(渡辺議長代理) | スリランカ国別援助計画について、絵所法政大学経済学部教授(スリランカ・タスクフォース主査)より、タスクフォース案の報告が行われた。また、ベトナム国別援助計画について、大野委員(政策研究大学院大学教授、ベトナム・タスクフォース主査)より説明があった。審議の結果、いずれの計画についても、ODA総合戦略会議としての原則的了承が得られた。 |
(渡辺議長代理) | おはようございます。ODA総合戦略会議を今から始めたいと思います。 今日は幾つか議題がございまして、大きく分けると二つございます。1番目はかねてよりのテーマでございました対スリランカ国別援助計画の策定について。これは隣に座っていらっしゃる絵所先生が主査として、ついに最終報告ができましたので、そのご報告をお願いします。それに引き続きまして、大野委員にご尽力いただきました対ベトナム国別援助計画の策定について、このご報告を次にお願いします。これが今日の主たるテーマでございます。そして、かなうことであれば、総合戦略会議としてのこの両案の了承を得られればと思っておる次第であります。この国別援助計画が今日の主題の第1です。 第2は、事務局より幾つかの報告がございます。先ずODA大綱の改定について、続いてイラク復興支援会議について、さらに第3回のアフリカ開発会議について、もう一つJICAが独立行政法人の国際協力機構として発足したこと、これら諸事項についてのご報告を事務局よりいただくということになります。 それでは、早速でありますが、絵所先生のほうから、対スリランカ国別援助計画の最終案についてのご説明、お手元に資料が行っていると思いますが、それに基づいてご報告をお願いいたします。 |
(絵所主査) | おはようございます。お手元にございます資料の1というのが「対スリランカ国別援助計画」案でございますけれども、手持ちの時間が20分ということでございますので、その前に「対スリランカ国別援助計画 (案)(要約) 」がありますので、これを読み上げる形でやっていくと、20分ぐらいで終わるかなと思っております。3枚ほどあると思いますが、よろしくお願いします。 まず、「1.対スリランカ援助の目的・理念」、「(1) 我が国の安全保障及び経済的繁栄」ということが挙げられます。中東から輸入する原油等の安全なシーレーン確保にとってインド洋上の極めて重要な位置を占めている。また、我が国の国際通商上南西アジア地域への重要な海洋航路上のハブポイントとなっている。ご承知のとおり、インドとスリランカは自由貿易協定を締結しておりますし、コロンボ国際港は、我が国の円借款で立派なものができたわけです。 「(2) スリランカ支援の意義」というところでありますが、スリランカは、戦後賠償を最初に自発的に放棄し、我が国の発展にとって政治的・経済的な国際環境の形成に大きく貢献した国であります。また、伝統的な親日国である。ブレイクダウンしまして、 (イ) 1948年の英国からの独立以来、開発途上国の中でも民主主義国家としての政治制度を維持してきた有数の国でありまして、南アジア地域全体の民主主義の定着と政治的安定に大きく寄与するだろうということ、 (ロ)大陸的な南アジア世界にあって東南アジア的な文化的特質を兼ねており、南アジア世界と東南アジア世界とを地域的に結びつけているという特徴を持っているということであります。 2.は「スリランカの開発に係わる状況分析」ということでございまして、「(1) 現状の課題」でありますが、スリランカ政府は、ただいま開発上の主要課題といたしまして、雇用機会の創出、財政危機の克服、それに国家復興。三つのRと言っているもので、Relief、Rehabilitation、Reconciliationの推進を行うということを明示しております。 二つ目、昨今の政治、社会、経済全般の状況でありますが、政治状況は、1983年7月のジャフナ事件を契機に大騒擾事件が発生いたしました。その後、民族対立が激化し、タミル過激派組織LTTEが組織され、約20年にわたり内戦が継続された後、2002年2月に無期限停戦合意に至り、ノルウェーの仲介を得て、9月より本格的な和平交渉が開始され、現在までに至っております。 (ロ)経済。2002年以降は世界経済の回復傾向やLTTEとの停戦合意等の好環境により回復傾向が顕著になりましたが、若年労働者を中心に失業率は上昇傾向にあるほか、原油価格の上昇等を通じた物価上昇は国民生活を圧迫しています。他方、過去の国防費増大、旱魃対策等による財政赤字は税制の簡素化や課税対象の拡大等でやや縮小傾向にございます。 (ハ)社会。全人口の3割から4割ぐらいが貧困層でありますけれども、そのうち約90%は地方農村部に居住しています。農林水産業等の地域、地場産業の脆弱さと収入の不安定さが原因であり、特に北・東部は紛争による荒廃が深刻であります。 2枚目でございますが、「開発戦略の動向」ということであります。「(1) スリランカの開発課題」、これは現在、スリランカ政府が今後5年間を対象にしました経済再生策「リゲイニング・スリランカ」という文書を出しております。それによりますと、(1)国内の生産性の向上、国際競争力の強化、投資の促進等により経済成長率、年率8%から10%の実現を期待するとしております。(2)また、効果的な貧困対策を実施するとともに、マクロ経済環境の整備、紛争起因の原因削減、幅広い国民の経済成長への参加、潜在能力を開発するための人材育成投資、貧困層の活性化とガバナンスの強化等を課題しております。 「(2) 我が国の対スリランカ援助の分析と評価」でございますが、 (イ)1954年に技術協力、58年円借款、69年無償協力を開始しまして、これまでの協力を通じ高い社会開発指標の実現と維持に貢献したが、民族対立、紛争事件等の内政問題は経済協力の対象範囲外として取り扱ってまいりました。したがいまして、 今回の国別援助計画は、(ロ)平和の定着を対スリランカ援助計画として初めて位置づけるものであります。 「(3) 各ドナーの援助動向」でありますが、 (イ)2001年スリランカ政府の資料によりますと、日本が全体の約49%、アジア開発銀行が約19%、世界銀行が約8%、この三つが大きな援助機関あるいは援助国であります。 (ロ)2003年6月、スリランカ復興開発に関する東京会議で、今後4年間で総額累計約45億米ドル、日本は3年間で10億ドルの支援供与の意図が表明されました。 (ハ)スリランカ内外の動向というのもちょっとおかしいのですが、スリランカ内外のNGOとの連携を推進しましょうということです。 4.ここからがメインだと思いますが、「対スリランカ援助の基本方針」であります。 (1) は「基本認識・目標」ということで、 基本的な二つの柱からなっておりまして、第1番目の柱が(イ)「平和の定着・復興プロセスへの支援」でございます。(1)は、恒久的な和平を達成することを通じ、軍事支出の削減と慢性的な財政赤字の改善に貢献し、限られた人的・財政的資源をより多くの解決困難な開発問題へ投入することを可能にするとともに、地域間・民族間格差の拡大や対立を沈静化するようなバランスの取れた開発援助の実施を通じ、平和の定着に貢献する。(2)北・東部の復興支援に際しては、スリランカ政府との約束に基づいて行うという基本原則を堅持する、でございます。大きな柱の2番目は「(ロ)輸出・観光・環境立国への開発プロセス」、特に外貨獲得能力の継続的な向上ということでございますが、輸出志向戦略と観光・環境分野の開発戦略を重視するということであります。1番目、輸出・観光・環境立国の実現を可能とするような制度改革を伴う経済基盤の整備、外国投資の積極的活用と各分野における外国からの技術移転、生産性向上のためのIT化の促進と活用、教育改革を中心とした人的資源開発を支援いたします。2番目は、民族間・地域間バランスの取れた開発支援を行うということでございます。 続きまして、重点分野でございますが、これは大きく分けまして三つの柱からなっております。第1の柱は「(イ)平和の定着・復興支援のための援助」でありまして、二つございまして、一つは(1)人道・復旧支援、わかりやすい言葉で言いますと、人々が安心して暮らすことのできる生活環境の確保ということでございます。(2)は「国造りのための支援」ということで、具体的には農村工業等の育成を視野に入れた人的資源開発、あるいは経済基盤の復旧・整備が必要だということでございます。 (ロ) は、大きな柱の2番目でございますが、「中・長期開発ビジョンに沿った援助」でありまして、これは先ほど言いましたが、外貨獲得能力の向上と同時に均衡の取れた開発というむずかしい仕事を同時に達成することが求められていると思います。この中の柱が三つございまして、一つは経済基盤の整備に向けた制度改革に対する支援、それから外貨獲得能力向上に対する支援、3番目が環境保全型観光開発分野に対する支援という三つの柱でございます。 (ハ) は、大きな柱の3番目でございますけれども、「貧困対策に対する支援」ということで、とりわけ農漁村部・プランテーション部門の従事者を中心に考えております。(1)効率的・効果的な貧困対策支援、(2)生活基盤及び経済基盤の整備、(3)保健・医療分野に支援、(4)地域・地場産業の育成に対する支援、それから(5)参加型開発を進めるということでございます。 最後に、「実施上の留意点」ということでございますが、「平和の定着・復興支援」と「中・長期的支店からの経済発展支援」、2本の柱でありますが、これにバランスよく取り組む。それからもう一つは積極的な援助調整に我が国が援助を行うということであります。四つぐらいございますが、そのために(イ)実施体制をともかく強化しなければならないというのが1番目。2番目が(ロ)援助プロジェクト・プログラムの制度設計能力を向上し、より効率のよい支援というのを考えましょうということでございます。 (ハ) は環境面、及び社会面へ十分に配慮すべきだということでございまして、 (ニ) が経済協力広報、特にスリランカ側に対する広報の強化をすることが必要だということで、その点、留意して、今後5年間の我が国のスリランカに対する援助を行うべきであるという提言でございます。 これはタスクフォースのまとめたものでございます。和平交渉がなりまして、ずいぶん経ちますが、ご承知のとおり、今年の東京国際復興会議にLTTE側が代表を送ることはございませんでした。正直言って、停戦はなっている状態でありますけれども、和平交渉がそれほど進んでいるという状態でもないという、戦争はないけれども、平和もないという状況が続いております。この和平交渉はとても難しくて時間が相当かかるというふうに思っておりますが、そういうときの支援のあり方であります。この提言はすでに、特に人道面、復旧面で支援をするということが日本政府の意図として表明されております。私は北東部、ジャフナに行っただけでございますが、そのときの印象を申し上げれば、皆さんはご努力されているとは思いますし、またいろいろな障害もあるとは思いますが、いち早く、少しでもいいから目に見えるというか、生活がよくなる支援をしていただきたいということです。それはいろいろな関係があると思いますので、ありとあらゆる手段を使って、ともかく早く何かすべきだというふうに思っております。結局、少しでも目に見えて生活がよくなるということが、和平交渉を進展させる大きな一番いい薬だというふうに思っています。正直言って、相当ひどい状態で暮らしておりますので、少しでも安心して、こうやれば暮らせるかというか、生活が立つのだということ、そういう目に見えるというか、わかるようなことをするということが大切です。この報告書も実はもう少し前にできましたが、こんなに遅くなってしまいまして、当初案は6月にご報告する予定でしたが、そのときに比べて4カ月ももう遅れてしまって、やっとここでご報告できるような状態になっております。4カ月も経ってしまっているわけですから、早くというか、それだけを願っております。関係各位のますますのご努力をお願いしたいということであります。 |
(渡辺議長代理) | 絵所先生、どうもありがとうございました。大きな報告書を20分以内にまとめていただきました。ご意見、あるいはさらに先生のほうから意見を引き出したいということがございましたら、ご発言ください。 |
(大野委員) | 最後におっしゃられたことにも関連するのですが、重点事項の中で、(イ)、(ロ)、(ハ)とあって、(イ)の中の人道復興支援というものは緊急になされなければ、目に見える形でとおっしゃったと思うのですが、それ以下の(イ)の(2)、国づくりのための支援というのと、(ロ)、中・長期開発ビジョンに沿った援助、(ハ)の貧困に対する支援、この残りのすべては長期の課題だと思うので、その辺の重点事項の整理についてお伺いしたいんですけれども、目に見える形で、早く日本の援助で状況をよくしたいというのは、恐らく(イ)に係わることで、残りについては、たとえば政府が安定していないとき、体制ができていないときに中・長期的なプランを作ったり、物を作っても、恐らく使われなかったり、途中で止まってしまったりということがあるのではないかと思います。中・長期については、ある程度のコンディショナルなビジョンが、特にこのような国では必要なのではないかと思うのですが、その点についてどうお考えでしょうか。
