ODAとは? 大学とODA

「大学によるODAの戦略的活用」(結果概要)

平成25年8月

  • (写真)阿部政務官による挨拶
    阿部政務官による挨拶
  • (写真)意見交換会の様子
    意見交換会の様子

 今日のグローバルな課題を解決し持続的な成長を実現するためには,あらゆる分野で様々な主体の活力を結集し,世界で活躍できる人材を育成することが不可欠です。そうした中では,グローバル人材育成や産学官の一角を担う大学に,ODA事業に参画し重要な一翼を担うことが期待されています。
 また,大学のODA事業への参画は,大学の国際化にも資すると共に,事業経営の多角化にもつながります。大学が中小企業や地方自治体への支援と連携してODA事業に取り組むことで,産学官の連携の強化にもメリットがあります。
 このような観点から,大学によるODAの活用を拡大し,オールジャパンで国際協力を推進することを目的とした意見交換会を開催し,外務省・JICAが昨今取り組んでいる中小企業・地方自治体等の海外展開支援やグローバル人材育成における青年海外協力隊事業の活用を中心とした事例紹介と意見交換を行いました。

  • 主催:外務省
  • 日時:平成25年7月25日(木曜日)10時30分~12時00分
  • 会場:JICA市ヶ谷ビル2階国際会議場(東北・中部・関西・中国・九州のJICA国内機関(TV会議))
  • 参加者:大学,企業等 約100名
  • 式次第(PDF:0.1MB)

本意見交換会における各講演の要旨及び主要な質疑応答は以下のとおりです。

1 意見交換会開催主旨

(1)阿部俊子外務大臣政務官挨拶

本年6月,政府は「日本再興戦略」を発表し,グローバル人材力の強化や意欲のある企業の海外展開を後押しすることなどを目標として掲げた。大学によるODAの戦略的活用が進めば,オールジャパンで人間の安全保障の理念に基づく国際協力を推進することに役立つものと考える。

(2)文部科学省挨拶

現状,本邦の大学と途上国の大学の連携は多数ある。国費留学生の受入等,リーダー育成に貢献しており,留学生は帰国後活躍している。ODA卒業予定国では中核的労働者に高度な知的・技術移転を行うことが今後必要となるだろう。ODA予算は産業に直結するものを優先させがちであるが,トップセールスのインフラ輸出戦略等に絡めた産業人材育成に貢献していきたい。大学と国際協力の連携の促進を進めていく。

(3)中小企業庁挨拶

従来から大学と中小企業をつなぐ施策はあったが,近年,海外展開関連施策が増加してきている。大学との関連でいえば,グローバル人材の育成という観点から,大学生の海外インターンシップや新興国におけるビジネス研修のほか,海外からの留学生に日本の中小企業でのインターンシップを経験させる取組も行っている。

2 新たな援助の担い手との連携 

(1)「大学によるODAの戦略的活用 ―外務省・JICAによる中小企業・地方自治体等の海外展開支援―」
   (講演者:外務省国際協力局事業管理室長 遠藤彰氏,配付資料(PDF:3.4MB)

ODA予算が減少傾向にある中,ODAの担い手の拡大を重視している。また産学官で連携することで,活用される技術の多様化,国際開発に一層資するような内容を提供することが本セッションの目的。大学にとっても,大学の国際化や事業の多角化の側面に資するものと承知している。本日の大学の発表を受け,ご出席の大学におかれては今後ご検討頂きたい。(外務省の「ODAを活用した中小企業等の海外展開支援」,JICAの「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」,「草の根技術協力事業(地域提案型)」の事業概要を説明。)

(2)「外務省委託事業・案件化調査における中小企業との連携事例」
   (講演者:山口大学リサーチアドミニストレーター 清水谷卓氏,配付資料(PDF:4.0MB)

平成24年度政府開発援助海外経済協力事業委託費による案件化調査で,株式会社多機能フィルターと共同企業体を結成し提案した「防災・環境保全及び環境再生技術の展開・普及可能性調査」が採択された。大学の技術・人材が活用されたほか,事業推進にあたり現地(インドネシア)との学術交流協定大学のネットワークや,「やまぐち国際協力の里」など組織横断的体制を活用し,工夫に努めた。大学が参画することによる裨益点としては,大学が有する技術の波及,社会貢献,地域社会との関係構築,学術交流協定大学間の交流活性化,受験生への関心喚起,プロジェクトを通じた教職員の人材育成,知財収入などがある。

(3)「ラオス国BOP訴求型の農林業由来バイオコークス製造販売事業準備調査(BOPビジネス連携促進)」
   (講演者:近畿大学准教授 井田民男氏,配付資料(PDF:0.5MB)

