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開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ第8回総会(概要)

平成22年12月20日
外務省地球規模課題総括課


 12月16~17日,東京において「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ」(LG)第8回総会が開催され,我が国は議長国として前原大臣が全体会合の議長を務めたところ,概要は以下のとおりです。会合終了後,前原大臣が議長として議論の結果を総括した「議長サマリー」を発出しました。

1.総論

(1)
今回は,本年1月のサンティアゴ総会に続く第8回目のLG総会でした。会合には,56か国の代表と世界銀行,IMF,WHO,UNICEF等の20の国際機関,更には各国のNGO等18団体の代表や有識者が参加しました。特に,我が国の呼びかけに応じ,アジア太平洋地域やG8諸国等から新たに16か国の参加が得られたこと(そのうち,ブータン,エクアドル,スリランカが新たにメンバーとして参加,その他13か国は今次総会へのオブザーバー参加)は,議長国としての貢献として高く評価されました。
(2)
保健,不正な資金の流れ,教育,国際金融取引,気候変動,貧困・安全保障,移民の送金などの分野毎に各国の取組や国際社会の最新の状況が紹介されましたが,LGの議論が税制のみならず,民間の取組を始めとするその他のメカニズムまで広範に及ぶことを参加者が再認識し,議長国である我が国の議題設定等に賞賛の声がありました。
(3)
これまでLGで重点的に議論されてきた保健分野について,LG事務局がタスクフォースの立ち上げを提案しました。加えて,同事務局が,民間セクターの関与を推進するための研究を行うことが提案され,議長サマリーに右を記載しました。
(4)
また,前原大臣から我が国における民間の取組について紹介した上で,我が国関係企業からインパクト・インベストメントへの国民の関心の高さについて詳細を説明し,参加者の高い関心を呼びました。
(5)
また,我が国の後任として,来年1月にマリがLG議長国を引継ぎ,来年後半にはスペインが議長国を務めることとなりました。

2.議論の内容

(1)全体会合

冒頭,議長である前原大臣より開会辞を述べ,革新的資金調達に関する議論の拡大に対する我が国の貢献をアピールするとともに,我が国における政府及び民間の取組を紹介しました。
次いで,マッセ仏外務省総局長からLG事務局を代表して,日本が議長国を務めることは「死活的に必要」であり,アジア太平洋地域から新たな参加が多数得られたことを評価するとともに,革新的資金調達が国連を含む主要国際会議のアジェンダに載るようになった現状等を説明し,第4回国連後発開発途上国会議(LDCIV)開催時(2011年5月9日~13日,イスタンブール)に革新的資金調達に関するサイドイベントを実施することを提案しました。
引き続き,カンボジアのンギー・タジー経済財政省長官は,途上国への支援と投資の必要性,特に教育の重要性等につき訴え,ドゥースト・ブラジー国連事務総長特別顧問から,UNITDAIを含む革新的資金調達の実績を紹介するとともに,通貨取引開発税やたばこ税,医薬品のパテント・プール等について実施を提案しました。最後に,齋藤勁衆議院議員(国際連帯税議院連盟幹事長)から,議連の目標及びこれまでの成果につき紹介するとともに,今後も議連として航空券連帯税及び通貨取引税の実現に向け努力したい旨抱負を述べました。

(2)第1セッション(保健セクターにおける革新的資金調達)

 UNITAID,WHO,GAVIアライアンス,世界基金,英国及び大和証券の代表から,航空券連帯税,自発的貢献,IFFIm(予防接種のための国際金融ファシリティ),AMC(ワクチンの事前購入制度),インパクト・インベストメント及び上場投資信託(Exchange Trade Funds)を通じた資金調達といった保健分野での革新的資金調達についてそれぞれの取組や実績について最新状況が紹介されるとともに,たばこ税や医薬品のパテント・プール等につき提案がありました。

(3)第2セッション(不正な資金の流れ)

