ODAとは? ODA改革

「ODA総合戦略会議」第14回会合・議事録

1.日時

 平成16年2月5日(木)9:30~11:30

2.場所

 外務省飯倉公館

3.出席者

 ODA総合戦略会議委員(ただし浅沼委員、大野委員、西岡委員、宮原委員は欠席)。外務省(事務局)より吉川経済協力局審議官他が出席。関係府省、JICA(国際協力事業団)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加。

4.議論の経過

(議事の概要)

 まず、対インド国別援助計画の策定について、主査の絵所(えしょ)法政大学経済学部教授に作業方針について説明があった。
また、対モンゴル国別援助計画の策定について、主査の花田前モンゴル大使より中間報告がなされた。
最後に、牟田委員から、ODA中期政策の評価に関する作業の現場について、紹介があった。


(渡辺議長代理)  おはようございます。ただいまから第14回目のODA総合戦略会議を開催いたします。今年初めての戦略会議です。本年もよろしくお願いいたします。
 今日の議題は次の三つです。一番目は、国別援助計画。2番目に事務局よりの報告。3番目に、牟田委員のほうからODA中期政策の評価に関する作業について簡単な説明をいただきたい。
 国別援助計画につきましては、まず対インド国別援助計画の策定について、主査の絵所先生のほうから、作業方針についてご説明いただき、かなうことであれば今日了承していただきたい。それから国別についてはもう一つあります。対モンゴル国別援助計画の策定について、これが中間報告というかたちでできあがっておりますので、花田前モンゴル大使より報告いただきたいと思います。
 事務局よりの報告は三つあります。16年度のODA予算(案)および平成15年度の補正予算(案)、イラクの復興支援、さらにODA白書2003年版の編集を始めておりますので、それについての報告です。
 それでは、主査の絵所先生から対インド国別援助計画策定の方針についてお話しいただきたいと思います。先生、朝早くからご来場いただきましてありがとうございました。よろしくお願いいたします。

(絵所法政大学
 経済学部教授)
 ありがとうございました。おはようございます。絵所です。お手元にインド国別援助計画策定作業方針資料1があります。

(渡辺議長代理)  すみません。絵所先生の策定作業方針に差し替えがあります。以前出しておいていただいたものと、今日、机の上に載っているものがあります。旧のものは廃棄してください。今日、机上に載っていたものが正本であるとご了解ください。

(絵所法政大学
 経済学部教授)
 大きく分けて作業手順と、どのような援助をするかというスローガンみたいなものですが、それをお話しさせていただきます。作業手順の「1.作業体制」ですが、スリランカのケースとほぼ同じかたちにしようかなと思っておりまして、東京にタスクフォースを立ち上げます。これは私が主査ですが、ほかに内川秀二アジア経済研究所の副主任研究員、下村恭民法政大学教授、平島成望明治学院大学教授、広瀬崇子専修大学教授、そしてODA総合戦略会議から荒木さん、この5人で構成します。それから事務局として外務省、JICA、JBICから責任者および事務担当者を1名ずつ選定して東京の事務局をつくろうということです。
 並行してニューデリーにインドタスクフォースを立ち上げます。このインドのタスクフォースは大使館、JICA、JBIC、JETROの現地担当員からつくりたいと思っております。
 補足ですが、すでにニューデリーは大使館を中心にずいぶん長い間、経済協力の研究会を持っておりまして、相当しっかりした基盤がありますので、それを利用して緊密に連絡を取りながらやりたいと思っております。
 「2.作業プロセス」はあくまでも予定ですが、昨年12月に大使館経済班作成の原案が我々に届いておりまして、現在検討中です。1月22日に第1回の援助計画委員会を開きまして、これを検討いたしました。これを基にもう少し時間をかけてガイドラインを作っていきたいと思っております。
 このガイドラインができた段階でニューデリーにまいりまして、インドのタスクフォースおよびインド政府関連機関に対して説明会と協議を行いたいと思っております。
 それからニューデリーでの説明会、協議会を踏まえまして、第1次案をつくり、それをベースにして東京ワークショップを開催したいと思います。これも関係するところに幅広く呼びかけましてワークショップをつくって、それで第2次案をつくり、それができました段階で関係各省庁に説明し意見聴取し、第3次案を作成する。第3次案ができた段階でもう一度ニューデリーにまいりまして、このときは政府関係だけでなく、国際機関、現地NGO、関係企業等々に対するワークショップをしたいと思っております。このニューデリー・ワークショップが終わったあとで最終案を策定し、最終的にODA総合戦略会議にご報告したいと思っております。
 追加ですが、スリランカのときは牟田先生にお入りいただきまして、評価の観点ということから、いろいろとご指導いただいたわけですが、インドの件でも同様にしたいと思っております。牟田先生は委員ではありませんが、骨子が固まった段階でぜひお願いしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 次は、スローガンの段階ですが、どういう援助にするかということです。いま私が思っているのは、日印グローバルパートナーシップの構築を前提にするか、あるいはそれをつくるようなかたちのフォワードルッキングというか、フューチャールッキングな援助という位置づけをする必要があるのではないかと思っております。
 インドは被援助国として見ると、とても特殊な国であることは間違いないわけです。どこが特殊かというと、大きな国というだけではなくて、いわゆるオーナーシップが確立した国です。国際機関、また日本もそうですが、一般的に援助をするときには相手のオーナーシップが重要である、しっかりしていなければだめだということを言うのですが、実際にはそんなにしっかりした国はありません。ですからそこで援助をするときにいろいろ問題が起きるのだという議論をしているわけです。
 しかしインドはこれがまったく当てはまらない国です。オーナーシップが確立しており、慣れていない方がいらっしゃるとびっくりしてしまう国です。主体性が相当はっきりしていて、計画も自分でつくるし、外資の取り入れ計画もしっかりした国です。
 ただ私の印象ですと、インドは日本に一番似ている国ではないかと思います。戦後、日本が再建したときの経験、それを渡辺先生の言葉を使うと自助努力という言葉で我々は語ってきたわけで、インドはまさにそれです。だからすごく似ていると思っていただきたい。援助に失敗しない国だと思っておりますが、逆に言うと、日本サイドだけで希望を言っても通じない国です。そういう特性があります。
 それから二つ目は、3番目とも関係するわけですが、南アジア世界、ひいては世界全体ということで、いま世界は非常に不安定なときであり、南アジアはキーを担っております。日本にとってもキーですが、世界全体の安定にとってもキーである。しかもその南アジアの中心に座っているのは間違いなくインドでありまして、インドの動向しだいで南アジアが大きく変わっていくということがはっきりしております。それに対して、日本が緊密かつ友好的な関係を維持し続けるということはとても必要であるので、そのような観点を重視していきたい。
 他方、日印の経済関係を見ると、実に残念なことに、貿易、直接投資、人的交流をとりましても、実に微々たるものでしかありません。日印関係についてODA、輸出、貿易、直接投資ということで見ると、ODAだけが断トツに大きくて、輸出、貿易、直接投資、これは証券投資も含めて、その関係は微々たるものでしかなく、非常に偏った形をとっておりまして、政府レベルで一生懸命やろうという意欲と比較すると民間レベルの交流は非常に停滞したままです。
 しかもショッキングなことは、91年にインドはかなりトータルな経済改革をいたしまして、国際的に高い評価を受けているのですが、その自由化以降、インドの貿易全体あるいはインドの直接投資の受け入れ全体の中における日本のシェアだけが実は減っており、私自身もよく理解できないのですが、日本の中でもインドに対する評価が低すぎるのではないかと思っています。
 これは1人や2人の力でどうにもなるものではありませんが、少なくとも民間ベースがなければ関係が深まるといっても限度があるだろうと思っておりますので、そこを狙ったかたちでの援助を進めていくというかたちで日本の援助を活用できないかということを考えています。
 日本の援助といっても、インドの総額からすると公共投資のほんの一部でしかありませんので、日本側でどうなるという国でもありませんが、いろいろご意見があると思いますので、作業を始める前にお伺いできればと思っております。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。今の絵所先生のご提案は、非常に簡単なアウトラインを示したものです。むしろ皆様方の意見を今の段階で積極的に伺うことによって、後の国別計画の詳細な内容の参考にさせていただきたいということですが、大変ありがたいご提案だと思います。どなたからでも、ご発言いただければと思います。どうぞ千野さんから。

(千野委員)  どうもありがとうございます。途中退席させていただきますので、先に発言させていただきます。先生のお話をある種の懐かしさというか、インドを思い出しながら伺いました。というのも日印国交樹立50周年を前に日印賢人会議を外務省がつくられまして、私はメンバーの1人でした。涙は出なかったのですが、汗の物語というか、やはりインド側とそういった会議を進めていくことの大変さが身に沁みたという思いがあります。しかも同じ年の日中国交樹立30周年の方ばかりが脚光を浴びました。こんなに重要な国について、どうして日本の中でもっともっと認識が深まらないのかというのはまったく共感です。
 それで日本側とインド側の意見がまとまらなかったということもあって、とにかくお互いがやりたいこと、やらなければいけないこと、思っていることを全部網羅しよう。ODAに限らず、日印のパートナーシップ、グローバルパートナーシップをどうしたらいいかということで、ありとあらゆる案件を羅列した賢人委員会報告書を外務省のほうから出しております。援助計画を作られる上で、それも見ていただければ嬉しく思います。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。小島さん、伊藤さん、磯田さん。

(小島委員)  簡単に二つお願いしたいと思います。一つはインドに対するODAという点で、いま絵所先生がおっしゃられたように南アジアということですので、インドについてはほんの少しの援助であったとしても、お隣のパキスタン、バングラにとってはその援助はかなりのものになるわけで、パキスタン、バングラ、スリランカといった南アジア全体の中でインドに対するODA計画というものをぜひお作りいただきたいということです。
 それから2点目は、これはインドだけに限らず、これから国別援助計画をつくる際に、ODA大綱の見直しを踏まえた作成をお願いしたい。見直したODAの具体化はこういうかたちになって出てくるというところをぜひ強調していただければと思います。
 その点に関連して、その対象国に対してODAを供与するのをいつやめるのか。つまりいつODAは終わるのか、そういうある種の指標みたいなものが出てくればいいと思います。つまりある目標を設定して、その目標が達成された場合にはODAを卒業し、むしろ日本と協力して他地域にODAを展開するといったようなことを、抽象的でも結構ですから、ぜひ中に組み込んでいただけると面白いなと思っております。

