ODAとは? ODA改革

「ODA総合戦略会議」第11回会合・議事録

1.日時

 平成15年7月4日(金) 午前8:00~10:00

2.場所

 外務省飯倉公館

3.出席者

 ODA総合戦略会議委員(ただし、矢野副大臣、新藤政務官、脊戸委員及び宮原委員は欠席)。外務省(事務局)より古田経済協力局長、滑川経済協力局審議官、吉川経済協力局審議官他が出席。関係府省、JICA(国際協力事業団)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加。

4.議論の経過

(議事の概要)

 まず、古田経済協力局長よりODA大綱見直しの作業スケジュールに関する説明が、須永調査計画課長よりODA大綱の政府原案の概要に関する説明が行われた。
 続いて、同原案に対して出席委員より様々な意見が出され、意見を踏まえて事務局にて修文を行うこととなった。
 次回会合(第12回会合)は、8月下旬(日程未定)に行われる予定。

(渡辺議長代理) ODA総合戦略会議の第11回目の会合を開催します。今日はまず新ODA大綱の原案につきまして事務局から説明を受けます。そのあとでこの原案に基づいて質疑応答、自由討議ということになっています。なおこのODA大綱の見直しにつきましては、これまで公式、非公式の幅広い議論が関係者との間でなされてきました。そういった幅広い議論を踏まえて事務局が作成したものが、今日お示しする原案です。この原案をベースに自由討議を行い、そしてかなうことであれば今日、ODA総合戦略会議としての意思決定を最終的にというわけではありませんが、半ば最終的に決めることができれば議長代理としては大変ありがたいと思っております。
 まず最初に事務局から今後の作業スケジュールの案、それに引き続きましてODA大綱の案についての説明を頂きたいと思います。まず古田局長より作業スケジュールについてのお話をお願いしたいと思います。

(古田経済協力局長) おはようございます。まず私のほうから作業スケジュールについてご説明申し上げたいと思います。資料5をご覧いただければと思います。これはこれまでこの大綱の作成の過程で、当戦略会議はもちろんのことですが、各方面にかなり広く呼びかけ、いろいろとご意見、ご批判をいただいてきたプロセスです。実はここに書いていないものとして、この他に各党にもこのところ集中的に議論をしていただいており、こういった流れの中で本日の総合戦略会議でこれまで調整してきた案をお諮りをして、ご意見をちょうだいして、私どもとしてはできれば来週の半ばごろに政府原案という格好でパブリックコメントに付したいと考えております。
 そして8月上旬まで1カ月程度、また国民の各層からご意見を頂くということを考えており、その過程で7月20日および21日に大阪、東京で公聴会を開かせて頂く。当戦略会議の何人かの先生方にもお煩わせすることになろうかと思いますが、公聴会をお願いしたいと思っております。また国会の閉会が28日の予定ですが、その前にいくつかの党でこの政府原案を議論したいという声もございます。
 そうしたことを踏まえた上で、お盆明け、8月18日の週から最終的な決定のプロセスに入りたいと思っており、総合戦略会議、あるいは各省庁連絡会議、それから各政党のプロセス、そして最終的には対外経済協力関係閣僚会議、閣議ということで8月末を目途に最終決定に入りたいということでございます。したがいまして今日、お諮りする案は政府原案の案ということで、これを政府原案ということで来週、パブリックコメントに付すということを考えております。引き続きまだまだ手を加えていくプロセスにあるわけですが、とりあえず政府原案という格好で一つ区切りをつけて整理をして出して頂きたいというのが本日お願いした趣旨でございます。
 閣議等でちょっと遅れておりますが、のちほど大臣もまいりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。以上でございます。

(渡辺議長代理) 局長、どうもありがとうございました。早速ですが、須永調査計画課長よりお手元に行っておりますODA大綱案について、ご説明頂きます。須永さんは調整のご苦労で、寝る時間もないほどの忙しさを経てきました。

(須永調査計画課長) ありがとうございます。資料の2をご覧頂きたいと思います。「政府開発援助大綱案」と書いてあります。これが、おそらく政府以外の人がご覧になるのはこれが初めてかと思いますが、その案文でございます。
 構成ですが、三つのパートからなっています。最初が「理念」の部分です。これには目的と方針と重点が書いてあります。それから2番目が「援助実施の原則」で、これはいまの大綱にもあります原則に相当する部分です。3番目が「援助政策の立案と実施」という項目です。冒頭から順番にご説明申し上げます。
 最初に「前書き」の部分です。ここではこの10年間に国際情勢が大きく激変して、平和構築など新たな課題が発生していること、それから他の先進国がODAを通じた取り組みを非常に強化している。我が国もそれを踏まえて新たな課題に積極的に取り組む必要があることと、そのためには国内の経済・財政状況や国民の意見を十分踏まえてODAを効果的に実施することが不可欠であるということが書いてあります。この大綱全体のキーワードと申しますか、ODAの戦略性、機動性、透明性、効率性を高めて、幅広い国民参加を促進するためにODAを改定するということが書いてあります。
 「理念」の部分です。「理念」はいまの大綱と違いまして、さらに「理念」を三つのパートに分けています。目的、方針、重点になっています。どういう目的でODAを実施するのか、それをどうやって実施するのか、何を行うのか、こういう順序で説明をしています。目的の部分ですが、冒頭にODAの目的は「国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することである」と書いてあります。
 その次にいまの国際情勢を簡単に書いてあり、人道的な問題、地球的規模の問題などに取り組むことが非常に重要な課題である。このような問題は国境を越えて個々の人間にとっても大きな脅威であるということが書いてあります。人道的な問題、地球的な問題とともに平和の構築、民主化や人権の保障を促進して個々の人間の尊厳を守ることが非常に重要だということが書いてあります。これも課題の一つです。こういう課題に応えるために日本はODAを積極的に活用して率先して取り組むこと、こうした取り組みが友好関係、あるいは国際場裏における我が国の立場の強化などいろいろなかたちで我が国に利益をもたらすものであるということが書いてあります。
 その次のところは、これは国益的なところをもう少し書いた部分ですが、相互依存関係が深まる中で、資源、エネルギー、食糧等を海外に依存している我が国がODAを通じて開発途上国の安定と発展に貢献することは我が国の安全と繁栄、国民の利益を増進することに深く結び付いているという記述になっています。
 最後の結びはODAを通じてこれらの取り組みを展開し、我が国の姿勢を内外に示すことは国際社会の共感を得られる最もふさわしい政策であり、ODAは今後とも大きな役割を担っていくべきであるというかたちで結んでおります。
 1ページおめくり頂きまして、「基本方針」です。これはどうやって、どういう考えのもとでODAを実施するかという点ですが、5本の柱を立てています。最初が開発途上国の自助努力を支援する。どういう自助努力かと申しますと、グッド・ガバナンスに基づく自助努力を支援するということが書いてあります。その際、平和、民主化、人権保障、あるいは経済社会の構造改革に向けた取り組みを行っている途上国については特に重点的に支援をするということで、戦略的な援助という面を強調しております。
 (2)は人間の安全保障の視点で、相手国の国家とか政府とかだけではなくて、地域社会、あるいは個々の人間に直接考慮した援助を行うという趣旨で書いてございます。
 (3)は公平性の確保というタイトルにしていますが、ジェンダーの視点、あるいは社会的弱者、貧富の格差を考慮する。それからODAの実施が途上国の環境面、社会面に与える影響に十分注意を払って公平な援助を行うということが書いてあります。
 (4)は我が国の経験と知見の活用で、これまた少し視点が変わってきますが、我が国の経済発展の経験を途上国の開発に役立てる。また我が国の優れた技術、知見、人材等を活用する。もう一つはこれまでの途上国への援助の経験、あるいは成果と言ってもいいかもしれません。そういうものを生かすということ。それからもう一つ書いてありますのはODAの実施に当たっては我が国の経済社会との関連に配慮しつつ、ODAを実施すると我が国の経済社会にいろいろなインパクトがありますので、そういうものを考えるということと、我が国の重要な政策、これは貿易政策、その他いろいろな政策があると思いますが、それとの連携を図って政策全般の整合性を確保するということが書いてあります。
 (5)は国際社会における協調と連携です。これは、国際機関が中心となって開発目標とか戦略の共有化が進んでいますので、日本もそうした中で協調するとともに、共有化の動きの中で主導的な役割を果たすということが書いてあります。それからもう一つは、国際機関とか他の援助国、NGOだけではなくて新興援助国と協力した南南協力、それから地域的な取り組み、あるいは複数の国にまたがる広域的な協力を推進するということが書いてあります。
 その次に、ではどういう分野で援助を実施するのか、重点課題が書いてあります。ここは4点挙げてあります。一つは貧困の削減。これはMDGsに見られますとおり、国際社会の共通の大きな課題になっています。それを念頭に置いて教育や保健、医療、福祉、水と衛生、農業等の分野における協力を行う。ただ、日本の考えを次に書いてありまして、貧困削減を達成するためには経済が持続的に成長し、雇用が増進することが不可欠であるということが書いてあります。
 これを受けまして、(2)で、その持続的な成長のためにどういう協力を行うかが書いてあります。人づくりの他に政策立案、制度の整備、あるいは経済社会基盤、これはインフラが中心ですが、それらの整備が必要だということ。知的財産権の保護とか標準化、ICTの分野における協力、あるいは留学生の受け入れ等が書いてあります。その次のパラグラフはODAだけではなくて貿易投資との有機的な連関、あるいはODA以外の資金の流れ、OOFとの連携が書いてあります。
 (3)は地球的規模の問題の取り組みということで、環境問題、感染症、人口、その他いろいろな問題について国際社会と協調して取り組む。もう一つはいま国際社会の中でいろいろな国際条約等の規範づくりが進んでいますので、そういうものにも積極的な役割を果たすということが書いてあります。
 (4)は今日的な課題ですが、平和の構築です。これはまず紛争を予防するために貧困削減等を行う。紛争が起こった場合には紛争の終結から、さらに紛争終結後の国づくりまで、継ぎ目のない援助を実施するということで、さらに平和の構築については実際日本が何をやるのかということについて質問がありましたので、最後のほうに具体的に実施するやるような項目を書いてあります。
 4.は重点地域です。これはアジアが重点地域である。ただしアジア諸国の経済社会状況の多様性、援助需要の変化に十分留意して戦略的に重点化を図る。経済連携の強化のためにODAを活用して地域との関係強化、域内の格差の是正に努めるということが書いてあります。また、いまの大綱になかった部分ですが、南西アジア地域、これはインド大陸を指していますが、それから中央アジアにおける取り組みを書いてあります。またこれもいまの大綱にはありませんが、アジア以外の地域についても少しずつ記述をしており、具体的にはアフリカ、中東、中南米、大洋州ということで、ご覧いただいているような説明を加えています。
 また1ページめくって頂きまして、次のパートが「援助実施の原則」です。これはいまのODA大綱の原則と同じです。過去10年間、いろいろな対中援助、対インド援助、対パキスタン援助、その他アフリカの国々で原則の適用をしてきたわけですが、それを踏まえて4原則で、ほぼ同じかたちで書いております。
 若干修正しておりますのは、理念の部分に基本方針とか日本の援助のやり方に関する重要部分が入っていますので、それとの一体性を図るということで「上記の理念に則り」という言葉を冒頭に入れております。それから要請主義の見直しという観点から、現在の大綱では「開発途上国の要請」という言葉になっていたものを「援助の需要」というかたちにしてあります。それからそこに四つ原則が並んでいますが、(3)にこれも今日的な課題として「テロや大量破壊兵器の拡散を防止する」などと新しい言葉を加えております。
 3番目の部分は「援助政策の立案および実施」です。これは過去一、二年にわたってずっと行ってまいりましたODA改革の成果を取りまとめたと言っても差し支えないと思いますが、最初の部分が援助政策の立案と実施の体制について書いてあります。(1)は一貫性のある援助政策の立案、政府全体として一体性、一貫性を持ってODAを実施するということです。その重要なツールとして中期政策とか国別援助計画を作成する。特に国別援助計画については我が国の援助政策、被援助国にとって真に必要な援助需要を反映した、重点が明確なものにするということが書いてあります。それからこの中期政策、国別援助計画に従って有償資金協力、無償資金協力、あるいは技術協力についてはハード、ソフトのバランスに留意して有機的な連携を図る、またその適切な見直しに努めるということが書いてあります。
 それから次の項目は関係府省間の連携です。これも政府がバラバラにやっているという印象がありますので、政府全体として一体性、一貫性のある政策を立案する。対外経済協力関係閣僚会議、これは総理も出席して頂く会議ですが、これの枠組みの中で外務省を調整の中核として幅広い連携を強化するということが書いてあります。
 (3)は政府と実施機関の連携です。(4)は要請主義の見直しとある意味で対になっているものですが、開発途上国から要請を受ける以前から政策協議を活発に行って、我が国の援助方針を開発途上国に示し、開発途上国の開発戦略の中でも我が国の援助政策を位置づけて頂く。それから開発途上国の開発政策と我が国の援助政策の調整を図るといったようなことが書いてあります。
 また1ページをおめくり頂きまして、(5)は現地機能の強化です。これも今回かなり思い切った書き方をしてあります。援助政策の決定過程、それから実施において現地が主導的な役割を果たすように、その機能を強化する。外部人材の活用等の整備を図るということが書いてあります。
 最後のところ、現地の関係者とありますが、これは現地のいろいろな住民の方々、あるいは現地の地方自治体の方とか、そういう方を主に指していますが、現地の関係者を通じて現地の経済社会状況等を十分に把握するということも入っています。
 (6)は援助関係者との連携で、これもNGO、大学、地方公共団体、経済団体、労働団体、幅広い方々に参加していただいて技術や知見を活用できるような連携を強化する、それから途上国においても同様の連携を図る、それからODA実施に当たっては我が国の企業の持つ技術や知見を適切に活用するということが書いてあります。
 次の項目が「国民参加の拡大」です。最初に国民各層の広範な参加ということで、国民に対して幅広く情報提供をするとともに、国民から意見を聴取して開発事業に関する提案を募集したり、あるいはボランティア活動への支援を行う。それから(2)は人材の育成と開発研究について書いています。(3)は開発教育です。これは学校教育等の場を通じて開発援助の役割、開発途上国が抱える問題、開発問題に関する教育の普及を図り、その教材の提供とか指導者の育成等を行うということが書いてあります。(4)は情報公開と広報です。これは我が国国内で広報をきちんと実施するとともに、特に途上国を中心として、国際社会に対して我が国ODAについての情報発信を強化するということが書いてあります。
 最後の3.は効果的実施のために必要な事項ということで、評価の充実、それから適正な手続きの確保。この中では基本方針の(3)を受けるかたちで環境や社会面への影響に十分配慮する手続きを取るということが書いてあります。
 また1ページおめくり頂きます。それからもう一つは価格面においても適正かつ効率的な調達が行われるように努めるということも書いてあります。次は不正と腐敗の防止、この中には外部監査の導入等が書いてあります。
 (4)は援助関係者の安全の確保が書いてあります。
 最後にODA大綱の実施状況に関する報告と、これは毎年閣議に報告することになりましたODA白書において実施状況を明らかにするということにしております。以上でございます。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。概要を非常にコンパクトに説明頂きました。それでは早速いまの案に基づきまして、どこからどう入ってくださっても全く結構ですので、自由な立場からご発言いただければと思います。どなたか口火を切っていただけますか。では牟田さん、西岡さん、大野さんといきます。