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(渡辺議長代理) | いまの大野さんのご質問は非常に基本的な質問でありますが、ともかく一巡して、後でお答えいただくということにします。 |
(伊藤委員) | この報告のまず「対スリランカ援助の目的・理念」、その中に「我が国の安全保障及び経済的繁栄」ということで、この対スリランカ援助が我が国の安全保障、経済的繁栄に役立つのであるというような書き方で理念が書かれています。ただ、ODA大綱を見ますと、我が国のODAの目的は、「国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することである」となっていますが、この前者の「国際社会の平和と発展に貢献」するという目的、理念がこのところに書かれていないのではないかと思います。ただ、対スリランカ援助の基本方針、基本認識目標をずっと読ませていただくと、実は前者の国際社会の平和と発展に貢献するという内容を反映した内容になっています。ただ、この理念のところにも、やはりそれをリファーするような、それについて整合性のあるような書き方で理念のところを書いていただけるといいのではないかと思った次第です。 |
(渡辺議長代理) | 青山さん。 |
(青山委員) | すばらしいご報告をありがとうございます。読ませていただいて大変感銘を受けました。過去実施してきた支援が、必ずしも平和と安定につながらなかったという反省が真摯に述べられ、今後は地域格差、民族格差の緩和に重点を置くということが明確にされていました。深い分析にもとづき、しかもわかりやすく書かれていて、大変よい国別計画ではないかと思いました。 ただ、社会セクター、特に保健医療分野について、一言コメントを申し上げたいと思います。この分野には、今後も貧困緩和として取り組むと書かれていたと思います。経済分野のところに書いてあったと思いますが、公的セクターが大変肥大していて、そのために問題があるとのことです。保健医療などの社会セクターでも同様でございまして、今まで保健医療の状況が比較的よかったのは、公的セクターが拡大してサービスを提供していたためではないかと思います。したがって、格差を縮小するという意味で保健医療に投資することは大切ですが、その一方で、効率化と持続可能性ということを考えて、長期的には保健医療分野などの社会セクターにも、いずれはセクターリフォーム的なものが必要になってくると思います。こうした社会セクターの構造改革は、日本が直接実施しないまでも、他の援助機関、たとえば世界銀行やアジア開発銀行などと協調していくようなことを、含みとして残しておいたほうがいいのではないかと思います。 それからもう1点、体系図には、復興支援における保健医療分野については、医療設備の復旧などハード面が書かれていました。保健医療分野の活動は人の命を大切にすることですので、平和の定着のツールとして、人材養成のようなソフト面も考えていただけないかと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。浅沼さん、磯田さん、草野さん、小島さん。 |
(浅沼委員) | 大変よく書き込まれた計画案で、じっくり読ませていただきました。その過程で幾つか疑問が出てまいりまして、その疑問の大きいところを三つぐらい挙げさせていただきたいと思います。 第1は、スリランカの経済的な発展の歴史をずっと見てみますと、ここでも書かれているように開発政策の失敗があったわけですよね。その失敗が何であったかというのをもう少し明確にしていただけるとわかりやすいのではないかと思います。同時に、それが明確になったところで、ここでは制度改革を含む経済基盤の整備というような言葉を使われておりますけれども、いわゆる構造改革なり、政策調整、それがもうすでに完了しており、それが今後大きな問題でないのかどうか。特にまだスリランカは国営企業を持っていると思いますし、特にプランテーションセクターで非常に効率の悪い国営企業がある。それから銀行もそうですし、対外貿易及び投資部門におけるいろいろな規制で、政策調整がまだ必要ではないかなと。その辺が課題として出ていないので、それはどうなのかなというのが疑問です。 第2は、それとも関係あるのですが、まとめて大変きれいな表になっているわけですよね。本文にこれを最終的に組み込まれるのかどうか知りませんけれども、17ページに表になっております。これを使わせていただくと「持続的発展」のところで言いましたように構造調整の問題があるのかどうかというところがあって、第2に「外貨獲得能力の向上」というところに次に焦点が当たっているわけですね。これは確かに輸出促進というのは大切ですけれども、ここで挙げられているところが、どうもODAの限界というのが非常に強く意識されるところではないかと思います。これは確かに民間部門との連携で行うと書いていますが、一体それを連携したところでどれぐらいのことができるのかどうか。これは援助計画なわけですから、具体的にこれらの各事項に対して、そういうプロジェクトが決まっているのかどうか。その辺、これを書いてしまって、どうも手がないなということだと困るのでというのが第2の疑問です。 ちょっと第2の疑問と関連するのがITの部分ですね。ITが非常にプレイアップされていますが、一体、スリランカにとってITの重要さは、ユーザーとしてのスリランカにとっての重要性なのか、それともきっとインドのバンガロールみたいなことを考えられていて、生産者、IT関連産業中の産業のバリューチェーンの一部になることによって利益を考えているのかというのが必ずしもはっきりしないというところがあって、基本的にはちょっとITをプレイアップし過ぎではないかという気がします。これは本当に効果があるのか。それが第2の輸出振興に係わるところの疑問です。 第3は、大変不思議ですけれども、援助シェアですね。日本が半分ぐらい。アジ銀が20%ぐらい、世銀が10%ぐらいに落ちていますよね。スリランカと日本の間、こういう表現をさせていただきますが、経済的な距離を考えたときに、本当に50%に近い、もしくは50%を超えるような我が国の援助シェアを正当化できるのだろうか。一つは、多分、私の記憶では、日本、世銀グループ、ADBは大体同じぐらいのシェアで長い間走っていたと思います。ある意味では、世銀とアジ銀がいろいろなコンディショナリティの問題もあり、スリランカ政府の開発政策へのコミットメントの問題もあり、ずっと後退していって、我が国が取り残されたような感じを与えますよね。その辺、今後、「リゲイニング・スリランカ」ということで決意を新たにしてスリランカは行うわけですから、このシェアのところは、できれば、4分の1ずつ、あとの4分の1を、国連機関も含めてみんながというような、バードンシェアリングを取り戻すことができるのかどうかというのが最後の疑問点です。 そのほか、マイナーコメントはありますけれども、それは時間の問題もありますので、また後でメールででもやらせていただきたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | どうも詳細なコメントをありがとうございました。磯田さん。 |
(磯田委員) | 私も4点ほどあるのですが、1点目は、伊藤さんがおっしゃった点と同じで、「目的・理念」のところの書きぶりに関して、目的というふうに特に書いてありますから、何のために援助するのかという目的の中に、当然、スリランカ側が抱えている開発ニーズなり、課題といったものを支援する、そういう部分が当然表記されるべきだと思いますので、それをぜひ前面に入れていただきたいと思います。 それとの関連で、本文中の、5ページのところに援助政策があります。最初に「意義」が書いてありますが、この「意義」も、書いてあるイとかロといったものはある種背景要因のようなものです。過去がこうだったから、今、日本がODAを支援する意義があると書かれています。今、日本が係わる意義を書くというときに、これを先に書くということに違和感を感じました。もし書くとしたら、最後に加える程度ではないかなと思います。 2点目は環境社会配慮の点ですが、本文で言いますと、16ページのところに「環境社会面への配慮」というふうに書いてありまして、これは大変重要な点だと思います。ただ、この項目では「電源開発などの経済基盤整備にあたっては」というふうにかなり限定してありますが、多分最初の人道復興支援の部分でも社会配慮というのはすごく重要でしょうし、そのほかのエコツーリズムにしろ何にしろ、電源開発以外の経済成長施策の中でも非常に重要だと思います。いろいろ資本の投入などを予定しているわけですが、民間の中でそれがどのくらい配慮されるかということに関して、過去の例ではかなり問題があるわけですから、ここの項目はもうちょっと拡大して書いていただきたいと思います。 3点目は、これは細かい点ですが、先ほどの17ページの図の一番最後の「貧困緩和・地域開発」という項目が「持続的発展」という大きな枠組みの中に入っています。ODA大綱にある「持続的成長」がこれと概念が同じなのかどうかわかりません。大綱で言う概念に、この貧困削減が入っているわけではなく、ここでの範疇とずれがある。結局、貧困削減のためには経済成長なんだというふうになってしまうのはNGOとしては認められません。整合性の検討をお願いしたいと思いました。 4点目は、この案が出てくるまでのプロセスのことについて、どこかでちょっとお聞かせいただきたいと思います。ベトナムのほうは、たとえばホームページ上にもずいぶんいろいろな記録、ほかのセクターとの話し合いをされた記録なども出ていますし、大野委員のほうの説明の中にもそういう部分があるのですが、スリランカの他からのヒアリング、あるいは意見のすり合わせ、どういうプロセスを経て今ここに来ているのか、国別援助計画のいままでの策定のプロセスという元のものがありますよね。それがいま大分変わってきて、国ごとに策定のプロセス自体がケース・バイ・ケース状態になっていると思うのですが、スリランカの場合にはどうだったのかということをぜひお願いしたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。それでは草野さん。 |
(草野委員) | 書くほうは大変で、コメントするほうは気が楽なものですから、いろいろ注文が出るわけです。私もその流れで若干コメントをさせていただきたいのですが、浅沼さんのおっしゃったこと、あるいは磯田さんのおっしゃったことと、若干関係がある部分もあるのですが、大きく分けて2点です。 一つは、先ほど絵所先生が感想としておっしゃったこと、日本としては早くやるべきだと、目に見えて少しでもよくなるということを示すことが重要だとおっしゃいました。全くそのとおりだろうと思います。そういう観点から、たとえば平和の定着と復興に対する支援、それから中・長期開発ビジョンに沿った援助計画のところを本文のほうをもう一度見させていただいたのですけれども、やや総花的といいますか、いろんなプログラムがずっと羅列してあって、できれば、クィックインパクトといいますか、やはり見える形で早く効果が出る、そういうものを優先順位として前のほうに挙げるとか、これだけたくさんあると、また日本というのはデパート方式で何でもやるのね、こういう印象になってしまうのではないかなということを若干危惧いたします。 それから第2点目は、これはほかの方からまだご指摘がない点ですけれども、「実施上の留意点」のイのところで「実施体制の強化」がございますね。私はこの「実施体制の強化」は、通常、開発途上国に対して援助を行う際に実施体制の強化という場合には、途上国側についてまず第一に思い浮かぶわけですけれども、もちろん日本側にも大きな問題がありますが、私もスリランカにお邪魔していろいろ聞いたときに、スリランカ側の実施体制、あるいは決定の体制が非常に非効率であると。これは一般的に途上国どこでも共通した問題ですけれども、これに関しては全く触れられていらっしゃらないわけですね。これは国別援助計画でスリランカ側もお読みになるわけですから、これは言及する必要があるだろうと。権限が日本側にあるかどうかは別として、コメントはする必要があるのではないか。それからもう一つ、この中で書かれてあります実施体制の強化というのが日本側の話であると。基本的な問題点というのが挙がっているわけですけれども、その処方箋というのが、たとえばキーワードでいきますと、援助調整や政策協議を一層強化するとか、人員の不足であるとか、非常に一般的な指摘にとどまっていて、ここをこうすべきなのだと。スリランカに関しては他とは違ってこういうところを日本側は実施体制上強化しなければいけない問題点というのは多分発見されていると思うので、そこをもう少し具体的に。そうしますと、この援助計画は5年間もたない可能性もありますけれども、少なくとも短期的にはこういうところが問題で、こういうふうにしたほうがいいというところをお示しいただいたほうが、この援助計画としてはいいのではないかな、そういう印象を私は持ったんです。一般論だけでよろしいのでしょうか、こういう指摘でございます。 |
