グローカル外交ネット

令和7年12月10日

岩手県花巻市

1 花巻市の概要

 花巻市は岩手県のほぼ中央に位置し、総面積は908.39平方キロメートル。西に奥羽山脈、東には北上高地の山並みが連なる肥沃な北上盆地に位置し、季節ごとに変化に富んだ自然風景が広がる美しいまちです。2006年、花巻市、大迫町、石鳥谷町、東和町の4市町が合併し、以降、それぞれの姉妹都市・友好都市等との特色ある国際交流を継続してきました。その中でも、大迫町とオーストリア共和国ニーダーエスタライヒ州ベルンドルフ市との交流は歴史が長く、2025年に友好都市提携60周年を迎えました。
 大迫町は、北上高地の最高峰である早池峰山(標高1,917メートル)を擁するほか、重要無形民俗文化財でユネスコ無形文化遺産にも登録された「早池峰神楽」が舞い継がれる地域として知られています。また、ぶどうの生産が盛んな「神楽とワインの里」としても親しまれています。

2 交流の始まり

グーグルツィップフ(Guglzipf)展望台から望むベルンドルフ市の街並み

 大迫町とベルンドルフ市との交流は、小さな花をきっかけに始まりました。
 1962年7月、早池峰山で行われた体育大会の山岳競技役員たちの間で「早池峰山の象徴であるハヤチネウスユキソウがアルプスのエーデルワイスとよく似ている」ことが話題になり、友好都市交流の構想が生まれました。これを受け、当時の大迫町長が外務省に相談。当時の外務省欧亜局長から、オーストリア連邦中央政府の推薦を受けたベルンドルフ市を紹介されます。
 その後、両市町の議会での承認を経て、1965年10月12日、約1万キロ離れたそれぞれの地で友好都市締結記念式典が行われました。来賓として、大迫町側では当時の駐日オーストリア特命全権大使が、ベルンドルフ市側では当時の駐オーストリア日本特命全権大使が臨席し、多くの市民・町民が集う中、盛大に挙行されました。
 以降、登山・スキー交流、ワイン留学生派遣、青少年交流など、幅広い草の根交流が行われるとともに、周年記念での公式訪問による相互交流が継続的に行われ、友好の絆を深めてまいりました。

3 コロナ禍を超えた公式訪問

ベルンドルフ市からの記念品贈呈(左:友好協会新会長、中央:両市長、右:前会長)
式典に参加した派遣中学生ら(後列左から2番目:岩間大使)

 2020年に予定していた花巻市によるベルンドルフ市への公式訪問は、コロナ禍のため断念せざるを得ませんでしたが、2025年10月、上田市長をはじめとする花巻市民18名、青少年海外派遣研修事業に参加した派遣中学生6名と引率者1名、計25名がベルンドルフ市を訪問しました。2010年に行われた45周年記念訪問以来、実に15年ぶりの公式訪問です。
 これに先立ち、9月30日、岩間公典駐オーストリア特命全権大使が花巻市を訪問されました。大迫地域のベルンドルフゆかりの地に立ち寄り、岩手県日墺協会や大迫町・ベルンドルフ市友好会の方々と面会したほか、市役所を訪問し、上田市長と意見交換をしました。また、岩間大使は、今回の花巻市からの公式訪問団のオーストリア訪問に合わせ、10月10日にベルンドルフ市のシュレンクハンマー市長と上田市長をウィーン市内の大使公邸に招待し、市長同士の意見交換の場を設けてくださいました。おかげさまで、ベルンドルフ市への公式訪問前に両市長が顔を合わせることができ、翌日からの訪問がより充実したものとなりました。
 友好都市締結記念日である10月12日、ベルンドルフ市内において、クリスチャン・ペーホーファー地方長官、岩間大使ご夫妻らを来賓に迎え、本市訪問団並びに派遣中学生たちや、ベルンドルフ市の友好協会関係者、ギムナジウム校関係者など、合計約230名が参加し、盛大に記念式典が開催されました。
 式典では、提携当時からこれまでを振り返るスライドショー、ベルンドルフ市児童生徒による合唱や演奏、記念品交換、感謝状贈呈などが行われました。60年前はそれぞれの地で行われましたが、今回は同じ場所で一緒にお祝いすることができ、友情の絆がさらに深まる機会となりました。また、本市の派遣中学生にとって、60年の交流の歴史の歩みと重みを感じる良い機会となったほか、岩間大使ご夫妻、そして随行した大使館書記官の方と直接お話をする機会もあり、将来を考える上で大変貴重な経験となったようです。

 (注)60周年記念訪問の詳細は花巻市公式ホームページ別ウィンドウで開くでも紹介していますのでぜひご覧ください。

4 交流の広がり

 60年前に始まった、山間部の小さなまちの交流は、世代を超えてその輪を広げています。
 例年、本市の派遣中学生は、ベルンドルフ市のギムナジウム校訪問時に花巻市を紹介するプレゼンテーションを行います。この発表を見て、日本に興味を持つギムナジウム生もいるようです。また、帰国後は、それぞれの所属する中学校で研修報告を行うほか、多くの市民が集う国際イベントでも発表し、これらの報告や発表をきっかけに海外派遣に応募する生徒も多く、彼らの発表により新たな交流のきっかけが生み出されています。
 ベルンドルフ市では、2025年2月に30代のシュレンクハンマー市長が就任し、友好協会でも30代のロールベック氏が新会長となりました。ロールベック新会長を中心とする新体制では、提携当時から交流を支えてきたビュクセンマイスター前会長らのサポートを受けながら、新たなツールを活用した情報発信などにより、幅広い世代の関心を高める取り組みが開始されています。
 また、9年前に交流事業で花巻市を訪れたギムナジウム校卒業生が、2025年8月から栃木県那須塩原市の国際交流員として勤務を開始するなど、新たな交流の形も生まれています。
 小さな花から始まった交流が、今後さらに広がり、大きく発展していくことが期待されます。

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