(渡辺議長代理) | おはようございます。ただいまからODA総合戦略会議、第12回の会合を開始いたします。今日は本会議の議長であります川口大臣がご出席です。まず大臣より冒頭ごあいさつをお願いします。よろしくお願いいたします。 |
(川口外務大臣) | おはようございます。今日はお忙しいところ、また暑い中大変ありがとうございます。このODAの大綱につきましても昨年の11月から皆様には多大なエネルギーと、お考えをいろいろおまとめいただくためのご努力をいただきまして、大変ありがとうございます。 外務省では、この前にご議論をいただいたことを踏まえまして政府原案を作り、それをパブリックコメントにかけ、また何人かの委員の方には一緒に行っていただいたと聞いておりますが、公聴会も全国3カ所で開かせていただきました。そこで合計200件を超えるご意見があったと聞いておりますが、事務局からご説明をさせていただきます。今日はその大綱につきまして、そういったご意見を踏まえて修正をした政府の原案についてご意見を承るということでございます。今回それでよろしいということでございましたら、関係閣僚会議、そして閣議決定という段取りになると思います。 ODA大綱の見直しはいままでいろいろなところでずっと言われておりながら、なかなか手をつけることができませんでした。初の大綱策定後10年経ってようやく見直しに手をつけることができ、良いご意見をいただいて、私は大変に良い大綱がまとまりつつあるのではないかと思っております。今日、ご意見をいただく最後の機会になるかと思いますので、ぜひ今まで同様、真剣なご議論をいただければ大変に幸いでございます。どうもありがとうございます。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。本日は、今までの来歴もございますので、議事進行は私が務めさせていただきますが、よろしくご協力をお願いします。 今日の会合の主たる議題は次の三つです。第1がODAの見直しです。ご承知のように政府原案の最終案ができあがりました。これは多様なパブリックコメント、公聴会を経ているものですが、そういうパブリックコメント、公聴会の概要、それからそのコメント等を踏まえて作成された政府原案の最終案について、事務局より最初に説明していただきます。それに基づいてご議論いただきたい。 第2はわれわれの会議の主たる目的の一つ、国別援助計画策定の現状について、インドネシア・タスクフォース主査の浅沼先生から今後の作業方針を説明していただき、その上でその他の国の作業状況について事務局から説明をいただく。 第3は平成16年度外務省ODA予算要求についてです。外務省のODA予算要求の重点項目について、これも事務局から説明いただきます。 この三つ、もう1度申し上げますと、ODA大綱の見直し、国別援助計画策定の現状、ODA予算要求、これらについて説明やご議論をいただきくことが今日の主題でございます。 いま申し上げましたように、まず事務局からパブリックコメント及び公聴会の概要、それからそれに基づく政府原案の最終案について古田局長よりご説明いただきます。 |
(古田経済協力局長) | おはようございます。大綱の改定について資料2、3、4とございますが、それらを見ながらご説明させていただきます。 まず資料2はまたあとでご説明しますが、政府開発援助大綱の改定そのものでございます。資料3がこれまでの各方面からご意見をいただいた経緯です。1月から8月まで、与党、野党とのさまざまなレベルでの協議も含めまして、全体として約70回以上にわたってご意見をいただいております。こういうプロセスそのものがODA改革自身であるという認識でやらせていただいております。 政府の大綱としてこれだけ細かな手順を重ねたものはたぶん他に例を見ないのではないかと思いますが、ODA大綱はカバレッジが非常に広いので、ここにありますようなことで進めさせていただいたわけです。特に3月14日、政府のところをご覧いただきますと、基本方針を決定し、そして7月9日に政府原案を出させていただき、8月8日にパブリックコメントを終了しております。 今後の予定といたしましては、本日の議を経まして、今週木曜日に対外経済協力関係閣僚会議、総理を中心に全閣僚がそろうわけですが、そこでご議論いただいた上で、金曜日に閣議決定ということでスケジュールを考えさせていただいております。 資料4でございますが、パブリックコメント及び公聴会の結果です。7月9日以降、1カ月間で大阪、東京、福岡での公聴会及び200通以上のパブリックコメントをいただきましたので、論点につきましては外務省のホームページにすでに出てきた論点、そしてそれに対する私どもの考え方を公表させていただいております。 お手元にはその主な点を掲げていますが、大きなところを申し上げますと、まず非常に意見が分かれた点は、一つは「理念」、「目的」のところです。ODAといわゆる国益との関係というところです。すなわち我が国の安全と繁栄をはっきり書くべきか、あるいはもっと国際益を強く書くべきか、これはかなり意見が分かれております。それからアジア重視についても徹底したアジア重視でいいのだという意見と、それから他の地域も重要であるということで意見が分かれております。次のページの「4.重点地域」のところです。 それから主な個々の論点としてはジェンダーについてもっと強調すべきだという意見がかなり多くありました。それから平和構築についてODAだけではなくて包括的な取り組みを述べるべきであるという意見、さらには情報公開、広報、評価といった点について多数の意見を頂戴しており、これらの点についてあとでご説明いたします最終案において修文をさせていただいております。 このほかに非常に多かったのが対中国ODAについての批判です。中国に対するODAについて見直しないしは廃止すべきであるという意見が多数ありました。この点につきましては最終案におきましても、アジア地域に対するODAを援助需要の変化等に十分留意しながら、戦略的に分野や対象などの重点化を図るという記述を盛り込んでおり、めりはりのある援助を実施していくという考えで整理しております。特に特定の国を名指しで書くということはしておりませんが、今後アジア重視の中で、こういった意見が非常に強いということも踏まえて考えていくことになろうかと思います。パブリックコメント及び公聴会での主な意見は以上のとおりでございます。 そこで資料2でございますが、「政府開発援助大綱の改定について」、一応最終案ということで本日お出ししておりますので、まずご説明させていただきます。 最初のページはいわば前書きです。今回の大綱改定に至った考え方を簡単に触れさせていただいております。二つ目のパラグラフで「国力に相応しい責任」、そして「国内の経済財政状況や国民の意見を十分踏まえつつ」やるのだということに触れています。そして最後のパラグラフで「戦略性、機動性、透明性、効率性」「幅広い国民参加」を書いています。 本体のほうですが、前回でもこの場で一番議論がありましたのが「1.理念」のところですので、ちょっとお時間をいただいて、ざっと読ませていただきますので、よろしくお願いいたします。 |
(須永調査計画課長より、(資料2)の政府関係援助大綱(案)の「I.理念―目的、方針、重点」を読み上げ) | |
