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モンゴルを走る日本製バス

 人口約60万人、モンゴルの首都・ウランバートルでは、バス待ちをする光景が名物の一つになっていた。
 冬の凍った道路にバスが止まると、着膨れした客が殺到する。地元の人ですら、凍った路面に足をとられ、よく転ぶ。その上、バスは満員で乗れないこともしょっちゅうある。1時間以上待たされることも日常茶飯時だ。


日本の送ったバス
 この街では、バスが唯一の公共交通機関。市民にとって大切な足も、朝夕のラッシュ時には最高 240%の大混雑となる。名物“バス待ち”の光景も、平均気温がマイナス20度以下になる冬ともなれば、市民にとっては耐え難い苦痛となる。
 市交通局にも連日「1時間待ってもバスが来ない」「やっと来たバスも満員で乗れなかった」などの苦情が殺到していた。
 恒常的な混雑の原因は、バスの絶対数が不足していること。しかも 460台保有するバスのうち、実際に稼動していたのは 300台以下だった。

60台の日本製バスを供与

 そのウランバートルに日本製バスが贈られるようになったのは1995年の冬。翌96年初めまでに計60台が日本政府から供与され、いまウランバートル市内を走り回っている。混雑も緩和の方向にあり、いまでは市交通局に、市民から喜びの声が寄せられるようになった。
 「日本とモンゴルの国旗が付いているので、日本が援助したバスだとすぐわかります。色も綺麗だし、車内に時計が付いているのもいいですね」とは、市内の技術大学に通う女子大生。
 バス運行会社に勤める某ドライバーは、「モンゴルのバス運転手は、売上げによって給料が決まる独立採算性ですから、評判の良い日本製バスに乗って収入を上げたい。いまは外国製と日本製の両方のバスが走っていますが、数年もしないうちに、モンゴルに適したバスはどちらかハッキリするでしょう」と言わずもがな。市民にはすこぶる評判がいい。

忘れてならないフォローアップ

 一方、日本製バスにもいくつかの課題が残っている。日本の常識を上回る厳しい自然条件と、未整備の道路による足回りの故障だ。 3年分のスペアパーツが供与されているが、それがなくなったらどうするのか。道路に合わせてつくったステップが高くて乗りづらい、という問題も表面化してきた。
 こうした問題解決に向け、現在、日本の無償資金協力で、120台分の車庫と、車両の整備・修理工場を持つワークショップが建設されている。バスの稼動率を、現在の62%から88%まで向上させて待ち時間を短縮し、混雑も最大240%から120%まで改善する、という計画だ。
 1996年3月8日「婦人の日」に行われた署名式の席上、ツオグト通産大臣は、「綺麗で快適な日本のバスは女性に大変好評です。婦人の日に願ってもない大きなプレゼントになりました」と、市民に代わって喜びと感謝の気持ちを語った。
 今春、日本政府は新たに40台のバスを贈ることを約束。冬にはウランバートルに届けられ、市内を走り回る予定である。  合計100台の日本製バスは、ウランバートル名物“バス待ち”の光景を一変してしまうかも知れない。

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