアのインフラストラクチャー、これは実際にはインドネシアとフィリピンを見ていますが、この三者の非常に大掛かりな研究がなされています。そこから出てくるのはたぶん政策的なところ、制度的なセットアップのところです。
 ですからインスティテューションビルディングといっても、キャパシティービルディング・インスティテューションビルディングといっても、人材育成というかたちに分野を限らないでもっと広く活動ができると思いますし、その端緒は見えるような気がします。
 それから草野さんに「しゃべるように書け」と言われて、これは苦労して入れたつもりですが、「じゃあ、その一つひとつについての検証は」とか、グループの、しかも公的な資料になるとなかなか無責任にしゃべるようには書けません。これはもう一度見直してみますが、一応努力したつもりです。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。コメント、質問等をいただいて、浅沼先生のほうから回答をいただきましたが、私は伺っていて大変説得的なお答えがあったと思います。しかしまだ不満だというコメンテーターもいらっしゃるかと思いますが、いずれにせよ今日の質問やコメントをベースにして、若干のリバイズをしていただかなければならないだろうと思います。
 しかしながら、更にもう1回このための会議を開く余裕はありません。そこで浅沼先生、私、事務局等に、後の議論についてはお任せいただくという了解をいただきたいのですが、いかがでしょうか。さらに個別の問題で、さらにこの点をという方があれば、事務局を通じていただくことはもちろん排除しませんが、そのようにご了解いただいてよろしいでしょうか。
まだ仕事はしばらく続きますが、浅沼先生、長いこと本当にご協力ありがとうございました。
 続きまして、対パキスタン国別援助計画についてです。これはまだ最終報告ではありませんが、平島主査より中間報告をいただきたいと思います。それでは平島先生、よろしくお願いいたします。
(平島明治学院大学名誉教授) お手元の資料の一番後ろのチャートを見ながらお聞きいただきたいと思います。大筋だけお話しして、皆様のコメントを得て、また改良していきたいと思います。
 ODA政策委員会ではODA戦略会議から青山先生にご参加いただいて、非常に心強いコメントとご支援をいただきました。これはもともとJICAの国別援助計画で1年前から始めたもので、そのときからオールジャパンの体制を取っているというところで若干の自負を持っております。オールジャパンの体制を取ったということは、たくさんの方々の意見を調整しなければならないということで勢い時間をかけた次第ですが、今日は筋のところだけご紹介したいと思います。
 パキスタンにとって、どうして日本が援助しなければならないかということは、大きく分けて二つの原因があると思います。それはセプテンバー11以来急速に悪化した地政学上の問題と、そういう地政学的な問題に派生する政治的な不安定の根底にある社会経済的な問題の二つだろうと思います。
 前者に関してはご承知のように、セプテンバー11以降のアメリカによるアフガン侵攻がありますが、その前に大きく言いまして、日本の安全保障を取ってみても中国とインドというアジアの大国とどういうスタンスを取るか、どういう関係を築くかということが非常に重要になると思います。
 中国に関しては日本の関心は非常に強いのですが、インドに関してはいまだ十分だとは言い切れない。ただインドの安定的な発展を考える場合、キャスティングボートを握っているのはどうやらパキスタンである。つまりインドの安定にとってパキスタンの不安定は非常に大きな脅威である。そのパキスタンの不安定要因はアフガニスタンとの関係にある。その関係が悪化したのが、まさにアメリカのタリバン攻撃だろうと思います。
 ご承知のようにアフガニスタンとパキスタンの間には、デュアランド・ラインというアフガン・イギリス戦争、英国戦争によってイギリスが一方的に引いた国境線があります。これはアフガニスタンもパキスタンも両方認めていない、しかし実効的な国境線ですが、その結果パシュトゥーンとバローチという二つの民族が完全に分断されたということがあります。その二つの大きな民族が分断されたということで、実はアフガニスタンの問題即パキスタンの問題となっています。
 今度のアメリカのタリバン攻撃によって、パキスタンはアメリカを支援する、つまりテロとの対決をするという決断をしました。その結果いろいろな問題が起こっています。政治的にはますます不安定になったと思います。このデュアランド・ラインの中に、Federally-Administered Tribal Areasという七つのエージェンシーがあります。これはパキスタンには属しているけれども治外法権的な部族社会で、実はここにオサマ・ビンラディンが逃げ込んでいる等々という問題が起こっていますが、ここに今まで踏み入れなかったパキスタン政府がアメリカを支援するということで踏み込まざるを得なくなった。FATAと言いますが、そのエリアからの反政府勢力が急速に伸びてきたということがあります。
 それからイラン革命、ソ連のアフガニスタン侵攻で台頭してきたイスラム過激派がデュアランド・ラインを中心に伸びてきたということがあります。したがってインドの安定はパキスタンの安定、パキスタンの安定はアフガニスタンの安定ということを考えると、1億4000万の世界第2のムスリム国家がテロの温床にならないためにどうしたらいいかという問題が発生しています。パキスタンは単に南アジアの一国ではなく、日本及びアジア、あるいは世界にとって非常に大きな関心事にならざるを得ない状態が出てきたということです。
 パキスタンの政治的な不安定の根底には、政治的な現象だけではなくて、その背後の社会的、経済的な問題があります。大きく言いますと、パキスタンはいまだに持続的社会の基礎条件を欠いた社会です。このことに関してはあとから定義しますが、いま一つは1999年に第3回目のクーデターが起こりました。厳密に言えば第4回です。
 その前夜の状況は1998年の核実験によって経済措置を受けたということもありますが、それよりは経済、農業成長の鈍化です。これは干ばつによるところが大きいのですが、その結果下がり始めていた貧困線以下の比率が上がってきたということと、雇用吸収力が急速に低下して失業率が増えたということがあります。そういうことがあってパキスタンの社会経済的問題は、依然として最初に言った地政学的なものを支える大きな問題としてあります。
 それから日本とパキスタンという二つの国だけ考えると、パキスタンは中国、インド、中近東、中央アジア等の諸国に非常に重要な関係を持っている国です。特にその中の中国カードは重要だと思います。エネルギーは常に言われていることですが、石油のみでなくイランの天然ガスを考えると、ここも非常に重要な問題です。それからこれは中国がカードになりますが、インド洋と東アジア内陸国を結ぶ結節点としての重要性も浮かび上がってきています。
 もしパキスタンが持続的社会に向かって成功裏に開発を進めると、1億4000万のもたらす経済効果も無視できない問題であるだろうし、最後にパキスタンは非常に親日的と言われています。国民に広く共有されている親日的感情はきちんと育んでいかなければならないと思います。しかしパキスタンを支えなければならないというきっかけは国際的な社会におけるパキスタンの地位だろうと思います。
