ODAとは? ODA改革

「ODA総合戦略会議」第15回会合・議事録

1.日時

 平成16年5月24日(月)9:30~11:45

2.場所

 外務省南庁舎 893号室

3.出席者

 ODA総合戦略会議委員(ただし磯田委員、小島委員、脊戸委員、千野委員、西岡委員、宮原委員は欠席)。外務省(事務局)より古田経済協力局長他が出席。関係府省、JICA(国際協力事業団)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加。

4.議論の経過

(議事の概要)

 対インドネシア国別援助計画について、主査の浅沼委員より中間報告があった。国別援助計画策定については、新規策定国としてラオス、ウズベキスタン、カザフスタン、エチオピアの4ヵ国が改定国として、タイ、フィリピン、バングラデシュ、ガーナ、エジプトの5ヵ国がそれぞれ対象国として選定された。
次に牟田委員より、ODA中期政策の評価について報告がなされた。
続けて、平和構築とODAについて、事務局からのプレゼンテーションが行われた。
最後に、事務局より、国際協力50周年記念事業、円借款供与国の経済・財政状況の2点について報告があった。


(渡辺議長代理)  おはようございます。第15回の「ODA総合戦略会議」を開催いたします。
 本日の議題は、4点あります。第1番目は、インドネシア国別援助計画についてです。主査の浅沼委員より中間報告をいただきます。
 また、今日は、秋元インドネシア大使館公使にご出席いただいていますので、後ほどご発言をいただきたいと思います。秋元公使は、第2次改革懇談会のオーガナイザーとして、また、戦略会議立ち上げのときにも大変なご尽力をいただいた方です。
 第2に、今後の国別援助計画策定対象国を決めていません。本日まとまらなくても、本日の議論をベースにして、次回あたりには確定したいと考えています。
 第3に、ODA中期計画の評価です。かねてより牟田委員がこの問題に取り組んでおられるわけですが、このODA中期計画の評価についてのご報告を、今日は比較的簡単にご報告いただきたい。
 3番目は、「平和構築とODA」についてです。事務局からのプレゼンテーションを受けて、議論をしたいと思います。
 4番目ですが、事務局からの2つご報告があります。一つは国際協力50周年記念事業についてのご案内。もう一つは、円借款供与国の経済・財政状況についての報告です。
 早速ですけれども、浅沼先生から、「対インドネシア国別援助計画」についてのご説明をまず承りたい。よろしくお願いします。

(浅沼委員)  それでは、中間報告をさせていただきます。
 インドネシアの国別援助計画の経緯と現状については、資料2に、「国別援助計画の新規策定及び改定の現状と予定」という表がありますが、ここに簡単に説明されています。この「対インドネシア国別援助計画」の原案はジャカルタタスクフォース、ここにいらっしゃいます秋元公使が中心になってつくっていただいた原案を中心に、東京タスクフォースと何回かの協議を重ね、今、作成中です。もう第2稿ができておりまして、各省庁との間の調整を続けているところです。
 インドネシアの国別援助計画ですが、インドネシアの重要性については、資料2にもありますように、金額ベースでは、日本のODAの受け手として最大国になっています。その重要性については、これは各人いろいろの視点からその重要性を考えていると思いますが、重要であるということについては、合意があると思いますので繰り返しません。
 インドネシア経済の過去30年ぐらいを見てみますと、ちょうどスハルト体制と重なるわけですが、その間において、インドネシア経済は大変発展を遂げてきました。「発展」といったときには、それは経済成長率のこともありますし、貧困削減、社会的な発展、いろいろな分野がありますが、それらを通じて大変目覚ましい成果を上げてきました。
 そして、ODAは、この開発発展政策に沿ってインドネシア政府を支援する形で行われてきました。特に日本は、その国際的な枠組みであるCGIのメジャープレイヤーとして、当初から非常に大きな役割を果たしてきました。ですから、インドネシアの経済開発の成果の一部は、当然、日本のODAの成果と言えると思います。
 図式化してどういう形でインドネシアの経済・社会の発展があったかといいますと、当初は経済安定に努めて、しかも経済安定は維持してきた。これはマクロ政策の話です。それから、インドネシアにとって都合のいいことに、2次のオイルショックがあって、インドネシアの主たる輸出品である石油・ガスの交易条件が大幅に改善しました。それを受けて、そこから得られる政府の税収を、農業部門と教育・保健部門に重点的に投入して、最初にグリーン・レボリューションを達成しました。
 その後、石油・ガス価格が下落し始めたころに、経済全体の経済政策の改革を行い、軽工業化への道をつけました。今、国連その他の基準によりますと、準工業国の地位まで高めました。その間、これも皆が認めることですが、インスティテューション・ビルディングにはそれほど注力をしてきませんでした。インスティテューション・ビルディングといったときには、金融部門、シビルサービス、政治も含めた全般的なガバナンス・ストラクチャーを改善するというところには注力してこなかったので、これがインドネシアの経済社会の脆弱性になっています。それが原因でアジア危機が起こって、今は、アジア危機の後遺症と、同時に起こった体制変革を原因とするいろいろな政治・経済問題に悩まされている。これが現状です。
 我々が対インドネシア援助計画を考える際に一番基本に置いたのが、インドネシア経済社会にとって何が大切であり、何が重要であるかを考えるよりも、当面は何が重要か。我々が今つくろうとしている援助計画のタイムスパンを念頭に置いて、当面何が必要かということを考える。これを基本にいたしました。
 その結果出てきたピクチャーは大体次のようなものです。
 今、インドネシアで何が起こっているかというと、アジア危機後の経済安定は一応達成しました。ただし、今はまだまだ低成長に甘んじています。4%前後の成長率に甘んじている。その問題点は、中期的に見たときに、今のインドネシアの雇用状況を悪化させる方向に向いていく点です。途上国の場合、失業率だけではとえらきれませんが、いわゆるオープン・アンエンプロイメントは10%弱まで伸びている。毎年、労働市場に新規で参入する若者が 200万人から 250万人と言われる中で、雇用状況が現在の経済停滞のもとではどんどん悪化していくだろうと思います。
そこで起こり得ることは、今まで達成してきた貧困削減、社会的発展その他が、雇用状況の悪化を原因として後戻りしてしまう可能性があることで、これが当面の一番重要な問題です。ですから、何とかして今の低成長、投資危機を、投資の水準が非常に低くて、ほとんど投資危機と呼ばれるような状況にあると思いますが、それにまつわる雇用問題、これを何とか政府の政策の中心の一つとして考えなければいけないだろうと思います。
 その際に我々が考えたのは、一体、政府がいろいろな政策をとって、しかも、それを支持するような援助を行ったときに、実際に経済や社会への効果としてあらわれるにはどのくらい時間がかかるかということです。インパクトタイムを考慮に置いて、時間軸に沿ってやるべきこと、我々が支援するべきことを考えてみました。
 短期的には、先ほど言いましたように、一応、経済安定は達成しているので、残る問題は、中期的な財政の持続可能性の問題です。
 中期的には、先ほども申しましたように、雇用問題が非常に大きくクローズアップされている状況から、投資環境の整備が最重要です。それには、いろいろな局面がありますが、その中でも、ODAとしてできることとしては、経済インフラを考えています。経済インフラは、インドネシアは、高成長時代には、政府の財政を投入して経済インフラを改善してきたわけです。しかし、今に至っては相当劣化しています。これが投資環境を悪くしている一つの重要な要因です。
 同時に、今のインドネシアでは、いわゆる法制が守られていません。ルール・オブ・ローというものは長期の課題ではありますけれども、これは中期ですから、それに絞って、何とかして投資家の信頼回復を図れるような形でのガバナンス問題、特に、法制度、ジュディシアリー部門での改善をしなければならず、それを支援していく必要があります。これを持続的な成長目標として、一つの重点局にしています。
 長期的なインパクトしかないものも放っておくわけにはいかず、これは非常に重要ですから、この点については、民主的公正な社会構築に寄与する形で、ガバナンスにまつわるいろいろなインスティテューション・ビルディングの支援、貧困削減や社会的な発展のベースになる教育・保健等の分野への支援を続ける。これが第2の重点になります。
 第3の重点が、こういうインパクトタイムとはかかわりなく、常時、インドネシアとして行わなければいけないものを支援する項目として、「平和と安定」という重点項目を立て、ここでは、国家の統一、平和や治安維持の問題、環境政策の問題、こういうものを扱う。このような感じで進めております。
 そこで、このような重点化された援助政策を執行する際に幾つかのことを考えなければなりませんが、その点を2~3申し上げたいと思います。
 第1が、この会議でも問題になっている選択と集中の問題です。インドネシアは、ODAに関してインドネシアはトップ・レシピアントで、かつ、案件で言うと、円借ではそれほど数は多くない。当然、十指で数えられるような大型のものになりますけれども、技協を含めたその他の援助案件としては 100以上にわたります。しかも、我が国のインドネシアODAに占める重要性を考えますと、分野として、この分野はやるけどあの分野はやらないということは望ましくない。多分、多数の分野での我々のODAは期待されるし、それは続けなければいけません。
 しかし、それぞれの分野においては、ここでは、それぞれの分野を取り上げますと、金額も限られてきますし、この「選択と集中」は原則として守っていく。そうしますと、一つの例は、これは教育とか保健にあらわれ、例えば教育については、いわゆるベーシック・エデュケーションを中心にやっていく。保健分野に関しては、主として感染症などを中心にやっていく。いわゆるプリベンティブ・メディスンを中心にやっていく。このように「選択と集中」をやっております。
 それからもう1点、「重点化」といったときに、一体何をインディケータに使うかという問題があります。一つの援助の量、金額となりますと、当然、円借を利用すると、金額的には大変大きくなって、経済インフラ、社会インフラが、先ほどの重点項目の中でも金額的には非常にハイライトされてきます。一方、開発戦略の作成、政策の策定、制度整備、キャパシティ・ビルディングとなりますと、これは人的投入が多くなってきて、ここでは相当な数のセクターにわたるだろうと予測されます。経済インフラ改善についても同様で、量的に多いということは、ただ単にプロジェクトの融資を中心にしていくのではなくて、ここで実施機関等にお願いしたいのは、この分野についても、その分野の開発の戦略、政策の策定、制度整備、キャパシティ・ビルディングという面で十分に支援体制をつくり上げることだと考えていて、それを強調したいと思います。