(渡辺議長代理) | 小島さん。 |
(小島委員) | 皆さんに大体コメントとして出していただいたところと重複するので、手短に、2.03ぐらい。0.03というのをまず最初に言いますと、これを拝読させていただいて、スリランカというのは非常に日本にとっておもしろいなというふうに思いました。つまり南アジア、東南アジアとつなぎ、そして南アジアの背後にある欧米とつないでいくという点では、日本の東アジアのこれからの戦略を考える上で、もしスリランカで日本が意図した援助というのがきちんと実現すれば、それは非常に大きな意味が東アジア全体の戦略の中であるなと思いました。書いてはいけないのでしょうけれども、そういうことがちょっと後ろにあるとおもしろいなと思いました。 2点ですが、1点目は、もうすでに皆さんほとんどの方がおっしゃっている点で、この計画が5年後をにらんでいるということで、5年というのは長いと思います。社会主義国の5カ年計画というのは、1年目一生懸命やって、中だるみして、5年目に予算消化をするといいますけれども、そうはならないのだろうと思いますが、ある種の予想と目標という、その関係が一つ重要になってくるのかなと。その中身というのは、いま草野先生がおっしゃったようなことですけれども、一つつけ加えると、まさに5年とちょうどぴったり一致する「リゲイニング・スリランカ」、こういう計画を出している。これはわかりますが、ずっと読ませていただいて、絵所先生はこの計画をどう考えていらっしゃるのと。つまり、この計画を前面受け入れなのか、それとも違うのか、そこが一つのポイントになってくるのではないかと思います。 2点目は国際協力。日本は東京会議を主催している。そして日本は、先ほどの浅沼先生のご指摘からいくと、49%、プラス、ADB、プラス、世銀ということになると、60%から、下手したら70%占めるわけですよね。そういう日本のスリランカ支援と、やはり東京会議を主催したところに象徴されるような国際協力の中の日本の支援、そういう側面があるので、その協力とすみ分けというところをきちんと書いていただくと、これを国民が読んだときに、恐らく日本は70%近くのシェアを占めているけれども、日本の支援とは何なのだということを読み取ることができると非常にいいのではないかと思います。つまり国際支援の中で日本の支援が果たす役割と位置というような点をイタリックで書くというようなことをやっていただければいいのではないかと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。砂川さん。 |
(砂川委員) | 手短に2点申し上げたいと思います。 その前に、大変行き届いたレポートで、私も非常に感銘を受けましたし、興味も覚えました。 1点目は、いわゆる東京会議で45億ドルの支援が表明されたということですが、この45億ドルというのはどういう過程で決められたのか。これが、特に今イラク支援の問題が起こっている最中なので非常に大事ではないかと思います。則ち、これはドナーサイドからの支援供与の意図という具合に見るのか、あるいは国際機関等が積算したのかという点をクリアにしたほうがいいと思います。その中で、何故日本が10億ドルなのか、これだと大体3分の1弱になるかと思いますが、その辺のところを明らかにしていただいたほうがいいかと思います。 2点目はいわゆる現地でのインフラの状況ですが、恐らく、インフラはほとんど壊滅状態にあるのではないかと思います。そこで、いわゆる外貨獲得産業の振興のための民間投資を誘致する前提となるインフラというものが一体どうなっているのか、今後どういう具合にしなければいけないだろうか。また、貧困層に対するインフラの整備はどうするのか。このインフラ整備自体が、結局公共投資という形で、経済成長をもたらしていくだろうし、さらに雇用の促進にも資するということになろうかと思いますので、インフラこそ重点分野としてもう少し詳細にできれば投資期待額まで書いていただきたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。荒木さん。 |
(荒木委員) | 私も2点ほどあります。草野先生がおっしゃったように、やはり重点化というか、国別援助計画というのは基本的に重点化をどう示していくかというのが非常に重要な課題だと思います。あとは実施機関が重点化の方向で受け取って、それを再度ブレイクダウンしていくという流れになると思うので、やはり重点化のところをもう少し分野別も含めてしっかりと短期、中期にわたって示していくということが非常に重要ではないかと思ったので、草野さんの意見に全く賛成です。 それからもう一つは、どうもわからないことというのは、これは吉川さんが専門かもしれませんけれども、この前の開発会議にLTTEが参加しなかった。なぜ参加しなかったかということの背景、これが非常に不十分というか、説明がなされていないと思います。これによっては、彼らが非常に問題なので、その参加しなかった理由を明解にしていかない限り、スリランカの社会的な安定というのは今後ともあり得ない。戦争でもないし、平和でもないという状態が続くわけですね。開発計画を幾ら立ててみても、これはうまくいかない。そこで、これは取り決めだということでしょうけれども、要約の2ページ目の「対スリランカ援助基本方針」の中の (イ) 「平和の定着・復興プロセスへの支援」の(2)北・東部の復興支援に際しては、スリランカ政府との約束に基づいて行うという基本原則を堅持するとなっていますが、このスリランカ政府との話し合いで、LTTEはどうもスリランカ政府と話をしていると、自分たちに利のあるような形で援助が来ない、それで反発しているわけですね。その辺のところをどうするのかと。この辺の解明をしていかないと、根本的にスリランカ問題は、援助するときに解決にならないと思います。これは開発援助計画の域を出ているという意見もあるかもしれませんけれども、一応、その辺を押さえる必要があるというふうに感じます。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。一わたりご意見が出ました。まだ後で出るかもしれませんが、どうでしょう、ここで絵所先生にご発言いただきましょうか。 |
(絵所主査) | たくさんのコメントやご質問をいただきましてありがとうございます。学会でもこんなに出れば楽しいなと。順番に答えられるものからお答えしていきたいと思いますが、大野先生の質問は。 |
(渡辺議長代理) | 中・長期と復興支援という短期のバランス、そこをどう考えたらいいかということですね。
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(絵所主査) | スリランカみたいな国では特に体制が安定していないから、コンディショナリティーをつける必要があるというお話があったと思いますが。 |
(大野委員) | 先生がおっしゃったように、どういうふうに出るかという分析をして、順番に出ていくというシナリオがないと、全部やるといってもできないような気がします。 |
(絵所主査) | わかりました。体制が安定していないという認識を私は持っておりませんで、そういう意味ではしっかりした体制はあると思います。国中がワーッとなっているという状態からは程遠い国ではないかということ。だから、特にスリランカではそういうのが必要だというふうには思ってはおりません。今まで長い間やっていて支援でたくさん効果が上がっているものはあります。ただ、僕の感覚でちょっと援助をやり過ぎて、援助吸収能力が弱いというのは事実だと思います。だから、それはどなたかからありましたけれども、スリランカ側の援助体制をてこ入れするとか、あるいはそれに何か物を言うという必要はあると思いますが、政治システムが非常に混乱しているとか、問題はありますが、どうにもならない状態になっているわけではないと思っています。よろしいですか。
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(大野委員) | 政府は機能しているのでしょうが、やはり全体のプランニングができていないときに、本当にこの政府は開発のビジョンを長期的に維持できるか、それともどんどん変えたりする政府もいっぱいあるわけですよね、政権がかわるたびに。そういう意味で、本当にお金を入れて使われなかったり、また方向転換されないか、そういう保証はあるか。それから北東部に重点的にやるというときに、いまおっしゃられたようにいろんな問題があるわけですよね。本当にいまから北東部の中・長期インフラを入っていっていいのか、そのインフラは何からやるべきか、そういうことは考えなくて、できるものからやっていくという考えでいいものですかね。 |
(渡辺議長代理) | 私もちょっと。今日の議論をひとあたり伺って幾つかのキーワードが浮上してきているように思います。いま大野さんの挙げた平和の定着・復興支援、それから短・中・長期的な経済発展のバランスをどう取るか。荒木さんがおっしゃったように重点化というのが我々のテーマでもあるとなると、5年という時間の中で、まずどこから手をつけて、どこに抜けていって、そして5年後の新しい計画につないでいくかという供与側の縦の流れ、ここのところに対する疑問から、いろんなコメントが出ているような感じを私は受けています。草野さんから総花的に過ぎるという批判的コメントも出たのもそういうところからかなという感じがします。
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(絵所主査) | プランニングがないということはないし、かなりまあまあの国ではないかと思います。ただ、政権が大統領と首相がコハビテーションという非常にねじれ現象を起こしている。違った政党から出ているというところから幾つかの問題が出ているとは思います。ただ、それがどれくらいのというか、わかりませんからね、政治というのは。先がどうなるかというのは何とも言えませんが、今の政権を前提にして考える限り、一応、プランニングもあるし、「リゲイニング・スリランカ」という復興計画もつくっているということでありますから、我々はそれを見て、一応、それを全面的に反故とするわけにもいかないし、全部そのまま支持するわけにもまいりませんけれども、基本線は基本線、スリランカの出した線は尊重しながら、日本側のできることをやるというポジショニングしか今のところ取りようがないのではないか。だから、政治の不安定性をどこまで組み込むかと言われると、安定しているとも言えませんが、不安定だというわけでもないというふうに思っておりますね。 順番に答えてまいります。また、後でご質問いただければと思います。 伊藤委員のODA大綱では国際社会に貢献するというのが大きく出されているのに、この報告書は出ていないのではないかということだと思います。日本の国益が余りにも強く出ているのではないかという話でしたが、多分、本文のほうを読まれると、それほどそういうふうになっていないと思います。多分、要約がタスクフォースに作っていただいたものですから、少しそこが強調され過ぎていると思います。本文をお読みになっていただければ問題は氷解するのではないかというふうに思います。 次に、青山委員より、保健分野も公的部門が肥大していて、その効率化、持続化の発展というのが今後必要になるし、ADB国際機関との協調も必要になるだろうというお話がありましたが、それは全くそうだと思います。ですから、そこは特に書いていません。ただ、日本の保健・医療分野に対するスリランカでの援助というのは大きな効果を上げているのも事実でございますので、最後の留意点のところで、もうちょっといいデザインでやってくださいとか、あるいは貧困削減で、ただお金を出せばいいという時代ではございませんので、効率的なプロジェクトを努力していただきたいというふうに書いてあるので、その辺でカバーできるのではないかと思います。人材育成もおっしゃるとおりで、言うまでもなく、そこのハード面だけに限った話にはしていないと思いますけれども、そういうことを想定して書かれています。 それから浅沼先生からはなかなか手ごわいご質問をたくさん頂きまして、従来、過去の開発政策の失敗という点をもっと明確に書けということでございますが、国際比較をすれば、成長面ではまあまあの成果だと思いますね。ただ、実際に紛争というのが長い間続いていたということ。そのことに予算がずいぶん使われたということでありますから、そこが一番大きな問題だと思います。