 この国は1947年に英領インドから独立しました。非常に初期条件に問題を抱えており、官僚制度、政治の経験も不十分で、特に第2次、第3次産業の欠落した農業社会であるというところから発展しました。
 それにもかかわらず、1947年に比べるとGDPは実質的に12倍ぐらいになっていますし、平均成長率は4.8%、食糧自給はほぼ達成した国です。それから繊維産業、あるいは輸出向けの中小企業も発達したという意味では、それほどパフォーマンスが悪かったわけではありません。
 しかしながら何が悪かったかといいますと、この国は水資源と人的資源という非常に豊富な資源を持ちながら、水に関しては英領期に開発された80%を誇る潅漑率を搾取しすぎて、そのメンテナンスに失敗したという点。人的資源に関しては、ほとんど顧みることができなかったというほど人的資源の開発を怠ったということ。それから産業構造の高度化がそのために遅れてきて、つまり軽工業から重化学工業へのシフトにもいまだ至っていないこと。文民政権によってガバナンスが悪くなったというたびに世直し的に軍事が介入するということです。
 パキスタンが英領インドから受け継いだ二つの強力なベースがあったとすると、これはミリタリーベースと農業の潅漑だったと思います。こういうことで1999年に現在のムシャラフ政権が誕生しましたが、この政権は優れて構造的な改革に鋭意取り組んで、いろいろな意味で成果が出ています。経済成長率は2000-2001年の2.5%から2003年には5.1%になりましたが、2003-2004年には6.4%まで上がってきました。製造業セクターの成長率も17%に上がってきましたし、財政赤字は3.3%、経常収支は25年ぶりにプラスになって14億ドルの黒字になりました。外貨準備も125億あって、輸入分の11カ月分を確保するに至ったということがあります。
 GDPは名目の為替率でいくとまだ652ドルですが、それでも徐々に上がってきつつあるという状況で、一般的に明るい材料はあります。しかしまだ十分でないというのは、失業率が8.3%あることと、貧困線以下の人口が改良されたといっても、急速に数字に出ているほど改良されていないということが問題だろうと思います。
 一見してムシャラフ政権の経済パフォーマンスはV字型の回復を遂げていると言ってもいいだろうと思います。V字型回復を遂げたのは、過去の軍事政権は2回ありまして、58年と78年の軍事政権のあとには必ず経済がV字型回復を遂げています。
 ところが過去の2回のV字型回復は、いずれも短命に終わっています。その理由は、社会的セクターあるいは人的な投資を怠ったことと、産業構造の高度化を怠ったことです。共通しているのはロー・アンド・オーダーが確保されたということと、政策のコンシステンシーが取られたことです。
 したがって現在のムシャラフ政権のV字型回復が持続可能性を持つためには、この二つの点をケアしていかないといけません。そういうことからパキスタンの開発上の上位目標を持続的社会の構築ととらえました。持続的社会をどう定義するかというのはいろいろ問題がありますが、われわれは三つの問題を基礎的な条件と考えています。
 1番目は社会的機会の実質的な平等が図られていること、第2番目は法秩序の維持と政策の整合性、継続性があること、3番目に社会的なモニタリング能力が構築されていることです。この三つは必要かつ十分条件ではない。それにもかかわらず、この三つの条件を欠いた社会はとても持続的社会とは呼べないということです。この上位目標へのロードマップがまさに戦略の問題で、われわれは三つの方向性を考えています。
 先ほどから短、中期、長期の問題がありますが、経済学では短期と長期ははっきりしています。我々の考え方は、二国間の援助は中長期のスパンを持たなければならないという前提です。短期というのは制度的、技術的条件をギブンとした政策だと考えています。持続的社会を構築するためには、短期的な政策であろうとも中長期的なスパンの中できちんと位置づけなければ、中長期的にその集積の利益をもたらすことはできないという意味で、われわれは中長期にどういうスタンスを取ればいいかということを考えました。
 そのチャートの中にはっきり書いていますが、一つは人間の安全保障の確保と人間の開発があります。この中でジェンダーの役割を強調しすぎてもしすぎることはないというのがムスリム社会です。特にパキスタンの場合は、中間層の形成が著しく遅れています。これが社会的なモニタリング能力の欠落にもなっているので、初等教育だけではなくて中等教育の支援も必要だろうということです。
 2番目は健全な市場経済の発達の促進です。中心は雇用の創出、投資環境の整備等々があります。説明は非常に要します。ノーマティブに、たとえば在地権力が諸悪の根源だと思いますが、この在地権力を崩すためにラディカルな土地改革が必要であるというのは言うは易いけれども、言い続けるだけで、いまの政治的な状況の中では実効性はほとんどない。それに代わるセカンドベストは何かというと、やはり健全な市場経済の発達だとわれわれは考えました。
 3番目が実は非常に重要なことです。地政学的な問題から派生している問題を取り扱うためにバランスの取れた地域社会、経済の発達というのは地域格差の縮小ということです。そのキーになる地域ですが、カラチからペシャワルを結ぶインダスハイウェイがあります。これはインダス川の西岸からデュアランド・ラインを挟むベルトですが、ここは公的セクターからも見放されて非常に後発地域になっています。
 ここに先ほど申し上げたバローチ、パシュトゥーンという民族が分断されて住んでいて、そこの生活状況、開発状況が著しく遅れているということがありますが、今回の地政学的なモメンタムによってますますパキスタンが困難な状況に陥っているということで、ここの地域をケアすること、少なくともそういうものを中長期的な目標に掲げることがどうしても必要だと思っています。
 2、3分時間を超過しましたが、そういうことでチャートを見ていただきますと、一番右のほうにクロスカッティング・イシューがあります。ジェンダーと環境、ガバナンスはいちいち明記するのではなくて、クロスカッティング・イシューとしてすべての案件に考慮しなければならない問題であると思っています。先ほど言った戦略の三つの方向性と、そのブレークダウンがそこに書いてあります。
 我々の報告は援助しなければならない、援助ありきということで始まったわけではなくて、援助を考えるに際して我々自身がパキスタンという経済を歴史的にどう把握するか、どのように長期的な展望を考えているかという、優れて我々サイドのパースペクティブをはっきりさせて、その中で「要請主義を取っている以上政策協議があるはずだ。そのときに我々がそれに対して有効な議論ができるようなインフラをつくっていこう」ということがベースでした。
 したがって実際の選択は、包括的ではなくてかなり基本的なところを押さえていますが、その中でも、ある意味ではメリハリをつけたものになっていると思っています。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。今の中間報告について、意見、コメント等があれば、ご自由に出していただきたいと思います。今の話プラス日本の経済協力がどちらの方向に行くべきか、という点について、少しでも言及していただくと議論がしやすいという感じを持っていますが、この表を見るということでよろしいでしょうか。