(渡辺議長代理)  浅沼先生、どうもありがとうございました。
 議論に移る前に、秋元公使からもご発言をいただけますでしょうか。

(秋元在インドネシア
 大使館公使)
 インドネシア大使館の秋元です。
 浅沼先生から包括的におっしゃっていただきましたので、それほど付け加えることはないのですけれども、3点だけ、若干の重複を恐れずにご指摘されていただきます。
 第1点は、インドネシアが直面している課題ということで、浅沼先生から幾つか指摘いただきましたけれども、私からは、民間投資主導の持続的な経済成長が、インドネシアにとって大事であることを強調させていただきたいと思います。
 もちろん、貧困削減も大事な課題でありまして、現在、インドネシアの基準で言いますと、人口の17.4%、約 4,000万人の貧困層がいます。さらに、完全失業者と休職中の人を合わせて 2,200万人ぐらいいます。こういう貧困削減の問題に対応することは、もちろん重要ですけれども、それだけでは問題は解決しない。要するに、こういう貧困層、失業者を減らしていくためには雇用を創出していく必要がある。そのためにも、先ほど浅沼先生からご指摘がありましたように、より高い経済成長が必要です。そのためには、外国ないしは国内の投資を促進していく必要がある。そのための投資環境整備が当面の最大の課題である。これが今のインドネシア政権の基本的な認識になっておりまして、これはインドネシア政府だけではなくて、ドナー側、特に世銀、アジア開発銀行、日本を含むドナー諸国の基本的なコンセンサスとなっております。
 さらに、今、インドネシアは選挙の時期に入っておりまして、7月5日からは大統領選挙が行われるわけですけれども、各大統領候補とも選挙公約の中に掲げているのは、まさに投資の促進であり、そのために投資環境を整備していくのだということを掲げておりますので、これは10月以降、新しい政権が発足しても基本的にはこういう政策は維持されていくだろうということだと思います。
 第2点が、重点分野・重点事項でございます。このペーパーの中では、3ページ目の「我が国援助の方向性」の中の (2)「対インドネシア援助の重点分野」ということで幾つか項目を列挙させていただいております。広い分野を列挙しておりますけれども、その中でどうやって「選択と集中」を図っていくかということが課題だと思います。
 浅沼先生がご指摘されましたように、インドネシアにおいては、これまで50年間、経済協力をやってきておりまして、特に技術協力の分野では、各セクター、各省庁に日本の専門家が入り込んだり、あるいは、研修生を呼ぶような形で、ものすごく広範なネットワークが確立されております。私は、これ自体は日本のアセットでありまして、これを無理に絞り込む必要はないと思います。むしろ大事なことは、円借款、無償、技術協力という3つの大きなスキームをどうやって使い分けていくのか、どうやって連携させていくのかということが重要だろうと思います。
 例えば円借款は経済インフラを中心にやっていくとか、無償資金協力は貧困削減とか、ガバナンスを中心にやっていくとか、技術協力は政策支援、人材育成であると、きちんとしたメリハリが必要だと思います。また、それぞれのセクターにおきましても、そのセクターであれば何でもやるということではなくて、きちんとセクター別の援助計画をつくり、その下で、保健なら保健で何をやるのか、教育なら教育で何をやるのかということを明確にしていくことが必要だと思います。
 第3点目ですけれども、ここが一番悩ましいところですが、インドネシアの援助ニーズが大きく変わっていく、要するに、政治・社会・経済の変化に応じて援助ニーズが変わってくる。それに応じた援助手法をあみ出していかなければならないことだと思います。
 一つは、中央から地方への地方分権化が相当ドラスチックに進んでおります。地方の開発計画の策定、公共サービスの供与、これがほとんど地方に権限が委譲されておりまして、例えば、保健とか基礎教育の分野でそういうサービスを向上させるために日本が支援するとした場合、基本的には、地方を直接ターゲットにしなければならない。他方、地方は人材が不足している、財源が不足しているということで、なかなか思うようにはできない。そうすると、特定の地域を選んで、その地域の政策策定から実際の公共サービスの供与の実施の部分まで、相当まる抱えで支援していかなければならない。そういう形で、モデル地域化、プログラム化というものを相当進めるような新しいスキームを考えていかなければならないかなと思っております。
 それから、第2番目が、市民社会の役割が増大してきております。今、キャッチフレーズ的には、住民参加型の開発ということが言われておりますけれども、そういう中で、案件形成において、どうやってNGO、市民社会を取り込んでいくのか。それから、実際に実施段階において、実施のパートナーとしてNGOとどう連携していくのか。こういうことが課題でありまして、こういう新しい援助ニーズに沿ったような援助手法、スキームをこれから考えていかなければならないということだと思います。

(渡辺議長代理)  どうもありがとうございました。全体にわたって非常にわかりやすく、大変説得力がある中間報告になっているように思われます。中間報告ですから、これからさらにご意見を聴取して最終報告まで持っていくわけですが、まずはここでご議論をご自由にいただければありがたい。

(大野委員)  2点お聞きしたいのですけれども、インベスター・コンフィデンスを高めることは、国内・外国、両方のインベストだと思いますが、そのためには、まずインドネシアの例で見ると、一番問題なのは、政治がどうなるかという不安定さです。これは日本にとっては、ある意味で不可抗力の面があります。これはベトナムにはない話、中国にもない話ですけれども、それがどのように展開するかによって、ある程度、援助を、量的、方向的に変える、そういう条件的なものはないのかということが一つです。
 2番目に、インドネシアの投資環境が改善しない第2の理由として、政策にコンシステンシーがない、政策が悪いということがあると思います。これはベトナムでも同様です。今、選挙で闘っている人々がみんな民間投資促進をうたっているというだけでは、やや説得力に欠けるところがありまして、ベトナムの国別戦略の中では、投資戦略や政策を含む状況が改善しないと数量的な方向性を考えるということを書き込みました。
 今、日越の共同イニシアチブというものをやって、実際にベトナム政府がちゃんと政策を変えているのかということをモニターしているところです。それから、先方の政府と大使館、JICA、JBICは常に対話のメカニズムを持って、彼らの政策が本当に変わっていくことを担保しようとしているメカニズムがあるわけですけれども、そういうものについては、インドネシアでは考えられないのかということです。

(渡辺議長代理)  どうもありがとうございました。
 一通りご意見を伺ってから、後でお答えをいただくことにいたします。

(砂川委員)  浅沼先生のご説明の中で、インスティテューショナル・ビルディングが欠如していたということを反省点として言われましたけれども、今までインドネシアに対しては、国際機関を含めて各ドナーは大量の援助をしてきたわけで、日本のみならず、いずれのドナーもこの面を強化してこなかったのか、そうだとしたらそれは何故なのかという点を、ぜひ触れていただきたい。と申しますのは、今後の重点項目に入っている民間主導の持続的な成長を導き出すためには、インスティテューショナル・ビルディングが充実していることが条件となって望ましい。政治的には、一般的には政治の安定とかいう問題に加えて、そういうインスティテューショナル・ビルディングの面が実際にできているのかというところが、非常に関心があるのだろうと思います。これが2点目です。3点目は、民間主導の持続的な成長実現のための支援というところで幾つか書いておられますけれども、先ほど、秋元公使からもご指摘がありましたが、今までにいろいろな技術援助をやってきたわけですが、例えば財政の持続可能性の確保という面が一つ、投資環境改善のための経済インフラが一つ、裾野産業・中小企業振興が一つということで、非常にスポットになっていて、なかなか体系したものになってこないという反省点があるのではないかと思います。
 したがって、これからの、特にインドネシアのような大きな国に対しては、技術支援を、いわゆる戦略的、集中的にやっていくと同時に、それをどう体系づけていくかが大事ではないかと思います。

(渡辺議長代理)  どうもありがとうございました。
 それでは、青山さん、伊藤さんの順でご発言していただいて、その後、浅沼さんからお答えいただきたいと思います。

(青山委員)  たいへん本格的なご説明をありがとうございます。私は経済学者ではなくて、保健医療から社会開発に取り組んでいますので、その立場から少し意見を述べさせていただきたいと存じます。
 民間主導の投資があり経済が発展してはじめて社会開発も可能であるということは理解しており、そのとおりであると思っております。しかし、このところの治安上の問題などは、経済優先で進めてきたために、格差が逆に拡がったことによって起こっているという則面があることは否めないと存じます。
 今回示された開発課題や重点分野に、国内格差の是正があげられていないようです。しかし、インドネシアのように、人口が多く、しかも島がたくさんあるところでは、ジャワ島と他の島々との間に大きな格差があると思われます。ODAの役割の一つは、弱いところに目を向けて、国内格差を是正していくことではないかと思います。
 本日いただいたのは要約なので、もしかしたら元の本文には含まれているのかもしれませんが、経済的側面の分析が中心で、社会的側面についてあまり述べられておらず、何に投資するかということになって、突然、保健・教育などがでてくるという印象を受けました。保健医療・教育など、社会的側面に関する分析、特に国内格差に関する分析も加えていただきたいと思います。
 インドネシアでは、妊産婦死亡率が非常に高いです。乳児死亡率などは改善していますが、妊産婦死亡率だけは、たとえばベトナムなどと比べてもきわめて高い状況です。それは何故なのか、いろいろな議論があると思いますが、医療の面での格差によるのか、あるいは、ここには述べられていませんが、ジェンダー的側面の問題もあるのではないか、もう少し分析していただけるとよいと思います。
 まとめますと、国内格差の是正について焦点をあてていただきたいということ、社会開発的側面からは、保健医療・教育・ジェンダーなどに関する分析をもう少し加えていただけるとよいのではないかと思います。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。
 伊藤さんはインドネシアのメンバーのお一人でいらっしゃいますから、草野さん、先にご発言ください。