(古田経済協力局長) | ただいま「理念」のところを読み上げさせていただきましたが、前回、この場でいろいろといただいた文言の修正案、あるいは文体についてのご意見、あるいは我が国のこれまでの経験を積極的に評価をして、これを挿入すべきであるといった点について書き加えさせていただいております。 それから2ページ目の「公平性の確保」のところでは、先ほど申し上げましたように女性の立場、女性の地位の向上という問題について、特にパブリックコメントでご指摘がありましたので、「特に」ということで加えさせていただいております。 それから「我が国の経験と知見の活用」のところでは、一方的に我が国の経験や知見を押しつけてはいけないというご指摘がパブリックコメントでございましたので、冒頭に「開発途上国の政策や援助需要を踏まえつつ」と書き加えさせていただいております。 「貧困削減」のところでは、前回のご議論を踏まえて「途上国の人間開発、社会開発」といった言葉を加えさせていただきました。 3ページ目ですが、「平和の構築」のところでは、冒頭で「様々な要因に包括的に対処することが重要であり、そのような取り組みの一環として」ということで、何かODAだけが平和構築の対策のすべてであるという誤解のないようにというパブリックコメントでのご指摘を踏まえてこのように書かせていただいております。 「重点地域」のところでは、上から3行目のところに、元の原案が「戦略的に重点化を図る」とありましたが、何の重点化かということを書いたほうがいいというご指摘がありましたので、「分野や対象などの重点化を図る」という言葉を加えさせていただいております。以上が第1章でございます。 それから4ページの「援助実施の原則」です。これまでODA四原則と言われたものですが、基本的には政府原案をそのまま採用させていただいております。 第3章が「援助政策の立案及び実施」と、いわゆるODA改革の実施についてですが、これにつきましても特に訂正した点は「(4)政策協議の強化」のところです。この政策協議の趣旨をていねいに書くようにというご指摘が各方面からございました。読ませていただきますと、「ODA政策の立案及び実施にあたっては、開発途上国から要請を受ける前から政策協議を活発に行うことにより、その開発政策や援助需要を十分把握することが不可欠である。同時に、対話を通じて我が国の援助方針を開発途上国に示し、開発途上国の開発戦略の中で我が国の援助が十分生かされるよう、開発途上国の開発政策と我が国の援助政策の調整を図る。また、開発途上国の案件の形成、実施の面も含めて政策及び制度の改善のための努力を支援するとともに、そのような努力が十分であるかどうかを我が国の支援にあたって考慮する」と書かせていただいております。 それから5ページ目ですが、「(5)政策の決定過程・実施における現地機能の強化」ですが、「現地関係者を通じて、現地の経済社会状況等を十分把握する」という文章を最後に付け加えさせていただいております。 また「内外の援助関係者の連携」のところも、前回のご議論を踏まえて、下から2行目ですが、「海外における同様の関係者とも連携を図る」という文言を入れされていただいております。 「国民参加の拡大」ですが、「(1)国民各層の広範な参加」というところで、前回、必ずしも適切でない、やや高飛車な表現があるというご指摘がありましたので直させていただいております。 「(3)開発教育」では、開発途上国と我が国のかかわりについてもきっちりと教えるべきではないかというご指摘がありまして、その点を加えさせていただいております。 「(4)情報公開と広報」では、透明性の確保を明示するとともに、「開発途上国、他の援助国と広く国際社会に情報発信」という表現を加えさせていただきました。 「評価」の点で一番下のところですが、これも「事前から中間、事後と一貫した評価及び、政策、プログラム、プロジェクトを対象とした評価を実施する」ということと、それから「ODAの成果を測定・分析し、客観的に判断すべく、専門的知識を有する第三者による評価を充実させるとともに政府自身による政策評価を実施する。さらに、評価結果をその後のODA政策の立案及び効率的・効果的な実施に反映させる」ということで、これも前回に比べてていねいに書かせていただきました。 「(2)適正な手続きの確保」「(3)不正、腐敗の防止」「(4)援助関係者の安全確保」等につきましては、原案のとおりでございます。以上でございます。よろしくお願いいたします。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。前回示されたものと今回示されたものの中に若干の違いがありますが、それはパブリックコメントや公聴会等を通じて出た意見を多少なりとも採用したということです。しかしお話を伺ってみますと、文意を明確にするための修文上の工夫があっただけで、議論の筋道自身に変化があったわけではないようです。 ここで若干議論の時間がございますので、さらにご自由な意見を出していただければと思いますが、どなたかご発言はございますでしょうか。 |
(青山委員) | いろいろな意見を入れてまとめあげてあり、大変ご苦労のあとが滲み出る感じで、ご努力を大変評価したいと思います。そのうえまた何か申し上げるのは恐縮ですが、5点ほどコメントをさせていただきたいと存じます。 まず1点目は、「公平性の確保」のところに、「女性の地位向上」と書かれてあることについてです。 |
(渡辺議長代理) | ページ数をおっしゃってください。 |
(青山委員) | 2ページでございます。2ページの「(3)公平性の確保」のところに「女性の地位向上」と書かれてあります。この内容についてはよいのですが、重要な問題は、女性の地位が低いというだけでなく男女間の格差が大きいということではないかと思います。仮に女性の地位が上がっても、男性の地位がもっと上がれば、格差は縮まるどころか拡大してしまうわけです。もしできましたら、「女性の地位向上及び男女の格差縮小」のように書き加えていただけないかと思います。 2点目は、同じページの「(1)貧困削減」のところです。教育や保健医療は貧困削減のための手段というだけでなく、それ自体に意義があるのだということを、前回にも申し上げました。その点を配慮して、ここに「人間開発、社会開発」という言葉を入れていただいたことは感謝したいと思います。しかしながら、「教育や保健医療」の前に「そのため」という言葉があって、やはり手段にすぎないという印象を受けてしまいます。2行目にある「そのため」を、例えば「人権を守り、基本的ニーズを保証し、開発途上国の人間開発、社会開発を支援するために教育や保健医療」というようにして、ここに目標があるということを明確にしていただけるとよいのではないかと思います。以上2点につきまして、最終的なご判断はお任せいたします。 これから、大綱の本文より実施要綱など別の文書に盛り込んでいただきたいと思うことを3点ほど述べさせていただきます。まず1点目ですが、一般の人々にとってわかりにくい言葉、例えば「人間の安全保障」、「南南協力」、「グッド・ガバナンス」などが含まれています。これらの言葉は、理解しにくいため、いろいろに解釈されてしまう可能性があります。言葉の意味を解説する付録のようなものをつけられてはどうかと思います。 2点目は4ページですが、「(3)政府と実施機関の連携」のところです。ここには、実施機関として政府関連機関のみについて書かれていますが、国際機関やNGOなどに資金を出して実施してもらうこともあると思います。そういったことは、ここには書き込みにくいでしょうし、2ページの「(5)国際社会における協調と連携」のところに、「国際機関の運営にも我が国の政策を適切に反映させ」と書かれていますので、大綱本文にさらに追加する必要はないとは思います。しかし、実施要綱などの文書には、政府関連実施機関以外の国際機関などに実施してもらう場合についても、より具体的に書き込まれてはいかがと思います。 最後に、5ページの「(5)政策の決定過程・実施における現地機能の強化」のところです。現地機能を強化することは、たいへん重要なことだと思いますが、おそらく実際に問題になるのは、どの程度の権限が現地に委譲されるかということではないかと思います。特に復興支援の時などは、援助の進行が非常に速いので、現地でかなりのところまで決定していかなければならないことがあると思います。権限をどの程度まで委譲していくかということについて、実施要綱などで明確にした方がよいのではないかと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。国民に広く理解してもらわなければならない文章ですが、確かにおっしゃるように馴染みの薄い表現が散見されます。第2次ODA改革懇談会などの最終報告ではアネックスというか、フットノートをつけて解説はしております。そうなるかどうかはともかくとして、できるだけていねいな取り扱いをするようには努めたいと思います。 |