(平島明治学院大学名誉教授) この表を見ていただければよろしいと思います。これはパキスタン側が我々と同じように考えているとは限りませんので、それにもかかわらず援助しなければならない、トップドナーとしての位置を維持しなければならないという概念は一切排除して、我々はこういう問題を考えている、こうなってもらえれば長期的に日本の国益にもかなう問題で、日本、アジアの安全保障にも寄与するものであると考えているし、その中で日本の比較的優位なものを選択したつもりです。
 その中でバランスの取れた地域社会の構築というところは、実は社会的セクターと経済セクターとインテグレートされたようなアプローチがどうしても必要ですが、この地域を統監し続けることによってパキスタンが、先ほどシンボリックに申しましたが、まさに1億4000万の国家がテロの温床になる危険性が非常に高いということを認識していただければと思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。千野さん、磯田さん、のご順序でご発言ください
(千野委員) パキスタンはご説明があったように、大変重要性を増していると思いますが、一般国民の親近感、理解度というのはまだまだ不十分ということで、これから策定される計画に期待したいと思います。
 その上で、これからの希望ということで、内容的なことではありませんが、修文する際に考えていただきたいという点を読みながら感じましたので、述べさせていただきます。
 援助コミュニティという言葉がよく使われますが、援助コミュニティだけでわかっているような言葉づかいが大変多いと感じます。どうしてパキスタンに援助しなければならないのか、それが日本にとってどうして重要なのかということを訴えるためにも、もう少しかみ砕いて表現をしてほしいと思います。私が読みながらつまずいた用語がいくつかあって、例えば補完小学校というような表現です。これは言わんとすることはわかるのですが、やはり日本語として、もう少しわかりやすい表現にしてほしいと思います。
 それから最初の意義のところも、この文章全体をもう少しわかりやすくする。例えば最初のパラグラフから、すなわちモニタリングであるというのがあります。この「最初のパラグラフ」と「すなわち」というのはだいたい同じことをいうと思いますが、どういう関係にあるのかということがややわかりにくいとか、あるいは細かいことですが、穏健で近代的なムスリム国家と穏健で近代的なイスラム国家というのは、何か違う意味が込められているのか、あるいは雇用吸収能力の拡大とか、もう少し改善してほしいという感じがします。
 援助計画を誰もが読むわけではないですが、パキスタンや日本の普通の人々にどうしたらわかってもらえるかということを念頭に置くことがやはり必要なのではないかと思います。
(渡辺議長代理) それでは磯田さん。
(磯田委員) 概略ということでしたが、最初に分野横断的イシューということを掲げたことはかなり画期的だと評価したいと思っております。まさしく最後の表に書いてあるように、ジェンダーだったら、ジェンダー分野とするのではなくて、全て入れるということは基本的な考え方として賛同するものではありますが、多くの場合そのようにすると具体的なところが落ちてしまうことが懸念されます。
 文言に書いてあるのも項目だけ、いわゆるジェンダーとか、環境ガバナンスとだけ書いてあって、具体的に各分野で取り組む方向性の中にどういう点で特に入れていくのかという記述がありません。たぶんタスクの中でいろいろご議論があったのかと思いますが、その点もできるだけ深めていただきたい。これに関して何か議論があるようでしたら、お聞かせいただきたく思っております。
(渡辺議長代理) 草野さん。
(草野委員) 1点だけ、磯田さんが言われた分野横断的イシューのところと関係があるのですが、今日のご報告では人間の安全保障が別立てになっていたと思います。しかし実はこの人間の安全保障というものがまさにクロスカッティング・イシューではないか。全ての援助の案件に関して時代的要請と考えれば、人間の安全保障という観点が必要だと私は理解しているのですが、いかがでしょうか。
(渡辺議長代理) これは中間報告ですから、今日の意見をできるだけ取り込むかたちで最終報告にもっていってもらうということでよろしいかと思いますが、いまの時点でリプライできることがありますか。
(平島明治学院大学名誉教授) 実はもうすでに第一次案というものができておりまして、それをお渡しすれば、千野委員の問題は解決するのではないかと思います。雇用吸収力というのは経済学的な用語ですので、それをどのように表現するのかというのはいろいろ問題があります。補完的小学校も確かに専門家の用語ですので、そこは気をつけますが、ロジックや内容に関しては本文を読んでいただければ、十分理解できると思っております。
 磯田委員のジェンダーの問題も、時間的に書きぶりとして斜めに項目に挙げるほうが斜めに読めて、こういうことを問題にしているということがわかるという意味でこのような書き方をしております。一つひとつのジェンダーについてもわかるように書いてあります。同じことが、最終報告で出てくると私の責任になりますが、そのへんの誤解はないのではないかと思います。要約のところで時間の制約があって端折りすぎたということがあります。
 草野先生の人間の安全保障も、大きく言えばそのとおりです。しかしながら人間の安全保障には二つの意味があって、たとえばその中で教育と医療という二つの問題がありますが、それだけでは人間の安全保障ではないということは、まさにそのとおりだと思います。しかしそのように括ると、概念としては少し曖昧になることもありましたので、ここに安全保障ということを入れましたのは、保健医療と教育は人間の基本的な権利であって人間の尊厳にかかわる問題であるということ、その気持ちを込めた意味で書かせていただいたわけです。これをクロスカッティングなイシューと書きますと、今度はその中のジェンダーとか、環境とか、ガバナンスの問題との整合性が出てきますので、このほうが収まりやすいのかなと考えました。
(渡辺議長代理) 次回最終報告をやっていただくわけですが、事前に最終報告案を配布しておきますので、また改めてコメントいただきたいと思います。平島先生、今日は本当にありがとうございました。
 引き続き、新規対象国のタスクフォースについて、対象国自体については既に了解をいただいているわけですが、そのタスクフォースの立ち上げをやっていかなければなりません。内容に関しては、かなり詰めておりますので、その点につきまして、河野国別開発協力課長より資料に基づいてご説明をいただきたいと思います。
(河野国別開発協力課長) お手元の資料の4をご覧いただきたいと思います。前回の総合戦略会議におきまして、次に改定あるいは新規策定の対象国として9カ国を対象とするということについてご了解をいただきました。ここの表にも載っておりますが、タイ、バングラデシュ、エチオピア、ガーナ、ラオス、エジプト、これに加えてフィリピン、更にウズベキスタンとカザフスタンについては一緒に取り扱うという想定で、9カ国ではありますが、8チームのタスクフォースを策定していく必要があります。
