グローカル外交ネット
外務省での勤務を通じて
外交実務研修員 森本有衣
(和歌山県から派遣)
1 はじめに
私は2020年4月に和歌山県より外務省に派遣され、外務報道官・広報文化組織の広報文化外交戦略課で勤務しています。和歌山県庁では、県にゆかりのある文化人や技術者を表彰する文化関係の事業や市町村と協力して行う広域的な観光事業に携わりました。これまで国際的な業務に従事する機会はありませんでしたが、入庁5年目に、外交実務研修員として勤務する機会をいただき、非常に学びの多い日々を過ごしています。
2 広報文化外交戦略課での業務
私が配属された広報文化外交戦略課は、我が国の立場や政策、魅力を正しく海外に伝え、日本のイメージやプレゼンスの向上を図る「広報文化外交(パブリック・ディプロマシー)」に関わる各種事業を担当しています。私は知的交流班に所属し、外交や政治・経済等に関わる政府の立場や考えを発信する政策発信に関わる業務を主に担当しています。
(1)在外公館による啓発講演事業

政策発信事業のひとつとして、日本の政策(マルチ・バイの外交政策等)や政治、経済、社会情勢等に関する諸外国での理解を促進するために、日本から各分野の有識者を海外に派遣し、第三者の立場から我が国の政策を発信してもらう講演事業を、在外公館の主催により実施しています(通称「講師派遣事業」)。取り上げるテーマは、主に安全保障や経済、国際協力等に関わるもので、広く一般市民を対象にするものや、現地政府関係者を主な対象とするものなど、現地でのニーズやテーマごとの広報効果を考慮してアレンジされます。
事業実施の具体的な調整や運営は、主催者である在外公館や実施主管課が行いますが、広報文化外交戦略課はスキームを管理する立場として、事業の全体的な方針を決定し、実施に向けた調整が円滑に進むよう枠組みを整えることが求められます。例年であれば、日本から講師を現地に派遣し、対面での講演会や意見交換を実施していましたが、コロナ禍においては講師の海外渡航や現地での行事開催が難しい状況となり、オンライン形式での講演会を実施できるよう実施要領を見直す必要がありました。私の経験では、これまでオンラインでイベントを実施したことはほとんどなく、想像の及ばない部分も多くありましたが、一から勉強し、従来のやり方の良い代替策となるように、ウェビナーの実施方法や必要経費等について情報収集を行い、具体的な調整に入っていけるように事業の枠組みを整えていきました。
新型コロナウイルス感染症の影響で従来通りの事業が実施できない中でも、録画動画を使った事後広報など、オンラインのメリットを活かし、より広範な広報を行える可能性も大きく、今後も引き続き、より効果的な事業のあり方を模索していく必要があると考えています。
(2)オリンピック・パラリンピックにかかる在外公館広報の支援
私は2021年9月まで人物交流室にも併任され、東京2020オリンピック・パラリンピックの広報に、在外公館が知的財産(エンブレムやマスコット等)を使用したい場合に、その申請作業を支援する業務を行っていました。在外公館と組織委員会の間で、申請をただ単に経由するのではなく、使用の可否や方法に関する規則を把握し、在外公館及び組織委員会と細部まで調整を行う中で、各公館が企画する広報事業の実施に至るまでの道のりの一端を知ることができました。
3 おわりに
2020年4月の着任当初、コロナ禍でテレワーク体制がとられ始め、組織の文化も大きく異なる世界で、右も左も分からないまま手探りで研修が始まったことが思い出されます。当初は不安でいっぱいでしたが、周囲の方々の手厚いサポートのおかげで、何とかここまでやってこられました。本省での勤務で得られた知識や経験を、今後の在外公館及び自治体での勤務においても最大限活かしていけるように努めていきたいと思います。