(砂川委員) | 2ページの「国際社会における協調と連携」のところですが、その5行目ぐらいに「これらの国際機関の運営にも我が国の政策を適切に反映させていくよう努める」とあるが、国際機関に我が国の政策を反映させるというのは現状からみるとかなり無理があると思いますので、我が国がいわゆる政策提言を試みるなど協調を図っていくというような程度のほうが現実的でいいのではないかと思います。 2点目は、その次のページですが、一番上から3行目の「民間経済協力の推進を図る」のところは、「民間との協調の上で経済協力を図る」という意図ではないだろうかと推察します。すなわち政府が直接民間の経済協力を支援するということよりも民間との協調の上で経済協力を推進していくほうが現実的であるのではないだろうかと推測いたします。 あと1点、そのページの「重点地域」のところの4行目の一番後ろにあります「経済成長を維持しつつ統合を強化することにより」。この「統合」というのは何か非常に意図的に経済という言葉を抜いて意図的にもう少し政治的な高いものを意味しているようにも思いますが、やはり地道に「経済統合」という言葉のほうがいいのではないかと私は思います。 |
(渡辺議長代理) | なるほど。ありがとうございました。ご趣旨は大変よく理解できました。そのほか、いかがでしょうか。浅沼さん、どうぞ。
|
(浅沼委員) | 私のコメントは修文の提案ではないのですが、この大綱案の6ページの上から2番目のパラグラフの「不正、腐敗の防止」のところです。過去のここでの議論によりますと、このパラグラフは主として援助、ODA供与側のシステム、その他を考えることによってこの目的を達成するという話でしたが、ここにこういうふうに書いておきますと、それではたぶん十分ではなくて、援助を受け入れる側に関しても日本のODAプログラムやプロジェクトに何かの仕組みを作って、この「不正、腐敗の防止」を検討しなければいけないのではないか。これはほとんどの援助供与機関が一生懸命で何とかしなければといって苦労をしているところだとは思いますが、この点について、この大綱を実施されるにあたって実施機関、中心になられる官庁のところでいったいどういうことが考えられるのかを検討していただきたいと思います。
|
(渡辺議長代理) | 受け入れ側の不正、腐敗の防止のためについても言及せよというご趣旨ですか。
|
(浅沼委員) | いや、この修文ではなくて、この大綱のもとでODA活動をするときにどういう手立てが考えられるかを検討していただきたいということです。ですから案自体には修文の提案はありません。
|
(渡辺議長代理) | なるほど。ありがとうございました。どうぞ、千野さん。 |
(千野委員) | 最初に青山さんがおっしゃられたように、本当にいろいろ気配りがなされて書くのは大変だったなと改めて感じました。一つだけお伺いしたいのですが、2ページの「貧困削減」のところで私の聞き間違いでなければ、確か「貧困削減は国際社会が共有する重要な開発課題であり」と読まれたように思うのですが、いただいた紙には「目標」となっております。考え方によって「課題」のほうがよろしいのかなという気もいたしますけれど、ということです。
|
(渡辺議長代理) | これは読み間違いだったのですか。 |
(須永調査計画課長) | 単純な読み間違いです。 |
(渡辺議長代理) | 読み間違いだったそうです。ですから「目標」になっているのですが、千野さんのご意見だと読み間違いのほうがよかったという意味ですね。 |
(千野委員) | そうですね。「課題」なのかなというふうに思いましたけれど。 |
(古田経済協力局長) | おそらくこれは例のミレニアム開発目標が念頭にあって、それがいま非常に広く共有されて、それをどう具体化していくかというところで国際的な共通の努力が払われています。国際的な合意がどんどん変わっていきますので、「ミレニアム開発目標」と書いてしまうと、場合によるとあっと言う間に古くなってしまいます。そうは書かないで「開発目標」と書かせていただいたのが、ここで「目標」ということを言っている趣旨でございます。「課題」というとかなり一般的なことでそのほうが適切かというご意見もありますが、逆にいまわれわれの目の前にあるのはミレニアム開発目標があるのだという含意でございますので、できれば「目標」ということで書かせていただければと言うのが私どもの気持ちでございます。
|
(渡辺議長代理) | その他、いかがでしょうか。草野さん、どうぞ。
|
(草野委員) | 修文上の提案は1カ所しかありません。今日、ODA大綱の議論の最後の機会だということで、昨年の11月末にワーキングチームとして、その小委員会の論点整理のとりまとめを私が担当させていただいたという立場で感想を一、二述べさせていただきたいと思っています。 先ほど局長からお話がありましたように、このプロセスは大変にていねいに、いろいろな意見を聞いているわけですが、こういうものはいろいろな意見を聴取して、それを反映させるということになりますと、何を言っているのかよくわからなくなるというのが通常です。この新しい大綱のこの案は事務方のご苦労もあるわけですが、率直に言ってどんどんよくなっていっているという感じがいたします。自分でほめるというのもおかしいですが、いろいろまだまだ注文もあると思いますが、そのプロセスを見ておりますとよくぞここまでよくなってきたなというのが率直な印象です。 2番目、ODA大綱というのは国民全体にとってのODAの基本文書ということになりますが、一つ私自身、非常によかったなと思うのは、その目的の中でこれまでの日本のODAの実績について、いろいろ問題はあるという指摘は特にメディア等々でこれまで行われてきたわけですが、基本的には日本のODAの実績は上がってきたのだ、きちんとやってきたのだということを、この「目的」の冒頭のところで書いていることです。 私は、ODAの関係者がいま企業を含めて自信を失っているという現状を考えれば、これはよかったのではないかと思っています。また今日は矢野副大臣だけが国会議員ということですが、私も地方等々を歩く機会がありますが、ODAに対しては非常にネガティブな反応が最近多い。そういう有権者に対するメッセージという意味でも、こういうふうに日本のODAはもちろん間違いもあったし、誤りもあったわけですけれども、基本的にはいいことをやってきたのだということをきちんと文章に書いたことは非常にいいことだろうと思っています。 最後ですが、これは修文上の注文です。3ページ目の「重点地域」の下から3行目に「脆弱な島嶼国」というのが2回出てきていますが、この「脆弱な島嶼国」という表現が国語上適切なのかどうかがよくわからない。たとえば「経済社会基盤の脆弱な」とかならともかく、「脆弱な島嶼国」というのは、わかりますが、もう少していねいに書いたほうがいいのではないかと思ったので、ご検討いただければと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。もっともなご意見だと思います。では磯田さん、大野さんの順序でお願いします。 |