(草野委員)  幾つかあるのですけれども、昨日も、ある地方自治体で、ODAの勉強会のようなところで講師として招かれて話をしました。そこで感じたことは、特にインドネシアという国の名前も挙がりましたけれども、日本国民のODAに対するイメージがよくありません。私に言わせれば、大半が誤解に基づいているわけですし、先ほどの浅沼先生の最初の説明で、インドネシアの過去30年間の経済成長と日本のODAが果たした役割を十分に理解できました。
 ところが、この国別援助計画が、今言いましたような誤解に基づくイメージを有している日本の国民に対するある種のメッセージであるとすれば、この前文のところで、よかったところをもう少しきちんと書いた方がいいと思います。今日、浅沼さんが冒頭にご説明していただいたようなことが非常にわかりやすかったので、もったいないと思いました。インドネシアの過去30年間の経済開発戦略をお手伝いするような形で、CGIのメジャードナーとして役割を果たしてきました。しかしながら、いわゆるインスティテューショナル・ビルディング、先ほど砂川さんがご指摘なさったような部分では、他のドナーも同じでしょうけれども、注力してこなかったことによって現在の問題が起きている。ここら辺のところをもう少し詳しくお書きになった方がいいのではないかと思います。
 と申しますのも、何となく、白地のキャンバスに新しく計画を描くというイメージが、どちらかというと強いような感じがしましたので、ぜひそれを試みていただければと思います。それは、先ほど公使もおっしゃったように、この間、私もインドネシアへ行って、経団連の会長さんなどにお話を聞きますと、技術協力による人的ネットワークは知的財産として存在しているわけで、そのような点も強調された方がいいのではないかと思いました。
 もう1点はこれからのことですけれども、私も雇用創出のための環境整備が一番重要だと思いますが、これは非常に悩ましい問題で、他方で、いわゆる住民参加とかルール・オブ・ローとかの改善をしなければいけない部分があるわけで、これとバッティングするのではないかと思います。例えば大型の経済インフラを、リハビリを含めて行うとなると、住民移転が伴うわけで、それは別にコタパンの古い案件だけではなくて、これからも考えておられるような案件において、この2つの問題は調整するのが悩ましいと思いますが、これはどうお書きになるのか、お考えを聞かせていただければと思います。

(伊藤委員)  私も作業部会に参加している一員ですけれども、いろいろと議論にも参加しました。そういう背景の中で、私もいろいろな考えがあって申し述べたのですが、必ずしも私の考えがそのまま反映されているわけではなくて、また、実際に民主的なルールですから仕方がないと思いますけれども、幾つか私の考えを述べたいと思います。
 一つは、本論に入る前に、今、草野先生がおっしゃられた日本のインドネシアに対するODAの実績は、確かに評価される面も大いにあったと思います。もう一方、やはりネガティブのインパクトがあったことを我々は否定できないと思います。そうしたことを赤裸々に書いておいた方が、相手方、あるいは、これを読む日本国民も信頼を高めるのではないかと思います。
 本論ですけれども、私自身、日本のODAは持続的な経済成長の方に力を入れて、民主的で公正な社会というか、ローカルガバナンスの方は長期的な戦略であるという考え方ですけれども、皆さんがお持ちかどうかわかりませんが、この第2稿の中に、5ページ目に書いてありますので、読ませていただきます。「地方政府の行政能力、地方財源、アカウンタビリティ等の問題もある。開発政策の円滑な実施のためには、これら問題の解決が急務である。地方分権が進もうと開発計画のグランドデザインを保革し、地方間の調整を図るという機能において、中央政府の役割は重要性を増している」、このようにして、今回の第2稿でも認めているわけです。そういった意味において、民主的で公正な社会、ローカルガバナンスがきちんとできていないときに、従来的な持続的経済成長を促すようなODAが、果たして生きてくるのかどうかということに私は疑問を持っています。
 昨年9月にミッションで行ったときにも、経済調整担当大臣ドルジアートンとかユースカツラ国民福祉調整担当大臣も、これまでの大企業、大規模事業を中心にした開発は間違いであったということを認めています。また、カツラ大臣におきましては、大企業そのものは、雇用の面においても、GNPその他においても、インパクトが限られているということをおっしゃっています。そういうときに、今度の民間主導というのはどういう意味なのか。すなわち大規模企業を意味しているのか、あるいは中小を意味しているのかわかりませんけれども、そういったときに、経済成長のために経済インフラを推進するといったときに、また大規模、輸出振興型のインフラに向けていくとすれば、また同じような過ちを犯してしまうのではないかという気がしてなりません。
 私も今回ミッションに行って驚きました。向こうの大臣レベルの人たちがそういったことを言うとは思わなかったのですが、そういったことを異口同音に言うということがありました。ただ、こういった経済インフラの方で前向きな発言はジャパンクラブの関係者ということで、ここから見ても、どうしても日本主導型のODA政策になりかねないという心配があります。
 それから、次に、一つ心配なのは、資料1の3ページ目に書いてありますように、「開発課題を追求するに際しての問題点」ということで、「インドネシア政府としての包括的かつ具体的な中期的開発は戦略が明確でない」、「インドネシアの開発課題の中で、投資環境整備に対する対応が欠落している」。また、「政府の開発は計画の企画・調整機能が十全とはいえない」という中で、果たして受入れ体制の準備が不十分であることがここで書かれています。そういった中に日本のODAがきちんと効果的に使われるためには、果たしてこういう問題点を解決しないで進んでいっていいのだろうかという気がします。
 最後に、私は、秋元公使おっしゃったことに賛同しますけれども、市民社会の役割ということで、昨年のミッションに行ったときにも、元環境大臣のエム・サリームさんもおっしゃっていましたけれども、インドネシアの市民社会と日本の市民社会との協力・交流が必要であると。そういったところに日本のODAが出ないだろうかということを発言されていました。実は、NGOの世界におきましても、どういうわけか知りませんが、インドネシアにかかわるNGOの数が極めて少ない。フィリピン、タイ、ネパール、ベトナム、カンボジアには多いのですが、インドネシアは少ないということにおきまして、草の根シミュレーションレベルにおける非営利の世界の協力関係が非常に弱い。そこにおいて、ぜひ、日本とインドネシアの揺るぎない関係をつくるためにも、そういったセクターの活性化を促すようなODAにしていただけないだろうかと思っています。

(渡辺議長代理)  どうもありがとうございました。
 さらにご意見がおありかもしれませんが、後の議題も込んでおります。これはまだあくまでも中間報告の段階ですから、本日、様々に出されたご意見を、それぞれ最終報告に持っていくのに有効な意見を取り入れるという方向でいいと思いますが、浅沼さんから若干のレスポンスをいただければと思います。

(浅沼委員)  最初に、大野委員から、日本の国別援助計画全体に一種のコンディショナリティをかけるのか、かけないのかというお話がありました。我々の考え方は、ここでは重点を決めて、それぞれのプロジェクトを推進していく上において、おのずとそれは出てくるのではなかろうかと考えます。
 例えば経済インフラを中心にやると言っていて、確かに、政府部内でも、これはやらなければいけないという意識があり、各省庁横断的な委員会をつくって、大々的なインフラ啓作の策定を今進めております。でも、そのつくられたインフラ計画が適当なものでなければ進まないわけで、そういう意味では、自動制御装置がそれぞれの分野でできていると思います。
 次に、政策のコンセステンシーに関しては、今までのところ、政府の方で6人の経済政策支援チームをつくり上げて、向こうの政府と、経済政策運営に関して全般的に常時政策対話を持っています。そこで、何とかして政策のコンシステンシーを保つようにと努力がされておりまして、そのメカニズムは、これは本年の10月までですけれども、今後も何らかの形で残していただくと、大野さんが懸念されたようなことがうまくいくのではないかと思います。
 それから、インドネシアの場合、現地の大使館を中心とする関係者が積極的に政策対話を進めておりまして、これは秋元公使から言っていただいた方がいいかもしれないのですけれども、必ずしも相手方の政府だけではなく、ODA有識者懇談会といいましたか、これを定期的に持たれています。同時に、CGIの枠組みだけではなくて、重要な問題に関しては、それに関与しています。例えばアメリカの大使館、世界銀行の事務所に在インドネシア大使館が一緒になって、政府の首脳部に話をするというような対話が続いております。それが一つのメカニズムになっていると思います。
 第2に、インスティテューション・ビルディングについて、今までやってこなかったではないかと思います。これは、幾つかの面で大いに反省するところもあると思いますけれども、まず第1に、金融サイドに関しては、1980年代後半に金融制度の大改革を行いましたが、性急に過ぎて間違いだったと思います。それぞれの立場で、世界銀行も、その他のドナーもアドバイスはしておりますけれども、これは多分間違いだったと思います。
 それから、シビルサービス自体の改善については、いろいろとアドバイス等は行われてきたのですが、結局はうまくいかなかったのが現状だと思います。その一番大きな原因は何かといいますと、シビルサーバントの給与が低すぎることです。同時に、政府の正規の予算を通じた財源が少なすぎる。したがって、これは軍において顕著ですけれども、その他の省庁においても、オフバジェットの支出を持っている、持たざるを得ない。それを一体どうやってブレークスルーしていくかというのが大変大きな問題で、なかなかうまくいかなかったのが現状だと思います。
 技術援助に関しては、まさにおっしゃるとおりで、本当は、もっともっと体系的な考え方を進めていかなければいけないので、これは反省点と考えていけるのではないかと思います。
 国内格差の是正ですけれども、所得配分で見る限り、インドネシアの国内格差はそれほど、他の途上国に比して大きくはありません。比較的平等な所得配分を維持してこられました。ジニ係数で見て、0.3から0.35の間を、いろいろな調査によりましても推移しております。それから、よく使われる指標で、国民全体を5階層に分けて一番の貧困層がどれくらい消費しているかという、その消費に占める割合では、一番下の階層は、全消費のうちの10%ぐらいを消費している。状況としては、そんなに悪くありません。しかしながら、社会的には、やはりジャバ、バリ、スマトラに比べまして、その他の外島で貧困地域が存在することは確かで、それは民主的で公正な社会づくりという重点化の中にその辺を含めて、何とか支援をしていこうと考えております。
 社会的な側面の分析は、全体の文章も後で見ていただきたいと思いますけれども、実は、青山さんが問題にされているジェンダーですが、これもインドネシアの場合には、他の途上国と比較して、特に南アジア諸国と比較して、そんなに悪くないです。就学率、識字率その他を見てみましても、特に年をとった人口を除くと、ほとんど男性と同じです。就学率でも、ジュニアハイスクールまでほとんど同じくらいの就学率を持っていまして、このジェンダー問題が、インドネシアで、社会を揺るがすような大きな問題かというと、そうではないという判断を、私個人はしています。
 それから、青山さんが指摘なさった、マターナルヘルスのところは、確かにいろいろな指標に比べて遅れてはいます。どうも、私自身は、それは、インドネシアが大きな国で、盛んに、アウトリーチということで、過疎地にもヘルスクリニックその他ができるようにはしていますけれども、例えば、子どもを産むときに、どれくらい病院もしくは医師の介護のもとにそれを行っているかという指標を見ますと、確かに低いです。これは、インドネシアの広大な地域その他と関係があるだろうと思われます。
 草野委員からは、過去の経済支援の総括的な評価みたいなものを含めたらどうかというご指摘がありまして、これは持ち帰って、皆で考えさせていただきたいと思います。ただ、余り断定的なことは、政府の文書となりますと、あちこちで膨大な分析がある中で、一つの局面をとらえれば反論できるようなことを書いてしまっていいのかなと、大筋においてという書き方でいいのかなと、一つ悩ましいところがありますけれども、これは検討をしたいと思います。

