ラオス人民民主共和国
「開発福祉支援事業(女性自立向上事業)」
職業訓練新コース記念式典(平成11年9月22日)

ラオスの女性の伝統的な民族衣装に「シン」と呼ばれる長い巻きスカートがあります。鮮やかな色彩と美しい織りの「シン」は、外国のファッションが徐々にこの国に流入してきた現在でも、ラオス女性の誇りとして今でも広く愛用されています。この布地を織り上げるには、高度で緻密な技術が要求されますが、職人の数は決して多くありません。他方、初等教育を受けられず社会的に地位の低い女性や身体の不自由な者などにとっては、伝統的な機織りや天然の草木染めなどの技術を習得することにより、経済的に自立する可能性の大きな分野でもあります。
ヴィエンチャン市内にあるホェイホン職業訓練センターでは、女性及び障害者等を対象に、種々の職業訓練を行っています。我が国政府がJICA(国際協力事業団)を通じて実施している開発福祉支援事業では、本職業訓練センターを支援対象とし、現地で活動するNGO「ラオスの子供と女性を支える会」と連携して、専門家の派遣、機材の供与、訓練施設の拡充を行っています。また訓練を通して、機織り・草木染め・縫製技術等の職業訓練の機会を提供し、主に女性や障害者を対象に経済的自立や社会的地位の向上を支援しています。職業訓練コースを修了した者は、月に14万キープから18万キープ(日本円に換算して1500円から2500円程度)の収入を得られるようになりました。
平成11年9月22日、新たな織物等の職業訓練コースが開始されることを記念する式が行われ、開会式において、訓練生の代表として16歳の少女がスピーチを行いました。
「私の家は田舎にあり、主に稲作をして生計をたてています。父と4人の妹や弟たち、そして叔母と一緒に住んでいます。私は小さいときから田んぼにでて働いていたため学校に毎日は行けず、13歳までに小学校3年までしか進級できませんでした。妹や弟たちにはぜひ充分な教育を受けてもらいたいと思っています。
私自身、教育もなく、何の経験もあるわけでもありませんが、織りならばできるような気がします。ここで3ヶ月間訓練を受けたら、織りで収入を上げられるようにさらに技術を磨く努力をしなければなりません。そして近い将来、その収入をもとに妹や弟達にぜひ学校を卒業してもらいたいと思います。
ここでの織りの訓練は、自分自身の職を手にするためと4人の妹や弟達が教育を受けるための希望を強く感じさせてくれます。
ありがとうございました。」
(*)案件概要:JICA開発福祉支援事業「女性自立向上事業」
ラオスでは、女性や障害者を含む社会的弱者にとって、初等教育や技術教育等を受ける機会が十分でなかったため、彼等の経済的自立や社会的地位の向上が妨げられてきました。このため、政府は初等教育の義務教育化や女性・弱者に対する技術教育に重点を置いています。
女性自立向上事業では、ラオスの伝統・文化を配慮し、またそれらを活用した技術の習得を通して女性・弱者の地位向上や経済的自立の促進を目的としています。