グローカル外交ネット
日本とポーランドの地方自治体間交流 「友情の花咲く二つの国」
在ポーランド日本国大使館
1 シベリア孤児救済の歴史に基づく友情の絆
現在の日本とポーランドの友好関係の原点として、約100年前のシベリアにおけるポーランド人孤児(以下「シベリア孤児」)救済の人道主義的な歴史のエピソードがあります。20世紀初頭のロシア革命後の混乱の中、約800名のシベリア孤児は、ウラジオストクから福井県の敦賀港に着き、日本赤十字社や社会福祉法人・福田会等による手厚い看護と支援を受け、1920年から22年にかけて母国ポーランドに向けて出国しました。この歴史から100年を経て、一昨年から今年にかけて、多くのシベリア孤児の子孫や家族の方々を集め、コルンハウゼル=ドゥダ大統領夫人を始めとする両国の要人が関与する形でワルシャワ及び東京にて盛大な記念式典が行われました。日本大使館としても、これらの動きを積極的に支援するとともに、シベリア孤児に関する取材や資料収集、交流促進に貢献された方々への叙勲や現在シベリア孤児の歴史及び日本文化の普及に貢献しているポーランド国内の個人・団体に対して在外公館長表彰を行うなど、この歴史がより多くの方々に伝わるよう努めました。シベリア孤児の子孫の方々は、「日本による救済がなければ今の私たちはいなかった。」と口をそろえて言われます。「困ったときの友こそ真の友」という表現はポーランドにもありますが、ロシアのウクライナ侵略を受けて、ポーランド国民は、多くの避難民の受入れを始め隣国ウクライナを力強く支援しています。日本もウクライナを全面的に支援しています。100年前のシベリア孤児救済の友情の歴史が、時を経て、今日、日本とポーランド両国・両国民によるウクライナ支援という形の新たな友情の輪につながっています。
2 福井県敦賀市への訪問


本年7月9日、宮島大使は、かつてシベリア孤児を迎え入れた最初の場所である福井県敦賀市を訪問し、米澤市長表敬、人道の港敦賀ムゼウム視察等を行いました。米澤市長との意見交換では、昨年の敦賀市の高校生のポーランド訪問、本年6月のシベリア孤児の子孫・関係者約50名の敦賀訪問等について想起しつつ、敦賀市とポーランドの今後の更なる交流拡大、本年3月に敦賀市まで延伸した北陸新幹線の活用や来年の大阪・関西万博を活用したインバウンド観光促進等につき幅広く意見交換しました。
人道の港敦賀ムゼウムについては、宮島大使にとって約4年前のリニューアルオープン時以来の2回目の訪問となりました。この資料館には、シベリア孤児に関する展示があり、これまでポーランド要人、シベリア孤児の子孫等多くの方々がこの資料館を訪れています。宮島大使は、展示内容が拡充された同資料館において、前回にはなかった資料を中心にじっくりと視察し、同資料館がこの重要な史実を正確に次世代に伝える上で重要な役割を果たし続けていることに高い敬意を表しました。
3 石川県・金沢市への訪問

本年7月8日、宮島大使は、出身地の石川県金沢市を訪問し、馳石川県知事及び村山金沢市長を表敬しました。馳石川県知事との意見交換では、能登半島地震への対応及び現状につき伺い、ポーランドの教育大臣及び同国外務省からのお見舞いの言葉を改めて伝達した上で、ポーランド情勢につき説明し、文化交流やウクライナ避難民支援等における連携の可能性につき意見交換しました。村山金沢市長との間では、文化芸術分野における交流、九谷焼、加賀友禅、輪島塗の漆器等の伝統工芸品のプロモーション、インバウンド観光客の金沢訪問の可能性等につき意見交換しました。このような地方自治体関係者との意見交換が具体的な協力につながっていくことを期待しています。
4 地方自治体間の交流の拡大に向けて
地方自治体間の交流は、文化芸術・ビジネス・市民交流の各面において日本とポーランドの友情とパートナーシップの強化にとって極めて重要であり、地方自治体間の交流が活発に行われています。
静岡県浜松市とワルシャワ市は、1990年から音楽文化友好都市交流を続けており、ショパン国際ピアノコンクールの際に「浜松市長賞」、浜松国際ピアノコンクールの際に「ワルシャワ市長賞」をそれぞれ贈るなどの交流があります。島根県隠岐の島町とクロトシン市(ポーランド西部)は、相撲を通じた草の根レベルの交流から始まり、2016年に友好都市提携を行っており、本年9月にクロトシン市長が隠岐の島町を訪問したところです。茨城県大洗町とオトフォツク市(ワルシャワ郊外)は、高温ガス炉に関する技術協力を行っている原子力研究施設の立地自治体として、2019年5月に友好都市文書に署名しています。岐阜県とシロンスキエ県(ポーランド南部)では、東京オリンピックの際にポーランドのカヌー選手が同県恵那市に合宿したことが契機となり、2023年8月に協力・友好覚書への署名が行われています。また、本年10月11日には、大使公邸において、人的つながりを契機に交流が拡大している長野県坂城町とツェレスティヌフ郡(ワルシャワ郊外)との間の友好協力文書への署名が行われました。さらに、10月16日には、兵庫県姫路市の姫路城とクラクフ(ポーランド南部)のヴァヴェル城の姉妹城提携の文書へのオンライン署名式が行われています。
5 終わりに
ポーランドでは、日本は「桜咲く国」と呼ばれており、宮島大使は、在任中の約4年間において、日・ポーランド両国を「友情の花咲く二つの国」と表し、こうした表現はポーランドの方々に温かく受け止められてきました。両国の地方自治体間の「友情の花」が今後もより美しく、より多く咲き誇るよう、大使館としても努力してまいります。