(渡辺議長代理) | 皆様おはようございます。早いもので、この会議ももう10回目になりました。ただいまからODA総合戦略会議を開催したいと思います。 きょうの議題ですが、大きく分ければ三つございます。一つは、我々の戦略会議のメインテーマであります国別援助計画についてです。私の隣にいらっしゃる絵所秀紀先生が、対スリランカ国別援助計画について既に大変なお仕事をされまして、中間報告の段階にまでもってきていただきましたので、その概要をお話ししていただきます。ご報告を受けていろいろなご注文があれば出していただきたい。これが1番目のテーマの1です。 1番目のテーマの2は、平島成望先生より対パキスタン国別援助計画の策定について報告していただきます。これは今から始まるテーマでございますので、今後の作業方針を主査としての立場から報告していただく、これについてもいろいろご注文があればお願いしたい。これが1の2であります。 1の3は、国別援助計画の新規策定対象国についてです。新規国はインドネシア、インド、パキスタン、モンゴルであることはご承知のとおりでありますが、それぞれのタスクフォース構成が最終的に決まりましたので、これを私の方から報告させていただきます。これが1の3です。 2番目が懸案のODA大綱の見直しでございます。見直しにつきましては前回のこの会議以降政府部内、政党、NGOその他いろいろな場の討議を踏まえて、前回から今回までの間に進捗がございました。そういったことを含めて、作業状況を含めた説明をいただきます。その後で、ここで自由討議をしたい。これが2番目。最後に事務局から若干の報告がございます。 それでは、絵所先生の方から、対スリランカ国別援助計画の策定についての中間報告をお願いしたいと思います。お手元に資料2が回っておりますが、それをご参照になりながら先生の話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。 |
(絵所主査) | 絵所でございます。まず最初に今までどういうことをやってきたか、今後の日程について簡単にお話しします。 昨年12月に委員会が立ち上がりまして、ガイドラインのドラフトのドラフトを作成しまして、今年の1月に関係省庁の個別ヒアリングを行いました。2月にメンバーでスリランカを訪問いたしまして、スリランカ政府等々とドラフトのドラフトに基づいて議論しまして、北部まで行ってまいりました。4月に、それを踏まえまして、第1ドラフトを作成しまして、NGO、企業、識者の方々からヒアリングをいたしました。、大変盛況で 100人程度の方が参加してくださいました。いろんな意見をいただきまして、それを踏まえまして、今お手元にあるものがそれでありますけれども、第2次ドラフトをつくりまして、来週もう一度関係省庁の合同協議をいたします。 ご承知のとおり、6月の9、10日とスリランカ和平復興会議が予定されています。。ただ、ご案内のとおり、事態はまだ流動的であります。うまくいくのかわかりませんけれども、その様子を見たいと思っております。復興会議時に、スリランカに行きましても誰もおりませんので、東京会議が終わって6月の末ぐらいにもう一度最終ドラフトをもってスリランカの政府とコンサルテーションを行いたいと思っています。ですから、この戦略会議への最終報告は、7月にずれ込む可能性があります。最初は6月末というお話でしたけれども、東京会議の関係がありまして、ほぼ1か月ぐらい遅れるのではないかと思います。 第2次ドラフトの構成がお手元にありますが、一番最後のページに、牟田先生が作ってくださったスリランカ国別援助目標体系図というすばらしい資料がございまして、それを見ると、全体の構成がわかりやすくなっているのではないかと思います。ごく簡単に言いますと、二本柱というのを考えておりまして、平和の定着に対して貢献するということと、もう少し長期の開発目標に沿った開発を支援していく、こういう二つの柱から成り立っております。双方の目的を機械的に分けているわけではなくて、平和の定着が経済発展を促進するし、経済発展を促進することが平和の定着につながるのではないか、つながるようにしましょうというアイディアであります。 平和の定着の方は、様々な格差が大きな紛争の原因になっているのではないかと思われますので、その格差の解消という点を協調しております。重点セクターとしては、人道・復旧支援、これはすぐにできるものです。国別援助計画に従って実行するとなると、早くとも来年度からということになりますが、この前、ジャフナに行った感じでは、今すぐにでもやることはたくさんあるというのが事実でありまして、援助計画の完成を待たずにどんどんやってほしいという印象をもっています。しかし、実際には北部・東部はまだ相当荒れていますから、やれと言ってもそう簡単にできないところもございます。差し当たっては地雷の撤去とか、避難民の問題とか、たくさんの問題を抱えております。和平交渉の進展にもよる問題でありますので、少し事態が落ちついてきて、実際に腰を落ちつけていろんな支援ができるということになれば、国づくりに対する支援、あるいは生活基盤の整備をなるべく早いうちに、しかし状況を見ながら、これは難しいところですけれども、状況を見ないでやると途中でだめになってしまうのがたくさんありますものですから、慎重に、しかし迅速にという難しい仕事になるかと思いますけれども、やっていくべきではないかと考えております。 二つ目は、長期の開発ビジョンに基づいた支援です。スリランカ政府が「リゲイニング・スリランカ」という今後5年間をカバーする中・長期の開発ビジョンを昨年の12月に閣議決定いたしましたので、それを踏まえまして、我々も輸出主導産業の育成というのを考えております。もう一つは観光開発、あるいは環境開発と言いたいところですけれども、その二つの柱で、ともかく外貨を獲得するような経済システムにもっていくことが必要だし、その可能性は非常に高い。ともかく平和が達成できれば、その可能性は非常に高いと考えております。 輸出主導産業の育成に関しては、経済基盤の整備、輸出促進政策の支援、生産性の向上、人的資源の開発という4本の柱を考えておりまして、観光・環境のほうでは、エコツーリズム、あるいは環境保全型の開発に力点を置くことによって、十分外貨獲得できるようなシステムができるのではないかと考えております。 時間がございませんので概要はそんなことですが、最後の第2ドラフトの10ページのところでありますけれども、前回のときもちょっとご報告させてもらいましたけれども、日本はスリンランカに対する圧倒的なトップドナーでありますから、責任もあるし、リーダーシップをとっていく必要があるし、とれる国ではないかというふうに思っておるわけでありますが、それをどうやって実行するかということが難しいところがあります。 実施体制を格段に強化しないと、資金はたくさん出してはおりますけれども、なかなか上手にというか、効果がある形で成し遂げることは非常に難しい状態であります。政治的にセンシティブな国でありますので、相当難しい仕事をこなせるようなシステムを恒常的につくっていく必要がどうしてもあると思っています。特にセクターレベルでの専門家を中心にした能力の形成が不可欠です。セクター専門家を中心にして、マクロ経済レヴェルも、個別のプロジェクトも見ることができる体制をつくることが必要ではないかというふうに思っておりまして、その点だけ最後に強調しておきたいと思います。以上です。 |
(渡辺議長代理) | 大変コンパクトでわかりやすい対スリランカ国別援助計画の概要を伺ったわけでございますけれども、今の段階でいろいろご注文やら、コメントいただければ大変ありがたい。積極的にご発言をどうぞ。 |
(絵所主査) | 一言、すみません。今、お配りしたのは、国別援助計画の全部ではございません。申し訳ございません。いわゆる現状分析の部分と援助のレビューのところがくっついておりません。ガイドラインに相当する部分だけが出ております。今、事務局の方で鋭意現状分析のところと援助のレビューのところを作っていただいておりますので、7月までにはでき上がると思います。 |
(渡辺議長代理) | それでは草野さんどうぞ。 |
(草野委員) | 今、絵所先生が最後に付け加えていただいたので、それで尽きているのかなというふうに思います。が、ドラフトの構成のところを見ましても、今までのレビューの話が出てきていなかったので、この前のモンゴルの国別援助計画のときにも、私、申したんですが、要するにタスクフォース、あるいは専門家の方々というのは、今までの日本のスリランカに対する援助、これも問題点も成果も十分ご存じなわけですね。しかしタックスペイヤーは、これを知らない人が多いわけです。スリランカでいくつか案件が見たことがあるんですけれども、あの肥料工場はどうなっちゃったのかとか、それから草の根のコンピュータの援助は役に立っていたはずなのにというようなことがすぐ思い出されてしまいます。そういう個々のプロジェクトは別にしましても、オーバービューでさらっと開発戦略の失敗に起因するというようなことがどこかに記述がありましたけれども、それを裏付けるような日本のトップドナーとしての援助のこれまでについても、きちんとお書きになっていただけると期待しております。
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(渡辺副議長) | ありがとうございました。大変もっともなご意見だろうと思いますが、それ以外いかがでございましょうか。どうぞ大野さん。 |
(大野委員) | 復興と開発をつなげていくという意味で、ベトナムと比べると非常に不安定な状況でやるということで、その難しさはわかります。それから我が国はトップドナーであるということで、いやが応にも責任がますます大きい。これはちょっと大き過ぎる注文かもしれませんけれども、トップドナーとしてどういうふうなシナリオで復興と開発のタイムスケジュールを組むか。それからほかのドナーも当然入ってくると思うんですね、国際機関その他も。そのコンダクターとして、こういうようなタイムスパンで、こういうふうにやっていったらどうかというシナリオを6月の会議には間に合わないかもしれませんけれども、そういうようなシナリオもある程度あってもいいのではないかと思いました。 もう一つは、非常に具体的な観光、輸出振興を取り上げる。それをパッケージ化していくというのは私も非常にいいと思うのですけれども、普通大体まだ工業が興っていない国というのは、外貨を稼ごうとすると、まず第一に観光というのが出てくる。もう一つは、農水産などの一次産品、あるいは鉱物資源があれば、その強化というものか出てくるんですけれども、今はむしろ製造業と観光を組み合わせるという意味で、農水産を柱にしないというのは少し疑問があるんです。恐らくどこの国でも都市国家でない限りは、国民の大半を占める小規模農民に対する支援というものは必要ではないかと。スリランカで一次産業は考えなくていいということはどうなのかなと思います。 |
(渡辺議長代理) | 今の点に対してどうぞ。 |
(絵所主査) | 一次産品は無視しているわけではございません。8ページのところに、特に紅茶もありますし、いろんな香料もあります。花・果実、それからエビ等の水産物はすごく有望であります。北部は、今、戦闘はございませんけれども、現実には海の方はちっとも変わっていないというか、改善がされておりません。あの辺は海産物が豊富なところです。平和の定着と相当関係してくるとなれば、港もいいですし、相当有望だというふうに考えております。全然無視はしていないつもりです。 |
(大野委員) | コマーシャルな農水産業ということですね。 |
(絵所主査) | そうです。おっしゃるとおりです。輸出産業として十分設備が整えば。ただ、今、冷凍庫も何もみんな壊れている状態ですから、どうにもなりません。早めにそういうのがもし修復できれば、あっと言う間に生活は改善するのだと思っています。逆にタイムスケジュールのご質問が出ましたけれども、これは和平復興に関するところのタイムスケジュールの話ですか。
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(大野委員) | 少しイラクのことが念頭にあるんですけれども。イラクではもちろん日本はトップドナーではないけれども、スリランカにおいては、政治・社会の方の安定に加えて、できれば開発のシナリオというものができないか。それを前提とした上で、何年ぐらいでどういうものをつくっていこうというようなものができないのかということでございます。 |
(絵所主査) | それは正直言ってとても難しいですね。 |
(大野委員) | 今だと復興と長期開発を同時に並べているわけですけれども、タイム感覚がちょっとわからないところがあります。 |