株式会社王子グリーンリソース株式会社が代表法人である「ラオス国BOP訴求型の農林業由来バイオコークス製造販売事業準備調査」が,JICA協力準備調査(BOPビジネス連携促進)に採択され,近畿大学も支援している。大学側のメリットとしては,同事業で活用されている植物由来のバイオマス燃料であるバイオコークスのエネルギー的な位置づけ,バイオコークスの利用による地球規模課題への貢献がある。

(4)「『国際協力』への取り組み~立命館アジア太平洋大学」
   (講演者:立命館アジア太平洋大学リサーチ・オフィス課長 片岡龍之氏,配付資料(PDF:0.6MB)

昨年度,JICA草の根技術協力(地域提案型)に採択され,大分県別府市等の地方自治体・地元の協力のもと,「(タイ国)スリン県におけるコミュニティ・キャパシティ開発による地方開発プロジェクト」に取り組んでいる。大学への裨益効果としては,教育研究理念の実践,専門家としての大学院生の人材育成が挙げられる。他方で,課題としては学内において,大学が同事業に参画することの理解を深めることがある。

(5)「NGOとしてBOPビジネスを展開する」
   (講演者:京都大学教授 木村亮氏,配付資料(PDF:1.0MB)

協力準備調査(BOPビジネス連携促進),ガーナにおける「日本発「土のう」による農村道路整備事業準備調査」を実践する中で得られた知見としては,NGO及び大学がBOPビジネスに参画するにあたり,特定製品だけではなくパッケージ型ビジネスモデルの提供は有効だと考える。ケニアではすでに土のう工法を用いた小規模道路整備会社が研修生から生まれ、現地の人々によるBOPビジネス化の芽が出ており興味深い。

3 青年海外協力隊事業の活用

(1)「JICAボランティア事業とグローバル人材育成(大学への期待)」
   (講演者:国際協力機構青年海外協力隊事務局審議役 松島正明氏,配付資料(PDF:0.6MB)

大学と青年海外協力隊事業との連携を通じて,応募者の安定的確保,専門性を要する案件への対応などの効果が期待される。大学においても,各大学の国際戦略に即した人材育成,途上国における人材育成の現場の獲得などのメリットが考えられる。

(2)「国際的に活躍できる人材の育成」
   (講演者:帯広畜産大学学長 長澤秀行氏,配付資料(PDF:1.7MB)

帯広畜産大学では,グローバル人材育成にあたり,1.学際,2.国際,3.実学を大きな柱として取り組んでおり,在学生を派遣する青年海外協力隊事業との連携事業は3つの柱に即する取組と位置づけている。

(3)「『青年海外協力隊派遣』―ザンビア理数科教員派遣の枠組みと成果―」
   ((講演者:広島大学教授 池田秀雄氏,配付資料(PDF:1.6MB)

広島大学では,博士課程前期の学生の青年海外協力隊事業への参加を組み込んだIDEC(広島大学大学院国際協力研究科)-JICA連携特別プログラムを実施している。ザンビアの初・中等学校の理数科教員の職種で派遣し,最大12単位まで単位認定を行っている。

(4)「教育活動への短期ボランティア派遣の活用」
   (講演者:拓殖大学教授 佐原隆幸氏,配付資料(PDF:0.4MB)

在学生の短期ボランティアの参加にあたり,最大6単位まで認定を行っている。学生への教育効果としては,途上国経験を通じたグローバルな人材の素地の形成,主体的学習への動機付けがあげられる。大学のメリットとしては,入試広報における活用,大学イメージの向上がある。

(5)「JICAボランティア派遣前訓練に関する大学との連携可能性について」
   (講演者:外務省国際協力局事業管理室 遠藤彰氏,配付資料(PDF:0.6MB)

JICAボランティア派遣前訓練は,主に語学と一般課業で構成される。それぞれの一部を,一般競争入札を経た委託業務により実施している。単位認定や短期ボランティアに加え,例えば,可能性としての検討段階ではあるが,このような派遣前訓練業務を受託する可能性につき,大学から意見を聞きたい。