(磯田委員) | 私は「目的」のところで、一応申し上げたいと思っております。 やはり我が国の安全と繁栄の確保が主要目的なのか、そうではないのかというあたりがずっとあいまいなままの文章になっているという印象がありますが、私の立場からは、本来ODAはそれが第一目的ではないということだと思います。この「目的」の何行かあるうちの後段、特に6パラグラフ目の冒頭の1行目、「我が国は、世界の主要国の一つとしてODAを積極的に活用し、これらの問題に」というのは、上に書いてある国際社会の抱える問題ですが、これに「率先して取り組む決意である」ということを書かれていることは決意が表明してあって非常に高く評価したいと思います。それにすぐ続けて、そのことが日本にいま利益が来る。次の段落も我が国としての利益である。そしてもう一つ最後の段落でもこれをすることが振り返って平和を希求する我が国にとっても効果があるという書き方で、結局何カ所にもそれが分かれて書かれるというのは非常に見苦しい。 私は戦略会議の委員がパブリックコメントに出していいのかどうか迷ったのですが、出してしまいました。何かそこがもう少しすっきりと書かれるべきではないか。つまりもう少し要約して、そういうことは1段落だけに全部まとめて最後のほうに書けばいいというようなものに私はどうしても感じられてなりません。何かせっかくいい決意を表明しながら、それが全部たたみかけるように、我が国にとってと書かれているということは、国際的に見たときにアピール性に欠けるという印象を非常に強く持っています。これが1点目です。 それから2点目は細かいことになるかと思いますが、5ページ目の「開発教育」のところですが、これはパブリックコメントの終わりのほうにも開発教育についてのコメントがあったと書いてありまして、その中に書かれています「開発教育」の3行目中の開発途上国と我が国のかかわりということを加えましたとおっしゃられましたが、この意味する中身は取りようがいろいろある。これを大綱のはじめに書かれているような相互依存、エネルギーとかを享受しているという関係を教育するのが開発教育では実はないわけで、むしろ格差の問題、逆にそう言って途上国の資源に依存をしている、あるいは場合によっては不公平なかたちで依存している。このことの問題認識を高めるのが開発教育ですので、この表現だけでは全くその開発教育の中身は違っています。 ですからむしろこれよりは、たとえば国際社会の格差や不公正な依存関係の理解といったかたちに踏み込んでこれを書くのであれば、そういうかたちにはっきり書いていただいたほうがまだいいのではないかと思います。そういう中から開発の課題は出てくることになっているわけですから、そういう意味では広く考えれば国際協力への理解を高めることに当然なるわけですが、その根底には格差の現状、あるいは格差がなぜ生まれるのか、そのことのきちんとした理解を高めることが開発教育の目的であるということです。単に開発途上国と我が国のかかわりということだけでは不適当ではないかと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。貴重なご意見だと思います。大野さん、お願いします。
|
(大野委員) | 細かい修文もあるのですが、それは置いておいて二つ申し上げたいと思います。一つは「目的」の件で、前回も非常に議論になりましたが、結局マイナーな字句の修正以外は変わらなかった。これ以上同じことを繰り返す必要はないと思いますが、それから草野さんみたいに非常に評価されている委員も複数おられるけれども、やはり文体として、あるいは書き方として、こういうのでいいのかという不満がある方もいると思います。これで通していただいていいと思いますけれども、はっきり記録には、すべての委員が満足して通したわけではないということ、もっと書き方があったのではないかということは書いていただきたいと思います。 やはり何回読みましても前半のところは背景説明、後半は非常に他律的にこういうことをやると日本にもいいことが跳ね返ってくるということが書いてある。日本が世界をどういうビジョンで訴えて動かしていくのかというものが、いわゆる目的というものが僕に言わせるとここには何もない。それに行くための説明みたいなものであって、目的が抜けているような感じがいたします。 もう1点は、ほかの方もおっしゃいましたように、70回以上も公聴会を開き、それから各方面の意見も取り上げて、非常なご努力であったと思います。ただ古田さんがおっしゃったように、こういうことを毎回ほかの省庁や政府全体でできるのかということに関して敷衍して申し上げます。これだけやっても意見が非常に分かれたところもあるということでした。そういうときに、最終的には何かの案に落ち着かなければいけないわけですから、それは最終的に政府が判断をなさればいいと思いますが、やはりここで書いたからといって問題はまだ残るわけです。 特にアジアを重点にすべきか、それともアフリカ、その他に向けるべきか、また磯田さんが提出されたように日本の利益を重視するのか、それとも世界のためにやるものなのかという問いが残る。こういう問題がきれいに決着することはないけれども、国民全体の中で議論を続けていくべき問題だと思います。せっかくやったことをどうやって国民の継続的な議論につなげるかという点での仕組みがあるとなおいいのではないかと思います。ウェブに載せるのもいいのですが、こういう議論を活性化することによって、解決はしませんが国民のODAに関する考え方はだんだん深まってくるのではないか。そういう意味で何とかこれを有効利用できないかと考えます。 やはり担当者の方はこれを見ると非常なエネルギーと時間をかけてやるわけで、ある案件があるごとにこれだけのことをやって、他のことができなくなるようなことがあってはいけないであろう。ある意味の効率性、結果は確保しながらできるだけ省力化できないものかという生産性の問題も課題だと思います。 |
(渡辺議長代理) | この目的のところを読んでみて、あえてそういう言葉を使われたので私もそれを用いますと、日本益と世界益は二律対抗的というか、矛盾したりぶつかり合うものとして書かれているわけでは決してないのではないでしょうか。世界益と言われるものが回り回って日本益になるという文意に全体はなっているわけで、そういう意味でそこの文章自身に不整合はないだろうと思います。
|
(大野委員) | 僕がずっと言ってきているのは、文体というか、同じ中身を使ってもう少し世界や国民に訴えるかたちにできるはずだということです。これだとさっき言ったように状況説明、プラス日本にとってどういう利益になるかということだけで、開発というものを日本はどう考えるかというビジョンみたいなものが少ない。中身に関してはそれほど違和感はないのですが、その書き方に対して非常に違和感があるということです。
|
(渡辺議長代理) | そういうご意見はあろうと思います。荒木さん、どうぞ。 |