(伊藤委員)  私の質問はインドの貧富の格差に対する日本のODAの対応についてです。昨年2月にインドのバンガロールとデリーに行ってきましたが、いろいろな事情を見て回り、現地のNGO代表とも会い、意見交換をしてきました。たしかに、インドは経済発展が急速に進みつつある。しかし一方では、バンガロールなどの都会においては、地方からやってくる人たちが、職業に就けず収入が得られないという状況の中で多くの子どもたちが日銭を稼ぐため仕事をしたり、路上生活をしたり、中には物乞いをしているという現実があります。
 私が出会った子どもたちの中には、朝の7時から夜の9時までゴミ拾いをしている7歳と13歳の姉妹が、得た収入で生活費に当てて親の世話をしているというケースがありました。それから12~13歳の男の子が、父親が病気だということで朝の7時から夜の9時まで印刷工場で仕事をしていて、学校に行けないというケースもありました。
 インドには初めて行ったわけですが、私がよく行く東南アジアと比べて、そのすさまじい貧困の状況には驚きました。インドは非常に長い歴史と豊かな文明に支えられた国であると理解していますが、一方、貧富の格差が極めて大きい国だという印象を受けました。そこで絵所先生にお尋ねしたいのですが、日本のODAの援助計画をたてるにあたって、インドにおける最貧困層の人々の生活向上を図り、貧富の格差を縮小していくという面で、どのようなお考え、そして戦略を描かれているのでしょうか。
 それから、私からの提案ですが、インドのNGOやその連合体との関係を持っており、中には上院議員になっている人もいます。インドのNGOもインドの社会開発において相当な役割を果たしていると思います。是非、先生が国別援助計画を準備されるプロセスにおいて、彼らの声を反映する上でご協力させてもらえればと思っております。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。それでは磯田さん、お願いします。

(磯田委員)  伊藤委員のおっしゃろうとしていたことは、私も思っていたので重なっているのですが、1点目はやはり貧困の問題というのは非常に大きいというか、格差の問題です。それはおそらく文化的なことなどが大きいので、一朝一夕には、あるいは外部のODAがどのぐらいできるかというのは非常に難しいかもしれないと思います。経済発展はかなりしているでしょうが、伊藤委員がおっしゃったのと同じで、インドのNGOは国際的にもかなり著名で、日本人も研修に行くぐらいのところがいくつもあるわけです。そういう人たちに言わせますと、政府の民生部分が非常に弱い。地方の中での民生の部分は逆にNGOがほとんどを担っているに近いというような中で、本来ODAはそういうところも政府に働きかけて、できるようになっていくことが理想としては望ましいのかもしれませんが、現実にはなかなかそうなっていない。そういう中で、かなりNGOに出す部分とか、あるいは民生部分への強化といったものも、外部者だからできることというのがあると思います。そういった視点もかなり入れていただきたい。
 昨日いただいたところには、貧困に対するアプローチの見直しとあって、見直しだから減らすという意味なのか、ちょっとわかりませんが、貧困という言葉に対する視点が入っていました。しかし今日いただいた中にはそれが消えているということもありまして、私は是非入れていただきたいと思っております。
 それと同様に、伊藤さんと同じ視点ですが、この策定プロセスの中で現地NGOがかかわってくる場面はかなり遅い段階です。第3次案でしか明記されていませんが、民生部門は実際にNGOがかなり担っていて、地方行政の代わりもしているぐらいという現実の中で、どういう分野が重要なのかという意見聴取を是非1次案の策定の前にしていただきたいと思っています。
 それから3点目はインド固有の問題ではないので、この場面で発言するのが適当かどうかわからないのですが、この策定の手順、体制に関してそろそろ戦略会議である種の全体的なガイドラインというのでしょうか、いまは個別に主査の方がご提示されて、そしてたとえば今日、意見をいただいて、私たちがそれでいいですと承認するとそれで策定プロセスが決まるというかたちになっております。戦略会議には国民の意見を反映させることになっていますが、正直に言って、今見て、決めるということですから、意見を反映する、つまり私たちが全部を代弁するというような、あたかもそういう感じになっていますが、現実にそれはほとんど不可能なわけです。
 そういう意味で、今までいくつかの国別援助計画を策定してきて、後からお話があるかと思いますが、今日いただいたモンゴルの場合ともまたちょっと違う策定プロセスをとっているようですし、以前この国別援助計画を策定する段階、この会議の最初の議論で外務省から一応チャートのようなものをお出しいただいたかと思いますが、今は白紙という形に近いわけです。いくつかの経験があるわけですから、今後2~3カ月の間でこの会議としての策定方法についてのある種の基本的な指針といったものを出して、それを公開していくべきだということを考えております。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。まだご意見が続いておりますが、牟田さん、砂川さん、草野さん、青山さん、右から左へといきます。それでは牟田さんからお願いします

(牟田委員)  それでは簡単に。先ほど絵所先生のほうからお話がありましたように、インドは大国で、その大国に対して日本がODAを供与するということであれば、日本としては非常に大きな金であっても、向こうから見れば割合から見れば非常に少ない。そこで色々な分野にODAを供与するということになれば、どうしてもそれぞれの分野に少しずつのお金を供与するということになってしまう。最終的にそれがどんな効果があったかということを見たときに、ほとんど効果として出てこないという気がします。ですから特にインドのような状況の国においては選択と集中というところを是非よく考えていただきたい。
 もちろんどんな分野にでも、ODAは供与したほうが、ましなことは間違いない。しかし予算の制約がある以上、どうやったらODAの効果を最大限に達することができるのかという視点で、ぜひ分野の絞り込みを、特にインドの場合には強くお願いをしたい。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。砂川さん、どうぞ。

(砂川委員)  2~3コメントします。一つはインドにおける官と民の関係です。日本はある意味では特殊であるし、日本独特のものがあります。インドでも特有の関係があるのだろうと思います。日本との関係ではODAというのが非常に重要なファクターとのことですが、ここに民がどういう具合に絡んでいるのかという観点が必要かと思います。
 2番目は中央政府と州との関係ですが、インフラ開発の観点から見ますとエンロンの大事件がどうしても思い出されます。あのようなことが何故起こっているのか。地方自治体に対するファイナンスの問題が非常に影響しているのですが、こういうとここの観点からみればインドは格好の材料ではないかと思います。このへんのところをどう見るかという点です。
 それから3番目は国際機関でのインド人の活躍で、私などもインド人の上司にずいぶんやっつけられましたが、そういう意味では人材がものすごく豊富だろうと思います。人材の偏在というか、そういうものを戦略的に使っていったらいいのかという視点です。我々はODAの中で人材育成ということを言っているわけですから、インドにおける人材の偏在があるという前提の下に、どういう具合にそれを戦略的に流動的に組み合わせていったらいいのかという視点というのは、インドならではの面白い視点ではないかと思います。

(渡辺議長代理)  ありがとうございます。草野さん。

(草野委員)  皆さんとは若干違う視点かもしれませんが、絵所先生のご参考になればと思ってお話をします。私はインドというと、ついナルマダーのダムを思い浮かべます。ナルマダーの巨大ダムの現場に4日間ほど入って、非常に短い期間でしたが、赤痢になって帰ってきた記憶があります。
 民間を含めた日本の援助関係者の間ではナルマダー後遺症というか、トラウマみたいなものがあるのではないかと思います。先ほど絵所先生からは民間の貿易も含めた直接投資が少なくてODAは断トツだというお話がありましたが、ODAももう一つの要因が関係して、他の途上国と比べると少ないと認識しています。それは核実験で一時的に停止をしたということで、もちろん再開されていると思いますが、同時期に中国でも核実験が行われたのに、インド側からすれば冷たい仕打ちだったというようなことがあった。当然ODA大綱があって日本政府としては説明ができますが、絵所先生が指摘された世界におけるインドの重要性にもかかわらず、インドからすると日本はちょっと冷たい。
 今申し上げたようなことから、これからの対インド援助ということでは、ご指摘があったような南アジアの世界安定への意義といったことを日本政府が本当に理解しているのか。本当に腰を据えてやるのかどうかという不信感みたいなものが、日本の民間レベル、援助関係者の間にあるのではないかと思います。そこをこのタスクフォースの中でよく議論をしていただければと思います。

(渡辺議長代理)  どうもありがとうございました。それでは青山さん、お願いします。

(青山委員)  それでは2点申し上げます。1点目ですが、私はパキスタンの方の委員会に入っておりまして、そこでも申し上げましたが、素朴な国民の疑問として何故核を持っている国を援助するのか。本当に素朴な疑問だと思います。日本が何か言ったからといって核をやめるとは思えませんが、素朴な疑問に答えて、どこかに入れていただければと思います。
 それから2点目はやはりインドの社会開発の問題です。核を持っているにもかかわらず、子どもの半数が栄養失調です。近代医療が入ってくると女の子の選択的な妊娠中絶を行ったりするということで、女性に対して非常に悪いところがありますし、近代技術が発達する一方で、社会開発が遅れているために一番下の部分まで人権の意識がいっていないというところがあるように思います。
 その一方で、例えばケララ州という社会開発のお手本のようなところもあります。中の格差もありますが、やはり社会開発に対して日本はどういうふうにインド側に働きかけていくのかという視点が入るような計画にしていただけたらと思います。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。吉川審議官が先だってインド、スリランカを回ってこられて、先方とのやり取りもおありだったと伺っていますが、何かコメントはありますか。

