平成12年6月16日
1.政治・経済・社会情勢
ムバラク現政権は、市場指向・民間主導型の経済政策を推進。中東和平プロセスにおいても仲介・調整役としての役割。貧富その他の格差の軽減による国民生活の安定が課題。
2.開発上の課題
持続的な経済成長の達成が開発目標。年平均約7%の経済成長を目指す。開発上の主要課題は(A)持続的な経済成長、(B)貧困・弱者対策、(C)人材の育成、制度面での強化、(D)環境、(E)政府の効率性の改善。
3.我が国の対エジプト援助政策
(1)対エジプト援助の意義
エジプトはアジア・アフリカ・欧州の接点であり、スエズ運河を抱える地政学的な要衝に位置している。また、アラブ世界の代表者として中東・アフリカ地域において大きな影響力を有し、中東和平プロセスにも重要な役割を果たしている。こうした重要性を有するエジプトは域内の安定を志向する穏健な外交政策をとっており、中東地域の安定を通じて我が国への安定した石油供給を間接的にも支える要因ともなっている。
(2)ODA大綱原則との関係
総じて望ましい方向。
(3)我が国援助の目指すべき方向
(イ)必要な経済・社会インフラ整備の支援。
(ロ)貧富の差等の格差是正に資する貧困層・弱者のための支援を重視する。
(ハ)技術協力と資金協力の連携を強化。
(4)重点分野・課題別援助方針
(イ)経済・社会基盤の整備、産業の振興
インフラ整備(運輸、通信、電力・エネルギー、上下水道等)、産業育成や輸出振興を通じた貿易・投資拡大、観光振興のための支援を検討。
(ロ)貧困対策
貧困緩和のため農業生産の拡大と保健・医療の充実、社会福祉の向上が必要。農業基盤整備、食糧増産援助に関する支援の継続、農業・農村開発、農業生産技術の向上、農産物加工・流通及び水産業振興等の分野についての支援を検討。また、保健・医療の質、特に基礎医療分野における保健・医療サービスの質の向上のための支援を検討。
(ハ)人材育成・教育の充実
教員の再訓練等基礎教育・人材育成分野の底上げを目指す。また、政府の効率性改善の観点から組織のスリム化、公務員の質の向上を目指した支援を検討。
(ニ)環境の保全、生活環境の向上
安全な飲料水の安定供給など生活環境の保全及び向上を目指した包括的な支援を検討。
(ホ)三角協力(南南協力)の推進
第三国研修や第三国専門家等の三角協力を積極的に推進。アフリカ諸国には農業・医療・インフラ整備に関する分野を、パレスチナには基礎的産業分野の拡充に努める。
(5)援助実施上の留意点
(A)プロジェクト実施・施設管理能力、(B)援助国との連携、(C)援助スキームの活用方法の理解の強化、(D)援助受入窓口の連携の強化