(草野委員)  もちろん、ネガティブなところも含めていただいてという意味です。

(浅沼委員)  はい。
 それから、雇用重視という政策を続けていったときに、いろいろなバッティングが起こるのではないか。これについては、体制移行があってから、インドネシアも、環境問題、こういう大規模プロジェクトを実施する際の移住の問題、住民参加の問題は十分に注意していますので、この問題がなくなったとは決して言えないと思います。ですけれども、だからといってやらないのではなくて、十分に注意しながらやっていく。2つの目的の間に、ある種の緊張があることは認めつつ進めていかないと、どうにもならないのではないかという気がします。
 それから、最後に、伊藤委員から、ここで我々がインパクトタイムを中心に提起した長期的にしか達成されないような課題のところの、ガバナンス問題を最初にタックルしなくて、一体、中期的な問題がタックルできるのかというシークエンスの疑問がありました。これは多分意見が分かれるところで、いろいろなドナーの反応を見ておりまして、特に、全般的にインドネシアに関与できなくて、セクター的に相当絞り込まなければいけないところに関与しているドナーの間では、基本的な問題だからガバナンスの方を重視した援助をしましょうという方針をとっていると思います。
 我々の考え方は、それは結構だけれども、それだけでは、むしろ事態を悪化させるのではなかろうか。これを一番最初に、私も強調させていただきましたし、秋元公使も強調させていただいたのですけれども、このまま雇用問題を放っておいたら、むしろ社会不安を増加させ、今までの貧困削減努力の成果を後戻りさせることになりますし、そういうわけにはいかない。この中期的なインパクトを持つところをやはり重点の一つとして積極的に進めていかなければいけないと考えております。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。
 これは中間報告でございまして、さらに若干お時間をかけた上で最終報告の形になっていきますので、メンバーの主張も取り込んでいただければありがたいと思います。
 民間投資主導の持続的成長に持っていこうという一つの明確な戦略に基づいて、それに至る短期・中期・長期、それから、その短期・中期・長期のすべてのベースにある環境保全とか教育拡充という、そういう非常にコンシステンシーを保った報告のスタイルになりそうで、心強く思っています。
 それにつけても、インドネシア政府が、浅沼報告でうたわれるほどにコンシステンシーを持っているかどうかの方がむしろ問題でありまして、その辺のすり合わせを、さっきおっしゃっていたようなインドネシアの諮問会議、あれは日本人のみで構成されているものでしたか。

(浅沼委員)  いいえ。今の経済政策支援グループは、日本人の民間人が6人、主としてエコノミストで構成されています。それに対して、インドネシア政府側でも、タウンターパートチームと称するチームを、大統領令によって作ってくれまして、そこでも民間人、政府も入っていますし、大統領府に直接チャネルを持っている大臣が1人入っています。

(渡辺議長代理)  対インドネシア援助が御報告のような方向に行くとなった場合、委員会がモニタリング機能を持ち、そういう機能を制度化できないか。行政的に難しい問題もあるかもしれませんが、議論すべき問題ではあります。
 他の国別援助委員会の問題についてもあてはまりますが、国別援助委員会のつくった計画の実施をどう担保するかは、我々は一度も議論していませんね。

(砂川委員)  先ほど、秋元公使からも指摘があった点ですが、いわゆる援助のやり方、ニーズが変わっているときに、今まで営々としてやってきた、我々日本のODAのやり方をもう少し考え直さなければいけないということが、国ごとにだいぶ変わってきていると思います。だから、国別援助計画を出すときに、そういうことを踏まえて書くことが非常に大事だろうと思います。その点だけ付け加えさせていただきます。

(渡辺議長代理)  全く当然のことだと思います。心すべきでしょうね。
 それでは、次の議題、今後の国別援助計画策定対象国に移ります。かねてより話し合いが始まっているものですが、改めて議論してみたいと思います。
 この点につきましては、河野国別開発協力課長よりまず説明をいただいて、これをベースに議論したいと思います。

(河野国別
 開発協力課長)
 国別開発協力課長の河野でございます。今後の国別援助計画の策定ないしは改定につきまして、事務局としての考え方をご説明させていただきまして、ご議論いただければと思います。
 お手元の資料のうち、資料2を見ながらお聞きいただければと思います。
 先に結論めいた話を申し上げますと、事務局といたしましては、手書きで恐縮ですが、国名の左側に●印を付けている国を、次の新規作成ないしは改定の対象国にしてはどうかと考えている次第でございます。現在、先ほど浅沼先生からご説明がございましたインドネシアを含めまして、ご案内のとおり、モンゴル、インドネシア、インド、パキスタンの4か国について作業を進めておりまして、これらにつきましては、夏から年内ぐらいにかけては、この戦略会議に最終的な報告という形でお諮りすることを予定しております。
 その4か国が終了しますと、既に策定済みのものを含めて、20か国について国別計画ができたことになります。この資料の中で、ご案内のとおり、各国ごとの実績というのはフラクチュエーションがありますので、データが使えるうち、直近の5年、98年から2002年の平均のODA実績を支出純額ベースでとった額で並べておりますけれども、それで見ると、この20か国は、大体、日本のODA全体の約6割を占める形になります。
 ここでも議論いただきました、昨年8月に改定したODA大綱におきまして、国別援助計画は、主要な被援助国について策定することが謳われておりますので、こういった日本の実績なども見ながら、引き続き新たに作っていく国を考えていく必要があると思っております。
 同時に、国別計画の特に初期に作ったものにつきましては、徐々に改定の必要性が出てきているとことを事務局として認識している次第です。そういった意味で、改定というものを十分に考慮しながら国を選んでいく必要があるだろうと思っております。
 国の選定についての考え方は、依然、現在やっている国を選ぶときに、この戦略会議でご議論をいただきました際に、事務局としての考え方もご説明いたしましたが、そのときに、幾つか考える要素として、我が国の援助量、対象国の我が国への外交、あるいは、ODAの中における重要性、貧困問題などを含めたグローバルな課題への対応といった要素があるだろうとの御議論がありました。さらに、この戦略会議でのご議論として、日本は確かにアジア重視だけれども、アジアに特化するのではなく、地域的なバランスも考える必要があるだろうというご議論があったと思います。さらに事務局で考えましたのは、新たなODA大綱にあるような要素を考慮するということで、例えば人間の安全保障の要素であるとか、PRSPの策定といった新たな援助潮流の中での動き、さらには、現地機能の強化という観点から、現地のODAタスクフォースの問題意識も適切に拾い上げていきたいと考えております。また、地域バランスという意味では、以前の議論の中において、中央アジアあるいはアフリカなどからも拾うべきではないかというご議論があったことを想起させていただきます。
 そういった要素を考慮しまして、まず新規策定に関しましては、この表で申し上げますと、13位にあるラオス、21位に当たるウズベキスタン、その次に当たるカザフスタン、38番目のエチオピア、この4か国を対象にしてはどうかと考えております。
 ラオスというのは、いわゆるメコン地域、インドシナ地域あるいはASEANの新規加盟国の中で国別計画がまだない唯一の国で、そういった観点からも、作る必要があるのではないかと思っております。
 ウズベキスタン、カザフスタンというのは、中央アジアからもというお話があったことを踏まえてですが、いずれも余り実績に差はないということでありまして、かつ、中央アジアについて、地域の観点から計画を考えていく必要があるのではないかということもあって、初の試みとして、これを一つのタスクフォースで扱ってはどうかと考えておりますが、個別に見てみますと、やはり開発課題なども当然違うことがありますので、もし同時に扱うことが無理であれば、いずれか1国を先にすることもあり得るかと思っております。
 エチオピアにつきましては、援助の実績という意味からは、今申し上げたような国からは少し下がりますけれども、例えばこのGNIper Capitaが 100という数字にもあらわれておりますとおり、ここにあらわれている三十数か国の中でも貧困問題が非常に厳しい国であるといったこととか、あるいは、現地において、援助協調の動きが急速に進んでいるということもありますので、アフリカからも一つ入れてはということを考えますと、エチオピアがふさわしいのではないかと考えている次第でございます。
 それから、改定につきましては、先ほど申し上げた●印をつけた残りの国ですけれども、これらはいずれも2000年3月ないし6月ごろに現行の国別計画ができております。例えばタイなどにつきましては、その後の経済成長で援助需要が変わってきているということもありますし、あるいは、一部、特にインドシナ地域においては、自ら援助国化を目指す動きもあったりして、そのような新しい動きに対応した援助計画を見直す必要があるのではないかと思っております。
 フィリピンにつきましては、ご案内のとおり、先般、大統領選挙がありまして、アロヨ政権が、エストラーダ政権からの途中交替ではなく、本格的な政権になっていくということもあり、これも2000年前半に作った計画はそろそろ古くなってきているのではないかと考えている次第です。
 バングラデシュにつきましても、今、PRSPの策定が進んでいて、今年の12月にできる予定になっております。そういった動きを踏まえながら、現地ODAタスクフォースが問題意識を持って、現行の援助計画の見直しの必要性を感じておりまして、そういったものに対応していきたいと思っております。
 ガーナにつきましても2000年に作ったものがありますが、それを作って以降、HIPCに適用申請をしたということもあって、日本からは円借款を借りられなくなってきているという事情の変化もあります。そういったこともあり、また、これも援助協調の動きが激しいこともあって、これも現地ODAタスクフォースから、ぜひ改定をという声もあります。
 エジプトにつきましては、ガーナとは逆ですが、2000年につくった時代には、債務削減の影響で円借款が出ない時代につくったものでしたので、その後、少しずつではありますが、円借款の供与も再開してきています。そのような状況の変化も踏まえて、時期的にもそろそろ改定の時期ではないかと考えている次第です。
 以上申し上げました国々は、比較的数が多く、いずれも新規策定ないしは改定の必要性を感じておりますが、同時に、一時期に動かすのはなかなか難しいだろうと思っておりますので、国についてこの会議で、これを変えていただきますようであれば、主査の先生の選定に移るわけですが、そういった主査の先生のご都合などを見ながら、大きなイメージとしては、恐らく2グループぐらいに分けて作業にとりかかるのかなと考えている次第でございます。