(渡辺議長代理) | スリランカの場合には、日本が圧倒的なトップドナーです。したがって、国別援助計画を立てる場合、日本独自のものというよりは、他の国との連携において強いリーダーシップを持つべきだというご意見ですよね。 |
(大野委員) | そういうことですね。 |
(渡辺議長代理) | 第2次ドラフトよりも、もうちょっと踏み込んだ日本の役割を強調されたらどうかといように伺ったのですが、この点と、何かさらにコメントがありますでしょうか。 |
(絵所主査) | 要するにドナーというのは、日本と世銀とアジ銀しかないと言ってもいいくらいなんです。三大ドナーですから、それほど交渉は難しくないというか、相手がはっきりしているので。スリランカ政府を入れてやれば、基本方針はできる国ではないかというふうに思っております。 |
(渡辺議長代理) | 浅沼さん、磯田さん、伊藤さん、それから砂川さんという順序でコメントください。 |
(浅沼委員) | 大変よく書いていただいて、わかりやすくていいと思います。1点疑問があるのですが、それは5ページのところの(d) という項目があるところなんですが、スリランカの過去の経験からいって、「成長の成果が適切に分配されなかったことが紛争を助長した」と書いてありますが、本当にそうなんでしょうか。もともとタミルは、イギリスの植民地時代には、どちらかというと、プリビリジッド・クラス(特権階級)だったわけですよね。彼らは商才にもたけている。だから、紛争の問題になったのは、彼らに対する差別的な行為を政府がとり始めたことによります。特に民主主義ですから、それに民族問題を持ち込んだバンダラナイケ首相が最初にシンハラ族優遇みたいなものを持ち出したときがその紛争の発端になっているわけですよね。そういう行為が南部のシンハラ・ファンダメンタリストというか、シュープリーマシストというか、それの力を助長してきた。したがって、それが本当に成長の成果が適切に分配されなかったのか、それともスリランカの続けてきた低成長のために、一種のゼロサムゲームに陥ってこういうことになったのか。私は「成長の成果が適切に分配されなかった」ということに対して、本当にそうなのかという疑問が一つあります。 もし、この前提が崩れるとすると、今後の開発政策に対して多少考慮すべき点が出てくるような気がします。この(d) の一番最後のところなんですけれども、「開発の遅れた南部の後進地域に対するバランスのとれた配慮・適正な支援が必要である」と書いてあって、確かにそうなんですけれども、現実に今、輸出産業を何とかしようとしていて、これは一種の工業化戦略なわけです。そのときに、南部が遅れているのはそれなりの理由があって、そこに配慮をして、例えば、そこに過大な投資をしたら投資効率は当然落ちてくるわけですよね。多分そういうジレンマに直面しているんじゃないかという気がします。 一つだけ例を挙げますと、スリランカで、例えば港湾設備を何とか改善しましょうよという話になったときに、すぐに出てくるのはコロンボなのか、それとも、全くの南部じゃないですけれども、ゴールなのかという話ですよね。大体スリランカの人はゴールというわけです。だけど、あんなところに金を投じてポートをつくったって、到底目的とする輸出主導型の工業のためにはあんまりならないわけですよ。あんなところに誰も外資は行かないわけですから。ですから、どうしても当初はコロンボを中心の開発戦略ということ考えなければいけないわけですよね。コロンボ港にしても、コロンボの周辺にしても、まだまだ工業、特に軽工業の立地をするための土地は残っているわけだし、むしろ南部から人がもっと簡単にコロンボのほうに出てくるような労働の流動性を高めてやることが必要なわけですよね。そういう意味で北を開発するのだったら、ジャフナは確かに復旧しなきゃいけないわけですね。だけど、北の開発をするのだったら南部もという発想のところで、一つの多分ジレンマに陥るのだろうという気がするんですよね。そういう気がするのは当初の成長の成果が適切に配分されなかったという命題からなわけなんですけれども、どうでしょうか。 |
(渡辺議長代理) | 質問があるようですから、後でまとめてお答えください。磯田さんお願いします。
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(磯田委員) | 1点質問と1点コメントなんですけれども、質問は、2ページ目のところの一番下に、単純に文章の含意というか、理解が不十分なものでお教えいただきたいという質問です。「外交的なツールとしての開発援助を通じることで『平和の定着』に貢献しうるし」という、ここら辺の文意というのはどういう意味で外交のツールとおっしゃられているのか、お教えいただきたいというのが1点目です。 2点目は、エコツーリズム等観光立国によって外貨をという方向性を一つ出されているんですけれども、その場合に、経済開発との資源や土地をめぐる競合とか、立ち退き、あるいは囲い込みといったような、いわゆる一番豊かな自然の地域に暮らす人々を排除しないというか、そういう問題が出てくるというふうに私は思うんですね。ほかの国でもそういう例があります。ですから、そういう意味でこの国別援助計画を書かれる中に、例えば、そういう環境保護に関する制度のことであるとか、あるいは実施に当たっての、地元住民による公聴会なり何なりということをきちんとやりますといったような、ODAをスリランカにおいて実施するときのプロセスに関することも、この国別援助計画の中に本来は書かれる必要があるのではないか。日本のODAとしては、こういう方針で臨みますということ。単に分野ということだけではなくて、そういう分野をきちんと入れていただきたいという要望です。 |
(渡辺議長代理) | 伊藤さんどうぞ。 |
(伊藤委員) | 2点質問させていただきます。 1点は、3ページ目ですが、「リゲインニング・スリランカ」と題する中・長期開発ビジョンを閣議決定したとありますが、これに関連して、その中で第1部「成長のビジョン」第2部「成長との連携:スリランカの貧困削減戦略」、第3部「行動計画マトリックス」から構成されているとありますけれども、私はこの基本的文書を読む機会はありませんでしたが、スリランカ政府が閣議決定した「成長のビジョン」と「成長との連携:スリランカの貧困削減戦略」の中における住民参加という考え方はどのようにとらえられているのか、そしてNGOとの連携をどうとらえているのか、この点をまずお聞きしたいということ。 それから第2点は、資料の後ろのほうに「スリランカ国別援助目標体系図(第2次案)」というのがあります。これを見ますと「平和構築」というのが援助政策の目標になっていまして、平和構築が二つに分かれて「平和の定着」、「経済発展」とあります。「平和の定着」のほうでは、「民族・地域間格差解消」のもとに「人道・復旧支援」と「生活基盤の整備」、「人道・復旧支援」のほうで、社会的弱者へのケア、基礎生活分野の回復、平和・人権教育の徹底とあります。そこでこれら一連の“平和の定着”の活動におけるNGOの役割というのはどのようにとらえられているのかということ。 一方、「経済発展」のほうですが、これを見る限り、ここに住民参加型の開発を進めようという考えが感じられないですね。要するに経済開発、企業を主体とした経済成長を促していくのだという考え方が基本になっていること。ただ、スリランカは私たちが知る限り、サルボダヤのように非常に大きなNGOがあって、スリランカの3分の1近くの農村をカバーしながら活動している団体もあり、かなり多くのNGOが活躍しているわけですが、そういった内発的、あるいは住民参加型の開発を推進するNGOが参加するような開発に向けて日本の政府開発援助が向けられるのかどうかという、そういった疑問を感じたものですから。以上の2点質問させていただきたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。砂川さんどうぞ。 |
(砂川委員) | 小さい国と言ったら悪いのかもしれませんが、モンゴルと比較して考える上で非常に示唆に富む中間報告でした。有り難うございました。2点お聞きしたいのですが、一つは、一貫性というか、継続性というかの観点ですが、今回緊急復旧のために、緊急支援というべきでしょうか、例えばインフラがめちゃめちゃになっていることに対する緊急援助が必要ということだろうと思います。そこまではいいのですがその次にくる産業なり、あるいは観光なりというようなものにつながるインフラというものが考えられる必要があるのではないでしょうか。この点については、先ほどの浅沼先生の話とか、大野先生の話、あるいは草野先生の話と関連をすると思いますが。 その次に戦略セクターとして、中小企業あるいは産業という話と、観光というものを具体的に目指していかなくてはいけないと思いますが、一次産業というと漁業だ、農業だと日本人にはわかり易いのですが、観光というと、ちょっと分けにくいと思います。私もスリランカに行ったことがありますが、ヨーロッパ人がスリランカを見る目と、日本人が見る目というのは随分違うなという感じがしました。そこで、観光といったときにどこを相手にした観光なのか。日本の観光ということになると、ちょっと距離感があるなという気がします。そこでどこからの観光客を対象にした観光なんだというところが考える必要だろうと思うんです。それによって、例えばインフラの整備も変わってくるのではないかと思います。 それから戦略産業の選択のところの議論ではマクロの議論が先行されますが、そのセクターの政調のためには個別企業が生産性を上げて成長することが前提となるので、企業の成長性に配慮した政策という点も考慮して頂きたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | 小島さんどうぞ。 |
(小島委員) | 皆様のほうからコメントが出ておりますので、若干重複するところがありますが1点だけ。 大野さんがおっしゃられたこととつながってくるんですけれども、スリランカの国別計画というのは、言ってみれば、これからできていくであろう新しいODA大綱、それに沿った第一弾の国別援助計画ということになるだろうと思うのですが、その意味である種の日本型援助モデル、そういったことをぜひ意識していただければというふうに思います。 それとのつながりで要望ですけれども、戦略と目標として二つ掲げられていますね。平和定着に基づくところからの民族、地域間格差解消と経済発展、それに沿った輸出振興産業育成と、こういうふうに出てきているのですが、その後のセクター目標やサービスセクター目標はそのとおりでいいのだろうと思いますが、戦略目標について、輸出主導型産業育成、外貨獲得能力の向上、つまり日本がかつてどのようにして発展してきたのかと。それをもう一度ここでやりましょうと、こういう印象が若干拭えないところがあるのですね。結果として、こういった輸出主導型発展というのが様々な問題をもたらしてきたわけで、中身はこれでよろしいのですが、もうちょっとネーミングを変えていただくことがある意味で新しい日本型援助モデルということの理解を進めていくのではないかという要望です。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。それでは、絵所報告に対する質問、コメントは以上で打ち切らせていただきます。絵所さん、いろんなアングルからのコメントをいただいたわけですが、時間もそうありませんから一々というわけにもまいりませんが、特に重要と考えられるポイントについてリプライしていただけましょうか。
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(絵所主査) | どうもいろいろコメントをいただきましてありがとうございました。ページ順にいった方がいいと思います。外交のツールというのは、恐らくレトリックの問題あるいは表現の問題ですので、考慮いたします。 住民参加型をもっと入れろとか、NGOの役割をもっと強調すべきだというご意見がたくさんございましたけれども、やり方の問題ですよね。我々のターゲットもここで書いているわけですけれども、どういうふうに実施するのかという実施方法の問題を果たしてガイドラインにどれだけ書けるかわからないところがあります。具体化するときの問題だというふうに思います。すでに環境配慮も貧困配慮もありますので、、無茶なことは当然できないし、住民参加というのがいろんなところに入ってくると思います。特に磯田先生がおっしゃった、あそこは道路をつくるにしても何にしても、ものすごい大反対が起こるところですよね。それでなかなか進まない。実際やろうと思っても進まない。土地の買収がうまくいかないとか、当然そういうところは一番センシティブな問題だし、放っておいても入ってくるんじゃないかというふうに思っています。 |
