グローカル外交ネット
新潟県とマダガスカル共和国の友好関係と交流
駐マダガスカル・コモロ日本国特命全権大使
阿部 康次
1 日本とマダガスカル
マダガスカルは、アフリカ大陸の南東海岸部から沖へ約400キロメートル離れた西インド洋に位置する島国です。日本とマダガスカルは60年以上にわたり深い友好関係を築いてきました。バオバブの木やキツネザル(レミュール)などマダガスカル独自の自然や壮大な景色をいつか見てみたいと憧れる方も多いことでしょう。一方、マダガスカルでは日本のアニメや漫画、和食、空手・柔道などの日本のポップカルチャーや伝統文化への関心が年々高まっています。特に、マダガスカルの日本語学習者数は2,500名を超え、サブサハラ・アフリカ地域で最大の規模を誇ります。このように両国の人々の間で高まる関心を背景に、2024年4月には日本の外務大臣として初めて上川大臣がマダガスカルを訪問しました。
2 新潟県とマダガスカルの交流


新潟県とマダガスカルには意外な共通点があります。それは、お米です。新潟県は日本有数の米産地であることは言を俟ちませんが、マダガスカルでもお米は主食として広く親しまれています。民間旅行会社の調査によれば、マダガスカル人は、一人あたり一日283グラム(2合弱)の米を食しているとのことで、世界第10位の米消費国となっています(ちなみに日本人は一日あたり119グラムとのこと)。また、日本語で「食事をとる」ことが「ご飯を食べる」と言われるのと同様に、マダガスカル語でも「食事をとること」は「米を食べる(mihinan-bary)」と表現されており、マダガスカルにおける米の重要性は言語表現からも伺い知ることができます。マダガスカルでは、首都アンタナナリボを少し離れると、日本の原風景を思い起こさせるような田園風景が広がっています。日本は長年、マダガスカルの農業、特に米の生産性向上のための支援を行っています。
このような繋がりを背景に、2024年5月末、JICAの実施する「マダガスカル外国人材受入パイロット事業」で特定技能労働者として日本での就労を目指す8名が、就農体験のため新潟県新発田市を訪問しました。新発田市では、1泊2日の日程で、副市長表敬、苗箱の洗浄や田植え機での田植え(マダガスカルでは今も手作業で田植えが行われています)、チェーン除草機や自走式草刈り機の体験、ライスセンター見学等を行いました。参加者たちは、1ヘクタールの田植えを約2時間で終えられる、というスピード感に対し、マダガスカルでは30名の女性で一日がかりで手植えだ、と驚きを隠せなかったようです。マダガスカルにおける農業の機械化・近代化は喫緊の課題ですが、今回の体験を通じて、日本の先進的な農業技術から多くを学んだ様子でした。
3 新潟県への訪問

2024年6月、私は新潟県を訪れ、新潟県の笠鳥副知事、新発田市の二階堂市長、さらに、これまでマダガスカル人留学生を受け入れてきた新潟大学の牛木学長、国際大学の橘川学長と意見交換を行いました。学生や特定技能労働者として就労を目指す若者との交流を通じて、新潟県とマダガスカルの関係が深まっていることに対し、喜びと感謝の気持ちを伝えたところ、今後のさらなる交流に対する期待の声を多くいただきました。
6月4日には、新潟県長岡市にある長岡技術科学大学で鎌土学長と意見交換すると共に、全国の高専生のアイデアでアフリカの社会開発課題解決を目指すハッカソン、「高専オープンイノベーション(KOI) -Challenges from Africa 2024-」のキックオフイベントに出席しました。今回、マダガスカルはこのハッカソンの課題国として選ばれています。高専生たちは、2025年春にもマダガスカルを訪れ、その社会課題の解決に向けた創造的なアイデアを競い合う予定です。若者たちの熱意と創意工夫に期待しています。
4 今後の交流への期待
米食文化が繋ぐ新潟県とマダガスカルの交流が、学生や若者の交流から、国際的な協力に発展していくことを期待しています。今回の訪問を通じて、新潟県笠鳥副知事をはじめ、関係者の皆様とその思いを共有できたことを大変嬉しく思っています。
2025年には、マダガスカルが大阪・関西万博に参加することを表明しており、またラジョリナ大統領からは第9回アフリカ開発会議(TICAD9)への参加に前向きな意向が示されています。これらの重要な機会を活かし、当大使館としても積極的に日・マダガスカル関係を発展させていきたいと考えています。