 スペイン,ノルウェー,Global Financial Integrity及びOECDの代表から,租税回避等により途上国から流出する資金の大きさ(開発に与える負の影響),透明性,相互情報交換及び防止体制の必要性,途上国の徴税能力向上の重要性(キャパシティ・ビルディングの必要性とプログラムの実績),各国政府における関係部署横断的な取組の重要性等が述べられました。

(4)第3セッション(教育のための革新的資金調達)

 「教育のための革新的資金調達に関するタスクフォース」専門家から,執筆委員会による報告書について報告が行われた後,セネガル,UNICEF,EC及びオランダの代表から,教育が他のミレニアム開発目標に与える影響の大きさ(妊婦の教育レベルが乳幼児死亡率に影響する等)やそれ故の支援の必要性について意見が述べられました。

(5)第4セッション(国際金融取引に関する革新的資金調達)

 「開発のための国際金融取引に関するタスクフォース」専門家委員会及び我が国の「国際連帯税推進協議会」の代表から,それぞれの報告書について説明した後,ブラジル,ノルウェー,Stamp Out Poverty及びスペインから,通貨取引開発税の金融機関への影響,各国政府部内における議論の現状,各国における認知度向上の必要性,課税対象の選定(国際金融全般とするか,通貨取引とするか)等につき,意見が交わされました。

(6)第5セッション(気候変動に関する革新的資金調達)

 冒頭,議長のノルウェーから潘国連事務総長の設置した「気候変動資金に関するハイレベル諮問グループ(AGF)」報告書及び我が国からCOP16における各国のリーダーシップにつき報告の上,ドイツ,世銀,メキシコから各国・機関における取組と実績について紹介が行われました。

(7)第6セッション(貧困と食料安全保障)

 冒頭,議長のブラジルから自国における取組と食料に関するガイドラインの策定とベストプラクティスの収集の必要性を述べた上,モデレーターであるFAO,マリ,国連,キプロスから,各国・機関における取組が紹介され,特に,食料へのアクセス確保の重要性,食料・栄養と衛生や社会の安定との関連性等が強調されました。

(8)第7セッション(移民の送金)

 冒頭,議長のチリから,移民の送金の開発に対する重要性と安定性,最近の議論の動向につき発言。イタリア,世銀,仏,OECDから各国・機関における取組,送金コストの削減の必要性,国際的な送金の効率性向上の重要性等につき考えを述べました。本国における送金の使途や送金に関する規制について,メキシコやスリランカ等から,移民の所得の移転は民間のプライベートな資金であり,その使途の限定や規制を行うべきではない等の問題意識が提起されたのに対し,マリ,0ECD,チリ等から移民の送金は途上国にとっては安定的な資金フローであり,開発に振り向けるためのチャンネル化や送金コスト引き下げにつき国際的に議論することは有益である等述べました。

(9)全体会合

冒頭,田中徹二オルタモンド事務局長から,我が国NGOのこれまでの活動を紹介するとともに,LG及び日本政府に対する要望を述べました。次いで,次期議長国であるマリのモクタール・ウアンヌ外務・国際協力大臣及びその次の議長国であるスペインのフランシスコ・モサ・サパテロ国際協力長官から,それぞれ議長国としての抱負を述べました。
引き続き,LG事務局(仏外務省)から,革新的資金調達に関する議論の拡大及び今次総会における質の高い議論に対する我が国の貢献へ謝意を述べるとともに,2011年の国連等における議論の重要性を指摘し,事務局として保健に関するタスクフォースの設立を表明しました。
最後に,前原外務大臣から,今次総会における議論を総括し,革新的資金調達に関する議論の原則(新たな手段による資金調達であること,既存資金に対して追加的な資金の調達であること,安定した資金動員に必要な持続性と予測可能性を備えていること)を確認するとともに,次期議長国がマリであること及び議長サマリーの発出を宣明し,会議を終了しました。
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