(吉川審議官)  今日は古田がイラク関係の国会でどうしても出席できません。ちょっとお詫びだけ申し上げます。私は日曜日までスリランカ、インドと回って、政策協議をやってきましたが、今のこととも関係があるので2~3点だけご紹介しておきます。
 第1点は、私のほうからこれからのいろいろな話をしましたが、インド政府からは国別援助計画の策定チームとはぜひしっかりとした議論をしたいという大変強い期待が表明されました。すでに7月には日本大使館のタスクフォースとインド政府との間の協議が行われていますし、さっきも絵所先生からご紹介があったように、現地の体制にはいいものがありますので、向こうもそれを期待しているということが1点です。
 それから第2点は去年の6月だったと思いますが、インドは二国間政府援助の相手を6カ国に限ってきました。これもさっきのオーナーシップの強化ということと非常に関係しているわけですが、少額のお金をもらう小さなドナーとやっているには行政経費が高くつきすぎるから、日本、ドイツ、アメリカ、フランス、EUというごく限られた国とだけやりたい。それはある程度の金額を出してくれる国であればやっていくけれども、それ以外は正直言って結構です、そういう方はNGOに直接お金を出して報告のみしてくださいという格好で、援助政策については大きな変更が行われております。
 これについてもインド政府からは援助受け入れの効率を高めるという観点であって、日本については引き続き重要な援助国としてやっていただきたいとの期待が表明されました。その関係で3点目ですが、インド政府としては、日本の対インド直接投資の拡大につながるような円借案件を積極的に要請していくので応えていただきたいという、経済インフラに対する非常に強い期待の表明がありました。

(渡辺議長代理)  どうもありがとうございました。一渡りしたような気がします。あまり時間もありませんが、絵所さんのほうからインプレッシブなご意見と感じられ承ったところに御返答をお願いしたいと思います。

(絵所主査)  ありがとうございました。まだ始まっておりませんので、ご意見をお伺いしたということにしまして、委員会の議論に反映させていただきたいと思います。ありがとうございました。

(渡辺議長代理)  今日は相当重要な意見も出ましたので、いろいろご考慮されて中間報告を待ちたいと思います。私も意見がないわけではないのですが、牟田先生は、あまりに大きな国で、大きな問題を抱えすぎている国だけに、やはり選択と集中という観点を大事にせよとおっしゃったと思います。私も対中国ODAに関わってきて、やはり同じような感覚を持ちました。モデル化とか、パイロット化とか、重点化というような言葉があるわけですが、そういうことで少し深く穴が掘れるプロジェクトを見出すというようなことができれば、影響力を持ちうるいい報告書となるのかなという印象を持ちました。
 それから磯田さんがおっしゃった、戦略会議の国別ODA計画をつくる際の手続きをもう少しスタンダーダイズしたほうがいいというご提案は大事だと思います。しかし、まだファーストラウンドが始まったばかりです。対象国もわずかです。ベトナムについてはオープンフォーラム方式をとった。しかし他のものは、少しずつデリケートな違いはありますが、だいたいはタスクフォースを日本を対象国につくり、このタスクフォースがやり取りをして、そのやり取りの結果をダウンミーティングなり、パブリックコメントを求めながら、だんだん煮詰めていくという方式をとりました。
 いずれにしても理想的な形を今見つけている最中ですから、手続きをスタンダーダイズするには、もう時間と対象国が欲しいなという感じを持っています。今は現地の事情に一番通暁している主査がいちばんやりやすいような形をとるという格好でお願するのがいいと私は考えています。

(磯田委員)  例えば国によっては若干違う、要するに例外的に扱わざるをえない場面が生じることはあるだろうということも含んでいたと思います。そういう意味では、リジッドとおっしゃいましたが、ある種の原則というレベルだと思います。
 私が懸念しますのは、かなり重要な国々が間もなくいくつか決まっていくというような経緯の中で、そのあたりをオープンにしていって議論するというプロセスをとった方がいいかと思っております。

(渡辺議長代理)  5年ぐらいを目途に計画をつくり、またそれをさらに見直していくというプロセスがいいと思います。問題があれば、また次のラウンドでモディファイする。そういう繰り返しをやっていくつもりです。

(磯田委員)  あともう1点、関連するかと思いますが、今パブリックコメントを求めてやっているとおっしゃいましたが、そこも若干不透明というか、どういうかたちで反映されているのかとか、ODAのように公聴会とか、案を事前にホームページに出して、それに対して意見を求めるとか、そういうことまではもちろんしていないですよね。微妙なこともあるでしょうから、それがベストなのかどうかは私もわからない部分もありますが、パブリックコメントを求めたというほどのものではないと思います。いわば戦略会議とタスクフォースの中、もちろん現地だとか、いくつかありますが、そこで議論したもので決まっていくというような印象がなかなか拭えないので、せめて策定プロセスに関してはきちんとガイドラインを出したほうがいいと思います。

(渡辺議長代理)  そういう印象を国民から持たれているとなると、それは問題ですね。吉川さん、何かこの点についてご意見はありますか。

(吉川審議官)  いままでの議論の整理だけしますと、この会議の去年の前半の議論では、どういうつくり方がいちばんいいのかを含めて検討するためにも、当面は特定のやり方を定めないで、主査に裁量権を相当与えようじゃないかと、そしていくつか出てきたところで検討しようというのがこの会合の合意であったと思います。
 これまで行われましたベトナム、スリランカ、及び現在策定中のインドネシア、モンゴル、パキスタン、インドを見ますと、ベトナムだけが若干違って、大野さんが1人で主査をつとめ、現地が作業するというものでした。この会合では国別援助計画策定のプロセスの雛形について議論頂いた経緯がありますが、ベトナム以外のものについては、この雛型に基本的には沿っております。
 何が違うかというと現地の体制が強いか弱いか。それから先方政府の問題も若干はあるかと思いますが、それを反映して、たとえばスリランカやモンゴルは東京のタスクフォースの影響力、指導権がわりあいに強い。反対にインドネシアについては現地と東京が対等というか、現地の意見が非常に入っている。パキスタン、インドはこれからということですので、ベトナムを除けば、私の見方ですと、今までの策定プロセスは雛形にほぼ沿っているのかなという感じを受けておりますが、これは事実関係ということでご紹介しておきました。

(伊藤委員)  簡単に、質問と提案をさせていただきます。ベトナムの国別援助計画の準備過程では情報公開がなされて進められたと思いますが、その他の国の国別援助計画準備過程においては、作業部会のプロセス、例えば会合の記録等の情報公開がなされているのでしょうか。また、国別援助計画の総安などは英語に翻訳されて相手国にも共有されているのでしょうか。
 私は、国別援助計画の作業部会での話し合いの流れを、コンスタントに関係者等に公開していったほうがいいと思います。インドにしても、インドネシアにしても、NGOとの会合も予定されていますが、出来上がった計画案を出すのではなくて、そのプロセスを重視し、当初の段階から考えや情報を共有していく。そしてNGO等との会合が開かれる際には、NGOその他参加者から建設的な提案が出るような体制をつくったほうがいいのではないでしょうか。できれば英語でもつくっておいて、それを相手国にも流し、フィードバックをもらいなから、常に一緒になって計画案をつくっているのだという姿勢を示すことが必要かと思います。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。この点は本日議論する時間がないのですが、先ほどから申し上げておりますように、例えば1年ぐらい転がして、トライ・アンド・エラーを重ねてみるということなのでしょうね。合意された手順にひとまずは従っているわけですから、もう1年ぐらいやってみて、良い点、改善すべき点それぞれの蓄積を得た上で手続きをスタンダーダイズするという方向に行こうと思います。
 それから情報公開について、できるだけ豊富であることが理想的だということは言うまでもありません。しかしタスクフォース内の議論まで公開するということになりますと、自分たちの議論を自分で縛ってしまうようなリスクを背負わなければなりません。そこまでは行き過ぎではないかと思います。そのあと1次案、2次案、3次案が出るとか、つまり文章で成案化された段階では日本語と、さらに英語でできればなお良いという点は合理的なご意見だと思います。いずれにせよ、この議論はもうちょっと先まで待たせていただきたいと思います。

(磯田委員)  いま伊藤さんがおっしゃった部分に重なりますが、タスクフォースの議論まではなくてもいいと思いますが、ベトナムの場合はNGOから意見聴取をした意見交換会の議事録は公開されていましたよね。私はどういう意見が出て、それが第2次案にどう生かされたとか、どの意見が採択されなかったということがわかっていくことが大事だと思います。いきなり案だけが出てくるのではなくて、その議論の議事録ぐらいは出していただきたいと思っております。

(渡辺議長代理)  少なくとも戦略会議の内部では共有して、その次のステップとして情報公開ができればなおよろしいというご意見ですね。この問題で時間を取るわけにもいきません。ちょっとご不満でしょうが、いずれまた議題として提起させていただくことにします。
 絵所先生、お忙しいところをスリランカに続いてインドということで、大変なお仕事をやってくださっているのですが、何分よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
 それでは引き続きまして、対モンゴル国別援助計画の策定についてです。花田主査に中間報告をお手元の資料に基づいてやっていただきたいと思います。