(伊藤委員) | 第1部の成長の「リゲイニング・スリランカ」の中のビジョンにおけるというところですが。 |
(絵所主査) | 「リゲイニング・スリランカ」は、もともと全然違う文章が一つにくっついたものです。「リゲイニング・スリランカ」は民営化大臣が書かれた部分があって、それと別にPRSPを作っていまして、両方くっ付けて改めて「リゲイニング・スリランカ」というふうにしたものです。前半のほうの「リゲイニング・スリランカ」のほうは、砂川さんがおっしゃられたように生産性の向上というのが一番重要だということを、とても強調している文章になっております。貧困削減の方は逆にいろんな分野の貧困があって、もちろん参加型開発も書いてありますし、両方入っているような文書になっています。ですから、無理しているとはとても思えません。でも、今おっしゃいましたように、サルボダヤ、セワランカは長い歴史のある実力のあるNGOです。とくにセワランカは北東部でも長い間、昔から支援しておりまして、経験も相当積んでおりますから、彼らなくしてはなかなか実際には進まないところがあるのではないかと思っています。 5ページの浅沼先生のおっしゃられた成長の成果というのは所得だけ考えているわけではありません。成果といった場合に、どちらかというと不満の感覚、あるいは排除感がとても強くて、所得だけではなくて、例えば大学を出たのにちゃんとした職がないとか、北部に援助すると南部が文句を言うとか、南部に援助すると北部が文句を言うとか、嫉妬心の渦巻いている難しい国です。その辺のバランスのとり方というのは、政治的な問題だというふうに考えてくださるとありがたいと思います。間違っているとは思いません。いろんな意味で国民の不満の間隔を説得できなかったということだと思います。ポイントは、おっしゃられたようにインテグレーションというのを強調する、南部と北部、例えば幹線道路でつなぐとか、流動性を増していくということが大きなポイントになるだろうと思っておりまして、それは本文の方で書いていると思います。インテグレーションという点は、スリランカ政府も強調していることでありまして、ちゃんと教育に見合った雇用が見つけられて、そこへ十分な所得が得られるという、そういうシステムをどうやってつくるかということにつきると思っています。 次の点ですが、インフラの順序はそのとおりだと思います。輸出主導型開発はよくないですか? 私は輸出主導型でいいと思っていますけれども、ポイントは雇用を創出できるという点にあるわけです。小国にとって対外市場向けに開発を実施するということは無限に雇用を拡大する可能性があるわけだし、生産性も向上する可能性があるわけです。環境保全型観光という課題は確かに難しくて、我が国の経験の中にモデルとなるようなものはほとんど見つからないから、ヨーロッパ等々にその範を求めて新しい観光開発のあり方を考える必要があると思います。スリランカは小さい国だけれども、本当にすばらしいものを持っていて、日本型の駅前開発風にやってしまうと、どうにもならなくなってしまうので、環境保全ということに重点を置いた観光開発というのを考えていく必要があるだろう。多分それは外国人の知恵を借りる必要があるだろうと思っています。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。 |
(草野委員) | 一つだけ。 |
(渡辺議長代理) | 手短にお願いします。 |
(草野委員) | 重要なポイントだと思われますので。先ほどのオーバービューですが、この中間報告は、オーバービューを踏まえて当然のことながら出てきているわけですよね。そこでお聞きしたいんですけれども、この2ページ目のスリランカの真ん中ぐらいのパラグラフですけれども、開発戦略というのは基本的には公的部門に対する改革の遅れ、開発戦略の失敗が所得格差を招いたという、こういうふうな理解をされているというわけでよろしいですよね。となると、日本の援助というのはどういう関係にあったのか。二つ考えられると思うんですけれども、日本の援助というのは、基本的には戦略も政策もあって、いいプロジェクトだったけれども、先方の体制が未熟であったからうまくいかなかったとお考えなかったのか、あるいは、この改革の失敗には日本の支援のあり方にも責任があるという、この二つの考え方ではがらっと評価が変わっちゃうと思うんですけれども、どちらでしょうか。
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(絵所主査) | まだ援助のオーバービューは書かれていませんけれども、正直言いまして、私はどちらかというと後者だという考えています。日本だけではなく、世界のドナーがある意味で間違ってしまった国ですよね。スリランカは小さい国で援助漬けになっていますから、とても交渉力が弱い。ともかく援助資金をもらうということが第一目標になっていると思いますので、そうすると、強力なドナーが大きな影響力を発揮してしまいます。マハベリ・プロジェクトという巨額の資金を投じた援助プロジェクとの評価が問題になるでしょう。責任はドナーとスリランカ瀬府の双方にあるでしょう。スリランカ政府のオーナーシップがはっきりしないということと、しかし、ドナー側にも相当責任があるだろうし、特に日本の援助は長い間紛争地域の存在を無視してやってきた。従来は紛争がないかのように援助をしてきましたので、ですから、今度そこに踏み込んだというのは大変に画期的なことだし、日本の援助のあり方は様変わりするであろうと考えています。 |
(草野委員) | それで安心ました。いいところも悪いところも反省すべき点もきちんと書いた上でお願いしたいと思います。 |
(絵所主査) | すばらしいプロジェクトもたくさんあります。 |
(草野委員) | おっしゃるとおりです。 |
(渡辺副議長) | 牟田さん、伊藤さんという順序でまいります。 |
(牟田委員) | 私もこれをつくりましたメンバーでございますので、簡単に追加で一言で申し上げさせていただきますが、国別援助計画については、従来のものについてのいろいろな批判の中で、メリハリがないとか、わかりにくいというお話があったかと思いますが、その点を考慮して、一番最後の目標体系図というものを付けています。ここに書いてあることは、すべて本文の中に書かれていることですけれども、本文の中に書かれていることを分かりやすく書いたつもりです。これだけご覧になれば、大体何が書いてあるか分かるということで、メリハリもついておりますし、分かりやすさという点でも、従来の国別援助計画と比較して格段によくなっているというふうに自負はしております。ただ、これで最高の出来映えかという、お考えもあろうかと思います。この表の中でもなお抜けているものがあらうでしょうし、もし、これをさらに改善しようと思うと、重みがない、どの分野にどのくらいの割合の援助をやるかということが書いていない、ということも考えられます。 それから、大野先生がおっしゃいましたように、例えばタイムスケジュールというものをこの中に書き込もうとすれば、当然、目標値を設定するということも不可能ではないわけですね。この目標体系図を透かして見ますと、指標が見えてくるように書いたつもりなんですけれども、実際に具体的な指標として挙げているわけではありません。この指標を、例えばここまで上げるということを5年間の目標値とするという書き方もあろうかと思います。ただ、現状ではここまでが私は精いっぱいかなという気がいたしております。ここでこういう、一応5年間を予定した国別援助計画ができれば、5年後には当然その計画がうまくいったかという評価をしなければならないということになります。そのときに、少なくとも従来と比較して、こういった目標体系図が明確にできておりますので、計画の評価というものは格段にやりやすいのかなという気がいたしております。 |
(渡辺議長代理) | 伊藤さん。 |
(伊藤委員) | 絵所先生にお答えいただきました「リゲイニング・スリランカ」の閣議決定の中では、経済のあらゆる分野で生産性の向上を促して経済成長を図るということが最重要になっている。と同時に、成長のビジョンの中では住民参加も触れられているというふうにおっしゃったと思いますが、作成していただいたスリランカ国別援助目標体系図を見る限り、前者については大体カバーしていると思うんですね。すなわち経済発展の中で長期開発援助、そして先ほどもどなたかおっしゃいました輸出主導産業育成と観光・環境開発が主な事業になっている。そのほかその下に輸出主導産業育成の中に経済基盤の整備、輸出促進策の支援、生産性の向上、人的資源開発とありますが、これは将来の日本的開発モデルだという感じがします。このことは絵所先生たちが成長のビジョンの中には住民参加、すなわち彼らの内発的な住民参加による開発の部分もあるが、日本の国別援助計画ではこの経済成長、経済発展の部分だけをとらえて、提案されようとしているのか。 要するに提案されている国別援助計画では住民参加型の開発という考えが感じられないんですね。このご提案はある意味では、現在の世界のグローバル化に対応するような経済システムを作り出していこうというような感じに受け取られます。ただ、私たちはサルボダヤ等とつき合いしている限り、もちろん、彼らの言うことがスリランカの人たち全体の考えを代表としているとは言いませんが、彼らは欧米の経済発展モデルではなくて、第3の道を歩むんだということを常々言っているわけです。そこで、お尋ねしたかったのはスリランカ政府が、そういう成長のビジョンの中で住民参加をどれだけ反映しようとしているのか。もし、住民参加がスリランカ政府の方針に盛り込まれているのだったら、日本の援助計画の中でもそういった考え方を表現してもいいのではないかと思った次第です。 |
(絵所主査) | 9ページをご覧になっていただけるとありがたいと思いますが、しっかりと書き込んでおります。貧困対策・不平等のところで、住民参加型と、9ページに書いております。ただ、輸出主導型に関しては、企業をベースに実際の生産活動が行われているわけですから、ここに普通の住民に参加を促進しろと言っても、それは無理というものであります。9ページのところをぜひごらんになっていただけると、貧困対策をやるときには、住民参加をやり、かつ地域コミュニティの事業と協力しつつやってくたざいとしっかりと書いているつもりです。
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(渡辺議長代理) | ありがとうございました。まだ多様なご意見があろうと思いますけれども、さらに議論する場がこれからもありますので、今日はここでひとまず打ち切らせていただこうと思います。おそらく報告書は、スリランカが第1号、引き続いてモンゴルとなるのだろうと思うんです。両国とも、比較的小国でありまして、しかも日本が圧倒的なドナーである。日本のODAが影響力を及ぼし得る二つの国、それが報告書も最初の二つになるというのは、何かシンボリックな意味をもつような気がいたします。今日の話を伺っていて、大変分かりやすい報告であったというふうに理解しております。国別計画の有効性を何年か後にこれを評価しなければなりません。、評価という点からすれば、最後の目標体系図にあらわれたような簡明な体系が、やはり必要だろうと思うんです。スリランカとモンゴルの報告書がわれわれ全体の国別ODA計画のモデルになってほしいとさえ思っているわけでございます。既に、ここまで優れたペーパーをお出しいただいたスリランカチームに敬意を表したいと思います。どうも長い時間ありがとうございました。 引き続きまして、対パキスタンの国別援助計画策定の今後の方針につきまして、今日が初めてでございますが、主査の平島成望明治学院大学国際開発学部教授からのご報告をお願いしたいと思います。先生の報告につきましては、資料3がお手元にいっています。それに目を落としながら、お話をしばらく伺います。よろしくお願いいたします。 |