(渡辺議長代理)  どうもありがとうございました。
 次の新規計画策定国と、5年前後経っているものがありまして、その後の事情変化で改定した方がいいという国の名前は、これと全く同じであったかどうか記憶にありませんが、かなりオーバラップしたものと思いますが、出ております。
 そのときにもいろいろ議論があったのですが、今予定されている国が、今年の夏から、遅いものでも秋口にひとまず終わりますので、次のものを今決めて、そしてタスクフォースメンバー、少なくとも日本国内のメンバーの交渉にそろそろ入らなければならないところですので、いろいろなご意見を出していただければと思います。

(青山委員)  質問ですが、ブラジル、ネパール、モロッコが外してあるのは、どのような理由からでしょうか。

(河野国別
 開発協力課長)
 まずブラジルについて申し上げますと、規模という点からは、ブラジルは候補としてもおかしくない国だろうと思っております。特に、従来、中心国であった国が、経済情勢の影響で、中所得開発途上国にカテゴリーが落ちてきたりしておりますので、むしろ需要が増えているところはあると思います。他方、これは極めて実務的な問題ですが、円借款の実施及び技術協力、この2点がブラジルについてはメインになりますが、いずれも先方の制度の問題なので、若干手続的にいろいろと解決しなければいけない問題もありまして、実は、今週、日・ブラジルの技術協力に関する協議を行うのですが、そういう前さばきといいますか、少し解決しなければいけない事務的な問題が先にあるかなということで、今回の対象からは外しております。国として、作らなくていい国と思っているわけではございません。
 ネパールにつきましても、規模と面からすればやってもおかしくない国というのはそのとおりでございまして、他方、この間も、開発フォーラムがあったのですが、現地の、特にこれはマオイストの問題ですが、現地の事情が余り落ち着いていないことから、落ち着いて計画を作っていくような状況に現地がないかなと。もう一つは、地域バランスということで、スリランカ、インド、パキスタンを策定作業したところで、南西アジアに少し集中するところがありますので、これは作るとしても、もう少し、次ぐらいのグループでもいいのかなと考えております。
 モロッコにつきましても、これも決して排除しているわけではございませんで、大きく言えば、アフリカ大陸ということで、全体の作業のキャパシティということも考えて、先ほど申し上げた、新規のエチオピア、改定のエジプトを考えた場合、あの地域からさらにもう1国入れるかどうかということで、これもエチオピア、エジプトを選考させていただきたいと思ったという、そういった思考過程でございます。

(渡辺議長代理)  そのほか、新規策定、改定国について、河野さんから示された順序について、ご意見がございますか。

(荒木委員)  ウズベキスタンとカザフスタンですけれども、別々というよりも、地勢的に一緒の方がいいと思います。立場は少々違いますが、両国はいろいろ話し合っているところがありますので、一緒の方がいいのではないかと思います。一つのチームで2つ押さえた方がいいと思いますが、いかがでしょうか。

(河野国別
 開発協力課長)
 初めての試みとして、そういったことを念頭に置いて考えております。
 他方、例えばウズベキスタンとカザフスタンは、この表でも、GNIper Capitaをご覧いただきますと、550と 1,350というように比較的広がりがありますので、できればそのようにしたいということで、それを追求したいと思っておりますが、どうしてもやることが違うねと。これは主査の先生とのご相談にもよると思いますが、どうしても無理なようであれば、2つ一緒にやること自体を目的にはしないということかなと。ただ、一義的には、一緒にやることを目指すことで考えております。

(渡辺議長代理)  違うものを同じチームが見て、異なっているか、同じか、異同を観察することも、国別計画を作る場合の一つの実験的な試みとしては、かえっていいのかもしれません。独立に行うという考え方もあり得ますが。
 しかも、ご存じのように、日本の中にプロが育っていない分野ですから、2国をやるほど人材豊富かなという印象もありますので、大変ですけど、1チームでやってはどうかという印象を持っておりますが、いかがでしょうか。

(砂川委員)  中央アジアというのは、私が推薦したのですが、カザフとウズベキスタンでは、援助に対するものの考え方が完全に違っています。要するに、カザフは、製品等をという話で、ウズベキスタンは、どちらかというと、ユニークな戦略がもっと大きい。両国にはそういう違いがあり、援助のやり方がだいぶ変わると思います。私は先ほどから、やり方を考えなければいけないと申し上げているのですけれども、そういう面が浮き彫りにされるという面では非常にいいと思います。
 それから、この援助計画というのは、ここでは恐らく方針になってくると思います。余り細かい援助計画にはならないと思います。そういった意味で、これを一緒に扱うということではいいかと思います。
 もう1点付け加えさせていただきますと、これは国という意味ではないのですが、援助量の問題に加えて、今までやってきた援助が非常に効率的に生きた国と、効率の面でちょっと疑問がある国と、そういう国をあえて取っていくことが、新規ではない場合、もう一回やろうという改定のところでは必要ではないかと思います。そういった意味では、例えばフィリピンなどは、余り効率が上がっていないという面があるように思います。タイなどは、円借は要らないという状況、それに対してどう対応するか。だから、効率という面を考えての選択も必要なのではないかという気がします。

(渡辺議長代理)  具体的にみてプライオリティに変化が出てきますか。

(砂川委員)  はい。そういう意味では、フィリピンなどは、効率という意味でやってみるに値するところがあるのではないかと思います。

(荒木委員)  もう一つお聞きしたいのは、今挙がっているのは、ラオス、ウズベキスタン、カザフスタン、エチオピアとなっていますが、国数はこれで限定するのでしょうか。あるいは、国数は、できればやってもいいと考えているのでしょうか。その場合、どのくらいの国数が限界だという考え方はありますか。

(河野国別
 開発協力課長)
 新規といいますか、国別計画を幾つまで作るのかという、いわば外延といいますか、そこにつきましては、まず申し上げたいことは、今申し上げた4つの国で打ち止めにするという考え方ではございません。先ほど、青山先生に対するお答えでも申し上げましたが、必要性があるだろうけれども、時期的に、あるいはキャパシティの問題から、同時期にやっていくのは難しいというところがありますけれども、この4か国で打ち止めにするつもりでないことをまず申し上げたいと思います。
 他方、どこまで広げるのかということにつきましては、今やっている国を選んだときのこの場での議論を思い出してみましても、最終点をどこにするかは、この会議での議論でもなかなかまとまらなくて、とりあえず作る必要があるところを作りましょうという結論になったと記憶しております。当面は、そういった形で、必要と考えられるところを作っていくぐらいで、あえてどこまでという限界点を明らかにすることは、今のところは予定しておりません。

(渡辺議長代理)  今、河野さんから出た国の数を今年全て完成できるはずもありません。2年ぐらいのうちに委員会を立ち上げて、最終報告も出しうる、そういう形のものだと考えないといけない。
 時間的なことは相手国も現地のスタッフたちもいろいろ気にしているところでしょう。我々が了承するのみならず、相手国で働いているスタッフたちにも、合理的な説明をしなければなりません。

(河野国別
 開発協力課長)
 もしご議論が必要であれば、もちろん。チームの立ち上げなどにも時間がかかりますので、一般論としては、早ければいいということはございます。

(渡辺議長代理)  どうでしょうか、もう一回事務局で詰めてもらう必要はありませんか。

(草野委員)  必要ないと思います。このご提案があったのは、前回の会議だったと思います。前回の会議は2か月前だったと思います。ここでまたご議論をという話になりますと、さらに1か月あるいは2か月、会議までの時間がありますよね。それを考えるとやはり必要はないと思います。

