グローカル外交ネット

令和7年12月11日

三朝町教育委員会事務局
教育総務課長 角田 正紀
在マルセイユ総領事館
副領事 青柳 公子

1 はじめに

北川在マルセイユ総領事からダルリー・ラマルー・レ・バン市長への外務大臣表彰授与

 2025年10月10日、フランス南部のオクシタニー地域圏に所在するラマルー・レ・バン市において、ラマルー・レ・バン市と鳥取県三朝町の姉妹都市提携35周年を記念するイベントが行われました。さらに、両自治体の長年にわたる姉妹都市交流に敬意を表し、本年、両自治体に外務大臣表彰が授与されました。ラマルー・レ・バン市は人口約2,500人、三朝町は約5,600人とそれぞれ小規模な自治体ではありながら、互いの交流を絶やさず続けてこられたのはなぜか、これまでの交流を振り返り、これからにつなげていきたいと思います。

2 三朝町とラマルー・レ・バン市の交流

 三朝町は鳥取県の中央に位置し、世界屈指のラドン温泉が噴出する三朝温泉を有しています。ラドン温泉に含まれるラジウムの発見者であるマリー・キュリー博士の功績を称えるとともに、温泉の恵みに感謝する催しとして、三朝町では1951年からキュリー祭を開催しています。そのキュリー祭をきっかけとして、在日フランス大使館を通したフランスとの交流が始まり、その後、1990年に同じ温泉地である南フランスのラマルー・レ・バン市との姉妹都市関係が結ばれました。
 姉妹都市提携の締結後、両自治体の代表団の往来や1991年の中学生サッカー訪問団の派遣、また、周年の機会には両自治体で式典を開催するなど継続した交流を行ってきました。特筆すべきは長年にわたる次代を担う子どもたちの交流です。
 2011年の提携20周年を機に、両自治体の交流は一層深まり、三朝町では「手作り訪仏事業」として、コロナ禍の3年間の中断を除き、毎年、中学生をラマルー・レ・バン市に派遣しています。生徒たちは、ラマルー・レ・バン市で温泉療法を体験したり、日本の伝統文化である折り紙やけん玉などを紹介したりするなど、日仏の交流の架け橋となっています。
 また、忘れてはならないのが、国際交流員(JETプログラムにより地方公共団体に派遣され、国際交流活動に従事する職)の存在です。三朝町は1993年から現在まで13代にわたり、フランスからの国際交流員を受け入れています。国際交流員はラマルー・レ・バン市から派遣されるというわけではありませんが、フランス人の国際交流員の存在は、三朝町とラマルー・レ・バン市の交流を後押しする存在となっています。

3 「手作り訪仏事業」について

2014年三朝町手作り訪仏事業の現地交流

 本事業は、三朝中学校の生徒が事前学習も兼ねて、ラマルー・レ・バン市の中学生とのオンライン交流により、訪仏への機運を高めながら、事業内容を生徒自らが企画し、帰国後の報告会までを手作りで行うという学習活動です。
 2025年は6名の生徒を派遣し、現地の小学生やベダリウー中学校のクラブジャポンとの交流など、教科書やネット社会だけでは学べない「リアルな異国文化・生活体験」を積み重ねることができました。これらの経験は生徒たちにとってかけがえのない財産となっています。
 特に、滞在先であるラマルー・レ・バン市のホストファミリーの心温まる受入対応には感謝の念に堪えません。慣れない異国の生活に緊張気味な生徒たちを、まるで我が子のように家族ぐるみで温かく迎え入れてくださり、生徒たちは家庭生活に溶け込むことができています。
 この歓待の背景には、苦難をともに乗り越えてきた両自治体の深い絆があると感じています。2014年9月、ラマルー・レ・バン市は記録的な集中豪雨による大規模な洪水被害に見舞われ、尊い命が犠牲となりました。三朝町では、被災地復興に役立ててもらおうと町一丸となって災害義援金を募り届けています。また、新型コロナウイルスの感染拡大が世界規模となった2020年6月には、三朝町の生徒や家族の皆さんが、世界的にマスクが不足する状況の中、長年、心温かく迎えていただいているラマルー・レ・バン市の皆さんに感謝の気持ちを込めて、約1,000枚の手作りマスクを贈呈するなど、苦難なときこそ、お互いに助け合い、手を差し伸べ合う関係を続けてきた証だと考えます。

4 ラマルー・レ・バン市中学生の三朝町訪問が実現

2025年ラマルー・レ・バン市中学生訪問団の受入交流

 2024年にラマルー・レ・バン市の訪問団から中学生の派遣が約束され、2025年11月にラマルー・レ・バン市の中学生5名の訪問団の受入が初めて実現しました。「手作り訪仏事業」に参加した生徒の家族を中心にホストファミリーの多大なる御協力のもと、ホームステイや三朝中学校での授業交流など、これまで三朝町の生徒たちが体験してきた異文化交流を深め、今度は受け入れる立場で絆をさらに深めることができました。互いの生徒たちが文化や生活、価値観を直接共有できたことは、「多様性を認め合い、世界を広く見渡す視点」を育む絶好の機会となりました。

5 おわりに

 これまでの交流を通じて、三朝町とラマルー・レ・バン市の子どもたちは、異文化への好奇心や挑戦する心、他者を理解し受け入れる姿勢、『ことば』を超えた『こころ』の繋がりの大切さを学んできました。今後も両自治体の交流を通じて、子どもたちがグローバルな視点を持った青年へと成長し、世界中の人々とコミュニケーションを取りながら活躍する姿、特にラマルー・レ・バン市の子どもたちが国際交流員として三朝町に赴任してくれることを期待しています。
 姉妹都市提携35周年の節目を迎えた2025年は新たなステージの始まりであり、両自治体の友情と交流の輪がさらに広がっていくことを心より願っています。

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