(平島主査) | 明治学院大学の平島でございます。お手元の資料をちょっとお目通しいただきたいと思います。「作業の体制と手順」というところがございますが、現在まで考えているところは、スリランカのメンバーでもございます下村恭民法政大学教授と、専修大学の広瀬崇子先生、それからODA総合開発から青山温子先生にお出ましいただくということが言われておりまして、その4名でタスクフォースを形成したらと思っております。 現在、JICAのパキスタン国別援助計画が立ち上がっておりまして、去年の11月から始まっておりますが、いまようやく最終段階に近いところまできております。それが一段落しましたところで、それをある程度参考にしながら国別援助計画の策定をすることが効率的だというふうに思っておりますので、イスラマバードのタスクフォースもすでに形成されていると伺っておりますし、そこから出てきた原案を東京のタスクフォースで検討するという手順は、スリランカ、あるいはモンゴルの例に従ってやっていこうと思います。したがって、タイムスケジュールはまだ書き込んではおりませんけれども、すでにある程度準備ができておりますので、時間的にはそれほどかからないかもしれません。ただ、いろんなご意見がありますし、JICA、JBIC、それから外務省という三者が初めて協力体制を組んだ国別援助計画ですので、これはまた新しい試みであります。何とかうまく皆様の英知を結集したいと思っております。 したがって、あと残された時間で、次のページを見ていただきまして、内容のところでどういうふうなことを考えているかということをご説明させていただきたいと思います。 パキスタンという国は、大国に翻弄された歴史を持っておりまして、なかなか顔の見えない国家でございます。ただ、日本と同じぐらいの人口規模を持つ、潜在力としては非常に大きい、とても優秀な人材を抱えている国でございます。特に最近になりますと、アメリカのアフガニスタンに対する関係というところから、にわかに国際舞台に躍り出たということがございます。 パキスタンを見てみる場合に、少なくとも東のほうと、西のほうと、両面を見ていかなければならない。少なくともそれには五つの国が係わっていると考えております。なぜパキスタン援助か必要なのかということで五つぐらい書いてあります。これはリストを加えれば際限がないのですが、1番は言わずもがなのことでございますが、2番の地政学的な重要性としまして、まずカシミール問題、それはインドが係わっております。しかし、ここで考えなければならないのは、インド、ソ連というのがペアになっておりまして、それからそれに対抗するパキスタン、中国というのがペアになっておりまして、そのせめぎあいで考えなければならない。つまり、インド・パキスタン問題というのは、中国、ソ連というものを背後に考えないと理解ができないということを前もって言っておきたいと思います。したがって、その中心はカシミール問題であります。 それから、今度の9.11以降の事態で非常に重要になりましたのは、アフガニスタンとパキスタンの間にDurand Line というのがございます。これは分離独立、47年以前にイギリスが引いた線引きでございますが、このDurand Line というのは、バローチ、それからパクトゥーンという大きな民族を2つに分断しておりまして、そのDurand Line をめぐって、アフガニスタンもパキスタンもそのラインを認めていないわけです。両国は国境を 2,500キロにわたってシェアしておりますが、その間で常に緊張感を持ってきたわけです。その国境線に沿って、FATA(フェデテル・アドミスター・トライバル・エリア)という部族支配する地域がございまして、そこがバッファーとしての役割をしてきたわけです。実は、そのこと自体があの国がブラック・エコノミーに巻き込まれている最大の原因であります。しかし、その元をただせば、Durand Line になるということでございます。 それからパキスタン自身は、かつてはアフガニスタン、イラン、トルコという連盟を考えていたのですが、最近はそうではなくて、サウジアラビアを中心としたアラブ産油国への関係を非常に強化しております。にもかかわらず、ペシャーワルから中央qwアジアを臨みますと、そこはまた全く別の世界が開けております。そういった意味で、パキスタン自身を考える時に、その周辺の国家との関係というものを見なければいけないということがございます。政治学者の意見によりますと、もしあの国が分裂した、崩壊したというときに、何が起こるだろうかというのは、そこがテロの温床になり得る。日本と同じぐらいの人口があるということを考えると、あの国はやはり持続的な発展を遂げる必要がある。それはひるがえって日本にとっても非常に重要なことであるということになります。 パキスタンそのものは、インドの影に隠れて、なかなか目立たない国ですけれども、伝統的には非常に親日的な国でございまして、核実験後のインドとパキスタンの対応を見ているとおわかりになると思いますが、核実験後も依然として日本に対する親近感、尊敬の念を持ち続けているという国ではあります。 経済的な問題もいろいろございますけれども、そういうことを前提にした上で、JICAの国別報告は、以下のような構成を考えてみました。これは3部作になっておりまして、1部は総論でございますが、2部が現状分析になっております。その現状分析は、日本のODAをかんがえるまえに、われわれがパキスタンの直面している問題をどのように考えているかをまず明らかにしようと試みた部分です。第3部は、それをもとにして、パキスタンに対する他のドナーを含めた援助がどうなってきたのか。それから日本がその中でどういう役割をしてきたのか、いまからどういう役割を担うべきかというところを包括的に論じたものです。2部のところはほとんど完成いたしておりまして、3部も完成しつつあります。それを見て総論を書き上げるという段階にきております。 中心が2部になりますけれども、2部のところを見ていただきますと、最初に「開発の政治環境」というものを置いております。その中で外交というものを前面に出しております。私はJICAの国別援助計画に第一次、第二次と関与いたしておりましたが、ここ5年で変わったことと言えば、パキスタンの外交的なスタンスだ思います。次に「基層社会の構造」という章がございます。これを持ってきましたのは、パキスタンだけではないのですけれども、援助政策を考えるときに、マクロ政策の分野、つまりコンベンショナルな経済の分析でわからないところは、すぐれて社会構造に根ざすという考え方を持っておりまして、その構造的なものを洗い出さないと処方箋は書けないだろうというわれわれのスタンスであります。そこでは「基層社会の構造」の中の「権力構造」というところに力を入れて書いております。 1章から5章までの分析を受けて、6章でパキスタンに対する基本的な、中長期的な考え方をまとめております。そこを少し詳しくアイテマイズしてまいりましたのでご覧いただきたいと思います。 われわれの考えとしましては、パキスタンは、内外の圧力に係わらず、よく今迄独立国家として存続したという印象がございます。成長率から見ても、横並びの南アジアと比べて、それほど遜色があるわけではありません。しかしながら、ここの国は基本的に持続的社会発展を考えるときの基礎条件が、やはり何かが欠けていると感じます。それが三つございまして、第1は、Law & Order、経済政策の整合性、継続性が維持できなかったということです。第2点、人間開発、それから生産要素の自由な移動を阻害するような身分階層制というものがございます。それから3番目は、社会的モニタリング能力の脆弱さです。この点は、いまはやりのPRSPや、ガバナンスという言葉で部分的には表現されますが、われわれはそれを包摂した概念を考えております。 つまり、現存する社会の指導層、それはレント・シーキングな在地権力、財界、軍、官僚の行動を、社会的にモニターする力がないというふうな考え方に基づいておりますでございます。したがって、教師が学校に行かない、お金を借りた大物政治家、企業家がお金を返さない。どうしてそういう状態が許されているかということになりますと、そういう彼らの行動をモニターするような力が社会にないからだと考えているわけです。それはすぐれて社会的な構造に根ざしていると考えております。これを何とかしなければならない。これが基礎条件でございます。 それから、2番目は「人間開発の方向性」とあります。これは別に詳細を論じる必要はありませんが、特に教育の中でジェンダー・バイヤスの解消というものと、基礎教育は当然継続的にケアしなければならないのですが、いま社会的モニタリング能力の構築という意味では、中間層の発達、特に高等教育がほとんど動いていないというところが問題だと感じております。 それから、3番目の「経済開発の方向性」にはいろいろなことがありますが、中期的な展望で見てみますと、貧困が削減できず、それから雇用吸収力が落ちている。あるいは地域の格差が広がるというような、持続社会を脅かすような要素。それを解決できるセクターというのは、やはり中期的には農業しかないだろう。その農業は、英領インド期の資本ストックに依存して来ましたが、それが今急速に劣化していると言う問題がございます。2番目に挙げたものは、先ほどちょっと言いましたブラック・エコノミーがございます。そのブラック・エコノミーがあるために、製造業が発達する契機を与えられていないというところが、この国の産業構造が非常に停滞しているという原因でございます。 4番目の「地域開発の方向性」では、今まで等閑視されてきたボーダーエリア、特にインダス以西の2州に対する公的・私的な投資の不足の問題と、州都の経済的停滞を問題にしております。その地域の開発を等閑視していたということがいま起こっている政治の不安にもなっているというふうに思います。したがって、特にODAであれば、公共投資になりますが、公共投資の方向性というものを、今まで等閑視されたインダス以西に向かって方向転換をする必要がどうしてもあるだろうということであります。それから、私が最初にパキスタンに参りましたのは1961年でしたが、当時のカラチは経済センタートシテ輝いておりました。カラチの停滞は、イスラマバードへの遷都と、治安の悪化にありますが、最も社会的条件の揃っているカラチの経済を活性化することは、この国の持続的発展の1つの突破口になると考えております。 それと同時に、ペシャーワルは北の玄関口でありまして、アフガニスタンから中央アジアまで射程に置くところですので、それとカラチという都市、それを一つ魅力のある経済センターに立ち上げるという方向性があったらいいなと。つまり国家のアイデンティティがまだ確立しておらず、50年間経過した国で、何か自分の国で誇れるもの、その一つがこういう魅力ある経済センターの構築なんだろうと考えた次第です。 |
(渡辺議長代理) | 平島先生、どうもありがとうございました。質問およびコメントをお出しいただきたいと思います。 |
(大野委員) | お聞きしていて、非常に暗い感じがしたんです。いろんな国の話をしてきて、直前のスリランカは、まだ希望が持てますよね。何か貢献したいというものがあるんですけれども、パキスタンというのは、本当に開発を迎える体制はできていない。いままで日本はかなりの援助をやっていますが、それが何にもなっていないのであれば、もうちょっと根源的な質問をしなければいけない気がするんです。やはりもう手がないんだったら、部分的には撤退ということも、いまの予算状況からいって当然あり得ることで、スリランカで出てきたような長期的開発という課題にいけないんだったら、やはり限定的な人道・緊急援助だけに縮小するというのも一つオプションだと思います。それをしないのであれば、やはりいままでと違う、全く新しい発想で何か打開の道をを探らねばならない。それは一挙に何かできるというものではないんですけれども、モデストではあるけれども、現実的なステップとして、日本が何か最初の基盤をつくるということから始めるというようなことになると思う。パキスタンの場合は開発問題以前の問題だと思います。だから、それが反映するような、せっぱ詰まったような国別計画になるべきじゃないかと思っています。 それから分量から言うと、いまお聞きしたのは、こういう本があるといいなとは思ったんですけれども、やはり分量的に援助計画としては切り詰めないといけないということで、資料に書かれていることは全部入らないというような気がしました。参考文献として、こういうものがあるといいなという感じです。 |
(渡辺議長代理) | ありがとうございました。多少ラディカルな意見だったような気がしますけれども、平島さんのほうからレスポンスをお願いします。 |
