グローカル外交ネット

令和8年3月13日

在デンパサール日本国総領事館

1 地方自治体発の新たな国際交流のモデル

 2025年12月12日、島根県美郷町とインドネシア国立芸術大学(ISI)バリ校との間で、地方自治体による国際交流の新たなモデルとなる包括連携協定が締結されました。この協定は、単なる文化交流に留まらず、学術、芸術、文化といった幅広い分野での協力関係を深化させるものであり、両国間の友好関係を一層強固にする基盤として期待されています。こうした協定が実現した背景には、島根県美郷町とインドネシア・バリ島との長く深い絆が存在します。

包括連携協定を締結した嘉戸美郷町長(右から2人目)とアドニャナ学長(同3人目)

2 30年の交流が築いた「バリの町」美郷町

 美郷町とバリ島のマス村との交流は30年以上にわたります。現在、人口4千人ほどの美郷町と、1万2千人規模のバリ島マス村--ふたつの小さな地域を最初につないだのはカヌーでした。1991年に美郷町が建設したカヌー博物館の開館イベントで、バリ島で今でも使われている海のカヌー「ジュクン」を共同製作したことが交流の出発点となりました。1993年に友好協定を締結してからは、相互の友好訪問、中高生の相互訪問、そして、技術研修生の受け入れなど、交流はより一層活発になりました。美郷町は条例で公式に「バリの町」を宣言しており、その関係の深さは全国でも類を見ません。

 その親密さは町内の日常風景にも現れています。驚くべきことに、町内のコンビニエンスストアでは、ミーゴレンやサンバル、ビンタンビールなどインドネシアを代表する食品が非常に手頃な価格で販売され、住民に親しまれています。また、美郷町やその隣町には現在、介護老人保健施設や農業法人で働くバリ出身の技能実習生及び特定技能外国人9名が暮らし、地域社会に深く溶け込んでいます。

 文化面でも両地域には強い親和性があります。2025年の美郷町バリフェスティバルでは、石見神楽とバリのガムランを融合させた創作神楽が披露され、観客から大きな反響を呼びました。両芸能には共通する精神性が感じられ、二つの文化が響き合う象徴的な出来事でした。

宮川総領事と美郷町の介護老人保健施設で働くバリ出身実習生
美郷バリフェスティバルで美郷町の子どもや住民がバリ舞踊する姿

3 交流の深化と包括連携協定の締結

 今回の協定締結といった新たな展開は、2025年8月に美郷町の嘉戸町長がバリ島を訪問した際の宮川総領事への相談がきっかけとなりました。町内に建設予定の「にぎわい創出拠点施設」の内装デザインについて、バリの装飾導入を検討したいと相談を受けた宮川総領事が、インドネシア国立芸術大学(ISI)バリ校のアドニャナ学長を紹介したことで、両者間の協力が実現しました。

 そして、その協力は、当初のデザインに関する協力の枠を超え、学術・芸術・文化面での包括的な連携協定へと発展し、2025年12月に、宮川総領事、在大阪インドネシア総領事の立ち会いのもと、嘉戸町長とアドニャナ学長との間で厳かな締結式が美郷町で執り行われました。締結式に立ち会った関係者は、「国境を越えた真の友情の姿を目の当たりにした」と語り、30年以上の歴史が生んだ絆の強さを再確認する場となりました。

4 次世代へと繋ぐ「友情の絆」

 締結式の祝辞で宮川総領事は、「町長からご相談を受け、数ある協力先候補が頭に浮かんだが、インドネシア国立芸術大学(ISI)を美郷町に紹介することにしたのは、学生たちの若い活力を取り込みつつ、両者の関係が世代を超えて長く続く協力関係となってほしいとの期待を込めたためである」との思いをお伝えしました。

 この歴史的な締結式の模様は、山陰中央テレビ、読売新聞、山陰中央日報、中国新聞など多くの主要メディアで報じられ、外務省が推進する地方連携協力の好事例として広く周知されました。

 さらに、宮川総領事は丸山島根県知事を表敬訪問し、バリ島の人材が山陰地方の発展に寄与している現状を説明した上で、美郷町という「点」の交流を島根県全体の「面」へと拡大し、地方を拠点とした両国関係の強化への期待についてもお話させていただきました。

 今回の包括連携協定は、地方の小さな自治体から始まった草の根の交流が、学術、芸術、文化を通じて両国の未来を繋ぐ大きな「友情の絆」へと進化できることを証明しました。このような地方連携の絆こそが、日本と諸外国を結ぶ真の国際親善の礎となっていくものと考えています。

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