(牟田委員) 全体として論点が非常に明確でわかりやすいODA大綱になっていると思います。また当然、他の外国の関心も強いと思いますので、これも英訳されて他のところにもご案内されるのだろうと思います。そういうことで、多くの人の目に触れるのではないかと思いますが、そういった観点から非常に細かな点で恐縮ですが、1点だけわかりにくい部分がありましたので、そこの書き直しができないかということです。
 5ページですが、「効果的実施のための必要な事項」ということで、評価の充実が書いてあります。ここに書いてありますことは事前、中間、事後と一貫した評価、各層の評価、そのフィードバックということで大変よろしいのですが、そのパラグラフの2行目の終わりのほうに、「その際、政策評価を実施する」ということが書いてあります。一般の方がこの文章をご覧になって理解できるでしょうか。つまり「政策評価を実施する」ということがどういうことか、お分かりになるのかなという気がします。政策評価という言葉自体新しいもので、一般の方にはなじみがないのかなという気がします。
 分かりやすくするにはたぶん三つぐらいの方法があります。一つは乱暴ですが取ってしまうというやり方です。この文章の他に書いてあることで政策評価の考え方はだいたい代表されているのではないかと思いますので取ってしまう手のが一つあります。もう一つは政策評価という言葉を他の言葉に置き換えるということがあります。ただ、たぶんここで政策評価と入れられたのは、政策評価というワーディングを載せたいというお気持ちがあったのかなという気がするのですが、そうしますとその前に多少修飾語をつけて、例えばですが、「その際、効果に関し測定分析し、客観的判断を行う政策評価を実施する」という書き方が考えられると思います。

(渡辺議長代理) もう1度お願いします。

(牟田委員) 「その際、効果に関し測定分析し、客観的判断を行う政策評価を実施する」、つまり政策評価を説明した文言ですが、たとえば何かそういった工夫をすればわかりやすくなるのかなということでございます。事務局のほうでお考えいただければと思います。

(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。引き続き、西岡さん、お願いします。

(西岡委員) 従来、ODAで非常に問題になっていたところが、非常に細かく皆さん方の心配点をなくすように、そしてかなり深く、相手の国のこともいろいろ考えながら文章が作られているということに非常に評価するわけですが、ODAの戦略上で一番のところですが、ODA自身が我が国としては一つの外交的な武器として今後とも重要だとすると、ODAの予算確保という面も考えていかなくてはいけないのだろうと思います。そういう面から考えてODAの一つ戦略性としては、ここの1ページ目ですが、「国民の利益を増進する」というところまで踏み込んで書かれていることは非常に評価するわけですが、「深く結びついている」ということになりますと、どちらかと言うとそこが受動的になるわけです。

(渡辺議長代理) いま西岡さんがおっしゃっているのは1ページのどの部分ですか。

(西岡委員) 下から6行目です。「我が国の安全と繁栄を確保し、国民の利益を増進することに深く結びついている」というところですが、この「国民の利益を増進するとともに、我が国の安全と繁栄を確保する」というように、どちらかと言うと少し能動的な意味が要るのではないかと私は感じるのですが。

(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。大野さん、小島さん、伊藤さん、青山さんとまいります。