4 意見交換

(1) 大学からの意見

  • 平成24年度政府開発援助海外経済協力事業委託費による案件化調査への応募にあたり,地方の企業にとってネックになるのはコンサルタントとのマッチングだが,地方大学はその役割を担うことができると考え,最初のケースとして応募し,事業を実施した。地方拠点として大学にも担える役割があるので,他大学にも中小企業支援を行ってもらえたらと思う。
  • 大学ランキングにおける評価項目は研究論文中心だが,政府開発援助海外経済協力事業委託事業の受注実績など,大学のODAへの貢献も評価として反映して欲しい。
  • 各省庁等が実施する中小企業の海外展開支援に関連するスキームは多岐にわたり,どれを利用すれば良いのかわかりにくいので,ワンストップサービスを提供して欲しい。
    • 今年度委託事業の事前説明会では,関係省庁機関と合同で実施することで,外務省・JICAの中小企業支援スキームのみならず政府全体の支援策等について情報提供を行った。(外務省)
    • 今年度からJICA国内機関に中小企業支援の専門嘱託職員を配置した。(JICA)
  • 日本再興戦略ではスーパーグローバル大学院の創設やグローバル人材の育成があげられているが,育成した人材をどのように活用していくのかが課題だと考える。特に国際協力分野は雇用の安定したポストに限りがあり,希望する職種につくのは難しいのが現状であり,受け皿を整備する必要がある。NGOや開発コンサルにおいて人材を活用できるよう政府としてアファーマティブ・アクションのような施策を講じて頂きたい。開発コンサルタントでは,高齢化が進んでいると共に,新規採用が少ない。外務省,JICA等の委託事業では業務従事者の実績が評価されることから,既に経験を積んでいる人材に有利であり,若手の参入は現実的に厳しい。ポストの充実と若手を積極的に採用する制度に取り組んで欲しい。
    • 開発コンサルタントについて,例えば調達に関しては副プロジェクトマネージャーに若手人材が登用されやすくなるような制度改善を行ってきている今後も適宜制度改善に取り組みたい。(外務省)外務省と連携を取っていく。(中小企業庁)
    • ワンストップサービスの提供にあたり,国内と海外での窓口が想定されるが,海外の窓口としては,今年度から「中小企業海外展開支援現地プラットフォーム」を8ヵ国10拠点に随時設置している。同プラットフォームは在外公館,JETRO現地事務所,JICA現地事務所と連携しているほか,現地の大学も参画している。ベトナムとブラジルにおける同プラットフォームの立ち上げ式には茂木敏充経済産業大臣が出席したほか,その他の地域でも大使,総領事等にも出席してもらっている。国内では,JETRO,JICA等,関係諸機関としっかり連携をとっている。留学生の就職に関しては,数値目標を設定して,引き続き実績を上げるべく取り組んでいく。(中小企業庁)

(2) 企業からの意見

  • 平成24年度政府開発援助海外経済協力事業委託費による案件化調査に応募したが,企画書を提出してから審査結果が出るまで時間がかかった。長期間人材を確保することは難しいので,審査期間を短縮して欲しい。
  • 同事業は,途上国と本邦中小企業を繋ぐ,横断的な良い取組であると評価。出る杭を伸ばすような取組を行って欲しい。これに,大学の技術移転機関(TLO)も参入できるよう,組織的な支援を行って欲しい。
  • 中小企業が海外展開をするにあたり,現地における産業中核人材の少なさが課題となっている。大学院教育に実学を取り込むなど,高度な人材育成への支援を行って欲しい。また,そのための大学院に対する組織的支援をお願いしたい。
  • 日本企業と現地企業の間には文化的差異があるが,海外からの留学生は,そのギャップを埋める役割が期待される。留学生の受入れや採用に関する組織的支援を考えたら良いと思う。

5 阿部政務官による総括

本日は,多数の大学・企業関係者にご参加いただき感謝。今回の意見交換会は発表が中心であったが,今後も情報交換などを行っていくべく,中企庁,文科省とも引き続き連携していく。今後も再度意見交換会を開催したく考えており,ご協力をお願いする。


ODA事業への参画については、以下にお問い合わせください。

大学のODA事業への参画について

独立行政法人国際協力機構(JICA)企画部総合企画課
電話:03-5226-9106
FAX:03-5226-6373
E-mail:pdtsp@jica.go.jp

ODAを活用した中小企業等の海外展開支援について

外務省国際協力局ODA中小企業等支援タスクフォース
電話:03-5501-8000(内線3493)
FAX:03-5501-8372
E-mail:odakanminrenkei@mofa.go.jp

独立行政法人国際協力機構(JICA)中小企業支援調査課
電話:03-5226-9283
FFAX:03-5226-9307
E-mail:pdtfs@jica.go.jp

※ 関係諸機関を含む中小企業の海外展開支援全般については中小企業庁経営支援部新事業促進課(電話:03-3501-1767、FAX:03-3501-7055)までお問い合わせください。

協力準備調査(BOPビジネス連携促進)について

独立行政法人国際協力機構(JICA)民間連携事業部連携推進課
電話:03-5226-6960
電話:03-5226-6960
E-mail:ostpp-contact@jica.go.jp

草の根技術協力事業(地域提案型)について

お近くのJICA国内機関までお問い合わせください。
http://www.jica.go.jp/about/structure/domestic/index.html

青年海外協力隊について

独立行政法人国際協力機構(JICA)青年海外協力隊事務局計画課
電話:03-5226-9809
FAX:03-5226-6379
E-mail:jicajv@jica.go.jp



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