(平島主査) | 私はパキスタンは希望が非常にある国だと思っております。世界銀行でも、ADBでも、IMFでもそうなんですけれども、国際社会はパキスタンの改革の重要性を指摘しています。たとえば私がいままでこの国が抱えていた最大の癌は何かというと、私のタームで言う在地権力だと思います。その在地権力では土地改革を導入すれば問題が解決するかというと、私は土地改革を論じる人たちは非常に無責任だと思っております。在地権力が政治を支配しているときに、その基盤を崩すような改革を導入できるはずがない。私はそうではなくて、彼らは知力、資力、指導力というのを持っているエリート層なのですけれども、とてつもなく優秀な軍団だと思いますが、その人たちが開発に本当に真摯に取り組んでくる、まさに開発に参加する仕掛けは何かと考えますと、これはやはりマーケットしかないだろうというふうに思います。マーケット自身は価値判断を持たない媒体ですけれども、だからこそ、非常に強力な力を持っているというふうに思っておりまして、カラチを経済センターとして立ち上げるというのは一つの大きな起爆剤になると思っております。 それからもう一つ、先ほど言いましたように、 4,800億ぐらいの債務累積がございますけれども、債務があるから援助しないということであれば、援助の基本的な考え方の問題でありまして、債務返済能力をつけるために援助があるのであって、債務返済能力がないから援助しないとすれば、あるいは国際的な責務として、OECDに対するノームがございますけれども、そういった意味で、われわれが国家に税金を払うのと同じで、あの国がいわゆる不安定な状況の中で、いまのような形で推移するとするならば、われわれが考えている以上に、日本にとっても長期的にはマイナスになるというふうに思っております。ただ、もっとそれよりも、私はあの国に係わってかなり長いものですから、思い込みもあるのですけれども、本当に方向性さえあれば、あの国はやはりモメンタムがどうしても必要なのですね。モメンタムはその都市をセンターとして立ち上げるという方向と、もう一つ、いままで等閑視してきたところに公共投資を回す。あるいは公共投資だけじゃなくて、エクスターナリティを持つような公共投資、そういうものをODAも含めて持っていく。それはインダス以西の問題だと思いますが、それはいままでのコンベンショナルな考え方では全く出てこなかった問題ですので、ご指摘のように、パキスタンも例外なく、ODAの合成の誤謬を持っております。各プロジェクトではなかなかいいものがありながら、それを総合したときにインパクトがない。しかし、それはパキスタンに対する日本の投下した資本に対してどれだけインパクトがあったかという評価でありまして、投下された資本に対して全く影響がなかったということではないと思います。 いまムシャラフという軍事政権がおります。残念ながらパキスタンは軍事政権のほうが、文民政権よりも非常に経済が安定して成長力も高い。いまのムシャラフ軍事政権も、疑似軍事政権だと思いますけれども、そういうところで、農業と中小企業、IT、それからエネルギーという四つの分野に絞って、しかもPRSP、デボリューションという新しいアイデアを提示して開発しようとしております。それをサポートするというのも重要なことなのではないかなと思います。 暗くなるのは、私のプレゼンテーションのせいだと思いますけれども、私はその中で一番明るい人間で、将来に対して希望を持っておりますので、余りつぶすような意見は堪忍していただきたいなと思っております。 |
(渡辺議長代理) | 草野さん、どうぞ。 |
(草野委員) | 短く、素朴な質問ですが、JICAの国別援助研究会の報告書との関係を伺いたいと思います。今日、例えば基層社会の権力構造だとか、社会的モニタリング能力の構築と強化とかについての報告がありましたが、私は政治学者なものですから、こういうところには非常に関心があって、ここまで分析された上でお作りになぅたことは大変素晴らしいと思いますが、他方、ODA総合戦略会議の国別援助計画のほうは、かの国も、つまり先方も巻き込んで計画をされるわけで、ここまでズバッとお書きになる覚悟がおありになるのかどうかというのをちょっと伺いたく思います。
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(平島主査) | 英語と日本が余り乖離していては困ると思っております。しかし、私は今までこういう問題をパキスタンの中でもいろんなところで披露しておりまして、それは基本的にパキスタン社会が抱えている開発イシューに対して、われわれはシンパシーを持っているという確証があれば、かなりラディカルな表現でもアクセプタブルであると。そのときに、例えば先ほど申しましたように、土地改革を導入して、現在の指導層を総なめにするという考え方もあるでしょう。しかしながら、国際機関ではマーケット・フレンドリー・ランド・リフォームなんていうような、論理的にむじゅんする提案もしばしば出しております。現在の土地所有の状況が、マーケットのフリープレイでもって実現したものであれば、その修正をマーケットに期待するのは論理矛盾ですし、しかも、現在の政治勢力は、まさにそういうランデット・エリートというのが支配しておりますので、そこにそういう問題を、格好はいいかもしれないけれども、言うこと自体は無責任だと私は昔から思っています。それよりも、彼らをやはり開発エージェントとして持っている能力を国家建設のほうに精一杯使ってもらいたい。その仕掛けは何だろうか。そうすると、やはり健全な市場の発達なのではないかと思っているわけです。そういうところで、彼らもやはりレント・レシーバーではなくて、開発のエージェントとして自分の資力を尽くすというチャンスがあるのではないか。そういうチャンスを作ること自体がやはりあの国の方向性としては健全なのではないかと思っております。
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(渡辺議長代理) | 砂川さん、どうぞ。 |
(砂川委員) | 誠に正直に申しまして、非常にトンネルを抜けて、普通なら、パッと明るくなるんですけれども、暗くなったというイメージをパキスタンについては持ったんです。と申しますのは、先ほど先生がおっしゃったカラチが60年代は輝いておった。私もそのぐらいから、あるいは70年の初めぐらいに、カラチでの、あるいはパキスタンでの経験を共有したわけですけれども、そのときに援助のいわば成功例というのでしょうか、どんどんうまく進展しているというイメージがパキスタンに非常にあったような気がします。例えば中小企業金融なんていうようなことになると、ペキックなんていう機構があったし、ここはものすごく、そういう意味では能率的であったし、例えばアジア開発銀行ができるときに、そこの人間がゴソッと来たりして、大いに学んだような経験があったように記憶しています。比較的プロジェクト・ファイナンスを始めたころには、パキスタンでの例の水力発電の話が一世を風靡したと、そういう能力が非常にあるのだろうと思います。 そこで、私はそこに対して日本の円借款がある意味ではずいぶんいい働きをしたというか、大変な役割を演じたのではないかという具合に思っているんです。話はちょっと逆転するのかもしれませんけれども、例えば60年代、あるいは70年代に復帰するというか、そういう状況に戻すにはどうしたらいいのだろうかというような、逆のアンチテーゼみたいな物の考え方があって、そのときの環境はこうだったねというものをやや念頭に置きますと、そのときの良さというものの外部環境ということをこのODA総合戦略会議では申し上げたいのですが、そういうときのいわゆる外部環境に、いかに日本の援助政策というものを向けたらいいのだろうかというような問題意識を、いわゆる国別援助計画のタスクフォースのほうから、パキスタンの開発ということにだけ目を向けるのではなくて、その開発を達成させるには、外部環境というものをどういうぐあいに日本としてはつくっていったらいいのだろうか、そういった観点に触れていかれるといいのではないかという気がします。 幸い、JICAさんの計画の中には外務省とJBICも入っておられると思いますが、前の経験というものをいかに活かすか、あるいはそのときの外部環境はどうであったかというところに調査をもう少し広げられて、それを一つの参考にされて、今回の作業をやっていただいたらいかがなものかなという気がいたします。 |
(渡辺議長代理) | 引き続き、荒木さんの質問をいただいてから、平島先生のほうからお答え願いたいと思います。 |
(荒木委員) | 私は、第6章は、暗くとも明るいとも言えないというか、そういうこととは関係なく、客観的な分析をされていると思います。私は、日本大使館筋でも、過去何十年にわたって、対パキスタン援助についていろんな話を聞いたのですが、こういうような社会構造的な分析を聞いたことは一回もない。結局、実施機関も恐らくそうだったのではないかと思います。今回、初めて、真っ向からこういう問題を分析しながら、この分析の事実に基づいて、どうやって日本の援助の対パキスタン・フレームを作ることができるか、これはスタートラインについているのではないかと思います。 したがって、今後、ぜひ先生にお願いしたいのは、この第6章の問題を踏まえて、どうやって重点化、あるいは援助政策のプライオリティをつくっていくか、いま非常に錯綜するというか、非常にむずかしい現状がパキスタン社会にあるわけですから、これはなかなか大変だと思いますけれども、そこを日本のフレームワークをつくりながら、重点化、プライオリティを決めていただきたいということをぜひお願いしたいと思っております。 |
(渡辺議長代理) | 平島さん。 |
(平島主査) | 貴重なご意見をありがとうございました。実は、この2部をわれわれが考えましたのは、まず援助ありきということを取り払って、われわれがパキスタンの50年をどうレビューしているのか。その議論になったときに、われわれはきちっと議論をできるのか、テーブルについて議論できるのかという、たたき台といいますか、考え方を出したいと思っておりました。さりながら、援助研究会ですので、どのようなプライオリティで臨めばよろしいかということを今から考えるというか、半ばいっておりますけれども、その中でいまだに解決しない問題が一つございます。これはマルチ塗倍とバイとの・デマケーションの問題でございます。先ほど合成の誤謬と申しましたが、これは多分言い過ぎた表現かもしれませんけれども、実は世界銀行も、物ではなくて、知的な貢献をするという表現に変わっております。知的な提案をしたときに、パキスタン側がどっちの意見を尊重するかということを考えていただきたいと思います。 その中で日本は、たとえば排水計画がある、排水計画は世銀の指導でやる、そこにドッキングしてくれないか、資金的に助けてくれないかという話があったときに、それはダブルス・クィーズじゃないか。われわれは20%も拠出金を出していて、スタッフは3%しか貢献していない。かつまた、パキスタンのプロジェクトにODAを使うことは如何なもの。その時、どういう分野に、どういうスタンスでマルチと共同するのか、あるいはマルチが出来ないところ、あるいは日本の独自なところが何処にあるのか。それは幾つかあると思います。そういうものを、つまり日本の立場として、マルチを非常に意識しながら、どういう独自性を出せるかを考えていきたいと思います。 ただ、すべての問題に日本が解決策を出すということは無茶な話ですので、そういう問題の中で、どこに日本に比較優位があるかということは徹底して議論をしていきたいと思っております。まだもちろんご披露する段階ではございませんけれども、ODAの予算が少なくなるということを前提にしたときに、ますますその説明能力をつけるためには問題地域というものを絞り込まなければならない。そのときに今一番問題になっておりますのは、マルチとの関係をどうするかということでございます。 それから、最初のコメントにあるのですが、カラチが輝いていたと。カラチから、カシミール問題が大きくなりまして、パンジャーブのイスラマバードに遷都いたしました。これはつくづくレビューして思うのですが、インドとパキスタンを分離するときに 650万という人口がパキスタンの方に入ってまいりました。その人々をマハージルと呼んでおりますが、それら移住者のほとんどが州都に定着しているわけですね。カラチは特にムハージル、なかんづく、ボンベイ、アメダバードを中心とする繊維のビジネス・コミュニティが定着したところであります。そこで、繊維を中心にカラチが立ち上がる。まさにFDIが立ち上がったところであります。それが輝いているという表現になるのです。 それから、どうしてイスラマバードという、国境に近いけれども、経済的には内陸国にいってしまったのか。これはまさにパンジャービーという一番大きなエスニックグループのやはりエゴだと私は思います。遷都というものは、そういった意味では成功した面もあると言えばあるのでしょうが、経済的には完全に後退してしまったのだと思います。したがって、バンジャービーが支配する社会の中で、避難民が中心になるようなところに対する投資というものがなかなか流れなかったというのも、ちょっと勘繰り過ぎかなと思いますけれども、そういう面もないことはない。 したがって、本当に考えておりますのは、カラチを何とかしてFDIの中心に持ってくるような形を取れるかどうかということです。あそこはモメンタムさえあれば、いままで十分、政策の整合性だとか、継続性というのがダメなのだということは全部わかっておりますし、PRSPとか、デボリューションという問題も、ドナーが非常に評価しています。私は一つだけ評価している点は、マクロ指標がよくても貧困線以下の人口が増える。とすればマクロ政策も評価の対象になるという点です。90年代後半において、パキスタンにおいてはマクロの指標は非常に評価されておりました。しかしながら雇用吸収力は著しく下がって、そして貧困線以下の人口が増えてしまいました。そうすると、開発は何だ、マクロは何だという話になりました。それはPRSPが前面に出てきたところの、非常にいいところだと思います。デボリューションというのは、ディストリクト以下のところで、女性も参加しながら、いろんなところでモニタリング機能を発揮するということです。これは5~6年はかかるでしょうし、あるいはPRSPそのものは20年ぐらいかかるかもしれません。したがって、パキスタンは暗いと言われれば暗いのですが、パキスタン人の持っている能力というのを、私は 100%信じておりますので、何かモメンタムが欲しい。間違っている可能性はもちろんありますけれども、そのモメンタムの一つはこういうことではないのかなと思っております。 |