(大野委員) 皆さん、評価が高いようですけれども、中身の話は別として文体の話をすると、僕は非常に残念で全然満足していません。僕が思ったのは、たとえば国民を動員し、いま言ったような予算確保のため、あるいは援助を実際に現場でやっている人たちにモラルを高めてもらって、そして他のドナーや途上国にも英訳なり何語でもいいですが、日本はこういうことをやっているのだよと、非常に誇れる文章をここから探すとするとなかなか引用できないのです。僕はそれが「目的」のところになると思うのですが、他の部分はともかくとして、やはりこの「目的」のところをもうちょっと羅列的でない、網羅的でない、総花的でないものに書き直してほしいと思います。
 やはりボトムアップでやっていますから文章がいろいろなアイディアを組み入れてしまい、具体的に何がいいか悪いかは別にして、読んだときに心に響いてこないものがあります。文章もあまり上手でないとはっきり申し上げておきたいと思います。やはり世界に持っていきたいとき、あるいは国内で使いたいときに、使える部分があるといいと思うのです。その面で他のところはともかく「目的」の部分をもう少し格好よく書き直せないかなと思います。いまも西岡さんがおっしゃったように受動的に書いてある。何か対応しなければいけないとか、こういうことにも関連があるとか、そういう書き方ではなくて、もっと積極的に打って出る。日本はこういうことをやりたいのだ、というべし。世界はこういうふうに動いているからこれに対応すると特に日本にとって評価が高くなるとか、そういう書き方はどうも気に入らない。それが書き方についてです。
 中身については、主なところだけ申します。「目的」の中身ですが、今の書き方を読むと、世界ではいろいろな問題が多く発生している、それに対して日本も先進国として取り組むことによっていろいろな共感を得られるというような筋だと思うのです。世界がどういうふうに動いていると見ているだけではなくて、日本が開発というものを一体どのように考えるのか、それはやはり唯一の非欧米国の、途上国から先進国になってきた国として、あるいは東アジアをバックグラウンドに持つ国として、具体的なものを書く。日本がそれに基づいて何を信じて行うかということがここの「目的」に書かれる。つまり中身とビジョンの話を僕はずっと言ってきたのですが、それがここにはない。たとえば貿易、産業とか貧困の問題はどこのドナーも言っていることです。それが中身についての一つ目です。
 もう一つは「目的」の冒頭は一番大事だと思うのですが、これを読むと「国際社会に貢献する」というのは手段であって「日本に利益」が目的であるということになっている。僕はそうではないと思うのです。貢献すること自体が目的だと思います。それはいま西岡さんが言ったのと逆になるかもしれないのですが。
 もう一つ大きなところでは、重点地域のところで東アジアは重点であると言ったあとで、いろいろなことを書いていますが、東アジアの重点がかなりぼけてしまったと思います。東アジアに続いて南西アジア、中央アジアも書いて、その次にいろいろな地域を羅列していますが、これはちょっと東アジアを薄めすぎかなという感じがいたします。しかも東アジアは他のアジアと並列ということですが、日本の国益から考えるとどこを重点とするかと言ったらやはり東アジア、すなわち東南アジア、中国、韓国(韓国は一緒に協力するという意味ですが)、そこが中心だというのが全然出てこないのが私の印象です。
 最後に政策協議の強化ですが、これからのODAは政策協議に基づいてやるので、それを強化するだけではなくて、もう少し強く書いてほしいと思います。

(渡辺議長代理) いまおっしゃっているのは、どの部分ですか。

(大野委員) 4ページの最後です。

(渡辺議長代理) 「要請」のところですね。

(大野委員) 政策協議の強化の書き方が弱いということです。

(渡辺議長代理) ちょっとすみません。4ページの政策協議の強化は何ておっしゃいましたか。書き方が弱い、ということですか。

(大野委員) そうです。活発に行うというだけでなく、これからのODAは政策協議に基づいてのみ行うべきだと、もう少し強めに。こういう文章は後追いではなくてやはり先駆的なもの、パイオニア的な文章であってほしいと思いますから。それが今は全部そうなっていなくても、方向を指し示すという意味で強く書いてほしいと思います。
 最後に、次の5ページの冒頭にありますが、これはもっと私にとっては重要だと思うのですが、現地機能を強化するということで、いま須永さんはこれは大胆に書いたとおっしゃいました。しかしできることなら現地機能の強化だけではなくて、「権限委譲」と「現地を主体」にして政策を作ると、そこまで踏み込んで頂きたいし、実際にいくつかの国ではそういうことが起こっているので、これもパイオニア的な意味でただの強化だけではなく、日本の援助は現地から行うということをもっとはっきり書いてほしい。長くなりましてどうもすみません。

(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。小島さん、お願いします。

(小島委員) 皆さんご発言したいと思いますので手短に。全体として私はなかなかうまくまとまっているなと思います。かなり一点集中主義でもし書かれたとすると、おそらくそれは通らないだろうと思いますので、なかなかいいのではないかと思いますが、1点。「目的」のところで、これは全く同感ですが、やはりこれまでの日本のODAはしっかり成果を上げました、我々はやったんだぞというメッセージは是非「目的」のところで入れて頂きたいと思います。そうでなければ今までやってきたことは何だったんだということになると思いますので、その一言を是非入れて頂きたい。
 それとの関連でいけば、「重点地域」です。私はこれは大野さんと全く同じ印象を持ちました。結局、世界全部の発展途上国が入ってしまっているというのではちょっと弱いかなと思います。しかし、やはりアフリカ、中東は入れざるを得ないのだろうと思います。そこで私がお願いしたいのは、なぜ東アジア地域が重点なのか、ここの1点を少し書いて頂きたい。これは前から申し上げていますが、21世紀に入って東アジアで協力と統合の潮流が本格化している。それにODAがどう関わっていくのか、そういう目的を1点きちんと書いて頂く。その協力と統合の潮流に日本が主体的に関与していくというところでODAがあるのだということ。
 そして三つ目にはその内容として、特に私はお願いしたいのですが、日本が行ってきたODAによってテイクオフに成功し発展してきたところ、一言で言えばODA卒業国(韓国やシンガポールやタイなど)もそうやっていくのでしょう。こういったところとの連携がODAにおいても行われる。それが第三国支援であり、南南協力である。こういうことをきちんと目的と方法とその内容という3段構えで書いて頂くと、あと中東が来ようが、コーカサスが来ようが、アフリカが来ようが、どこに重点があるかがはっきりするのではないかと思います。
 いま申し上げた点はこの「重点地域」のところでそう述べるのか、あるいは「基本方針」の(5)の国際社会における協調と連携で述べるのか、どちらでも結構ですので是非それは入れて頂きたいと思います。以上です。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。では伊藤さん、青山さん。

(伊藤委員) 大野委員がおっしゃったことですが、もう少し積極的に書くという意味においては私も賛成します。従って目的も「国際社会の平和と発展に貢献する」とはっきり言って、その結果我が国の安全と繁栄の確保に資する結果になるのだという表現の方がいいと思います。そのあとの方も課題という形で書いてありますが、もっと能動的に書く必要があると思います。全体的に私もいいと思って評価しています。
 西岡委員がおっしゃった点ですが、「国民の利益を増進するために」と表現を変えるよう提案されましたが、私はそれは変えない方がいいと思います。これは外務省の方が非常に苦労されて、こういったことに深く結びついているということによって、国民その他いろいろな方に理解してもらおうという書き方をされたと理解して、私は原案を支持します。
 2点目は5ページ目の「政策の決定過程・実施における現地機能の強化」についてです。これは大野委員もコメントされました。その表題と中身に整合性があるのかどうか心配したのですが、私が前回の委員会でもコメントした点が、おそらくこの後半の3行目からの「また現地を中心として開発途上国の開発政策や援助需要を総合的、かつ的確に把握するよう努める。、、、、その際、現地関係者を通じて現地の経済社会状況等十分把握する」という中に恐らく表現されたのかと思います。私は現地のNGO関係者とかいろいろな人たちの声やニーズを反映する努力が必要ではないかという意味で申し上げたのですが、いま大野委員はおそらく現場におけるJICAとかその他日本の実施機関の機能を強化するという意味で権限委譲もとおっしゃられたと思います。私自身はこの「現地機能の強化」という中において、現地の人々、NGOとかもちろん政府機関等は当然のことですが、そういった現地関係機関との連携をもっと充実する必要があるということで、「現地の関係機関との連携強化」という新しい小項目を別に設けることを提案したはずです。それがこういう表現に変わったのかと理解しています。
 「基本方針」の中に現地のオーナーシップを尊重すると書いてありますので、実施プロセスにおいてもその方針を反映させるべく明確に謳った方がいいのではないかと思います。

(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。それでは青山さん、お願いします。

(青山委員) 3点ほどコメントさせて頂きたいと思います。まず「3.重点課題」の「(1)貧困削減」のところです。私は基本的に、開発援助というものは、経済開発と、社会開発・人間開発が、両輪として同時進行的に進んでいかない限りうまくいかないと考えております。経済開発は大変重要で金額的にも社会開発・人間開発より大きいとはいえ、両方が同じスピードで進行するのが重要であると思います。
 貧困削減のところに、こうして教育、保健医療、福祉といった社会セクターが挙げてあって、これらを基本としているということについては評価しております。ただ社会セクターの開発というものを、貧困削減という経済的側面だけからしか捉えていないようにみえることが気になります。健康権が基本的人権の一部であるように、社会セクター、すなわち、教育、保健医療などは基本的人権を構成する要素に含まれています。社会セクターに投資することは、基本的人権を確立することであり、意識を改革し何が大事かを考えていくことであり、途上国の人々のエンパワーメント、自己実現につながるものだと思います。そう考えると、貧困削減という枠組の中だけで社会セクターが述べられていることにちょっと不満を感じます。もちろん、貧困そのものが、人権を脅かし、自己実現を妨げるものです。したがって、保健医療・教育などに投資することが、基本的人権の確立、意識改革や自己実現、人々のエンパワーメントにつながるものであるということを、ここに少し書き込んで頂いて、社会セクター本来の重要性がもう少し出てくるようにならないだろうかと思います。単に貧困という経済要因だけから見るのではないようにして頂きたいと思います。
 それに関連して、「(4)平和構築」のところですが、具体的事項を挙げて頂き、大変分かりやすくなったとは思います。ここには、復興開発初期の人道支援などがあげられていますが、私はこの復興開発を長期開発につないでいくのに最も重要な援助が人材養成であり、復興開発に貢献できる現地の人材を育成していくことこそ重要であると考えております。したがって、このどこか終わりの方、経済社会開発のところなどに、現地の人材を養成するというような内容を入れて頂けないだろうかと思います。復興復旧から長期開発につなぎ、平和と安定を築き人権が尊重される社会をつくっていくために、社会開発の視点を入れて頂きたいと思います。
 それから2点目ですが、「III.援助政策の立案及び実施」の「(3)政府と実施機関の連携」というところです。これにはバイの実施機関のことだけが書かれていて、それはわかるのですが、マルチの機関が実施機関のような形になることもあるのではないかと思います。すなわち国際機関などに、日本が出資金の他に、特定の事業をやってもらう目的で資金をだしているようなことがあると思うのです。その場合には、国際機関が日本の援助の実施機関のような形になっているのではないかと思われ、その形の連携についても考慮するべきと思います。
 それはもしかしたらその「2.基本方針」の「(5)国際社会における協調と連携」に含まれているのかも知れませんが、おそらくこの場合は、日本が出資金として国連機関全体に資金を出していることの話だろうと思います。大綱にどう書くのかはいろいろ議論があると思いますが、日本と国際機関のいろいろな関わりがわかるよう少し配慮して頂きたいと思います。なお、ここに「国際機関の運営に我が国の政策を適切に反映させて」と書いて頂いたことは、前回もコメントいたしましたように大変評価しております。
 最後、3点目ですが、この「国際社会における協調と連携」に書かれている南南協力のところです。これは前回も質問申し上げて、日本にとって大変重要なものだというお答えがあったわけです。ただ私自身はまだ少し疑問を持っております。
 この方法は、日本にとっては、新しい援助国に対する技術支援にもなるし、また被援助国と文化的に近い国が実施したほうがいいというお考えがあるのだろうとは思います。
 しかし、被援助国の方はどう考えているのだろうかと疑問をもっています。日本からの援助だったら大変うれしいと思う被援助国はたくさんあると思いますが、近隣の新興援助国、それはもしかしたら覇権主義的な国かもしれない、そういう国が間に入った援助を本当に喜ぶのかなと少し疑問に思います。
 また、おそらく国民の中からも、他国に援助できるほどの国に対して、まだ日本が援助するのかという批判が出てくるかも知れません。
 もしこの南南協力の形を進めるのであれば、日本は、単なる資金提供者や仲介者ではなく、運営面や技術面を含めて積極的・主体的に関与しなければならないと思います。ここにもう少し書き加えたほうがいいのか、あるいはもっと簡単にしてしまった方がいいのではないかと思います。先ほど小島委員がおっしゃられたように、日本の援助によってテイクオフした国を別の形で支援していくというような書き方は、もしかしたらこの意味合いを分かりやすくする一つの案なのかもしれません。しかし、私としては、もう少し簡単に書いた方がいいのではないかと思っています。
 以上でございます。

