ODAとは? ODA改革

「第2次ODA改革懇談会」(第6回会合の概要)

「第2次ODA改革懇談会」事務局

本懇談会では、ODA改革に関する幅広いご意見を募集しております。
ご意見は、odakaikaku@mofa.go.jp又は03-5776-2083(FAX)までお寄せ下さい。

1.日時

 平成13年9月27日(木)10:00~12:00

2.場所

 外務省892号会議室

3.議題

(1)今後の取り進め方

(2)重点分野・日本型援助

4.出席者

 懇談会メンバー(五百籏頭眞神戸大学大学院法学研究科教授、上島重二三井物産会長、小島明日本経済新聞社常務取締役・論説主幹、田中明彦東京大学大学院情報学環教授は欠席)。外部有識者として、下村恭民法政大学人間環境学部教授を招待。外務省から、西田経済協力局長、秋元経済協力局政策課長他が出席。関係府省庁、JICA(国際協力事業団)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加。

5.議論の概要

(1)平成14年度ODA予算概算要求、ODAタウンミーティングの概要、ODAホームページに寄せられた意見の概要について事務局より報告がなされた。

(2)今後の取り進め方について渡辺座長より説明し、了承された。

(3)重点分野・日本型援助について、外部有識者(下村恭民法政大学人間環境学部教授)による報告の後、意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

(イ)日本型援助・南南協力

  • ある途上国が先行する途上国グループにキャッチ・アップしようとする際に、取りうる政策の選択の幅は、本来かなり広いはずである。しかしながら現在の国際援助社会では、実質的に一種類のアプローチ(世銀・IMFの処方箋)しか公認されていない。これが経済発展論議の活性化を妨げている。アフリカなどの経済専門家の間には、こうした現状への強い欲求不満があり、それが東アジアの発展経験への根強い関心となっている。もちろん歴史・文化・行動様式・社会慣習・価値観などの相違を考慮することが不可欠ではあるが。途上国の人々が東アジアの経験についての情報を入手しようとする場合の一つの問題は、大半の情報が世銀・IMF流のスペクトラムを経て加工されていることである。この障害を克服するために、ロンドン大学のニサンケとガーナ大学のアリーティーは、「アフリカと東アジアの専門家の直接対話」のためのフォーラムを提唱した。このような試みへの支援は、日本が生んだ「南南協力」の有効性の証左ともなり、日本のソフト・パワーへの一つの足がかりにもなる。このフォーラムのような視点を発展させていくことが望まれる。
  • 日本にしかできない点を強調するのではなく、日本の援助は世界のためになるということを出すことが重要ではないか。
  • 日本ということを強調するかどうかは別として、国民にはODAの形が漠然としているので、再定義して、分かり易く示す必要があるのではないか。
  • 日本は、画一的に考え方を押し付けるのではなく、東南アジア各国の状況に応じて、特徴ある国造りを支援してきた。この点は、生活基盤や生業を無視して、画一的な押しつけをする欧米諸国とは異なる。
  • JICAの研修で日本に受け入れた人材を、母国に帰った後は放置したままにするのではなく、うまく結合させる仕組みを作ることも日本型援助の一つの方策ではないか。
  • アジアとアフリカには違う点もあるので難しいが、開発に関する考え方、経験の交換等を目的として南南協力に関するフォーラムを定期的に、例えば年に2、3回開催することはできないか。
  • 世銀やIMFとは異なる日本独自のアプローチを提言し、議論を深めていく人材が不足している。また、日本側のバックアップ体制は十分か、現地と本部の連携はうまくいっているか疑問である。
  • 南南協力はユニークな発想であり、日本のODAのフロンティアとなろう。
  • 国際関係の観点から見ると、ASEAN+3が域内協力を進めるなど、南南協力を行う条件が整いつつある。中国、韓国、シンガポール、タイなどは多国間協力を模索している。日本の対応方策を盛り込んで欲しい。
  • 南南協力は実際にはいろいろ行われているが、大々的に打ち出せる可能性のある援助の形なのか、どの程度の広がりを持ち得る可能性があるのか、戦略的な形が見えてこない。

(ロ)ODAの理念等

  • 日本を除く主要国の武器輸出は拡大を続けている。援助のファンジビリティ(代替・転用可能性)に関する論議が盛んであるが、問題の根源は、こうした兵器ビジネスの拡大にある。ODAと武器輸出の二つの座標軸で見れば、日本の現状は主要ドナーの中でも望ましい姿となっており、この点を国際社会に対してもっと強調したい。
  • 国際貢献の中には軍事的手段も含まれるが、日本は非軍事的手段を志向している。バードン・シェアリングの思想で両者を足し合わせて貢献の度合いを計る考え方もあるが、これでは過剰な軍事支出が国際貢献になってしまう。武器輸出は、途上国が本来なら使わなくて良い所に無駄な支出をすることになってしまう。この部分に手を付けていない日本のODAを強調すべきである。
  • 米国におけるテロへの対応に関して、ODAが入っているが、軍事的手段とODAによる平和的手段を一体と考えた上で、日本はODAだけを見ようとしているのか、あるいは、日本にはODAの理念があって、独自の視点で対応しようとしているのか、正確な認識がされていないような気がする。
  • 日本の外交の中でODA外交があるとすると、ODAの戦略をもう一度考えておいて良い。テロ事件に対する貢献の一環としてのODAの活用は当然のことであり、ODAはやはり戦略外交の一環として行うべきものである。