(荒木委員) | 私も草野さんと一緒にタスクに参加しまして、最初からこの議論をやってきました。いまこれを見ていて、最初私の主張は、今回はその主語が日本ということで、日本はどうするのだということを書いていくべきだということを申し上げた。それから我が国の援助は過去どうであったか、ちゃんとアジアに貢献したということははっきり言わないと、いままでやってきたことはいったい何だったのだということで、ますますODAに対する批判、考え方が退潮していくということで議論していたわけです。 全体のトーンとして見た場合、現場にいていろいろな人の話を聞いていて、ODAに関係する人、このレベルではないもっともっと下のレベル、この前もある人が来て、下町でどんどん中小企業がつぶれていくのを目の前に見て、われわれはたまらないということを言う方がいるわけです。そういう人たちに答えるためには、第一義的には僕は日本の納税者の皆さんにこれがどういうことを意味しているのだということを、日本とのかかわりあいで説明しておかないとこれはだめになってしまうという危機感を持っていました。今回はある程度不満はありますけれども、かなり踏み込んでいけたのではないかと一つは思っております。 この目的と方針とか重点課題、重点地域の問題は今後、中期政策、あるいは国別援助計画等々、実施に本当に反映していかないといけないわけです。要するにこれからの問題なのです。実際いままで祝詞をいっぱい言っているのですが、現場的に見ますとこれが本当に計画に反映されないと意味が全然ないのです。それがODA改革です。それが国民が目指すところ、国民がいま言っているところの役に立っているのかというような質問に答えなければならないと僕は思うのです。 そういう意味で今後の展望ですが、中期政策、国別援助計画にこの目的、方針、重点課題をぜひ盛り込むような工夫をしていかなければいけないし、国別援助計画の場合はそうやっていると思いますが、やはりこれをインドネシアでもインドでも盛り込んで、モデルを作っていくことは大変重要なことではないかと考えています。そこから先がいわゆる大綱の勝負なのです。私はそれを言いたい。これは序論であって、一応ここまでできあがったのですが、これからどうするかは中期政策を確立するということにおいて見ていかなければならないと思います。それによって最終的な評価があるのではないかと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。
|
(脊戸委員) | 先般送られた資料では、2ページ目の「公平性の確保」にジェンダーという言葉がいきなり出てきて、確かにジェンダー、男女の格差を縮小していくということは非常に大切だったのですが、今回の最後の案文で男女共同参画という言葉に訂正されていましたので、この点はわかりやすくてよいかと思います。 私も青山委員がおっしゃられたように、いくつかカタカナの文字があって、なるべく納税者一人ひとりの国民にわかりやすい言葉ということでは、少しフットノートというかアネックスで言葉の語句の説明を一部加えたほうがよいかと思います。 私はこの「目的」のところはODAのあり方に関しては各委員いろいろな意見があるかと思いますが、ただODAは一つ日本の外交戦略上、そして日本の国としてODAをどのように国民の一人ひとりに理解し、必要なものなのだということにおいてはこの「目的」の言葉の中から大変力強いものが伝わってくると思います。特に国益、国民益、国際益、地球益というような言葉の部分で、はっきりとODAはこういうことで必要であり、過去こういうことがなされてきたのだということをこの「目的」の中で明確に言い切っておりますので、非常に賛成いたします。 ただ一つ、1行目の「我が国ODAの目的は」というところは「我が国の安全と繁栄」と書いてあって、先ほど磯田委員からも指摘がありましたが、下から6行目、「このことは、我が国の安全と繁栄を確保し、国民の利益を」と再びこの言葉を同様に繰り返しておりますので、ここは「このことは国民の利益を」と続けてもよいのかなと思います。最初の文章で「安全と繁栄の確保に資する」と言い切っておりますので、ここは小さい点ですが、繰り返さなくとも文言としてはスムーズに、「このことは国民の利益を」とつなげてもよろしいのではないかと思います。 また今後、このODAの大綱案において、日本としてODAというものをいかにとらえていく、そしてまた今後その必要性を一人ひとりにきちっと理解していくということはさまざまな機会を通して引き続き努力をしていかなければいけないものだと思います。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。磯田さん。
|
(磯田委員) | 先ほど言おうと思って忘れてしまったのですが、欠席の伊藤委員からの資料を配れますか、どうしますか。昨晩、メールで届いたものですから、ちょっとぎりぎりになってコピーをしてきたのですが、一応細かいいくつかの文言上の提案などもありますので、それを代わりに配るようにということでした。
|
(渡辺議長代理) | ではいま配ります。ちょっとお待ちください。 |
(磯田委員) | メールでやりとりをしていますので、この内容について私のほうからは何も申し上げることはありません。 それからもう1点、これはすごくジェネラルな話で、この大綱案の文案そのものの話ではないのですが、先ほど来、いくつか出ています日本の国民にODAがどれだけ支持されるか、これは正直言って大綱の文言ではないと思うのです。やはり実態、現実にどういう効果がちゃんと出ているか、もちろん喜んでくれているというのも一つでしょうが、実際にそれでどういう効果が上がり、また逆にネガティブな面がどれほど少ない。こういったこと、あるいはそれに向けてどれだけのいろいろな評価をきちんとやっているか、不正がないか。先ほど荒木委員もおっしゃった点と重なるのですが、この文言というよりは、やはり実態を見ての反応です。もちろんそれはマスコミがどう報道するかという部分もあるかもしれませんが、マスコミも全く何もないところに煙を立てているわけではないわけで、むしろ問題は今回きちっと大綱の中にも書かれました評価の充実、それから公開、白書の中でのきちっとした報告などがすごく大事なのではないか。 そういう意味でパブリックコメントの中に、たとえば原則の実施基準などに関しても、ある程度白書の中に公開すべきではないか、つまりこういうふうに実施しましたということだけではなくて、そこがブラックボックスのまま行われているというのではなくて、すなわち単に実績を報告するだけではなくて、きちっとした運用基準なども出すべきではないかという意見もある。これにどういうふうに回答されているか、私はホームページをチェックしたのですがうまくヒットできなくてわかりませんでした。 私はそういうのを大綱の中にアネックスでつけたらどうかというのをタスクのときに申し上げました。つまり運用に関しての大まかなガイドラインみたいなものです。結局総合的に判断しと言っているけれども、それが全くお任せ状態になってしまうのではなくて、こういうふうに判断しますというのをアネックスにつけてはどうですかというのを、タスクのかなり早い段階で一度申し上げたことはありました。今回それがすぐというのは難しいかもしれませんが、そういったものもご検討いただけたらと思っています。そういうことによって信頼を獲得するのではないかと思います。 |
(渡辺議長代理) | 伊藤さんのメールは磯田さんのほうから何かご説明していただけるのでしょうか。
|
(磯田委員) | インドネシアに行っていらっしゃるということで、正直言って私もメールでいただいただけで私もちょっと説明はできません。
|
(古田経済協力局長) | 伊藤委員からのご意見でございますが、私どものほうにもアプローチがありました。それで文言のいくつかについてはこの修正案に沿って手を入れさせていただいたところもございますし、それからご意見として承らせていただいた点もございます。私どもとしては伊藤委員とディスカッションはさせていただいております。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。牟田さん、脊戸さん、お願いします。 |