(花田主査)  それでは報告させていただきます。平成15年の3月31日にこの戦略会議で作業方針を報告させていただきました。これは概略という作業方針のみならず、かなり私の思いを入れた構造をアプリオリに示しまして、進めていこうという考えをここでお示ししたところ、皆様にご了承を頂戴したわけです。
 4月になりまして東京タスクフォースと現地モンゴルにタスクフォースを立ち上げました。東京タスクフォースには東京国際経済大学の栗林先生と白須先生のお二方、いずれも途上国やこの地域のご専門の先生方に入っていただきまして、戦略会議からは砂川先生がご参加くださいました。私は一応モンゴルの専門家として、それから栗林先生、白須先生は経済学の立場から、それを砂川先生にはモンゴル関係とはまったく別のもっと広い立場からご覧いただくというかたちで作業が進められました。そして平成15年5月末までの間に基本ラインが作成され、それを持って現地にまいりました。
 現地ではモンゴルの政府のすべての省の人たちと意見交換をしたばかりでなく、全国際機関、ドナー機関とドナー国の大使館の方々と意見交換をいたしました。特徴的だったのは従来ドナー諸国というと、ロシア、中国は除外されるのですが、前の戦略会議のときに私がご報告しましたように、重要な両国なので入っていただくということでお願いしましたら、ロシア大使が自ら来られまして非常に詳しいご説明をいただきました。ただ中国はお考えがあって参加されませんでしたので、これは非常に残念だったと思います。
 それからそのあとでNGO、有識者、経済界の方々と、非常に短い時間だったので一人ひとりというわけにはいきませんでしたが、一堂に会していただきまして、今日は経済界、今日はNGOというかたちで意見交換をいたしました。このあとモンゴル大使館を中心に、現地にはJBICがありませんので、今日たまたま所長がいらしていますが、JICAとつくった最初の第1次ドラフト、現地のたたき台が出てきました。それに私が平成15年8月ごろに手を入れまして、これをグループで議論いたしまして詰めていきました。
 正直に申しまして、私は10月には完成するのではと軽く考えていましたが、非常にビハインド・スケジュールというか、遅れております。非常に忙しい先生方ですし、私自身も応じられず、策定過程での時間調整が難しかったということですが、栗林先生、白須先生が12月に全部をベースにして第1次案をつくられました。これは1万480字、400字詰めにして101枚になりますが、これを両先生の間で往復15回されて訂正されたものを我々に提示されまして、あと2~3時間で新年ですねというメールを取り交わしながら、東京タスクフォースの会合が終わったあとも不断に詰めておりまして、実は現在もかなりメールの往復をして微調整をやっております。
 このような第1次案ができまして、これを基に今日ご報告申し上げるわけですが、伊藤先生、磯田先生からご指摘のあった外部への公開という面では、第1次案がやっと策定された段階でこれからだと思いますが、非常に遅れているということを私自身も感じます。外務省の事務官の方には非常に助けていただきましたが、それでも現場からご報告しますと時間と労力が非常に不足していて、外部に応じるだけの余裕があったかなという疑問を持ちます。
 これからの計画ですが、この第1次案を早急に最終的な案にして、今月中に各省、経済界、有識者、それから栗林先生にも現地にいらしていただいて、現地で再度やる。それから私は東京サイドでドナー、NGOその他関係方面とすり合わせをしたいと思います。
 そして3月上旬には、モンゴル関係のNGOがかなりできてきましたので、そのNGOと意見交換をして、第2次案をその上旬に策定いたしまして、それから最終コメントをいただいたうえで3月下旬に最終案をご報告申し上げられるようにしたいと思っております。
 モンゴルの将来に関しては、従来はモンゴル語の世界だけで議論してきて、かなり専門家による自己満足的なところがあったのですが、今回、私が感動しておりますのはモンゴル語の世界からかなり英語の世界へ入ってきて、モンゴルについて一般の識者も含めて非常に議論ができたということです。皆様から見ればかなり遅れているというような点があるかもしれませんが、たぶんいままで日本ではやったことがない分析とモンゴルに対する援助方針となるのではないかという性格のものです。
 それでは内容に入ります。まず私どもはモンゴルの開発の現状というものを非常に詳しく議論し分析をいたしました。現状を分析し、かつこれを第1番に掲げました。2番目にそれではそういう現状にあたってモンゴル政府はどういうことを開発戦略としているのか。それから他のドナー諸国はどうなのか。そういう点についていくつかに分けてご説明します。
 この中に七つ挙げているのですが、(2)開発上の目下の課題と(6)経済自由化の進捗についてはここへ入れていいかどうか非常に迷うところで、とりあえずの入れ場所がないので入っております。そしてこういうようなものを踏まえて、対モンゴル援助の基本方針を我々はどういうふうに策定していくべきなのかということを3番目に掲げました。
 最初に我々がモンゴルを援助する意義、それからそういう意義のある対モンゴル援助をどのような方向でやっていくべきか。さらにそれに基づいて向こう5年間、どういう重点分野でやっていこうかということ、最後にモンゴルに対する援助をするうえで、留意しなければならないという点も挙げて、第1次案を策定いたしました。
 まずは開発の現状ですが、他の途上国と違う開発上の特徴というものを地理、人口、自然に分けて、書きました。3月に申し上げましたように、内陸国、人口が少ない、自然が厳しいという点がありますが、今回のタスクフォースの作業の過程で弱点として示したところに、実はその成長の要因も潜伏するという、要するに不利な点が有利な点に働くこともあるということで、それを加えました。
 それから第2に政治状況を分析しました。89~90年にかけてモンゴルで民主運動が高揚いたしまして、その後十数年、モンゴルは一貫して民主化、市場経済をやってきました。社会主義時代の政権党であったモンゴル人民革命党がいま政権についておりますが、この人民革命党自身も脱皮いたしまして民主化、市場経済を確固としてやっております。ガバナンスも強化し、かつ自主的経済政策を徐々に発揮しておりますので、アメリカを含む先進諸国からの評価は非常に高いということを指摘させていただきました。
 今年、モンゴルは国会選挙がありまして、新しくできる政権は4年ありますので、我々の援助計画はこの政権と一緒にやっていくと思います。そういう点で今度できる政権については非常に注意を払いたいと思います。
 それから経済状況の分析ですが、まず経済政策、GDPの需要面の構造と課題、GDP供給面の構造と課題ということで、需要と供給に分けて分析しております。そして市場経済化の進展と経済インフラはどうなっているかということ、そのような分け方で分析しました。
 90年以降、市場経済システムの導入政策をモンゴルは積極的に進めてまいりまして、91年にはIMF、世銀、ADBに加盟いたしました。この3組織はいまモンゴルの経済支援に非常に指導的な役割を発揮しております。92年以降、IMFの構造調整融資政策をモンゴルは受け入れておりまして、構造調整をやっております。90年にバウチャー方式による国有資産の民営化が開始されました。これは実は世間にはロシアの真似をしてというふうに書いてある文章がいくつもありますが、モンゴルのほうが早かったのです。しかし、1社について数千から数万のペーパー株式を発生させる経営になっただけであり、経営技術、資金などへはほとんど影響を与えませんでした。金融部門自由化の結果、多くの商業銀行が出現しました。但し、このような銀行は経営の十分なノウハウを持っておりません。それから非常に金利が高いということで、企業の経営、債務負担を圧迫しております。銀行主導による不良融資の禁止、リストラなどの金融改革が進められてきました。しかし現在はこのような悪い面だけではなくて、どんどん銀行が再生してきておりまして、健全な方向に向かいつつあるという状況です。
 それからGDP需要面の構造と課題、モンゴルは社会主義から市場経済に移る過程で社会主義国の市場を失いましたが、代わりの市場は開拓されていないというところです。社会主義市場を失ったという言葉の裏には、社会主義的分業というものから、モンゴルは必要もない社会主義全体に供給するような膨大な施設を持っておりましたから、それが市場経済に移るときに非常に圧迫したということで、このような不調から90~93年にかけてモンゴルはマイナス成長を続けます。その後は回復に転じてきましたが、これはやはりドナー諸国の応援が非常に大きな役割を果たしたと思います。
 成長率は1%からだいたい4%台で、2000年、2001年は非常に低い成長率で1%でしたが、これは雪害が主な原因です。これがなければ6%だっただろうといわれております。
 為替レートは1990年末から2000年の間に急速に減価し、適切なレート調整が行われました。モンゴルのトゥグルクという紙幣の実勢が自由化によって示されたということです。為替レートはこのように減価し、2002年にGDPは10.9億ドル、1人当たりGDPは442ドルという途上国です。
 2002年の消費者物価指数の対前年度の増加率は1.7%と、90年代の初めに比べると目を見張るような数字となり安定しております。
 それから2002年のGDPの需要構成では消費比率が88.2%、投資比率が26.7%で非常に消費の比率が多い。また純輸出比率はマイナスとなっておりまして、これは輸入超過ということを示しています。財政赤字については財政改革を進めておりまして、これによってGDPの6%で経過しております。
 次に供給面の構造ですが、まず産業構造から申し上げますと、農牧業のGDPに占めるシェアは雪害の影響もありまして20.7%と相対的に少なくなっております。他方、鉱工業のGDPに占めるシェアは21.4%、モンゴルの経済は依然として鉱物資源とカシミヤ製品に依存しております。第3次産業のGDPのシェアは非常に高くなっておりまして55.8%です。これは流通が発達したという面もありますが、むしろ第1次、第2次産業が不振であるという側面があります。
 それから就業構造は、就業人口87万の45%が農牧業に従事しております。過去、製造業の低迷から失業した労働者が牧畜部門に参入していきまして、約15万人増加いたしましたので、この牧畜業における過剰労働力の吸収が最も重要な問題であると我々は認識しております。
 市場経済化の進展ですが、民営化の進捗によって民間部門のGDPに対する寄与は75%となっております。97年にはWTOに加盟し、外国の直接投資もしだいに活発化してきております。2002年における契約総数はGDPの7%前後です。
 経済インフラについては、ウランバートルを経由する南北鉄道がありますが、これを整備いたしまして、ウランバートル市内、近郊、および首都と主要都市間の道路整備が進展中です。それからエネルギーと電力に関しては一定の電力、暖房用スチームを確保いたしました。これは日本の協力が大きいのですが、経済だけではなく社会生活基盤を整えることができたと思っております。それから地方電力に関しては、いま太陽光発電設備の整備が進められておりまして、ソムレベルにおきましては、基本的にディーゼル発電機が整備されました。これも日本の援助によるところです。
 通信部門は国際通信の整備など、近年急速に改善してきておりまして、光ケーブルもウランバートル鉄道に沿って100万回線の容量を有しております。現在このウランバートル鉄道に沿って南北方向で接続が進んでおりますが、ウランバートルから今度は東部、北東アジアのほうに向かって、いま韓国の援助で敷設中です。インターネットも首都では非常に普及してきております。日本からの専門家によりますと、普通のスタンダードなアジア諸国並みにいっているということです。地方の通信に関しては、わが国の援助で短波通信網が郡、村を網羅いたしました。このインフラは過去一定の進展が見られましたが、維持管理、精度、組織面の整備、効率向上がやはり問題となっております。
 次に生活社会面の状況ですが、貧困が深刻化していっております。貧困は産業ならびに農牧業の停滞が主な原因です。また子沢山、母子家庭の増加、アルコール中毒等の要因もあります。貧困層は1998年には総人口の35.6%、都市部では人口の39.4%、地方の貧困層が都市に流入し、新たな貧困を形成するというような構造になっておりまして、規模は年々増加しております。3月のときに青山先生からご指摘がジェンダーについてありましたので、それに注意を払って入れました。
 望まれる市場経済化に向けた教育。モンゴルの識字率は実は非常に高いのですが、市場経済を担う人材不足は深刻です。初等・中等教育の三部制の問題、ごくごく一部で四部制というところもあり、ドロップアウトが出てきました。このドロップアウトは非常に大きな問題です。それから地方と都市の教育レベルの格差、いろいろな多くの問題を抱えております。
