難民
難民問題
1 難民問題の歴史と難民条約
第一次世界大戦後、ロシア革命やトルコ帝国の崩壊などによる政治的・社会的な構造の変化に伴って新たな体制になじめずに外国へ逃れた人々、いわゆる「難民」の問題が国際社会の注目を集めるようになりました。
第二次世界大戦によってさらに深刻化した「難民」問題に対処するため、1950年12月に採択された国連総会決議に基づき、26カ国の代表からなる全権会議がジュネーブで開催され、1951年7月、「難民の地位に関する条約」が採択されました。また、1967年にはこの条約を補足する「難民の地位に関する議定書」が採択されました。この条約と議定書をあわせて、一般に「難民条約」と呼ばれています。難民条約は、現在も難民の国際的保護の基礎としての役割を担っています。
2 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
の設置とその役割

- (1) 第二次世界大戦前にも、国際連盟の下、ロシア難民・ユダヤ人難民等に対処するための国際機関が存在しましたが、これらの機関の活動は地域的・人種的・時間的に限定されていました。第二次世界大戦後、より大量かつ広範な地域での難民の発生を受け、「難民」問題に普遍的に対処することのできる初めての国際機関として、1950年、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が設置されました(パレスチナ難民については、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)(英語)
が救済活動を行っています)。
- (2) UNHCRの主な役割は以下の通りです。
- ア 難民条約の各国による締結・加入を促進し、各国によるその適用を監督する。政府と協定を結び、難民の状態を改善し保護を必要とする人々の人数を減らす為の措置をとる。
- イ 難民の自発的帰還、または新国家社会内での同化を促進する為の政府または民間団体の活動を援助する。
3 今日における難民問題
以上のような取り組みは、当初第二次世界大戦によって発生した難民を念頭においたものでしたが、その後も難民問題は遙かに大規模かつ広範な地域で発生し続けました。さらに、世界の人道危機が長期化、複雑化するなか、紛争や迫害、気候変動の影響などにより、望まない移動を強いられる難民・避難民の数は増え続けています。
世界の難民数の推移
(UNHCR及びUNRWAの保護や支援の対象となっている難民等の数)
(注) 難民等とは、UNHCRが保護対象とする難民、国内避難民、無国籍者、庇護申請者等及びUNRWAに登録されたパレスチナ難民数を指す。
一方で、アフリカ、アジアや中南米の低・中所得国が世界の難民の約8割を受け入れており、難民支援の責任と負担を国際社会で広く分担することが求められています。
4 国際社会の取組
こうした状況を受け、2018年、難民支援のための新しい国際的な枠組みである「難民グローバル・コンパクト」が国連総会で採択されました。これは、難民問題への対応に関する国際的な枠組みを示すもので、(1)難民受入国の負担軽減、(2)難民の自立支援、(3)第三国定住の拡大、(4)安全で尊厳のある帰還のための支援、の四つの目標を掲げています。
また、「難民グローバル・コンパクト」の実現に向けた国際社会の取組をフォローアップするために「第1回グローバル難民フォーラム」が2019年に開催され、各国政府や市民社会が難民支援に向けた取組を共有するとともに、相互の連携について議論が行われました。
5 日本の取組
日本は、「人間の安全保障」を重要な外交課題として位置付けており、難民支援における負担と責任の共有が国際社会に求められる中、日本としてその責務を果たしていくことが重要となっています。日本はUNHCRに対する世界で第4位の拠出国(2022年)となっているほか、ウガンダ等において、難民や国内避難民が平和で安定した生活を送ることができるよう、人道・開発・平和の連携にも尽力しています。また、2023年12月に開催される「第2回グローバル難民フォーラム」では、日本は共催国のひとつとして、難民支援において主導的な役割を果たすことが求められています。
6 国際機関を通じた支援
世界各地で人道支援活動を行っている国際機関に対し、日本は積極的に貢献をしています。