(渡辺議長代理) | 平島先生、どうもありがとうございました。社会経済の構造問題はどの国にも多かれ少なかれあるわけですけれども、きょうのお話を伺っていますと、パキスタンはその面でより深刻であることが理解できました。特に、ランデッド・エリートを開発志向にどうやって向かわせるか、そのためにはマーケット・メカニズムの健全な発達が必要である。マーケット・メカニズムを促すようにインフラ整備をするとか、あるいはメカニズムの発展のための自由化なり規制緩和も必要になってくるだろうということが示唆されたわけです。そういたしますと、日本の対パキスタンODAも、ある種のコンディショナリティをつけなければならないということになるのかもしれません。IMFがいままでやってきたようなやり方も日本は取り込まなければならないのかなという感じを持って私は平島報告を聞いたわけですけれども、そうなると、また日本の自助努力支援という原則等との関係はどうなるのか。少々、論争的になっても中間報告ではこの辺の問題を正直に出してもらい議論して、ある方向を見い出すということも必要なのではないかと思います。平島先生は、JICAの報告に引き続いて、すぐわれわれの作業に入っていただくということで、大変お忙しいですけれども、両々がうまく噛み合うようなことをやっていただければ、より優れたレポートがいただけるのではないかとも思っております。大変なご苦労をおかけしますが、今後ともよろしくお願いいたします。きょうは長い時間取らせました。ありがとうございました。 スリランカ、それからパキスタン、二つの報告をいただきました。少々時間が押してきておりますので、次の議題に入ります。新規策定対象国、インドネシア、インド、パキスタン、モンゴルのタスクフォースの構成がほぼでき上がりました。実は、私の手元にそのメンバー構成のリストがございます。大変ありがたいことに、ODA総合戦略会議のメンバーも相当数入ってくださいました。これを読み上げて、ここで申し上げたいのでありますが、時間もちょっと迫っておりますので、次回会合のときにリストをお渡しするということにさせていただきたいと思います。ODA大綱の見直しという極めて重要な課題を、きょう残された時間で議論しなければなりません。この問題が残っておりますので、時間の節約をさせてもらったというふうにご了承ください。 |
(渡辺議長代理) | 前回から今回に至るまでのODA大綱見直しに関する経緯を須永調査計画課長からご説明いただきたいと思います。資料4に基づいてお話を伺いたい。 |
(須永調査計画課長) | それではご報告させていただきます。資料4は二つの資料からなっておりまして、一つは、私どもがやってまいりましたいろんな方々との意見聴取のこれまでの実績、それから5月もまだありますので、今後の予定等を書いた紙でございます。ここにご覧いただきますとおり、いろんな方々と、それから私どもも東京以外のところにも出向きまして議論をさせていただいております。その結果を経済協力局、私のところ限りでまとめたものが2枚目以降の資料でございます。これも時間があまりありませんので、気づいた点だけを簡単にご報告させていただきます。 一つは、プロセスについて夏までに結論を出すのは性急ではないかとのご要望がありました。今の大綱の評価をきちんと行って、時間をかけて議論をすべきであるという意見とか、あるいは大綱ではなくて、やはりODA基本法を制定すべきであるといった意見をいただいております。 それから基本理念については、これもいろんな意見があるわけですけれども、私の印象に残ったのは、やはり国益といったものについて、これをきちんと明確に打ち出すべきであるという意見とともに、国益というものを書くと、わが国の商業主義につながるおそれがあるとか、あるいはODAの軍事的利用を推進といったことから反対であるという意見をいただいております。 それから基本的理念については、経済成長を通じた貧困削減という考え方に言及すべきであるとか、我が国の援助が今まで重視してきた自助努力支援、こういうものをきちんと明確に書くべきであるという意見をいただいております。 それから次に、原則の部分にまいりますけれども、原則について申し上げると、一つは、要請主義についていろんな意見が出ておりまして、要請主義よりも、むしろ相手国との政策対話を重視すべきであるという意見がある一方で、要請主義がわが国の利益を代弁するようになるのは困ると、むしろ要請主義を見直す必要はないという意見もいただいております。 それから大綱原則の運用につきましては、この運用に拘束力がなく恣意的であるという意見がある一方で、むしろ硬直的な拘束性がないところにODA原則の良さがあるので、あまり拘束性を強調すべきではないといった意見も出されております。 それから重点地域についてですけれども、これはアジアを重視するという点では、かなり幅広いコンセンサスがあるとは思いますが、アジアの範囲を明確にすべきであるとか、一方、グローバル化の中でアジアにこだわるのは疑問であり、むしろ貧困国とか、貧困地域を優先すべきであるといった意見が出ております。 それから重点分野については、これもここに書いてあるとおり、いろんな意見が出ておりますが、インフラ整備を通じた経済成長、こういうのが重要だという意見とか、政策支援、それから人材育成をきちんとやるべきであるという意見、それから平和構築については、内容を明確にしてほしいという意見がなどが出されております。 それからODA政策の立案・実施体制につきましては、これも国別援助計画の整備・拡充が重要であるということ、それから政府内、実施機関の間との連携を強化すべきであるという意見、さらに進んでODAの運用体制を一元化すべきであるという意見、それから現場主義が重要であるという意見等々いろんな意見をいただいております。 それから援助の効率的・効果的実施に関する事項ですけれども、国民参加について、これもいろんな意見をいただいておりますけれども、私が印象に残ったことを申し上げれば、民間企業とか、あるいはNGOとかが援助の重要な担い手になるということですけれども、片や企業のODAに対する関心は下がっているといったような意見をいただいております。 それから、これは最後ですけれども、私ども政府がつくった基本的考え方の中で、政策・立案実施上配慮すべき点というのをつくったわけですけれども、その中で社会的配慮とか、現地住民の参加とかそういうのがあるわけですけれども、これはむしろ基本理念に移して、もっと強調すべきであるという意見も出ております。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。議論に入る前にもう一つ、ODA大綱の見直しに関する今後の大まかな作業日程について、古田経済協力局長より、ご説明いただきたいと思います。 |
(古田経済協力局長) | 今、担当課長のほうから各方面の意見をご紹介させていただきましたが、これを全部そのまま盛り込みますと、あちこちに矛盾を来すといいますか、どちらを向いているのか分かりにくいということになろうかと思いますので、いただいた意見を踏まえながら、今後まず今月いっぱい、乃至は来月上旬にかかるかもしれませんが、私どもの中で案文の作成作業に入りたいと思っております。その上で来月に入ったところで、できますれば、中旬ぐらいを目途に関係省庁との議論も深めていきたいと思っております。その上で6月の下旬にこのODA総合戦略会議をお願いして、私どもの関係省庁とも議論した上での素案、ODA大綱見直しの素案とでも言うべきものをベースにご議論をお願いしたいと思っております。 一回で議論がすんなり終わるとも思えませんので、恐らく複数回、ODA総合戦略会議をお願いすることになるのではないかと思っておりますが、7月の上旬には、ODA総合戦略会議として素案のご了承が得られればと思っております。と同時に、政府の中でも関係省庁の間で政府議原案については決定を7月上旬にさせていただきたいと思っております。 その上で1か月程度パブリック・コメントにかけるということで、8月に入ったところで、これらのパブリックコメントの様々なご意見をさらに踏まえて原案の修正を行う。修正を行う過程で再度ODA総合戦略会議、あるいは関係省庁、あるいは政治方面にもお話をして、最終的には8月中旬から下旬にかけて対外経済協力関係閣僚会議で案を確定し、最終的には閣議決定というふうな段取りで考えさせていただければと思っております。今、申し上げました点は、大まかな作業としてございますので、ご意見をいただければ幸いでございます。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。ただいま須永課長から、タウンミーティング、あるいは各界から得たパブリックコメントについての説明があり、それから日程についてのお話がございました。今後の日程はなかなか大変です。関係省庁との調整もありますし、パブリックコメントをさらに求めなければなりません。ODA総合戦略会議内部でも意見が一致しているわけではないので、完全な同意を得ることはなかなか難しいことです。いろんな錯綜した議論をこれからも展開していかなければならないと思うのです。事務局からの報告について何か意見、コメント、質問等ございましたら、お手を挙げてください。大野さん、どうぞ。
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(大野委員) | 6月下旬に本会合へ出せる素案をつくられて、7月上旬にできれば承認を得たい、その間に複数回会合ということは、6月の終わりから7月の初めにかけてかなり集中的に審議というか、議論するというようなことを考えていらっしゃるわけです。僕はともかくその案文がないと、今の段階ではこれ以上議論できない。すでに皆さん大体どんな意見があるか、我々いろんな作業をしていて、それが互いに矛盾するところがあるということがわかっています。まず早く案文を見せてくれないと僕はこれ以上何も言えない。もし何だったら最初の段階では、A案、B案、C案と分かれても僕は構わないと思います。それを早く見せていただかないと、今の段階で僕は内容について何も言うことはない。僕も冒頭の部分のイメージというのを自分で書いてみたりして、それと照らし合わせるために案文を待っているわけですから、それをやっていただかないと前に進まないと思います。 それから、8月中にうまくいけば終わるということですけれども、もし何か議論が沸騰したりした場合は、後ろにずらすということも考えられるわけですか、それとも何か急ぐ理由がありますか。 |
(渡辺議長代理) | これは局長にお願いいたします。 |
(古田経済協力局長) | 今の後者のご指摘につきましては、一応の目途ということで申し上げたわけでございますけれども、先般の対外経済協力関係閣僚会議でも、今年の中頃を目途にということになっているものですから、8月の末、下旬ぐらいがいいところかなということで絶対的なものがあるわけではございませんので、作業の中で当然軌道修正はあり得るということでございます。ただ、だらだらとエンドレスにいくことは避けたいとは思っております。
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(渡辺議長代理) | 磯田さん、伊藤さん、どうぞ。 |
(磯田委員) | 1点確認させていただきたいのは、パブリックコメントの求め方をどのようにされるのでしょうか。1ヵ月間ぐらいということですけれども、どういうことを具体的にお考えなのか。いくつかNGOの方から意見が出ていましたけれども、単なるタウンミーティングで意見を聴取しましたというようなことだけではなく、具体的なコメントに対する対応についての返答などをきちんと提示する形で次に進めるというような対応をしていただきたいという話が出ていたかと思うんですけれども、その辺についてはやっていただけるということなのかということが1つと、もう1点は、実際に省庁内でのある程度のすり合わせが済んだ段階のものが提示された場合、原案の修正というのがどのくらい、もう少し早くできないでしょうかというようなことでもありますが、そこら辺は技術的にいろいろ難しいのかもしれませんけれどもということです。 |