(牟田委員) | 先ほど草野委員がおっしゃったみたいに、私としては非常に高く評価をしたいと思います。いろいろな意見も織り混ぜながら、しかも意味不明にならずに筋の通ったいい大綱になったのかと評価をしたいと思います。 ただ、いまごろ言いだすのも何ですが、やはり10年ぶりの見直しということであれば、当然、以前の大綱に関する評価が本当は先にあるべきだったのだろうとは思います。時間的なこともあって前の大綱の評価をきちんとせずにやったところが今回はあったのだと思っております。今後これでまた5年なり10年なりやっていくのだろうと思いますが、次回の大綱が改定されるということであれば、これはやはり大綱に書かれたことがどう実現されたかという評価があって改定されるべきだろうと思います。 そういう目でこの大綱が評価をしやすいように作られているかということを見たときに、前の大綱と比較すればかなり改善をされている、つまりいろいろなことが非常に明確に書かれていて、一つひとつについて5年なり10年で実行されたかということが、完全とは申しませんが、評価をしやすいようなかたちでわかりやすく書かれたいい大綱ではないかと評価をしたいと思っています。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。脊戸さん、どうぞ。 |
(脊戸委員) | 「我が国ODA」と書いてありますが、これには助詞が必要ないのでしょうか。「我が国ODA」という言葉がすでにあるのか、「我が国のODA」といくのか、そこだけちょっと気になりましたので、検討していただきたいと思います。
|
(渡辺議長代理) | 特に「理念」の「目的」のところで、テクニカルに変えようと思えば変えられるご意見をいただいたので採用できるものは採用したいと考えております。 ただ一つ、考え方の重点の置きどころに違いがあるのは、この「目的」のところだろうと思います。多様なご意見が出されまして非常に参考になりました。ただ私の個人的な見解ですが、確かに「我が国の」「我が国の」というところが何度も出てきてくどいという感じがしないではない。またさっき荒木さんも言われたように、やはりODAは国民の広い、サポートがあって初めて意味を持つわけですから、国民が何を考えているかということが非常に重要だろうと思います。 今の日本のODAは逆風の中に置かれているわけであって、その中でわれわれは援助を守っていかなければならないという考えを持ってここに集まっています。そうなると、どうしてもややくどいけれども回り回って「我が国の利益を増進する」というふうな文言に、今の全体の世論の状況を考慮すれば、ならざるをえないのではないか。 ODA大綱といえども不磨の大典ではなく、現に10年目に改定されているわけであり、これがまた現実に合わないということになれば、数年を経てまた改定ということにもなっていくわけです。 今日はいろいろなご意見をいただきました。ご意見、ご指摘を踏まえてできるものは修文してまいろうと思っております。これは私と事務局との相談の上で、またしばらく時間をかけなければなりません。ただ、できあがったものをここに持ってきてまた議論をするという時間は、先ほどの局長のお話のようなタイムテーブルから言うとなさそうです。ご不満は残りましょうけれども、具体的な修文については議長代理、事務局のほうにご一任賜りたいと考えますが、その点はいかがでしょうか。 (「異議なし」の声あり) (渡辺議長代理)ありがとうございます。ではできるだけ誠意をもって対応してまいります。 それでは以上をもちまして、今日の予定しております議題の第1、「ODA大綱の見直しについて」は議論をひとまず閉じさせていただきます。大臣、今日の議題の第1についていままでの議論をお聞きになりまして、何かご意見がございましたら、ご指摘願えますでしょうか。 |
(川口外務大臣) | いつも同様、非常に真剣なご議論をいただいたと大変にありがたく思っています。それでいままさに渡辺議長代理がおっしゃったように、特に「目的」について意見、立場が違うように見える部分も確かにありました。 ただ本当に違うかどうかということですが、援助の目的については、日本だけではなく国際社会において歴史的に長い間、非常に中身の濃い議論がずっとされてきています。それで立場の違いは当然にあるわけで、それを含んだかたちでの議論がここでずっとなされたのではないかと思います。援助をする上で典型的な、非常に理想的な国際主義、あるいは理想的な国益主義というものは、実際には存在しないわけでして、実際の援助はその二つを含めた真ん中のところで行われていくということだろうと思います。そして、その真ん中の部分はそのときどきの情勢によってそれなりの幅を持つものではないだろうかと思います。 そういう意味で財政事情が厳しいという国内事情、あるいは日本国民のいま国際社会、あるいは日本についての考え方、そして本来世界がどうあるべきかという考え方、そういったものを踏まえて、あるいは脅威の種類が違ってきたということも入ると思いますが、いろいろ真剣にご議論をしていただいたわけです。文体、その他について、これもいろいろご意見がおありになるかと思いますけれども、どなたかもおっしゃいましたように、実際面でどのようにやっていけるかという中で、また更なるご批判をいただくということかと思います。この議論の過程そのものが、ある意味で援助の問題を考える上で非常に意味があったことであろうと思いますし、今後もこういった議論をいろいろお知恵をいただきながら日本国全体として続けていくということのベースに、この大綱がなるということではないかと思います。 大変におもしろいと言いますか、興味深い議論をしていただいたと思いますし、いろいろなご意見が大綱のすみずみまで血、あるいは気持ちとなって行き渡っている大綱ではないかと思っております。ありがとうございました。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。それでは議題の1は以上でございます。議題の2、「国別援助計画策定の現状について」に入りたいと思います。まず「インドネシア国別援助計画の今後の作業方針について」ですが、これはご承知のとおり、すでに浅沼先生が主査に決定しております。浅沼先生のほうからまず資料に基づいたご報告をお願いしたいと思います。 |
(浅沼委員) | 現状ですが、まずこの資料の中の3枚目をご覧ください。ここで「対インドネシア国別援助計画策定体制」というのを作っていただきました。コアメンバーも決まりましたし、それから事務局も決まり、この体制、プラスこのほかに多数の顧問グループを設立していただきました。少なくとも日本サイドに関してはここでいろいろな議論を進めながら計画を策定してきたと思っております。 一方、ジャカルタのほうにはもうずいぶん前にジャカルタ・タスクフォースが設立されておりまして、秋元公使が一応中心のリーダーとなって議論が進んでおります。もう第一次案なるものが秋元公使から提出されております。それをこれから東京タスクフォースのほうで検討させていただくことになります。 その作業手順ですが、その次のページ、「対インドネシア国別援助計画策定のプロセス」のところにまだ非常に弾力的ですが一応書いてございます。それでもう今年の5月に大使館、これはジャカルタ・タスクフォースのほうの第一次素案が出ており、9月、これは近日中になりますが、タスクフォースのキックオフ・ミーティングをやる予定になっております。それから同じく9月の中旬から下旬にかけて、東京タスクフォースが現地に出掛けて行って、ジャカルタ・タスクフォースとも協議をし、かつインドネシア政府、ジャカルタ在住の国際機関、その他の関係者と協議をしたいと思っております。それが作業の第1の展開となります。 キックオフ・ミーティング、それからジャカルタの現地での協議にどういう姿勢で臨むかは非常に大きな問題ですが、どういう姿勢で臨もうか、どういう問題を検討しようかというのが、この資料5の最初のページと、その次のページの「インドネシア国別援助計画の策定、背景、問題点、スタンス」というところに書いてあります。われわれはまだ援助計画自体のアウトラインまでは到底至っておりませんで、こういう問題を、こういうアプローチで検討しようということがここに書いてあります。 長くならないように、その中の重点的なところだけをちょっと述べさせていただきますと、まず第2の背景として、インドネシア経済はこれから大変難しい局面を迎えるのだという認識を持ってインドネシア経済へのこれからの見通し、政策対応、我が国のODAの政策対応を見ていきたい。 