(ハ)援助の重点分野他

  • 実効ある援助をめざすためには、「AからBへ」(量から質へ、有償協力から無償協力へ、ハードからソフトへ、インフラから社会セクターへ)といったような思考ではなく、「AとBの総合活用」が不可欠である。従来、左側の「A」ばかりに偏ったことの修正は重要であるが、「A」を軽視して右側の「B」に偏りすぎても実効性は望めない。貧困緩和、環境保全、自立達成などの目標達成のためには、それぞれの国の発展段階や債務負担能力などを考慮しながら、「A」と「B」を有機的に連関させつつ総動員することが望ましい。たとえば貧困緩和のためには、コスト・リカバリーや自助努力の刺激、農村電化や農道整備や灌漑施設増強が、参加やエンパワーメント、プライマリー・ヘルスケアやマイクロ・クレジットと並ぶ不可欠な要素である。
  • 質の高いサービスを提供するためには、受益者が対価を払うことは重要である。他方、ベトナム、ガーナはコスト・リカバリーを導入して実施しているが、うまく行っていない。無料だったものを有料化するのは反発がある。これはODAの問題ではなく、相手国の政府のポリティカル・コミットメントがあるかどうかの問題である。日本政府として、どこまでインプットしていくか、日本に政策提言をすることができる人材はいるのか。他方、それがコンディショナリティとなってしまうと、オーナーシップ、パートナーシップに逆行する可能性がある。

(ニ)NGOとの連携等

  • 中間報告にも強調されているように、NGO・NPO、地方自治体、民間企業などの幅広い参加こそ実効性ある途上国支援のかぎであろう。担い手の多様化の進展に伴って、非政府の担い手の活動資金に占めるODA資金の比率は上昇する。すでに、資金の半分を政府から導入している組織(「国境なき医師団」)や、NGO活動資金の7割が政府から出ている国(スウェーデン)が生まれている。このような状況に向かうか道筋で、どのような制度設計が必要だろうか。求められるのは「納税者に対する説明責任の確保」であろう。
  • 公的資金を導入する非政府組織の適格性評価、公的資金による活動の事前・事後評価、公的資金の受け皿を選定する過程の公平性・透明性などを、今のうちから設計しておくことが望ましい。情報公開の強化とともに、政府による査定を最小限に抑えた第三者による監査制度の構築、特に国際的なコンペ制度の導入などによる開かれた競争の確保が課題であろう。
  • 最近、NGO・市民社会に任せておけば良いという、NGO・市民社会無謬論のようなものがないか危惧している。

(ホ)人材の活用・育成

  • 海外の大学院教育を受けた人材を含めて、開発や援助に貢献できる人材はかなり育っているが、国内の就業機会が非常に限られているため、資源の遊休化が目立っている。遊休化した人的資源の活用のために、行政改革の流れと両立しうる対策が望まれる。期限付き雇用形態はある程度拡大しているが、それを加速するためには、思い切った予算手当が必要である。
  • 途上国のニーズとのマッチングを効果的・効率的に行うためには、現在国内にいる人材の有効活用を図るとともに、専門性を持った人材の育成が不可欠である。

(ヘ)タイド条件の調達・現地調達

  • ODAの下での調達がタイド条件で行われる場合にも、援助効果の発現に影響が生じうる。日本企業の技術と経験を活用でき、いわゆる「顔の見える援助」が可能になる反面、途上国にとってのコスト増を生む可能性が排除できないからである。また、日本企業の関心や適性を考慮しながらの援助対象事業の発や選定が、援助効果の発現のかぎを握る「最も緊要なニーズを、最も適切な形で援助する」原則とどのように整合するか懸念がある。
  • 現地調達を進め過ぎると、日本企業の受注率が下がり、日本企業の優位が活かせなくなる。また、日本国内のODA支持低下にもつながる。
  • 国際機関は、現地の専門家、NGO、研究機関などを積極的に活用している。日本も、これらローカルコンテンツの利用を拡大するとともに、それを通じて現地の人材の能力強化を進めることが望まれる。

