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くまもと新時代 世界に開かれた活力あふれる熊本、そして選ばれる熊本へ!
(熊本県への書面インタビュー)
熊本県知事公室国際課
Q1 2013年に熊本県が台湾の高雄市との間で国際交流促進の覚書を締結するに至った背景を教えてください。
覚書を締結するきっかけとなったのは、2012年11月の陳菊高雄市長(当時)の熊本訪問でした。翌年9月に開催される「アジア太平洋都市サミット(APCS)」への出席を依頼するため、当時の熊本県知事を訪問。その際、覚書締結が提案されました。この提案を受け、熊本県・熊本市・高雄市の3者で協議を重ね、2013年9月に覚書を締結しました。
当時、熊本県は「アジアとつながる」という戦略を掲げ、新たな国際定期路線の開設、県産品の海外市場への販路拡大、そして外国人観光客の誘致に力を入れて取り組んでいました。この覚書の締結は、これらの取り組みに弾みをつけ、更なる発展を目指す重要な一歩となりました。
Q2 国際交流促進の覚書を締結されて以降、熊本県と高雄市及び台湾との間でどのような交流がなされてきたのか教えてください。


2013年の覚書締結以降、熊本県は、高雄市との交流を着実に深め、観光、経済、教育等様々な分野で協力関係を築いてきました。
まず、2015年には、熊本と高雄を結ぶ定期便が就航し、両地域の往来が活発化しました。
そして、2016年の熊本地震や台湾における台風被害など、困難に直面した際には、お互いにいち早く義援金やお見舞いを届けるなど、心の絆も深めてきました。
こうした様々な交流を経て、2017年に、これまでの覚書の枠組みをさらに発展させた友好交流協定を締結しました。
新型コロナウイルスの影響で、人的な往来が一時的に中断しましたが、2021年11月に、台湾の世界的半導体メーカー・TSMCの熊本県進出が決定して以降、経済分野をはじめとする交流が確実に増加しています。
友好交流協定締結5周年を記念して、2023年1月には、当時の熊本県知事が高雄市を訪問し、その2か月後に高雄市長が熊本を訪れました。これを契機に、新型コロナウイルスの影響で停滞していた交流が再開し、自治体トップの相互訪問や職員のイベント参加など、幅広い分野での交流が活発化しました。
2025年2月には、新型コロナウイルスの影響で運休していた高雄との定期便がついに運航を再開しました。これにより、台湾と熊本を結ぶ直行便は週15便となり、より多くの方々が気軽に行き来できるようになりました。
こうした交通網の復活は、台湾と熊本の交流を一層活発にするきっかけとなっています。その表れの一つとして、昨年熊本県を訪れた外国人宿泊客の中で、台湾からのお客様の数が最も多くなりました。これは、熊本が台湾の方々にとって魅力ある訪問先であることを示すものであり、今後も更なる交流の深化・拡大が期待されます。
Q3 今日、熊本県は台湾の企業や自治体との経済面及び社会・文化面での連携を強化されていますが、その狙いは何でしょうか。また、こうした連携は熊本県にとってどのような成果があった、あるいは期待されていますでしょうか。
世界的な半導体関連企業の進出を契機に、本県では、多くの関連企業の進出・拡大が進んでいます。この経済の好循環をさらに推進し、その波及効果を県内全域へ広げ、熊本の発展に繋げるため、知事をトップとする専門の推進体制を整え、丁寧かつスピーディーに取り組んでいます。
そして、経済交流にとどまらず、観光・文化・スポーツといった幅広い分野で台湾と交流を拡大しながら、TSMC進出による効果を県内全域のあらゆる分野へ波及させていくことを目指しています。
台湾との交流は県全体へと広がっており、2018年以降、県内の各市町村が台湾の自治体と覚書や友好交流協定を締結し、その数は、これまでに14件にのぼります。これにより、学校交流など新たな取り組みも始まり、地域レベルでの結びつきがさらに強まっています。県内各地から台湾との交流を求める声が寄せられ、自治体間の相互交流の動きがますます活発になっています。
Q4 台湾との交流を含む熊本県の国際的な取り組みは、どのように地域の活性化に寄与しうるでしょうか。また、国際的な取り組みを地方創生につなげるうえでの課題は何でしょうか。
世界的な半導体関連企業の進出は、単なる半導体産業の振興のみならず、地域全体の活性化につながるという点で、大きな意義を持っています。半導体産業で培われた技術やノウハウは、その他の産業にも生かされ、地域経済の発展を促進しています。実際に、半導体関連企業による継続的な投資が進み、熊本空港に就航する国際便の急増や、2024年度の旅客数が過去最多を更新するなど、国際的な交流がますます活発になっています。海外との人やビジネスなどの交流がこれまで以上に活性化することで、更なる投資の呼び込みや、交流人口の拡大へとつながっています。
このような「よき流れ」の効果を県全体に波及させ、最大化するためには、各種産業を支え、さらに熊本からイノベーションを起こしていく人材の確保・育成が課題です。このため、教育機関や企業とも連携した人材の育成、確保に加え、質の高い生活環境・職場環境・研究環境を整備し、国内外の多様な人材が集う活力あふれる熊本の実現を目指し、取り組んでいきます。
Q5 最後に、今後の台湾との交流を含む国際的な取り組みや、地方創生に向けた熊本県の展望・意気込みをお聞かせください。

熊本県は、世界的な半導体関連企業の進出を契機に、国際的な交流が加速し、新たな発展の段階へと進んでいます。
半導体関連産業の集積が進むことで、日本の経済安全保障の一翼を担う重要な役割が期待されています。産業振興と熊本の宝である自然環境の調和を図りながら、県内産業全体への波及、交流人口の拡大など、経済と県民生活への様々な効果の最大化を図り、将来に向けた地域活力の創生を推進します。
そして、アジアに近い地理的優位性を最大限に活かしながら、強みを更にステップアップさせ、世界へ挑戦する県を目指します。
これらの実現には、地域への愛着とグローバルな視野を持ち、チャレンジ精神を備えた人材が不可欠です。そうした人材が個性と力を発揮できる、世界に開かれた「活躍の場」を創出することにより、熊本の地域としての魅力を向上させ、その魅力に吸い寄せられるように、さらなる人材の流入につながる「選ばれる熊本」を目指します。