ODAとは?

パリ援助効果向上ハイレベルフォーラム概要と評価

平成17年3月

1.概要

(1)開催期間・開催地: 2005年2月28日~3月2日(於:フランス経済財務産業省)
(2)共催機関 DAC、国際開発金融機関(MDBs)
(3)参加国・機関 DAC諸国、国際開発金融機関、UN機関、IMF、被援助国(アジア大洋州・アフリカ・中南米)より、計91か国(含:日本)、26機関。参加者合計は500名程度。
(4)日本側参加者 外務省、財務省、経済産業省、JBIC、JICA。

2.パリHLFの目的

(1) ローマ調和化宣言の実施状況、問題、今後の「援助効果向上」の具体策を取り纏め、本件についての政治レベルを含めたハイレベルの公約を取り付ける。また、それらの経験を被援助国・ドナー間で共有する。

(2) 「パリ宣言」を採択する。

3.会合の成果

(1) 国際的な意義

(イ)「パリ宣言」(Paris Declaration)を採択した。概要は以下のとおり。

  1. 「パリ宣言」採択に参加した被援助国・ドナーの数の拡大。
  2. 構成:(1)冒頭部分のステートメント(Statement of Resolve)、(2)パートナーシップ・コミットメント、(3)指標(Indicators of progressの3部構成。
  3. 「ローマ調和化宣言」と比べた場合の付加価値
    • Action-orientedな行動計画。パートナーシップ・コミットメントの中で、「オーナーシップ」「アラインメント」「調和化」「開発成果マネジメント」「相互説明責任(Mutual Accountability)」のイシュー毎に被援助国・ドナーそれぞれのコミットメントを明記した。
    • モニタリング・メカニズム: 上記パートナーシップ・コミットメントのうち、12項目の指標を設定(今後、ベースライン(現状を示す数値)を確認した後、本年9月の「ミレニアム+5」サミットまでに、指標8(アンタイド化の項目)を除く11項目に具体的数値を設定する予定)。また、モニタリング実施に当たっては、既存の枠組み(ドナー支援国会合や被援助国・ドナーが参加する現地ベースのワーキンググループ等)を最大限活用する予定
    • パリ宣言の内容面: ローマ調和化宣言以来のアジェンダである「オーナーシップ」「アラインメント」「調和化」に、Mutual accountability(相互説明責任)」「Fragile states(「脆弱な国家」)における援助効果向上」「能力開発(capacity development)」「開発成果マネジメント」が新たに追加された。
  4. 次回会合を2008年に開催(開催地:未定)。


(ロ)ローマ調和化宣言の実施状況、問題、今後の具体策について、被援助国・ドナー間で共有できた。例えば、「ローマ調和化宣言」のパイロット国ではPBAs(program-based approaches1実施が強化される等「援助効果向上」(aid effectiveness)の取り組みが深化、それ以外の国でも「援助効果向上」努力が広がりつつあることを確認した。

(ハ)国際ドナーコミュニティと被援助国とが共同で、「援助の質」向上のための具体的措置の実施を公約した。

 なお、1990年代後半以降、国際ドナーコミュニティは以下に努力してきた。
  • パートナーシップ強化⇒DAC新開発戦略(1996年)、CDF(Comprehensive Development Framework)(1998年)
  • 開発目標の設定⇒DAC新開発戦略(1996年)、ミレニアム宣言(2000年)
  • 開発戦略の提示&rARr;PRSP(1999年)
  • 開発資金の確保⇒モンテレイ合意(2002年)
  • 援助の質の向上⇒パリ宣言(2005年)


 今回の「パリ宣言」採択によって、上記5分野への国際ドナーコミュニティとしての具体的行動計画が漸く出揃うこととなった。(注:「援助の質の向上」については、「ローマ調和化宣言」、開発成果マネジメントにおけるマラケシュ「行動原則(Core Principle)」等があるものの、具体的措置を提示するに至っていなかった。)