(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。それでは草野さん、磯田さん、浅沼さん、千野さんという順序でいかせてもらいます。

(草野委員) 前回何で言わなかったのかというご指摘、あるいはお叱りはあるかもしれませんが、実は前回言ったところでもあるのですが、十分に生かされていないということであえてもう1度一つだけ改めてアピールしたいのですが、それは小島先生がおっしゃったこととほとんど同じです。
 もちろん私がこれから申し上げることは、この文章の中に部分的には生かされているという気はします。それは何かと言いますと、やはりこれまでの日本が行ってきた援助に対する評価です。それはどこに生かされているかと探してみましたところ、2ページ目の「我が国の経験と知見の活用」の中の「その際、人づくりと経済社会基盤構築への支援を中心に開発途上国の持続的成長に貢献してきた我が国の経験を生かす」という書き振りに多分前回私が申し上げたことは生かされているのかなという気がいたしますが、これは非常に遠慮がちという感じがします。
 私が今日申し上げたいのは、「はじめに」の部分です。まだどなたもおっしゃっていないのですが、皆さんこの「理念」から、そして「理念」のあとの「目的」のところからお話になっていますが、やはり前文と言うか、「はじめに」のところが非常に重要だと思うのですが、ここのところにはいま指摘をいたしましたこれまでのODAに対する日本のオーバービューは全然出てきていないのです。ここは裏を返せば、これをさらっと読むと私自身は日本の今までのODAは不十分であったというような印象すら受けるような文章ではないかと思います。
 もう一つのポイントは、今の話と関係がありますが、やはりこのODA大綱全体というのは、今までの大綱、あるいはそれ以前の日本のODAとの連続性の中で書かれた方がいいと思うのです。確かに新しい平和構築の問題などがきっかけとなって見直しの作業が行われているわけですが、やはりもっと自信を持つ。課題は山積しているし、日本のODAが全てよかったというわけではないけれども、先ほど小島先生は具体的な例をお示しになったように、卒業国もいくつも出しているという状況などはこの文章の中にどこか見られたほうが、納税者としては、ああ、なるほど問題はあるけれどもいいことをやってきたんだな、ODAを支援しようという気分になると思うのです。そういうところがちょっと見られない。
 逆に、先ほど言いましたように、ネガティブな感じすら受けるというのはこの「はじめに」の一番最後の2行のところにいきなり「ODAの戦略性」というのが出てくる。ということは、私自身は個人的に日本のODAは戦略性がないと言ってきましたので責任はあるわけですが、やや唐突かなと思います。その評価と一体となってこの戦略性という言葉は出てきた方がいいのではないかと思います。以上でございます。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。それでは磯田さん、浅沼さん、千野さん。

(磯田委員) 私は4点申し上げたいのですが、その前にいまの草野さんのお話ですが、それも含めてですが、私は大綱というのはチャーターという全体のODAの政策の一番上流にあるものということで、やはり大きなビジョンとしてODAは何のためにやるといったことがきちっと明確に書かれるということが必要だと思うので、そういう意味では正直言って長すぎるという印象を持っています。
 いろいろなところからご意見が入る中で増えていかざるを得なくなった、ちょっとやむを得ないという経緯はわからなくはないのですが、そういう意味でもたとえばこの前文がまた膨らむみたいなことは私はできたら避けて頂きたい。例えば今草野さんがおっしゃった一番最後のパラグラフなどは、むしろこのODAをきちっと透明性や効率性を高め、さらに戦略性も高めたものとして質のいいものとしてやっていくのだということを謳っているわけですから、それ自体私は、今までの反省というよりはこれからこうするということを打ち出しているという意味で非常に評価したいと思っております。
 1点目はそれではなくて、その次ですが、1点目は「目的」の部分で先ほど来、出ている大野委員と伊藤さんのご意見に同じ部分です。1文目のところですが、この「貢献し」というのは手段として言っているのではなく、これ自体が目的と言っていると私は理解しておりますので、これがもし誤解を受けるようであれば「貢献することであり」という文章に言葉を変えて頂きたいと思います。単なる手段ではないと思っております。それが1点目です。そういう流れの中で、先ほど下の方にありました国民の利益を増進することに深く結びついているというのは、これはこれで十分ではないのかと私は思っております。
 2点目は2ページ目の「基本方針」の部分ですが、この基本方針のようなものをきちっと挙げたということは大変評価できることだと思っているのですが、この中に重点課題のようなものというのでしょうか、何かかなり各論的なものまで一部入っているという印象がちょっとあります。例えば1番のところの自助努力の支援とオーナーシップを尊重してやるのだということを謳っているが、その2行目では、「これらの国の人づくり、制度整備や経済社会基盤の構築に協力する」となっており、ここでもうすでに分野を限った言い方をしている。これはヘッドラインというか、項目とちょっと合わない。こういったものまでいちいちここに書き込む必要はないのではないか。その部分はむしろ重点課題としてきちっと「持続的成長」という中に書かれているわけですから、こういう重複がいくつもあるというのは見ていて非常にごちゃごちゃするという印象を持ちます。
 同じような文章が4番の「我が国の経験と知見の活用」のところにも、全く同じ「人づくりと経済社会基盤構築への支援」が入っている。何かこれがオーラのように後ろにくっ付いているような印象がありまして、ここをご整理頂きたい。このまま切ると文章がつながらないかも知れませんが、削除してもいいのではないかと思います。
 3点目が「重点課題」のところですが、これは四つ挙げてあります。いずれも重要であることは認識するのですが、分量の問題で1、2、3、4とある中で1と3が他の2と4に比べると半分ぐらいしかない。これは瑣末なことかもしれませんが、書かれている分量というのは見かけ上、その重点を物語るものだと私は思います。そこら辺のバランスをもう少しお考え頂きたいということもありまして、そういう意味で1点目の「貧困削減」、先ほど青山委員からのご指摘もあったような点を少し書き加えられないだろうかと思います。この貧困削減というのは単純に貧困削減というだけではなくて、社会開発、あるいは人間開発、貧困な人たちのエンパワーメントにつながる支援をするという書き振りぐらいに踏み込むようなものを、単なる昔のBHNのような社会サービスという意味だけでないものをきちっとここに入れて頂けないだろうかと思います。
 それから4点目が、5ページ目の先ほど伊藤委員からお話がありました「現地機能の強化」という部分ですが、先ほどの須永課長のお話で「現地関係者を通じて」のところは、住民や地方自治体というものを念頭に置いていますと伺いました。ただこの文章からですとそういうふうに思いませんでした。現地関係者というとフワッとしていて、せいぜい途上国政府というような印象しか受けませんでしたので、もしそういうことも念頭に置かれるのであれば、「住民や地方行政等も含めた」とか、何か少し追加をして頂けたらと思います。
 あと南南協力については前回も申しましたが、青山委員からお話があった点に私も全面的に賛成しています。賛成というのは、つまり非常に疑念を持っていますということです。特にすでにある程度経済成長を遂げた国に追加して支援して、そこをトンネルにして途上国を支援するというようなやり方に関しては疑念が上がるのではないかと思っています。以上です。

