軍縮・不拡散

(仮訳)

外相による核軍縮・不拡散に関するベルリン・ステートメント

英語正文

  1. 我々,豪州,カナダ,チリ,ドイツ,日本,メキシコ,オランダ,ポーランド,トルコ及びアラブ首長国連邦の外相は,2010年9月22日のニューヨークにおける第1回会合で採択された共同ステートメントに示されたように,核軍縮の実現及び国際的不拡散体制強化に向けて取り組むという共同の意志を再確認する。核兵器使用の可能性によって人類がさらされている危険並びに増大する拡散リスクに対処し,核兵器を削減し,核セキュリティを強化し,また,原子力安全を強化する必要性を認識しつつ,我々は,核リスクを低減し,核兵器のない世界への途上において明白な進展を達成することが喫緊の課題であると認識する。
  2. 我々は,核軍縮を実現するための不可欠な基礎であり,世界的な核不拡散体制の礎石であり,かつ,原子力の平和的利用発展の基盤である核兵器不拡散条約(NPT)に自らの取組の基礎を置いている。2010年NPT運用検討会議のコンセンサスによる成果は,NPTの3本柱を包含する行動計画と,中東非核兵器及びその他のすべての非大量破壊兵器地帯の目標により,実践的な課題を設定した。我々は,すべてのNPT締約国によるコミットメントの履行を促進し,支援していくこと,また,実践的な貢献及び提案を通じて更なる進展を唱道していく決意である。
  3. 我々は,核兵器の使用又は核兵器の使用の威嚇に対する唯一の保証としての核兵器の完全な廃絶への新たな要求を歓迎し,支持する。また,我々は,その結果として,核兵器の数,並びに安全保障戦略,概念,ドクトリン及び政策における核兵器の役割を,更に低減する必要性を認識する。我々は,最近の進展,特に米露間の新START条約の発効及び,削減プロセスを継続するとの両国による意図表明を心強く思い,このプロセスにすべての種類の核兵器が含まれる必要性を強調する。我々は,不可逆性,検証可能性及び透明性の原則を核軍縮プロセスに適用しつつ,他のすべての核兵器保有国もこれに続くことを強く希望する。
  4. 我々は,NPTに規定されているように,締約国による平和目的のための原子力の開発,利用の権利を認識する。我々は,福島第1原子力発電所の最近の出来事を踏まえ,原子力発電所の安全を最高レベルに引き上げ,また,原子力安全措置を国際的に強化する国際的な要求に賛同する。我々は,国及び地域のレベル及び,国際会議及び国際機関,特にIAEAで既に始まっている議論を支持する。我々は,本年6月20日から24日にウィーンで開催予定の原子力安全に関する閣僚会議への天野IAEA事務局長による招待を歓迎する。
  5. 今日のグローバルな安全保障の問題がこれまで以上に協力的で,かつ多国間の解決を必要としていることを認識するに,今こそ多国間の取組を再活性化し,強化する時である。2010年NPT運用検討会議の行動計画に示されている多くの課題は,多国間の取組の成功を通じてのみ履行できる。10年以上にわたり,多国間軍縮機関は,国際的な安定を高め,開発を促進し,そしてすべてにとっての安全を向上する大きな可能性を活用できないまま,効果的な多国間の軍備管理及び軍縮を通じて差し迫った安全保障の挑戦に対処するという,国際社会の期待に応えてこなかった。2010年9月24日にニューヨークで国連事務総長が主催したハイレベル会合でのメッセージは明白である。国際社会はこれ以上の時間を失うことを受け入れない。我々は,多国間軍縮機関の再活性化を一致して求める。
  6. 昨年のNPT運用検討会議において達成された前向きな行動計画に関するコンセンサスは,必要な政治的意志があれば,協力的で多国間の軍縮・不拡散の取組が機能することを証明した。我々の目的は,そのような成功裏の結果のモメンタムを維持し,また,その実施を促進することである。この目的により,我々は,行動計画の主要な事項に関する行動に向けた以下の具体的な提案を採択した。

    提案1:NPT締約国の間には,核兵器のための核分裂性物質の生産は停止されなければならないとのコンセンサスがある。兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)は,将来における核軍備競争のリスクを抑制し,非国家主体がそれらの物質を取得する危険を軽減するだろう。そのような条約は,世界の脆弱な核物質を防護するために行われている取組を補完するだろう。それは,核兵器のない世界の途上において必要不可欠な措置である。その行動計画において軍縮会議(CD)でのFMCT即時交渉を求めたNPT運用検討会議から1年が経過し,それが履行されていないことに対し,我々は深く失望している。交渉の過程においてすべての国の安全保障上の要求に対処しなければならないことを認識しつつ,我々は,これ以上の遅延の理由及び言い訳はないことと強調する。
     1月26日,潘基文国連事務総長は,FMCTのための信頼醸成に寄与し,CDが作業計画に戻るための非公式プロセスの設置を求めた。我々は,現在の膠着状態を乗り越えるために集中的な取組を開始した。ジュネーブにおいて,CDのマージンで,日本と豪州は,交渉に向けたモメンタムを構築するため,FMCTの技術的な側面を検討する専門家による一連の議論を共催している。ウィーンにおいては,ドイツ主導の取組の中で,我々は,科学的専門家によって対処されるべき問題を列挙し,これら専門家による議論のための提案を含む,FMCTの効果的検証に関するペーパーを作成した。我々は,FMCTの技術的側面を検討することを任務とする科学的専門家グループの設置は,交渉開始を促進し,貢献できるものと考える。
     これらのイニシアティブを踏まえつつ,我々は引き続き交渉の即時開始を求めていく。我々の選好は,FMCTをCDの中で交渉することである。しかし,CDが2011年の実質会期でFMCT交渉の開始に合意できない場合,我々は,すでにその議題162「2010年9月24日ハイレベル会合のフォローアップ:軍縮会議の作業の再活性化及び多国間軍縮交渉の前進」の下で本件を取り上げることになっている国連総会に対し,この問題に対処し,交渉開始のために前進する方途について検討することを求める。