 それから大学は急増して、実はウランバートルに126~128ぐらいありまして、大学といえるかどうか、専門学校の域を出ないものもできておりますから、内容は非常にお粗末です。高度な専門知識や技術を教授できる教育機関は本当に限定的です。
 それから保健・医療ですが、地方の低い医療サービス水準、それから結核、ウイルス性肝炎などの感染症対策が非常に問題です。地方保健機関の組織の効率化、医療サービスの質的向上、こういうものによって社会的弱者の負担軽減政策をモンゴル政府は進めようとしていますが、財政と人材の両面が不足しておりまして、これが非常に問題です。
 次に自然環境保護の問題に移ります。最近の牧地における過放牧によって草地が非常に荒廃してきております。カシミヤが最近における優れた産業ということでヤギを増やしましたので、ヤギの過放牧となり、ヤギはめっぽう食べますので、そういう問題が起きております。草地の崩壊、砂漠化が進んでいるという自然環境保護に対する問題があります。
 それから次に地方開発ということで、1990年以降、地方の産業基盤が崩壊し、脆弱になっております。社会生活の基盤も劣化しております。その結果、地方から都市への流入が非常に多くなり、ウランバートルへの一極集中という都市問題が発生しています。人口247万のうち、ウランバートル市当局はいま100万人いるということですべての政策を決めているようです。そこでゴミ処理問題とか、上下水道の問題、大気汚染の問題がますます深刻化してきております。
 次にこれも青山先生のご指摘に沿って設けておりますが、男女共同参画に関する問題です。基本的には男女ともに経済活動に参加しておりますが、女性の活動の場がインフォーマルセクターに非常に限定されるような現象があるように見うけられます。一部では男性より女性のほうが職を得やすいというような現象もあるのですが、全体的にはこのような流れです。
 それから次に開発戦略の動向ですが、モンゴルではどんな開発戦略がとられているのか、それからどのような開発のテーマがあるのかということもこの中に一緒に含めております。まず政府の開発計画ですが、2000~2004年までの開発計画を持っておりまして、ここで持続的経済成長による貧困の削減ということを目標に掲げております。経済改革と輸出主導の経済成長、教育と文化の保護・尊重、所得分配の効率化による生活水準の改善、効果的制度による社会福祉の増出というようなこと、それから地域開発構想を実施し、都市と地方の格差を是正するということが柱になっております。
 次にこの開発計画の中に人間の安全保障のためのグッドガバナンスとありますが、モンゴルはわが国が主導しております人間の安全保障というものを非常に積極的に受け止めておりまして、これを主導しております。政府行動計画の中で人材育成と社会セクターの強化、失業者削減と生活水準の改善、公害とゴミ処理の改善など11にわたって優先課題を定めております。
 こういった目下の課題は、過剰労働力を抱えた牧畜業からどのようにして雇用に転換するか、どのようにして雇用に転換するか。それから貧困、地域格差、環境などの問題、民間セクター、政治部門における経営管理能力、政策策定、施行能力などの能力の向上、北東アジア市場とリンクすることによる経済活動の促進、これらが開発途上上の課題となっています。
 次に政府が定めました「経済成長支援と貧困削減戦略」EGSPRS(エコノミック・グロース・サポート・アンド・ポーバティ・リダクション・ストラテジー)ですが、これは中期的社会開発計画として定められたもので、経済成長を通じた貧困削減という政府の方針を中心として、マクロ経済の安定と公的セクターの効率化、民間セクターを中心とする制度構築、持続可能な地方開発の推進、持続的な人間開発と社会サービス供給の改善を通じた公平な分配、グッドガバナンス、ジェンダーの平等の促進、これらを目標にしています。
 それではわが国はどのような戦略を持って援助してきたかをこの中に記述しました。91年以降、当初は緊急ニーズに対する支援をして、その後は中長期的な開発ニーズに対応してまいりました。トップドナーとして累積援助額は約1176億円となっています。そして対モンゴル支援額の約60%は日本が背負ってきました。どのような分野にやってきたかを申し上げますと、まず通信、鉄道、道路、発電などのインフラ整備、校舎、医療、その他の社会インフラ、食糧援助、災害時の短波無線供与等の緊急支援、インフラ分野の人材育成、これらをモンゴルは非常に高く評価をしております。
 モンゴルにおける急速な市場経済化によってシステムが崩壊して、十分活用できなかったり、あるいはモンゴル側の維持経費が負担できなかったり、そのような案件もあります。その中の一部は最近改善をみて、フル活用にだんだん近くなってきています。それからモンゴル側の政治、経済、社会という大きな枠組みを考えながら、それから若干個人的な見解を加えますと、やはり置かれた歴史とか地理とか国際環境を考慮して決めてきたと思いますし、そのようにやらなければならないと思います。
 他のドナー、NGOの対モンゴル援助の動向はどうかというと、日本以外の主なドナーはアジア開発銀行が非常に大口で、それから世界銀行の両者です。アジ銀は農業、財政、公共部門の再生、社会セクター、都市開発、道路などの分野を重点としています。世銀はインフラ、金融セクター、貧困、民間および統治分野に対する支援をしています。国際NGO、現地のNGO、わが国のNGOが積極的に入ってきており、保健、教育分野、特に国際的なNGOの活動は顕著です。わが国のNGOについては、マンホール・チルドレンに対する支援、医療分野、雪害等、牧民への支援に多くの団体が活動しています。
 モンゴルにおける開発戦略の中で考慮しなければならないのは、経済自由化が進捗していっているということです。民営化、土地私有化など経済自由化がいま急速に進展中で、こういう動向を留意して見る必要があります。去年の11月19日、21日に第10回目のCG会合が開かれました。先ほど小島先生から援助はいつやめるかを見据えて考えることが大事ではないかということがありました。この第1回会議を開いた段階で、私は第1回目の担当官をやりましたが、そのときに非常に甘かったのですが、5年で終われることを目標にしてスタートしました。
 ところが11回会議は記念会議ということで、東京で開催されました。世銀、モンゴル共同議長で開催されましたが、第1回は日本と世銀が共同議長でやりました。今回は過去10年間の10回の会議ということで援助をレビューして、モンゴル経済の現状と課題を分析しました。またEGSPRSについて議論しました。民間セクター主導、雇用創出が非常に強調されましたし、また公共セクターの生産性と効率性の向上、ガバナンスの改善、農村部の開発とサービス提供の改善、急速な都市化と都市貧困問題の対応の必要性の確認と、我々の分析と非常に似ている分析が国際ドナーからも出されました。
 それでは我々の援助方針は以上を踏まえてどうすべきであるか。まずモンゴルに対する援助の意義ですが、小島先生にも3月の段階で戦略的に打ち出せということで、次のように打ち出しました。北東アジア地域における地政学的な重要性がモンゴルにはありますので、モンゴルの民主主義国家としての成長はこの地域の平和と安定に資する。それからこの地域はわが国の安全と繁栄に深く関連している。日本の将来にとって非常に重要な地域であり、その中で日本に好意的な唯一な国家ですので、これは大事にしていく。良好な二国間関係をさらに強化する。二国間のみならず国際場裏においても相互に関係を強化して、総合的パートナーシップを両者間で掲げておりますが、この確立を目標とします。
 次に民主主義国家のモンゴル、我々と共通の価値を有するモンゴルの努力を評価して、この国の経済、社会発展を促す。発展途上諸国における民主主義の発展というところに着目して、これを推進していくということです。それから市場経済化進展への自助努力を支援する。モンゴルがいま進めている市場経済化について、彼らの自助努力を支援していく。これはODA大綱から見ても意義が非常に大きいと思います。モンゴルの自然環境は地球的価値を有し、かつ人類的価値を有すると評価して、その保護をしたい。この意義は大きいということです。
 このような意義のある国にどういう方向で我々は援助していったらいいのかを書きました。モンゴルの開発戦略実現のためには経済活動の促進、マクロ経済の安定と公的部門の効率化、財政赤字を縮小させる、借款能力を強化する。その結果得られた財源を貧困緩和、環境保全に充てていく。このような連環的政策の実施が肝要だ。この点から経済成長のためのマクロ経済の健全な運営や公的セクターの効率化のため、制度強化と人材育成、キャパシティ・ビルディングが大事であり、それから外貨獲得産業の振興を含む産業育成をする。インフラ整備、貧困削減と環境保全に働きかけるための地方開発と農牧業の再生、社会サービスの改善、自然環境の保全と前に掲げた諸問題に対応していきたい。こういう方向でやりたいと思います。
 この計画はとりあえず向こう5年ぐらいを見据えて策定しておりますので、重点をどこに置いたらいいか、当面、緊急性を有する問題に着目して次のように定めました。まず市場経済を担う制度整備、人材育成に対する支援を重点分野として定めよう。行政管理能力の向上、徴税制度の確立、これは日本が従来やってきたところを踏まえています。法整備支援など、担当分野における専門性の向上、金融制度の強化と中小企業における経営能力など、企業育成支援制度を充実する。それから基礎教育、実社会で活動する人たちの再教育、この両方をやりたい。
 それから貧困削減に向けた支援ですが、この貧困削減というと大きな網ですので、これをここに掲げるのはどうかという問題もありますが、我々は次に限定してこの貧困削減というテーマのもとにやりたいとしています。
 地方の開発支援は当時、大野先生にご指摘いただいた点を踏まえております。経済社会インフラ整備、流通業を含む民間セクター、産業支援と自然資源の持続的利用、政府は五つぐらいに分けて地方開発をやっていきますが、その拠点地域への重点的支援、それからこれは新しい試みですが、特定地域のモデルケースとした総合的開発支援をやっていきたい。次に牧地と農牧業再生のための支援、経済効率のみならず貧困削減効果の観点から牧畜業や耕種農業を支援する。本格的実施に資する制度をつくる。関連技術を普及させる。都市の貧困対策、保健、基礎教育等社会セクターの強化、雇用創出など民間セクター活性化をやっていきたい。
 環境保全については自然環境の保護と防災、公害対策の三つに分けています。自然環境保護と適正利用、副収入源として彼らが動植物自然資源の活用、貧困緩和や伝統文化にも配慮した地域住民の参加に留意するという点で非常にこれはモンゴル的な特徴を入れているつもりです。それから防災については気象モニタリングとか自然環境情報整備による実態把握、早期警戒防災対策へのフィードバック。公害対策については石炭燃料でウランバートルは冬に風が吹きません。それで盆地に非常に煙がたまって飛行機も着陸できないという状況がありますので、これの改善、都市環境行政の支援、廃棄物処理システムの支援等です。
 次に経済活動促進のためのインフラ整備支援です。観光振興、地下資源の開発、経済発展に直結するインフラ整備ですが、3月に私は申し上げまして、そのときにモンゴルは地上資源の観光、地下資源の鉱物の利用、牧畜業を掲げましたが、やはりモンゴルは究極的にはこれしかないのであろうということでこれらのインフラ整備、この分野における技術移転、人材育成、運輸交通政策策定の支援、やはり輸送が非常に壊れてしまいましたので、この点が民業を圧迫していると考えられます。
 次に(3)とありますが、これは(4)ですのでご訂正願いたいと思います。それでは対モンゴル援助はどのようなところに留意してやるか。まず政策協議の援助を行い、それから援助の効率的、かつ効果的実施のため案件の形成や採択実施に関してモンゴル政府と緊密にやっていく。そうしなければ我々の考えだけでは実現することはできない。それからもう一つはおこがましいのですがモンゴル政府を教育していく必要があろうかと思います。援助スキーム関連性についても政策協議の場を通じて検討していく。
 それからほかのドナー、NGOとの強調、連携を強める。これも前に援助協調をもう少し、というご指摘を受けた点ですが、モンゴルの自主性、オーナーシップを尊重しつつ、対モンゴル援助の効果・効率向上のため、ほかのドナーと協調、連携を行う。現地の開発ニーズに則した日本のNGO活動を政府として支援していく。対外債務問題と援助吸収能力にも留意しなければならない重要な問題ですが、経済基盤整備のための対外借入能力の増強が重要です。それから海外からの金融制度の拡充も課題になっています。それから各省間の調整能力とガバナンスの強化がモンゴル政府に非常に求められており、これは必要です。環境社会面への配慮。プロジェクトの案件形成、実施に際しては環境社会面へ配慮する必要がある。このような四つの留意点を掲げました。以上でございます。