(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。では浅沼さん。

(浅沼委員) まず最初にこれだけ意見がある中で、ドラフティングのご苦労をお察しいたします。そう言った後で恐縮ですが、私は何点かドラフティングについてサジェスチョンをさせて頂きたいと思います。この機会ですからコメンタリーなしで全部言わせて頂きます。
 まず第1が、1ページの下から2つ目のパラグラフのところです。ここは国益であるとか目的であるとか大切なことがあるところですが、私のサジェスチョンは、「相互依存関係が深まる中で」の後に「国際貿易の恩恵を享受している我が国」という言葉を入れる。それは、「資源・エネルギー、食料」というのがあまりにもプレーアップされ過ぎているため、国際貿易全体を入れて頂く。それから、その後で「ODAを通じて開発途上国の安定と発展に貢献することは、我が国の安全と繁栄を確保し」とすぐに直接来るのですが、そこに「国際経済社会の安定と発展に寄与し、そして日本の」というふうに一つクッションを入れて頂くということです。
 それから第2ページの2の(1)の「開発途上国の自助努力支援」の2行目に「制度整備や経済社会基盤」という言葉が出てきますが、この前に「経済社会的発展やその基礎となる」という言葉で、経済社会的発展を少し強調する。
 その次は3ページの一番上のパラグラフですが、ここの第1行目に「そのため、教育や保健医療」という言葉が出てきます。そして2行目に「同時に」という言葉が出てきますが、この二つの文章の順序を入れ替える。「貧困削減を達成するためには、」というのが最初に来て、そして最後に「同時に」でも「そのため」でも結構ですが、「教育や保健医療」と、順序を入れ替える。
 それから(4)のところに「平和の構築」というところがあります。これの4行目に「継ぎ目なく」という言葉があるのですが、これがちょっと理解できないので削除する、もしくは「総合的に」と言いますか、何と言いますか、「継ぎ目なく」という言葉を避ける。
 それから4ページの「援助実施の原則」の(4)に「市場経済導入」という言葉があるのですが、これは当時はそうだったのでしょうけれども「経済社会の構造改革」と変える。
 その次に大きなIIIでもって「援助政策の立案および実施」というところが出てくるのですが、ここでのコメントは途上国自体のニーズがODA活動のドライバーであるべきだと私は思うのですが、どうも「我が国の援助政策」とか、「我が国」というのがちょっと強く出ているような気がしまして、次のような提案をします。(1)の「一貫性のある援助政策の立案」の4行目のところに「我が国の援助政策および被援助国にとって真に必要な」というところがありますが、この「我が国の援助政策および」を削除する。それからその同じパラグラフの後の方の一番下のところに、「ソフト、ハード両面のバランス」という言葉が出てきますが、私自身はこれはまさにそうなんですが、バランスと本当は結合なのです。どういうふうにその二つをコンバインしていくかという話なので、「バランスと結合」というか、そういう文言を入れて頂きたいと思います。
 もうすぐ終わりますが、この同じページの一番最後に「(4)政策協議の強化」というところがありますが、これはいいのですが、何となくこれを読みますと「我が国の援助方針を示して」、そして「開発途上国の開発戦略の中で我が国の援助政策を位置づけを求める」と、どうも我が国が強く出過ぎている。ここの「政策協議」を対話によって途上国の真のニーズを吸い上げることにあるのだというふうに、強意点を変えて頂きたいと思います。これは最後の2行、「我が国がODAの実施に当たって考慮する」というところですが、実施の面も含めて政策および制度の改善のための努力を、これはただ単に考慮すればいいことではないかと思います。そうでないとどうも日本の政策が途上国のニーズや開発のための戦略とは別に存在するような気がします。
 最後に、5ページの「(1)評価の充実」のところは、牟田先生がおっしゃいましたように2行目にある「その際、政策評価を実施する」というところは削除する。
 以上ですが、あと1点質問があります。それは一番最後のページの「(3)不正、腐敗の防止」については、これは我が国のODAを使用する際の受け手の政府もカバーしようとしているのでしょうか。例えば外部監査の導入等について、プロジェクト監査などを政府の部内に入っていくところまでを想定しているのかどうか、そのへんをどこまでやるのかはこの大綱とは関係ないと思いますが、考えておいた方がいいのではないかと思います。以上です。長くなってすみません。

(渡辺議長代理) 質問は一つでよろしかったですか。

(浅沼委員) はい、そうです。

(渡辺議長代理) ではあとでまとめて討議することにいたします。ちょうど大臣がお見えになられました。千野さん、どうぞご発言をお願いします。

(千野委員) 私が申し上げることは皆さんがおっしゃってきたことと若干違うかも知れないので、川口大臣には私が言う意見はあまり流れには沿っていないかもしれないということをちょっと念頭に置いて頂くほうがいいかとも思います。
 まず真っ白い紙からこれだけのものを書かれるというのは本当に大変なことで、その点では書かれた方は大変ご苦労様という言い方はちょっと不遜ですが、ご苦労を多としたいと思います。しかも今、国民ももちろんですが、NGO、経済界、そして政治家といろいろな人たちの関心がODAに対してかつてなく高い。そういうことを受けて書いているので非常に大変だったろうということです。
 しかし、ここからが私のより言いたいことですが、その結果、何が起きたかと言うと、私は基本的に先ほど大野委員が指摘されたことに同感ですが、さまざまな意見を汲み入れて書きました、したがってこういうことが書かれているので結構ですと、個々のグループからは多分おほめの言葉が出ると思うのです。しかし、では全体としてこの大綱はどうなのかと考えたときに、最初読んだときの印象は前の大綱が持っているメッセージ性というものがむしろなくなってしまったのではないかという、ある種の違和感というか、若干の失望感を抱きました。
 つまり、この総合戦略会議をはじめとして、大綱を見直そうということを考えた原点はそもそも何であったのかということが、この案を読んだときに個々の部分では分かるけれど全体としてもう一つ伝わってこないきらいがある。ODAを森にたとえてみると、1本1本の木をみんな一生懸命見たのだけれども、できあがった森はどうなのかということが問題なのではないか。議論の中でめりはりをつけようという議論がかつてあったと思うのですが、ですからこれにめりはりをつけるために、たとえばこの1の「理念」と2、3の「援助実施の原則」とか「立案および実施」というところは文体が違ってもよろしいのではないかと思います。2と3はより具体的になることは当然だと思います。
 したがって「理念」の部分を、先ほどの大野委員のおっしゃった言葉で言えば、先駆的文章で書き上げるということが大事なのではないか。具体的に申し上げられないのですが、個々の文章の中に戦略という言葉は入ったけれども、日本が新しい大綱を作っているということはそれこそ世界の各国が注目しているわけで、そこに訴えかけるようなめりはりのついた理念に書き直すというか、そういう観点から書いて頂きたいと思います。これが私の一番言いたいところです。
 個々の細かいことで1点だけ、5ページ、たとえば「国民参加の拡大」の(1)「国民各層の広範な参加」というところの文章は、読んでいてまず気になるところです。「国民に対して必要な情報」、「必要な」というのはだれが判断するのか。「必要な」という言葉は読む国民としてはあまりありがたくないなと感じました。「国民からの意見を広く聴取し」、この「聴取」という言葉も何か事情聴取を想像させる。非常に細かいことで恐縮ですが、こういう言葉はあまり使われない方がよろしいのではないかと思います。以上です。

(渡辺議長代理) 「理念」がここでは目的、基本方針、重点とそれぞれ分けて書いてあるのですが、いま千野さんのおっしゃったことは、理念をこんなに細かく分けないで一つの流れのいい文章化をしたらどうかという意味なのでしょうか。

(千野委員) 分けてもよろしいかと思うのですが、ただ全体の文章がスタイルも含めてこれではないなと思います。これは没個性的だと思うのです。もうちょっと個性があるように。個性というのは、では個人になるのかというとちょっと難しいのですが、日本という個性が出てくるような、例えば小島委員がおっしゃった日本はやってきたんだ、さらにやるんだと。そういう日本の成果を踏まえた上で、さらに21世紀によりふさわしいODAにしていくのだという決意というか、覚悟、そんなものが伝わってくるようなものであるとか。だから個々のワーディングの問題ではない。こんなことを申し上げたら出過ぎているかもしれまんが、渡辺議長代理が書かれることを私はぜひお願いしたいと思います。

(小島委員) 私はちょっと誤解していたのですが、これをずっと読んでいくと理念は目的と方針と重点で構成されて理念になる。こういうことですが、千野委員がおっしゃっていることはおそらく目的も方針も重点も、そんなちゃんと論理的な筋立てはよろしい、理念をちゃんと述べなさいということではないでしょうか。例えば「理念」は一つの項目になるのではないか。そしてそのあとに、「目的」、「方針」、「重点」があるのだったら、それはそれでよろしいと、そんなふうに私は聞いたのですが、そういうことですよね。

(渡辺議長代理) 旧大綱はそうなっているわけですね。荒木さん、どうぞ。

(大野委員) いまのに関連して。

(渡辺議長代理) はい。

(大野委員) 私は最初にしようと思ったコメントはあまりにも過激だからトーンダウンしたのですが、いまの千野さんのお話を聞いて元に戻しますと、やはりおっしゃるとおりだと思います。古田局長が説明されたように軌道に乗って来月にはもう締めなければいけないというときにこういうことを言っていいかなとも思います。しかし、これは全体にわたってひどい文章ですが、せめて目的だけ、その理念として世界に何語に訳して持っていってもいいようなものになれば他のところは許せるかなということです。それから僕は「前書き」は全然いらないと思います。最初から胸を打つ言葉で始めてほしかったと思います。渡辺議長にこの「目的」の部分だけでも書き直して頂くというのを僕のメモに書いておりました。他の部分はそんなに悪くないし、部分的修正でいいと思いますが、ここの「目的」だけ何とかして欲しい。
 いま千野さんがおっしゃったこと、それから小島さんがおっしゃったことに同感です。日本がいままでやってきたこと、他のドナーにはないことを入れて、いかにも日本らしいものをここに書いて頂けば、他のところは部分的修正でも何とか耐え得るのではないかと思います。

