平成25年8月
今日のグローバルな課題を解決し持続的な成長を実現するためには,あらゆる分野で様々な主体の活力を結集し,世界で活躍できる人材を育成することが不可欠です。そうした中では,グローバル人材育成や産学官の一角を担う大学に,ODA事業に参画し重要な一翼を担うことが期待されています。
また,大学のODA事業への参画は,大学の国際化にも資すると共に,事業経営の多角化にもつながります。大学が中小企業や地方自治体への支援と連携してODA事業に取り組むことで,産学官の連携の強化にもメリットがあります。
このような観点から,大学によるODAの活用を拡大し,オールジャパンで国際協力を推進することを目的とした意見交換会を開催し,外務省・JICAが昨今取り組んでいる中小企業・地方自治体等の海外展開支援やグローバル人材育成における青年海外協力隊事業の活用を中心とした事例紹介と意見交換を行いました。
本意見交換会における各講演の要旨及び主要な質疑応答は以下のとおりです。
本年6月,政府は「日本再興戦略」を発表し,グローバル人材力の強化や意欲のある企業の海外展開を後押しすることなどを目標として掲げた。大学によるODAの戦略的活用が進めば,オールジャパンで人間の安全保障の理念に基づく国際協力を推進することに役立つものと考える。
現状,本邦の大学と途上国の大学の連携は多数ある。国費留学生の受入等,リーダー育成に貢献しており,留学生は帰国後活躍している。ODA卒業予定国では中核的労働者に高度な知的・技術移転を行うことが今後必要となるだろう。ODA予算は産業に直結するものを優先させがちであるが,トップセールスのインフラ輸出戦略等に絡めた産業人材育成に貢献していきたい。大学と国際協力の連携の促進を進めていく。
従来から大学と中小企業をつなぐ施策はあったが,近年,海外展開関連施策が増加してきている。大学との関連でいえば,グローバル人材の育成という観点から,大学生の海外インターンシップや新興国におけるビジネス研修のほか,海外からの留学生に日本の中小企業でのインターンシップを経験させる取組も行っている。
ODA予算が減少傾向にある中,ODAの担い手の拡大を重視している。また産学官で連携することで,活用される技術の多様化,国際開発に一層資するような内容を提供することが本セッションの目的。大学にとっても,大学の国際化や事業の多角化の側面に資するものと承知している。本日の大学の発表を受け,ご出席の大学におかれては今後ご検討頂きたい。(外務省の「ODAを活用した中小企業等の海外展開支援」,JICAの「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」,「草の根技術協力事業(地域提案型)」の事業概要を説明。)
平成24年度政府開発援助海外経済協力事業委託費による案件化調査で,株式会社多機能フィルターと共同企業体を結成し提案した「防災・環境保全及び環境再生技術の展開・普及可能性調査」が採択された。大学の技術・人材が活用されたほか,事業推進にあたり現地(インドネシア)との学術交流協定大学のネットワークや,「やまぐち国際協力の里」など組織横断的体制を活用し,工夫に努めた。大学が参画することによる裨益点としては,大学が有する技術の波及,社会貢献,地域社会との関係構築,学術交流協定大学間の交流活性化,受験生への関心喚起,プロジェクトを通じた教職員の人材育成,知財収入などがある。
株式会社王子グリーンリソース株式会社が代表法人である「ラオス国BOP訴求型の農林業由来バイオコークス製造販売事業準備調査」が,JICA協力準備調査(BOPビジネス連携促進)に採択され,近畿大学も支援している。大学側のメリットとしては,同事業で活用されている植物由来のバイオマス燃料であるバイオコークスのエネルギー的な位置づけ,バイオコークスの利用による地球規模課題への貢献がある。
昨年度,JICA草の根技術協力(地域提案型)に採択され,大分県別府市等の地方自治体・地元の協力のもと,「(タイ国)スリン県におけるコミュニティ・キャパシティ開発による地方開発プロジェクト」に取り組んでいる。大学への裨益効果としては,教育研究理念の実践,専門家としての大学院生の人材育成が挙げられる。他方で,課題としては学内において,大学が同事業に参画することの理解を深めることがある。
協力準備調査(BOPビジネス連携促進),ガーナにおける「日本発「土のう」による農村道路整備事業準備調査」を実践する中で得られた知見としては,NGO及び大学がBOPビジネスに参画するにあたり,特定製品だけではなくパッケージ型ビジネスモデルの提供は有効だと考える。ケニアではすでに土のう工法を用いた小規模道路整備会社が研修生から生まれ、現地の人々によるBOPビジネス化の芽が出ており興味深い。
大学と青年海外協力隊事業との連携を通じて,応募者の安定的確保,専門性を要する案件への対応などの効果が期待される。大学においても,各大学の国際戦略に即した人材育成,途上国における人材育成の現場の獲得などのメリットが考えられる。
帯広畜産大学では,グローバル人材育成にあたり,1.学際,2.国際,3.実学を大きな柱として取り組んでおり,在学生を派遣する青年海外協力隊事業との連携事業は3つの柱に即する取組と位置づけている。
広島大学では,博士課程前期の学生の青年海外協力隊事業への参加を組み込んだIDEC(広島大学大学院国際協力研究科)-JICA連携特別プログラムを実施している。ザンビアの初・中等学校の理数科教員の職種で派遣し,最大12単位まで単位認定を行っている。
在学生の短期ボランティアの参加にあたり,最大6単位まで認定を行っている。学生への教育効果としては,途上国経験を通じたグローバルな人材の素地の形成,主体的学習への動機付けがあげられる。大学のメリットとしては,入試広報における活用,大学イメージの向上がある。
JICAボランティア派遣前訓練は,主に語学と一般課業で構成される。それぞれの一部を,一般競争入札を経た委託業務により実施している。単位認定や短期ボランティアに加え,例えば,可能性としての検討段階ではあるが,このような派遣前訓練業務を受託する可能性につき,大学から意見を聞きたい。
本日は,多数の大学・企業関係者にご参加いただき感謝。今回の意見交換会は発表が中心であったが,今後も情報交換などを行っていくべく,中企庁,文科省とも引き続き連携していく。今後も再度意見交換会を開催したく考えており,ご協力をお願いする。
独立行政法人国際協力機構(JICA)企画部総合企画課
電話:03-5226-9106
FAX:03-5226-6373
E-mail:pdtsp@jica.go.jp
外務省国際協力局ODA中小企業等支援タスクフォース
電話:03-5501-8000(内線3493)
FAX:03-5501-8372
E-mail:odakanminrenkei@mofa.go.jp
独立行政法人国際協力機構(JICA)中小企業支援調査課
電話:03-5226-9283
FFAX:03-5226-9307
E-mail:pdtfs@jica.go.jp
※ 関係諸機関を含む中小企業の海外展開支援全般については中小企業庁経営支援部新事業促進課(電話:03-3501-1767、FAX:03-3501-7055)までお問い合わせください。
独立行政法人国際協力機構(JICA)民間連携事業部連携推進課
電話:03-5226-6960
電話:03-5226-6960
E-mail:ostpp-contact@jica.go.jp
お近くのJICA国内機関までお問い合わせください。
http://www.jica.go.jp/about/structure/domestic/index.html
独立行政法人国際協力機構(JICA)青年海外協力隊事務局計画課
電話:03-5226-9809
FAX:03-5226-6379
E-mail:jicajv@jica.go.jp