いわゆる構造調整もいまもまだずっとやっておりますし、長い目で見ると、1977年以来、構造調整をスリランカというのはしている国ですね。ですから、非常に歴史が長いわけで、そのわりには成果が上がっていないのかもしれない。渡辺先生、ご承知のように、スリランカの経済自由化は二つ波がございますよね。77年のときと、前回のものです。77年に始まったときは、ドナーはみんな、世界銀行を初め、インフラの建設という有効需要創出政策を組み込む形で構造調整というのをやりました。その結果は余りよくなく、財政赤字が増えてしまったということでございますので、第2次の自由化では相当安定化に重点を置いた構造調整プログラムというのをやって、今続いてきているわけです。実行はそのまま、形式的にはスリランカ政府は構造調整プログラムの実行は相当まじめにやっているという印象を持っておりますが、多分、私の意見ではスリランカの一番の問題はオーナーシップの問題ですね。この構造調整上やるときの問題はオーナーシップが弱い。余りにもIMF世界銀行の力が強過ぎるという印象を持っております。ですから、構造調整は優等生です。スリランカほどの優等生は他にいないのではないか、本当によくやっているけれども、なぜうまくいかないか。やはり弱い。勝てない。世界銀行はしっかりした論理構成でやってきますし、事実、言っていることもそのとおりだというところがあるわけなので、世銀の言うとおりにすると逆にうまくいかないというのも、逆説的ですけれども、あるのではないかというのが思っているところです。だから、プロセスを見ている限り、よくやっている国ですというしか言いようがない。構造調整の弱さというのは、いま特に安定化のほうに相当強く力点が置かれておりますから、どうしても短期的な組み方になりつつあるわけですね。だから、日本の支援というのは、そこをもうちょっと、それだけでは足りないとここでも書いていると思いますけれども、足りないわけですから、自由化、規制緩和すればうまくいくと「うふうになかなかなっていないし、いままでのスリランカの歴史を振り返ってみましても、それだけでもうまくいっていないわけですから、そこに我が国の支援の意義があるのではないかというふうに思っております。 民間部門と連携、外貨獲得のためにODAの限界があるのではということで、それは全くそのとおりだと思います。ですから、もっと本当に幅広い、特に民間企業にもっとスリランカに目を向けていただくということを、ODAという枠組みでどのくらいできるか正直わからないところがありますけれども、ともかくそういう方向に持っていく。そのために力を合わせてやるというしかないのではないかと思っていますけれどもね。 それからITに関しては高く評価し過ぎではないかというお話で、私は、必ずしもスリランカが、バンガロールみたいになるとは思っておりません。これは正直言って、インドの比ではない状態でありますから、やるとしたら、インドのソフトウェアのさらにその下の下請けであるとか、その程度の位置づけになると思いますね。ユーザーとして、特にICT化というのは避けられない流れですし、むしろスリランカは遅れている国ではないかと思います。ただ、あれだけオープンな社会でありますから、また能力のある技術者レベルも少しずつ育っておりますので、もっとそこを育てていくことによって、少しはスリランカの展望が出てくるのではないかというふうに考えている次第です。 次は、援助のシェアについて、日本、スリランカ関係というのは非常に遠いので、50%のシェアというのは正当化できるのか、せいぜい25%で、バードン・シェアリングをやるべきではないかというお話でありましたが、スリランカはモデルケースだという私は考えですね。50%は確かに大きいです。たとえば南アジアですと、ネパールと一人当たりと大体同じぐらいかと思います。何となく僕の感じは南アジアでバランスを得ていて、インドはべらぼうに大きいですから、一人当たりの援助受取額にするととても小さくなってしまいますが、パキスタンとバングラデッシュが大体同じような感じになっていて、スリランカも同じような感じになっていて、一人当たりの援助受取額の推移ですけれども、余り変わっていないところがあります。そういうところから決まっているのか、何故そうなっているのか、私もわからないですが、結果的にはそういうふうになっているところがあって、べらぼうに日本がスリランカだけに援助をアンプロポーショナリーに出しているという状態でもないと思います。ただ、スリランカは多少おっしゃったとおり、他の国がどんどん手を引くところで日本は手を引かなかったというのはあると思いますね。でも、逆に言うと、日本の影響力がかなり及ぶ国でもあるわけですよね。特に和平のことについては、日本がキーポジションを握っているわけですから、もしスリランカでうまく日本のODAを使いながら平和が達成されるということになれば、これはとても大きな成果になるというふうに考えています。ほかの国、たとえばアフガニスタンとか、イラクに比べれば、難しいというか、あんなに複雑じゃない構造でありますから、また日本とも非常に、シンハラ側もそうですし、タミル側も、日本に対して悪い印象というのは全く持っていないわけなので、もしここで日本が貢献できなかったら、どこでできると逆にそう思っているくらいのケースですので、是非力を入れてやっていただければと思っているところです。 磯田先生のお話は、目的・理念のところで、スリランカ政府が言っていることをもっと前面に押し出すべきで、余り日本の国益を出すべきではないかというお話が一つだったと思いますが、これも本文を見ていただきますと、そういうふうになっているのではないかというふうに思います。2ページ後の(イ)、(ロ)のところは、たとえば親日的であるとか、民主主義であるというのは背景要因であって、援助に対する意義ではないというお話でございましたが、やはりこれは意義ですね。グッドガバナンスのお話とかを考えてみますと、スリランカは一応民主制度というのをずっと維持している国、インドと並んで、多くの途上国の中では非常に例外的な国です。しかも、社会性を非常に重視してきた国でございますので、その点に対する支援をするということには大きな意義があるというふうに思っていて、決して背景だとは思っておりません。 次、環境社会面を、16ページにあるように、電源開発に限定しないでもっと書くべきだというお話でございましたが、これも本文を読んでいただきますとわかりますように、環境というのを一つの大きな柱にしております。最後の留意点のところでありますから、環境配慮、特に社会配慮なくして、とてもできない。スリランカに対する援助はいま特に北東部の支援は社会配慮そのものと言ってもいいわけで、とてもできない状態になっておりますので、先生がいま読み終わられた印象よりははるかに重視しているということだと思います。 それから持続的発展の中に貧困緩和を入れるのは、成長の手段なり、成長のために貧困緩和を出しているんじゃないか、そういう印象を持たれるというお話だったと思いますが、いま大きな成長、貧困、不平等に関するたくさんの新しい研究が出ていますよね。世銀が始まって以来の大論争があるわけで、大体、合意はあると思いますが、成長すれば、貧困はマイナスにはならずプラスになる。ただ、それが1対1の対応なのかというのはいろんな疑問があるところで、成長のタイプというのを考える。たとえば雇用創出型の成長、プロ・プアー・グロースを考えるとか、そのために農業開発が必要なのか、あるいは投資が必要だという議論もありますし、いま特にトリクルダウンするにしても時間差があるので、どうしても相対的に取り残される層が出てくる可能性があるので、そこに対しては何らかの介入的、配分的な政策が必要だという、そのぐらいの合意ができているのではないかと思います。そういう意味では、別に貧困と成長というのを、一昔前のように全く違ったものだと考えるほうが間違っていて、そこに大きな関連があると考えていいかと思います。成長なくして貧困は解決しませんし、成長だけで貧困は解決しないというのは常識的な結論でありますけれども、その辺のことを考えています。 それから作業までのプロセスについてのお話でございましたが、これは去年の12月に始まりまして、最初の第1ドラフトをつくり、スリランカ側に参りまして、向こうの大使館を初めとするスリランカのタスクフォースと協議をし、最初のドラフトの段階でスリランカ政府の財務省等々、関連省庁の方々と1回目のコンサルテーションをいたしました。帰国後、その意見を受けて、ドラフトを、全部で7、8回書き直しているかと思いますけれども、書き直しまして、東京では初めに各省庁の意見聴取をいたしました。それでまた、各省からいろんな意見が上がってくるものですから、調整いたしまして、それから一般公開的な説明会といたしまして、特にコンサルの方、NGOの方々に集まっていただき、 100名程度集まったかと思いますが、いろんなご意見をいただいてドラフトをつくり直して、もう一回、スリランカに行ったかと思います。それで、向こうの省庁、国際機関、世銀等にもう一度ご説明申し上げまして固まってきたものですから、そのときまた向こうのタスクフォースから意見をずいぶんいただきましたので、調整して、帰ってきてもう一度、各省庁からの2回目のヒアリングをいたしました。それでほとんどでき上がりましたが、東京会議がございましたので、その様子を見る。6月ぐらいにできていたので、東京会議の様子を見て、そこがどうなるかと。まだあの頃どうなるかわかってございませんでしたので、LTTEが来るかもしれないとか、いろんな意見があったし、待っていたわけですね。それで終わって、もう一度、ドラフトを作り直して、スリランカに行きました。それで意見聴取をして、帰ってきて、各省庁に。8月の初めぐらいにはほぼでき上がっていましたが、ただ、8月は夏休みになってしまいまして、戦略会議も1カ月1回しかございませんし、私もちょっと出掛けたりして、10月まで延びてしまったという感じです。ですから、その間も外務省の事務局に各省庁等々からいろんなご意見をいただいて、随時受け付けて、その度ご相談を受けましたので、直すべきところは直して、この形になったということでございます。 草野先生、全体的にどうも総花的な感じがするし、デパート方式になっているのではないか、クィックインパクトという話でありますが、正直言って、これは書けるところと書けないところとあると思いました。5年間ですよね。今言ったように、ここでご報告するまでに10カ月もかかってしまっています。そうしますと、実際の北東部はどんどん日々刻々と変わっておりますし、不確実性のとても大きなところですから、この程度がせいぜいかなと。だから、先ほど私が最後に言ったのは、私の感想というか、個人的に意見で、なるべく早く支援していただきたいということを思いましたけれども、この中に書き込むことができるかというと、ちょっと難しいというのは、今までプロセスを見てきたことの感想というか、印象を持っております。 それから実施体制の強化は、日本側だけに向けられていて、スリランカ側に対して書いていないじゃないかというお話でございましたが、これは最後、もうちょっと後のほうの留意点に書き込んであります。スリランカの援助消化能力は非常に低く、20%で非常によくない。特に入札の仕方等々に非常に非効率な状態になっているのも間違いございませんので、そこはもっとしっかりやるし、国際機関とも打ち合わせしてまいりましたし、皆で力を合わせて、向こうのスピードアップ、効率化を進めていただきたいということを書いております。 それから日本側の問題、人材強化は一般的過ぎるのではないかというお話でございましたが、確かにそうですけれども、これも書けるところと書けないところがあるというふうに思っております。やはり枠組みを考えなければいけませんね。スリランカだけということは、特殊要因があるとは思いますが、日本の行政システムを考えなければいけません。援助のシステム。この国はこれ、この国はこれ、個々ばらばらになるということは後のことを考えると、継続性とか、やはりインストチューショナル・メモリーをつくっていって、どこに国でも日本はちゃんとした援助調整を作る体制をつくれなければうまくいかない。その場しのぎになってしまうといけないというふうに考えていて、そうすると、月並みになってしまったという印象が自分でもないわけではないけれども、どこまで実際に何か提案して実現できるのかという、フィージビリティを考えますと、そう簡単にはいかないというふうに思っております。 小島先生のご意見は、長くなりましたけれども、5年は長過ぎるということでしたけれども、それは仕方がないですね。「リゲイニング・スリランカ」をどう考えているかという話ですが、私の個人的な意見でよろしければお話しいたしますが、これはウィクマシンナ首相の所掌の経済顧問をやっておりますアメリカ人の方が実際にはドラフトしたものだと言われて、その方にもお会いしましたけれども、正直言って月並みですね。これは私の個人的意見です。