軍縮・不拡散

軍縮・不拡散イニシアティブ第3回外相会合
(概要と評価)

平成23年9月21日

  • (写真)第三回NPDI外相会合
  • (写真)共同記者会見

1 全体概要

 9月21日,ニューヨークの我が方国連代表部において,軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)第3回外相会合が開催された。NPDIは,昨年9月の国連総会の機会に日豪主導で立ち上げた,核軍縮・不拡散分野における地域横断的な有志国グループであり,本件外相会合は,本年4月にベルリンで行われた第2回会合に続き,我が国と豪州が共催して国連総会のマージンで開催したもの。午後4時から5時30分まで外相会合,その後5時50分から6時30分まで共同記者会見が行われた。出席者は以下のとおり。

我が国
玄葉外務大臣(議長)
豪州
ラッド外相(共同議長)
ドイツ
ヴェスターヴェレ外相
カナダ
ベアード外相
オランダ
ローゼンダール外相
トルコ
ダーヴトオール外相
アラブ首長国連邦
アル・マズルーイ安全保障・軍事問題担当外務副大臣
チリ
スコクニッチ外務省官房長
ポーランド
ナイデル外務次官
メキシコ
ロブレド外務次官

2 会合の概要

(1)玄葉大臣の発言

 玄葉大臣は,会合の冒頭,昨年9月に立ち上げたNPDIが,(1)核兵器国と非核兵器国との橋渡しの役割を果たすべく,現実的な提案を打ち出すこと,(2)「核リスクの低い世界」の創出に向け,国際社会における中長期的な議論を主導すること,という目的の下,核軍縮の報告フォームの提案など,着実な成果を挙げてきたと述べた。また,NPDIが過去2回の会合での参加国の活発な議論を経て,その動向が国際社会から注目されるまでに成長したと述べた。

 その一方で,玄葉大臣は,核軍縮・不拡散の分野においては,兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の早期交渉開始をはじめとして多くの課題が山積しており,こうした課題について,2012年のNPT運用検討会議第1回準備委員会に向けて,より行動重視の方向性を打ち出す必要性を訴えた。

(2)各参加者からの発言

 ヴェスターヴェレ・ドイツ外相は,FMCTについて,軍縮の主要機関であるジュネーブ軍縮会議(CD)が機能不全に陥っていることを踏まえ,ベルリン・ステートメントで述べているとおり,国連総会に場を移して事態の進展を図る必要がある旨述べた。また,ベアード・カナダ外相は,カナダが準備しているFMCTに関する国連総会決議案について紹介しつつ,決議案への5核兵器国を含む幅広い支持を得るべく第一委員会に向けてメンバー国間で議論を深めていく考えを示した。

 ラッド豪州外相は,核軍縮の報告フォームの扱いについて,5核兵器国からのフィードバックを得る必要性に触れつつ,5核兵器国との間で不拡散を含む幅広い議題で引き続き対話の機会を持ち,意見交換を行っていくことが重要と主張した。

 ダーヴトオール・トルコ外相は,2012年の中東非大量破壊兵器地帯設置国際会議の成功に向け,事務総長に対して主催国及びファシリテーターの早期決定を促すよう強いメッセージを発信するとともに,包括的なアプローチにより,全ての関係国を巻き込むことが重要である旨強調した。

 ロブレド・メキシコ次官は,非核兵器地帯の拡大により消極的安全保証を拡大するとともに,バイやマルチの外交の場で,NPDIとして中東非大量破壊兵器地帯国際会議開催に向けた働きかけを積極的に行うべきとの主張がなされた。

 ローゼンダール・オランダ外相からは,市民社会や各国議会との連携が必要との問題意識が提起された。

(3)共同ステートメントの採択

 この後,核軍縮の報告フォームの5核兵器国への提示をNPDIの成果として言及しつつ,1)核軍縮の透明性の向上,2)FMCT交渉開始を巡る軍縮会議(CD)での行き詰まりを打開するためにカナダが国連総会第一委員会に提出する決議案への支持,3)IAEA追加議定書の普遍化に向けた経験の共有,4)輸出管理強化のための実践的提案,5)グローバルな不拡散体制の強化及び核軍縮への貢献手段としての非核兵器地帯設置促進に向けた努力への支持,6)軍縮・不拡散教育の精力的な推進,7)CTBT検証システムの民生上の利益の認識とCTBT発効促進に向けたコミットメントの継続,を内容とする共同ステートメント(英語正文(PDF)和文仮訳)を全会一致で採択した。

3 評価

  1. (1)グループ発足から1年が経ち,国際社会におけるNPDIの存在感が増す中,国連総会という日程調整の難しい中,参加10か国中6か国の外相が集まって,具体的な論点に関し密度の濃い実質的な議論を行うことができたことは,参加各国のこの取り組みへの意欲を感じさせた。
  2. (2)特に,今回の外相会合では,特に我が国が重視するFMCT交渉の早期開始,核軍縮の進展に関する核兵器国の報告フォームといった重要な事項につき,今後NPDIとしてどのような具体的取組を行っていくかにつき,外相間で議論を深めることが出来たことは大きな意義があった。
  3. (3)更に,2010年NPT運用検討会議の成果である2012年の中東非大量破壊兵器構想国際会議開催に向け,開催地及びファシリテーターの早期選定,全ての関係者を巻き込む包括的なアプローチの重要性について認識を共有し得た点は,NPDIの中でこの問題の議論を進める役割を負うトルコが,明年春に第4回の本件外相会議国際会議を開催していることとの関係でも,大いに意義があったと思われる。

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