(2) 日本にとっての意義

(イ)今回、我が国におけるローマ調和化宣言の実施状況を取り纏めて会場で配布した。その中で、我が国のグッドプラクティスを整理した。また、実務者会合の「公共財政管理」分科会で、ベトナム政府関係者とJBICがベトナムの「5-Bank Initiative」の事例を報告した。「能力開発」分科会ではJICAがドナー側の共同議長を務めた。

(ロ)「パリ宣言」に、我が国の主張(以下のボックス)の多くが基本的な考え方として反映されている

パリHLFにおける我が国の主張

  1. 被援助国のオーナーシップが重要である。「援助効果向上」プロセスは、ドナー主導でなく、被援助国主導で進められるべき。
  2. 能力開発(capacity development)が重要である。被援助国がオーナーシップ・リーダーシップを発揮していく上で、能力開発は不可欠な要素である。そのためには、先ず、被援助国において、誰の何のキャパシティが不足しているのかを特定した後、それに基づいて、被援助国の開発戦略に具体的目標・措置を盛り込んでいくことが重要である。また、ドナー支援にあたっては、被援助国関係者の能力開発に結びつくようなアプローチをとるべきである。例えば、プロジェクトサイクルの各段階で、被援助国関係者の参加機会を確保することによって、先方のニーズを反映しやすくするとともに、学習機会を提供していくべきである。
  3. 国家開発戦略への整合性(アラインメント)向上が重要である。アラインメントを促す手段としてPBAsが有効である。PBAs実施に当たって、各ドナー・各モダリティの「強み」を組み合わせることによって、補完性を高めることが、より効果的である(Complementarity of aid modalities)。
  4. モニタリング: 定量的指標(quantitative indicators)と定性的指標(qualitative indicators)の2つをバランス良く組み合わせるべき。目標数値設定はベースライン(現状の数値)を確認した上で行うべし。また、実際のモニタリングは、既存の枠組み(ドナー支援国会合や被援助国・ドナーが参加する現地ベースのワーキンググループ等)を最大限活用すべきである。


(ハ)「援助効果向上のための我が国の行動計画(PDF)」の発表: パリHLFで、我が国は、ローマHLF同様に、「パリ宣言」の実施促進を目的とした行動計画を独自に発表し、「パリ宣言」に対する我が国のコミットメントを示した。

4.「ポスト・パリ」に向けて

(1) 「内なる改革」の重要性:「援助効果向上」アジェンダは、当初、一部の欧州ドナー主導でサブサハラ諸国を中心に始まったが、現在は被援助国自身のニーズとして広く認識されている。また、ミレニアム開発目標の達成には、援助額の増大とともに援助効果の向上が必要であるとの認識も広く共有されるようになっている。今後は、日本としても、実践にあたっては、個々の被援助国の実情を考えながら、「援助効果向上」アジェンダに対して柔軟に対応していく必要がある。そのためには、今回発表した行動計画に沿って、わが国の援助政策の立案及び実施体制の改善・強化を図っていく必要がある。

(2) 外への発信(「ポスト・パリ」アジェンダへの対応)
 今後、DACでは、「ポスト・パリ」のアジェンダを議論していく予定である。主要なテーマ候補として、パリ宣言の数値目標の設定(9月まで)、パリ宣言の実施状況のモニタリングが挙げられている。それ以外のテーマ候補として、(イ)援助効果向上のための能力開発、(ロ)Fragile States(脆弱な国家)における援助効果向上、(ハ)被援助国制度に則った調達、資金管理・会計監査、モニタリング報告(所謂「use of country system」)が挙げられている。我が国としては、これまで蓄積してきた経験・知見を積極的に発信していく必要がある。

(参考)パリ宣言サイト:http://www.aidharmonisation.org/

1 (注)PBAs=Program-based approaches。被援助国は開発計画及びそれを裏付ける支出計画を策定し、実施に移していくこと。ドナーは、他ドナーと協調しつつ、それに則って援助を実施することが求められる。


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