国際組織犯罪に対する国際社会と日本の取組
資金洗浄(マネー・ローンダリング)
1 背景
資金洗浄(マネー・ローンダリング、以下「マネロン」)とは、「一般に、犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関等による収益の発見や検挙等を逃れようとする行為」を言います(警察庁HPより抜粋)。組織犯罪は国際社会の脅威となっており、その犯罪収益はさらなる組織犯罪のために運用され、またテロ活動の資金源にもなりうることから、我が国としても、国際的に協調し、マネロン対策に取り組むことが不可欠です。
2 金融活動作業部会(FATF)
FATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)は、マネロン・テロ資金供与・大量破壊兵器の拡散にかかる資金供与(以下「拡散金融」)対策のための国際基準の策定・履行を担う多国間の枠組みであり、グローバルな対策ネットワークを構築するため、アジア太平洋、カリブ海、南米、ヨーロッパ、ユーラシア、中東・北アフリカ、西アフリカ、中部アフリカ、南・東部アフリカの各地域のFATF型地域体(FSRB: FATF-Style Regional Bodies)等と協力して活動しています。
FATFはこれまで、1990年にマネロン対策の国際基準として「40の勧告」を提言し、2001年9月11日の米国同時多発テロをきっかけにテロ資金供与対策にまでその対象を広げ、テロ資金供与及び関連するマネロンの犯罪化、テロリストの資産の凍結・没収、テロリズムに関係する疑わしい取引の届出等、テロ資金供与に関する「9の特別勧告」を策定しました。
その後、2012年にこれら2つの「勧告」が統合され、マネロン、テロ資金供与に加えて拡散金融をカバーする新しい40の勧告(英文)(PDF)に整理されました。FATFでは、これらの勧告の実施を促進するために、勧告の実施状況についてFATF及びFSRBのメンバー国・地域による相互審査を実施しているほか、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策が不十分な国を公表するなどしています。
2021 年8月に公表されたFATF第4次対日相互審査報告書(英文・和文仮訳(PDF)
)では、日本のマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策は、全体として成果を上げていると評価された一方、金融機関等の監督及び予防措置、法人等の悪用防止、マネロン・テロ資金供与の捜査・訴追などに優先的に取り組む必要があると指摘されました。日本は、「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議」の設置及び「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画」の策定(2021年8月)及び「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針」の策定(2022年5月)、マネロン等対策の関連法(国際テロリスト財産凍結法、外為法、組織的犯罪処罰法、麻薬特例法、テロ資金提供処罰法、犯罪収益移転防止法)の改正(2022年12月成立)などを通じて、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策を進め、また、FATF及びアジア太平洋地域におけるFATF型地域体であるAPG(Asia Pacific Group on Money Laundering)の加盟国として、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する国際的な議論に積極的に参加しています。