 前回、対象国についてご了解いただきましてから、従来と同様に東京タスクフォースというかたちで作業をしていくに際して、まずその主査をどなたにお願いするかということで、現地のODAタスクフォースであるとか、あるいは外務省内、関係省庁、JICA、JBIC、それ以外の様々な方にもご意見を伺いながら、候補になる方をリストアップしていきまして、ここの表に書かせていただきました6カ国につきまして、この方にお願いしてはどうかという特定をさせていただきました。なおここに載っておりません、フィリピン、ウズベキスタン、カザフスタンにつきましては、本日までに絞り込むことに至りませんでしたので、引き続き検討対象としたいと思っております。
 6カ国6名の主査の先生方につきましては、この資料のとおりですが、右側に主な略歴を書かせていただきました。それぞれの先生方の業績は非常に長いリストになるのですが、それぞれの国との関わりにおいて関係する部分のみを抽出したような格好で書かせていただいております。それぞれにつきまして、一言ずつだけ申し上げます。
 タイにつきましては、末広昭東京大学教授にお願いしてはいかがと思っております。末広先生は長年アジアあるいはタイそのものについてもご研究なさっておられますが、特に最近におきましては、2001年からJICAのタイについての国別支援委員会の座長を務めていただいており、さらに国別援助計画と直接繋がりうる作業として、2003年からJICAでのタイの国別援助研究会の座長を務めていただいております。そのような経歴、実績を踏まえて、タイにつきましては末広先生にお願いしてはいかがかと考えている次第です。
 バングラデシュにつきましては、山形辰史アジア経済研究所開発戦略研究グループ長にお願いしてはいかがと思っております。山形先生は、特に最近におきましては、2000年から2001年にかけてバングラデシュに滞在されて、開発研究所客員研究員としてバングラデシュの開発の課題であるとか、開発政策につきまして直に研究なさっており、バングラデシュの現在の開発の方向性、あるいはバングラデシュをめぐる援助についての様々な議論の新しい状況というものを直に目にされてきたということもありまして、そういったものを踏まえてバングラデシュについてご担当いただいたらいかがかと考えております。
 それからエチオピアにつきましては、神戸大学の高橋基樹先生にお願いしてはいかがかと考えております。高橋先生はアフリカ研究を既に長年やっていらっしゃいますが、JICAのザンビア事務所、あるいはそれ以外でもアフリカの開発面あるいは経済開発についての経験が非常に豊富な方でいらっしゃいます。エチオピアにつきましては、近年、一般財政支援をはじめとする新しい援助手法あるいは援助協調の動きが非常に急速に進んでいるところで、エチオピアに対する援助計画をつくる場合にも、そのような最近の新しい状況を踏まえて考える必要があるだろうということで、そういう新しい状況についても知見の豊富な高橋先生にお願いしてはいかがかと考えている次第です。
 それからガーナにつきましても、エチオピアと少し似た面がありますが、ここも非常に新しい援助の潮流、援助協調の動きが、アフリカの中でも非常に活発なところです。そういった状況を踏まえての計画策定ということから、援助協調関係で研究等を行っておられる大野泉政策研究大学院大学教授にお願いしてはいかがかと考えております。
 ラオスにつきましては、原洋之介東京大学教授にお願いしてはいかがかと考えております。原先生は、直接的にラオスにつきましては、JICAの経済政策支援、これはラオスのトンルン副首相を直接のカウンターパートとして、さまざまな経済政策についてのアドバイスを行うという政策支援のプロジェクトですが、そちらの委員長を務めておられて、2000年から現在も含めてラオスの支援について直接携わっていただいております。そのような蓄積を踏まえて日本の援助計画の策定について主査を務めていただいてはどうかと考えております。
 エジプトにつきましては、アジア経済研究所の山田俊一国際経済研究グループ長にお願いしてはいかがかと思っております。紙幅の関係で略歴は少し省略しておりますが、山田グループ長は1978~1981年、エジプトの国家計画研究所の客員研究員や、あるいは比較的最近でも92~95年にカイロ大学の経済学部で客員研究員を務められるなど、エジプトについて非常に長い研究の実績を持っておられて、最近でも、エジプトの開発戦略と貿易政策ということで書物をまとめられるなど、エジプトについて非常に知見の豊富な方であろうと考えております。
 以上、6カ国6名の先生方が、渡辺議長代理とも少し相談させていただきながら、事務局として特定させていただいた候補者です。本日ご了解がいただければ、それぞれの方々に正式にお願いし、それから主査の先生方とご相談しながら東京タスクフォースのチーム編成を考え、それができたところから策定作業に着手したいと考えております。
 なお、これまでどおり、それぞれの東京タスクフォースにつきましては、このODA総合戦略会議の委員の先生方にそれぞれ参加いただきたいと考えておりますので、これにつきましても、ご意向がありましたら承りたいと思いますし、本日でなくても、後日、事務局にお知らせいただきたいと思っております。
 それからちょっと蛇足になりますが、外務省はご案内のとおり8月1日付で機構改革が予定されておりまして、経済協力局につきましても一部機構改革があります。従来、国別戦略計画につきましては、国別開発協力課で全体的に担当してきましたが、8月1日以降は国別開発協力第一課と、国別開発協力第二課というように、国別の視点で担当する課が二つになります。第一課ではアジア大洋州地域を、第二課ではそれ以外の地域を担当することになっております。今後、国別計画についても、そのような分担に従いまして二課体制で実施していくことになるということを併せてお知らせ申し上げる次第です。
(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。今日ご承認が得られれば、早速正式にこの主査にお願いしようと考えております。フィリピン、それからウズベキスタンとカザフスタンはワンセットですが、この二つについてはまだ決まっておりませんが、さらにいい人がいるのであれば、ご推薦をいただいてもよろしいかと思っております。
 それは別にして、6カ国の主査についてこのように考えているのですが、ご承認いただけますでしょうか。それでは早速ご本人と直接交渉をしてお願いをするということにしたいと思います。
 メンバーにつきましては、主査が一番仕事をしやすい人を指名してもらい、その指名された人を私や事務局とともに相談いたしまして、その線で行こうということになれば、だいたいなるわけですが、そういうメンバー構成にしたいと考えております。
 総合戦略会議のメンバーも最低1人ずつ入っていただきたいのですが、ご意向がありましたら、私なり、河野さんの方にお申し越しいただきたいと思います。ゼロというところが出てしまうと困りますが、その場合には改めてこちらのほうからお願いするということもお含みいただければと思います。