(渡辺議長代理)  わかりました。

(荒木委員)  一般的には、国別援助計画の国数が少ないのではないかという質問が随分寄せられています。理由はいろいろあるでしょうが、外務省側の事務体制が問題なのか、それとも一般的に、専門家が日本の中で少ないのか。そういうことで、国別援助計画というのは、実際は実施機関等を含めて、できるだけたくさん早くつくってもらいたいという要望が挙がっているので、それにどう応えていくのかということは、やはり考えなければならない問題だと思っています。

(渡辺議長代理)  先ほど河野さんから、既に策定されている国々のみを合計してみても、ODA総額の6割だそうです。今度、今ご提案があったものも含めると、どのくらいになるのでしょうか。

(河野国別
 開発協力課長)
 シェアのところにパーセンテージを書いてありますので、そこを足し算すればいいのですが、実は、10位以下ぐらいになってきますと、シェアとしては決して大きくありませんので、これをやってもシェアが大きく伸びるということではないし、そういう意味でのカバレッジの限界効用というのは、今つくっていないことをやっていくことは必ずしも高くないというのが事実としてございます。

(渡辺議長代理)  むしろ、テーマとして重要性があるということですね。

(河野国別
 開発協力課長)



 はい。

(青山委員)  先ほどのご説明で、ブラジルとネパールを外した理由については理解できましたが、モロッコに関しては、エジプトとエチオピアをやるために後回しになっているということだったように思います。もしそうなら、エジプトは見直しなので、むしろ新規のモロッコを先にした方がよいのではないかと思います。チュニジアが既にできているのに、ずっと人口の多いモロッコがまだないというのも、おかしいように思います。また、エジプトについては、中東情勢を考えると、また状況が大きく変わることもあるのではないかという懸念もあります。

(渡辺議長代理)  河野さん、その点について何かご意見がありますか。

(河野国別
 開発協力課長)
 いろいろとそういったお考えはあると思いますが、エジプト、モロッコは、この時期を見ると、余り量は変わらないという意味ですけれども、過去、一時、円借款が出なくなった時代があったがゆえにこのくらいになっておりますけれども、もっとさかのぼって、あるいは、全体として見るならば、やはり中東地域の中においては日本の援助の第1位の受取り国であって、かつ、既にあるものが、正直言って、もうだいぶ古くなってしまっているということがありますので、今あるものをそのまま残すよりも、今、エジプトの方をぜひ直したいと思っている次第です。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。
 それでは、青山さんからもそういうご議論があり、また、その他も非常にデリケートで、どちらを先にするのか、後にするのかということは、こういう世界の場合は、それほど決定的な合理的根拠があるものとは言い難いと思います。それで我々の任期はともかくとして、この会議は永続するわけですから、カバレッジはだんだん増えていくということで、今回、河野さんからご提案があった国別ODA計画については、草野さんの今のサポートもありましたが、これでスタートするということでよろしいでしょうか。
 それでは次のテーマに進みます。
 次は、ODA中期計画の評価につきまして、ODA中期政策評価検討会のメンバーである牟田先生がいらっしゃいます。資料に基づきましてご報告いただきます。

(牟田委員)  それでは、資料3に基づきまして、簡略にご説明させていただきます。
 「背景・目的」のところに書いてございますように、現在のODA中期政策は、1999年にできました。5年間の援助指針として策定されたもので、今年度がその最終年になります。これを踏まえてこれまでの取り組みを検証し、中期政策見直し作業の参考として提言をしたというものでございます。
 この評価の大きな目的は、予定の期限が切れるということで、次の中期政策を作るに当たり有効な提言をすることではないかと思っております。検討メンバーは、そこに書きましたような構成でございます。なお、これは有識者の検討会ですが、これと並行して、外務省の方でも中期政策の位置付け、あるいは、他ドナーの動向等についてご検討されていると承っておりますので、それを次の中期政策作成の際、あわせて参考にしていただければと思っております。
 もう一つ付け加えておきますと、この中期政策とは一体どういうものかということでございます。一般的には、中期政策というのは、ODA大綱と国別援助計画の中間に位置付けられると考えられます。したがいまして、大綱以上の具体性と、国別援助計画を包含する総合性が求められるわけでございます。しかし、99年の中期政策には、もう一つの要点がございます。それは、99年の中期政策ができましたときの旧大綱は92年にできております。したがいまして、7年前にできた大綱を具体化することは当然あるとしましても、その7年間に起きた大きな変化を反映しているわけでもございます。例えばアジアの経済危機も起きておりますし、国際的な援助協調の流れも出てきております。ですから、この99年の中期政策は、単に大綱を具体化しただけではなくて、ある意味では、旧大綱のニューバージョンの役割も果たしてきたというところが、現在の中期政策の、分析をするに当たって考えなければいけない一つの要点かと思います。
 「評価の対象・方法」でございますが、中期政策は、中身が、「重点課題」、「地域別援助のあり方」、「援助手法/実施運用上の留意点」に分けて記載されております。その全般を評価対象といたしました。その中で、「重点課題」、「地域別援助のあり方」につきましては、妥当性と有効性を検証しました。「援助手法/実施運用上の留意点」につきましては、適切性を検証いたしました。
 そこで、資料に書いてございますように、「妥当性」というのは、中期政策が上位概念である旧ODA大綱、あるいは、それ以降の7年間の国際的な開発ニーズに合致してつくられているかどうかを検証いたしました。
 それから、「有効性」ですが、普通、有効性といいますと、それが具体的にどういうアウトプットをもたらしたかということだと思いますけれども、後で「限界」で述べますように、そのような資料がございませんので、ここはインプットベースで検証を行ってみました。
 「援助手法/実施運用上の留意点」につきましては、これは「適切性」ですけれども、中期政策を適切に実施し、検証するための取り組みが行われたかどうかを検討いたしました。
 「限界」といたしましては、この検討では、外務省の活動を中心に実施しております。ご存じのとおり、ODAの中で、外務省の活動は、金額ベースでは半分ぐらいしかないわけで、他の関係府省庁、実施機関、国際機関については、部分的な情報収集しか行っておりません。
 それから、現行の中期政策では、定量的な目標、アウトプットの目標が示されていませんので、実際に政策によってどれだけ変化をもたらしたかに関しての分析はできなかったということでございます。
 投入から最終目標までの因果関係の証明は、マクロな問題で困難であるところから、成果のアトリビューションの分析は行っていません。
 1ページめくっていただきますと、簡単な評価結果が載せてございます。まず「重点課題」につきまして、妥当性と有効性。この場合の妥当性というのは、上位目標に沿っているかということですが、これは全体として妥当であったと判断いたしました。それから、有効性に関しましても、概ね有効であった。「概ね」とついていますのは、ものによっては、例えば薬物に関しましては、中期政策にかなり書かれているわけですが、実際、これに関する援助に関しては、金額的にも、人的にも投入が少なかったということで、「概ね有効」という書き方にしております。
 それから、「地域別援助のあり方」ですが、これは、妥当性につきましても、有効性につきましても、概ね妥当であったと判断いたしました。
 「援助手法/実施運用上の留意点」ですが、まず「連携の有無」として、全体として様々な連携が図られたのではないか。例えば、NGOとの関係につきましても、協議会の開催など大きな進展がございました。これで十分かどうかについては、まだご議論があろうかと思いますが、少なくとも、この中期政策ができまして、今日までの間、かなりの進歩が見られたことは事実だと思います。ただ、一方で、ODA関連の府省庁間連携につきましては、情報交換等は行われておりますけれども、連携をして援助するというレベルにはまだ達していないと考えます。
 それから、「検証システムの有無」でございます。これは主に評価に関するところでございますが、事前評価の導入をはじめとして、これは非常に大きな進展があったと思います。ただ、政策レベルの評価に関しましては、ほかの国と比べまして、我が国が特に遅れているわけではございませんけれども、まだ十分ではありません。評価手法についても、さらなる整備が必要であろうと判断いたしました。
 それから、「国民参加促進のための取り組みの有無」、「情報公開の取り組みの有無」に関しましても、これもこれで十分かということについては議論があると思いますけれども、格段の進歩があったと高く評価をいたしております。
 以上のような評価結果に基づきまして、次のページに主な提言が書いてございます。
 総論的に言いますと、(イ)ですが、これは先ほど申し上げましたように、中期政策とはそもそも何かということでございます。この次に中期政策を改定するとすれば、何を考えなければいけないかということですが、実は、昨年改定されたODA大綱は、非常に具体的なところにまで踏み込んでおります。つまり、従来でしたら、中期政策に書くようなことまでODA大綱に書いてしまった。次に中期政策を書くときに、より具体的にしなければならないかということになると、それではそれと国別援助計画との関連性はどうするのだろうというようなことが問題になりました。次の中期政策を考えるに当たりまして、まず、中期政策とはそもそもどういうものかということを議論する必要があるだろうと思います。これに関しましては、外務省でもいろいろご検討されていると承っておりますので、そういうお考えをまず私どもに示していただきたいと思います。
 それから、(ロ)として「結果重視」でございます。有効性ということで分析いたしましたが、当然、援助結果が問題になります。そのためには、やはり中期政策において、結果重視のアプローチを強調するとともに、そういうことの評価ができるような中身に中期政策をすべきであると思います。
 (ハ)の「選択と集中」ですが、成果を重視するのであれば、当然「選択と集中」は避けられません。そうしたときに、中期政策の中で、「選択と集中」が実施できるような仕組みを入れることが考えられます。
 それから、結果に関しまして、MDGsにつきましては、我が国は賛意を示しているわけでございまして、MDGsとの関連につきまして、やはり触れないわけにはいかないだろうということでございます。
  次に「重点課題」でございます。中期政策が策定された後に様々なイニシアチブが出ております。これは、我が国として、こういうことをやるよということを国際的に約束したわけですが、当然、このイニシアチブが次期の中期政策に反映されなければいけません。一方で、基本的には、今後、イニシアチブを出していくに当たりましては、中期政策を具体化する形でイニシアチブを出していきませんと、大綱、中期政策、計画、イニシアチブ、こういうものが体系的になっていかないと思います。そういうことも考えて次の中期政策をつくるべきだろうということでございます。
 それから、「地域別援助のあり方」ということで、国ごとということも大事ですが、先ほどのウズベキスタン等もそうですが、地域レベルの政治経済交流の活発化ということで、リージョナル・アプローチということも今後考えていく必要があるだろうということで、まずリージョンを考え、それをさらに国、セクターへと分けていく、こういう考え方も取り入れてはいかがかということでございます。
 最後に、「援助手法、実施運用上の留意点」ということで、他組織・他機関との連携につきましては、従来どおり進めていただくことが大事だろうと思います。特に国際援助協調に関して、我が国の考え方、取り組み方針、こういうものを中期政策の中で具体的に示すことが必要でしょう。それから、国内機関間の連携につきましても、目標に応じてスキームを組み合わせる方向へと移行することが望ましいということでございます。