月並みというのは、すごく自由化、規制緩和一辺倒で、ちょっと一昔前のIMFのペーパーで出来が悪いやつという感じです。ただ、基本線は間違っているとは思わないけれども、ちょっとそれだけでは、今までやってそれほどうまくいっていないわけだから反省が足りないかと。 もう一つは、これも全く私の個人的な意見ですが、書かれた人がアメリカのコンサルで学者というほどの人でもないので疑問には思っています。スリランカには優れたエコノミストがたくさんおります。国際的に活躍されている方もたくさんいるのに、なぜ彼らを使わなかったのかという疑問はいまでも実はちょっと持っていて、スリランカの人を使うべきだったというふうには思っております。 それから国際協力、日本のシェアは70%だ、これは後ほどまとめて吉川審議官のほうからお願いいたしまして、もう一つ。砂川さんの4.5億ドルのプロセスをどうしたのかという話、これも吉川審議官にお願いいたしまして、インフラの話、どれくらいの債務スパンでという話ですが、この辺は積み重ねだというふうに思いますね。今までに初めてやるものではございません。日本のスリランカに対するインフラ援助はかなりの歴史を持っておりますし、どこまでができて、どこができないか、どこに問題があるかというのもかなり研究もされておりますので、その延長線でやるしかないかなというふうには思っております。 荒木委員の1番目は、短期、中期をはっきりさせよという話は先ほどの話。東京会議でLTTEが不参加、これも吉川審議官にお任せいたしまして、スリランカ政府との約束に基づいてというところでLTTEが反発しているのではないかというお話でございましたが、逆にこれは問うと、もっと問題が大きくなるというのも明らかです。もしスリランカ政府を無視して、日本政府が北東部のLTTE、あるいはそれの代理人にお金を出したらどうなるかということを考えていただければ、どうにもならないということ。これはODAでありますから、NGOの団体でLTTE側にそのままやってもいいということになれば、それはそれでいいと思います。そういうのがあってもいいと思いますし、実際にやっている部分はあるとは思いますが、日本の政府がODAという枠を使って、スリランカ政府を無視して北東部支援するということはとても考えられないし、やった途端に大変なことが起こると思っています。 |
(渡辺議長代理) | ご丁寧に答えていただきまして、どうもありがとうございました。吉川さんのほうからお願いします。
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(吉川審議官) | ご質問の点に触れながら数点申し上げます。 第一は、スリランカ援助に対する日本のシェアの問題です。過去20年間の実績の平均をとりますと、日本の援助はスリランカへの外国の援助額の大体45%で推移しております。東京会議で各国のプレッジ額の合計は、4年間で大体45億ドルでした。日本は3年間で最大10億ドルというプレッジをいたしました。この10億ドルという数字は世銀等の作ったニーズ見通しを参考にしつつ、これまで数年間の実績も勘案して算出しました。したがって、今後各国がプレッジどおり出していけば、日本のシェアは大体3割ぐらいになると考えられます。日本は東京で会議を主催しましたが、これまでの実績以上のプレッジはしませんでした。他方、世銀、ADBが大幅に積み増しました。更にヨーロッパ諸国という、これまでスリランカを軽視してきたドナーが大挙入ってきました。結果として総額が増え、日本のシェアは全体として下がっています。これは東京会議の成果ではないかと思っております。 砂川先生ご指摘の、45億ドルというのはどこから来たのかという質問ですが、これは各国が世銀他のニーズ・アセスメントを参考にして各国の戦略のもとで出した数字を合計したものです。 2点目は、北東部への支援についての各国の対応、特に日本の対応ですが、東京会議のコミュニケの重要なところは、和平交渉の進展と各国の北、東への支援をどういうふうにリンクするかですが、この点についてはピースプロセスのサブスタンシャル・プログレスとリンクさせようという合意が出ております。サブスタンシャル・プログレスがあったかどうかを誰が判断するのか、そもそも何がサブスタンシャル・プログレスかについての考え方は一枚岩ではない。たとえば和平交渉の仲介を努めるノルウェーは和平交渉が進んでいるということはそれだけでプログレスだと主張します。他方で、一部の国は、具体的に軍備の縮小であるとか、人権の改善であるとか、少年兵問題であるとか、そういうものができないと、それはサブスタンシャル・プログレスと言えないのではないかと言います。このようにドナー間で相当意見の違いがあります。日本との関係では、LTTEは東京会議をボイコットしましたが、9月に明石さんがスリランカに東京会議のフォローアップで行ったときには、キリノッチでLTTEのプラバカラン指導者に会いました。先方は、東京会議、それから日本の対応について、大変高い評価を出しております。 3点目は、今度の国別計画と実際の支援の関係ですが、私は年末迄にスリランカに行き、スリランカ政府との間で援助に関する政策協議を行う予定です。協議の目的は、東京会議で日本がプレッジした、対スリランカ支援について今後どういうふうに進めていくのかをスリランカ側と意見交換することですが、その際は今ご議論いただいております国別計画が重要な指針となります。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。熱心なご議論をいただいているうちに時間が随分経ってしまいました。もう一つ、ベトナムがありますので、座長としてはちょっと弱っております。しかし今日のご議論を聞いていて、絵所先生の、対スリランカ援助の基本方針の論理構成それ自身については非常に厄介なコメントがあったとは理解していません。むしろ、これをより十全なものにするためには、こういう書きぶりが必要ではないかというようなコメントであったような気がいたします。書きぶりになれば、特に先ほども言ったことですが、平和の定着、復興支援というテーマと、それから中・長期的視点からの発展支援、この二つのバランスをどう取るかということですが、これを5年間の日本の対スリランカODAの中でどう具体化するか、どう重点化するか、これをもう少し明示的に示してほしいというところがポイントだと思われます。そして日本のいろいろなODAプロジェクト配分の時間的な順序を示すようなフレームがわかるという理想的だと思います。そういった点を含め今日のコメントを受けて修文すべきところは修文していただくという前提の上でこのご案をご承認いただけないだろうか。次々と新しいODA計画が押し寄せています。また渋滞が起こってしまいます。議長、議長代理、それから何よりも主査、事務局のほうに問題点等があれば、個別にご提出いただき、これらを考慮して最終案をそっくり、それを外務大臣のほうに提出するという順序でいきたいと思います。
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(草野委員) | 今の議長代理の総括に対して異論を挟むつもりはないですけれども、一つだけお願いがあります。つまりODAの総合戦略会議の位置づけ、特に国別援助計画の承認といいますか、立案に当たっての役割というのをもう一度確認したいと思いますが、今私が絵所先生に対してコメントした中で、とりわけ総花的、あるいは優先順位の話が出たわけですけれども、それに対するお答えの中でやや気になったのは、各省からヒアリングを入念になさったというお話がありました。これは当然のことではありますけれども、それを全部くみ取ってしまうと、まさにこういうような総花的な内容が出てきてしまうのではないかという若干の懸念があります。もちろんそれは別途、合理的に絵所先生がご判断なさって、こういう書き振りになったというふうに理解はしたいわけですけれども、フィージビリティーの問題だとか、あるいはどういうお言葉でしたか、やはり書けることと書けないことがあるというようなご指摘もございましたし。ですから、元に戻りますけれども、ODA総合戦略会議という性格を考えますと、そういう省庁のいろんなご意見はあるけれども、我々は我々なりの判断をここで改めてする、そういうことでなければ、この会議の存在意義というのは余りないのではないかなという気がいたします。
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(渡辺議長代理) | 全く正論といいますか、おっしゃるとおりだろうと思います。そのためにこれだけ熱心な会議をやっているわけです。しかし、前から申し上げておりますように、基本的には主査がどう考えるかということが一番重要であります。今の草野さんのご意見等、絵所先生のほうにもいろいろご考慮いただけるものと思います。ODA総合戦略会議は、政府からは自立した、中立的な、国民参加の機関であるという立場を取っているわけです。そういう意見を絵所先生に聞いてもらったということで今日はよろしいのではないでしょうか。
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(小島委員) | ベトナムの方を見ていまして、最初に目的、理念がぽんと来ているわけですね。対ベトナムの援助計画のほうには目的、理念と絡めて書かれている。一方、スリランカの方は、まず最近の政治、経済、社会情勢という形で入って、課題に入って、それから援助の意義という流れですけれども、読む中において、説得力、なぜスリランカなのかというところを最初に目的、理念の中で謳ったほうがいいのではないかと感じました。途中に意義があるのかと。それもちょっとぼけたような感じになっている印象を私は受けたものですから、その辺だけコメントさせていただきたいと思います。
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(渡辺議長代理) | ありがとうございました。それでは、先ほどの提案にもう一度戻りますが、絵所提案、ご承認いただけますでしょうか。どうもありがとうございました。絵所先生には、大変短い間に精力的な仕事をこなし、大変優れた報告書を作成していただきました。しかも、これは我々のODA総合戦略会議としての国別ODA計画第1号という栄誉を担う作品でもあります。本当にありがとうございました。心から御礼申し上げます。 事務局のほうからご報告いただくテーマが四つほどございますけれども、これは皆様のお手元にすでに資料として渡っております。それを読んでいただくということにしていただき、きょうは報告は割愛して、残された時間、大野先生からご報告お願いします。 |
(大野委員) | スリランカを聞いておりますと、ベトナムは、問題もたくさんありますが、非常に安定感がありまして、日本としては開発に専念できる、そういう感じがいたしました。 ベトナムについては、3月に、すでにショートドラフトというものを皆様に提示しまして、先月の9月に、ここに出ているファイナルドラフトを完成しました。細かいところはずいぶん変わりましたが、3月のショートドラフトとは大筋では変わっておりません。ただし、重点分野の絞り込みについては、3月時点ではまだ何もない状態だったのが、今回入りました。まず内容上の主要ポイントというものを私のレジュメに沿って説明させていただきます。 まず、理念と目的については、これは3月時点と同じでございます。一つは、協力関係が日本のためになり、日本の安全保障及び経済的発展にとり重要であることです。これはODA大綱に沿うものと考えます。ワーディングは少し違いますけれども。2番目に、低所得途上国としてのベトナムの人道的、社会的要請に応える、すなわちベトナムのためにやるということです。3番目には、これはちょっとベトナムが特殊かもしれませんけれども、非常に開発援助に関する政策のクロスロードになっていて、いろんな新しい試みがなされている。その中で、ベトナムを日本の主張なり、考え方なりを出していく場所にしようということであります。 大綱のときでも同じでしたが、日本のためにやるのか、それともベトナムのためにやるのか、これについては非常にたくさんの議論がございました。一応両方立てている上で、日本のためということを最初に書くということで、現地チームと私が決定いたしました。 3番目の開発援助の考え方はベトナムで実施していますけれども、これもベトナムをその実験台にするのかとか、そのような意見もありましたけれども、むしろネガティブにとらえないで、私は積極的に、別にベトナムでなくてほかの国でも日本は同じような考え方で臨むと思いますけれども、ベトナムを通じて日本の援助というもののあり方を発信するのには何も悪いことではない、むしろやるべきだということでございます。 2番目に、開発戦略の動向とわが国の基本方針。これも3月に申し上げたとおりです。いろいろなものをレビューした上で三つの柱を立てました。 1番目は、成長促進。2番目は、社会生活面の改善。