 さて次のテーマですが、ODAの中期政策についてです。この点につきましては、まず兒玉審議官からご説明をいただいて、そのご説明に基づいてディスカッションをしたいと思います。兒玉さん、よろしくお願いします。
(兒玉経済協力局審議官) お手元に資料5と別添の1、2をお配りしておりますので、それをご覧いただきながら、ご説明をさせていただきます。前回、第15回の総合戦略会議で古田のほうから申し上げたところですが、新しい中期政策の策定について、私共の考え方をこの場でご披露させて頂きます。
 まず新中期政策策定についての基本的な考え方ということですが、資料5に書いておりますように、ODA中期政策の策定の必要性については、昨年の8月に新ODA大綱が改定されました。その大綱の中で中期政策や国別援助政策を作成し、これらに則ったODA政策の立案および実施を図るということが明記されております。
 また現行の中期政策は、先生方もご案内のとおり、旧ODA大綱の下で平成11年8月、いまから5年前に策定されたものですから、すでに5年の時間が経過しております。また昨年の大綱の改定に際しては、ご案内のとおり、いまある中期政策のいろいろ重要な点を取り込むかたちで改定されたという事実もありますし、今の大綱や国別援助計画との関係というものを改めて整理し直す必要があると考えております。
 前回の総合戦略会議では、牟田先生から現行の中期政策についての評価の結果をご報告いただきました。外務省としましては、その評価の結果をも踏まえまして、現行の中期政策を抜本的に見直して新たな中期政策を策定することとしたいと考えております。
 それでは新中期政策を改定する際、どういう方針に従って改定するのが適当なのかということです。中期政策の内容については、当然この場、即ち総合戦略会議や関係各省庁との協議などを経て固めていきたいと思っておりますが、基本的には現行の中期政策のようにODA大綱に記載されている全ての内容について包括的、網羅的に記載するということは必要ないし適当でもない。したがいまして当面は大綱のさらなる具体化、それを実際の政策に、さらには実施に移す、トランスレートしていく上で必要な事項に絞った中期重点政策といったような位置づけとしたいと思っております。
 また大綱にも明記されておりますが、選択と集中という観点から、ODA大綱では十分具体的に示されていない事項に絞り込んで取り上げていきたいと思っております。
 そこでお手元にお配りした配布資料5の別添1をご覧いただきたいと思いますが、主な論点案ということで、今申し上げたことを踏まえて新中期政策に盛り込むべきと私どもが考えております主な論点をお示ししたものです。本日、委員の皆様からいただくご意見も踏まえ、さらに検討していきたいと思っておりますが、数点補足させていただきます。
 まず第1により具体的な概念説明が必要なものということです。大綱に示されておりますが、それをより具体的に明らかにする必要があるという点で、人間の安全保障の視点ということについて、その考え方およびアプローチをはっきりさせる必要があるのではないかなと思っています。
 第2に、国連におけるミレニアム宣言の中間レビュー会合、国連のサミットが来年の9月に開かれることになっておりますが、それを念頭に置きまして、やはりこのミレニアム開発目標といった国際的な開発目標へのわが国の取り組みを示すという観点からも、重点課題としては成長を通じた貧困削減という課題について、より踏み込んだ考え方の整理が必要ではないかと思って、それを取り上げてはいかがかということです。
 第3に、イラク、アフガニスタン等で積極的な支援を行っております平和の構築という課題、これは今日、大変重要なプライオリティの高い課題ですが、これまではそれぞれのケースごとに経験・知見の蓄積が行われています。一方で、平和の構築ということの考え方、アプローチ、取り組みを含めて、この際、整理するということが必要なのではないか。今後実践していく上で、平和の構築を取り上げてはいかがかということです。
 最後に第4点として、効果的および効率的援助の実施ということです。とりわけ新大綱では現地機能の強化ということ、そのための政策協議やNGOとの連携の重要性ということがうたわれているわけですが、それをより具体的にどういうふうに進めるのかということを、中期政策の中で書き下していくことがいま求められている。それが現地・在外からの希望でもあると認識している次第です。
 なお、新中期政策については、われわれは三層構造と呼んでおりますが、大綱が上位にあり、中位に中期政策ということで、この大綱で決められたODAの理念、あるいは重点事項というものを、いかなる意味でも変更するものにはならない。そういうことは確認をしておく必要があると思います。
 また大綱に記述があり、他方、今回取り上げる中期政策に記述がない事項、選択と集中の結果として、それは起こりうるわけですが、それもまたいかなる意味でも取り上げない事項の重要性が下がるということでもない。中期政策において具体化することの当面の必要性という観点から判断されたものであるということが大事なポイントかと思っております。
 この点は各省を含めて、各方面からそれぞれの立場に応じて、絞り込みの仕方について、いろいろご意見、ご要望が出される可能性が高いと思われますが、それは今後いろいろな観点から議論をさせていただきたいと思っております。
 最後に策定のプロセスですが、別添2をご覧いただきたいと思います。一応、私どもとしては、別添2のようなスケジュールで策定作業を進めたいと考えております。策定の過程におきましては、新大綱改定の際と同じように、透明性を確保し、幅広い意見を聴取するということで、パブリックコメントの聴取、国民の声を反映する機会を設けたいと思っておりますが、最終的なタイムフレームとしては、平成17年の1月末を目途に、できるだけ迅速に作業を進めたいと考えております。
 それから別添2のスケジュールの中にも若干書かせていただいておりますが、大綱のときと同様、今後の取り進め方としては、ぜひODA総合戦略会議で論点整理をお願いしたい。本日はこの点についてもご議論いただいて、できればタスクフォースの設定を決定していただきたく思っております。
(渡辺議長代理) 先だって、新大綱の論点整理をやって、激しい議論が終わったと思いきや、早速、中期計画のほうに入らざるをえない。大変ではありますが、どうしてもやっていかざるをえないことです。
 どういう観点からこの中期政策を策定していくか、まずはこの総合戦略会議で議論をしようというわけですが、そのための素材というか、事務局が考える主な論点をいま兒玉さんのほうから提示していただきました。この点についてご自由な意見を出していただけないでしょうか。
 もちろんこれは最後のタイムテーブルにもありましたように、今日議論が出されれば、そういったものをベースにして、タスクフォースをつくりあげ、さらに論点を煮詰めて、戦略会議とタスクフォースの間で往復をしながら、来年1月、年が明けたあたりで最終案に持っていきたいと思います。
(関山委員) 中期政策の主な論点ということでお聞きしました。どういう観点から中期政策をひねっていくかということですが、当面の必要性ということをおっしゃっておられました。大綱に書いてあるものを取り上げないわけではないということですが、ここに書いてある人間の安全保障、貧困削減、平和構築という新政策は非常に重要なことで、まったく異存ありません。