(渡辺議長代理)  牟田先生、どうもありがとうございました。
 今のご報告について、質問等がありましたら、ご発言いただきたいと思います。

(大野委員)  大綱があって、そして、今、各国の国別援助計画をつくっているときに、この文書がどういう性格、役割を持つべきかという問題提起は非常に面白いと思いました。特に私が思ったのは、中期政策というのはこれからも要るものなのかどうかということです。やはりODA大綱であれだけ議論して、中身まで踏み込みますと、各国についてはもうできつつあるときに、中間にあるにせよ、同じような性格のものは要らないような気がしています。
 むしろ、性格が異なる文書をつくっていくこともあり得る。一つ考えられることは、ODA大綱というのは、我々が議論した結論だけを書いてあるわけですから、それに至る議論がなかなか反映されていない。例えば世界銀行でも、ADBでもどこでも、毎年テーマを決めて会議をしたり、文書を出すわけです。例えばNGOとの連携、あるいは、MDGsでもいいし、そういうようなものを1年に1回ぐらい取り上げてやることは、広報にも役立つし、我々、援助にかかわる人々、国民との対話にも役立つような文書が欲しいなと思います。全然違う文書になりますけれども、似たような文書をつくるよりも、一つのテーマを毎年議論するような、そういう場、文書だと、もっといいと感じました。

(荒木委員)  この中期政策はそもそも、5年バージョンとか2年バージョン、3年バージョン、量的な方向を示すのが基本的な流れでした。それで、日本経済が先行き不透明だということで、量的な方向は示さずに、政策の中身をやれということで、やれと言われてもそれは突然の話で、本当は量的にどういう方向で5年間どう伸ばしていくのかを示すのが中期政策の基本でした。
 その当時は、国別援助計画もしっかりしたものがないし、もちろん、大綱もなかったということでしたが、これだけ国別援助計画をしっかり作っていこう、大綱に基づいてつくっていこうという流れの中で、中期政策というのは量的な方向を示すものでなければ、重複することで、余り意味がないのではないかと考えます。

(渡辺議長代理)  この点は、先ほどの牟田先生の報告の中でも、やや逡巡があったような発言ぶりでしたが、先生からさらに何か一言。

(牟田委員)  今のお2人のご発言につきましては、どちらもごもっともご意見だと思います。中期政策をどうするかというときに、中期政策は作らないというオプションも当然あっていいだろうと思います。
 ただ、先ほど、国別援助計画を幾つつくるかというお話がございまして、20とか30になったとしても、全部で170ヶ国あるわけですから、あと100ヶ国以上については計画がないという中で、今のODA大綱は粗すぎはしないかという議論もあると思います。ですから、そういう弱小の国にとっては、中期政策が直接上位の計画で、それが大綱まで行ってしまうと上位すぎるかなという気もいたします。そこのところは、やはり多くの議論があるところだろうと思います。

(古田
 経済協力局長)
 古田経済協力局長 今いろいろご議論いただきましたけれども、ある意味では、私どもが今悩んでいるラインにほぼ沿ったご意見でございまして、何となく、大綱があって、中期政策があって、国別計画があってと言われてきているのですけれども、いざ改めて子細に検討してみると、おっしゃるような疑問とか議論が当然出てくると思います。
そういう意味で、先ほどご紹介がありましたように、私どもも今議論中ですので、私どもなりに、そういう悩みも含めて整理をして、かつ、どういうものをつくるかというと、どのくらいの時間をかけて、どう打ち出していくのかということもございます。そういうことの中で、私どもなりの案を、できれば次回お出しさせていただきまして、そしてご議論いただくということで、評価委員会の方は、現在の政策の評価をきっちりやっていただいたということで、今後どうするかは、むしろ、この場で私どもの案をご覧いただいて、率直なところをまたご議論いただければと考えております。

(渡辺議長代理)  次回にまたその議論が改めてできればありがたい。この点についての議論は、本日は以上としたいと思います。
 それでは、あと事務局報告が3点ございます。先ほど申し上げましたが、「平和構築とODA」、「国際協力50年記念事業」、「円借款協力の経済財政状況について」、この点についてよろしくお願いします。

(渡邉政策課長)  パワーポイントを用いながら、平和構築へのODAの活用についてご説明いたします。お手元に資料4が配られておりまして、基本的には、これをパワーポイントでお示しいたします。本日は、イラクとアフガニスタンの復興支援につきましてご紹介させていただきます。
〔資料4 1ページ下段参照〕
 イラクは、ご案内のとおり、6月末の政権委譲をめぐって非常に重要な政治の季節を迎えております。今お示ししているものは、3月に統治評議会のウルーム議長らが総理を表敬した写真です。
〔資料4 2ページ上段参照〕
 日本のイラク復興支援15億ドルの無償資金供与につきましては、迅速に実施していくことが重要でして、これまで 8.5億ドルの実施を決定しております。
〔資料4 2ページ下段参照〕
 今のイラクにとって、治安情勢が非常に重要な要素になっておりますけれども、現下の治安情勢の下でもイラク国民に直接行き届くような支援を行うということで、様々な工夫をして行っております。周辺国であるヨルダンなどを拠点にした様々な情報収集や調整、あるいは、日本人がイラク入りしなくても実施できるような案件を形成する、機材の供与型などそういったものでございます。それから、周辺国を利用した研修などの実施です。
〔資料4 3ページ上段参照〕
 これまでのイラク復興支援でどういったものをやってきたかを地図に示し落としたものでございます。
〔資料4 3ページ下段参照〕
 これから先は、若干のプロジェクトについて写真でご紹介いたします。
 イラクの警察車両供与計画は、今年1月に決めた直接支援の第1号案件で、イラク内務省に警察車両を約 1,150台供与するものでございます。
〔資料4 4ページ上段参照〕
 これは、国際機関経由の支援で、既に実施されているもの、あるいは、実施済みのものです。
左側は雇用創出計画で、UNDPのプロジェクトです。これは、実績として、昨年6月末から今年の1月末まで、1日当たり約680人の雇用を創出しております。地域的には、バグダッド市内などで支援を実施しております。今後は、サマーワを含む南部でも同様の事業を実施する予定です。
右側はユニセフの事業で、既に実施済みで終了しております。
〔資料4 4ページ下段参照〕
 電力、医療も我が国の支援の重点分野でして、左側はハルサの火力発電所で、これは70年代に日本の円借款で建設されたものです。このように、写真でおわかりのとおり、相当破壊されております。これを緊急にリハビリする事業に関し、既に3月下旬に入札が終わりまして、現在、着工に向けての準備が進んでおります。日本企業がかかわっております。
 右側は、バグダッドの中核病院です。これは過去に日本が円借款で機材を供与したカーズミーヤ教育病院でございまして、それの復旧計画でございます。
〔資料4 5ページ上段参照〕
 次に、イラクにおける復興支援で重要な要素になっております、サマーワにおけるODAです。自衛隊の人道復興支援とODAは「車の両輪」としての位置付けですけれども、ここにポイントが書かれております。
〔資料4 5ページ下段参照〕
 若干の具体的支援の内容をご紹介します。自衛隊による水分野での人道復興支援活動と連携して、ODAによって給水車を供与しております。自衛隊の浄水関係の事業が本格的に介しされる前に給水車を供与しております。
〔資料4 6ページ上段参照〕
 サマーワの母子病院への医療機材供与です。日本のNGOである日本イラク医学協会が、サマーワ母子病院からの要望に応じまして、新生児用の保育器、吸引分娩器などを供与したものです。左側の写真に写っている白衣を着た日本人は、自衛隊の医官の方です。
〔資料4 6ページ下段参照〕
  サマーワでは、国際機関経由の事業も実施しておりまして、UN-HABITATを通じた学校再建事業を、3月段階ですけれども、既にパイロットプロジェクトとして中学校の再建を始めております。今後、65校の学校の再建を予定しております。
〔資料4 8ページ上段参照〕
 アフガニスン復興支援については、国際的には、イラクの陰に隠れて関心が薄れがちなところを、日本としてはアフガニスタンを重視しているという姿勢を内外に示しております。ここでは、道路、DDR、難民・IDPの再定住支援などをご紹介します。
〔資料4 8ページ下段参照〕
 カブール~カンダハール間の道路を、日米で協力して整備したものです。昨年12月に、カルザイ大統領出席のもとで開通式が行われております。現在、ヘラートに向けた道路の修復支援も実施しております。
〔資料4 9ページ上段及び下段参照〕
 DDRにつきましては、ここで2枚ご紹介しております。昨年5月に川口外務大臣がアフガニスタンを訪問した際に、「平和のための登録」ということで、DDRについて日本が支援していくという姿勢を示しております。日本とUNAMA、移行政権の間で実施体制を構築し、現在、パイロットフェーズにございます。北部地域で既に事業を実施しておりまして、現在までに6,000人を超える兵士が除隊、5,200人を超える人たちが農業あるいは職訓等の社会復帰プログラムに参加しております。
〔資料4 10ページ上段参照〕
 地域総合開発計画、いわゆる「緒方イニシアチブ」というもので、多数の難民、IDPの再定住のための様々な支援を行っております。
駆け足でご紹介いたしました。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。
 それでは、引き続き、50周年の記念事業についての報告もお願いいたします。その後で、もう一つ事務局からのご報告がありまして、円借款供与国の経済財政状況について、兒玉経済協力局審議官よりご報告をいただきます。