(荒木委員) もっともなご意見だと思います。ODA総合戦略会議のODA大綱の見直しのタスクフォースから、またODA総合戦略会議に戻ってきて、それからまた各省からの意見を聞いて、そして各党からの意見を聞いて、こういうものを全部入れていくと長くなる。こうなってくると思います。
 したがって、外務省は調整役として主体的な役割を果たすわけですから、政府の一体性ということから言っても、やはりかなり踏み込んで中心的な調整役を果たす外務省が書き上げることが大切なのであって、そのために我々もアドバイザーとしていろいろ助っ人をしているわけです。そういう点では私もずっと最初から関係しているものですから、今さらああだ、こうだと言う筋合いもないのですが、結局、最初の文章はもうちょっと単純化されたものだったのです。しかし1回1回出てくるたびに見ていると、やはりだんだんだんだん増えていって、最後にはみんなのお叱りを頂くような今の状態になってしまったというのが、最初から関係してきた人間としてはいささか残念至極という感じでございます。
 まさに日本の個性がないというお話がありましたが、これは議論する一番前のタスクの時点からこの文章は主体的に全部書いていかないといけない。世界に向かって日本の理念とか考え方、哲学を披露するということが大切なのであって、それを国民が待っているということが一つ。そういう考え方に基づいて、今何故このODA大綱の見直しをするかという原点に立つと、私は全般についてはそういう意見で結構ですが、もう少し文章を直すという前提ですが、やはり効果的、効率的というか、予算の少ない時代にあって予算がちゃんとうまく使われているのかどうか、役立っているのかどうかということをもう少し詰める必要があると思います。
 詰めるという点においては、4ページの「援助政策の立案及び実施」をこれだけ書き込んだということは私は非常に画期的なことだと思います。このへんのところが縦軸で動いている日本のODA政策を一元的にしていこうという流れを確立する源泉であり、このへんをちゃんとやらないと最初言った理念も生かされない。これをちゃんと大綱の中に盛り込んで関係者一同、あとから勝手なことを言わせないためにはこれが非常に大切であると私は理解しておりまして、もっぱら現場に立ってこの点について二、三コメントをしたいと思います。
 全体としてこのへんの流れは重点化が一つの大きな議題になっていました。ですからこの政策、立案、および実施は基本的には援助の重点化のためにやっていくべきで、そのために大野委員も言ったように、重点地域の問題でも重点化のことが非常に薄れている。この大綱を作るときに重点化をいかに図っていくかがこれから先、日本の援助がそう右肩上がりで行かない時代にあって、いかに援助資金を有効に活用していくかというのが大きな課題だったわけですから、その点が流れとしてちょっと抜けているのではないか。
 具体的に申しますと、4ページの「援助政策の立案及び実施体制」の(3)のところの「(3)政府と実施機関の連携」とありますが、これは役割と責任分担を明快にすることは結構ですが、「また実施機関相互の連携を強化する」というのはたぶんJICAとJBICの連携だと思いますが、現実にはこのあり方は現場から見ると非常に問題がある。連携が本当にできるのかということが議論になっており、このあり方はやはり見直すということが非常に重要だと思います。
 それから「国民参加の拡大」というところで、前も議論があった人材育成と開発研究ですが、この人材育成というのは一般的な人材の育成と、実施に関して非常にプロフェショナルな人材を育成しなければならないということで、これはセパレートして、人材育成は実施に入れるべきではないか。開発研究は一般の研究として「国民参加の拡大」の中に入れてもいいですし、同じ人材育成を書いたとしても、ここに書く人材育成と実施に関する人材育成は、ちょっと趣旨の違ったかたちで書く必要があるのではないかということを指摘したいと思います。
 3番目は、5ページの一番最後の「効果的実施のために必要な事項」ということで、「(2)適正な手続きの確保」とあります。一番最後のところに「価格面において適正かつ効率的な調達が行われるよう努める」とありますが、これは価格面において適正かつ効率的というよりも、私はやはり援助効果を失わない調達が必要であって、悪かろう安かろうということの調達で、ただ値段が安ければいいというものではない。その辺のところは援助業務の実態としてはちゃんと考えていく必要がある。その辺を一つ指摘したいと思います。効率を上げればいいというものではなくて、やはり援助効果を上げるための調達が行われなければならないということが書き込まれるべきではないかと、私はそうご指摘申し上げたいと思います。以上です。

(渡辺議長代理) 荒木さん、どうもありがとうございました。伊藤さん、砂川さんと手が挙がっていますが、その順序でお話しください。

(伊藤委員) 実は私ももうここまで来て、あまり大きな修正を求めるような意見は控えたほうがいいと思って躊躇したのですが、確かに「理念」の部分は私も非常に寂しく感じた次第です。普通は理念と言いますと、実現したい一つの夢、将来像です。我々は、ODAを通してどういった国際社会を樹立したいのかという考えを、もっと強く打ち出す必要があるのではないか。
 我々NGO関係者の間では、理念についてはよく議論するのですが、例えば、貧困から脱却した公正な社会、人権の守られている社会、豊かな自然環境を保障する社会とか。そういった国際社会を実現することによって日本社会の繁栄、安定につながるのだといったような理念を、打ち出す必要があるのではないでしょうか。
 前回の会合でも申し上げましたように、今度のODA大綱の中の基本方針で、第1番目に開発途上国の自助努力支援ということを謳っています。これは2ページ目に書かれていますが、「良い統治(グッド・ガバナンス)に基づく開発途上国の自助努力を支援するため、これらの国の人づくり、制度整備や経済社会基盤の構築に協力することは、我が国ODAの最も重要な考え方である。このため、開発途上国の自主性(オーナーシップ)を尊重し、その開発戦略を重視する」と謳っているわけです。
 しかし、この基本方針を実施に移すべく、4ページ目から始まる「援助政策の立案及び実施」の中に、開発途上国の「オーナーシップ」を尊重するような連携についての記述がない。これは(4)の「政策協議の強化」の中で読み込めるのかなと思い何度も読み返してみましたが、明確に表現されていない。途中からですが、読ませて頂きますと、「(4)政策協議の強化」の中の3行目からですが、「開発途上国の開発政策と我が国の援助政策の調整を図る。、、、、また開発途上国の案件の形成、実施の面も含めて」とあるからここに入っているのかと思って次を読んでみたのですが、「実施の面も含めて政策及び制度の改善のための努力を我が国ODAの実施にあたって考慮するとともに、そのような努力を支援するための取り組みを行う」という表現で非常にわかりづらい。浅沼委員もこの表現の修正をおっしゃっていたと思うのですが、この部分は何を言いたいのか分からないい。
 一方、次の5番目の「政策の決定過程・実施における現地機能の強化」という小項目の中身を見る限りは、これは日本の援助関係機関の機能を強化すると読み取れるわけですが、最後の部分にある、「その際、現地関係者を通じて現地の経済社会状況等を十分把握する」の中の「現地関係者を通じて」というところに、私が前回提案した現地の人々やNGO、そして開発関係機関との連携強化が含められたのかなと勝手に解釈したのですが、確かに磯田委員が指摘されたように、非常にあいまいです。
 また、(6)に「援助関係者との連携」がありますが、これは他の援助国や国際機関など援助する側の援助関係者と読み取らざるを得ない。
 そうすると、開発途上国の「オーナーシップ」を尊重すべく相手国の関係機関との連携については、どこにも表現されていないのです。本来なら、基本方針の中に開発途上国の相手国の「オーナーシップ」を謳っているのなら、なぜ実施体制の中において相手国の関係機関との連携というものを謳わないのか。これほど重要な基本方針を打ち立てているのですから、実施体制の記述の中で独立した項目で「相手国の政府、関係機関等との連携」を謳うべきではないかと思います。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。砂川さん、どうぞ。

(砂川委員) この会議での議論がどの程度このODA大綱(案)に反映されているかという点から見ますと、十分踏まえて書いて頂いていると思います。特に前回6月末での議論は殆ど全部ここに反映されていると思うのですが、1つ全く触れられていないことと、あまり議論されなかったけれどもここにしっかり入っていることがあると思います。触れられていない点は草野さんがおっしゃった、今までのODAの成果です。今までの実績を反省点も含めてしっかりと書いていただきたい。それがおそらく日本内外に向けての重要なメッセージになると思います。
 それから我々が余り議論しなかったのは、今反省を込めて申し上げるのですが、いわゆる重点化のところで、特に重点地域の問題です。アジアに重点をおいていこうとのコンセンサスはあったけれどもどこまでがアジアか、アジアの中でも重点地域があるのか、までは議論をしてなかったと思います。しかしこの大綱案では東アジアが前面に出てきています。そこで東アジアを重点地域とするならばそれなりにその事由を書く必要があると思います。小島さんがおっしゃったように、東アジアは協力と統合が本格化している地域であって、その方向は日本にとって望ましく、日本はODAを使ってこれを積極的に加速させていく。これには同感なのですが、こういう意味合いがあるならば、これを重点分野のところで述べてこの重点地域と重点分野とをもう少し関連付けたらどうかと思います。
 重点分野にも四つの項目が挙げられており、貧困削減が一番初めに出てきます。この貧困削減と言っても、どのレベルの貧困国を重点地域として考えられているのでしょうか。我が国のODA実績から見ると、最貧国はあまり大きなウェートを占めていないと思うのですが、その次の段階にある貧困国をむしろ考えているのでしょうか。重点分野で貧困削減を挙げる一方で、重点地域で東アジアを挙げるのはどうもしっくりしない。
 したがって重点分野のところで第一に貧困削減と言うのであるならば、我々は最貧国、それもアフリカの最貧国の貧困削減に重点を置くのだというところを主張してはどうか。すなわち書き方として「重点課題」のところで重点地域以外の分野の地域のこともカバーをして書けば、重点分野と重点地域がいわば整合性が取れていくのではないかと思います。同様に「重点課題」の4番目の「平和の構築」のところでも、平和の構築という分野においてはどの地域の紛争国を想定して、そこにどんな支援をやっていくのだという観点を少し補足すると、ここに一つの結びつきが出てくるのではないかと思います。小島さんがおっしゃったとおり東アジアを前面に出すのであるならば、おっしゃったような理由をきっちりとつける。それがその地域での重点分野になるのだと思います。その他の地域は、準重点地域と言うのはおかしいのでしょうが、その次のレベルの重要性がある地域なのだという意味合いを込めていくと、重点化がもう少し明確になってくるのではないかと思います。以上です。

(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。千野さん。

(千野委員) 一言だけ補足的に申し上げますと、2ページ目の「基本方針」からはこのままでよろしいのではないかと思います。ですから問題はこの「理念」のところを、大野委員とここもまた一致するのですが、初めに「目的」の部分を一つにまとめてメッセージ性を強くすれば、以下は「2基本方針」となっているのを、「1.基本方針」「2.重点課題」とやっていくといいのかなということを、いまさら言っても遅いと言われればそれまでですが、そんな気がいたします。

