グローカル外交ネット

令和8年1月21日

在ニカラグア日本大使館
参事官 河島 宏明

 「ニカラグア」と聞かれても、ほとんどの方は、「どこにあるの? どんな国?」と思われるのではないでしょうか。
 私が住むニカラグアは、メキシコから南米大陸につながる細長い中米地峡の中心に位置する常夏の国です。面積は北海道と九州を合わせた程度で、人口は約700万人と小さな国です。
 しかし、ニカラグア人は陽気で人柄もよく、国土は自然が豊かで、ご飯もおいしく、お越しになられたらきっと好きになるのではないかと思います。50以上の火山があり、琵琶湖の13倍の大きさのニカラグア湖を始め、たくさんの湖が点在しており、「火山と湖の国」と呼ばれています。最近では、ニカラグアの高品質なコーヒーや葉巻が日本でも人気を博しています。そして、意外なところでは、太平洋側の海岸ではサーフィンが盛んで、世界中から多くの若者を引きつけています。
 今回は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京五輪2020)のホストタウン登録をきっかけに、オリンピック後もニカラグアと活発な交流を続けている群馬県甘楽町について紹介したいと思います。

1 甘楽町がニカラグアの東京五輪2020ホストタウンに手を上げたきっかけ

 甘楽町がニカラグアのホストタウンに名乗りを上げるきっかけとなったのは、JICA国際協力プログラムを通じた相互の人物交流です。海外協力隊としてニカラグアに派遣される隊員が甘楽町で研修を受けたことや、来日したニカラグア人研修生が同町で農業研修を受けたことだそうです。
 この小さな縁が契機となり、甘楽町は、東京の駐日ニカラグア大使館をはじめとする関係者とのつながりもでき、ニカラグアの東京五輪2020ホストタウンに手を上げ、これが2019年7月に登録されました。そしてこれから述べるような交流が広がり、その流れは多くの関係者を巻き込んでさらに大きくなろうとしています。

2 巡り合わせが紡いだご縁の連鎖

 東京五輪2020ホストタウン登録直後の2019年9月、18歳以下のニカラグア野球代表チームが韓国での世界選手権に参加した後、台風の影響で帰国のフライトがキャンセルされ、成田空港で足止めされてしまいました。困った東京のニカラグア大使館が、甘楽町に協力を求めたところ、同町は快くこれに応え、バスを成田空港に派遣し、同チームを甘楽町の宿泊施設に急遽受け入れたのです。ニカラグア野球代表チームと甘楽町の町民は交流を深め、これをきっかけに、野球を通じた両国の交流が盛んになっていきました。
 2024年には読売巨人軍の女子チームがニカラグアを訪問、そして2024年と2025年には、それぞれ中国と台湾で行われた国際試合に出場するニカラグア代表チームが日本で事前キャンプを行うなど、野球を通した交流は深まっています。また、ニカラグアのプロ野球冬期リーグに日本の選手が参戦するようにもなっています。
 その上、成田空港で足止めされた野球チームの一員にエル・ロサリオ市長がいたことから、その後の甘楽町から同市への中古消防車の寄贈にも繋がりました(日本大使館が、草の根・人間の安全保障無償資金協力で輸送費を支援しています)。

3 ニカラグアを身近に感じる甘楽町のみなさん

 甘楽町の学校では給食にニカラグア料理も提供しているそうです。食を通じた子どもたちの異文化体験っていいことですよね。後述しますが、2025年11月にニカラグアを訪問した中学生空手チャンピオンの林姉妹も、現地で、「これ、給食で食べたことがある!」と話していました。また、道の駅ではニカラグア産コーヒーが販売されているそうです。「ニカラグアと言えばコーヒー!」ということで、地域住民にまでニカラグアの味が届いているのは、我々現地日本大使館員としてもうれしく思います。
 また、日本とニカラグアの両国政府も甘楽町の奮闘に応えています。歴代の駐ニカラグア日本大使や東京の駐日ニカラグア大使も甘楽町を訪問し、いろいろな相談に乗ったり、地元の中学校で講演を行ったりしています。このような交流を通して、甘楽町のみなさんに、せっかく縁ができたニカラグアをもっともっと身近に感じていただけたらと思います。

4 日・中米交流年2025、甘楽町代表団のニカラグア訪問

 このように甘楽町とニカラグアの交流が深まっている中、昨年2025年は、日本とニカラグアを含む中米各国が外交関係を樹立してから90周年を迎える記念すべき年でした(「日・中米交流年2025」)。この記念すべき年の11月、同交流年を祝賀するため、森平仁志甘楽町長、中学生空手チャンピオンの林姉妹など7名がニカラグアを訪問しました。
 この代表団は、ニカラグア滞在中、様々な活動を行いました。スポーツ庁や関連団体(空手連盟、柔道連盟、野球連盟)との会合。東京五輪2020に出場し、甘楽町を訪問したこともある、柔道のイサヤナ・マレンコ選手との再会もありました。また、青年省では甘楽町にお住まいのみなさんから寄付いただいた靴の寄贈式が行われました。エル・ロサリオ消防署にも行き、先に述べた甘楽町が寄贈した中古消防車がしっかり活躍していることを確認しました。

甘楽町の皆様からの靴の寄贈式
甘楽町が寄贈した消防車

 空手の林姉妹は、11月9日に開催された「空手日本杯(Copa Japón)」に来賓参加し、300名を超える出場者の前で、世界レベルの空手の形及び組み手を披露してくれました。
 訪問終盤となる10日夜には、荻野大使主催レセプションが開催され、アラウス教育大臣、エルナンデス青年大臣、セケイラ・スポーツ庁共同長官、ルエダ・マナグア市長、ゲバラ・エル・ロサリオ市長等の出席がありました。
 甘楽町代表団は、ニカラグアの政府・スポーツ・文化関係者から大歓迎を受け、日・中米交流年に大輪の花を添えつつ、日・ニカラグア両国の友好と協力の歴史に新たなページを刻みました。

空手日本杯開会式

5 外交関係樹立100周年に向かって、交流はさらに深まる

 東京五輪2020ホストタウンを一つの大きな契機としたニカラグアと甘楽町の交流の広がりは、スポーツという枠組みを超え、様々な関係者を巻き込み、どんどん拡大していく勢いです。現地日本大使館としても、甘楽町のこのような取組に伴走し、またこの勢いを活用して、日ニカラグア両国関係の更なる発展に繋げていきたいと考えています。

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