なぜ難しいかと言いますと、まず第1に体制変革があって、これが非安定化要因として働いていて、なかなか安定しないということです。それからアジア危機のまだ負の遺産を引き継いでおり、これが将来に大きな影を落としていることが二つ目。それから第3番目にもっと根本的に東アジアの奇跡と言われたその奇跡が達成できた一つの大きな要因がアメリカ市場と日本市場の相当スピードでの拡大があったわけですが、これが今後期待できない。その代わりに中国が貿易のパートナーとしてこの地域では台頭しておりますが、これはアメリカ市場、もしくは日本のFDIやその他の金融を含むような関係とは多少異質の貿易拡大であって、過去にあったようなFDIがインドネシア経済の生産性向上に貢献をするという形態はちょっと考えられないだろう。 この三つの理由でインドネシア経済のアジア危機まで続いてきた高度成長はたぶんストップせざるを得ないだろう。これからは成長率は多少低下せざるを得ない。そういう状況に置かれたインドネシア経済で、いったい何をその主体に考えていかなければいけないのだろうというのをみんなの協議の中で見極めたいと思います。 暫定的には、こういう状況の中で何が一番大切だろうと考えると、インドネシア経済にとってたぶんいまは雇用の創出が一番重要な課題になって出ているだろう。インドネシアはいまだに年間250万から300万ぐらいの新規労働者が参入しています。この新規の労働者のための雇用をどうやって確保していくか。低成長のもとでこれが確保できなければ、それはいままで達成してきた貧困削減をひょっとすると逆転させることになるわけですし、それから社会不安も生じるわけです。これが一番重要な問題だろうと見極めた上で、いったいどんな成長戦略が考えられるのだろう、インドネシア自体は何を考えているのだろうというところをまた見極めていき、その上で日本のODA支援はどういうところに重点を置けば今のインドネシアの課題の解決に貢献できるだろうということを考えていきたい。 そのときに問題になるのは、インドネシア国自体にまだはっきりした成長戦略が形成されないであるというところです。インドネシアでいまPRSPを作っておりますし、それから世界銀行もちょうどカントリー・アシスタンス・ストラテジーをあちこちで協議をしながら作っていますが、いまだにはっきりした成長戦略が見えてきていない。かつ、その成長戦略を進め、そしてそのためにODAを使っていくときにいくつかの問題点があがっている。その問題点は何かと言いますと、公営企業のガバナンスの問題であり、地方分権化の現状であり、かつ全体的なキャパシティの問題であり、それからもっと全般的なガバナンスの問題であると、いくつかの制約条件みたいなものが課されています。 その中でどうやって最適な成長戦略を選択し、かつそれを支援する体制を作るかということを今後のタスクフォースの議論で、少なくともタスクフォースの意見を固めていきたいと思っております。 この計画を作るに際して一つ不確定要因があります。それは2004年に総選挙があり、大統領選挙があり、新政権が誕生するわけで、この新政権の性格によっては、インドネシア自体の戦略政策、それからODA戦略自体も大きく変わらざるを得ない状況になるかもしれない。そういう非常に大きな不確定要因を抱えながら、この作業を続けていきたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。あまり時間も残されてはいないのですが、いまの浅沼さんのご報告に対して、コメントすべきことがあったらどうぞ。 |
(青山委員) | 大国であり、日本の援助にとっても重要な国ですので、浅沼先生のお仕事に期待したいと思います。ただ、今日のご説明は経済に関することが中心で、社会セクターについては3頁目の2番目にMDGとして簡単にふれられているだけのように思いました。 インドネシアを直接には存じませんが、たくさんの島々があり、多民族であり、ジャカルタが繁栄する一方で国内の格差が非常に大きいところと聞いております。保健や教育に力を入れている割に、なかなか基礎指標がよくならないのも、格差が大きいことが一因となっていると思います。したがって、これらの格差を縮小するために、保健医療や教育などの社会セクターにどのように取り組むかということにも重点をおいていただけるとよいのではないかと思います。インドネシア国内にも紛争の火種となる地域を抱えておりますので、社会セクターに投資して格差を縮小していくことが、紛争予防や社会の安定化にもつながるのではないかと思います。その点についてもよろしくお願いいたします。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。どうぞ砂川さん。 |
(砂川委員) | インドネシアと言えば、経済破綻をした、政治的に破綻をしたことがやはり非常に大きな印象として残っていると思いますが、これに対してなぜそうなったのか、どういうことが起こったのでしょうか、それに対するODA、ならびにIMFとか世銀等の対応はどうであったのだろうかというような点について、いわば今後のわれわれのODAを考えていく上で参考になる反省点をぜひ教えていただきたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | どうぞ大野さん。
|
(大野委員) | 非常に難しいことはわかりましたが、雇用の創出が非常に重要だということ、それをもうちょっと具体的に戦略に落とし込むには複数のバリエーションがあると思います。成長戦略を取って、工業化を推進し、それをほかの島とか、貧しい人にトリクルダウンしていくというやり方なのか、それともやはり社会セクターを重要視して、効率性をある程度犠牲にしてもいいというのか。いろいろなことが考えられるのですが、その辺は何かビジョンがあるのでしょうか。
|
(渡辺議長代理) | 草野さん。 |
(草野委員) | 寝た子を起こすと言われてしまうかもしれませんが、インドネシアというとコタパンジャンの話が最近では必ず話題になるわけですが、インドネシアの国別援助計画を作るということになれば、NGOを含めて、メディアを含めて、あの問題をどういうふうに考えているのだという質問なり指摘が当然あると思います。ですから計画の議論の過程で、これをどういうふうに吸収していくのかということをちょっと伺っておきたいと思います。
|
(渡辺議長代理) | そのほかいかがでしょうか。私のほうからも一つ。今日の大綱の議論でも、重点地域の東アジアで、相互の経済的連携をいかに強めていくか、そのためにODAをどう活用するかという問題提起がなされているわけです。インドネシアは言うまでもなくASEANの大国です。ASEAN、あるいはASEANプラス中国、ASEANプラス3、いずれにせよFTAのテーマがここしばらくの間に非常にクローズアップされてくるに違いない。インドネシアがその連携の中でどういうポジションを選択するべきかも示されれば、早速この大綱の路線に見合う一つのプロポーズができるのではないかなという感じも持ちました。 浅沼先生、今日は時間が少々限られておりますので、いまご意見をご意見のままで受け取っていただいて、ごく簡単なショートリプライをお願いするということにとどめさせていただけませんでしょうか。 |