(渡辺議長代理) | さて、その辺になりますと非常に難しいんですよね。NGOのみならず各界からいろいろ、しばしば相互に矛盾するようなコメントもたくさんありまして、これに一々我々のほうから対応していくという時間的余裕があるかどうかですよね。新大綱をできるだけ国民の合意に基づいたものにしたいという考え方はもちろんのことであり、そのために現在多様な意見を聴取しているわけです。しかし、いただいた意見に対して一々レスポインスすることまでが必要となりますと、結果的には、かえってまとまりが悪くなりはしませんか。
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(磯田委員) | 通常ほかの国々でもそういう対応をしているところはいくつかありますね。ですから、意見を言ったけれども、それがどういうふうに採用されたかがわからないままになるという形ではいけないと思います。 |
(渡辺議長代理) | そういう意見をいろいろ聞いた上で大綱ができたという形が最終的な反応なわけですよ。 |
(磯田委員) | つまり、ある意見が採用されない理由についてはこうであるというような説明ですね。もちろん全部が採用できないとか、相矛盾するものが出ているということは重々承知しているので、であるからこそ、なおのことなぜこの大綱なのかという説得力ある説明が必要なのではないかということです。 |
(渡辺議長代理) | それは大綱を作る事前のプロセスの問題なのではないでしょうか。 |
(磯田委員) | そうですね。このパブリックコメントを聴取して、原案を提示していく段階です。
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(渡辺議長代理) | むしろ大綱ができた後にということですか。 |
(磯田委員) | 併せてということですね。 |
(渡辺議長代理) | できるだけの誠実な対応をするというのが筋であることに私が異論を差し挟むはずもありません。ただ大綱自身ができる時期があまり後ろへ延ばしたくないという懸念しているだけです。 |
(磯田委員) | ただ大きい論点が出た場合、先ほど大野委員からのお話があったように、きちんとした議論をもう一回展開するというようなことも一応視野に入れていただきたいという要望もNGOから出ていたかと思います。基本的には、私も対応に関しては、策定した段階で提示するということでいいかと思います。 |
(渡辺議長代理) | ご意見はできるだけ尊重して考えさせていただきたいと思います。それでは伊藤さん、どうぞ。 |
(伊藤委員) | ODA大綱の性格と位置付けについてもう一度確認をしたいと思います。ODA大綱というのは、こうあったらいいという願望レベルのものなのか、言葉を換えれば拘束力を持つものなのかどうかということ。もし日本の開発援助が大綱に基づいて実施されないことが起きた場合にはどのような形で拘束力を発揮するものなのかどうか、この点を確認したいということ。それからODA大綱というものが8月までということでかなり慌ただしく作られる感じがしないでもないですが、本当に国民参加を期待するならば、もっと時間をかけて、議論をし、いろいろ意見が分かれるでしょうけれども、ODAは自分たちのものだというように国民に意識を持ってもらうだけの時間のゆとりがあってもいいのではないかと思います。 それからNGO関係者と有識者から出ている意見ですが、長期的にはODA基本法を作ったらどうかということ。ODA大綱と基本法の関連性についてもう一度確認しておきたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | 大綱は閣議決定ですから、政府が閣議で合意されたものを誠実に守っていくのは当然のことでしょう。ただ、これが法的拘束力を持つかどうかという点になると、基本法にまで格上げしないと法律的にはできにくjのかもしれません。 さて、その点を我々がどう考えるかということは、むしろ、ここでの議論のテーマなのであって、我々がといいますか、例えば議長なり議長代理が答えるべきテーマではありません。伊藤委員自身が積極的にしっかりと提言すべきテーマなんじゃないでしょうか。 その他いかがでしょうか。荒木さん。 |
(荒木委員) | これはじっくり時間をかけてやらなければならないのは当然だと思うんですけれども、順序から言うと、ODA大綱があって、中期政策があって、大綱は大体今までの議論の中では10年ぐらいを目途に見直すかどうかという議論があったけれども、流れからすると、次は中期政策があって、国別援助計画があって、そして今度それをブレークダウンして実施計画があると、これが大体の流れですよね。そうすると、今、国別援助計画は平島先生や絵所先生にお願いしていろいろやってきているわけですね。ですから、本当は上位にある大綱ができなければならないわけです。ところが、こういう急いでいる場合であるし、それから現実に来年度の予算編成が来る。これから、集中審議、パブリックコメントを集中的にやるのも結構だと思いますけれども、とにかく短期間にやらないと、いろんなことで、順序がみんな狂ってくるという感じがします。ですから、大分議論したと思うので、大綱の見直しはもうちょっと集中審議するのだったら、3時間でも4時間でもかけて特別な時間をとってやってみるということも一つの手かなというふうに思っています。
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(渡辺議長代理) | ありがとうございました。大野さんどうぞ。 |
(大野委員) | 急がなければいけないというのはよくわかるんですけれども、1カ月、1週間早くしないとどうこうという問題にならないと理解します。いろんな意見を聞いて、それで案文をつくる。それはいいんですけれども、案文ができてから決めるまでが余りにも短か過ぎる。パキスタンでも、スリランカでも、もう最初から大体の方向、中身は見えていますよね。そういうものが全くなくて、こんな意見がありますというような状態で、では政府はどういう立場を、ポジションをとるのかということがやっと見えてから、あと2週間で決めてくださいというのは少し短過ぎる気もします。 他の委員の意見もあると思いますけれども、案文ができた段階で先に見せていただいて、3時間でも4時間でも、何だったら半日でも一日でも、そのときにそれを徹底的に議論しても僕はいいと思います。他のNGOの方とか、国民一般とか省庁の方は、そういうやり方でできるかわからないのですが、やはり政府のとるポジション、文章、構成、例えばジェンダーをどのレベルで議論するのか、そういう議論もありましたけれども、それは具体的な案を見た上で、つまり政府で残された議論したいものを整理した上で、それで皆さんにかければ非常に効率性がいいんですけれども、今みたいに何が入るかわからない状態で議論しろと言われても、ここに書いてあるリストのもう一度焼直しにならざるを得ない。だから、言いたいことは短い時間で完成させるのは、今回はいいと思いますけれども、そのやり方も中身がきちんと議論できるように、ここの会合でもほかの会合でもポイントを絞って、この文章でよいか、ポイントは7つでよいかとか、そういうようなことができるような体制の中で、一回でできれば一回で、複数なら複数でやっていただきたいと。その中身を議論したいので、ただ形式的に承認したという形ではないようにお願いします。 |
(渡辺議長代理) | はい、どうぞ。 |
(荒木委員) | これは草野委員がヘッドになってODA大綱見直しのタスクフォースを作って論点整理をやったわけですね。論点整理で大体基本的に論点が出てきて、それでここでも議論をして、その論点を踏まえて案文を作ってくれという要請を出して、聞くところによると、対外経済協力関係閣僚会議もその論点でいいですよということになったということで、それはもう書けるわけですよね。そういう順序になっていると思うのですが。
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(渡辺議長代理) | 大野先生のおっしゃったのはちょっと言い過ぎです。今、荒木さんもおっしゃいましたけれども、総合戦略会議でタスクフォースをつくり、そこで論点を整理して、その論点整理をもとに外務省が中心になって省庁間で調整をしたわけですよね。その調整された案が、3月14日の対外経済協力関係閣僚閣議で議論され、それが「政府開発援助大綱見直しについて」というペーパーとして回っているわけですね。これはまだもちろんハーフ・ウェイではあります。このハーフ・ウェイの見直しをさらによりいいものにするために、今タウンミーティングをやったり、パブリックコメントを求めている最中であります。とはいえ、見直しの大筋は見えているわけです。閣僚会議の見直し案が大筋でないとするならば、閣僚会議の決定の意味がなくなってしまう。閣僚会議の決定を無視しては、ことは前に進みません。まだ何もできていないというふうに考えておられるとすると、それは間違いではないかと思います。
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(大野委員) | 私もあれは何遍も読みました。けれども、例えばアジア重視というのはもう決まっている。だけど、それ以外の国をどう書くのか、その文章はどうなのでしょうか。そういうようなことはまだ何も決まっていないと思うのですが。国益に対してもどういうふうな言葉を使うかというのは僕は合意した覚えはないと思います。そもそも「国益」という言葉を使うかどうかも決まっていない。そういうのが大事なことでないというのだったら、僕はちょっと理解できないのですけれどね。あとは全部お任せてして、アジア以外のところをどういうふうに書き込むかというようなことをみんなお任せしたいというわけにはいきません。 |
(渡辺議長代理) | はい、どうぞ。 |
(荒木委員) | 草野先生は何もおっしゃらないけれども、大分国益についても、ここでも議論があったと思うのですが、我が国の安全と繁栄ということを、「国益」という言葉は誤解されかねないので、ひとつ避けてという話があったり、それからいろんなことで今、ちょっと忘れましたけれども、多分議論があってあるラインは出てきていると思うんです。細かいこと、例えばアジア重視の問題でも、アフリカをどうするかという問題があったのですね。TICADT IIIも今年あるし、これは貧困削減計画の重点地域はアフリカなので、そこはそこそこアジア重視とともに、アフリカについても付言する必要があるということで話が決まったようなことがあるのですけれども。
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(渡辺議長代理) | どうぞ小島さん。 |
(小島委員) | 要は、私は大野さんがおっしゃっていることもよくわかるのですが、もう時間的にある程度限られているわけですね。秋口の前までには大綱というのを決めようとしているわけですから、このODA総合戦略会議の中でもう少し議論を詰めようとするならば、やはり大野さんがおっしゃったような大綱見直しの素案というのは出てきていいんだろうと思うんです。国益の問題にしても、アジアをどうとらえるのか、アジア以外をどうとらえるのかということについても、やはり大綱の素案が出てくれば、今、大野先生がおっしゃられたような問題についてはここで議論して、ある種の合意、あるいは意見の違いというのがはっきりしてくるわけですから、その意味では素案が出てくる、議論をする、そして最終的にある種の基本的な合意を作っていくということで手順はいいのではないかと思うのですが。
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(渡辺議長代理) | 何か議論が攻守逆転したようでありまして、私は初めからODA総合戦略会議としての大綱の成文化をすべきだという主張してきたわけですが、それはどうもダメだといって否定されて、今度今になってみたら、成分化したものを早く出せというのであって、人間集団の議論はなかなか難しいですね。 先ほど古田局長が言われたように、これは我々で決めるものではなくて、決めるのは言うまでもなく閣僚会議であります。また、そこに至るまで各省庁その他とのすり合わせが必要なわけですが、最終に近い案が出るのは日時を特定化できませんけれども、6月のそう遅くない時期だろうと、私は想像しております。成文化された、文章化された大綱見直しがですね。その時点まででは遅過ぎるということでしょうか。その時点から、我々が必要であれば集中的な審議を続けるということでいいんじゃないでしょうか。 |
