グローカル外交ネット
万博が架けた橋:石川県とバーレーンの新たな交流
在バーレーン王国日本国大使館
2026年7月21日から2日間、岡井駐バーレーン王国日本国大使は石川県を訪れました。山野之義知事との会談のほか、考古学分野でバーレーン文化・遺産庁と協力関係にある金沢大学、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のバーレーン・パビリオンの施工を担当した真柄建設株式会社本社、そして、バーレーン国立博物館における日本伝統工芸展に参加歴のある九谷焼窯元の上出長右衛門窯といったゆかりの場所を訪問しました。本稿では、岡井大使の石川県訪問の模様に加え、バーレーン王国と日本、そして石川県との交流について紹介します。
1 日本とバーレーン王国
バーレーン王国は、ペルシャ湾に位置する島国です。人口150万人の小国ながら年間1600万人もの訪問者を迎え入れ、中東地域における金融・ビジネス・観光の重要な拠点の一つとなっています。古代にはディルムン文明が栄え、メソポタミア文明とインダス文明との交易の中継地、真珠の産地としても知られてきました。1971年に英国から独立し、日本は同年にバーレーンの独立を承認、1972年に外交関係を樹立しました。以来、両国は緊密な友好関係を築いています。
両国の関係は、1934年に湾岸地域で初めてバーレーンから石油が日本(横浜)へ輸出されたことに遡ります。エネルギー分野を中心とした経済関係から、現在では政治・安全保障、文化など幅広い分野へと発展しています。2025年9月にはサルマン皇太子兼首相が大阪・関西万博への出席などのため訪日し、天皇陛下によるご会見や皇嗣同妃両殿下とのご懇談、石破総理大臣(当時)との会談及び覚書の締結などが行われ、両国関係は「戦略的パートナーシップ」に格上げされました。
近年、経済面では、バーレーンは湾岸地域への玄関口としての立地に加え、英語とアラビア語のバイリンガルな人材を擁し、国際市場へのアクセスに優れたビジネス拠点として注目されています。また、観光・文化・教育の振興にも力を入れており、日本との間でも人的交流のさらなる拡大が期待されています。特に文化協力の分野では、考古学が両国の重要な協力分野の一つとなっています。過去20年以上にわたり毎年、東京文化財研究所や奈良県立橿原考古学研究所の研究者がバーレーンを訪問し、現地の研究者と共同で発掘調査を行うなど、バーレーンの古代文明の解明に向けた学術協力が進められています。
このように、考古学分野での協力をはじめ、日本とバーレーンは、長年にわたる友好関係を基礎に、経済、政治・安全保障、宇宙、ICT、文化・人的交流など、多岐にわたる分野で連携を深めています。
2 バーレーンと石川県の関係
石川県とバーレーンのつながりは、2025年大阪・関西万博で真柄建設がバーレーン・パビリオンを施工したことを契機に一層強まり、今回の訪問が実現しましたが、両者間には万博以前から、経済面で深い結びつきがありました。バーレーンや中東地域で男性が着用する白い民族衣装「カンドゥーラ」の生地(トーブ)や、女性が身にまとう黒色の「アバヤ」の高級市場では、日本産品が多く流通しています。中でも、石川県を拠点とする繊維メーカーの生地が使用された商品は、高い品質と耐久性により、長年、バーレーンにおいて圧倒的なシェアと高いブランドイメージを保持しています。
3 岡井大使の石川県訪問
石川県庁での山野之義知事との面談では、観光、食、文化、教育などの分野における今後の協力の可能性について意見交換を行いました。山野知事からは、金沢大学を通じた教育や観光などの交流により、バーレーンとの縁がさらに広がることへの期待が示されました。
真柄建設では、同社初の海外案件となったパビリオンの施工当時の取組、完成後の反響、万博閉幕時に同パビリオンが建築・景観部門の金賞を受賞した際のエピソードなどについて、真柄卓司社長と意見交換しました。この象徴的パビリオンでの協力を契機として、バーレーンでの新たなビジネスの可能性も模索されています。
山野石川県知事(中央)への表敬訪問(左:岡井大使、右:真柄社長)
金沢大学では、和田隆志学長及び中東考古学研究の教授陣と、2023年4月にバーレーン文化・遺産庁と締結したアラビア湾考古学・文化遺産センター設立に関する覚書に基づく協力を加速化していくことを確認しました。近くバーレーンでのシンポジウム開催や、日本での研修に関心のある考古学分野の研究者などの受入れ・人材育成などが進められることが期待されます。あわせて、バーレーンにおける日本留学・日本語学習への高い関心を踏まえ、将来的な大学間協定締結も視野に入れ、まずは金沢大学を紹介する留学フェアの開催など、教育面の協力体制の構築を進めていくことにしました。
金沢大学和田学長(右から2人目)、教授陣への表敬訪問
1879年(明治12年)創業の九谷焼窯元である上出長右衛門窯(能美市)では、6代目の上出惠悟氏と懇談し、工房を見学しました。同窯は昨年、バーレーン国立博物館で行われた日本伝統工芸展に参画しており、盛況だった展覧会を振り返りつつ、今後の展開について話し合いました。
(左)真柄建設本社への表敬、(右)上出長右衛門窯への訪問
4 終わりに
日本とバーレーンは、ともに海に囲まれた島国です。遠く離れた二つの島国ではありますが、1972年の外交関係樹立以来、半世紀を超えて友好と交流を育んできました。在バーレーン王国日本国大使館では石川県をはじめ、日本各地の魅力の発信を続け、これまで両国を結んできた海の架け橋をさらに強固なものとし、絆を未来につなぐべく、力を尽くしてまいります。