(渡邉政策課長)  お手元の配付資料の5についてご紹介させていただきます。
 日本がODAを開始して、今年はちょうど50年目の節目の年に当たります。4月28日に行われました対外経済協力関係閣僚会議におきまして、国際協力50周年記念事業というタイトルの資料が承認されまして、9月から11月の3か月間を対象期間として、共通のロゴマークの下で官民を挙げて事業を盛り上げていきたいと考えております。
 別紙に、外務省、JICA、JBICが、現段階で検討あるいは構想している諸行事のリストを添付させていただいております。今後、委員の先生方におかれましても、50周年関係行事の事業へのご参加、あるいは、アイデアのご提言などを賜れれば大変ありがたいと思っております。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。
 またいろいろとご依頼しなければならないことがあると想像されますが、その節はまたよろしくお願いします。

(兒玉経済協力局
 審議官)
 それでは、ご報告をさせていただきます。お手元の資料は6でございます。
 まず、外務省は、これは平成14年、2002年ですが、一連のODA改革をめぐる議論を踏まえまして、円借款の供与に際しまして、対象国の経済財政状況の検討は当然行っているわけでございますが、その検討結果を報告することにいたしました。今回はその最初ということですが、2003年4月からこの4月までの13か月間になりますが、円借款供与の決定を行った国について報告を行うものでございます。
 なお、外務省としましては、円借款の供与決定の前に、これは一応E/Nの承諾額、交換公文でございますが、150億円以上の案件については事前評価を行って、その結果を外務省のホームページで公表しております。これは、「ODA」を開けていただいた後、「資料」をクリックして、その後、「ODA評価報告書」とつなげれば、皆様にご覧いただけるものでございます。
 この資料でございますけれども、結論は、今回は12ヶ国、これは2ページ目に国名と金額が載っております。供与総額としましては、 5,576億 9,200万円。これは交換公文ベースの数字でございます。地域では、ご覧いただければ一目瞭然でございますが、アジア向けが81%、中東向けが12%、さらに申し上げれば、アフリカ・サブサハラはケニアのみということで、いかにケニア、サブサハラが債務の問題で非常に厳しいということで、円借款は事実上供与できない状況になるということでございます。
 2.の「経済・財政状況の検討結果」ですが、結論としては、そこに書いたとおりでございまして、特段の問題は見られなかったということで供与したわけでございます。
  (1)の「経済状況」ですが、ポイントは、これらの国はいずれも2002年以降のマイナス成長を記録している国はございません。多くの国は順調に経済成長していくと見込まれております。
(2)の「財政状況」と (3)の「債務状況」ですが、これは先ほど浅沼先生のご報告にもありましたが、まさに財政の持続可能性という問題に尽きるわけですが、この別添の最後の資料には数字を幾つか並べておりますが、財政赤字の状況は十分に注意する必要があるというのは、私どもも全くそのように認識しております。しかし、他方で、いずれの国もIMFあるいは世銀といったところと十分に協議を行って、財政のサステーナビリティについてはウォッチしながら、あるいは、いろいろな改革の実施を求め、改革をフォローしながら、その結果として財政状況が改善していく国が多いという判断がございます。
 最後に「債務状況」については、これは特に最近はDSA(Debt Sustainability Analysis)ということで、IMFあるいは国際社会が、ドナーコミュニティがさらに力を入れて点検しているわけですが、これは幾つかの国、インドネシア、トルコ、ブラジルは、債務残高や債務支払いに関する指標が高いという事実がございます。これには幾つかの理由があったわけで、いわゆる経済危機に伴うインフレの発生、為替レートの問題、大幅に下落したということの影響がございましたが、これらの国につきましても、IMFとの協議を踏まえて、経済危機脱出のための改革努力が実際に強化されてきていることがありまして、経済成長については、この資料にもございますように、着実な成長が見込まれるということがございまして、今回のような数字になったわけでございます。

(古田
 経済協力局長)
 ただいまの事務方の説明に少し補足させていただきます。
 ODA大綱の策定について昨年ご議論をいただきましたときに、各省が縦割りではいけないということで、対外経済協力関係閣僚会議は総理が真ん中に座るわけですが、そこを頂点に、各省庁、局長ベース、課長ベースが連携をとってやっていくというご議論をいただきました。この閣僚会議は、ご議論いただいた時点では、過去9年間で1回しか開いていないものでございましたが、昨年は、この大綱の議論もございまして、2回やっていただきました。
 そして、今年に入りまして、連休前にやらせていただきました。そのときのテーマは、スリランカの国別計画のご承認、ベトナムの改定案のご承認、そして先ほどご説明しましたが、パワーポイントでの、イラク及びアフガニスタンについての平和構築とODA、それから、国際協力ODA50周年の今後の進め方、政府一丸となって取り組もうということでご議論をいただいておりまして、節目節目で閣僚会議をやり、また、その前提として、事務方でも密な連携をしていくということで、これは大綱の趣旨に沿ってやらせていただいておりますので、その旨ご報告させていただきます。

(渡辺議長代理)  どうもありがとうございました。

(砂川委員)  円借款というものが結局かなり減ってきているわけですし、例えば中国などでは返済があって、ネットベースではマイナスになったりするわけですが、いわゆる円借款に対しての方向性については、どのようにお考えになっていますか。

(兒玉経済協力局
 審議官)
 まさに今、砂川先生がご指摘の問題意識は、私ども全く共有しております。幾つかの打開の方向があると思いますけれども、まずはやはりアジア重視ということで新大綱も動いているわけですが、そのアジアの中での、南アジアやASEAN向け円借款の供与増加が考えられます。例えばASEANであれば、大綱での判断が示されたような戦略性を重視したということで、今後ニーズがある、あるいは出てきているインドシナの部分とか、あるいは、経済連携を通じた部分での新たな援助ニーズに対応するということになると思います。
 同じことは、アジアを越えた地域で、中東にしても、中央アジアにしても、いろいろな援助ニーズがありますので、そこを発掘していくことも大切かと思います。
 もう一つは、中長期的には、サブサハラ地域への円借款が、ケニアを除くと全然出ていません。債務の問題がネックになっているわけですが、そこをどう見ていくのか。それはやはり国際社会共通の問題意識として取り組む中で改善していく機会を増やしていく。
 あとは、実施の問題ですけれども、やはり執行率というものを改善する余地はないのかというところはもう一つの問題意識としてございまして、JBICと現地の大使館と相手国との協議を見ながら、もう少しディスバースを上げていく努力はしていく必要があるというようなことかと思います。

(砂川委員)  基準をもう少し弾力的に考えることが非常に大切だと思います。例えば、もう卒業しました、要りません、これは一つの考え方ではありますが、その卒業したレベルをどのくらいに考えるかということが、非常に大きな問題になってきていると思います。ですから、基準というものを見直していくことは非常に大切だと思います。

(渡辺議長代理)  どうもありがとうございました。この点についての議論はまだ熟しておりませんけれども、いずれご発言していただける機会があろうかと思います。
本日の議論は以上といたしますが、次回会合の日程につきましては、調整の上、追ってご案内申し上げます。

(渡邉政策課長)  最後に、この会議のメンバー構成について、私どものお考えをお示しさせていただきたいと思います。
 先生方ご案内のとおり、平成14年6月27日に戦略会議の第1回会合が開催されました際に、同日付、すなわち6月27日付で川口外務大臣から先生方に対して、2年間の委嘱期間とする委嘱書が発出されております。先生方には、この2年間、国別援助計画、ODA大綱の改定といった重要な課題につきまして、多くの議論を積み重ねていただきました。この戦略会議が今後ともその重要な役割を果たしていくに当たりまして、この議論の蓄積は非常に貴重な財産になると我々は考えております。こうした観点から、事務局といたしましては、特段のご事情がない限り、引き続き先生方には戦略会議の委員を務めていただきたいと考えております。
 一応、本年の6月26日をもちまして委嘱期間は終了することになっておりますけれども、事務局サイドといたしましては、今後、先生方に個別にご相談させていただくということでアプローチさせていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。

(渡辺議長代理)  私も渡邉さんとその話をさせていただいております。懸案中のプロジェクトも目下数多く進んでいる最中で、今委員の交替を多くするとなりますと、地固めができませんので、もうしばらくご協力をいただきたいと思います。

(伊藤委員)  この件につきまして、我々NGOの仲間でも議論が出始めていまして、同じ委員が2年以上務めていいのかどうかという疑問提起もあります。ただ、渡辺議長代理からおっしゃられたように、確かに、今はちょうど、議論が高まって非常にコミットした状態の中で代わるというのも難しいところがあると思います。
 その辺、国民に納得いくような説明が必要かなと思います。ただ内部だけで、外務大臣から委嘱されたという形ではなくて、経済界、その他学者の先生方がいらっしゃいますけれども、もう一度国民の支持を得たような形で、このODA戦略会議の位置付けをもう一度確認した方がいいのではないかと思います。
 もちろん、個々にご相談を受けるときに、もしかしたら、受けた方が他の方に譲るとか、推薦するとか、あるいは、その方がご辞退されたら、外務省の方からまた他の方を探されるのかどうかわかりませんけれども、その辺のプロセスをはっきりしておいた方がいいのかなと思います。

(渡辺議長代理)  我々の議事録は公開されています。今のような発言がネットを通じて公開されるわけですから、多くはおのずと理解していただけるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

(伊藤委員)  はい。

(渡辺議長代理)  貴重なご意見をありがとうございました。
 次回の会合につきましては、調整の上、追ってまた皆様にご連絡差し上げます。
 本日は、御協力を本当にありがとうございました。
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