ODAとは?

開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ第8回総会
前原大臣開会辞
(平成22年12月16日,於:東京)

 本日,「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ」の第8回総会に多くの国や機関にお集まりいただいたことに感謝いたします。とりわけ,カンボジアのンギー・タジー経済財政省長官,スリランカのジャヤスンダラ財務計画省次官兼経済開発省次官に参加いただき,議長国として光栄に存じます。また,本会合を開催するに当たり,リーディング・グループ事務局である仏外務省の尽力にも心から感謝申し上げます。

 現在も世界各地には,飢餓や病気,気候変動の影響や自然災害などに苦しみ,人間としての尊厳を保てないような苦しい生活を営んでいる人々が数多くいます。我が国を始めとする国際社会は積極的な国際協力を行ってきましたが,ミレニアム開発目標(MDGs)の達成等,世界の開発需要に対応するためには,より幅広い資源を動員することが不可欠です。そのためにも,革新的資金調達メカニズムに関する議論を促進する必要があります。

 「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ」は,2006年の設立以来,国際社会における革新的資金調達に関する国際的議論をリードしてきました。リーディング・グループが一石を投じたことにより,国際社会における革新的資金調達をめぐる動きが,大きな波となりつつあることを実感しています。しかし,革新的資金調達メカニズムの本格的な普及のためには,この問題に対する国際的関心がより大きく喚起され,より幅広い国々が積極的に関与する必要があります。

 我が国は,国際的な議論をリードするため,本年6月にリーディング・グループの議長国に就任しました。議長国を引き受けるにあたり,我が国としては,革新的資金調達に対する関心を一層喚起し,その発展に貢献したいと考えました。このため,我が国は,より幅広い国々が革新的資金調達の重要性を理解し,立場や意見の相違を超えて,リーディング・グループにおける議論に加わるよう,議長国として呼びかけてきました。

 歴代議長国及び事務局である仏外務省の尽力により,リーディング・グループのメンバー国は今次総会までに61か国に達しています。しかし,アジアからの参加は我が国を含め6か国のみでした。このため,特にリーディング・グループへの参加が少ないアジアからの参加を増加させることが,アジアの一員である我が国が議長国を務める意義ではないかと考え,各国の参加を呼びかけました。

 本日,こうした我が国からの呼びかけに応じ,多くのアジア諸国が新たに総会に参加しています。アジア太平洋からスリランカ及びブータンが新たなメンバー国として,また,オーストラリア,インドネシア,ラオス,モンゴル,ミャンマー,ニュージーランド,パキスタン,タイ,東チモール,ベトナムが,今次総会へのオブザーバーとして参加したことを,議長国として心から歓迎します。同時に,G8諸国からも,カナダ及びロシアが今次総会へのオブザーバーとして初めて総会に参加しています。さらに,中南米からエクアドルが正式メンバー国として,欧州からアイルランドが今次総会へのオブザーバーとして参加しています。このような新たな国々の参加は,革新的資金調達が,一部の国の関心事項から,本当の意味で国際的なアジェンダとなったこと,新たな段階に入ったことを示していると考えます。

 我が国自身としても,具体的な取組を行っています。日本政府は,Debt2Healthなどの革新的資金調達を実践している世界基金を,その設立時から強力に支援しております。日本の民間企業も,武田薬品工業が世界基金に資金貢献を行っているほか,住友化学が長期残効型蚊帳の供給を通じて世界基金と協力しています。これらの取組に加え,日本は,IFFIm,AMCなどの保健分野における革新的資金調達を開発・実践しているGAVIアライアンスに対して,来年度から支援を開始します。

 また,国際開発連帯税については,我が国においても,引き続き税制調査会等政府内で検討を行っていく予定です。なお,国際的な議論と実施状況を踏まえつつ,税調における議論を通じ,国民の理解を増進し,国際開発連帯税に関する議論を促進していく考えです。

 さらに,MDGsを始めとする世界の開発課題に対処するためには,民間の自発的な取組も重要です。移民による海外送金や民間団体による寄附などの途上国への民間の資金フローは,ODAを大きく上回るという研究結果もあります。

 また,我が国においては,開発のための資金調達に貢献したいという市民の関心が高まっています。例えば,予防接種のための国際金融ファシリティ(IFFIm)については,国際金融市場から調達した2006年11月からの累計20数億米ドルのうち,13億米ドル以上が日本の個人投資家・機関から調達されたものです。さらに,アジア開発銀行の「ウォーターボンド」,アフリカ開発銀行の「アフリカ教育ボンド」など,途上国支援等を目的とする様々な債券が我が国で発行されています。本年年初から9月末のみでも,我が国において途上国支援等のために発行された債券の総額は,約3,000億円(約35億米ドル)に達しています。これは,世界の人々を支援しようとする「連帯」感が,我が国国民の間に広く存在しているということを示しています。

 日本政府は,途上国の開発に貢献したいという市民や民間の意思を,具体的な成果につなげるため,民間の取組を後押ししていきます。こうした自発的な貢献を国際的な開発支援の潮流と調和させるため,民間企業・団体との積極的な対話を通じて,新しい官民連携のあり方を模索し,日本全体として積極的に貢献したいと考えます。

 今次総会における活発な議論が,各国における革新的資金調達に対する関心をさらに高め,国際的な開発目標の達成の一助となることを期待しております。

このページのトップへ戻る
目次へ戻る