グローカル外交ネット

令和7年5月13日

近江八幡観光物産協会 事務局長 田中 宏樹

1 はじめに

 近江八幡と言えばどんなイメージをされるでしょうか。日本最大の湖「琵琶湖」を有する滋賀県内のまち、織田信長の居城(安土城)、近江商人、日本三大牛の一つ近江牛肉、これらを思い出される方も多いのではないでしょうか。実は、近江八幡市は、京阪神や中京圏から年間で約600万人もの観光客を迎える滋賀を代表する観光地の一つとして位置づけられています。
 近年、外国人観光客が増えてはいるものの、全体の中で占める割合や国外での知名度は低い状態となっています。そんな中、織田信長公が平安楽土を夢見て、安土山城下に実現させた平和と繁栄の姿が、近江八幡とモザンビークを結び付けることになります。
 2026年は、近江八幡市にとっては記念すべき年となります。天正4年、織田信長が安土の地に、安土城を築き始めて450年を迎えるのです。このメモリアルイヤーを皆でお祝いし盛り上げるため、関係者が集い協議会を設置し、歴史の再確認やアイデアを集めていました。
 そんな中、ある知り合いを通じて、「モザンビークのマテウス・マガラ運輸通信大臣(肩書は当時)が、安土訪問を希望されていますが、案内を引き受けてもらえますか?」との打診があったのが、2023年7月のことです。

2 近江八幡とモザンビークの繋がり

マテウス・マガラ大臣一行と記念写真(JR安土駅にて歓迎の様子)
マテウス・マガラ大臣一行と記念写真(JR安土駅前・織田信長像を背景に)

 ここで、モザンビークとのつながりを紹介します。かつて、近江八幡(安土)に存在した、安土城下は、織田信長の庇護を受けた宣教師オルガンチノが建てた日本初のキリスト教学校「セミナリヨ」があったとされ、一種の国際都市でもありました。幾多の外国人がいたその中に、信長に仕えた“弥助(やすけ)”と呼ばれる人物が存在したとされ、その出身がモザンビークではないかと伝えられています。
 何となくの記憶はあったとはいえ、遠い昔の話、遠い国の話、そんな淡い認識しかない中、現役大臣から突然の訪問打診、どうしたものか?と思い悩み、電話をしたのが安土町商工会の高木会長です(肩書は当時)。高木会長は即決で受け入ることを決定、この折角のご縁を大切にしたい、そしてお迎えする限りは精いっぱいのおもてなしをする、なお、通訳の問題、具体的な行程等、分からないことや不透明なことは、走りながら考えていくことにしたのです。
 以後の詳細は、誌面の都合上、省略させて頂きますが、高木さんを中心に関係者の熱い思いが、瞬く間に周囲の関心や協力を集め、安土でのおもてなしは、滞りなく無事に終えることが出来、小さな町の大きな取組みとしての第一歩は始まりました。

 2023年末には、ニャルンゴ臨時代理大使の訪問、そして、翌2024年には、安土地域の最大イベントである「あづち信長まつり」にもご参加頂くなど、相互交流はますます大きくなっていきます。双方の関心は、次第に、関西・大阪万博に向いていく中、近江八幡市より申請されていた「万博国際交流プログラム」に採択されたことで、この度の2025年2月、モザンビーク訪問団を組織する事へと繋がります。

3 視察団の目的と訪問先

 思いがけないことが発端となって、わずかな期間の間に相互訪問の機会を得られたことは、400年余りの時を経て、織田信長と弥助の関係が招き寄せた偶然なのか必然なのか、歴史ロマンを感じざるをえません。
 今回の訪問団は、安土町商工会、近江八幡商工会議所、近江八幡観光物産協会、近江八幡市役所のメンバーで構成され、その目的は、経済交流、農業交流など、補助金に頼らないビジネスの展開を模索することが柱でした。
 限られた滞在の時間ではありましたが、モザンビーク日本商工会、モザンビーク投資輸出促進庁、経済省、モザンビーク商工会、マテウス・マガラ経済・開発大統領補佐官との会食、MozPark(工業団地)、日本大使館、JICAモザンビーク事務所、ABEイニシアティブ留学生との懇談、リバウエ農業学校、ナンプラ州知事訪問、モザンビーク島の小中学校訪問(安土中学校とのオンライン交流も実施)、等々、慌ただしいながらも、様々な分野に渡る方々に出会えたことは大きな刺激となりました。また、世界遺産・モザンビーク島は、天正遣欧少年使節の寄港地であったことからも、その歴史に思いを馳せ、遠い国ではありながらも、確実に、日本やそして近江八幡(安土)との接点の場に足を踏み入れる体験が出来たことは、参加者一同の喜びであります。

4 最後に

JICAモザンビーク事務所への訪問及び情報交換

 今回の訪問を通じて感じた事とは、実際の体験や体感の大切さです。まさに、百聞は一見に如かず、その地に活きる人たちとの交流、人と人が存在しての国際交流であることを、改めて感じたところです。私たちの身の回りには、AIやネットなどバーチャルで便利な道具が広がっていますが、やはり、自分の五感で感じること、人のぬくもりや思いに寄り添うこと、これらがあっての“交流”と、その大切さを感じています。
 また、モザンビークから、日本に寄せられる期待(資金力や技術力)も実感しています。ただ、地方の自治体や産業団体が出来ることは限られているため、国や県などとも連携を図り協力を取り付けながら、小さなことでも確実に前進をさせていきたいと考えています。また、日本としても、モザンビークに学ぶ事は多くあり、その若さ、活力、多くの潜在力を秘めたその魅力、そして、日本・近江八幡(安土)との接点を多くの方に知って頂けるよう取り組んでまいります。
 いずれにしても、人と人が行う事であり、肩に力を入れず、笑顔をたやさず、楽しみながら、学びながら、相互に交流を深めて行きたいと思っております。
 なお、目の前の行事としては、万博、6月16日はモザンビークナショナルデーが催されます。世界の人達に、モザンビークの魅力を体感して頂ける機会であり、我々としても出来る限りの対応をしていきたいと考えております。今後の、様々な展開や取り組みを期待するとともに楽しみながら参画していきます。

グローカル外交ネットへ戻る