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国際交流員の目から見た堺市の魅力
大阪府堺市 国際交流員 レーナ・アモン
こんにちは。ニュージーランドのウェリントン地域出身のレーナ・アモンと申します。2023年8月から国際交流員として堺市で勤務しています。本稿では、堺市配属に至るまでの経緯、堺市で働いて感じたこと、外国人の目から見る堺市の魅力等について記したいと思います。
堺市配属に至るまでの経緯

幼い頃から日本に特別な思いを抱いていたのは、祖母が日本人で、祖父母に育てられたからです。祖父はドイツ人で、二人はドイツ語を使って私をニュージーランドで育ててくれましたが、私は逆に日本語の方に興味がありました。祖母は日本の歌や料理を教えてくれ、幸運にも家族と二度日本を訪れる機会がありました。10代に学校で日本語を学び始め、3か月間北海道に交換留学しました。その経験が日本語への関心と日本への憧れを強くしました。大学1年目には3か月間東京に住み、日本語を学びましたが、期間が短すぎると感じました。再び日本に戻る方法を模索し、文部科学省の奨学金を活用し、宮城県仙台市で1年間日本語と日本文化を学ぶ機会を得ました。初めて日本の四季を感じる学生生活を過ごし、多くを学びましたが、コロナ禍でアルバイトができなかったのは残念でした。また私はニュージーランドにいる家族の中の最後の日本語話者で、日本にいる親戚とコミュニケーションを取ることができるのが私だけとなってしまいましたので、自分自身の更なる成長を日本で実現してより強固な架け橋になりたいと思いました。
JETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)の国際交流員に応募し、堺市に配属されることが決まったと知ったとき、私は非常に嬉しく、まるで天にも昇る心地でした。ニュージーランドの首都ウェリントン市は堺市の姉妹都市であり、私の故郷からも非常に近い場所にあります。ウェリントン市と堺市はどちらも私にとって特別な場所であり、これらの都市の交流を深めるために自分のスキルを活かせることは、私にとって大きな喜びです。堺市にいる外国人向けの情報発信、ウェリントン市との連携、国内外の観光誘客に尽力することで、異文化交流の架け橋となることをめざし、日々近づけるように取り組んでいます。
姉妹都市の事業
2023年9月にはウェリントン市のトリー・ファナウ市長を含む代表団が堺市を訪れました。その際、私は翻訳や通訳で非常に忙しかったのですが、初めての大きな仕事でやりがいがありました。堺市の国際交流員として着任してわずか1か月後の出来事だったので、大きな挑戦でしたが、学びの機会として捉え、代表団の皆様の堺市での滞在をサポートすることに全力で取り組みました。また、昨年ウェリントンのカレッジ(日本の中高生相当の学生が通う学校)から学生が来堺したときには学生たちと共に茶の湯文化を体験し、学生たちが堺市の魅力に触れる瞬間を共有できたことは、私にとっても貴重な経験でした。
日本の働き方に感じたこと
日本の仕事の仕方について事前に学んだことと、実際に体験したことはかなり異なっていました。市役所での仕事を始めた当初は、何かをする前に係長に確認し、すべてのことに承認が必要であることに慣れるまで時間がかかりました。承認や許可を得ることはもちろん重要ですが、それ以前に「相談」というプロセスがあり、それによりフィードバックや修正、提案などがあり、何かを企画する際には、皆さんからの貴重な意見を取り入れてより良い結果を作り上げることができます。このような共同作業的な仕事の進め方は、皆と一緒に一つのものを作り上げるという意識を強化してくれます。今ではすっかり慣れており、ニュージーランドに戻ったら逆カルチャーショックを受けるかもしれません。仕事に関する国の文化の違いを感じ、多文化共生への関心が高まりました。
堺市に根付く文化


初めてグーグルマップで堺市を調べたとき、市内のあちこちに好奇心をそそる鍵穴型の建造物をたくさん見つけましたが、それが一体何なのか全く分かりませんでした。今では、それが3世紀半ばから7世紀頃にかけて築造された古代の墓であることを知っています!堺市で働くうちに堺を知り、すごいと思ったのは、この街が持つ豊かな文化と歴史です。少しずつ、古墳や古墳築造時から続く鉄加工技術が堺市の産業の発展にどのように関係してきたかを学びました。
堺の金属加工技術のルーツは古墳時代にまで遡るといわれ、鉄砲やタバコ包丁作り、そして自転車部品の製造技術にも受け継がれています。このような長い歴史があるからこそ、伝統産業品である堺打刃物の切れ味のすごさを想像してもらえるのではないでしょうか。堺打刃物は日本の多くのプロの料理人に愛されているとも言われています。また、堺の茶の湯文化は、千利休によって大成されたものであり、そのシンプルでありながら奥深い美しさに魅了されました。私は立礼の茶の湯に何度も出席する機会があり、上品でありながら、洗練された穏やかな雰囲気を楽しんできました。
仕事を通じて堺の魅力を深く理解する中で、本年1月に東京で外務省との共催で実施した「地域の魅力発信セミナー」において、様々な国の駐日大使や外交官に対し、堺市について発表する機会を得ました。セミナーでは、堺の伝統的な手染め手法である注染で作られた美しい竹模様の浴衣を着て、国際交流員の視点から堺の魅力を紹介することができました。驚いたことに別の自治体の発表者は副知事、市長、町長だったので、発表前は少し緊張していましたが、自分の能力を信じて、この貴重な機会に挑戦したいという気持ちで、前向きに取り組みました。発表後に何人もの参加者から、「堺市に行きたくなった」などのコメントをもらって本当に嬉しかったです。
大阪・関西万博がもうすぐ開催されることもあり、万博会場からアクセスのよい堺市の魅力的な訪問場所を伝える良い機会でした。読者を含む皆様が万博来場にあわせて堺に立ち寄り、その魅力を感じていただけることを願っています。会場の夢洲から堺市まで直通のシャトルバスが運行されており、とても便利だと思います。
これからの堺
大阪の隠れた名所である堺市は、人混みを気にせずに日本らしい体験を自分らしく楽しむことができる場所です。堺市のことをたくさんの人に知ってもらうために、日頃のSNS発信や、上述した「地域の魅力発信セミナー」のような機会でのPRなどに取り組んでいます。国際交流員として外国人の目線で堺市の魅力をどんどん見つけて、積極的に情報を発信していきたいと思います。これからの堺市が、さらに輝かしい未来を迎えるように自分ができることに貢献していきたいです。