平成18年10月
1.開催時期:2006年10月18日(水曜日)~20日(金曜日)
2.開催場所:フィリピン(マニラ・アジア開発銀行本部)
3.共催:日本、英国、アジア開発銀行、世界銀行の4者による共催(協力機関:経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC))
4.参加者:アジア大洋州より計20ヶ国、ドナー計29ヶ国・機関(共催者含む)
5. フォーラムの目的:
(1)アジア地域におけるパリ宣言(2005年3月採択)の実施状況の確認。援助効果向上に向けたアジア諸国の取組の中で、何が成果を上げ、何が制約要因となっているかを確認する。
(2)アジアにおける我が国をはじめとする各国の援助経験と成果を今後の援助効果向上の枠組み作りに反映させるために、アジアの優良事例やアジア諸国からの声を取りまとめる。
◆◆◆パリ宣言とは◆◆◆ 国連ミレニアム開発目標(MDGs)をはじめとする国際社会共通の開発目標を達成するためには援助の質・量ともに向上することが不可欠であり、その中で、援助の質を高めて援助効果を向上するために必要な措置について、ドナーとパートナー国(被援助国)双方の約束事項を取りまとめたもの。援助効果に必要な原則として、被援助国のオーナーシップ(自主性・主体性)、被援助国の政策・制度に整合した事業の実施(アラインメント)、ドナーの調和化等が挙げられており、その約束事項は全56のパートナーシップ・コミットメントとして取りまとめられている。また、パリ宣言には12のモニタリング指標が設定されており、定期的にその実施状況がモニタリングされることとなっている。 現在、パリ宣言にはドナーとパートナー国を合わせて102ヶ国、24国際機関が参加しており、DACを中心にその実施促進のための取組が進められている。 |
6.会合の成果
(1) 国際的な意義
(イ)2005年に採択されたパリ宣言に基づいて、アジア各国において援助効果向上に対する取組が進められているが、今次のフォーラムにおいて各国で行われているドナーによる援助の調和化や被援助国の政策・制度に整合した事業の実施(アラインメント)等の経験が共有されるとともに、アジアにおけるODAの実施においてどのような取組がうまくいき、効果を上げているかについて情報共有が行われた。また、援助効果向上の土台として、被援助国のオーナーシップ(自主性・主体性)が最重要であるという認識が被援助国及びドナーの間で共有された。
(ロ)ミレニアム開発目標(MDGs)等の開発目標の達成のために、今後、さらに援助の効果を高めていく上でドナーと被援助国が共同で取り組むべき課題について共有され、そのための取組の方向性についてフォーラムの議長総括の中で取りまとめられた。この中には、技術協力の質を更に高めて被援助国が主体的に国家開発に取り組むための能力強化を行うべき事、被援助国の自立的発展を促すためにドナーは協調して被援助国の諸制度(公共財政管理、調達、監査等)を強化・利用すべきこと、ドナーはそれぞれの比較優位に基づいて実施プログラムの選択と集中を行うべきこと等が盛り込まれている。
(ハ)このフォーラムでは、評価担当者と政策担当者が一同に会して議論することで、援助効果向上における評価の重要性、評価を具体的な施策に結びつけるための政策的な努力の重要性が共有された。また、途上国の評価能力強化に対する継続的な取り組みの重要性についても合意された。
(ニ)アジアにおいては中国、インド等の新興ドナーの重要性が増してきていること、また、共通の開発目標の達成のためには、新興ドナーの援助効果向上の取組への参画を促し、共通のルールに沿って援助を行う必要があることについて議論され、新興ドナーとDAC加盟ドナーとの対話強化や透明性確保の重要性について議長総括で確認された。
(2) 我が国にとっての意義
(イ)援助効果向上は現在、開発援助に関する重要な議題の一つである。今回、アジアにおいて我が国が主導し、英国開発援助庁(DFID)、アジア開発銀行、世界銀行との共催で、パリ宣言実施促進のために地域フォーラムを開催し、アジアにおける我が国の援助経験と成果及び援助効果向上に対する取組をアジア各国や他ドナーと共有することができた。これは、アジアの援助経験と成果を今後の援助効果向上の枠組み作りに反映させるための作業の基礎をなすものである。
(ロ)会議においては、わが国が主張する能力開発(Capacity Development)の重要性、多様な援助様式の相互補完性、国毎の具体的な文脈への配慮の必要性、ミレニアム開発目標(MDGs)等の開発目標達成に向けた様々な関係者を含むパリ宣言の取り組み強化等の視点はアジア各国及びドナーからも支持を受け、議長総括にも盛り込まれた。
(ハ)これまで、我が国が重点的に援助を実施してきたアジアにおいて、援助効果向上の土台となる能力強化が進んでいることが確認されるとともに、参加国が今後更にパリ宣言の実施に向けた努力を行っていくことの重要性につき認識が恐縮された。これにより本フォーラムは、今後、我が国が更なる援助効果の向上/開発成果の向上をおこなっていくための重要な契機となった。
7.今後の取組
(1)パリ宣言において各ドナーが努力すべき課題として挙げられている調和化の促進や被援助国の政策・制度に整合した事業の実施(アラインメント)の動きは各国の現場で進められており、迅速にこれらに対応していくためには、これまでに我が国が行ってきた現地機能強化を更に進め、現地ODAタスクフォースのパリ宣言に対する理解、ドナー協調への積極的な参加を促進する必要がある。
(2)2008年にガーナで開催予定の第三回DAC援助効果向上に関するハイレベルフォーラム(ガーナHLF)では、「効果的な援助とは何か」ということに関する国際的な合意と、それに基づく次期の援助効果向上宣言が採択される予定であり、これに向けて、我が国の援助理念やこれまで実施してきた援助の経験・知見を積極的に発信していく必要がある。
(3)パリ宣言の約束事項に基づいて、我が国として、更なるODAの実施面及び制度面の改善にむけて努力が必要な点については真摯に取り組む事が不可欠である。プログラム化の推進、国別援助計画やローリングプランの質や策定プロセスの改善、被援助国のオーナーシップを更に高める上での現在の事業実施プロセスの問題点の洗い出し等を行っていくことが求められている。