(ト)途上国のガバナンス

  • 国際社会は、「パートナーシップ」とならんで、「オーナーシップ」の重要性を強調する。その一方で、冷戦後の世界での途上国の発言力は著しく低下しており、途上国がドナー社会に対して独自の政策路線を主張する主体性も、コンディショナリティの管理などを通じて厳しく抑えこまれている。こうした途上国にとっての閉塞状況の中で、日本の援助理念の一つである「途上国の主体性の尊重」の意義は大きい。なお、悪しき意味での「要請主義」に陥らないための「共同作成・実施主義」に留意したい。たとえばガバナンスについて、途上国の社会に内在しているグッド・ガバナンスの芽を掘り起こして育てることが重要である。これが日本型援助アプローチの原点ではないだろうか。
  • 途上国に内在するグッド・ガバナンスが見られた例として、80年代に論争があったタイの大型プロジェクト、「東部臨海開発」がある。80年代にタイのマクロ経済が悪化する中、計画を実施するかどうかタイの国論を二分する議論があった。世銀と日本はそれぞれの立場で意見を言ったが、最終的に、タイ政府は第三の途を選択した。結果的にはタイ政府の選択が適切であったと言える。その背景には、タイでは多様なアクターが自分の立場を主張することができ、一部の意見が独走することを防ぐことの出来る多極的な構造があった。ここにタイ社会の特性を見ることができる。
  • 日本企業は、プラザ合意以降の円高で、海外に投資せざるを得なくなり、タイの東部臨海開発が推進されることとなったという一面があるのではないか。タイのガバナンスが成功したというのは、偶然ではないか。日本がどのような理念で、このプロジェクトへ援助を行ったのか示しきれていない気がする。
  • 財政悪化、対外債務負担増の中で、タイの東部臨海開発プロジェクトを推進しようとした日本の対応は、適切でなかったかも知れない。同時に世銀にも大きな判断ミスがあった。タイのバンコク港は能力の限界に達しつつあり、他の港もなかったら間違いなく能力不足に陥っていた。世銀は、財政、金融、対外債務を重視し、日本は、インフラ、工業団地等のハード、実物セクターを重視した。それぞれの主張はそれぞれ正しいが、途上国の現実に即したバランスのとれた姿勢が重要である。

(チ)予算単年度主義

  • 予算単年度主義は、以前から、援助業務を当該会計年度内に処理しようとして、時に無理や拙速につながることが指摘されてきた。円借款の場合には、国際協力銀行への出資という形で政府予算の処理を終らせているため、支障が生じていない。大型の無償協力事業の場合には、年度ごとに事業を分割実施する「輪切り」方式で対応してきた。ただ、この他の場合には、年度をまたぐ予算使用に国会の議決や閣議決定が求められる。知的支援を含む技術協力において、アウトプットの品質管理と時間的制約の間のジレンマに直面した場合を考えれば、この制約の重さが認識できよう。
  • 予算単年度主義は財政資金の使用の規律を守るという意義はあるが、ODAや研究開発などにおいては、一定の規律の下に柔軟に複数年度方式を導入する必要がある。
  • 円借款については、予算単年度主義を回避する方法としてJBICがあるが、無償資金協力についても同様のメカニズムを作ることは考えられるのか。
  • 予算単年度主義の見直しに加えて、プロジェクト内容の調整・変更の手続きの柔軟化も進められるべきである。

(リ)その他意見

  • 上流から下流までの多くの業務について広範に見られるが、特に、上流業務、特に国ごとの開発ボトルネックや援助ニーズを確認する基礎調査(この成果が「国別援助方針」の基底部を構成する)について著しい。予算や人的資源が分散使用され、それぞれの調査が小規模で不徹底なものになる一方で、途上国側に「調査公害」を引き起こす恐れがある。予算配分の集約化が実現できれば、提案されている国別援助計画の内容の充実も期待できる。
  • 広範に認められる現象であるが、みんなが同じ仕事を重複してやっている。特に国別・事業別援助の意思決定プロセスにおける、国会、政府、実施機関などの間での役割分担の明確化と、実施機関・現地サイドへの一層の権限委譲が望まれる。
  • 中間報告には、国際機関との連携が触れられているが、他の援助国との連携が触れられていないとの指摘が親しい学者からあった。特に、アフリカを中心に議論されているコモンバスケット方式について、この方式が良いか悪いかは別として、他の援助国との連携、調整をどうするか、大いに議論する必要があるのではないか。
  • ODAの積極的な宣伝戦略が必要である。どういうメッセージを、どういうツールで広げていくかが重要。また、日本のメディアだけではなく、海外、現地のメディアをより効果的に活用すべし。現地のメディアについては、プロジェクト訪問、対談、ビデオ配布などが考えられる。
  • 専門的な議論も重要だが、景気が悪いのに何故援助をするのかといった国民の声にどのように答えていくか、また、具体的なアピールをどのように出すか、もう少し突っ込んで議論する必要があるのではないか。
  • 中間報告では、指令塔の強化が盛り込まれている。先進諸国の多くは開発庁を持っているが、日本では各省がバラバラにやっているとの指摘が従来からなされている。徹底的に議論して何か実現できるものを打ち出すべきである。これには政治力が必要であり、現政権で端緒を作るべきである。
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