 しかしながら昨年のODA大綱の改定で、ODAは東アジアを重視する。それからODAの目的として、わが国の安全と反映の確保、国民の利益の増進を初めて明記したわけで、日本の国益に役立つということで、ODAを戦略的に活用する方針を打ち出したと理解しています。
 産業界の立場からですと、途上国の持続的な成長による世界の政治・経済の安定、それから東アジアとの経済連携による日本経済の活性化、それから昨今の原油の急騰というか、イラク問題もありますので、エネルギー安全保障の確保、それから環境問題の解決、こういった三つの戦略的な視点の下で、具体的には例えば電力、鉄道、通信、港湾などのインフラ整備を日本として支援するとともに、わが国が有する優れたソフトインフラというか、技術、知見、人材、および制度といったものを活用しつつ、東アジアと日本が一体的発展を目指していくということが肝要だと思っておりますので、この点を中期計画に反映していただきたいと思っています。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。それでは青山さん、大野さん、草野さん、牟田さん、よろしくお願いします。
(青山委員) 簡単なコメントですが、方向性としてはこの方向でいいのではないかと思います。ただ重点課題の中で成長を通じた貧困削減についてミレニアム開発目標との絡みということでご説明があったと思います。ミレニアム開発目標はどちらかというとサブサハラのようなLLDCに対して非常に整合性のある目標であって、この成長を通じた貧困削減というのはやはりアジアのような少し進んできたところなのではないかと思います。MDGとこの成長を通じた貧困削減が本当にきちんと合うのか、もし合わないのであれば、別立てでミレニアム開発目標に関することは立てたほうがいいかと思いました。
(大野委員) この中期政策の位置づけがますますわからなくなってきたのですが、大綱に書いてあることは全部重要であって中期政策に書いていなくても何も影響を受けない。その中で例えば人間安全保障ということは注釈が必要であろうから書くということになると、これは政策文書ではなくて、注釈マニュアルみたいなものです。そういうふうに書くのであれば、まず名前を変更しないといけないし、位置づけもかなり低いものとして考えたいと思います。
 しかもこれがまた5年間ぐらい縛るとすると、むしろ注釈であれば5年も経てば、ここに書いてあることも概念が変わってくると思いますから、そういう作業は随時あるいは毎年でもやるような作業であって、人間安全保障の概念を5年間堅持するというのもおかしいことで、それでまたわからなくなっています。
 前にそもそも中期というものが要るのかどうかということを提起したし、今言ったようなことであれば名前も当然中期政策ではありえないと思います。そこを少し整理していただきたいと思います。
 ここに書いていなくても重要だというのはそれでいいですが、これだけ見ると、関山さんがおっしゃったように、東アジアの件はどうなったのかとか、あるいは貧困だけではなくて中間層とか、雇用はべつに最貧層だけの問題ではないですし、他にも生産支援、電力、バランスのとれた成長というのは必ずしも最貧層だけをターゲットにするということではないですから、これだけでは小さすぎるというのはODA大綱の議論のときから両論ありました。ただの解説マニュアルというのであればいいのですが、そうであれば東アジアの連携についてのODAの使い方のマニュアルも欲しいと思います。
(草野委員) 大野さんのおっしゃることはもっともだなと思いつつ聞いていましたが、それはともかく、関山さんがおっしゃったように、ODA大綱が新しくなりました、その新しくなった最大のポイント、いくつかあるポイントの一つは、国益という言葉は使いませんでしたが、わが国の安全と反映、それから戦略的な援助ということだったと思います。
 これが旧大綱と著しく違う点でしたので、やはり何らかのかたちでそれが前提となって中期政策がつくられているという雰囲気、あまり国益を強調すると、これまた問題があると思いますが、雰囲気を醸し出すような書きぶりにしていただきたいと思います。
(牟田委員) 今日は論点を示していただいたわけですが、重点課題について、もちろんいろいろご意見はあろうかと思いますが、やはり重点課題を絞って、5年なら5年という期間を明示して、そこで何をするかということを書くことが大変大事だろうと思います。
 ただこの二つでいいかどうかということは、また別の議論かと思いますが、だからといって大綱に書いてあること全てについて、5年の政策を書かなければいけないかというと、やはりその必要はないだろうと思います。大綱に書いてある中で二つが少なければ、三つでも、四つでもいいのですが、そのぐらいに重点を絞って書けばインパクトがあるだろうと思います。
 それからもう1点は、4番で効果的・効率的援助の実施に向けての方策ということで、現地機能、連携という2点を挙げていますが、やはり援助の質の担保ということを考えたときに評価ということは落とせないのではないか。評価を通じて援助の質を担保していくということは従来からも強調されていたわけであり、中期政策の中でも評価についての項目を是非入れていただきたいと思います。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。磯田さん、荒木さん。
(磯田委員) 私は大野委員とはちょっと違いまして、中期政策はつくるべきだと思っています。大綱はある種の理念や憲法的なものですよね。何故ODAをやるのかということと、ある種の枠組みというか、実施上の重要な点について書き込んであるという理念的、憲法的なものです。
 むしろ中期政策というのは、この5年間にODAとしては何を達成しようとするのかという具体的な達成目標を書き込む。あるいは大綱には書ききれない、具体的にどこをどういうふうに取り組んでいくのかということを書き込んでいくということがないと、実施につながらないわけですから、是非やっていただきたいと思います。
 おそらく中期政策の評価をされた牟田先生は非常に実感していらっしゃると思いますし、やはり評価に耐えうる中期政策として書き込むぐらいの必要があると思っています。それは国別の上位にあるわけですから、各国の個別のイシューとはまた違う、それらを通してどのようにODAを使っていこうかという戦略ですので、個別の国別と大綱があればいいということにはならないと思っております。そこを意識した内容にすべきだと思っていますので、是非取り組んでいただきたい。
 先ほどの草野さんの意見にあった国益というようなものには、そのときに反対しました。途上国の支援をすることをもって日本の国益にもつながるという書きぶりで書かれたということがありますが、中期政策の目的に日本にどのぐらい振り返ってくるのかということを書く必要は全然ないわけで、むしろそこは大綱に書いてあるのですから、中期政策はそういうことに繋がるようなものとして、どのような支援をしていくのかということをきちんと書くほうが重要だと思っています。