これは大きくいえば貧困とも言えますけれども、成長と貧困、社会生活面の改善。3番目に、それに両方かかわるものとして制度整備の三つの柱。これはまだ非常に大きい枠組みでありますけれども、少なくとも基本枠組みとしてはそれを出して、これに従うような援助をしていくということを出しました。 ベトナム政府も大体この三つの条件、目標みたいなものを出していますので、ベトナム政府の5カ年計画、10カ年戦略、その他時折々に出てくる戦略と基本的に同じものを日本はサポートするという形で出しました。 それから、一部の意見でしたけれども、我々が日本の特に産業的な関心からくる言葉でではなくて、例えばMDGに貢献するとか、あるいは貧困削減戦略の中でどのポジションをとるとか、援助協調にはどう取り組むとか、それを中心に書けという意見もあったんですけれども、これは私どもは却下いたしました。日本は日本の言葉で書いても僕は全然かまわないと思います。 3番目に、重点分野・重点事項の絞り込み。これは一番苦労したところですけれども、まず、ベトナムについてはスリランカほどもない、金額的には多いですけれども、パーセントで言うと4割を切るぐらいのドナーでありまして、ただ、トップドナーではありますので、教育をやらないとか、インフラに特化するとか、そういうやり方は結局しない。ある意味ですべての分野に入っていく。それで、非常に総花的ですけれども、その中で、例えばインフラだったら、インフラの中でも電力だったら、こういう部分にはお金は使うけれども、こういう部分には使わないというような書き方にしました。これは僕というよりも現地のほうで考えて、結果こういうやり方にするという提案があったので、私もそれで受け入れたわけです。 ここで一つ、非常に難しいというか、例えば農業は十分書いていないとか、あるいは国営企業に対してどうするか書いていない。これは重要問題でないのかというような意見が、NGOの方、いろいろなほかの専門家の方からも出ましたけれども、そのときに私の考えですけれども、こういうふうに答えました。まず、あるイシューが日本にとって重点分野になるか重点事項になるかというのは、その問題が重要であるということだけではない。第一に、その問題が重要でなければならないけれども、第二に、非常に多くの開発問題があるときに、この切り口がベトナムにとって、ドナーにとって非常にいいものであるか、効率的、効果的なものであるかということを考えなければいけないので、すべての分野にドナーのお金、あるいは公共投資をばらまくということはできないわけで、ここから突破していこうという合意がなければならない。3番目に、それを決めた上で、日本がODAのお金を使ってやることとして、これは比較優位があるものであるか、それとも世銀に任せたほうがいいのか、NGOに任せたほうがいいのか、あるいはベトナム自身の公共投資に任せるべきなのかというのをクリアしたものを書いたということであります。これについては、NGOの皆さん、各省の皆さん、3回、4回と議論して、各省の皆さんは個別にもかなり突っ込んだ議論をさせていただきました。その結果がメインのレポートの最後に別紙という数ページに書いてあるところで、これは実際にこの分野以外はやらないとか、そういう言い方もして、そういう意味で、サブテーマ、あるいはサブサブテーマのところで絞り込んだわけでございます。 4番目、将来の援助規模については、これも最初の作業を始めたころから関係の方から皆ほぼ合意された意見でありましたけれども、援助量については向こうと協議して、常に増えるとか減らないとかいうことは絶対言えないわけで、達成状況による。制度、政策、我々が関心を持ち、彼らと議論していることについて、そういう達成状況を含む、状況の達成度を評価して、一方的にやるのではなくて、政府と常に協議しながら、「規模の定性的な方向を検討する」ということです。この言葉がわからないという方もいらっしゃったのですが、結局、世銀のように数百ミリオン、ハイレベル、ローレベル、中間シナリオというように、具体的に数字、年度を出すのではなく、増やす方向でいく、減らさない方向でいく、そういうようなことと、あと向こうとの協議に常による形で、一方的でない、断定的でない形で、しかも言葉として入れていくという言葉でございます。説明すればわかっていただけると思いますけれども、そういうことをして、今これについて残っていることは、もうこれは現地で作業が始まっておりますけれども、具体的に何をモニターして、何をもってベトナム政府が一生懸命政策、制度改善に取り組んでいくか、具体的に決めなければいけないということで、それは一つ作業が残っています。 それから、これはもっと大きい問題ですけれども、日本のODAが減り、しかも、ある部分にものすごくお金が出るときに、ベトナムに約束した金額、方向性にせよ、金額が本当に確保できるのかという問題はあると思いますから、その問題はまだ決着しておりません。 5番目に申し上げたいことは、貿易投資環境改善の重視です。ここにはいろいろなことを書いていますけれども、読んでいただければ、ベトナム政府、いろいろな問題がある中で、一番関心があることは、ベトナムの貿易投資環境がよくなく、それによって投資をたくさん逃がしており、実際に操業している国内企業、外国企業も非常に困っているというのがかなり全面的に出ていると思います。それは全く意図的なものでありまして、それがある意味で今回の国別計画の主張点であります。 あと、農村はどうなのか、中小企業はどうなのか、財政金融はどうなのか、ほかにいろいろ問題はありますけれども、我々はこれを中心に組み立てたつもりです。これはもちろん日本の企業も関心があるわけですけれども、ほかの国内企業にとっても、あるいはベトナム全体の経済活性化にとっても、これは非常に重要だと思うし、日本のしかもODAを使って支援できるレバレッジがきく分野だと思いますので、あえてこれを取り上げたわけであります。 実際に特に去年は、モーターバイクの問題を通じて非常に投資環境が悪化したと我々は認識しております。それに懲りずに、また先月にひどい政策が出まして、EPZ、輸出カ国に対する輸入関税に対して逆行するような政策が出ておりますので、やはりこういうような政策悪化があるときには、ODAでいくら産業支援しても問題があるのではないか。それはすぐ断ち切るのではないけれども、政策協議を強化していかなければならないというときにバレッジをきかすためにもこういうような焦点を当てたわけでございます。 ただし、もちろん状況が変われば、先ほど5年間という話がありましたけれども、これは非常に改善するということもあり得るし、また全くだめになるという場合もあって、当然それはテーマを変えていく必要があると思いますけれども、現時点で、2003年の時点ではこれがODAを使って送るメッセージだと思います。 6番目、政策対話。これはODA大綱にも書いてあることですけれども、我々も最初の時点から「要請主義」ではなくて「対話型」の案件形成を目指すべきであるということです。対ベトナム政府だけではなくて、ドナー間、あるいはJICA、JBIC、大使館、そしてビジネスコミュニティ、そういうものとの対話、それから、NGOとの対話の実質化といいますか、形骸的なものではなくて実質化するということを重要視しました。 その他、ここに書いてあるようなNGO、環境配慮、これはもう申しました。JICA、JBICとのオールジャパン体制、それから援助協調に対しては、日本の知的リーダーシップを出すと同時に、日本でまだよくない部分がいっぱいございますから、それに対しては直していく動機にする。ここら辺については書かれましたし、書いたものもそれほど文章としては長くないものもありますけれども、これを具体的にしていく必要があると思います。 以上が内容に関するハイライトです。 今度は、プロセスについての私の感想を申し上げます。 私は最初、タスクフォース方式でなくてオープンネットワーク方式でやるということを皆さんに申し上げて、結局、現地の北野公使ですけれども、それと私がハブになって皆さんの意見を自由に受け入れる。委員でなくてもメールででも何でもいただいたものを、ただ我々の二人の責任でまとめるという形にして、実際にそうなったと思います。 ただ、私の予想外だったのは、現地の体制が非常に活性化しまして、ある意味でここまで活性化すれば、私は要らないのではないかと思うほどでしたので、ある意味で現地に主導権を渡しました。本来ならば、もう少し私がインターベンションして、方向性を原稿、ドラフト等も私が主にやろうかと思ったのですが、その必要もなくなりました。 ここに、内容については全くの現地主導型でやったと書いてありますけれども、それはちょっと言い過ぎで、全くというほどではない。ある意味で私の責任放棄みたいな形になってしまいましたが、ただし一つ、ベトナムでは石川プロジェクトというプロジェクトが95年からありまして、その後も私のプロジェクトが向こうの大学と研究して、少なくとも産業、貿易、投資の面では十分な成果があり、大使館の方もJICA、JBICの方も、それは本も報告書も全部読まれているわけですから、そういう意味で既に吸収していただいたと思っています。実際に書かれた貿易投資環境の改善については、こちらとしては我々の思っていたことを現地のほうで書いていただいたということで、特に異論はございません。 ただし、農業とかさっき言ったような財政金融について、ほかの分野については十分な日本側の研究が行われたとはまだ言えない状況で、これについては後で申し上げます。 それから2番目に、なぜ私がそれほど介入しなかったかというのは、現地で非常に活発化してリーダーシップをとってやっている場合に、内容にそれほど問題ないときに私が細かいことで介入すべきではないというような判断、それでいいものができるならば、できるだけ現地の方にやっていただきたいというのがありました。特に現地では毎週のように随分時間をかけてやっていて、私が行ったときには週に2、3回集まって長い会議をやって、本業のほうはどうなのかという心配もあるほどやっていただいたので、それにブレーキをかけるのではなくて、むしろやっていただいほうがよかったという判断です。 それからもう一つ、私は全く介入しなかったわけではなくて、実際に上に上げた7項目、内容については非常に介入しました。実際にドラフティングを私が先に書いて示した部分もありまして。だから、実際の原稿は、形式的には向こうがイニシアチブをとって書いたわけですけれども、内容的については、こういうふうに書き直してもらわなければ困るというようなことも何度もメールでやりましたし、現地でも議論したから現地主導の形をとって、しかも私の意見は十分入ったと思います。 次のページへ行きまして、非常に私がよかったと思うのは、そういう現地の活性化を通じて、今まであまりなかった東京と、東京というのは外務省本省を中心とする東京・ハノイ間、それから関係各省間、これはもちろん日本側のということですけれども、それから現地の大使館・JICA・JBIC、必要のあるときはJETROも、産業間、政府・NGO、日本政府と日本のNGOですけれども、そういうような意見交換というものが非常に活発になって、内容についてはまだ完全に意見の一致があるわけではないし、私もこれでいいとは完全には思っていませんけれども、そういうことができたというのはプロセスとして非常によかったと思います。 それから、この国別援助計画のみならず、他の援助に関する現地の動きは、非常にたくさん動いています。例えばCGにおいてドナーとしてどういう発言をするか、リーダーシップとっていくかという作戦会議、それからインフラ整備、大規模インフラ整備に関する日本のリーダーシップをとって、ADBとか世銀を引っ張っていくというような動き、これはもう動いています。それから、日越共同イニシアチブというのがあって、これは貿易投資環境を首相レベルでベトナムに改善を要求していくという考えか方というか、イニシアチブ。それから、援助協調へのイニシアチブ、それから、ベトナム政府との対話の活性化、そういうことが動いていて、その中の一つの重要な要素として国別援助計画を使っていただいたということで、私はこういうような動きを、これが終わった後もずっと続いていくといいと思います。 3番目、これは今までいいことばかり申しましたけれども、懸念の一つはサスティナビリティーでございます。こういうふうに現地が活発化したというのは、現地にたまたま2002年から2003年にかけておられた方が非常にそういうふうに動いていただける方でリーダーシップもある。特に北野公使のリーダーシップがあったわけですけれども、残念ながらベトナム以外の国ではすべて日本の経協関係者がそのように動ける形にはなっておりません。バングラディシュとかタンザニアとか、かなり活発に動いているところもありますが、実際にはすべてをこのモデル持っていくには非常に卓越した人材が現地になければならないということで、それでどうするかということを現地の方が考え始めたことですけれども、ここに書いてあるようなことで対処しなければいけないだろうということです。 