平成15年3月
平成15年2月24-25日、イタリア外務省において、世界銀行とOECD-DAC(経済協力開発機構・開発援助委員会)の共催により、調和化ハイレベルフォーラム(
High-Level Forum on Harmonization)が開催されたところ、会合の概要と成果および今後の課題以下の通り。
1.会合の目的
約2年間に亘る国際開発金融機関(MDBs)及びOECD・DACにおける援助実施政策・手続きに関する調和化の作業について総括するとともに、今後数年間の調和化の具体的な取り組みの方向性について議論することを目的として開催された。
2.出席者
世界銀行をはじめとする主要MDBs、OECD・DAC、UNDP(国連開発計画)等の開発関係国際機関の長、PRSP策定国および調和化パイロット対象国の途上国元首・閣僚、主要ドナー国の経済協力局長等多数のハイレベルを含む約250名の出席があった。我が国からは、吉川元偉外務省経済協力局審議官を団長として、外務省、財務省、JICA、JBICより8名が参加した。
3.議論のポイント
(1)モンテレイ合意・MDGs(ミレニアム開発目標)の達成には開発資金の増額とあわせて開発効果のさらなる向上が必要であり、開発効果向上の方策の一環として、調和化を着実に推進することが重要であるという認識が広く共有された。
(2)調和化の前提としてMDGs(ミレニアム開発目標)・PRSP(被援助国各国が作成する貧困削減戦略文書)の相互の連携と重要性が確認された。
(3)調和化の議論はドナー間の異なる援助手続きにより途上国側に生じる手続きコストの削減に端を発していたが、今後はPRSP等途上国側の政策・制度に対してドナーの政策・制度を調和させていく重要性が強調された。
(4)援助モダリティについては、EU・北欧諸国・オランダ等より、財政支援を目指すべき方向とする意見が出されたものの、我が国やフランス・ドイツをはじめ世銀、ADB等のMDBsや一部途上国からは、各国毎の状況を踏まえつつプロジェクト型支援を含む多様な援助モダリティを認めるべきとの意見が出された。ただし、アフリカを中心とした一部途上国は、財政支援を求める立場を表明した。
(5)会合の結論として「ローマ調和化宣言」が採択され、今後は各途上国ごとに調和化の実施が奨励され、ドナー側はそれを支援し進捗状況を報告することが合意された。また、2004年にOECD・DACで予定されている調和化進捗レビューを受け、2005年にフォローアップのための会合を計画することとなった。
4.我が国の対応
(1)調和化の議論は日本の経済協力に大きな影響を及ぼす可能性が高いとの認識のもと、外務省、財務省、JICA、JBICを中心として、ハノイにおける準備ワークショップを共催するなど、準備段階から積極的に関与した。
(2)我が国の調和化の基本的考え方((a)調和化はそれ自体が目的ではなく開発効果向上のための手段であること、(b)調和化取り組みにおける途上国側のオーナーシップの尊重、(c)各国の実状を踏まえた国別アプローチの重要性、(d)援助モダリティの多様性を確保する重要性)を積極的に発信した。
(3)我が国の調和化取り組みとして、ベトナムでのJBIC、世銀、ADBの調和化の事例を広く紹介した。
(4)会合では、吉川審議官よりアジア地域準備ワークショップの報告を行った他、調和化に関する日本政府の基本的考え方に関するステートメントおよび今後の取り組みに関するアクションプランを発表した。
5.成果
(1)アジア地域準備ワークショップの共催や、ベトナムにおけるJBIC、世銀、ADBの調和化の取り組み等、我が国の調和化への取り組みに対して一定の評価がなされた。
(2)我が国の調和化に対する基本的考え方は概ね受け入れられ、ローマ調和化宣言に反映された。
6.今後の課題
本会合の結果を踏まえ、引き続き調和化の議論への我が国の立場の反映に努めるとともに、我が国自身の援助の開発効果を高めるため、国別援助体制・政策の強化、事業形態の見直し等の改革に取り組んで行く必要がある。