 検討項目としての論点のご提案がありましたが、基本的に賛同するものですが、先ほどの青山先生のご意見は私もちょっと思ったので、その点の検討も必要かなということと、もう一つは先ほどのパキスタンのクロスカッティングじゃないですが、大綱の中にも環境とか、ジェンダーとか、そういうものに配慮するということは書いてあります。しかし具体的にそれを5年間の中でどのようにするのかということは、大綱だけでは非常に抽象的になっています。議論する論点として、配慮事項なりに書かれた項目の特にジェンダーと環境は大きいと思いますので、それは入れたほうがいいのではないかと思っています。
 それからスケジュールの話までしてしまいますが、大綱のときもパブリックコメントを取る期間があまりにも短いということで、かなり反論がありました。しかもこの場合、時期的に年末をはさんで1カ月というのは、きちんと意見を聞くという態勢ではないように思われます。もう少し時期的なものを考慮した上で時期を取るということをお願いしたいと思っています。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。それでは荒木さん、お引き続きお願いいたします。
(荒木委員) 選択と集中ということが大きな課題になった第2次ODA改革懇談会のときから続いていて、予算が右肩下がりになっている中、いかに効率的・効果的に予算を執行していくかということは非常に重要な課題です。そういう意味で前の中期政策を見たら、セクターごとに全部書きまくっているという感じで、本当にどのようにすればいいのかという感じが出てこない。セクターを大きなプログラムの中に入れ込んでいくという作業が必要ですが、セクターごとに全部書いてしまったら、中期政策にはならないと同時に、膨大な量になって読むのも大変だということで、中期政策はコンパクトにまとめるべきだと考えています。
 そこで重点課題の中の例えば成長を通じた貧困削減の中にセクターごとのニーズを入れ込んでいく。この作業をこの項目の中にもう少し書き込んでいったら見えてくるのではないかという気がします。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。小島さん、砂川さん。
(小島委員) この中期政策というのがこれまで5年というのが期間になっていますが、今後はもう少し短めに期間を設定してもよろしいのではないでしょうかと思います。3年ぐらいのところで見直しをし、そしてそれが全体のODA政策の流れの中で、また大綱の見直しにつながっていくというかたちで考えていけばよろしいのではないかと思います。
(砂川委員) 中期政策という名前がしっくりしないなという感じがするのですが、具体的な政策目標というものを3年あるいは5年ぐらいに向かって作成すると理解したらいいと思います。
 そこでここに書かれている主な論点を見たときに、これは一国のODAの中期政策なのか、あるいはむしろ国際機関の中期政策かという印象を持ちます。それはどちらかというとグローバルな、あるいは人間的なものを強調されたが故です。
 政府開発援助大綱の目的のところには、その二つが確実に書かれているわけで、いわゆる国際社会の平和と発展に貢献をするということと、これを通じてわが国の安全と繁栄の確保に資するということですので、もう少しわが国の安全と繁栄の確保というものを、具体的に明示していく必要があるのではないかと思います。そういった意味で、この論点はちょっと偏りすぎているという気がします。
(渡辺議長代理) ありがとうございました。その他にご意見はありますか。
(浅沼委員) これを見せていただく限りにおいて2点あります。第1点はここの2と3の関係がよくわからないということです。人間の安全保障の視点というのを3よりも上位に置くのか、それともやはりそういう分野での活動というものを3の重点課題の一つとして見るのかというところがよく理解できないというのが第1点です。
 それから第2点は、重点課題のところで成長を通じた貧困削減ということが問題になっていますが、どうも最近は、成長か、もっと直接的な貧困削減かという議論がある意味では神学論争になってしまっていて、レトリックばかり先行して実質がないような話になっているような気がします。
 特に大野さんがおっしゃいましたように、日本のODAが東アジアという地域的重点を持っているとすれば、成長を通じた貧困削減を神学論争にはしないでほしい。むしろ大野さんがおっしゃったように、貧困層が存在するということは経済社会全体の問題なわけですから、経済社会全体の発展のことを考えなければいけないのだろうと思います。
 いろいろな東アジアの政府の主導者層の話を聞いていても、彼らが本当に望んでいるのは当然、貧困削減ですが、貧困削減だけではなくて、国を社会的にも、経済的にも発展させた上で、しかもそれが民主化体制ということになれば、中産階級が大変重要になってきますし、全体の経済社会の発展を望んでいるわけですから、これを、成長を通じた、もしくは通じない貧困削減という非常に狭いところに議論を押し込めないでほしいという気がいたします。
(磯田委員) ODA大綱の目的が二つあるというところが、どうしても理解できなくて、先ほど砂川委員がおっしゃられたように、何々をもって何々と二つ書いてある。その位置関係は明らかにあるわけです。「もって」というそこの部分がむしろ目的であって、その結果としての上位目標である。こういう位置づけだという説明がこの会議でもあったと思いますので、二つの目標と言われていることに関して、その位置づけが違うというところを再認識したいということが、もう一回申し上げたかった点です。
 それからもう一つは、確かに大綱の中から重点として書き込むべきだというものが幾つかあるわけで、大綱そのものを中期政策の項目として全部入れなくてもいいという考えはもちろんあるかと思いますが、例えば東アジアだけということではなくて、もちろん他のことも書いてあるわけですし、そこも議論すべき内容だと考えております。
(砂川委員) この東アジアの経済連携は非常に重要だと思いますが、ASEANの中で一番遅れている国々、例えばインドネシア半島諸国に対する経済協力、援助ということを通して、ネックであるところを救済していくということで、東アジアの経済連携との非常に深いつながりで解決していくわけなので、成長を通じた貧困削減の文脈の中で、ほとんどこういうものは解消できると考えたわけです。
(渡辺議長代理) 大変熱心なご意見をありがとうございました。ただ一言だけ申し上げますと、大綱があって、中期計画があって、国別援助計画がある。そういう三層構造で日本のODAを運営していこうということは、総合戦略会議ができる前からの政府の方針でもあり、その上に今度の大綱でも、先ほど兒玉さんが読んでくださった1のところで明文化しているわけです。そうである以上、中期計画をつくらないという選択はありえないと思います。
 ただ大野さんのご主張にありましたように、重点課題を幾つか取り上げて、それに注釈を加えるようなものであってはまずい。やはり国民に強い説得力を持ったものでなければ、つくる価値はないだろうと思います。その点で私も先ほど荒木さんが出されたご意見に大変同意しております。前回の中期計画ではあまりにも包括的で、言ってみれば、旧ODA大綱をもう一つつくったような感じで、実効性には乏しいものであった。現実にそうではなかったかという感じはいたします。そういう意味で重点の絞り込みということはどうしても必要だろうと思います。