まず、東京のほうから現地が主導をとってやっていただきたいと示すことです。現地が主導しなければ評価しないという形で、東京の考え方や方針が変わるといいと思います。これはODA大綱もそのような形になっていると思います。 それから、グッドプラクティスを関係者間、特に現地の大使館内で各国で日本間の関係者が共有し、所有し、模倣し合うことが必要だと思います。 3番目に、現地での制度の中の現地主導性・関係者間協力の仕組みを埋め込んで、属人的なものに頼らないし、制度としてつくっていくということ。 それから、我々の場合はスリランカその他の国と違って、東京タスクフォースというのは作りませんでした。もし作っていたならば、東京タスクフォース、主に研究者と専門家からなる方々だと思いますけれども、例え現地の人が変わっても、その人たちが少なくとも分析的なこと、提携的なことについては継続性の役割を果たせるのではないかと思います。 4番目に、これは原則的議論の不足と申し上げましたが、これはベトナムのようなつくり方で、現地でボトムアップでつくっていきますと、現実的に向こうで困っていることを書き込んでいただくということで、非常にその面ではいいですが、原則的議論、学者だったら当然出すような問題というのが前に出ていないという恨みがございます。ここで書いてあるのは、実際に研究者から出た質問、疑念ですけれども、我々は外国直接投資を受け入れる環境を整えるのが一番今大事だというような書き方をしました。そうではなくて、国内の中小企業の育成、国有企業改革、そっちのほうが重要なのではないかという意見も出て、それに対してはあまり書いておりません。 この問題は、10年以上、石川プロジェクトも含めて意見が分かれている問題で、大きな開発戦略の問題でありますけれども、おそらく世銀などでは、国有企業改革、中小企業支援のほうが重要だと言うと思いますが、これについては大きい問題であって、議論していく必要があると思います。とりあえず2003年バージョンではこうなったという理解でいただければ。あと、農業・農村開発への分析・言及がないと農業研究者の方からそういうコメントがあって、これについては二つ申し上げます。 確かにもっと農村というのは重要ですけれども、一つは、日本側の研究というのが産業部門ほどできていないと思います。それから、実際の実施担当者の方と情報を伝えたり意見を伝えたりという会がまだ十分なされていないという一つ日本の側の体制の問題、もう一つ、これも日本側の体制の問題ですけれども、農業については非常に日本にとっては厄介な問題があるので、言う必要もないと思いますけれども、ベトナムだけではなくて、どれだけ他国の農業を日本の税金で支援するべきかという問題、この大きい問題を解決できないとなかなか日本としても解決できないということで、こういう大きい問題は、ODA総合戦略会議、あるいは国別援助計画という政府の公的機関としていろいろな制約、時間的制約、内容的制約に縛られてやるよりも、アカデミックに先導していくべきものということを痛感いたしました。 私は別のプロジェクトでそういう本質的な開発問題についてベトナムでプロジェクトを現在立ち上げようとしておりますけれども、できれば私は5年間問題ということがありましたけれども、中身についてはサポートし、自分たちで作ったものですが、これは100 %いいものとは思っておりません。どんどん変えていくべきもので、5年間でもし古くなったら、もう変えてもいいと思いますし、できれば変えたい。1年間ごとにでも見直ししていって、制度的枠組みは議論する必要があると思いますが、古くなったものをいつまでも残す必要はない。そのかわり具体的で、今ベトナムがまさに対応しなければいけない問題をどんどん書き込むべきだと思うので、議論は今申し上げたように、原則的議論がまだ十分起こっていませんけれども、少なくとも関係者間の議論を合活性化させたという意味では成功だったと思います。 |
(渡辺議長代理) | 大野さん、ありがとうございました。 大野報告、もう既にお読みいただいていると思いますから、これに短い言葉でそれぞれご発言していただき、大野先生のほうでそれを勘案して、採用すべきものは採用するという格好にせざるを得ません。それでは、青山さん、浅沼さん、伊藤さん、砂川さん、どうぞ。 |
(青山委員) | 大変なご努力の成果としてのご報告をありがとうございました。ただ、社会セクター、とくに保健医療の立場から見ますと、正直なところ、期待したほどではありませんでした。これまでの国別援助計画では、保健医療分野がきちんとした分析に基づいた計画になっていなかったことを不満に思っておりました。今回、それを見直してくださると思っていたのですけれども、5ページの保健医療のところを見ますと、依然としてきちんとした分析結果が述べられていません。もちろん紙数が限られているのであまり多く書くことはできませんが、それにしても分析や論理的整合性が不足していると思います。 例えば保健基礎指標について「一定の改善」と書かれていますが、これは過少評価でありまして、ベトナム程度の経済レベルでここまで工場させたのは大変な成果だと思います。それから、「ソフト・ハード面での不備」と書かれてありますが、具体的に何を意味しているのかよくわかりません。 また、「中等教育の就学率が低い」と書かれてありますが、経済レベルのずっと高いフィリピンに匹敵する70%近い中等学校就学率なのですから低いとは言えず、むしろ大変よくやっている国ではないかと思います。このように、社会指標に対する認識が、国際比較の観点から言うと少しずれているのではないかと思われます。 次に、10ページには、生活・社会面での改善として、教育・保健医療が重点課題としてあげられています。しかし、分析が適切になされなければ、どのように取り組むのかを決められないのではないでしょうか。 それから、「初等教育の就学率は高い」と述べているにも関わらず、15ページの教育のところでは「就学率の向上に係る支援」とあり、既に高い就学率をもっと向上させる支援が必要なのかという疑問が生じます。 16ページには、重点課題があげられており、取り組む課題と、対象とはしない課題が明示されています。保健医療の重点課題について、内容的にはこれでよいとは思いますが、対象とするかしないかを決める根拠となる分析結果が述べられていないので、どうしてこのように決めたのか説明不足と思います。 |
(大野委員) | 個々に出すと、もちろんそれを入れると300ページになりますから、向こうで毎週集まってやったというのは、保健分野、インフラ分野、電力分野、その他10分野について中で分析を書いて、その議論を彼らはしていたわけです。 |
(青山委員) | もしそうなら、議論の成果がわかるように5ページに書いていただきたいと思います。また、分析そのものも少し不十分ではないかという気がします。 |
(大野委員) | これだけ分野があるときに、どれだけ書くかということ、それをやって15ページでまとまるかということです。それから、彼らがやった分析というのはありますけれども、彼らはもちろんオフィシャルなものにはしたくはないですけれども、ずっとたくさんありますから、僕はそういうことを始めていただいた。今までそういうことは全くなかった中で、JICA、JBIC、大使館、JETRO等が集まってそういうことを始めたということは、僕は高く評価したいと思います。
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(青山委員) | それはもちろん評価しております。 |
(大野委員) | 中身はまだ十分ではないというのは言ったとおりですけれども、それまで否定すると、ちょっと現実的ではないのではないかなと思います。 |
(青山委員) | ただ、ある事項について重点化しないとわざわざ述べているのですから、根拠となる分析結果が説明されていないと、説得力がないと思います。あるいは、対象としないということをわざわざ書かなくても、重点化事項のみ述べるにとどめておいた方がよいのではないでしょうか。 例えばベトナムの場合、感染症についても、SARS流行時にいち早く対策を行ったというような成果もあるわけで、ある意味ではモデルにできるところもあるわけです。よいところもきちんと取り上げ、ベトナムの実績を過少評価するべきではないと思います。むしろ、地域格差の縮小・改善に焦点をあてて取り組むべきではないかと思います。 |
(大野委員) | それを読んでいただいて、それにコメントしていただいたほうが現地の方も役に立つと思うので、ここからもとの分析を読み取るのは非常に難しいと思います。
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(青山委員) | 分析結果が読者に理解できるように書いていただきたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | 浅沼さん。 |
(浅沼委員) | 特に重点化のところで大変苦労されているのがよくわかりまして、その点は大変評価すべきだと思います。特に重点化を考えるときに、いろいろなODA活動の三つのカテゴリーに落として、それを明確になさっているというのは大変な努力で、私自身は大変評価したいと思います。 そのほかのコメントは、これは一般的に国別援助計画を書くときですが、理念、目的のところに「我が国にとって」というところが非常に強く出てきますと、当然相手国側も読まれるドキュメントなので、外交的に本当は困るだろうなと思います。そういう意味で、この書き方は多少考える必要がなかろうか。 それで、特にこれはそういうコメントが出ることを予測して大野さんおっしゃいましたけれども、ベトナムをギニーピッグにするようなところがありますよね。それはどうもベトナムにとって多分思わしくないんだろうし、ある意味では言わずもがなではなかろうかと。我々の言葉で書いて、その方針が出てきて、それがそのほかの援助機関が考えていることと違うことは大いにいいことで、それで十分ではないかという気がいたします。 それから、今度は内容ですけれども、ベトナム経済、ここにも書いてあるとおり、ある意味で転換点に立っているわけですよね。成長率だけでそれを考えてみても、ある種の屈曲点に立っているわけで、それはどういうことなのかということをもう少し経済環境、中国の衝撃、その他言及はありますけれども、もう少し構造的に説明していただくと、今後の援助方針にそれがうまくつながってよかったのではないかという気がします。 その中で一つ、どうして言及がないのだろうなと思っているのが財政政策、特に税制ですね。たいていの移行国でもってどんどんと民営化を進めていって、しかし、どうしても国の役割で相当強い部分を残さなければいけない。それをサポートする税制というのがどうしても弱くなってしまって、何故その言及がないのだろうというのが私のコメントです。 それから、多少読者にとっては意味の不明瞭な、どの方向に行くのだろうというような書き方をしているところがあって、それはまた後でeメールででもさせていただきます。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。磯田さん、お願いします。 |
(磯田委員) | 3点あります。一つは、目的のところが、今の浅沼委員のおっしゃられたのと私も近い部分があります。3本に立てていらっしゃるというのはいいんですが、ベトナム側に対する支援という部分で、1番目は我が国にとってということで、ベトナムにとっては人道的社会的要請というところに含めているというようなおっしゃりようでしたけれども、私は経済発展そのものもベトナムにとっての当然目的になるわけで、それを人道的という部分だけになるわけではないので、目的の1番目の中に、もちろん本文、1ページ目のところに一応書いてはありますが、ベトナムにとっての経済発展というものをきちっと、それも同時にというふうな書きぶりにしていただけたらというふうに思います。 それから2点目は、11ページ、12ページにかけての個別案件の実施に際する効果・効率の向上という中で、いろいろなセクターの参加ということを書かれてはあるのですが、この中の書きぶりで、一番最後の上から5行目、6行目のところに、民間企業の持つ技術や知見を適切に活用していくというところはかなり具体的に書かれてありますが、他の個所は連携とか意見聴取ということで書きぶりが非常に軽い。むしろNGOの知見も適切に生かしていくという、ここは民間企業だけに限らないでいただきたいというふうに思うことがあります。 それから、その次の環境配慮に関してはかなり具体的に書き込んでいただいて、賛同している部分です。 もう1点は、これは別紙の個別具体的の中で、環境のところに流域管理という箇所がありますけれども、16ページの最後の部分ですが、フォン川流域における流域管理の推進云々という、ここだけかなり個別の案件のようなものが書かれてありまして、これはまだ確定しているわけではなくて、いろいろ議論があるところというふうに聞き及んでおります。それをこういうふうに書き込むというのはいかがなものかなというふうに思いました。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。伊藤さん、お願いします。 |