(渡辺議長代理)  花田先生、克明なご説明をいただきまして、どうもありがとうございました。早速ですが、どうぞご自由にご意見をお出しいただきたいと思います。草野さんからどうぞ。

(草野委員)  大変詳細なご報告をありがとうございました。一つお聞きしたいのですが、この中間報告を策定するプロセスにおいて、モンゴル側と日本側の見解が違ったところがあったならばぜひ教えていただきたいと思います。と申しますのも、こういうことは議論の一つの焦点になりましたでしょうか。今日のお話でも、やはり牧畜にモンゴルはかけるしかない。これからのモンゴルの経済計画においても輸出主導だ。その輸出は牧畜だ。しかしその牧畜は過放牧を含めてかなりの問題がある。それに対して日本側はこの援助の重点の中にもありますように、牧畜を含めた農業にメスを入れようということですが、ここで意見の対立がなかったかどうかということです。もう一つは日本側でモンゴルに適した農業技術等々をはたして供給できるのだろうかということについて、素人ながらご質問させていただきたいと思います。

(渡辺議長代理)  花田先生、ひとわたり質問を聞いてしましょうか。脊戸さん、小島さん、荒木さん、青山さん。

(脊戸委員)  ありがとうございました。私は2点ございます。一つご説明の中に、3ページの(4)の(ロ)の「市場経済化に向けた教育」という中に教育のレベルの格差が多く、そういう中にあってもウランバートルに大学が急増しているという現状、そしてそれに対して5ページにおいて今後のわが国の支援、援助の中の(3)(イ)「人材育成に対する支援」というところに「基礎教育と実社会で活動する青年・成人の再教育」とあります。モンゴル政府が教育において、これはモンゴル政府の視点が重要になってくるとは思いますが、その基礎教育がまだ欠如している中で大学というものが乱されているように見えるのですが、この現状のギャップにある問題をご説明いただければ大変ありがたいと思います。
 2点目は、今までこのようなかたちで第1次案、中間報告という過程がとても大変だったと思いますが、今後のスケジュールを見ますと、2月中旬、下旬に向けた東京における意見聴取、現地における協議、そして3月上旬から下旬にかけての過程が非常に密になっております。少し時間をかけてもよいのではないかと考えました。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。小島さん、どうぞ。

(小島委員)  どうもありがとうございました。では3点ほど私の意見も反映していただきまして、網羅的な計画案の骨子をご説明いただき、ありがとうございました。第1点は、これまでの日本の対モンゴル援助、確かにここに若干触れていただいていますが、もう少し詳細に日本の対モンゴル援助の総括と評価をお願いしたいと思います。肯定する部分と、その援助が積み残した部分と、今後やるべきこと、それらを考えるときにやはり日本がやるわけですから、日本の対モンゴル援助をきちんと総括しておいてほしいというのが1点です。
 2点目として、実際のモンゴル側の評価について。そしてモンゴルが過去の日本の対モンゴル援助を踏まえてどういうことを要望しているのか。今日の主査のご報告の「開発戦略の動向」というところで若干触れられていると思うのですが、モンゴル側の期待、要望と言ったときに日本の援助に対する期待ということで是非その部分にも触れていただければと思います。
 今日のお話をお伺いしていましたら、やはりモンゴルというのは247万人だ。そして今皆さんもお触れになりましたが、モンゴルは牧畜業を重点にやっていきたい。他方でモンゴルの247万人のうち100万がウランバートルにいる。ここがものすごく問題をはらんでいるというお話をお伺いしましたら、日本の対モンゴル援助は都市の問題をやるのか、牧畜のモンゴル以外のところをやるのか、この重点の置き方でずいぶん違ってくるという感じがしました。このあたりのことも少し日本の対モンゴル援助計画の中で考えていただければと思います。
 第3点目は1万8000字と膨大な分量です。詳細であることは非常に必要なことですが、他方、これからの援助計画は日本の国民にも向けてわかりやすく、ここが重点だということを示すことが必要になってくると思います。そういう意味でこれは何もモンゴルだけではありませんが、ほかの援助計画についてもA4で1枚ぐらい、これが今後の新しいODA大綱を踏まえて援助計画だというものが出てくれば、詳細な部分は読まずに、そちらを見て説明することができますので、よろしくお願いいたします。

(渡辺議長代理)  どうもありがとうございました。それでは荒木さん、お願いします。

(荒木委員)  小島先生と最初の段階では全く同じ意見ですが、これを読んでいまして、率直に言って重点化があまりなされていないのではないかというところがあるのです。いま全く同じ意見で、地方から都市への人口の集中がすごい。全体の247万人のうちの100万人がウランバートルへ集中している。そうするとこれは選択の問題ですが、やはり第一のプライオリティは当面の都市部の100万人をどうするかということで、地方はかなり分散していますので、これは第二次的なプライオリティでやっていくとか、そのへんの順序づけを明快にしていかないと、同時にスタートということになると非常に混乱するのではないかと思います。
 もう一つはすでにウランバートル、中心に日本センターあり、日本人材開発センター等で色々活動しているので、そういうものも含めてもう一度見直しをやって拡大、拡充するということも一つ考えられるのではないか。それから基金、JBICの事務所がないというのですが、ウランバートルで意見を聞いてみますと、いろいろな意味で若手のベンチャービジネスの勢いが止まらない。したがってマイクロクレジット等の工夫が非常に必要ではないかということを提案したいと思います。
 2点目がこの国別援助計画の根底にある重点化と、もう一つはやはり日本の経験が重要だと思います。地下資源はあると思いますが、牧畜はどういう経験が日本にはあるのだろうかということと、牧畜に関する関連産業部分だったらあるかもしれません。そういうことも含めて、もう少し日本ができる範囲、日本の経験と技術力の範囲をある程度絞って重点化していったらいかがかと思っております。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。では青山さん、どうぞ。

(青山委員)  大変詳細なご報告をありがとうございます。またジェンダーにしてもいろいろ入れていただきまして、大変ありがとうございます。最初に細かい点ですが、3ページに「子沢山」という表現があるのですが、最終的なペーパーにはこのように書かないと思いますが、表現としてはあまりサイエンティフィックではないと思います。また、基本的な社会指標の表等を付けられればわかりやすいのではないかと思います。例えば合計特殊出生率とか小児の死亡率、あと女性と男性の識字率といった表を最終的なものに1枚ぐらい付けていただけるとわかりやすいのではないかと思います。
 それから保健教育のことがありますが、一つ疑問に思いましたのが水とか栄養のことがあまり述べられていなかったような気がします。分析はされていたのかもしれませんが、例えば日本も食糧援助をしていますし、栄養の問題があるということをかねがね聞いておりますので、そこも少し入れていただけたらいいのではないかと思いました。また水の問題も都市の方は少し述べてあったように思いますが、実際にやるかどうかということは別としても、地方に関しても、問題点、論点として挙げていただけると良いと思いました。
 最後の点は先ほど来、小島先生、荒木先生からもご指摘があります都市と地方の問題ですが、人口の都市化率が40%ぐらいでしょうか、それで都市に包括するというのも一つのやり方なのかと思います。また一方でご提案があります総合開発支援としてモデルケースをつくって地方にやってみるというのは大変おもしろいのではないかと思っています。やはりモンゴルのように人口が非常にまばらなところでは地方を全部やるのは不可能なので、どこかモデルをつくるというのはおもしろいのではないかと思います。
 ただこのモデルの中の項目を見ますと、経済的な面だけなので、ここにぜひ社会開発を含めていただけたらいいなと思います。保健や教育、あるいは産業に女性も参加していけると、そういった点を含めて地方のモデルケースとして総合開発の中に社会開発を組み込んでいただきたいと思っています。