(浅沼委員) | ショートリプライのところで、これはタスクのコアメンバーと検討しなければいけないので、私の意見だけということではないのですが、いまおっしゃられた点はすべて非常に難しい問題です。その中の、たとえば青山委員、大野委員のおっしゃったこと、それからある程度砂川委員がおっしゃったことにも関連があるのですが、格差の問題をいったいどうするのだというところで、格差があるから格差是正のために、たとえば該当地域の公共施設なり、投資なりを増やすという直截的な答えにはたぶんならないと思います。今後のインドネシアの開発戦略をどうするかということが重要なのは、たとえば経済政策が非常にうまくいき、かつ開発がうまく進んできた1970年代から80年代の末までの状況を考えてみますと、これはどうしても工業化中心の開発だったわけです。 それがあらゆる面とは言いません。ほとんどの面で相当いい効果を持ってきた。それを今後も続けていくのだとすれば、当然のことに一層の工業化ということになってくるわけです。一層の工業化ということになってくれば、やはり工業的な集積、地域的な集積はどうしても避けられなく、それを中心の成長戦略ということになっていくわけです。 では格差のほうはどうするのだというのは非常に問題があるのですが、ある程度は国民の足による対応によってそれを確保していく。すなわちその集積の地域に人口移動が国内で行われなければいけない。過去には起こっています。インドネシアでは高度成長の地域は人口成長が国内移住も含めて異常に高くて、そうではない低成長の地域は人口成長も非常に低いというちゃんとしたパターンを取っていますので、それをまず大いに活用しなければいけない。その上で格差をどうするかということを考えなければいけない。これは成長戦略に深くかかわっていることで、ただ単に格差があるから、ではどうかしようという単純な話ではないと考えております。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。近々またご報告いただいた折りに、より豊富に時間を取って議論していただきたいと思います。 それではODA大綱見直しの激しい風波の時期を終えまして、われわれ本来の仕事である国別援助計画のほうにわれわれも議論の重点を移していかざるを得ないわけです。ご案内のようにすでに始まっているわけですが、いまどんなかたちになっているかということをスケジュールを含めて事務局のほうからご報告をいただきたいと思います。資料に基づいてのご説明です。 |
(古田経済協力局長) | 資料6ですが、現在、6カ国の国別援助計画について新規、ないしは改定作業が行われています。この資料6、「作業の現状と今後の予定」という欄をご覧いただきますと、スリランカにつきましては、最終案をいま調整中でして、次回の総合戦略会議にはご報告をいただけると承知しております。 ベトナムの改定作業につきましては、現地最終案がすでにできあがっておりまして、現在、関係省庁NGOとの意見交換を実施しつつあるということです。さらにはJICA、JBICとの調整もありまして、次回ないしは次々回にご報告をいただけると承知しております。 モンゴルにつきましてはすでにタスクフォース会合を5回やっておられますし、現地訪問も行っておられます。7月には現地ベースで草案がすでにできているということで、これから数カ月程度の作業を経てご報告いただけると伺っております。インドネシアにつきましてはいまご紹介のあったとおりでございます。パキスタンにつきましては、現地の大使館で骨子案を策定中で、これからはタスクフォース会合を開催していくという流れでございます。インドにつきましては絵所先生がスリランカとインドと両方、主査を持っていただいているわけですが、スリランカを終了したところでタスクフォースを立ち上げて作業を開始すると伺っております。以上でございます。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。いよいよまた国別援助計画で忙しくなりそうですが、よろしくお願いいたします。 最後になりましたけれども、平成16年度外務省ODA予算要求の重点項目について、事務局よりこれも簡単にご説明願います。 |
(古田経済協力局長) | 資料7でございますが、先ごろ閣議了解ということで平成16年度の概算要求のシーリングが発表されております。義務的経費は横ばい、裁量的経費はマイナス2%、シーリングとしては来年度もマイナスの姿で出ていくということでございます。これに20%増しの要求を認められておりますが、おそらく仕上がりとしてはさらなる切り込みと言いますか、マイナスのかたちが予想されます。この冒頭のところに書いてございますが、来年度の概算要求はこの新しいODA大綱策定後初めて編成される予算ということで、新ODA大綱元年予算ということで各省とも足並みをそろえて、この大綱のラインに沿ってめりはりをつけた予算要求ができればと思っております。現在、最終的な作業をしているところです。 外務省について申しますと、義務的経費は横ばい、裁量的経費はマイナス2%というシーリングを当てはめますと、外務省のODAはマイナス1.5%というのがトータルの姿です。それにさらなる2割増しの要求を乗せるわけですが、これから年末にかけてマイナス1.5%をベースに攻防が行われるということでございます。 この大綱に沿ったテーマの整理としてはここにありますように、1として新たな重点政策課題ということで、平和の構築、人間の安全保障、地球的規模の問題、アジア等の地域協力推進といったかたちで政策課題を整理して予算要求をさせていただこうかと思っております。2番目の大きな柱がODA改革です。政策の立案、実施体制の強化、国民参加の拡大、その他、評価、監査の充実等について予算的にめりはりをつけられたらと思っております。特に来年は我が国ODA開始の50周年ということですので、ODA50周年ということでの広報といいますか、何か工夫ができないかなと思っているところでございます。 なおマイナスシーリングのもとではありますが、ご案内のように10月の下旬にイラクの支援国会合が予定されております。ここで相当程度の資金ギャップが提示され、我が国としてどれだけそれに対処していくのかというところが問われるわけです。 また昨年1月にアフガニスタンの援助国会合を東京でやったわけですが、日本国としては2年半で5億ドルというコミットをしています。これも来年の7月で最初の2年半が切れるわけです。そろそろアフガニスタン・パート2の議論が始まっております。これについても日本としての相当な規模のコミットメントが必要だろうと思われます。 また地球的規模のところでエイズ等の感染症につきまして、世界基金の話が先ごろのエビアンサミットで大きく浮上いたしました。アメリカの場合には10億ドル×5年間、50億ドルをこの基金に出す用意ありとブッシュ大統領が表明しておりますし、シラク大統領はヨーロッパ全体としてこれに見合うものを考えたいということで手を挙げていますが、日本国としてどの程度のものができるか。 マイナスシーリングの中で何十億ドルというオーダーのものが出せるのかどうかということで、私どもとしてはイラクの復興支援、アフガニスタン・パート2、そしてエイズ等の感染症の世界基金、この三つの大きな固まりを既存のマイナスシーリングの中で飲み込めるかどうか。飲み込んだ場合には今度はその他の援助にどういうしわが寄るのかといったところが大変悩ましい問題です。 かつ、現時点でいくらという具体的な数字を明示することは困難な状況です。その中で概算要求をどうするか、そして年末までの事態の推移の中で日本国としてどう表明していくのか、そして最終的な政府原案にどうたどり着くのかというあたりで、この秋は予算面では大変厳しい状況かなと思っております。また逐次ご報告したいと思いますが、そこらあたりが私どもの平成16年度予算についての問題意識です。よろしくお願いいたします。 |
(渡辺議長代理) | 予定された時間を10分オーバーしてしまいましたが、以上をもちまして本日の会合を終了いたします。次回の13回会合ですが、この日程についてはまた追って事務局からご連絡申し上げるということにさせていただきます。今日は長い時間、暑い中、ご協力ありがとうございました。
|