軍縮・不拡散

第2回核軍縮・不拡散に関する外相会合
(概要と評価)

平成23年4月30日

  • (写真)集合写真
  • (写真)共同記者会見で発言する松本外務大臣
  • (写真)共同記者会見

1 全体概要

 4月30日,ベルリンのドイツ外務省迎賓館において,地域横断的な非核兵器国10か国の第2回核軍縮・不拡散に関する外相会合が開催された。これは,昨年9月に国連総会の機会に日豪両政府が共催した核軍縮・不拡散に関する外相会合に続くもので,メンバー国であるドイツが第2回会合を主催したもの。午前11時30分から13時まで外相会合,その後共同記者会見が行われ,午後2時20分から3時30分までワーキング・ランチが実施された。出席者は以下のとおり。

我が国
松本外務大臣
ドイツ
ヴェスターヴェレ外相(議長)
豪州
ラッド外相
メキシコ
エスピノサ外相
オランダ
ローゼンダール外相
アラブ首長国連邦
アブドッラー外相
カナダ
シンクレア外務省国際安全保障局長
チリ
ラーベ・ウィーン代大使
ポーランド
ナイダー外務次官
トルコ
イルデム外務省国際安全保障局長

2 会合の概要

(1)松本大臣の発言

 松本大臣は,冒頭,東日本大震災に際して集まったすべての国から支援の意思が表明されたことに謝意を表明した。福島第一原発事故に関しては,計画的に事態の収束を目指す段階に入ってきていること,今後,今回の事故を徹底的に検証し,そこから得られる知見や経験を最大限の透明性をもって国際社会と共有していくことを表明した。

 続いて,この10か国の取組が,「核リスクの低減」をキーワードに,参加国間の活発な議論を通じて具体的な行動の段階に入ってきていることを歓迎し,FMCT(兵器用核分裂性物質生産禁止条約)の交渉開始,核軍縮における透明性の確保,核不拡散への取組の重要性等に言及しつつ,10か国の外相が政治的意思を結集し,これから具体的提案に基づく行動を進めていくことを提案した。

(2)各参加者からの発言

 すべての参加者から我が国が経験した東日本大震災に関し,犠牲者に対する哀悼の意と,復興に向けた連帯の意図が表明された。

 ヴェスターヴェレ・ドイツ外相は,FMCT及びCTBTを優先的に取り組む意向を表明し,FMCTについては,軍縮会議(CD)で交渉を開始できなければ代替策を検討すべきであり,国連総会に対してあらゆるオプションを検討するよう提案すべきと述べた。

 ラッド豪州外相は,このグループを「NPDI(軍縮・不拡散イニシアティブNon-proliferation and Disarmament Initiative)」と呼ぶことを提案し,受け入れられた。また,FMCTや核軍縮の報告フォームといった優先項目について,創造的な提案を行うべきと主張した。

 エスピノサ・メキシコ外相は,国連場裏で核軍縮・不拡散に関する進捗に乏しいことを指摘し,この10か国が重要な役割を果たしうると述べた。

 アブダッラーUAE外相は,メンバー国すべてがIAEA追加議定書を批准したことに言及しつつ,追加議定書の普遍化を第一に考えていきたいと述べた。

 ローゼンタール・オランダ外相は,軍縮と不拡散が表裏一体であり,共に進めていくことが必要であると述べ,また,自国内の市民社会等に対するアウトリーチ(軍縮不拡散教育)の重要性を強調した。

 また,アブダッラー外相からはイランに関する問題が提起され,イルデム・トルコ国際安全保障局長からは,北朝鮮のNPT脱退問題が言及されたのを受けて,核不拡散に係る現実の外交問題についても触れられるところがあった。

(3)ベルリン・ステートメントの採択

 この後,核リスク低減の重要性,2010年NPT運用検討会議の合意を着実に履行することへの決意,原子力安全強化の必要性等に言及するとともに,FMCT早期交渉開始,CTBT(包括的核実験禁止条約)早期発効,核兵器国による核軍縮の進捗に関する報告フォーム(透明性向上),IAEA追加議定書の普遍化等に関する具体的提案を含む成果文書「ベルリン・ステートメント(英語正文和文仮訳)」を全会一致で採択した。

(4)ワーキング・ランチでのやり取り

 ワーキング・ランチでは,グループの今後のあり方について活発な議論が行われた。メンバーシップの拡大に関しては,様々な意見が提示されたが,松本大臣が参加希望を表明している国にも配慮しつつ,オープンかつ柔軟なアプローチをもって検討したいと述べ,意見の一致を見た。

 また,特に核軍縮の進捗状況に関する報告フォーマットをめぐり,核兵器国との協議を進めていくことについても意見交換が行われた。

 9月の国連総会の直前に第3回の外相会合を行うことで一致し,今後作業を加速化し,FMCTや核軍縮の報告フォーム等で具体的な成果を行動の進捗を確認することで意見が一致した。2012年はトルコが外相会合を主催することになり,このイニシアティブを更に活性化していくことが明確になった。

3 評価

  1. (1)参加10か国中6か国の外相が集まり,2010年NPT運用検討会議のモメンタムを維持するとともに,そこで勧奨された行動計画の実施の加速に向けて貢献していく力強い政治的意思を共同ステートメントの形で国際社会に対して発信することができた。
  2. (2)特に,今回の外相会合では,FMCT,核軍縮の進展に関する核兵器国の報告フォーム,IAEA追加議定書の普遍化といった重要な事項につき,外相間で議論を深めるとともに,今後の道筋に関する具体的提案を提示した。
このページのトップへ戻る
目次へ戻る