(渡辺議長代理)  磯田さん、どうぞ。

(磯田委員)  重点化の都市と地方の話ですが、規模が小さい中で逆に言えば私は両方できるはずではないかと思いますし、都市に集中しているという問題も地方の産業化の育成との連携があるかと思うので、おそらくタスク・フォースの中ではすでにそういう議論もあるかと思うのですが、都市型の問題と産業育成と公害問題等いくつかあるわけですし、両方にきちんと対応するという関わりで原案にあるようなかたちで進めていただくことを是非お願いしたいと思います。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。ずいぶん沢山の意見が出されておりますが、今の段階で花田大使、お答えしていただけることがいくつかあればご発言ください。

(花田
 前モンゴル大使)
 大変ありがとうございました。非常に多くの先生方にご関心を持っていただいて感謝申し上げます。最初に極めて思い入れたっぷり、野心的な構図をお示ししたのですが、砂川先生に入っていただいていろいろご指導を受けている中で、この計画についてだんだんバランスが取れてきたなという印象を持っております。また外務省の職員の方も非常に身を粉にしてやってくださいまして、たぶん我々がこの4人の中、JICAさん、JBICさんを含めて2時間では終わらないという激論をして、その中で今日ご指摘を受けた点については議論の中でずいぶん出てきた問題です。したがってそれについてお答え申し上げたいと思います。
 まず草野先生のモンゴル側と意見の食い違いがなかったかという点ですが、これは多分にモンゴル的な対応がありまして、援助をくれるところに対してあまり文句を言わないが、気に食わないものは陰で実行しない。それがモンゴルのスタイルで、ドナー諸国が集まって一度決議したのは、我々の助言をモンゴル政府にいかに実現させるか、実行させるかというのがテーマになったことがあるぐらいです。少しでもくれるものはオーケー、ありがとうということが多分にモンゴル側にはあります。
 それからもう1点はモンゴル側が誤解したのか、我々が教育しておりますと、モンゴルというのはこれからこういうふうに行くのだ、そのために日本とこういうところで協力したい、他の国はここをやってくれないので、日本にはやってほしいということを我々は期待して言ったのですが、彼らは族議員のようにみんなここをやってください、あそこをやってくださいと陳情でした。そういう意味で意見の対立のしようがない。ただ、モンゴルの側の希望としてこういうところは重点である、こういうところは問題であるということはわかっています。
 もう一つは委員の先生方、私以外、栗林先生もたくさんモンゴルにいらっしゃっているのですが、最近の現場を視察させていただいて、農業の現場だったのですが、農民がどのようにして金策をして、水をどのように引いて、自分がつくった農産物をどうやって売って利益を挙げて、どうやって生活しているか、そしてどこが問題であるかという現場を見ました。それは非常に参考になりました。そういうことも踏まえて最初のたたき台を在モンゴル日本大使館につくっていただいたわけです。
 それからまとめてお返事申し上げますと、都市と地方との問題、これは我々のメインテーマで、激論をしました。都市重点なのか、牧畜重点なのか、それともどちらかが優先なのか、これは我々だけではなくてモンゴル国民も実は今悩んでいる問題です。モンゴル政府のとりあえずの回答は国を五つの地区に分けて、そこを重点的に開発して都市を分散させる。地方に中心都市をつくって、そこを魅力ある場所にするという政策で、この中でも触れました。それに対応したようにやっていこうということで、磯田先生がおっしゃったように都市と牧畜の問題は非常に関連しています。だからこの連携の中でやっていかなければいけないので、どちらかということは非常に難しい選択で、農村問題を解決しない限り都市問題は解決しないということがあります。したがってこういうことを両方に対応してやっていきたい。
 それとの関連で磯田先生の質問にお答えするかたちになりますが、限られた資金の中で援助をするわけです。しかし我々はモンゴル政府ではありません。トップドナーとして60%、最近は7割ぐらいになっており、無償の比率8割、有償が2割というのが対モンゴル援助で担っています。そのような資金を有効に使うために特別なモデルケースをつくって、彼らの自助努力を全国に広めていくという方向を取ると書いたのはそのような関連からです。
 脊戸先生の教育の問題ですが、個人的な印象ですと中等教育はかなりいいのです。いいというのは、インフラは悪いが、先生の熱意があるということです。地方も都市も崩壊した中で先生の熱意によって教育が持っている。大学とは何かというと、大学とは名ばかりの専門教育で、たとえば日本語学校みたいなものが大学と言われています。ですから真に大学と言えるものはほとんどない。モンゴル国立大学とか国立農業大学とか人文大学とか師範大学とかのいくつかです。これらが10ぐらいで、あと110ぐらいは本当に日本の専門学校よりもっと程度の悪いもので、単なる塾です。
 ですからみんな大学になると外国に行く。もう一つの問題は社会主義の時代から10年制です。これが11年制に移行しようとしている。そういうところは支援なければいけない。やがて12年制にもっていって国際スタンダードにいく。いま8歳上がりですが、それを7歳上がりにもっていき、さらに6歳上がりに。だから当面目指しているのは11年ですから、それに対応した支援をしていこうということです。それから地方都市を通じて学校のインフラは30年前にできたようなものでそれがもう崩壊しつつあるので、そこを助けていく。現にウランバートルに16校の校舎を過去ここ何年間で建てました。これは非常に感謝されております。
 ただ中等学校における学科の内容に関して、7年生について比較研究をしたのですが、日本の大学受験程度あります。数学など非常に難しい。都市においてはある科目が弱いと特別に先生に裏で金を払って教えてもらうということをやっています。基礎教育と大学との関連で、やはり10年制から12年制への移行期の問題もあります。
 小島先生の対モンゴル援助の評価ですが、実は我々はこういう東京タスクフォースの会合以外に、向こうから財務大臣が来たときなど、モンゴル大使館の中で実務会見をしていろいろ尋ねましたところ、日本の援助に対してモンゴルはどう思っているかを財務大臣から頂戴しました。それを申し上げますと、「90年代の初めに市場経済に移行したときにモンゴルは溺れた。そのときに水の中から救い出して上に上げてくれたのは日本だ。それで病院に入った。このときに日本がメインでいくつかのドナー国は助けてくれた。
 いまモンゴルはどういう状態かというと、病院から出て病み上がりでいまやっと立った。これから歩いて行こうとしている。歩くにつけてはいろいろなところが支えて助けてくれるでしょうが、日本が真後ろにいて倒れないようにいつでも支えてくれ。今までトップドナーとしてやってきた役割をなくさないように」という要望が出されました。これがモンゴル政府の日本に対するODAの評価で、要するに日本がパトロンのような実感を彼らは持っているということをご報告させていただきます。
 牧畜を重点にするということはやりました。それからこれが非常に広範に総花的で複雑でもっとわかりやすくということは、砂川先生にいつもご指摘を受けている点で私も感じております。正直言ってこのやりとりの中でさっきも申し上げましたが、あまりにも膨大になってしまいましたので読むだけで大変で、それを改善していくのは大変ですが、これから各省協議やNGOとの協議を前にしてもうちょっとスリム化して非常にわかりやすいものにブラッシュアップしていきたいと思います。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。私も2年ぐらい前でしたか、モンゴルに初めて行く機会があって、本屋を駆け回ってモンゴルに関する文献を探してみたのですが、眇たるもので今回1万字に達するレポートができるというのは大変ありがたいことです。そういう意味で大部のほうは別冊刷りにでもしていただいて、その後商業出版でもしていただければ日本人のモンゴル理解に大変利することになるのではないかと思います。
 今日はインドというとてつもない大きな国で日本のODAはほとんど誤差に入ってしまいかねないような国と、それと極めて対照的な、人口数で言えば圧倒的な小国で、しかも最近では日本がODAの70%を超してしまったという圧倒的なシェアを占める国、モンゴル、そういう意味で非常にコントラスティブな二つのお話を伺ったわけです。
 今日の花田報告が非常に包括的であったということはそういう事実を反映しているのだろうと思います。丸抱えというと言葉が下品ですが、非常に包括的で多様な分野に日本のODAが入っているという特質であろうと思います。それにも関わらず重点化していくということが荒木さんのご指摘にもありましたようにODA戦略会議の一つの方向であるわけです。包括的であり、その上になおかつここがポイントだというところが示されるといいかなと思っています。
 都市と農村という話がありましたが、240数万人のうち100万人がウランバートルに住んでいるというのは世界にもほとんど例がないような人口学的にいうプライメートシティ、巨大都市、メガシティでもあるわけです。その結果として、つまり農民が都市に流入してきていろいろな問題が起こっている。就業機会がなかなか見つからないし、マンホール・チルドレンの話もありましたし、環境劣化の話もありました。これらをとどめるためにはやはり農業、ここの場合は牧畜業を振興しなければならない。牧畜業は先ほどのお話ですと雇用の吸収力も非常に高いと聞いていますが、もしそのように考えていくと一つの重点はそこに置かれるのかなと考えられます。
 私も2年前に行ったときにカシミヤの工場を見せてもらいましたが、率直に言って原料は非常によろしいようですが、消費国、つまり輸出国のニーズに合うような質とデザイン、その他の製品をつくっているようには思えない。そんなところに、たとえば日本のODAで専門家等が行ってやられたら相当な効果があるのではないか。率直に言ってだめな分だけで効果は非常に大きいのではないかという感じを持ったりもしました。これは一つのエピソードをお話ししただけですが、ともかくも包括的でありながら、しかしかつ重点的なという難しいお願いをしなければならないという感じを持ちました。

(草野委員)  いま座長がおっしゃったカシミヤの加工プロセスとかそういったところについては日本が提供できる人材、技術者、専門家はたくさんいると素人でもわかりますが、先ほど荒木さんも言われたように、いわゆるモンゴルの牧畜についていろいろな問題点があるという分析をされたわけです。そこにメスを入れてこういうふうに改善したらいいというような提言をできる人材ははたして日本にいるのかということは非常に疑問に思うわけです。いや、私の指摘は単に杞憂に過ぎないということでしたら、それにお答えいただきたいのですが、もし私の仮説が仮に正しいとしたら重点の絞り込みの際にはもう少し日本の得意分野に絞ったほうがいいのではないかという感じがします。

