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フィリピン共和国
住民参加型によるスラム環境の改善
~パラダイス村スラム環境整備計画

 マニラ首都圏マラボン町は、常に水害に悩まされている地域です。特に低所得層が集まる地域では、排水施設がなかったり、劣悪だったりする状況が、人々のゴミの不法投棄と相まって、一年を通じて衛生環境を悪化させ、すえたようなにおいが漂う中、子供の下痢やデング熱のような感染症が拡がりやすい状態になっています。草の根無償資金協力の実施場所である、マラボン町のスラム地域「パラダイス村」は、名前こそ天国ですが、実際は低所得層の集住地域で、やはり水はけの悪さとゴミの投棄に悩まされている地帯でした。
 この日暮れ以降歩くのが怖いようなパラダイス村で、住民参加により環境を行おうと立ち上がったのが、フィリピンのローカルNGOである「リンガップ財団」とノーベル賞を受賞したNGO「国境なき医師団」のフィリピン事務所です。

プロジェクト開始以前のパラダイス村 プロジェクト開始以前のパラダイス村 プロジェクト開始以前のパラダイス村
プロジェクト開始以前のパラダイス村
現在のパラダイス村 現在のパラダイス村 現在のパラダイス村
現在のパラダイス村
 この2つのNGOは、パラダイス村の水はけを改善すべく、側溝を村の道路や路地沿いに整備することを計画しました。しかし、ただ側溝を作っただけでは、人々がゴミを側溝に捨てるためすぐ詰まってしまい、元の木阿弥になってしまいます。そのため彼らは、側溝建設の材料費こそ、在フィリピン日本大使館の草の根無償資金協力に申請を行ったものの、工事そのものは村の人が総出で行うという、住民参加型の手法を取ることを決めました。
 プロジェクト開始以前のパラダイス村の状況は、スラムに行きなれている大使館担当者でも、本当に実施ができるのだろうかと二の足を踏むほどで、特に住民参加に欠かせないコミュニティの人間関係も希薄な場所でした。しかし、リンガップ財団と国境なき医師団のスタッフがげんばに日参し、人々と対話を行い、ミーティングを重ねる中で、紆余曲折はありましたが、ついには女性達が立ち上がって組織作りを行い、組織毎に工事地区割り当てを行うというまでにコミュニティが成長しました。
 パラダイス村での側溝工事が終わり、その完成式に出席した大使館員がまずめにしたものは、子供がほうきをもって、出来上がった側溝を掃除している姿でした。これまでどこにでもゴミを捨てて問題にしていなかった人々が、これほど短期間でコミュニティ意識を持つようになるとは信じられないものがありました。
 もちろんこの草の根無償の支援では、洪水の時に道路や家が冠水することは防ぐことはできませんが、天候の良いときにも水が澱んで溜まっているということはなくなり、また洪水時にも水の引きが早くなったとのことです。また側溝の完成後、地域が活性化し、今では店が軒を連ねる場所に変わりつつあります。
 草の根レベルの開発の取り組みで、正にピープルズ・パワーのプロジェクトを成功させた2つのNGOに拍手を贈りたいと思います。

案件名:98年草の根無償資金協力「パラダイス村スラム環境整備計画」

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