グローカル外交ネット
“Together”「共生・共栄社会」を目指して!
長野県南牧村(みなみまきむら)とラ・トリニダッド町(フィリピン)の姉妹都市提携を事例として
公益社団法人 国際農業者交流協会
事務局長 清水利広
1 高原野菜の産地という共通点
南牧村は長野県東部に位置する農村で、八ヶ岳山麓には広大な野菜畑が広がり、レタスや白菜、キャベツなどが栽培されています。高原野菜や夏秋イチゴの産地として有名です。
一方、ラ・トリニダッド町があるフィリピンのベンゲット州はルソン島中部に位置する山岳地帯にあり、冷涼な気候を生かしレタス、白菜、キャベツなどの栽培が盛んに行われており、同じく高原野菜やイチゴの産地として有名です。
2 産地間の技術協力
公益社団法人国際農業者交流協会(以下、「JAEC」)は、2007年からベンゲット州でJICA草の根技術協力事業(フィリピンにおける環境保全型野菜生産による所得向上パイロット事業ほか)を始めました。
また、高原野菜の栽培技術向上を図る目的で2008年から外国人技能実習制度を活用し、ベンゲット州政府と共に研修プログラムも行っており、これまで500名を超えるフィリピンの若手農業者が参加しています。本研修で南牧村の農家を中心に設立されたNPO法人の八ヶ岳環境保全型農業国際研修協会が実習生の受け入れを担ったことにより、南牧村とフィリピン側で中心的な役割を果たしていたラ・トリニダッド町との交流が始まりました。
3 共生社会の在り方
JAECのポリシーにより実習生は家族の一員として受け入れられています。実習生は受入農家を「おとうさん」、「おかあさん」と呼び、受入農家は実習生を「うちの子」と言い、本当の家族の様な関係が生まれています。互いを尊重し、愛情を持って付き合える関係があるからこそ、実習生たちは温かく地域社会に受け入れられています。
4 姉妹都市提携

(有坂村長とロメオ・サルダ町長)

(姉妹都市提携を結んだ当時の菊池元村長とエドナ・タバンダ元町長)
日比の産地間の技術協力をベースとするこの研修はベンゲット州の若手農業者の育成に寄与するだけでなく、慢性的な人手不足に直面している我が国の農業を助けることにも繋がりました。さらに、JAECのプロジェクトの一環で、実習生の受入農家と共に南牧村の職員や議員等がベンゲット州を訪問し、技術や文化交流も行われるようになった結果、2014年9月に南牧村とラ・トリニダッド町との間に姉妹都市提携が締結されました。
また、南牧村は2016年から3年間に亘りJICA草の根技術協力事業(フィリピン国安全野菜生産販売技術改善プロジェクト)をJAECと共に実施するなど、その後もベンゲット州との交流を続けてきました。2024年2月に有坂良人村長が現地を訪問された際にロメオ K. サルダ町長(当時)との間で姉妹都市提携10周年記念行事の開催が話題となり、同年11月に南牧村で、ラ・トリニダッド町からロメオ K. サルダ町長等関係者を招き、記念行事が盛大に行われました。

5 新たな友好都市関係の設立へ
この姉妹都市提携の有効性がベンゲット州内の他の町村でも認められ、ブギアス町とツブライ町からパートナーシップを提携したいとの要望が南牧村に寄せられました。両町と協議を重ねた結果、友好都市関係を設立することとなり、今年(2025年)10月に両町の町長をはじめとする関係者を招き、南牧村で調印式と祝賀行事が行われることとなりました。
このことはJAECと共に行った技術協力事業と研修事業を通じ構築された信頼関係、そして、長年に亘る交流を通じ良好な関係を継続してきた結果に他なりません。
6 共生・共栄社会を目指して
我が国では「多文化共生社会」の実現に向けて様々な取り組みが行われていますが、今後も我が国が選ばれ続けるためには、自分のことだけでなく、相手にもメリットのある関係を築く必要があります。そのキーワードは「共栄」です。共に生き、価値を高め、繁栄していける社会を作り上げることが重要です。
南牧村とラ・トリニダッド町は更なる交流を促進するため、次のプロジェクトを進める準備を始めています。
(1)Coffee Project
ベンゲット州の特産品である希少なアラビカ種コーヒーを南牧村の直売施設、レストラン、ホテルで姉妹都市産品として提供・販売。南牧村から姉妹都市であるラ・トリニダッド町がコーヒーと共に発信されます。
(2)Exchange Project
未来に亘り交流を維持させるためには、将来を担う若手の育成は不可欠です。両自治体の小中学生を短期間交換留学させ、信頼関係の更なる深化に繋げる。また、自治体の職員の交流も検討されています。
JAECは姉妹都市提携の新たなステージを一緒に作り上げることに大きな意義を感じています。この取り組みに関心のある方はJAEC国際農業者交流協会までお問合せください。