    提案2:包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効は,多国間の課題におけるもう一つの重要な目標である。我々は,すべてのCTBT未署名・未批准国に対し,署名・批准を求める。我々は,米国及びインドネシアによって表明された,条約の批准を確保するとのコミットメントを心強く思う。我々は,核実験の効果的な終了は,国家及びグローバルな安全保障を弱めることなく,強化し,また,グローバルな不拡散・軍縮体制を著しく増強すると確信する。CTBTは15年前に署名開放され,署名・批准国は着実に増加してきた。我々は,CTBTの普遍化及びその早期発効促進にコミットしている。様々な外交の機会を活用し,我々は,未署名・未批准国に対し,署名・批准し,発効のために必要な手続を速やかに完了するよう求めていく。我々は,効果的な監視・検証体制を整備するに当たり,包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会を支援することにコミットしており,また,すでに達成した業績を評価する。

    提案3:2010年NPT運用検討会議において,核兵器国は,核軍縮に向けた具体的な措置の進展を加速させること,また,NPT締約国に対して報告を行うことにコミットした。さらに,信頼醸成措置として,同会議は,核兵器国に対し,可及的速やかに標準化された報告フォームに合意することを奨励した。我々は,核兵器国がコミットメントを実現する上で使用し得る標準化された報告フォームの案を作成している。我々は,核兵器国が6月のパリにおける会合において,我々の提案を検討するよう呼びかける。この案には,我々がすべての核兵器保有国が提供することを望む情報に関する我々の期待が反映されている。我々は,標準化された形式に基づく報告が,NPT運用検討会議で採択された行動計画において奨励されているように,国際的な信頼を醸成し,更なる軍縮を可能にする環境作りに寄与するものと信じる。我々は,核軍縮プロセスにおいて透明性と説明責任を高めることが重要だと認識している。

    提案4:我々は,効果的な不拡散体制はすべての国にとって共通の安全保障上の利益であることを強調する。我々は,国家の核不拡散義務の遵守を検証する上でのIAEAの重要な役割を認識する。我々は,2010年12月にアラブ首長国連邦において,また,2011年3月にメキシコにおいてIAEA追加議定書が発効したことにより,我々の地域横断的イニシアティブに属するすべての国が,我々が不可欠な検証基準と考える包括的保障措置協定及び追加議定書を履行している事実を強調する。我々は,2010年NPT運用検討会議の行動計画に従って,不拡散義務の違反を確実に阻止し,かつ探知するためにIAEAが必要とする追加的な権限を与えるため,すべての国に対し,追加議定書を締結し,発効させることを求める。我々は,それぞれの地域において,二国間及び多国間で,追加議定書の普遍的適用を引き続き唱道していく。我々は,追加議定書の締結及び履行における経験及びベスト・プラクティスをすべての関心国と共有することを提案し,また,法的及びその他の支援を提供する用意がある。

  7. 我々は,9月の国連総会のマージンにおける次回会合において,本日の提案の進展を確認する。我々のイニシアティブの2012年の外相会合は,トルコによって主催される。
     我々は,2010年9月22日の我々の共同ステートメントで特定した,2010年NPT運用検討会議で採択された行動計画の他の主要事項について引き続き作業を進める。特に,我々は,当該地域の関係国家間で自発的に達成された手段に基づき,かつ,国連軍縮委員会の1999年のガイドラインに従って,国際的に認知された非核兵器地帯の設置が促進されることを期待し,また,そのような地帯が,地域及びグローバルな平和と安全を強化し,核不拡散体制を強化し,核軍縮の実現に貢献すると確信する。この関連で,我々は,2010年NPT運用検討会議において合意された,特別会議の2012年における開催に向けた要請に従い,中東における非核兵器及びその他の非大量破壊兵器地帯の創出を促進する決定的重要性を強調する。
     我々はまた,重要な不拡散の役割を担う,国家の輸出管理体制の強化を目的とした具体的な取組を進めていく。
     我々は,教育が,市民の認識及び理解を深めることによって,更なる軍縮・不拡散の取組をグローバルに動員していくための強力な手段であるとの信念に基づき,軍縮・不拡散教育を積極的に促進する。
  8. 我々は,地域及びグループを越えて我々のイニシアティブに示された関心を心強く思う。我々は,我々の取組に参加することを希望し,我々の提案を支持するすべての国家に感謝している。そのような幅広い取組によってのみ,必要な架け橋を構築し,また,相互に補完し合う核軍縮・不拡散という目的に向けた意味のある進展を達成することに成功するであろう。

2011年4月30日 ベルリン

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