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ウッデバラ市に見る日本とスウェーデンの交流:高校生たちのまなざし
在スウェーデン日本国大使館
1 はじめに
「私たちは、ヨーロッパの日本人です。」 スウェーデン人からこう言われると、少し意外ですが、本当にそうかもしれません。控えめで、几帳面で、じっくり信頼関係を築くところは、とても似ています。
そんな国民性を感じるのがウッデバラ市です。スウェーデン南西部の小さな町で、55年前から愛知県岡崎市の姉妹都市です。最近では、ベンチャーコンテストで選ばれたウッデバラ高校生たちが日本大使館まで発表に来てくれました。それが縁で、2023年12月13~14日、能化正樹駐スウェーデン大使がウッデバラ市を訪問しました。
2 ウッデバラ市と岡崎市の交流
ウッデバラ市と岡崎市の交流は1968年に始まります。岡崎市が、中立外交と福祉先進国で知られたスウェーデンで交流すべき都市を探していたところ、駐日スウェーデン大使から、岡崎市と同じ花崗岩の町であるウッデバラ市を紹介されたそうです。1968年に姉妹都市協定が署名され、その後、住民、市の関係者、中学生・高校生などの様々な交流がありました。
交流開始から50年の2018年、ウッデバラ市は、岡崎市との交流により日本とスウェーデンの相互理解を推進した功績で、外務大臣表彰を受けました。
3 小さな町の大きな学校
現在、両市の交流は、行政の支援を受けた高校同士の交流が中心になっています。
ウッデバラ高校には3,000人もの生徒がいます。スウェーデンで最も大きな学校の一つで、職業教育を含め、多様でダイナミックな活動が行われています。
その中に日本に関心がある生徒たちがいます。日本語は、2年前から第二外国語として履修可能になりました。日本語教師はウッデバラ高校の卒業生で、在学中に岡崎市を訪問してから、関心を深め、日本語を学んだそうです。
12月13日、能化大使は、ウッデバラ高校で、二回の講義を行いました。生徒達は熱心に聞き入り、多くの質問も寄せられました。「日本の文化と生活の特徴は?」「日本で気をつけることは?」「東京、京都以外に行くべき場所は?」など。
9月に岡崎市を訪問した3人の生徒たちは、訪日の体験と感想を熱く語り、「フライトが長くて疲れた」「言葉が通じにくかった」けれど「これまでで最高の経験」「また行きたい」と話していました。
生徒達の日本への関心と訪日したいという気持ちが伝わってきました。
4 市長らとの意見交換
ウッデバラ市役所の敷地には岡崎市から贈られた石灯籠「友好の灯」があり、日本関係の様々な記念品が展示されていました。市街にも、岡崎市から贈られた石像があるそうです。
市長や市の幹部、交流担当の職員からは、市の歴史、課題と展望について説明があり、岡崎市との交流も話題になりました。ウッデバラ市にとって岡崎市は近隣国以外で唯一の姉妹都市で、半世紀を超える交流を大切に考えているそうです。5年後の交流60周年に相互訪問が行われることを楽しみにしている様子でした。
5 ルシア祭、企業訪問
12月13日はキリスト教の「光の聖人ルシア」の日で、スウェーデン中でコンサートが開催されます。夜6時から、ウッデバラの教会でも、高校生のコーラス・グループが白い装束を着て、「サンタ・ルチア」などを熱唱しました。朝4時から準備したそうで、特に聖ルシア役の女子生徒は、7本の大きなろうそくが灯る冠をかぶって歌うので大変です。若者達のエネルギーとスウェーデンの伝統を感じないわけにはいきませんでした。
地元新聞社も取材し、コンサートの前には「日本大使が来る」、翌日には「日本大使もコンサートに来た。」と報道していました。
12月14日には、地元の特徴ある企業を訪問しました。
1社目は「ロープ・アクセス」の企業で、高所作業等を安全に行うためのロープ装備や技術を提供し、自らも高所作業を行います。大型の橋やダム、さらには風力発電施設の増加に伴って高所作業はますます増えているそうです。
2社目はウッデバラ港の管理会社です。コンテナ船はウッデバラの南にあるヨーテボリ港を使う一方、コンテナを使わない鉱石や大型の機械製品、農産品は、隣国ノルウェー分を含めてウッデバラ港が扱うことで、地域経済に重要な役割を果たしているそうです。洋上風力発電プラントや送電網設備も扱い、日系企業も利用しているそうです。
6 最後に


スウェーデンには親日的な人が多いですが、今回のウッデバラ訪問で、高校生達の日本への関心を実感しました。
若い人たちが日本を訪れ、学校や家庭で交流し、また日本へ行きたいと思う体験ができるのも、自治体等の国際交流があってのことです。今回、交流の成果の一端を見ました。
在スウェーデン大使館も、日本とスウェーデンの交流がさらに盛んになるよう、応援します。
