グローカル外交ネット

令和元年9月27日

外務省大臣官房地方連携推進室

 徳島の夏の風物詩である「阿波おどり」。今年,徳島市で開催された阿波おどりには,この日のために練習を重ねてきた踊り子や全国各地からの観光客に加え,2020年東京大会に向けて強化合宿に参加した「カンボジア水泳連盟」選手団の姿がありました。

(写真1)阿波おどりに参加したカンボジア選手団 阿波おどりに参加したカンボジア選手団

 徳島県は2019年8月末時点で,ドイツ,ネパール及びカンボジアのホストタウンに登録されていますが,今回はカンボジアにスポットライトを当てて紹介します。
 なぜ,徳島県がカンボジアのホストタウンに登録されているのでしょうか?この経緯は2013年まで遡ります。カンボジアでは主に日本からの寄付で建てられた「カンボジア-日本友好学園」があり,日本語能力を育成する授業も行われていましたが,同校は生徒数の増大等により学校の維持管理が困難な状況に陥ったため,国際協力機構(JICA)の「草の根技術協力事業」の特別枠として,同校の高校生による商品開発を通じた学校運営の実践及びモデル化の事業が立ち上がり,商品販売を通じて学校運営費の収入確保を目指した活動が始まりました。
 ここで登場するのが徳島商業高校のビジネス研究部の生徒さんたちです。ビジネス研究部は校内に「模擬会社ComCom」を設立し,商品開発による地域おこしや地元企業へのホームページ作成支援など様々な実績を有していました。JICAの事業では,カンボジアの高校生との間でスカイプを通じて何十回にもおよぶ現地との商品開発協議を行い,地元徳島県企業の協力も得て,カンボジアの地元産品を使った「蒸しまんじゅう」「どらやき」「椰子砂糖アイス」など次々と商品を共同開発し,販売による利益はカンボジアの学校の運営や職員の雇用にも貢献しています。

(写真2)椰子砂糖アイス 椰子砂糖アイス

 これらの商品は地元の徳島や東京でのイベントでも販売されました。また,現地では生産加工工場が建設・完成され,現地農家と連携して食の安全・環境に関する国際基準であるグローバルGAPの取得,ゆくゆくは東京大会の選手村での提供も目指しています。外務省職員が徳島県を訪問した際,椰子砂糖アイス等を試食する機会がありましたが,美味というだけでなく,両国の想いがぎっしり詰まった甘く優しい味がしました。

(写真3)徳島商業高校生徒とカンボジア生徒の交流 徳島商業高校生徒とカンボジア生徒の交流

 このような縁がきっかけとなって徳島県とカンボジアの草の根交流は続き,2017年12月にはホストタウン登録に至ります。2018年8月には活動の実績が認められ県のホストタウン特使に任命された徳島商業高校の生徒さんたちは,「カンボジアの選手のことを,徳島の人に伝えよう」「カンボジアの人たちに徳島のことを伝えよう」「2020年は皆で,カンボジアの選手を応援しよう」ということを取組目標に掲げ,徳島や東京での各種イベントに参加し,ホストタウン活動や徳島県の魅力のPRや共同開発した商品の販売,両国大使館訪問,カンボジア選手や関係者が訪日した際の支援など,学業の傍ら忙しい毎日を送っています。9月には,徳島県・消費者庁の共催で開催された「G20消費者政策国際会合」において,徳島県特使としてホストタウンの取組をPRするなど,国際社会に対する力強いメッセージも発信しました。
 「ホストタウン事業に携わることで『考える力』『コミュニケーション力』がついた」「相手国の言葉を覚えて,徳島県や日本文化の魅力を伝えたい」と想いを語る生徒さん。グローバル人材の育成といったプラスの側面はもちろん,その活動が地域や相手国まで広がりを見せるホストタウン交流。これからも徳島商業高校の生徒さんをはじめ徳島県の住民の皆様が一丸となって進める,東京大会のレガシーとして残るようなホストタウン交流のやりとりに目が離せません。

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