(渡辺議長代理) どうぞ、大野さん。

(大野委員) いまの提案に賛成します。僕は4月に、自分で勝手に「基本理念」の部分の私案をつくって、一部の方に見て頂きました。自画自賛になりますが、今これを読んで見ると東アジアのこと、それから我が国がやってきたこと、日本としてやりたいことを僕は書いたつもりです。私の具体的な提案はそちらを見て頂きたい。

(渡辺議長代理) それは大変ありがたいですね。

(大野委員) つまり僕が言いたかったことは今でもかわらず、全部4月に出した文章に書いてあるので、他の部分はおっしゃったように部分修正でよいから、もう1度それを検討して頂きたいと思います。

(渡辺議長代理) ありがとうございます。では磯田さん、どうぞ。

(磯田委員) いまの「目的」の書きぶりの話と、砂川委員の重点化の話とちょっと関連もするのですが、いまお話が出ているように日本のODAが一体何を目的にするかというメッセージ性をはっきり訴える必要があるということに関して私も賛成ではあります。その中で前回から今までいくつか議論がありましたような、特に後段に書いてあるような日本のためにやるという部分をすごく前面に出すというのではなくて、やはりその中にまず第一義的には国際的に抱えている課題に日本としてきちっと対応していくということが書かれるべきだと思っています。今回ここの中でもそういう書き振りにはなっているので、私はちょっとした微調整をする中で、かなりそれはできるのではないかと思っています。つまり日本がということをすごく出すというよりも、それなりに応分にきちっとして日本としてそこにイニシアティブを取っていくのだということをアピールするのだって十分なメッセージ性だと私は思っています。そういう意味ではそういう部分がここには書かれていると私は評価しているものです。
 同じように、では重点化と言ったときに、貧困削減など四つの課題が出ていますが、本来それを本当に考えているのかどうか。先ほどの、砂川委員から、負債を見ると最貧国のウェイトは高くないとの発言がありましたが、それはそうとしても、最貧国のことを考えているのか、いないのかということは、非常に微妙な問題になります。日本は国際的にもTICADも含めて、こういう部分はきちっとイニシアティブを取っていくのだとすでに宣言しているものもあるわけです。そういったものをODA大綱の中できちっと位置づけていかないと非常におかしなことになると思います。
 ですから日本の国民向けと言うか、納税者といってもいろいろな方がいると思うのですが、それ向けのものだけではなくてと言ったら変な言い方ですが、やはりそうではなくてきちっとすでにアピールしている部分、世界に対してきちっと責任を果たしていき、そういう期待もあるのだということをきちっと盛り込んでいくということを私はもう1回確認させていただいたほうがいいのではないかと非常に強く思っています。
 では重点課題からいくとどういう地域になっていくのか、どういう国になっていくのか、そこに一貫性があって示されていれば、これは非常に明確だと思うのですが、どうも逆転している。地域が先にあって、そこから重点だけは一応挙げてみましたとなるから、そこに非常に一貫性がない。ではODA大綱を考えるときに地域が先にあって、その地域だったら何と重点を考えていくかとなると、それはやはり本末が逆転している発想だと私は思います。ですから、そこらへんはメッセージ性、あるいは日本の国民向けの理解を得るための書きぶりということが強調されていますが、そこは論理的な一貫性がきちっと書かれていないと、メッセージ性は逆に低くなるのではないかという懸念をいたします。以上です。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。

(草野委員) 「目的」のところで、これは前回も申し上げたのですが、残念ながら採用されておりません。いま隣の小島先生とお話をしましたところ、彼も同じ考えだということで改めてお願いをするのですが、「目的」の一番下から3行目の「平和国家である我が国にとって」と書かれていますが、「平和国家」なのだろうかという疑問をこの前申し上げたのですが、これは「平和構築に努力をする日本」であるとか、あるいは「平和を目指す日本」であるということであれば、十分理解できるのですが、「平和国家である我が国にとって」というのは何かおかしい。皆さん、違和感をお持ちにならないのは非常に不思議でならない。

(小島委員) それに関連して、これを英語で訳すと「ピース・ラビング・ネーション」「平和を愛する国」、それはいいでしょうけれども、やはり愛するのだったら、平和を求める、平和を闘い取る、そういうニュアンスを込めてちゃんと説明する必要があるのではないか。私から言わせると、平和国家というのは意味ないですよね。

(草野委員) 逆に言うとそこはメッセージ性があるような気がして、私は違和感を覚える。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。これでもちろん議論が尽きたとは思いませんけれども、ひとわたり皆さんのご意見をかなり率直なかたちで聞くことができました。いくつか質問を含めてコメントがあったのですが、あまり時間もありませんから、細部に入らず基本的なことのみを答えられる範囲でお答え頂きたいと思います。あまりフィードバックをやっている時間がなくなってきておりますので、できるだけ効率的な収め方をしたいわけです。

(古田経済協力局長) いろいろご意見をありがとうございました。私もこのODA大綱の見直しというのは見直された大綱の仕上がりもさることながら、このプロセスの中でここ数年ODAについて、あるいはODA政策に対していろいろな疑問、批判が投げかけられたことに対してどのように再構築していくかという非常に大事な機会だということで、積極的に各方面からご意見をいただいているわけですが、議論をすればするほど、これは尽きないなという感想を持つわけでございます。
 今日いただいたご意見の中で、まず浅沼先生からのご質問ですが、不正・腐敗のところはここに書いた位置づけからしますと我が国の実施体制の問題として書いておりますので、基本的には我が国側のことをインプライしているわけです。ただその実行上、調達のガイドラインとかいろいろなものを設けており、それが相手国に対する一つの縛りになっている部分もありますので、そういった意味では間接的には相手国も縛っているということですが、直接意図しているのはこちらのシステムの問題としていま考えているということです。
 それからいろいろなご意見を頂きまして、長くなったり短くなったり、それから各パーツの関連性をつけるためにこれこれを考慮してとか、これこれにのっとりとか、これこれとの関連でと書くとまた増えるとか、必ずしも図式的にきれいに1章、2章、3章、その中の1、2、3と書き分けるというのは大変難しくて、そういう意味ではある程度割り切りを持ちながら書いてきているわけです。
 今日のご意見を踏まえて、一方で重複を避けながら、他方でそれぞれのパーツの関連性をきちっと付言する。これは大変難しい作業ですが、もう1回ずっと見渡してみたいと思います。とりわけ最も難しい宿題は、重点地域と重点分野の整合性というところで、これは誠にごもっともなご指摘ですが、これをつないだ途端に、今度はこの部分が欠けているのではないかとか、ここはこうしないのかとかということが直ちに出てきそうな気もします。図式化すればするほど分かりやすいのですが、他方でそこでカバーできないものもまた出てくるということで、またちょっと悩んでみたいと思います。工夫はしてみます。
 それから全体の「前書き」と「目的」をどうするかで、これもいろいろ議論があるところで、私どもも前書きをなくそうかなと思った時期もあるのです。ただ、今何故この大綱の見直しかということは前書きのところで書いて、そしてその理念そのものは目的のところできちっと書こうということで、そういう割り切りで今書き起こさせて頂いております。そういう整理がおかしいということでなければ、これを維持しながらご指摘のあったこれまでの成果などをどちらにどう盛り込んだらメッセージ性が強くなるのかということは考えたいと思っています。
 1の「目的」のところが一番議論のあるところですし、最もアピールすべきところなので、諸先生方の議論も念頭に、また改めて大野先生のご提案もじっくり読ませて頂いて検討させて頂きたいと思います。ただ、これを書いていますのは特に最初の2行についてご議論がございましたが、「平和と発展に貢献する」ということは、目的のまず第一前提で、そのあとは「これを通じて資する」と書いてあるわけなので、この文章で平和と発展に貢献する手段だとは私どもは考えておりません。その文意が伝わればそれで結構ですし、もっと明確に書けるのであればちょっと考えてみたいと思います。ここに議論が集中しましたので、そこはそういう趣旨であると思っております。
 平和国家論議がありましたが、これは要するに、軍事的な手段を積極的に用いて外交を展開していくということではない我が国という含意もあります。単に平和を希求するだけではなくて、手段としてのODAの意義を強調するためにこう言っておりますので、そのへんが伝わるかどうかもうちょっと検討してみますが、そういう趣旨でございます。  「重点地域」のところはおっしゃるとおり、私どもは東アジア地域を重点と考えているつもりですが、ただ他方でイラクがあり、アフガニスタンがあり、この秋にはTICADがあり、あるいは島サミットを日本がそれなりにリーダーシップを取って実績を積み重ねております。そういったことはやはり書いておくべきだろうということで、その趣旨を各地域について一言ずつ付言しているわけです。その結果として東アジア地域が弱くなっているということでありますれば、先ほどいくつか修文のご指摘がありましたが、そこを明確にする方向で書き直すことは考えてみたいと思っております。
 それから「政策協議」のところは確かに読んでみますと、ややこちらの都合が強すぎるかなという気もいたしますので、先ほどご指摘がありましたように対話をしながら作っていくのだというニュアンスを、もうちょっと織り込めたらと思っております。
 「現地機能の強化」のところは現地関係者の解釈とかいろいろございましたが、(6)で「海外における同様の関係者との連携を図る」ということもはっきり書いているわけで、このへんは読みにくいところがあればもう少し文言は注意してみますが、できるだけ現地に任せるということと、幅広く関係者と連携していくというのがエッセンスですので、そこはご理解いただければと思っております。
 「政策評価」のところは、政策評価という言葉を使いたいということが前提にありましたので、結果的に読みづらくなっていると思います。牟田先生のご指摘を踏まえて少し修飾語をつけるなり工夫してみたいと思います。
 いろいろな修文案を頂きましたし、それぞれ大変貴重なご指摘でございますし、まだ数日時間はございますので、直せるところはできるだけ直させて頂きたいと思っております。