(渡辺議長代理)  砂川さんどうぞ。

(砂川委員)  今のご指摘にタスクフォースの立場として申し上げますが、草野さんのおっしゃった点が非常に大きなポイントです。先ほど主査からバランスの取れたものになりましたというところは、もう少し重点化を先鋭化して出したほうがよかったのかなという反省も込めているのですが、いまの点は具体的に牧畜業という地方と、それから都市の問題にどう対応していくかという話です。牧畜業に対してどうテコ入れをするかというのは牧畜自体の技術的な面というよりも牧畜業が直面している問題点、例えば水の供給がない、掘削の建設機械などが不足している、それに対する部品がない、製品がどのように売られるか、それをどのようにしてキャッシュ化できるかとか、そういう問題があるのです。それから人の問題になってくると、牧畜業を営んでいる人の衛生状態や生活状態というところに問題があるわけです。それが貧困の問題になっているわけです。
 そこで荒木さんがおっしゃったように、それに対しては、例えばインフラの設備をやっていけばいいというのは当然のことです。ポンプとか建設機械などは購入資金をどうするか借り入れるか、あるいはリースするとか、という話になってきます。そこで考えてみると、それはマイクロファイナンスなのか、ツーステップローンなのか、そういう金融問題が重要なのです。それはそういう面に対する金融の、いわゆる開発金融ですが、エキスパートが入っていくとかなり解決ができる。牧畜業の改善という意味では、今申し上げた点が問題であって、それに対しては十分アプローチはできると思います。牧畜自体に対する日本からの技術的な支援はできません。我々が立てようとしているのは援助計画です。我々の援助計画は我々の援助形態による援助なのです。援助形態ということになると、いわゆる円借款があり、無償があり、技術協力があるわけです。ちょっと振り返ってみると、モンゴルはいわゆるベトナムと同じように、ああいう体制から10年たってやっと民主体制が確立されました。今までの支援はほとんど日本が唯一やってきた。有償もありましたが、そのほとんどの形態が無償形態であった。そういうことからずいぶん散らばってしまって、どちらかというと散漫というか、プロジェクト毎になっている。
 そういうものを見て、どう反省するのか、どう評価するのかと言えば、散らばっていたねというのは反省材料としてはあります。ところがやはり効果がものすごくあったものも多く、失敗したものもあった。効果というのは何かと言えば、今民主体制ができて、これから市場経済に向かおうとするところまできましたというのが最大の評価だろうと思います。それを今度は今までと同じようなやり方ではなく、それこそ重点化もしていかなくてはいけないし、援助の方向性を決めていかなくてはいけない。そこがものすごい悩みの種です。
 そこで結局その重点を、牧畜業には今述べたような、やっていこう、そして、都市の問題についてはやはり仕事を与える雇用機会の創出を図りましょうとなりました。それには産業を起こしていかないといけない。そういうものを実際に産業として起こしていくような人間を育てていかなくてはいけない。そういう職業教育は日本は得意だと思います。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。

(荒木委員)  砂川さん、さっきちょっと引っ掛かったのはスキーム別編成になってそれに対応しているわけですが、やはり戦略会議としては連携です。いろいろな問題で有償と無償、無償の中の技術協力と無償資金協力、この連携を図っていく。それを言わないと、あとはいろいろな図り方があるとして、それは実施にお任せするとして、それはぜひ入れてもらいたいと思います。

(荒木委員)  一つだけ、付言すると有償ということを考えた場合に、あそこは債務が累積していることです。そうすると、HIPICsではないですが、そこに対して新たな借款を入れられるかという円借款特有の問題があるわけです。それを前提とした援助計画を今の段階で向こうと話ができるかというと、何か変なコミットを取られてしまうと困るというような面も当然あるわけです。そういう問題点がありますねということです。

(渡辺議長代理)  わかりました。脊戸さん。

(脊戸委員)  たまたまある記事で読んだのですが、中国に対する日本の援助、モンゴルに対する日本の援助ということで、その方が書いているのは中国に行ったときに、この開発における交通網の充実だったと思うのですが、これはわが国がやったものだ。モンゴルに行ったときに、これは日本の援助でということをモンゴルの方が説明した。私はODAは両国民が援助し、そして感謝される、あるいはこういうことでなったのだということを大変見事にモンゴルの人が言っていたということを聞いて、たぶん大使でおられたときにODAのいろいろな意味での広報面も努力されたのかなと思いました。大変いいことだと思います。最後にプロセスの今後のことをちょっとお話しいただければと思います。ちょっとエピソードです。

(渡辺議長代理)  ありがとうございました。お約束の時間は11時半でしたが、すでに若干超えております。45分ぐらいまでお許しいただきたい。「国別援助計画策定の現状および今後の進め方について」の説明が事務局よりあるはずでしたが、残念ながら今日は時間がありません。資料はお手元に行っておりますので、それは後で見ていただくということにしたいと考えます。
 ベトナムとスリランカについての検討が前回、10月28日にありました。その会議結果を踏まえて、いろいろなご意見を斟酌してそれぞれの主査を中心にどうしたらいいか我々ずいぶん苦労してきました。その結果が皆様のお手元にあるもので、これを最終版としたいのです。今後外務省がこれを対外経済協力関係閣僚会議に諮るわけですが、そのための手続きを目下進めているというところです。まだ議論もおありであることはもちろん承知していますが、時間的余裕が余りありません。お持ち帰りの上お読みいただきたい。議長代理が議論を封じているかのように受け取られると困るのですが、次々と新しいものが進んでいきますので、若干の不満を残しながらも、ともかく前に進んでいかざるをえないということで、ご寛容いただきたいと思います。
 イラク復興支援のテーマ、ODA予算の問題、もう一つは白書ですが、これらの資料がお手元に行っております。読んでいただければ十分理解できる範囲のものですので、あえて説明は省かせていただくということにしたいと思います。
 牟田先生、最後ですがODA中期政策の評価に関する作成の現状について、短い時間でお願いするのは恐縮ですが、できるだけコンパクトにお話ししていただければと思います。

(牟田委員)  それでは手短にやらせていただきます。ODA中期政策というのはご承知のとおりODA大綱に基づいて5年間のODA政策を定めたものです。現行の中期政策は平成11年につくられています。今年でちょうど5年目でそろそろ賞味期限が切れるということです。さらにODA大綱も変わっております。したがいまして中期政策につきましてもそろそろ改定の時期になろうかと思います。
 それでは、これまでの5年間の成果はどうだったのかということが当然問題になりますので、中期政策の評価につきましては検討委員会をつくり、そこで検討を行っていたところです。この検討委員会については傍聴等が可能なようにしており、審議について全て日程は終了しております。現在はそこで出た意見をとりまとめてドラフトをつくっているところです。3月末をめどにして報告書をとりまとめたいと考えております。報告書がとりまとまった段階でこのODA総合戦略会議においてその結果の概要について報告をしたいと思います。
 その報告のあとの取り扱いにつきましては、ちょっとわかりかねますが、現在は評価のとりまとめを私が中心になってやらせていただいております。その結果をこの次に改定されます新しい中期政策にぜひ生かしていただければありがたいと思っております。現在のところは作業がどこまで進んでいるかということを報告させていただきました。

(渡辺議長代理)  そうするといずれ次回か次々回にその報告のエッセンスをご紹介いただけると考えてよろしいですか。

(牟田委員)  3月末にはできあがるつもりでおりますので、4月以降いつでもお時間をいただければ報告させていただきます。

(渡辺議長代理)  ぜひそういう機会をつくっていただきたいと思います。ありがとうございました。

(磯田委員)  対イラク支援の件につきまして、昨年3月のこの会議で大野委員を中心に緊急事態の支援のあり方について戦略会議でも議論すべきではないかということで文書を回させていただいたかと思います。そのときは当然イラクが視野に入っていたかと思うのですが、その後の日程の中で議題に上がることもなく、結局今般のかたちになっていて、戦略会議としては読んでくださいということになってしまったのですが、あのときに一応議論しましょうという話にはなっていたかと思います。
 今日は大野委員もご欠席ですし、時間もないのですが、私はきちんと議論をすべきではないかと考えておりますので、前回の議論のリマインドということで記録にとどめていただきたいと思います。例えばこの実施について、いったい誰が案件を発掘するのか、どう実施するのかとか、その評価をどうするのかということは当然問題になるかと思います。緊急事態の場合には通常のODAとは違う部分も若干あるかと思いますが、そういうことについては何の議論もないということではないかと思います。

(渡辺議長代理)  国別戦略、分野別の戦略等については恒常的に議論していくことが戦略会議の主眼ですが、同時にそのときどきに起こる問題についてコメントをもらうということになっておりますから、磯田委員がいまおっしゃったことは正当だろうと思います。しかし、国別計画やらその間にODA大綱の作成等があって、日程が混んでしまって、この点は今まで不十分であったとは思います。今日、イラクの復興支援のお話があれば御意見もさらにいただきたかったのですが、時間がとれず残念です。吉川さん、次回あたりこの復興支援の報告をしていただくことは可能でしょうか。

(吉川審議官)  もちろん時間があれば、今おっしゃったようなご疑問、ご質問に答える用意をしてまいりました。先週以来補正予算のほうで局長をはじめほぼ毎日徹夜状況で国会答弁に対応しているわけですから、今おっしゃったようなご議論は国会ですでに先週1週間ずっとやっていますし、今週も参議院でご議論いただいておりますし、我々はいかようにも対応できます。

(草野委員)  磯田さんの提案をサポートしたいと思います。いろいろな意見はあるでしょうけれども、このODA総合戦略会議で議論しないというのは、確かにいわゆる国別の援助計画がメインではあるけれども、議長がおっしゃったようにその他というのがあるわけですから、何か特別な会議でも開くなりして、集中的に意見を述べ合う機会があったほうがいいと思います。

(渡辺議長代理)  問題が出るごとに特別に会議をやるというのも、きりのない話です。今日のような場で事務局報告として提出され、それに基づいて議論をするということにしたいと思います。

(草野委員)  トップアジェンダとして。

(渡辺議長代理)  アジェンダの一つに入れていただくという方向でいきたいと思います。事務局から報告がありますでしょうか。

(事務局)  いえ、ございません。

(渡辺議長代理)  次回については調整の上、追ってまたご案内を差し上げるということにしたいと思います。ありがとうございました。
このページのトップへ戻る
目次へ戻る