 ただ重点の絞り方については、様々なご意見がありましたし、あるいは重点をこの二つに置いて、サブのテーマを入れ込むことも可能だというご意見もありました。それから5年というのは長すぎるのではないかというご意見がありました。5年程度のという表現を、この前の文献で見たような感じがしますが、ここもやや弾力的であることは望ましいと思います。
 それから浅沼さんのおっしゃった2と3の結びつきが必ずしもはっきりしていないという問題も残っているということには同意いたします。
 等々の問題を残しながら、これをこの会議で詰めていくわけにはまいりませんので、一つの提案があります。今日出されたような意見は大変貴重なものですから、今日のご意見に十分に配慮しつつ、やはりタスクフォースをつくって論点をまた整理していただきたいというわけです。
 ちょうど真正面に草野先生が座っていらっしゃいますが、ODA大綱のときの論点整理があまりに見事であって、実に効率的な議論があれをベースに展開できたと考えております。
 来年の1月までには最終的な成果を出さなければならないということで、時間的にも厳しい中で恐縮に存じますが、草野先生を主査とするタスクフォースを創成したいと願っています。この点ご了承いただけますでしょうか。もちろん草野先生お一人ではできないので、タスクフォースのメンバーを決めなければいけないわけですが、これも草野先生の仕事がやりやすいようなメンバーを草野先生、私を含めて、これから議論して、お願いしたいと考えておりますが、ご一任いただけますでしょうか。
 やや手荒い提案だったかもしれませんが、あくまでも論点の整理でありまして、最終的な決定はここでやりますので、そういうことでご了承いただいたということにさせていただきたいと思います。
(磯田委員) 今だけでも、ずいぶんいろいろな意見がありますので、主査のやりやすいというだけではなく、やはりある程度多彩な意見を取り込むということもきちんとご配慮いただきたいと思っています。
 その意味で、今日はご欠席ですが、伊藤委員などもぜひ入れていただけたらということで、私はご推薦したいと思います。
(渡辺議長代理) 推薦者として、話を承ったことにいたします。
(大野委員) 中期政策をつくらなければいけないので、この予定でやるのであれば我々は何のために議論しているのか、ちょっとわからないところがありますが、それはちょっとおかしいと思いました。
 それからもう一つ、やっていただくのは構いませんが、方法として、その名前も含めて、それからこのイシューに限った1回だけ、1本だけの中期政策ではなくて、横断的なものを順次つくっていくということでしたら非常にいいと思います。そういうものとして中期政策を、形を変えてやるということだったら大賛成です。そういう可能性も入れて、この線で動かさないで通してしまうというような形だと、かなり残念な気がします。
(渡辺議長代理) もうちょっと具体的に。
(大野委員) 私が一番いいと思うのは、これでも多すぎるから、例えば人間の安全保障について今年やる。それは1年半かけても、半年かけてもいいわけです。それが終われば別の話題に移る。そういうものを集成していくと、日本のODA政策のイシュー横断的なものに対しての考えが深まっていくし、外にも発表できる。そのような枠組みになればいいと思いますが、1回だけつくって、それを3年なり、5年なり堅持して、その間は何も横断的イシューを議論しないというのは、もったいないという意味で、これからも議論できるといいと思います。
(渡辺議長代理) 兒玉さん、何かご意見はありますか。
(兒玉経済協力局審議官) 大野先生のご指摘については、私どもの中でも非常に大事な論点だと思っておりまして、そこはまた小島先生の意見にもありましたが、今度議論していただく新中期政策のタイムスパン、寿命をどれぐらいにするかということとも関連してくると思います。
 他方であまり時間をかけすぎてしまうと、その間は何もなく過ぎてしまうものですから、やはり政策としての重点課題、議論を詰めるべきものは何かというところはある程度特定して、それを進める。
 しかしおっしゃるとおり、時間が経つにつれて、当然クロスカッティングでほかの問題も詰めるべきだということがあれば、議論していただくことは当然だと思います。それを中期政策とどう関連づけるかというところは、まだ明確な答えがありません。引き続き検討させていただきます。
(渡辺議長代理) ご意見は様々であろうと思いますが、今日出された案というのは、論点整理をする前の段階、つまり中期計画の策定するための事務局の案、たたき台のたたき台であるわけです。
 このたたき台をもちろん今日の議論をベースにして、夏休みに草野タスクフォースで案を作成してもらい、おそらく9月下旬ごろに開かれる次のこの会議で提案されて、またそこで今日と同じような議論がなされ、その後もこの会議で議論がなされるわけです。
 今の段階で今日の議論を全部入れたら、そもそもタスクフォースが出発しないことになってしまいますから、たたき台を出してもらうという意味で、草野委員会の案をともかく待つ。そしてそこで議論するという方向でいきたいと思いますので、よろしくご協力をいただきたいと思います。
 それでは中期政策についての議論は終わります。G8のシーアイランド・サミットについての事務局報告を吉川審議官のほうからお願いするのが残っております。
(吉川経済極力局審議官) もう1カ月以上経ったので簡単に述べます。お手元にG8の概要と、それから先週、私はワシントンに藤崎外務審議官に同行した日米の援助戦略対話の概要、この二つの文書を参照下さい。
 サミットというのは議長国が何をやりたいかということによって、非常に議論の内容が変わります。今回はアメリカがイラクと、その裏返しとしての中東、元々は「大中東構想」と呼ばれて最終的には「拡大中東・北アフリカパートナーシップ」という名前になりましたが、この二つを主要議題としました。来年はイギリスが議長です。イギリスはアフリカと気候変動の二つを焦点にしたいと言っています。
 その結果、今回は我々が担当している開発問題はかなり後ろに隠れて、もっぱらイラクと中東問題に特化したサミットでした。来年は今年やり残した問題、特にODAの量を巡る議論というものが出てくると思う。G8の中で、この件についての考え方は同じではありません。日本とアメリカ、それから反対側にヨーロッパがいるという図式の中で、来年開発問題に焦点が移ると思います。これは日本にとっては、目下行われておりますODA予算と非常に関係している話です。
 一言で言うと、開発問題が来年に先送りされたサミットだったと思います。
(渡辺議長代理) シーアイランド・サミットについては、今のご説明のシグナルに従って、お手元の資料を読んでいただくということでお許しいただきたいと思います。
 それではそのような次第で、今回の会合はこれで終了いたしますが、次回は9月の後半を予定しております。具体的な日取り等はまた改めて事務局と皆さんとの間で調整をして、ご案内を申し上げます。今日はご協力ありがとうございました。
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