(伊藤委員) | 私の質問は、どちらかというとテクニカルな側面ですけれども、大野先生が対ベトナム援助計画を策定されるにあたって、現地に基本的に任されたというご発言がありました。このプロセスにおいて、私も大野さんと一緒に、NGOと大野先生との対話の場を東京で持つ機会が数回ありましたが、そのNGO側からの提案というものがどういう形で大野先生から現地のほうに伝えられたのか、どのような形で反映されたのか。それからもう一つ、ベトナムでは400くらいのNGOが活動しているというふうにここに書かれていて、大野先生からも問い合わせがあって、ベトナムで活動するNGOもご紹介したことがありますが、現地で主導型のODA大使館でこの案が策定されたそのプロセスにおいて、現地で活動するNGOの参加がどこまであったのか、その彼らの意見はどういう形で反映されているのか、その2点お聞きしたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | 砂川さんどうぞ。 |
(砂川委員) | 日本のベトナムに対する援助の今までの評価、それから今後の重点の置き方という観点においてコメントしたい。今までベトナムは大変高度成長をしてきたが、日本の援助に負うところが非常に多かった。そして日本の援助はインフラを中心にしてなされたものであった。その結果、成長は成し遂げたけれども、いろいろな面での歪みをもたらしていると思います。一つの大きな歪みは、地域格差だろうと思います。今ここで地域格差の是正というような観点を強くおっしゃっておるし、社会的な面での充実というものが必要であるということをおっしゃられているので、これには全く同感ですが、この計画に基づいて、これからのODAの実施において、そういった歪みの是正という面に力点を置いていってほしいと思います。 もう一点は、このペーパーでは、経済インフラにおいては、民活、民間投資というものを期待していいのではないかと書いてありますけれども、インフラで民間投資をやる場合には、政府の姿勢というものが非常に影響される。ここで問題なのは政府の民間に対する姿勢、あるいは外国投資に対する姿勢というものが、ここに書かれているように、あまりよくない。それがかなりのブレーキになっているというぐあいに私も感じております。この辺りをODAに関する政策対話を通じて、民間が入りやすいように、制度を整備していくという方向に政府の姿勢に変えていってほしいと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。小島さん。
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(小島委員) | 理念と目的のところについて。この計画というのはどこに対して出すのかというと、一つはベトナム、二つには国際社会、三つには日本国内ということであると、やはり私は最初のところに安全保障及び経済的繁栄、これはきちんと書いておいてもらわないといけないのだろうと思っております。言わずもがなということはそうですけれども、言わずもがなのことを言わなかったから問題になってきたというところがある。ただし「安全保障及び経済的繁栄」というこの言葉、これはスリランカもそうなっていますけれども、この言葉は非常に馴染まないですけれどもね。安全保障というよりも安全であり、繁栄というのは経済的な繁栄だけかとこう思いますので、むしろODA大綱に出ている「安全と繁栄」で十分じゃないかというのが1点目。 2点目は、要約と計画案の本文の中にも出てきますが、中国と国境を接するベトナムは、我が国対中外国との脈絡においても重要な国である。私は私なりにそう理解しますが、よくわからないですね。どういう意味で言っているのかわからないものは省いたほうがいいと思います。 |
(牟田委員) | 何をして何かをしないかということがかなり明確に書かれている計画だというふうに思います。そういう意味では、読めば自ずとわかるということかもしれませんが、ひとつお願いがございます。スリランカ国別援助計画の後ろの方に目標体系図というのをつけておきました。あれは援助の上位目標を具体的な目標にまでブレークダウンをして、一目でこの計画が何をしようとしているかということがわかるように作ったつもりです。それはわかりやすいということが一つございます。が、もう1点は、あの目標体系図を透かすと、後ろのほうに指標が見えるような形につくったつもりです。5年経ちますと、この国別援助計画は国別援助評価をする、あるいはその途中で中間評価をするということになります。評価作業の過程で、これは目標の全体の構造がどうなっているか、つまり、ここのプロジェクトができた、できないとかということと同時に、それによって全体の目標がどれだけ達成されたかということを考えていかなければいけない訳ですが、そのためには、どうしても目標体系図を作らなければいけない。その時に、 評価団がつくった目標体系図は自分の意図したものと違うというように言われるようなことになってもやはり具合が悪いと思います。そういう意味で大野先生が作られた計画は、比較的目標体系図を作りやすいのではないかと思いますけれども、ぜひ大野先生のお考えの体系というものを1枚の図にしていただきたい。それがこれを5年後に評価をするときに非常に大きな役に立つと思います。
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(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。脊戸さん、お願いします。 |
(脊戸委員) | 私のほうからは、現地の案で計画をつくる作成上のプロセスのあり方として、大野委員の方で最初にプラットフォーム形式という中であげたというのは非常に関心を持っていました。さらに議論が進む中でたくさんのいろいろな側面から議論が積まれ、最終的には現地においてリーダーシップが非常に醸成され、最終目標としては既に完成されたというコメントがありましたが、一方で大野委員の率直なコメントを聞いていると、大きな視点での開発総合戦略という部分では十分ではなかったというようなものがあったと思います。それでは、今後このような計画をつくる上で、大野委員のコメントを伺いたいのは、現地の実施側の部分と総合的な開発戦略というのは当然のことながら一つの大きな括りの中にあるべきであって、今回、意見をお聞きすると、その辺が少し欠落されていたと。今後どのようにしていくのか。ベトナムということに限ったときに、そこも含めて当然のことながら国別計画というものがつくられるべきだというふうに私は思っているので、そこのところのコメントを率直な意見として伺いたいと思います。
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(渡辺議長代理) | 非常に多様なコメントが出されました。なぜ今ベトナムか、非常にこの論文の中で魅力的に感じたのは、浅沼さんもそうコメントしましたけれども、ベトナムの経済成長が屈曲点と言いましたか、屈折点にある、特に中国との競争下でベトナムの経済が存立し得るかどうかの岐路に立っている。貿易投資環境を充実してベトナムが再軌道に乗るような方向を見つけよう。それは非常にコンシステントな切り口であり、魅力的な論理だろうと思います。他方、大野報告では我が国の対越援助は多様な分野に包括的になされねばならないことになっている。援助の重点分野が非常に幅広い、包括的である。大野さんの今の頭の中にある重点分野と、ここに書かれている重点分野とのすり合わせが必要になってくると思われます。その点はどういうふうに考えたらいいのでしょうかということがあります。
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(大野委員) | 一つずつはできないですが、いろいろ分析は、例えば保健の分野でまだ駄目だとおっしゃいました。確かに現地でつくった20ページぐらいのペーパーはありますが、僕が読んでみても、やはりまだ分析というほどにはなっていない。それから、農業についても同じようなことを言われました。ただし、本当にODAの基本となるような分析というのは、産業についてはあると思います。財政金融についてもないというのがありましたけれども、これも日本の研究と中での勉強が不足しているので、それを全部やり始めると、とても1年間ではできない。今まで8年かけてやってきたことがまだこれだけですから、私がとった戦略というのは、まず何でも一回というとおかしいけれども、今わかる範囲で各分野書いていただく。ただし貿易投資については中心的に書くと。これについても分析がほしいとありましたけれども、それを入れようか入れまいかと最初のうち議論して、それは枚数が多くなるからやめようということになっているので、それは我々が検討したものはあります。それを英文にも書いてあるし、日本語と英語になっているし、本も出しましたけれども、それを大体踏襲してやっていただいているので、それをまた説明すると大変なので、これだけ見ると、確かに何でこういうふうになったのか、農業の分析はどこにあるのか、国有企業はどうなっているのかというふうになると思いますけれども、そもそもこれはベトナムの開発戦略を議論する問題ではなくて、ODAをどこに出すかということに専念して書いたので、そこに限界があったのかと思います。 それについては先ほど申しましたように、JICAのお金なり、あるいはワーキンググループという、民間・政府一緒になってベトナム政府と議論するところもあるし、日越共同イニシアチブがありますから、そういうものを取り込んでいって、それを形にしていくという作業が別途並行してあって、それでできるものだと思うので、1年間ですべての分野についてちゃんとした分析を出せといっても、世銀だっていい加減なものでやっていますから、その辺のご叱責は十分理解しますが、それは1年間で達成できることではない。教育分野にだってまだ全然分析ができていない。ただ、受け皿としてはこのやり方しかなかったかなと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 重要なテーマでありますから、さらに議論しなければいけませんが、多様なコメントが出ましたので、このコメントを大野委員のほうで吸収してもらって、それを先ほどのスリランカと同じような形で処理をしていくという方向でよろしいでしょうか。 |
(青山委員) | 保健医療のところは少し書き直していただきたいと思います。内容的にはこの程度でよいと思いますが、書き方が非常にわかりにくいし、認識が少しずれているところもあります。 |
(渡辺議長代理) | わかりました。それは大野先生のほうでもよくわかっていただいているかとも思います。また、大野先生の修文したものを検討させてもらうということで、事務的なステップを踏んでいこうと思います。大野先生、本当に長い間ご苦労さまでございました。 JICAの法人化、独法化、その他アフリカ会議、ODA大綱その他、これは文書を見ていただくということにします。 最後に事務局のほうからご発言いただけますか。 |
(吉川審議官) | 関係者の皆様、本当にありがとうございました。これからの手続きについてご報告しておきます。修文いただいたものを外務大臣に報告し、それを私どもとしては今度は政府の計画にするために、最終的には対外経済協力関係閣僚会議で決定いただくということになります。スリランカ、ベトナム両方とも、ただいま両主査からご報告いただきましたように、現地や私どもを含めた関係する各省庁の意見を聞いていただいておりますから、政府の計画とするプロセスはそれほど問題なく進むのではないかと期待しております。 プロセスという点では、タスクフォース方式のスリランカと、それから大野先生と現地を中心とするベトナムと、二つのモデルみたいなものが出てきております。今後、このやり方も含めてご議論いただくといいと思います。今度の二つのエクササイズは、現場、それから外務省はじめ多くの関係者に、大変な刺激を与え、計画作成のプロセス自体がすでに有益な結果を生んでいるという印象を受けております。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。 それでは、今、吉川審議官のほうからご発言のあったような形で事務的な手続きを進め、最終的には対外経済協力関係の閣僚会議でオーソライズされて、これが日本の正式な国別援助方針となるということでございます。長い時間ご協力ありがとうございました。 次回の日程でございますが、これは追って事務局のほうから調整をしてもらいご案内を差し上げます。 以上をもって今回の会合は終了です。 |