(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。黙ってずっと伺っていたのですが、率直に言っておおむね高い評価が得られたのではないかと私は受け取りました。特に2ページの「基本方針」以下についてはテクニカルな意味ではいろいろなコメントがありまして、聞くべき意見が多かったとは思います。これから相談しながら修文すべきところは修文する努力をします。
 非常に多く問題が出たのは「前書き」、ならびに「目的」のところであろうと思います。要するに何故今の時点でODAの大綱を見直すのか、なぜいまという点が胸に響くかたちで伝わってこないのではないかというご意見が、私には非常に印象強く思われました。今まで日本がやってきたODAの成果をも踏まえて、このへんをもう少しメッセージ性の強いものとすべきだというご意見がありましたが、そういったことをも考慮して修文を重ねてみたいと思います。
 しかし他方では、これを政府原案として公開してパブリックコメントに回さなければならないという事情がございます。ですからこれから私と事務局で修正案を作りますが、それをさらに議論して頂くためにこうやって集まって頂く時間が残念ながらありません。もちろん修正案は皆さんにお送りいたしますので、できるだけ早いリスポンスを頂きたい。
 これが最終の最終ではありません。まだコメントを頂く機会がありますので、今回は私どものほうに議長代理、事務局の一任というかたちでお任せ願えないでしょうか。その案を公聴会のほうに回すということでお許し願えますでしょうか。そうしないとちょっと前に進みがたいということがございますので、この点、なにとぞよろしくお願い申し上げます。ご異論はございましょうか。

(伊藤委員) 古田局長がおっしゃられたことについて、コメントさせて頂きたいと思います。古田局長が開発途上国の関係者との連携について、5ページの「(6)援助関係者との連携」の中に読み込めるという趣旨のご発言をされました。しかし、できましたら、「援助関係者・相手国関係者との連携」というふうに書き加えていただければ、理解できるのですが。そうでないと小見出しと中身が違うという印象を受けます。

(渡辺議長代理) 伊藤さん、どうもありがとうございました。では議論は今日はここでやめさせて頂きますが、皆様のお手元に回っているドキュメントの最後にホームページに寄せられた各界の意見が載っております。これはいちいちご紹介はしませんが、ご自身でそれぞれご覧になっていただければと思います。

(磯田委員) いまの点ですが、これはちょっと事務局ともやりとりをした経緯があるのですが、最近になって投稿した文が一時ホームページ上何かトラブルがあって、きちっと事務局のほうに伝わっていなかったということで漏れている件があるようです。それに対するメッセージもいま書いていただいていますが、それに対してまたその間、漏れた人たちからの追加投稿がどうも入っていないように見受けられます。
 それともう一つ、それよりずっと前の12月にも、実は私の友人が投稿したものをCCで私にくださった。そのCCでくれていますので本体のアドレスもきちっと書いてあってoda.senryaku@mofa.go.jpが入っているものがここには入っていないので、私はあそこに書き込んでいるにもかかわらず届いていないのか、何かそういう問題があることをちょっと懸念いたします。
 今回パブリックコメントを取るのもそういうやり方でやられるわけですが、そういうことがありますときちっとパブリックコメントを取ったということにならないと言うのでしょうか、そのへんが非常に懸念されます。それからもう1点、去年、初めのときにこの書き込みに対して、書き込まれた方への返事と言うのでしょうか、沼に染み込んだようでどうなったかわからないという感じになっているのか、これに対して何かリスポンスをされているのか、あるいはそれはどうやってされるのかということについて何かあればお聞かせ頂きたい。

(須永調査計画課長) リスポンスは今後、パブリックコメントをやりますので、その機会にもう1度意見を出していただいて、それに対してきちんとやりたいと思います。

(磯田委員) 私が伺いましたのはいままでの分に関してです。

(須永調査計画課長) これはリスポンスをしておりません。

(渡辺議長代理) コメントはたくさん来ていますが、そのコメントにいちいちコメントするという手間暇はございませんので、やるにしても1度全体に対して我々はこう考えているという形の、コメントしてくれた個々の人には少々不満足になるかもしれませんが、やるにしてもそういうかたちにならざるを得ないのではないでしょうか。

(磯田委員) 個別にできないというのはわかりますけれども、一応その方針といったものを戦略会議できちっと決めておく必要があると私は思います。戦略会議のホームページですので、まとめて、たとえば毎月ごとにある程度簡単なコメントでも出すとか、何か方針が必要だと思っております。

(渡辺議長代理) 見直しに対する最終の審議の時間がまだありますので今日はちょっと控えざるを得ません。浅沼さん。

(浅沼委員) 実質的な討論が今日で最後になりますので、砂川さんと古田局長がおっしゃった重点地域と重点分野の問題について私自身は心の中でどういうふうに整理しているかちょっと申し上げさせてください。手短にやります。
 ここでずっと大綱を書くときに国益が問題になって、国益を国際経済社会の全体の安定と発展に見出した。その国際経済社会の中で日本が置かれた立場があるわけですから、それはまさにマルチのシステムとして動いているものと同時に、バイやリージョナルな関係が存在するわけです。そこからアジアの重点地域を我々は論理的に引っ張り出してきたわけです。だからバイの関係においてはそこで地域的な重点が出てくる。
 そのあとでは今度はどう考えても国別の援助戦略自体がODA活動をバイの関係においてはドライブするわけです。それでこの重点項目とは何かと言うと、地域を決定したあとで、その地域内でこういう重点があるのではないですかという位置づけになるような気がします。もう一つ並行的に国際経済体制自体があるわけですから、今度はグローバルな、インターナショナルなイシューが出てくるわけです。そこでは重点がドライブする。これは全体の問題ですから地域ではなくて重点がドライブする。このように私の頭の中では重点地域と重点分野の問題を整理しておりました。ここで書かれたものはそういう考え方に基づいているのではないかと私は思いますが、というのが私の意見です。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。短くお願いします。

(大野委員) 浅沼さんの言う点もありますが、僕は重点分野と重点地域はそうきれいに分けられないと思う。それは古田局長がおっしゃったとおりで、ある程度別々に書いておいて、その関連はやりながら考えるとしたほうが僕はいいと思います。

(渡辺議長代理) いずれにしてもこれは大綱ですから、どこまで踏み込むか、自ずと制限があろうかと思います。大綱に基づいて、中期政策、国別援助計画等、個別のいろいろな計画を作っていくわけです。これら相互の関係に整合性をもった文案に努めたいと思います。確かに非常に細かく踏み込み過ぎたところもあるし、ざっくりのところもあるわけですが、これは苦労せざるを得ないところもであったわけです。
 今日は外務大臣が来てくださっておりますので、一言ごあいさつと言いますか、ご意見を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

(川口外務大臣) ご無沙汰申し上げております。今日も朝から閣議がありまして、途中からしかご意見を伺うことができなくて残念に思っています。ずっと前もそうでしたけれども、非常に熱のこもった経済協力の問題を、それぞれの方が真剣に取り組んで頂いていて、真剣に向き合って頂いて、その上でのご発言だということを伺いながら改めて強く感じました。
 一番大きな話として非常に自由闊達なご議論の中で「理念」、「目的」のところで大変にいろいろなご示唆をいただいたと思います。確かにこうやって、しかもその前の開発援助大綱と比べてみても、ノーベル文学賞をもらう人の書いた文章ではないなということは改めて見ながら思っておりました。
 こういう理念についての私の感想ですが、その書き方の難しさは確かにあって、これは非常に重要な部分であるけれども、できるだけ多くの人に共有をされなければいけないということでもあると思います。これは非常にありがたいことですが、特に最近、援助に対してのいろいろな批判、あるいは賛成意見、やり方についての意見、さまざまなことがある中で、国民の方お一人お一人が援助がこうあるべきであるということについて意見をお持ちになってきていらっしゃる。これはすばらしいことだと思いますし、国民の方だけではなくて霞が関も永田町もみんなご意見持っているということを踏まえて、どのように大勢の方に共有をしていただけるものを書くかということが、一つの苦心があった点であると思います。
 言い換えてみますと、日本がコンセンサス社会であって、みんなにコンセンサスができた、みんながコンセンサスを共有できたときに、初めて非常に効率的に動ける社会であるという日本社会のあり方が、図らずもここで一つの縮図的に出ているというところでもあるような気もいたします。ここは工夫できるところは工夫したいと思いますが、どこかでトレードオフ関係があって、そこをどこでバランスをうまく取っていくかという問題だろうと思います。
 それから成果について、確かに胸を張ってもっと書いてもよかったかなという気もしています。私は2週間前にASEANの会議に出ていまして、プノンペンでカンボジアのフンセン首相とお会いしました。日本の援助について非常に期待を表明されていまして、今日は持ってくればよかったのですが、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、カンボジアのメコン川にかかる橋があって、これは「きずな橋」と日本語で名付けられている橋です。カンボジアの切手、それから500リエールのお札にその写真が出ています。カンボジアの切手には「Japanese Grant Aid」と書いてあってその橋が出ている。これは一例ですが、私は中国のトップの人とお会いをしたときにも日本の援助について非常にありがたいというお話もありました。日本の援助が非常に期待を持たれ、そしてそれが世界を動かしていく、前進をさせていくところの力になっているという認識がみんなに持たれているということを、日本はもっと誇りに思うべきだろうと思います。
 細かい点についてですが、国民のあり方について、これは千野委員だったでしょうか、必要な情報を国民から聴取をするとか、そういう書き方に違和感を覚えるということもあって、私自身も違和感を覚える言葉です。そういった点も含めて見直す中で、どうやったら人の心をこれで揺さぶることができるようにできるか、そういう視点を持ちながら最後、事務方に工夫をしてもらいたいと思っています。
 改めて、いつもながら本当に経済協力のことについて心からこれを大事だと思い、心からこれを良くしたいと思っていただいている皆様のご意見を大変にありがたく伺わせて頂きました。毎回、毎回出席ができない状況であるのが大変に残念でございます。どうもありがとうございました。

(渡辺議長代理) 大臣、どうもありがとうございました。それでは今日は以上でございます。次回会合は8月の下旬を予定しております。まだ日程は決まっておりません。暑い時期で恐縮ですが、いずれ調整をさせて頂いた日に御出席お願いします。ご協力ありがとうございました。

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