(草野委員) | 黙っていたら無責任なので申し訳ありませんので、一言。通常国会が6月の末までですね。ですから、各省庁が国会にかかわっているということもあって、多分この大綱の議論に集中できないということも、合議が時間がかかるという一つの理由ではないかなというふうに考えているんです。さはさりながら、先ほど荒木さんが言われたように、国別援助計画はどんどんできてしまう可能性があるということを考えれば、やはり古田局長が言われたあたりのところ、通常国会で各省忙しいけれども、そこのところをできるだけ急いでいただくということはできないかなと要望したいと。大野さんのおっしゃることもすごくよくわかりますので。 |
(古田経済協力局長) | いろいろご指摘ありがとうございました。私どもも殊更に素案づくりに時間をかければいいと言っているわけではなくて、おっしゃるようにいろんな諸状況を見て、今のご指摘を踏まえて、できるだけ早く素案的なものをお諮りできる体制に入るよう努力をさせていただきたいと思います。それからその素案については、ご指摘にありましたように、どういう形であれ徹底討論ということで、このODA総合戦略会議で十全の議論をお願いして、そしてそれを踏まえ、その素案の修正をするということにさせていただければと思います。
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(渡辺議長代理) | ありがとうございました。それでは、そういうことで行かざるを得ないと思いますので、よろしくご承知おきください。それから、場合によってはこのODA総合戦略会議で多くの時間をいただいて集中審議しなければならないということがあり得るわけですが、その節にはよろしくご協力ください。 事務局よりの報告事項が2点ございます。これは本来ならもう少し詳しくご説明をいただきたいのでありますけれども、時間が迫っている関係で資料の簡単な説明ということにしていただければありがたいと思います。 |
(渡辺議長代理) | 相星中東第二課長からの報告をお願いします。イラク情勢及びイラク人道・復興支援の概要についてでございます。資料5です。それからもう一つは、先般パリで開催されましたOECD・DACのハイレベル会合及びG8開発大臣会合につきまして古田経済協力局長の方からの報告をお願いしたい。これは資料6、7でございます。細かい資料が渡っておりますので、資料をこんなふうに読みなさいよというシグナルでも与えていただければありがたいと思います。それではお願いいたします。
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(相星中東第二課長) | ただいまご紹介にあずかりました相星でございます。資料5に加えまして、私のほうから簡単に5月8日の資料ではございますけれども、その後一部進展もございましたので、その新たな点につきまして簡単にご報告させていただきたいと思います。 私自身、4月28日からバグダッドのほうに参りまして、現地の治安状況、そして大使館の状況、さらにORHAですとか、国際機関の関係者とも会って話をしてまいりまして、それを受けまして、5月8日の午後には大使館員がバグダッドに入りまして、大使館を再開いたしました。そして昨日から茂木外務副大臣がバグダッド入りされておりまして、きょう、あすと国連の関係者、そしてORHAのガーナー局長に加えて、新しく任命されましたブレマー大使とも会えないかということで現地でアレンジしております。その他にも略奪を受けました国立博物館、あるいは学校、病院といった将来の日本の経協に関わってくる案件の現場視察も行う予定でございます。 国連の関係者は5月1日には現地入りしておりまして、土曜日にもWFP(世界食糧計画)のモーリス事務局長もバグダッド入りしたというニュースが流れています。国連関係者以外にも日本のNGOでも、私が入りましたときに、ちょうどJVC、あるいはJENといったところがバグダッドに人を送って活動を行っている、あるいは活動開始に向けていろいろ検討している。あとピース・ウィンズ・ジャパンも元々は北イラク中心ですけれども、バグダッドの方での活動も一部開始しているということで、相当国際機関やNGOの動きも加速化してきているように見受けられました。 今、最大の課題というのは、やはり治安の問題が依然非常に懸念される状況でございます。陸路、アンマンからバグダッドに入ってこられるケースが多いんですけれども、我々もバグダッド入りした翌日の夜に、やはり外国人が略奪に遭うというようなことが起きました。また、一部ニュース等でも流れておりますけれども、バグダッドの近郊の、ファルージャというところで米軍による発砲等によってイラク人が何人か犠牲者も出るというような話があります。南部から、あるいは北部から徐々に治安はよくなってきておりますけれども、依然、夜間の外出は非常に危ないというような話等ございます。我々も大使館再開に当たっても、そういう点も十分留意していくべきだと考えております。 治安の問題に加えまして、やはりイラク人の行政機構の早期立ち上げというのが最優先の課題であろうと思います。これはORHAの関係者とも話をしましたときに、イラク人の能力が非常に高いということを改めて認識したという話が先方よりありました。私自身、バクダッド市の評議会とORHAの会合を傍聴させてもらいましたが、英語で非常にりっぱなプレゼンテーションをやる人間がいて、最初はORHAの人間かなと思っていたんですが、よくよく聞いてみると、イラク側関係者だったりしまして、そういう個人個人の能力をとってみますと、海外に留学した経験もあり、あるいは入学した経験もないけれども、イラクにいながらにして相当英語もきちんと使える人もいます。私自身、アフガニスタンにも相当かかわってきたんですが、アフガニスタンの状況と比べてイラクは全然違うなという感じがいたしました。 昨今の動きですが、先週の金曜日に安保理にイギリス、アメリカ、スペインで共同提出による決議案が出されまして、これは今週議論されることになっております。経済制裁の解除に向けた話、あるいは石油収入をどう管理するか、オイル・フォー・フードをどう見直していくか。さらには国連事務総長の特別調整官の任命といったことも中に入っているようでございまして、当面は安保理で決議案に関する議論が注目されるところだろうと思います。 今後の日本としての人道・復興支援に対する取り組みですけれども、既にウンム・カスルの港の浚渫のためにUNDPに対して 250万ドル拠出したということで、この拠出によりまして、まさに日本が行った食糧支援等が、港に着いてすぐにイラク国内に移送できるという意味では非常にタイムリーな支援だということで、これはORHAの中でも非常に高い評価を受けておりました。加えまして、草の根無償資金協力ということで、ウンム・カスル市の評議会に対する車輛等の供与ということで、こちらも小さな支援ではありますけれども、日本の支援は非常に足が早いということで、私がバグダッドに伺った際も各方面から話を聞きました。 今後、本格的な復興支援ということのためには、イラク人による行政機構の立ち上げ等ということがどうしても必要になるとは思いますけれども、当面の間、人道支援の枠組みの中で電力、あるいは水、保健・衛生といったことが必要になろかと思います。当面、国際機関と連携してやっていく、あるいは草の根の支援ということでNGOと連携してやっていくということが必要になろうかと思います。 その一方で、これは先般イラク対策本部を開催した際にも、今後イラクに対する人道・復興支援に関して、総理から、アラブ及び周辺諸国等の協調をイラクの復興支援の中で考えていくべしとの指示がありました。それにとどまらず、イラクの復興プロセスというのは、国際協調体制の再構築ということで総理の訪欧の際も、その点各国の対して強く訴えてこられたわけですけれども、まさに今後の安保理の動きがそういう中で非常に注目されるものと考えております。小泉総理自身、今度5月の訪米された後にエジプトとサウジアラビアを訪問される予定でして、中東和平に加えてイラク復興の話というのも、その訪問に際しての大きなテーマの一つになろうかと思います。 |
(古田経済協力局長) | 続きまして、簡単に資料の6と7に基づきまして、4月の下旬の会合に私が出席しましたので、ご紹介したいと思います。 DACのハイレベル会合は年1回閣僚級が参加する会議ということで、日本の場合にはずっと経済協力局長が出ているということで参加させていただいたわけですが、主たる議論は、この3にございますように援助効果、各国が援助の手続を調和化するなど、どうやって援助効果を高めるかという点。それから2番目がアフリカでございますが、NEPADをサポートしていく、アフリカ側とドナー側がどうお互いに相互に説明責任を果たしていくかという点。3番目が経済成長と貧困削減、これはむしろ日本が強く主張してきたアジェンダでございまして、ほとんどの国がこれは密接不可分であるということで意見が一致したわけでございます。それから議題には入っておりませんが、先ほどのイラクの復興問題については、夕食時に随時発言があったということでございます。 それから、資料7がG8開発大臣会合でございますが、ここではサミットをにらんで主なテーマについて議論して、議長たるフランスの開発大臣がシラク大統領に報告するということになっています。G8開発大臣会合は、DACのこのハイレベル会合の直後に行われてございますが、かなり議論としてはダブル部分があるのですが、ODAについては、ODA強化に関するコミットメントが再確認されています。 ちょっと余談になりますが、もともとの議長のサマリーのドラフトでは、“increasing the volume of ODA”と書いてありまして、日本以外のすべての国は全く問題がないんですが、日本の場合にはODAの量を増やすことについて今コミットできない、むしろ予算的には減ってきておりますものですから、訂正をお願いして、“strengthening the volume of ODA”という言葉は英語かと聞いたら、イギリス人が立派な英語だというものですから、“strengthening the volume of ODA”ということになったのですが、ちょっと私も日本だけがODAの増額にコミットできないということを国際会議で言って修文をお願いしなきゃいけないというのはついぞなかったことでございまして、そういう意味では、他の国はいずれも何の問題もないということで、非常に印象的でございました。 それから、例のミレニアム開発目標を実現するためには、ODAを倍増しなければならず、あと 500億ドル追加的に金が要るということで、イギリスが大変熱心にIFF(インタナショナル・ファイナンス・ファシリティー)を提案しています。これはドナーの政府が長期的にODAを出すということをコミットして、それを担保に国際市場で開発債券を発行するということですが、この案については結局、国債発行と同じじゃないかということで、かつ政府がコミットメントしたら債券が売れるというのは、本当にそれはあり得るのかといういった点で、各国とも非常に冷やかな反応でございましたが、イギリスは非常に熱心でした。 その他、あと水についての重要性、それから社会・人間開発につきましては、「世界エイズ結核マラリア基金」、あるいは「ファスト・トラックイニシアティブ」といったことについて再確認されたました。 それから、NEPADにつきましては、NEPADのプロセスの進捗状況について事務局長がおいでになって説明がございました。このあたりがシラク大統領に報告されるという開発のアジェンダでございます。 |
(渡辺議長代理) | どうもありがとうございました。ご質問はおありかもしれませんが、この報告書を後でいろいろお読みいただき、疑問があったら、改めて事務局に質問いただくということにしたいと思います。 最後ですが、今後の日程についてご説明いたします。ODA総合戦略会議の非公式会合を6月24日火曜日午前9時から12時に開催します。場所は未定でございます。ここではODA大綱の素案について事務局から説明を受け、これを審議していただくために若干長時間とってございます。それからもう一つ正式会合ですが、11回目の会合を、7月4日金曜日8時から10時に、飯倉公館で開催いたします。この会合では、ODA大綱の素案を会議として了承したいというふうに考えております。非常に大事な会合になりますので,ご出席をよろしくお願いします。 以上でありますが、長い時間ご協力ありがとうございました。 |